説明

泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤

【課題】毛髪への塗布時には泡沫により毛髪全体に均一に塗布し易く、塗布後はアミノ酸や水溶性アミノ酸誘導体による毛髪補修効果と、高重合ジメチルポリシロキサンによる毛髪のなめらかな感触の付与及びその持続性に優れた泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤を提供すること。
【解決手段】(A)重合度2000〜10000の高重合ジメチルポリシロキサン、(B)アミノ酸及び/又はその水溶性誘導体、(C)陽イオン性セルロース誘導体及び/又は非イオン性セルロース誘導体及び(D)水を含有する原液と、噴射剤とからなり、原液と噴射剤の配合質量比(原液)/(噴射剤)が70/30〜97/3の範囲内にあることを特徴とする泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤に関し、更に詳しくは、泡沫により毛髪全体に均一に塗布し易く、アミノ酸や水溶性アミノ酸誘導体による毛髪補修効果と、高重合ジメチルポリシロキサンによる毛髪のなめらかな仕上がり及びその持続性を同時に効率的に毛髪に付与することができる泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の毛髪に対する化粧行為は益々多様化しており、通常のドライヤーブローによるブラッシングに加えて、還元剤や酸化剤等を用いたカラーリング処理やパーマネントウェーブ処理等も広く一般に行われるようになってきている。それにつれて、日光や乾燥等の環境因子による毛髪ダメージに加えて、これら処理による毛髪のダメージも増加しており、ドライヤーブローやブラッシングによる物理的ダメージや、毛髪にカラーリング剤やパーマネントウェーブ剤の使用に起因する化学的ダメージを負う人も増加している。
【0003】
このような中、アミノ酸類やペプタイド類を使用することにより、ダメージのある毛髪を補修する毛髪用の組成物が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
また、毛髪表面にシリコーン化合物等の摩擦低減効果のある化合物を付着させて毛髪になめらかな感触を付与すればブラッシング等による物理的ダメージも低減することができる。特に、高分子量のシリコーン化合物を用いた場合には、毛髪への付着後に他へ再付着することが少ないため、毛髪のなめらかな感触が持続する効果が高い。このような高分子量シリコーンを使用するものとして、重合度が3000〜20000という大きな重合度の高分子量シリコーンを用い、毛髪等に光沢となめらかな感触を付与する組成物が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
更に、高分子量シリコーンを使用する技術として、一般に重合度が2000以上の高分子量シリコーンはこれを乳化することが容易でないことから、水性媒体の組成物に配合し易くするため乳化重合法により高分子量シリコーンの水中油型エマルジョンを調製し、配合する毛髪用の組成物も提案されている。(例えば、特許文献3参照。)
【特許文献1】特開2006−182743号公報
【特許文献2】特開平11−263712号公報
【特許文献3】特開平10−7534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境因子によるダメージや物理的ダメージ、化学的ダメージ等、種々のダメージを有する毛髪に対し、上記アミノ酸類等の毛髪補修成分と高分子量シリコーン等の摩擦低減効果のある化合物を併用すれば、毛髪が受けたダメージを補修すると共に、物理的ダメージに対しても毛髪を保護することができ、良好なヘアトリートメント効果を得ることができる。しかしながら、アミノ酸類等の毛髪補修成分は水溶性であることが多く水性の溶媒中に配合されるのに対し、高分子量シリコーンは水性の溶媒中には溶解しないため油性の溶媒中に配合する必要がある。従って、アミノ酸類等の毛髪補修成分と高分子量シリコーンとを1剤中に併用配合し安定な毛髪用製品とするには、アミノ酸類等を含有する水性溶媒と高分子量シリコーンを含有する油性溶媒とを乳化することにより、乳化物として1剤化する方法がある。
【0005】
しかしながら、高分子量シリコーンを乳化するには比較的多い量の界面活性剤を必要とするため界面活性剤によるべたつきが生じ、毛髪に塗布した後に高分子量シリコーンが本来有する毛髪になめらかな感触を付与する効果が十分に得られない場合があった。また、乳化重合法等により得られた高分子量シリコーンエマルジョンを使用した場合は、アミノ酸類等を含有する水性溶媒への配合は容易となるが、乳化重合において使用された比較的多い量の界面活性剤がやはり高分子量シリコーンが本来有する毛髪へのなめらかな感触の付与効果を妨げる場合があった。
