説明

治療用アンテナプローブ及び電磁治療システム

【課題】 プローブの長さ方向の加温を一様にすることのできるような、治療用アンテナプローブ及び電磁治療システムを提供することである。
【解決手段】 複数の中心導体2a、2bと、複数の中心導体2a、2bの周りに形成された絶縁誘電体3と、絶縁誘電体3の外周に形成された外部導体4からなる高周波電力伝送構造体において、外部導体4の一部から構成されかつ相互に電気的に隔絶された第1電極8と第2電極9からなる電極対が複数形成され、第1電極8は一方の中心導体2aと接続されかつ第2電極9は残りの中心導体2bに接続されて、複数の電極対が絶縁体からなる鞘1に収納されていることを特徴とする治療用アンテナプローブ24である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍等の治療法に用いることのできる治療用アンテナプローブとその使用方法、及びこれを用いた電磁治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
癌をはじめとした各種腫瘍疾患の外科手術治療または獣医外科手術治療において、術後の回復が早いといった利点から、ハイパーサーミア治療と呼ばれる局所治療法が知られている。係る治療に用いる電磁手術器では、マイクロ波を放射する治療用アンテナプローブを患者又は患獣の生体内の病変組織に挿入し、その治療用アンテナプローブから電磁波を誘導させ又は放射する。この電磁波によって、病変組織に対して誘導加熱やマイクロ波吸収を起こさせて、温熱治療を行うものである。
【0003】
最近、マイクロ波吸収に特化したハイパーサーミア治療用の治療用アンテナプローブが発表されている(非特許文献1)。このハイパーサーミア治療用の治療用アンテナプローブは、セミリジッド(Semi Rigid)な同軸ケーブルが有する同軸構造体に対して加工が施されたものである。図1は、この形態に係る第1電極8と第2電極9からなる治療用アンテナプローブの治療領域の模式図である。具体的には、同軸構造体の外部導体4に対して、電気的に隔絶された間隙7を形成したものである。そして、外部導体4の一部からなり上述の同軸構造体の中心導体2に電気的に接続された電極を第1電極8として、第1電極8から上述の間隙7によって電気的に隔絶された他の外部導体4からなる電極を第2電極9として、それぞれの電極を形成する。ここで、第1電極8はマイクロ波電源の一方の出力に、第2電極9は他方の出力にそれぞれ接続される。すると、第1電極8と第2電極9はダイポールアンテナを形成し、生体内に穿入した場合は、間隙7を断面中心とする同軸ケーブルの軸方向面に広がる放射状の生体領域に対し加温することとなる(図1参照)。ハイパーサーミア治療では、この加温した生体領域の病変組織が壊死することにより各種腫瘍疾患を治療する。ここで3は絶縁誘電体、5は絶縁ジャケット(ただし、絶縁ジャケットの無い場合もある)であり、17はPTFE(四フッ化エチレン樹脂)からなる鞘である。
【0004】
この場合は、軸方向zの温度分布が図2のようにダイポールアンテナの中点を含む軸方向面にピークを持つ温度分布となる。ハイパーサーミア治療により有効に治療を行うことのできる加温温度領域は、加温する温度が43〜45℃程度となる狭い領域である。したがって、より広範囲にわたる治療を行うには、軸方向zに対してできるだけ幅広く一様な加温ができることが望ましい。ここでSAR(Specific Absorption Rate)は、単位質量の生体が単位時間に吸収される電磁波のエネルギー量であって、生体の加温と対応している。ここでDtは治療用アンテナプローブを生体内に穿入した深さ(mm単位)を示している。
【0005】
これを改良したものに、非特許文献2に示すハイパーサーミア治療用の治療用アンテナプローブがある(図3(要部断面図である))。この治療用アンテナプローブは、第1電極8と第2電極9の間にバッファ電極20を設けたものである。そのため、同軸方向に対するTEMモードの伝播波を波源とする同軸中心から水平方向に広がる伝播波の到達域が放射領域となる。この場合、加温温度領域の裾において急激に加温量が減少するため(図4参照)、結果的に図2の場合よりも一様な加温ができる。
【非特許文献1】医器学 74巻、No. 6(2004)292−314ページ
【非特許文献2】K. Saito et al., IEEE Trans. MTT, vol. 52, no.8, pp.1987-1991, Aug. 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来知られていたハイパーサーミア治療用の治療用アンテナプローブでは、ダイポールアンテナの電極である第1電極8と第2電極9との間にある単一の間隙7から放出する電磁波によって病変組織への加温が行われるため、この治療用アンテナプローブの軸に沿った加温の一様性には限度があるという問題点があった。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ダイポールアンテナの電極の間隙7を複数備え、かつ隣接する間隙7の間の距離である第1電極8及び第2電極9の長さを短くする技術を提供することである。特に後者については、ダイポールアンテナの電極の長さが1/4波長であることに対して、電磁波の実効的な波長を縮める新たなアンテナ構造とし、ダイポールアンテナの電極の間隙7を短縮してハイパーサーミア治療用のアンテナプローブの軸に沿った電磁波の放出を垂直方向に密にして、その結果電磁波による病変組織への加温の一様性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<本発明の治療用アンテナプローブの基本構成について>
本発明に係る治療用アンテナプローブ24は、複数の中心導体2a、2bと、中心導体2a、2bの周りに形成された絶縁誘電体3と、絶縁誘電体3の外周に形成された外部導体4であってその一部から構成されておりかつ相互に電気的に隔絶された第1電極8と第2電極9からなるダイポールアンテナの電極対が複数形成されており、第1電極8は一方の中心導体2aと接続されかつ第2電極9は残りの中心導体2bに接続されて、前記第1電極8と第2電極9が絶縁体からなる鞘1に収納された治療用アンテナプローブ24である。外部導体4は通常は略円筒形状である。
【0009】
<本発明の治療用アンテナプローブの基本的原理について>
ダイポールアンテナの電極の間隙を複数とするアンテナ構成
図5(a)(b)は本発明の実施例であり、図5(a)と図5(b)の違いは、中心導体2a、2bと第1電極8及び第2電極9に対する給電点34a、34bの違いである。ダイポールアンテナの第1電極8又は第2電極9の長さは、治療用アンテナプローブ24に給電される電磁波の1/4波長分の長さに相当する。本発明に係る治療用アンテナプローブ24では、ダイポールアンテナの電極対を直列に複数個並べるため、図5(a)又は(b)(いずれも模式図である)に示すような、マイクロ波電源に接続された第1中心導体2aと第2中心導体2bが第1電極8と第2電極9に、給電点34a,34bを通じて各々繰り返して接続される構成とする。これにより、給電点34a,34bでは電磁波の電界は定常波の節となる一方で、電流は定常波の腹となることから、最大の電流を外部導体4に供給することができる。その結果、一本のハイパーサーミア治療用のアンテナプローブ24に第1ダイポールアンテナ36a、第2ダイポールアンテナ36b、第3ダイポールアンテナ36cをはじめ複数のダイポールアンテナ(図5(a)(b)では3つのダイポールアンテナ)を直列に構成することができ、治療用アンテナプローブ24内の複数の間隙7から電磁波を放出させることで、一様に病変組織への加温治療を行うことができる。
【0010】
ダイポールアンテナの実効波長の短縮させた新たなアンテナ構造
また本発明の治療用アンテナプローブ24は、以下に示すようにダイポールアンテナに給電される電磁波の実効波長λを縮め、ダイポールアンテナのアンテナ軸上の長さを短くするものである。第1電極8及び第2電極9の長さを短くできれば、治療用アンテナプローブ24の単位長さあたりの電磁波の放出源を多くすることができ、より一様な加温治療を行うことができる。
【0011】
すなわち、従来知られていた治療用アンテナプローブでは、高周波電力伝送構造体(同軸構造体)として1つの中心導体2と絶縁誘電体3と外部導体4とを有する同軸ケーブルを用いる。この場合、第1電極8と第2電極9の長さは、上述のとおり電磁波の1/4波長の長さであるが、この1/4波長は真空中の波長λの1/4ではなく、実効波長λの1/4である。すなわち、この同軸ケーブルにおける実効波長λは、外部導体4と1つだけある中心導体2の間の絶縁誘電体3の比誘電率をε、中心導体2の直径をa、絶縁誘電体3の直径をDとすると
【数1】

