説明

法面保護壁材設置用固定補助具および法面保護壁材設置固定方法

【課題】凹凸のある法面であっても、コストを抑えて効率的に保護壁を構築する。
【解決手段】法面に壁材301を敷設するに際し、法面保護壁材設置用固定補助具101の両端部に形成された孔の一方である引掛部111を、壁材301のフック部311に引っ掛け、フック部311を支点にして、法面保護壁材設置用固定補助具101を上下左右にスイングさせて、その係合部121を、杭材201を打ち込むのに適した陥没部Bの底位置に移動させ、この移動させた位置にて杭材201を、係合部121に、頭部221を係合させつつ法面へ略垂直に打ち込んで、杭部211を法面の地中に埋没させ、陥没部Bが散在する法面であっても、壁材301を効率よく法面へ敷設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路や河川などの両脇にある盛土、切土の法面を被覆保護するのに用いられるコンクリート壁材等を、施工の合理化、コスト削減を可能にして所定の位置に敷設する法面保護壁材設置用固定補助具および法面保護壁材設置固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路や河川の両脇にある盛土、切土の法面は、一般に、例えば、コンクリート製の擁壁(ブロック)などにより被覆保護されている。従来、このコンクリート製の擁壁ブロックの施工では、例えば、表面積が1〜2m2、厚み10〜35cm、重量が200〜500kg前後のものをそのまま重機で積み上げ、その自重を利用して法面に重石のように敷設して固定することにより行われている。したがって、擁壁ブロックには重石となり得る重さが必要であり、軽量化が困難であるという課題とともに、重機や吊り上げるための機械を使うため、施工の合理化やコスト削減が困難になっている。
【0003】
これに対し、出願人は、例えば下記特許文献1にて、壁材を人力で所定の位置に敷設して保護壁を構築することができるとともに、この構築した保護壁を固定する部材を法面の盛土、切土内に埋設することができて、保護壁を安定に固定することができ、かつ、保護壁の法面からの距離を一定にすることを可能にして外観も審美にしつつ、大幅な施工の合理化、コスト削減を実現する法面壁材設置用固定具とこれを用いた壁材施工方法を提案している。
【0004】
具体的には、棒状の支持アーム部と、この支持アーム部の一端に設けられた壁材受部と、支持アーム部の他端に設けられた杭部とからなり、支持アーム部が壁材受部を回転軸として回転するときに描く円弧に倣って、杭部が湾曲させられてなる法面壁材設置用固定具と、これを用いた壁材施工方法を提案している。
【0005】
上記提案では、法面壁材設置用固定具の杭部を、壁材受部を回転軸として支持アーム部が回転するときに描く円弧線上にて法面の盛土、切土内に埋設することにより、壁材を法面から常に目標とする一定の位置(高さ)に敷設することができ、杭部が法面の盛土、切土内に埋設されるため、壁材が軽量化されたものであっても、壁材を固定した後も安定してその場に維持することができるようになった。しかも重機や吊り上げるための機械を使わないために、大幅な施工の合理化、コスト削減が実現され、施工した壁材を並べて高さが揃った保護壁として、道路や河川の両脇にある盛土、切土を被覆保護することができるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−265660号公報
【0007】
ここで、被覆保護する法面の多く、例えば、切土により形成された法面の多くでは、その表面に、深さや高さが10cm前後の陥没部や突出部等が散在している。したがって実際に施工する際には、凸凹のある法面に壁材を固定していくことになる。そうすると、長さが一定の棒状の杭材を用いて壁材を固定し、保護壁を構築する場合、切土の法面の突出部に対しては、杭材が抜けないようにするために必要な深さ(例えば、杭材は一般に設計杭長が10cm前後のものが使われている。)以上に深く打ち込まなければならない一方、陥没部に対しては、必要な深さの打ち込みができない場面が生じる。
【0008】