従って、本発明の解決しようとする課題は、毛髪に塗布し易く、アミノ酸や水溶性アミノ酸誘導体による毛髪補修効果と、高分子量シリコーンが本来有する毛髪へのなめらかな感触の付与効果の両方を同時に得ることができるヘアトリートメント剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情において本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定重合度の高重合ジメチルポリシロキサン又はその油性溶媒溶液と、毛髪補修効果を有するアミノ酸や水溶性アミノ酸誘導体と、陽イオン性セルロース誘導体及び/又は非イオン性セルロース誘導体と、更に水を組み合わせて原液とし、噴射剤を用いて泡沫エアゾール型としたヘアトリートメント剤が上記課題を解決することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、次の成分(A)〜(D);
(A)重合度2000〜10000の高重合ジメチルポリシロキサン
(B)アミノ酸及び/又はその水溶性誘導体
(C)陽イオン性セルロース誘導体及び/又は非イオン性セルロース誘導体
(D)水
を含有する原液と、噴射剤とからなり、原液と噴射剤の配合質量比(原液)/(噴射剤)が70/30〜97/3の範囲内にあることを特徴とする泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、更に成分(E)として、上記成分(A)の溶媒を原液中に含有することを特徴とする上記の泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、上記成分(B)のアミノ酸及び/又はその水溶性誘導体が、N−アシルグルタミン酸リジン縮合物及び/又はL−テアニンであることを特徴とする上記の泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤を提供するものである。
【0010】
更に本発明は、原液100質量部中における成分(A)の含有量が0.1〜10質量部、成分(B)の含有量が0.001〜5質量部、かつ、成分(C)の含有量が0.01〜1質量部であることを特徴とする上記の泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤は、毛髪への塗布時は泡沫により毛髪全体に均一に塗布し易く、塗布後はアミノ酸や水溶性アミノ酸誘導体による毛髪補修効果と、高重合ジメチルポリシロキサンによる毛髪のなめらかな感触の付与及びその持続性に優れるものであり、ヘアトリートメント剤として優れた品質を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
【0013】
本発明に用いられる成分(A)は重合度が2000〜10000の高重合ジメチルポリシロキサンであり、粘度にして約70万mm/s以上の高分子量シリコーンの1種である。本発明において成分(A)は、本発明の効果が十分に得られ、かつ、製造時に取り扱い易い点で、重合度2200〜4200(粘度約100万mm/s〜約10000万mm/sに相当)、とりわけ重合度2200〜3300(粘度約100万mm/s〜約1000万mm/sに相当)の高重合ジメチルポリシロキサンが好ましい。成分(A)は原液と噴射剤からなる本発明の泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤においてその原液中に配合され、再移りしにくい薄い皮膜を毛髪表面に形成してなめらかな感触を付与し、その感触を持続させる。そして、ブラッシング等における摩擦を低減し、毛髪の物理的ダメージを低減することができる。
【0014】
本発明において成分(A)は、重合度の異なる1種又は2種以上を併用して用いることができ、その配合量はとくに制限はないが、本発明の効果を十分に享受するためには、原液100質量部中0.1〜10質量部(以下、「質量部」を単に「部」と略記する)を配合することが好ましく、特に0.5〜5部が好ましい。
本発明における成分(A)として、例えばKF96H−100万(信越化学工業社製)、油性溶媒溶液としてBY11−003、BY11−007(以上、東レ・ダウコーニング社製)、東芝シリコーンTSE−200、TSE−200A(以上、東芝シリコーン社製)等の市販品を使用することができる。
【0015】
本発明に用いられる成分(B)のアミノ酸及び/又はその水溶性誘導体は、毛髪の表面や内部がダメージを受けて損傷した部分をケアする水溶性の毛髪補修成分であり、具体的にはグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、ヒドロキシリジン、アルギニン、ヒスチジン、シスチン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、オルチニン、シトルリン、テアニン、N−アセチルグルタミン、N−アセチルグルタミン酸、N−アセチルシステイン、グリシルグリシン、トリメチルグリシン、N,N’−ジアセチルシスチンジメチル、N−アシルグルタミン酸リジン縮合物等を例示することができる。本発明においては、これらのうち毛髪補修効果が良好な点でテアニン、N−アシルグルタミン酸リジン縮合物が好ましく、特にL−テアニン、N−アシル−L−グルタミン酸−L−リジン縮合物が好ましい。