で与えられる。ここで、治療用アンテナプローブ24に給電される電磁波の周波数が2.45GHzで、絶縁誘電体3の比誘電率εが2.3であれば、第1電極8及び第2電極9の長さは4.95cmである。
【0012】
これに対し、本願発明の提案する治療用アンテナプローブ24では、高周波電力伝送構造体として2つの中心導体2a、2bと絶縁誘電体3と外部導体4とを有する略円筒状導体ケーブル33を用いる(図6(a)に当該略円筒状導体ケーブル33の要部正面図を、図6(b)に半径方向面の断面要部正面図を示す。)。この場合、治療用アンテナプローブ24に給電される電磁波の波長短縮には、上述の絶縁誘電体3の比誘電率εによる短縮効果に加えて、第1中心導体2aと第2中心導体2bの間に生じる結合インピーダンスによる短縮効果として以下の式(2)で表されるものが電気的に統合されたものとなる。
【数2】

ここで、dは略円筒状導体ケーブル33における第1中心導体2aと第2中心導体2bの距離であり、aは中心導体2a、2bの直径である(図6(a)(要部の正面図である)、図6(b)(断面図である)参照)。すなわち、これらを電気的に統合することによる短縮効果を考慮した実効波長λは、式(3)のようになる。
【数3】

ただし、
【数4】

かつ
【数5】

である。
【0013】
上述の式(4)は、一方の中心導体が有する他方の中心導体に対するシールド効果kを表している。通常kの値は0.3〜0.5の間である。この結果、略円筒状導体ケーブル33を用いた場合には、従来の同軸ケーブルを用いた場合に比べて波長短縮が式(6)により求められる分大きくなり、実効波長λが短くなる。
【数6】

ここでD=1.1mm、d/a=0.2mm/0.18mmとするとき、従来と比較した波長短縮の効果が0.28倍となり、上記と同様に周波数2.45GHzで比誘電率εが2.3であれば、第1電極8及び第2電極9の長さは0.24cmとなる。
図5(a)又は(b)(いずれも模式図である)に示す中心導体2a、2bと外部導体4の結合は、上記の短縮効果を実現させるものである。
【0014】
また、中心導体による電磁波の波長の短縮効果は、中心導体が増えると更に効果がある。例えば中心導体を3つとすれば(図示せず)、次式(7)のようになる。
【数7】