このため、図8に示すように、陥没部Bにおいて必要な深さの打ち込みを確保するため、突出部Aにて必要以上に深く打ち込まなければならない問題を無視し、すなわち作業能率の低下を甘受して、杭材について、例えば、設計杭長が20cm以上となる長い杭材longを用いる等により壁材Cを高さを揃えて固定し、保護壁を構築して対応している実情がある。一方で、作業能率の低下を避けようとすれば、例えば、突出部Aに対して設計杭長が10cm前後の杭材で打ち込み、陥没部Bに対して設計杭長が20cm以上の杭材longで打ち込む作業を行うことになるため、長さの異なる杭材を数種類揃えて施工現場に持ち込む、といった対応に迫られることになる。
【0009】
しかし、長さの異なる杭材がそれぞれ、どの程度必要になるかについては、法面に壁材Cを実際に並べて敷設しようとするときに初めて分かる事柄であるため、長さの異なる杭材を数種類揃えて施工現場に持ち込むという対応は現実的でない。この対応はまた、コストアップに繋がる事柄としても問題がある。また、必要以上に深く打ち込まなければならない問題は、切土により形成された法面の地質が往々にして硬いので、施工期間の長期化にも影響し、作業能率の低下をこれ以上甘受することは非常に困難なのが実情である。
【0010】
なお、特許文献1にて提案した法面壁材設置用固定具を用いた場合、杭部を法面の盛土、切土内に、壁材受部を回転軸として支持アーム部が回転するときに描く円弧線上で埋設することができるので、凸凹のある法面においても壁材を高さを揃えて敷設することができるものの、陥没部に壁材を固定しようとしたとき、法面に対し、杭としての役割を果たす支持アーム部が倒れて固定される場合も想定され、壁材を支持するのに求められる支持力が不足するおそれが生じる。したがって、杭としての役割を果たすために、支持アーム部の長さが異なる法面壁材設置用固定具を数種類用意することが必要になって、適用することが難しいのが実情であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、保護壁を構築する法面に陥没部や突出部等が存在する場合、長さの異なる杭材を数種類、どのような法面にも対応できるような数量で施工現場に持ち込むといった作業の無駄や、必要以上に深く打ち込まなければならず、作業能率の低下が避けられないという問題が生じていた。作業の無駄、作業能率の低下は、すなわち施工の合理化を後退させ、コストも増加させる要因となる。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑み提案されたもので、道路や河川などの両脇にある盛土、切土の法面を被覆保護するのに用いられるコンクリート壁材等を、所定の位置に敷設することができ、特に、法面に陥没部や突出部等が存在した場合にも、施工の合理化、コスト削減を進めることができる法面保護壁材設置用固定補助具、法面保護壁材設置固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は、杭材を利用し、裏面にフック部が設けられた壁材を法面に敷設して固定するのを補助する法面保護壁材設置用固定補助具であって、一端部に前記フック部に引っ掛かる引掛部、他端部に前記杭材に係合する係合部がそれぞれ設けられ、この係合部が、前記引掛部を引っ掛けた前記壁材のフック部を支点にして、所定位置に位置するように移動させられた後、この移動させられた所定位置にて、前記杭材が法面へ向けて打ち込まれる際に前記杭材に係合されてなることを特徴とする。
【0014】
さらに、上記壁材には、他の壁材と互いに嵌合可能となる凹部と凸部とがそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る法面保護壁材設置固定方法は、上記法面保護壁材設置用固定補助具を用い、前記引掛部を前記壁材のフック部に引っ掛けるとともに、前記係合部を、前記フック部を支点にして所定位置に位置するように移動させた後、この移動させた所定位置にて、前記杭材を前記係合部に係合させつつ法面に対して概ね垂直になるように打ち込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、一端部に壁材のフック部に引っ掛かる引掛部、他端部に杭材に係合する係合部がそれぞれ設けられた法面保護壁材設置用固定補助具であって、杭材を利用し、裏面にフック部が設けられた壁材を法面に敷設して固定するのを補助することができる。