【0016】
上記N−アシルグルタミン酸リジン縮合物は、例えば特開2006−137686号公報において成分(A)として開示される化合物のうちの1つであり、下記一般式(1)で示されるN−アシルグルタミン酸2分子とリジン1分子が縮合した化合物である。
【化1】

【0017】
上記一般式(1)において、m、nはこれらのうち一方が2であり、他方が0である。p、qはm、nとは独立にこれらのうち一方が2であり、他方が0である。即ち、上記N−アシルグルタミン酸リジン縮合物は、少なくともエチレン基−(CH−の位置の違いに基づく複数の異性体を有するが、本発明においてはこれらのうち1種であっても2種以上の混合物であっても使用可能である。また、N−アシルグルタミン酸リジン縮合物はグルタミン酸およびリジンの光学異性に基づく複数の異性体も有する。本発明においてはこれらのうち1種であっても2種以上の混合物であっても使用可能であるが、上記したようにN−アシル−L−グルタミン酸−L−リジン縮合物が好ましい。
【0018】
上記一般式(1)において、R−C(=O)−とR−C(=O)−はそれぞれ独立に炭素原子数2〜20の飽和又は不飽和の脂肪酸から誘導されるアシル基を示す。本発明においては、毛髪のコンディショニング、ダメージ毛の改善の点でより良い効果を得るために、R−C(=O)−とR−C(=O)−が炭素原子数8〜20の飽和又は不飽和の脂肪酸から誘導されるアシル基であることが好ましい。
【0019】
上記アシル基R−C(=O)−及びR−C(=O)−はそれぞれ異なっても同一でも良く、また、直鎖状、分岐状あるいは環状の何れであっても良い。
具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸等の直鎖脂肪酸;
【0020】
2−エチルヘキサン酸、2−ブチル−5−メチルペンタン酸、2−イソブチル−5−メチルペンタン酸、ジメチルオクタン酸、ジメチルノナン酸、2−ブチル−5−メチルヘキサン酸、メチルウンデカン酸、ジメチルデカン酸、2−エチル−3−メチルノナン酸、2,2−ジメチル−4−エチルオクタン酸、メチルドコサン酸、2−プロピル−3−メチルノナン酸、メチルトリデカン酸、ジメチルドデカン酸、2−ブチル−3−メチルノナン酸、メチルテトラデカン酸、エチルトリデカン酸、プロピルドデカン酸、ブチルウンデカン酸、ペンチルデカン酸、ヘキシルノナン酸、2−(3−メチルブチル)−3−メチルノナン酸、2−(2−メチルブチル)−3−メチルノナン酸、ブチルエチルノナン酸、メチルペンタデカン酸、エチルテトラデカン酸、プロピルトリデカン酸、ブチルドデカン酸、ペンチルウンデカン酸、ヘキシルデカン酸、ヘプチルノナン酸、ジメチルテトラデカン酸、ブチルペンチルヘプタン酸、トリメチルトリデカン酸、メチルヘキサデカン酸、エチルペンタデカン酸、プロピルテトラデカン酸、ブチルトリデカン酸、ペンチルドデカン酸、ヘキシルウンデカン酸、ヘプチルデカン酸、メチルヘプチルノナン酸、ジペンチルヘプタン酸、メチルヘプタデカン酸、エチルヘキサデカン酸、エチルヘキサデカン酸、プロピルペンタデカン酸、ブチルテトラデカン酸、ペンチルトリデカン酸、ヘキシルドデカン酸、ヘプチルウンデカン酸、オクチルデカン酸、ジメチルヘキサデカン酸、メチルオクチルノナン酸、メチルオクタデカン酸、エチルヘプタデカン酸、ジメチルヘプタデカン酸、メチルオクチルデカン酸、メチルノナデカン酸、メチルノナデカン酸、ジメチルオクタデカン酸、ブチルヘプチルノナン酸等の分岐脂肪酸;
【0021】
オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、トウハク酸、ラウロレイン酸、トリデセン酸、ツズ酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、ヘキセデセン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸、オレイン酸、ノナデセン酸、ゴンドイン酸等の直鎖モノエン酸;
メチルヘプテン酸、メチルノネン酸、メチルウンデセン酸、ジメチルデセン酸、メチルドデセン酸、メチルトリデセン酸、ジメチルドデセン酸、ジメチルトリデセン酸、メチルオクタデセン酸、ジメチルヘプタデセン酸、エチルオクタデセン酸等の分岐モノエン酸;
リノール酸、リノエライジン酸、エレオステアリン酸、リノレン酸、リノレンエライジン酸、プソイドエレオステアリン酸、パリナリン酸、アラキドン酸等のジ又はトリエン酸;
【0022】
オクチン酸、ノニン酸、デシン酸、ウンデシン酸、ドデシン酸、トリデシン酸、テトラデシン酸、ペンタデシン酸、ヘプタデシン酸、オクタデシン酸、ノナデシン酸、ジメチルオクタデシン酸等のアセチレン酸;