そのため、波長の短縮効果は次式(8)により求められる値となり、波長短縮はさらに大きくなり、その分実効波長λがさらに短くなる。
【数8】

なお、上述の波長短縮効果は、図5(a)(b)に示したような第1電極8及び第2電極9に対する給電点34a、34bの位置の違いには影響されない。
【0015】
上記に説明したように本発明には複数の特徴を有するが、さらに他に多くの特徴も有する。それらについては、以下の実施例の説明の中で詳細を述べる。
【実施例1】
【0016】
第1の実施例に係る治療用アンテナプローブ24は、図7(a)(b)(c)に示すように、2つの中心導体2a、2bを有するセミリジッドな略円筒状導体ケーブル33から、第1ダイポールアンテナ36a、第2ダイポールアンテナ36b、第3ダイポールアンテナ36cをはじめ複数のダイポールアンテナ(図7(a)(b)(c)では3つのダイポールアンテナ)を直列に構成したものである。ここで、略円筒状導体ケーブル33には2つの中心導体2a、2bを有しており、それらの周りが絶縁誘電体3で囲まれたものを使用した。第1の中心導体2aと第2の中心導体2bの間は、絶縁誘電体3と同一の材料で電気的に隔絶されていても、また異なる材料で電気的に隔絶されていても良い。
【0017】
そして、絶縁誘電体3の外部は略円筒形状の外部導体4で覆われている。この外部導体4は、引き抜き銅パイプやメッシュ状に編んだ銅線、又はそのメッシュにスズロウを溶融含浸させたものであっても良い。なお、略円筒形状の外部導体4は、その断面が完全な円でなく楕円であるものも含むものである。また、略円筒状導体ケーブル33として中心導体が3つ以上あるものを用いても良い。
【0018】
この略円筒状導体ケーブル33のうち外部導体4の一部を剥離して間隙7を設けることで、第1電極8と第2電極9からなる電極対を複数形成し(図7(b)参照(要部の正面図である))、第1電極8及び第2電極9と中心導体2a、2bとを図7(a)(要部の断面図である)又は図7(c)(要部の断面図である)に示すように略円筒状導体ケーブル33の内部で接続させて、ダイポールアンテナ36a〜36cとした。そして、上述のダイポールアンテナ36a〜36cの構造体を、絶縁体からなる鞘1の中に収納して治療用アンテナプローブ24を形成した。
【0019】
ここで、絶縁体としてPTFEやサファイヤを一体的に形成した鞘1を用いると、少ない工数での成形加工が可能となり、製作工程の点で好ましい結果が得られた。また、絶縁体としてはPTFE以外にもテフロン(登録商標)、ポリプロピレン、ポリエチレン等の高分子材料であっても良い。
【0020】
一方、鞘1の先端部のみをサファイヤとして、生体の切削を行わせるとともに、側部をPTFE等の高分子材料としても良い。
【0021】
さらに、鞘1の全部又は一部に着色したものを使用しても良い。それにより治療用アンテナプローブ24の管理や具体的な手術方法の識別や管理が容易にすることができる。
【実施例2】
【0022】
図8(a)(b)(c)は第2の実施例を示している。即ち、ダイポールアンテナを動作させる高周波電源に接続された電力伝送線35において、2つの中心導体2a、2bを電気的に結合して用いる場合である。複数の電極対からなるアンテナエレメント部41では図7(a)(b)と同様に第1電極8及び第2電極9の接続を行った。一方、電力伝送線35では図8(a)又は(c)(要部の断面図である)、図8(b)(要部の正面図である)に示すように、外部導体4の外側を絶縁ジャケット5で覆い、この絶縁ジャケット5と鞘1との間を収縮チューブ12で封止した。手術に際して雑菌が入らないようにするためである。ここで、第1電極8及び第2電極9の接続は図8(a)又は(c)(要部の断面図である)の何れに示すように行っても良い。また、収縮チューブ12は熱収縮チューブでも良い。その一方で、絶縁ジャケット5又は収縮チューブ12が無くても良い。
【0023】
アンテナエレメント部41を構成する第1電極8又は第2電極9の略円筒状導体ケーブル33に沿った長さは、上述の原理で表された式に基づき、治療用アンテナプローブ24に給電される電磁波の実効波長λは短縮される。そのため、2つの中心導体2a、2bを有する略円筒状導体ケーブル33の場合は、第1電極8及び第2電極9の物理長Lは各々上述の式(3)より以下のように表される値となる。
【数9】