具体的には、引掛部を壁材のフック部に引っ掛けるとともに、係合部を、フック部を支点にして所定位置に位置するように、例えば、上下左右にスイングして所定位置に移動させた後、この移動させた所定位置にて、杭材を係合部に係合させつつ法面へ概ね垂直に打ち込むことにより、法面保護壁材設置用固定補助具が、凹凸ある法面であっても杭を壁材(法面)に対し概ね垂直に打ち込むことを可能にする関節のような役割を果たすため、道路や河川などの両脇にある盛土、切土の法面を被覆保護する壁材を、所定の位置に合理的に敷設することができる。
【0017】
特に、引掛部を引っ掛けた壁材のフック部を支点に、法面保護壁材設置用固定補助具を上下左右にスイングさせれば、その係合部を、杭材を打ち込むのに適した法面の所定位置まで移動させることができるので、法面に陥没部や突出部等が存在した場合であっても、その関節のような役割によって、所定位置にて杭材を、必要以上に深くすることなく、あるいは、固定に必要な深さまで打ち込めないといったこともなく、係合部に係合させつつ法面へ概ね垂直になるように打ち込むことができる。すなわち、用意する杭材を一種類(例えば、設計杭長が10cm前後のもののみ)で済ませることができる。したがって、本発明の法面保護壁材設置用固定補助具を用いれば、法面に陥没部や突出部等が存在した場合にも、施工の合理化、コスト削減を進めながら、非常に効率的に壁材を法面に敷設することができる。当然、長さの異なる杭材を数種類、どのような法面にも対応できるような数量で施工現場に持ち込むといった作業の無駄も解消される。なお、本発明は、法面に陥没部や突出部等が存在しないような施工現場にも当然に、適用可能である。
【0018】
また、本発明において、他の壁材と互いに嵌合可能となる凹部と凸部とがそれぞれ設けられている壁材を用いれば、壁材と壁材とが互いに確実に嵌合し、壁材同士の高さが揃った保護壁を容易に実現することができる。したがって、本発明の法面保護壁材設置用固定補助具による施工の合理化、コスト削減等が可能で、かつ非常に効率的な壁材の法面敷設が、さらに強力で有効なものとなる。
【0019】
また、本発明は、上記法面保護壁材設置用固定補助具を用い、引掛部を壁材のフック部に引っ掛けるとともに、係合部を、フック部を支点にして所定位置に位置するように上下左右にスイングして移動させた後、この移動させた所定位置にて、杭材を係合部に係合させつつ法面に打ち込む法面保護壁材設置固定方法であるので、道路や河川などの両脇にある盛土、切土の法面を被覆保護するのに用いる壁材を、法面に陥没部や突出部等が存在した場合にも、施工の合理化、コスト削減を進めながら、非常に効率的に壁材を敷設する(ひいては保護壁を構築する)ことができる施工方法として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る実施形態(実施例1)において、凹凸のある法面に壁材を敷設している様子を概略にて説明する概略説明図である。
【図2】実施例1における法面保護壁材設置固定方法に用いる構成部品を説明する説明図であって、(A)〜(C)は、壁材示し、(D)は、杭材を示し、(E)は、本発明に係る法面保護壁材設置用固定補助具の一例を示している。
【図3】実施例1における法面保護壁材設置固定方法を工程順に説明する説明図であって、(A)は、法面保護壁材設置用固定補助具を上下左右にスイングさせ、凸凹のある法面の適した位置(所定位置)に移動させている様子を示し、(B)は、所定位置にて杭材を係合部に係合させつつ法面に打ち込んでいる様子を示し、(C)は、法面保護壁材設置用固定補助具を用いて壁材が法面に敷設された様子を示している。
【図4】図3(C)に関し、描写する範囲を拡げて説明する説明図である。
【図5】実施例1における法面保護壁材設置固定方法によって凸凹のある法面に壁材が敷設され、構築された保護壁の概略外観を示す概略説明図である。
【図6】本発明に係る他の実施形態(実施例2)において、凹凸のある法面に壁材を敷設している様子を概略にて説明する概略説明図である。