メチレンオクタデセン酸、メチレンオクタデカン酸、アレプロール酸、アレプレスチン酸、アレプリル酸、アレプリン酸、ヒドノカルプン酸、ショールムーグリン酸、ゴルリン酸、α−シクロペンチル酸、α−シクロヘキシル酸、α−シクロペンチルエチル酸等の環状酸から誘導されるアシル基を例示することができる。
【0023】
また、天然油脂から得られる脂肪酸由来のアシル基でも良く、特に上記の炭素原子数2〜20の飽和又は不飽和脂肪酸を80%以上含む混合脂肪酸由来のアシル基が好ましい。具体的には、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、ツバキ油脂肪酸、菜種油脂肪酸、パーム核油脂肪酸等から誘導されるアシル基を例示することができる。
【0024】
本発明においては、N−アシルグルタミン酸リジン縮合物として上記一般式(1)におけるR−C(=O)−及びR−C(=O)−がそれぞれ独立に炭素原子数8〜20の直鎖状飽和脂肪酸、又は炭素原子数8〜20の直鎖状飽和脂肪酸を80%以上含む混合脂肪酸由来のアシル基が好ましく、とりわけラウリン酸又はヤシ油脂肪酸由来のアシル基が好ましい。
【0025】
上記一般式(1)において、Mは水素原子;ナトリウム原子、カリウム原子、リチウム原子等のアルカリ金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール等の有機アミン;L−アルギニン、L−リジン等の塩基性アミノ酸;アンモニウムを示す。本発明においては、とりわけナトリウム原子、カリウム原子等のアルカリ金属原子が好ましい。
【0026】
本発明においてN−アシルグルタミン酸リジン縮合物としては、例えば水溶液である「ぺリセア L−30」(旭化成ケミカルズ株式会社製)等の市販品を好適に使用することができる。
【0027】
成分(B)のうちL−テアニンは下記一般式(2)で示されるアミノ酸の一種で、L−体の構造を有し、緑茶のうま味の一成分である水溶性の化合物である。
【化2】

【0028】
L−テアニンは、カフェインによる興奮作用に対して抑制効果があること等が知られており、また保湿効果を有することが特開平9−286715号公報に開示されており、毛髪損傷修復効果を有することが特開2006−104160号公報に開示されている。本発明においてL−テアニンは、天然品、合成品のいずれをも使用することができる。
【0029】
本発明において、成分(B)のアミノ酸及び/又はその水溶性誘導体は1種又は2種以上を併用して用いることができ、その配合量はとくに制限はないが、本発明の効果を十分に享受するためには、原液100部中0.001〜5部配合することが好ましく、特に0.01〜1部が好ましい。
【0030】
本発明に用いられる成分(C)の陽イオン性セルロース誘導体及び/又は非イオン性セルロース誘導体は、容器から吐出した後のキメ細かな泡沫の形成に寄与するものであり、このキメ細かな泡沫が原液の各成分を毛先に至るまで毛髪全体に均一に塗布することを容易にする。しかも、成分(C)による泡沫は前述の成分(A)を含有する油系と、成分(B)を含有する水系の双方を含むかたちで吐出し形成された泡沫であるため、毛髪上に塗布された後スムーズに泡沫が消失し、成分(A)と成分(B)のそれぞれが本来有する毛髪に対する前述の特性を素早く発揮することができる。一方、一般的な毛髪用トリートメント剤は界面活性剤を乳化剤又は可溶化剤として多量に用い、油系と水系を乳化又は可溶化して得た組成物であることが多いが、このような乳化物や可溶化物をエアゾール剤の原液として用いると毛髪上に塗布された後も界面活性剤による泡沫が長く残り易い。そして、特に成分(A)が本来有する毛髪になめらかな感触を付与する効果が界面活性剤により妨げられ、十分に得られないことが多い。
【0031】
本発明において成分(C)は、化粧料において使用可能な陽イオン性セルロース誘導体、非イオン性セルロース誘導体であれば特に限定されず、何れも本発明に用いることができる。特に、それ自体が毛髪コンディショニング効果を有する陽イオン性セルロース誘導体は、本発明において特に好適である。
【0032】
成分(C)のうち非イオン性セルロース誘導体としては、具体的にはメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を例示することができる。
【0033】
成分(C)のうち陽イオン性セルロース誘導体は、第4級アンモニウム等の陽イオン性官能基を導入し、全体として陽イオン性を有するセルロース系化合物であれば何れも使用可能であるが、例えば塩化O−〔2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース、塩化O−〔2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース等を例示することができる。
【0034】
本発明において、成分(C)の陽イオン性セルロース誘導体及び/又は非イオン性セルロース誘導体は1種又は2種以上を併用して用いることができ、その配合量はとくに制限はないが、本発明の効果を十分に享受するためには、原液100部中0.01〜1部配合することが好ましく、特に0.05〜0.5部が好ましい。