また、3つの中心導体を有する略円筒状導体ケーブル33の場合は、Lは以下のように表される値となる。
【数10】

【実施例3】
【0024】
図9(a)(b)(c)は、中心導体2a、2bと外部導体4の接続に関するものであって、第3の実施例を示す。第1電極8と第2電極9を絶縁片により電気的に隔離しかつ、2つの中心導体2a、2bと電気的に接続する構造を示している。第1電極8と第2電極9は、略円筒状導体ケーブル33を切断して形成している。このうち第1電極8の部分とそれに対抗する第2電極9となる部分から、更に中心導体2a、2bを外部に引き出すようにしている。
【0025】
ここで、絶縁片としては両面に導体表面38a、38bを有するもの(両面導体間隙片37)を用いた。そして、この両面導体間隙片37に対して、外部導体4とほぼ同じ外形形状すなわち略円筒状導体ケーブル33の外形とほぼ等しい外形の円盤形状に加工成形して、更に中心導体2a又は2bを通すための貫通穴39を設けた。両面導体間隙片37の導体表面38では貫通穴39の回りを大きくえぐり、中心導体2a、2bが単に貫通するだけでは接触しないようにした。第1電極8と接触する両面導体間隙片37の一の導体表面38a側には第2電極9側の第1中心導体2aを引き出し、第1電極8と接触する他の導体表面38b側には第1電極8側の第2中心導体2bを引き出し、それぞれ第1電極8と第2電極9の表面でロウ材45を用いてロウ付けした(図9(a)(要部の斜視図である)、図9(b)(要部の断面図である))。
【0026】
ただし、第1中心導体2a及び第2中心導体2bの長手方向の長さが十分に短くなるように、第1中心導体2a及び第2中心導体2bの捻り目を外部導体4の外側に引き出している。このとき外部導体4からはみ出した部分は、ロウ付け後に削除しても良い。その場合は図9(c)(要部の断面図である)のようになる。
【0027】
また、中心導体2a、2bが両面導体間隙片37の導体表面38a、38bと不要な接触をすることを避けるため、貫通穴39の周りを大きくえぐる代わりに、第1電極8又は第2電極9にロウ付けされる部分のみに導体表面38a、38bを残し、他の部分では導体表面38a、38bを剥離しても良い(図9(d)(要部の断面図である))。
【0028】
また、中心導体2a、2bと両面導体間隙片37及び第1電極8若しくは第2電極9のロウ付けの際に中心導体2a、2bの周りに生じる空隙を埋めることが出来ることから、両面導体間隙片37と第1電極8及び第2電極9の間に高周波電力伝送構造体の構造部材とは異なる絶縁誘電体(例えばエポキシレジン又は光硬化レジン等)からなる絶縁部材43を用いる構成としてもよい(図9(e)(要部の断面図である))。
【0029】
また、絶縁片を用いずに、単に第1中心導体2a及び第2中心導体2bの捻り目を外部導体4の外側に引き出して外部導体4にロウ付けして、かつ外部導体4からはみ出した部分はロウ付け後に削除し、当該捻り目の存する第1電極8と第2電極9の間に上述の絶縁部材43を挿入するか又は絶縁部材43で埋めても良い(図9(f)(要部の断面図である))。
【0030】
いずれの場合も、第1電極8と第2電極9の間の間隙7は、各々外部導体4を剥離することにより形成した。ここで、中心導体2aと第2電極9の接合部、及び中心導体2bと第1電極8の接合部は、空間的な大きさを占める。その接合部における電極と両面導体間隙片37とのロウ付けをより確実にするため、外部導体4に切込み42を入れても良い(図9(g)(要部の斜視図である))。
【実施例4】
【0031】
図10はアンテナエレメント部41と電力伝送線35との電気的な接続に関するものであって、第4の実施例を示す。電力伝送線35は2つの中心導体2a、2bと絶縁誘電体3と外部導体4とを有する高周波電力伝送構造体から形成するとともに、アンテナエレメント部41をこの高周波電力伝送構造体の先端を用いて形成した。勿論、電力伝送線35は高周波電力伝送構造体と別体のものであっても良い。電力伝送線35の端にあたる絶縁誘電体3と外部導体4を掘り込むことで設けた第1電極8と電力伝送線35の間隙7’には、一方の面に導体表面38cを有する絶縁片(片面導体間隙片40)を用いた。片面導体間隙片40には、外部導体4とほぼ同じ外形形状になるように加工成形を行い、2つの貫通穴39を形成した。
【0032】
そして、片面導体間隙片40の導体表面38cを有しない側では、電力伝送線35側の中心導体2bと中心導体2aとを給電点34cを通じて電気的に接続するとともに、アンテナエレメント部41側の中心導体2bと電力伝送線35の外部導体4とを給電点34dを通じて電気的に接続した。一方で、片面導体間隙片40の導体表面38cを有する側では、電力伝送線35の中心導体2aとアンテナエレメント部41の第1電極8、及びこの中心導体2aと導体表面38cをそれぞれ電気的に接続し、これらについてロウ材45を用いてロウ付けした(図10(a)(要部の斜視図である))。
【0033】
ここで、中心導体2a、2bと片面導体間隙片40の導体表面38cが不要な接触をすることを避けるとともに、第1電極8と中心導体2aの電気的な接続を確実にするため、中心導体2a、2b及び外部導体4の結線を上述の図10(a)と同様にした上で、貫通穴39の周りを大きくえぐる代わりに、中心導体2aと第1電極8をロウ付けする部分のみに導体表面38cを残し、他の部分では導体表面38cを剥離しても良い(図10(b)(要部の斜視図である))。
【0034】
また、中心導体2aと片面導体間隙片40と第1電極8のロウ付けの際に、中心導体2aの周りに生じる空隙を埋めるため、中心導体2a、2b及び外部導体4の結線を上述の図10(a)と同様にした上で、片面導体間隙片40と第1電極8の間に上述の絶縁部材43を用いる構成としてもよい(図10(c)(要部の断面図である))。
【0035】
その一方で、単一の中心導体2dとその中心導体2dの周りに形成された絶縁誘電体3とその絶縁誘電体3の外周に形成された外部導体4からなる高周波電力伝送構造体から電力伝送線35を構成するとともに、電力伝送線35の中心導体2dとアンテナエレメント部41の第1の中心導体2a、及び電力伝送線35の外部導体4と第2の中心導体2bを、それぞれ電気的に接続するような構成としても良い(図10(d)(要部の斜視図である))。
【0036】
加えて、中心導体2aと第1電極8の接合部は空間的な大きさを占めることから、その接合部において第1電極8と片面導体間隙片40のロウ付けをより確実にするため、外部導体4に切込み42を入れても良い(図10(e)(要部の断面図である))。
【実施例5】
【0037】