【図7】実施例2における法面保護壁材設置固定方法によって凸凹のある法面に合理的に構築された保護壁の様子を、説明のため図3(C)に対応させて描写した概略説明図である。
【図8】従来の施工方法により凹凸のある法面に壁材を敷設している様子を概略にて説明する概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のいくつかの実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0022】
(実施例1)
本発明の実施例1に係る法面保護壁材設置固定方法は、図1に示すように、杭材201を利用し、裏面にフック部311が設けられた壁材301を法面に敷設して固定するのを補助する法面保護壁材設置用固定補助具101を用い、法面への壁材301の合理的な敷設を可能にするものである。具体的には、一端部にフック部311に引っ掛かる引掛部111、他端部に杭材201に係合する係合部121がそれぞれ設けられた法面保護壁材設置用固定補助具101により、引掛部111を壁材301のフック部311に引っ掛けるとともに、フック部311を支点にして係合部121を所定位置に位置するように、例えば、上下左右にスイングして所定位置に移動させ、この移動させた所定位置にて、杭材201を係合部121に係合させつつ法面へ略垂直に打ち込む、といった施工方法である。
【0023】
実施例1に係る法面保護壁材設置固定方法に用いる構成部品は、図2に示すとおりである。すなわち、図2(A)〜(C)に示すように、壁材301は、例えば、鉄筋を埋設させたコンクリート製の矩形状壁材であり、正面の高さが300mmで、横幅が900mmで、厚さが35mmの長方形をしている。背面の左右(横幅)の端から1/6ずつ、例えば、135mm内側へ寄った上下には、周縁から外側へ内寄りに突出しているフック部311が、先端が壁材301の表面側に向くようにして設けられている。なお、壁材301は、厚さが60mm以下で、重量が一枚当たり40kg以下の薄板状の軽量のものであればよい。例えば、重量が同20kg以下となれば、人力で容易に持ち運べるので、施工が効率化し、好ましい実施形態であるといえる。また、フック部311については、周縁から外側へ壁材301に対し略垂直に突出していても実施可能である。図2(D)に示すように、杭材201は、地中に埋め込まれる杭部211と、法面保護壁材設置用固定補助具101の係合部121に係合する頭部221とからなり、設計杭長が100mm前後、例えば、125mmのものが用いられる。
【0024】
法面保護壁材設置用固定補助具101は、図2(E)に示すように、例えば、金属製の平板が用いられる。この平板状の法面保護壁材設置用固定補助具101の両端部には、それぞれ引掛部111や係合部121となる孔が設けられている。この孔は、壁材301のフック部311の先端に引っ掛かる径を有し、また、杭材201が法面へ向けて打ち込まれる際に、杭材201の杭部211に貫通され、杭材201の頭部221と係合するのに適した径を有している。なお、図2(E)に示す法面保護壁材設置用固定補助具101の孔は、径(例えば、直径7mmである。)が同一であって、しかも、左右(横幅)の端から同一の位置に形成されている。したがって、実施例1の実施にあたり、両端部の孔のいずれもが引掛部111又は係合部121となり得るので、施工が効率的に進むようになる。
【0025】
次に、図1および図3(A)〜(C)に基づいて、実施例1に係る法面保護壁材設置固定方法を工程順に説明する。なお、以下の説明では、法面に散在している陥没部Bにて杭材201を打ち込んで壁材301を法面に敷設しなければならなかったシーンを例に述べる。
【0026】
まず、図3(A)に示すように、法面に壁材301を敷設するに際し、法面保護壁材設置用固定補助具101の両端部に形成された孔のいずれか一方(引掛部111)を、壁材301のフック部311に引っ掛ける。続いて、フック部311を支点にして、法面保護壁材設置用固定補助具101である平板を上下左右にスイングさせて、フック部311に引っ掛けられていない孔(係合部121)を、杭材201を打ち込むのに適した陥没部B内の位置、例えば、陥没部Bの底位置に移動させる。
【0027】
さらに、図3(B)および図1に示すように、この移動させた位置にて杭材201を、法面保護壁材設置用固定補助具101の孔(係合部121)に、頭部221を係合させつつ法面へ略垂直に打ち込んで、杭部211を法面の地中に埋没させる。これにより、実施例1に係る法面保護壁材設置固定方法では、図3(C)および図1に示すように、凹凸ある法面であっても、壁材301を効率よく法面へ敷設することができる。なお、壁材301を効率よく法面へ敷設した後には、法面の凹凸をなだらかなものに整備するため、砂利等で陥没部Bを均すようにすることが好ましい。
【0028】
実施例1に係る法面保護壁材設置固定方法では、フック部311を支点にして、法面保護壁材設置用固定補助具101を上下左右にスイングさせて、係合部121を陥没部Bの杭材201を打ち込むのに適した法面の位置に移動させればよいので、図4に示すように、杭材201を打ち込む位置が陥没部Bであろうと、突出部Aであろうと、それ以外の比較的平滑な表面であろうと関係なく、壁材301を効率よく法面に敷設することができる。すなわち、法面保護壁材設置用固定補助具101という関節のような役割を果たすものの存在により、法面の凸凹が、施工の効率に影響することがなくなる。特に、用意する杭材201は一種類(例えば、125mmのもののみ)でよいので、長さの異なる杭材を数種類、どのような法面にも対応できるような数量を揃えて施工現場に持ち込むといった作業の無駄や、必要以上に深く打ち込まなければならないといった作業能率の低下を回避することができる。
【0029】
上述した工程順に実施例1に係る法面保護壁材設置固定方法を繰り返せば、法面に陥没部Bや突出部Aが散在することに施工の効率が影響されることなく、図5に示すような保護壁を合理的に完成させることができる。なお、図5に示すように、法面の高さ方向に壁材301を建て並べるに際し、下段の壁材301と上段の壁材301と左右方向にずらして敷設すれば、構築された保護壁の外観を審美にすることができる。
【0030】
したがって、本発明に係る法面保護壁材設置固定方法では、本発明である法面保護壁材設置用固定補助具101を用い、引掛部111を壁材301のフック部311に引っ掛けるとともに、フック部311を支点にして係合部121を、杭材201を打ち込むのに適した法面の位置(例えば、陥没部B内の底位置)に、上下左右にスイングして移動させ、この移動させた位置にて、杭材201を係合部121に係合させつつ法面へ略垂直に打ち込むことで、効率よく壁材3Aを法面に敷設することができ、長さの異なる杭材を数種類、どのような法面にも対応できるような数量を揃えて施工現場に持ち込むといった作業の無駄や、必要以上に深く打ち込まなければならないといった作業能率の低下を回避することができる。特に、用意する杭材201は一種類でよく、施工の合理化、コスト削減を大幅に進めることが可能である。
【0031】
(実施例2)
ここで、本発明は、実施例2として図6に示すように、他の壁材302と互いに嵌合可能となる凹部322と凸部332とがそれぞれ設けられた壁材302を用いることで、壁材302が互いに確実に嵌合し、壁材302同士の高さが揃った保護壁を容易に実現することができる。
【0032】
具体的には、図6に示すように、壁材302が、その厚みの部分であって、法面の高さ方向の上部に凸部332が設けられ、法面の高さ方向の下部に凹部322が設けられて構成されている。また、裏面にはフック部として、周縁から突出しないU字状又はV字状フック部312が設けられている。
【0033】
さらに、図7に示すように、法面保護壁材設置用固定補助具102は棒材で構成され、U字状又はV字状のフック部312に、引っ掛けるようにするため、引掛部がJ字状引掛部112として形成されている。また、係合部は環状係合部122として形成されているが、実施例1のような孔を形成した形態であってもよい。
【0034】
なお、フック部31Bが周縁から突出しないU字形状又はV字形状であるのは、壁材302を法面へ敷設するに際し、法面保護壁材設置用固定補助具102の引掛部112をフック部312に引っ掛けるとき、凸部332が障害にならないようにするためである。ちなみに、杭材202については、実施例1にて用いたもので対応することが可能である。