図11は治療用アンテナプローブ24を通じて薬剤を注入する第5の実施例を示している。即ち、図11(a)(要部の正面図及び断面図である)に示すように鞘1の先端もしくは全体をサファイヤで製作し、その先端部に鞘1の内空に通じる孔18を設けた。そして、図11(b)(要部の断面図である)に示すように鞘1の内面に薬剤を導くための溝13cを設け、その溝13cに沿って薬剤輸送チューブ13dを設置し、鞘1の先端部に設けた孔18に繋いだ。ここで、アンテナエレメント部41は実施例1〜3に示したいずれの構成であっても良い。治療用アンテナプローブ24と接続された電力伝送線35は、複数の中心導体を有する高周波電力伝送構造体、又は単一の中心導体からなる高周波電力伝送構造体のいずれであっても良い。
【0038】
ここで、鞘1と第1電極8及び第2電極9等との間に薬剤輸送チューブ13dを設置する空間が十分あれば、溝13cがなくても良い。また必要なら、上述の如く、薬剤輸送チューブ13dを鞘1の先端に設けた孔18に直接接続しても良い。さらに、薬剤がアンテナエレメント部41に浸み込んでその電気特性が劣化することを防止するため、アンテナエレメント部41のみを樹脂によりコーティングしても良い。そのような樹脂として、光硬化樹脂や塩化ビニル系塗料を使用することができる。
【0039】
そして、薬剤を別途設けた薬剤輸送チューブ13e(図17に示す)より供給し、その先端部に設けた孔18を通じて制癌剤や抗癌剤の薬剤を病変組織に注入した。すなわち、この治療用アンテナプローブ24を注射用刺針としても同時に機能させた。
【0040】
加えて、図11(c)(要部の断面図である)に示すように、鞘1の側壁部に鞘1の内空に通じる孔18’を設け、(場合により上述の孔18に加えて)孔18’を通じて、制癌剤や抗癌剤の薬液を病変組織に注入する構成としても良い。
【0041】
その結果、治療用アンテナプローブ24による病変組織に対する温熱治療に伴って、制癌剤や抗癌剤を病変組織に注入することにより、腫瘍疾患の治療をより確実にすることができた。これにより、制癌剤や抗がん剤を治療用アンテナプローブ24と別に病変組織に注入することなく、生体への負担が少ない施術が可能となった。
【実施例6】
【0042】
本実施例に係る電磁治療用システム31は、図12(模式図である)で示すように、高周波電源21(高周波電源又はマイクロ波電源とも呼ばれる)と、高周波電源21に接続されたサーキュレータ22と、サーキュレータ22に接続された電力伝送線29と、この高周波電源21に電力分配器28を介して接続された電力測定器23とを有しており、電力測定器23の出力信号により元の高周波電源21が適正な電力を出力すべく制御されるように構成した。ここで、電力分配器28は高周波電源21の出力電力の大きさをモニタするためのものであり、電力測定器23に分配する高周波電源21の出力電力を僅かに分配するもので良い。さらには、電力分配器28は単なる高周波電力がモニタできる程度の結合器であっても良い。また、サーキュレータ22に抵抗器44を接続し、治療用アンテナプローブ24からの反射電力を吸収して電磁治療用システム31の安定動作を図る構成としても良い。
【0043】
さらに上述の電磁治療用システム31においては、電力伝送線29の先端にはコネクタ14を介して上述の治療用アンテナプローブ24を接続した。そして、電力伝送線29の外部導体は治療用アンテナプローブ24の第2電極9に、電力伝送線29の中心導体は治療用アンテナプローブ24の第1電極8に、それぞれ電気的に接続した。治療用アンテナプローブ24と接続された電力伝送線29は、複数の中心導体を有する高周波電力伝送構造体、又は単一の中心導体からなる高周波電力伝送構造体のいずれであっても良い。
【0044】
一方で、この電磁治療用システム31では、必要に応じて、さらに病変組織に穿刺挿入する温度センサ26を加え、この温度センサ26の出力信号によって高周波電源21の出力電力が制御されるシステム構成としても良い。温度センサ26は熱電対、白金熱センサのいずれであっても良い。病変組織の温度が蛋白分解温度(約42度)を大幅に超えて、係る病変組織を焼灼することを防ぐためである。それとともに、温熱治療を行っている間にわたって病変組織の温度を監視し、かつ高周波電源21の出力を適正な出力電力に制御するためでもある。
【0045】
本実施例では、高周波電源21から出力されるマイクロ波の周波数は2.45GHzを用いたが、他のマイクロ波周波数でも良い。例えば、米国で一般的に使用が認められる945MHzであっても良い。ただし、この場合は第1電極8及び第2電極9を設ける間隔を2.45GHzの周波数を用いる場合に比べて約2.6倍にする必要がある。
【実施例7】
【0046】
実施例6の治療用アンテナプローブ24の鞘1の内部に温度センサ26’を組み込んだ電磁治療用システム31’の実施例を図13(模式図である)に示す。ここで温度センサ26’は白金センサ、熱電対のいずれでも良い。また、サーキュレータ22に抵抗器44を接続し、治療用アンテナプローブ24からの反射電力を吸収して電磁治療用システム31’の安定動作を図る構成としても良い。なお、治療用アンテナプローブ24と接続された電力伝送線29は、複数の中心導体を有する高周波電力伝送構造体、又は単一の中心導体からなる高周波電力伝送構造体のいずれであっても良い。
【実施例8】
【0047】
また、実施例7に示す電磁治療用システム31を改変したものを図14(模式図である)に示す。本実施例に係る電磁治療用システム32では、電力測定器23に入力される電力を、実施例6に示す高周波電源21からの出力電力に加えて、高周波電源21に接続されたサーキュレータ22の残りのポートからの電力とした。このポートからの電力により、治療用アンテナプローブ24からの反射電力(P1)を測定できるからである。それにより、上記の反射電力(P1)と高周波電源21の出力電力(P0)との差分の電力を測定した。そして、生体組織への入力電力(P0−P1)を制御する目的として、制御ユニット25を用いて高周波電源21の出力電力(P0)を制御した。なお、治療用アンテナプローブ24と接続された電力伝送線29は、複数の中心導体を有する高周波電力伝送構造体、又は単一の中心導体からなる高周波電力伝送構造体のいずれであっても良い。
【0048】
その結果、高周波電源21の出力電力(P0)と治療用アンテナプローブ24からの反射電力(P1)との差分の電力(P2)の信号が上述の電力の測定により作られた。そして、高周波電源21の出力電力(P0)と反射電力(P1)との差分の電力(P2)は、治療用アンテナプローブ24から生体組織への入力電力(P3)と同視できるものとなった。従って、その差分の電力(P2)の信号により制御ユニット25を制御することにより、元の高周波電源21が生体組織に対して適正な電力を出力するように制御することができた。
【実施例9】
【0049】