【0035】
実施例2に係る法面保護壁材設置固定方法の工程は、実施例1と同様にすればよい。そして、実施例2に係る法面保護壁材設置固定方法によっても、壁材302同士の高さが揃った保護壁を実現することができる。すなわち、法面保護壁材設置用固定補助具102も実施例1と同様に、関節のような役割を果たして、法面に陥没部や突出部が散在することで施工効率が低下するといったことなく、保護壁を合理的に完成させることができる。
【0036】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示して詳述したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【0037】
例えば、安全性を確保することができる範囲で、壁材、法面保護壁材設置用固定補助具、杭材の材質について公知のものを採用すればよい。また、壁材、法面保護壁材設置用固定補助具、杭材の製造は、周知の技術手段で形成可能である。また、これらの構成部品は、被覆保護しようとする法面の形態等に対応させて適宜、材質や形状等を改良することができるので、本発明は、多数の実施形態を含むことになる。なお、本発明を用いて構築する保護壁は、1つ1つの壁材を建て並べて構築していくものであるので、道路や河川などが進行方向に沿って曲線的な盛土、切土の法面を被覆保護するにも適している。
【0038】
また、例えば、杭材には、盛土、切土の地中に埋没される杭部を2つ備えるU字状又はV字状の杭材を用いてもよい。U字状又はV字状の杭材(例えば、U字アンカー)を用いれば抜けにくくなるので、壁材を法面により確実に固定、敷設する手段としてさらに有効である。
【符号の説明】
【0039】
101・・法面保護壁材設置用固定補助具(実施例1)
111・・孔(引掛部)
121・・孔(係合部)
102・・法面保護壁材設置用固定補助具(実施例2)
112・・J字状引掛部(引掛部)
122・・環状係合部(係合部)
201・・杭材(実施例1)
211・・杭部
221・・頭部
202・・杭材(実施例2)
301・・壁材(実施例1)
311・・フック部
302・・壁材(実施例2)
312・・U字状又はV字状フック部
322・・凹部
332・・凸部
A・・・・突出部
B・・・・陥没部
C・・・・壁材
long・杭材(従来)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭材を利用し、裏面にフック部が設けられた壁材を法面に敷設して固定するのを補助する法面保護壁材設置用固定補助具であって、
一端部に前記フック部に引っ掛かる引掛部、他端部に前記杭材に係合する係合部がそれぞれ設けられ、
この係合部が、前記引掛部を引っ掛けた前記壁材のフック部を支点にして、所定位置に位置するように移動させられた後、この移動させられた所定位置にて、前記杭材が法面へ向けて打ち込まれる際に前記杭材に係合されてなる、
ことを特徴とする法面保護壁材設置用固定補助具。
【請求項2】
前記壁材には、他の壁材と互いに嵌合可能となる凹部と凸部とが設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の法面保護壁材設置用固定補助具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の法面保護壁材設置用固定補助具を用い、
前記引掛部を前記壁材のフック部に引っ掛けるとともに、前記係合部を、前記フック部を支点にして所定位置に位置するように移動させた後、この移動させた所定位置にて、前記杭材を前記係合部に係合させつつ法面に打ち込む、
ことを特徴とする法面保護壁材設置固定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−184605(P2012−184605A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49106(P2011−49106)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(393010215)
【Fターム(参考)】