本実施例では、上述の電磁治療用システムに対して、温度センサ26の計測温度の信号を制御ユニット25へと入力し、高周波電源21の制御を高周波電源21の出力電力のオンとオフにより行った。具体的には、図12に示す電磁治療用システム31において、高周波電源21の出力電力は電力供給期間と電力非供給期間とからなるパルス状の電力波形を有し、電力供給期間の出力電力を一定のものとし、かつ上述のように高周波電源21の出力電力をモニタしてその出力電力が過剰となれば高周波電源21の出力電力を停止するように設定した。更に、出力電力の電力供給期間は温度センサ26の出力信号によって監視及び制御される構成とした。温度センサ26を穿刺挿入した病変組織を治療範囲として局所的に焼灼されることを防ぎつつ、適切に加温させることができるからである。
【0050】
ここで、制御ユニット25の下限の制御設定温度TLは、病変組織の蛋白分解温度の近傍に設定した。そして、温度センサ26からの出力信号の示す温度が制御設定温度TLまで下がったときに、高周波電源21から所定の電力を出力させるように構成した。高周波電源21の出力電力は平均10ワットとして、50%のデューティーサイクル(電力供給期間が1周期中50%であり、かつ電力非供給期間とが1周期中50%である電力供給方法)で600秒間出力することを基本的な動作の設定条件とし、生体組織温度が44度を超えるとその期間は当該電力が出力されないように制御ユニット25を用いて上述の高周波電源21を制御した。
【0051】
本実施例では図15に示すように、制御ユニット25において、病変組織に穿刺挿入する温度センサ26の計測温度についての上限及び下限の制御設定温度としてTH及びTLを設定した。ここで、THで44度あり、TLが42.5度である。すなわち、生体組織に穿刺挿入された温度センサ26の計測信号がいったん44度に達すると、高周波電源21の出力電力(P0)のオン時の電力が出力されない。そのため生体組織の温度が低下した。その一方で、蛋白分解温度近くの42.5度に至ったときには、高周波電源21の出力電力(P0)のオン時の電力の出力が再開されるようにした。本実施例で用いた制御ユニット25は、計測温度の入力に対して、このようなヒステリシス制御ができるように構成した。
【実施例10】
【0052】
本実施例では、温度センサ26の出力信号を用いる方法を、図14に示す電磁治療用システム32において適用した。即ち、高周波電源21の出力電力は、電力供給期間の出力電力を一定のものとし、かつ上述のように高周波電源21の生体組織への入力電力(P3)をモニタしてその出力電力が過剰となれば高周波電源21の出力電力が停止するように設定した。温度センサ26の出力信号によって監視及び制御される構成は、上の実施例と同じとした。即ち、基本動作設定条件とし、生体組織温度が44度を超えると、その期間は当該電力が出力されないように、制御ユニット25を用いて高周波電源21を制御した。具体的には図15に示すように、制御ユニット25において、病変組織に穿刺挿入する温度センサ26の計測温度についての上限及び下限の制御設定温度としてTH及びTLを設定した。ここで、THが44度であり、TLが42.5度である。
【実施例11】
【0053】
本実施例では、図16(模式図である)に示すように、実施例8ないし10の治療用アンテナプローブ24の鞘1の内部に温度センサ26’を組み込んだ電磁治療用システム32’とした。
【実施例12】
【0054】
本実施例では、図17(模式図である)に示すように、上述の電磁治療用システム32について、実施例5で示した治療用アンテナプローブ24を用いて新たな電磁治療システム32”を構成した。ここで、薬剤輸送チューブ13eを薬剤供給ポンプ30につなぎ、この薬剤供給ポンプ30から鞘1の先端部に設けた孔18を介して、自動又は手動により薬剤を病変組織に注入した。電磁治療用システム32”としては図14に示す電磁治療用システム32と同様としており、電磁治療用システム32”に利用する高周波電源21の出力電力のモニタ方法や制御方法、温度センサ26の出力信号の使用方法も実施例8と同様とした。なお、治療用アンテナプローブ24と接続された電力伝送線29は、複数の中心導体を有する高周波電力伝送構造体、又は単一の中心導体からなる高周波電力伝送構造体のいずれであっても良い。
【0055】
この電磁治療用システム32を用い、実施例5の治療用アンテナプローブ24を用い、薬剤供給ポンプ30から薬剤輸送チューブ13eを介し、鞘1の先端部又は側壁部に穿たれた孔18、18’を通じて、自動又は手動により薬剤を病変組織に注入した。制癌剤や抗癌剤等の薬剤の注入の時期は、治療用アンテナプローブ24を病変組織に穿刺挿入した後で、高周波電源21の電力が供給される前、同時、又は後であっても良い。その注入の時期については、使用する制癌剤や抗癌剤等の薬剤により決めることができる。
【0056】
また必要なら、温度センサ26の出力信号を用いた制御ユニット25による、高周波電源21の出力電力の制御を行わない簡単な電磁治療用システム31であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】従来の形態に係る、第1電極及び第2電極からなる治療用アンテナプローブの、治療領域の模式図である。
【図2】従来の形態に係る、第1電極及び第2電極からなる治療用電極プローブの、SARから決まる軸方向zの温度分布である。
【図3】従来の形態に係る、バッファ電極を有する治療用アンテナプローブの要部断面図である。
【図4】従来の形態に係る、バッファ電極を有する治療用電極プローブのSARから決まる軸方向zの温度分布である。
【図5】本実施形態に係る治療用アンテナプローブの、(a)電界強度及び電流強度の分布の模式図と、(b)給電点が異なる位置にある形態の電界強度及び電流強度の分布の模式図である。
【図6】本実施形態に係る略円筒状導体ケーブルの、(a)要部正面図と、(b)半径方向面の断面図である。
【図7】実施例1に係る、略円筒状導体ケーブルからなる治療用アンテナプローブの、(a)要部断面図と、(b)要部正面図と、(c)給電点が異なる位置にある形態の要部断面図である。
【図8】実施例2に係る、収縮チューブを有する治療用アンテナプローブの、(a)要部断面図と、(b)要部正面図と、(c)給電点が異なる位置にある形態の要部断面図である。
【図9】実施例3に係る、第1電極と第2電極との接続部の、(a)要部斜視図と、(b)要部断面図と、(c)外部導体からはみ出した中心導体をロウ付け後に削除した形態の要部断面図と、(d)両面導体間隙片の導体表面の一部のみを残した形態の要部断面図と、(e)絶縁片と第1及び第2電極との間に絶縁部材を有する形態の要部断面図と、(f)絶縁片を用いずに第1電極と第2電極の間を絶縁部材で埋めた形態の要部断面図と、(g)外部導体に切込みを入れた形態の要部斜視図である。
【図10】実施例4に係る、アンテナエレメント部と電力伝送線との接続部の、(a)要部斜視図と、(b)両面導体間隙片の導体表面の一部のみを残した形態の要部斜視図と、(c)絶縁片と第1電極との間に絶縁部材を有する形態の要部断面図と、(d)単一の中心導体を有する電力伝送線を用いた形態の要部斜視図と、(e)外部導体に切込みを入れた形態の要部断面図である。
【図11】実施例5に係る、(a)孔が穿たれた治療用アンテナプローブの要部正面図及び要部側面図と、(b)先端に孔を穿たれた治療用アンテナプローブの要部断面図と、(c)先端及び側面に孔が穿たれた治療用アンテナプローブの要部断面図である。
【図12】実施例6及び実施例9に係る、高周波電源の出力電力をモニタする電磁治療システムの、回路構成の模式図である。
【図13】実施例7に係る、温度センサを治療用アンテナプローブの鞘の内部に有する電磁治療用システムの、回路構成の模式図である。
【図14】実施例8、実施例10及び実施例12に係る、治療用アンテナプローブからの反射電力を用いた電磁治療システムの、回路構成の模式図である。
【図15】実施例9及び実施例10に係る、電磁治療システムの制御ユニットによるヒステリシス制御の一例である。
【図16】実施例11に係る、温度センサを治療用アンテナプローブの鞘の内部に有する電磁治療用システムの、回路構成の模式図である。
【図17】実施例12に係る、薬剤供給ポンプを有する電磁治療システムの回路構成の模式図である。
【符号の説明】
【0058】
1、17 鞘
2、2d 中心導体
2a 第1中心導体
2b 第2中心導体
3 絶縁誘電体
4 外部導体
5 絶縁ジャケット
7、7’ 間隙
8 第1電極
9 第2電極
12 収縮チューブ
13c 溝
13d、13e 薬剤輸送チューブ
14 コネクタ
18、18’ 孔
20 バッファ電極
21 高周波電源
22 サーキュレータ
23 電力測定器
24 治療用アンテナプローブ
25 制御ユニット
26、26’ 温度センサ
28 電力分配器
29、35 電力伝送線
30 薬剤供給ポンプ
31,31’,32,32’,32” 電磁治療用システム
33 略円筒状導体ケーブル
34a、34b、34c、34d 給電点
36a 第1ダイポールアンテナ
36b 第2ダイポールアンテナ
36c 第3ダイポールアンテナ
37 両面導体間隙片
38a、38b、38c 導体表面
39 貫通穴
40 片面導体間隙片
41 アンテナエレメント部
42 切込み
43 絶縁部材
44 抵抗器
45 ロウ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中心導体と、
前記複数の中心導体の周りに形成された絶縁誘電体と、
前記絶縁誘電体の外周に形成された外部導体からなる高周波電力伝送構造体において、
当該外部導体の一部から構成されかつ相互に電気的に隔絶された第1電極と第2電極からなる電極対が複数形成され、
前記第1電極は一方の中心導体と接続されかつ前記第2電極は残りの中心導体に接続されて、
前記複数の電極対が絶縁体からなる鞘に収納されていることを特徴とする治療用アンテナプローブ。
【請求項2】
前記複数の電極対の間及び第1電極と第2電極との間は、当該外部導体の一部が剥離されて形成された間隙からなることを特徴とする請求項1に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項3】
前記第1電極と第2電極との間には、両面に導体表面を有する絶縁片であって当該導体表面が当該外部導体とほぼ同じ外形形状を有する前記絶縁片が挿入されていることを特徴とする請求項1及び2に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項4】
前記複数の中心導体が、高周波電源に接続された電力伝送線に電気的に結合されていることを特徴とする、請求項1及び2に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項5】
前記電力伝送線は請求項1に記載の高周波電力伝送構造体からなることを特徴とする、請求項4に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項6】
前記電力伝送線は単一の中心導体と当該中心導体の周りに形成された絶縁誘電体と当該絶縁誘電体の外周に形成された外部導体からなる高周波電力伝送構造体であることを特徴とする、請求項4に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項7】
前記電極対と前記電力伝送線との間には、一方の面に導体表面を備えており当該外部導体とほぼ同じ外形形状を有する絶縁片を有することを特徴とする請求項1,2、3及び4に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項8】
前記絶縁片と前記第1電極及び第2電極との間に絶縁部材を有することを特徴とする請求項3及び7に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項9】
前記絶縁片のうち前記第1電極及び第2電極にロウ付けされる部分のみに前記導体表面を有することを特徴とする請求項3及び7に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項10】
前記第1電極と第2電極との間には、高周波電力伝送構造体の構造部材とは異なる絶縁誘電体からなる絶縁部材であって当該外部導体とほぼ同じ外形形状を有する前記絶縁部材が具備されていることを特徴とする請求項1及び2に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項11】
前記鞘の先端部に前記鞘の内空に通じる孔が穿たれていることを特徴とする請求項1に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項12】
請求項11記載の治療用アンテナプローブには更に前記鞘の側壁部にその内空に通じる孔が穿たれていることを特徴とする治療用アンテナプローブ。
【請求項13】
前記鞘には温度センサが収納されていることを特徴とする請求項1、2及び3に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項14】
前記鞘がサファイヤからなることを特徴とする請求項1、2及び3に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項15】
前記中心導体を2つ有するとき、前記治療用アンテナプローブの前記絶縁誘電体の比誘電率をε、当該治療用アンテナプローブに給電される電磁波の真空中の波長をλ、前記外部導体の内径をD、前記中心導体間の距離をd、前記中心導体の直径をaとすると、前記第1電極と第2電極の軸方向の長さLが大略

ただし、

かつ

であり、
または3つの前記中心導体を有するときは

であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7及び9に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項16】
前記鞘が着色されていることを特徴とする請求項1、11、12、13及び14に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項17】
高周波電源と、
前記高周波電源に接続されたサーキュレータと、
前記サーキュレータに前記電力伝送線を介して接続された請求項1、2、3、13、14又は15に記載の治療用アンテナプローブと、
前記サーキュレータと前記高周波電源に電力分配器を介して接続された電力測定器と、
前記電力測定器の出力信号により前記高周波電源の出力電力を制御する制御ユニットと、からなる電磁治療システム。
【請求項18】
前記電磁治療システムには、さらに温度センサが含まれてなり、
前記温度センサの出力信号は前記制御ユニットに入力され、
前記温度センサの出力信号により前記高周波電源の出力電力が制御されていることを特徴とする請求項17に記載の電磁治療システム。
【請求項19】
前記電力測定器の出力信号は、
前記高周波電源の出力電力と前記サーキュレータを介して得られる前記治療用アンテナプローブからの反射電力との差分の電力と、
前記温度センサからの出力信号と、
によって制御されていることを特徴とする請求項17及び18に記載の電磁治療システム。
【請求項20】
前記高周波電源の出力電力は電力供給期間と電力非供給期間とからなるパルス状の電力波形であって、電力供給期間の出力電力が設定されており、かつ前記出力電力の電力供給期間が少なくとも前記温度センサの出力信号によって制御されていることを特徴とする請求項17、18及び19に記載の電磁治療システム。
【請求項21】
前記電磁治療システムには、さらに薬剤供給ポンプが含まれていることを特徴とする請求項12、17、18、19及び20に記載の電磁治療システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−54708(P2008−54708A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231559(P2006−231559)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000240477)並木精密宝石株式会社 (210)
【Fターム(参考)】