本発明の成分(C)として、例えばポリマーJR400(塩化O−〔2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース)(ユニオンカーバイド社製)、クォータリーソフトLM−200(塩化O−〔2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース)(アマコール社製)等を好適に使用することができる。
【0035】
本発明に用いられる成分(D)の水は、成分(B)のアミノ酸及び/又はその水溶性誘導体や成分(C)の溶媒としてはたらき、原液における水系を構成する。成分(D)としては精製水や水道水、温泉水、深層水、精油製造時に得られる水蒸気蒸留水等を使用することができる。
【0036】
本発明において成分(A)は重合度が大きいため、成分(E)として成分(A)を溶解可能な溶媒を使用しても良い。成分(A)を成分(E)の溶媒で希釈すれば粘性が低下し、製造時に取り扱い易くなるので好ましい。この場合、成分(A)を含有する成分(E)が原液の油系となる。成分(E)の溶媒としては、成分(A)を希釈可能で粘性を低下させ得る油剤であれば特に限定されず、例えばオクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、一般式{(CHSiO}SiCH で示されるメチルトリメチコン等のケイ素原子数2〜7(粘度3mm/s以下に相当)の揮発性鎖状シリコーン油;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等のケイ素原子数7以下の環状シリコーン;軽質流動イソパラフィン、軽質イソパラフィン等の沸点が280℃以下の揮発性炭化水素油;重合度650以下(粘度約5000mm/s以下に相当)かつ非揮発性であるジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の非揮発性鎖状シリコーン油;イソノナン酸イソノニル等が使用可能である。
【0037】
次に、噴射剤について述べる。本発明の泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤に用いられる噴射剤は、通常の身体用エアゾール製品に使用可能な噴射剤であれば特に限定されず、泡沫を形成する上で支障のない範囲において適切な噴射剤を選択し、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。具体的には、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、炭酸ガス、窒素ガス等を例示することができる。LPGは通常天然ガスあるいは石油から分離精製したもので、主としてプロパン、ブタン、イソブタンを含むものが使用できる。本発明においては、LPGが特に好適な噴射剤である。
【0038】
本発明の泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤において、エアゾール容器中に充填される原液と噴射剤の配合比は、エアゾール容器からの吐出物が毛髪に均一に塗布し易いキメ細かな泡沫を形成する範囲に調整される。その配合質量比(原液)/(噴射剤)は70/30〜97/3の範囲内であり、より好ましくは80/20〜95/5の範囲内である。70/30未満では過度に発泡して泡沫状製品としての使用性を損なう場合があり、97/3を超えると発泡が不十分となる傾向がある。
【0039】
本発明の泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤において、原液は乳化物や可溶化物でないため、主として水系である水性層および油系である油性層の2層に分かれている。そして、更に噴射剤を加えた時に、容器内の内容物が噴射剤層を加えた3層となっても、また噴射剤が上記油系と相溶して1層の油性層を形成し結果的に2層となっても、エアゾール容器からの吐出物が毛髪に塗布し易いキメ細かな泡沫を形成することを損なわないのであれば何れでも良い。従って、本発明の泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤は、使用直前にエアゾール容器全体を振とうし、内容物である原液と噴射剤とをエアゾール容器内で十分に混合させた後、吐出口から泡沫状に吐出させることが好ましい。
【0040】
本発明において、原液が乳化物や可溶化物を形成しない範囲内であれば、上記成分に加えて原液に界面活性剤(成分(A)のうち、界面活性能を有するものを除く)を添加することもできる。この場合、界面活性剤は吐出された泡沫が毛髪上で消失する速度を遅くし、泡の持続性を高める傾向があるので、本発明の実施製品の要求品質に合わせて、泡沫の消失速度を調整することも可能である。
【0041】
本発明において、原液に添加可能な界面活性剤は、化粧料において使用可能な界面活性剤であれば特に限定されず、陽イオン性、陰イオン性、非イオン性及び両性の各界面活性剤を使用することができるが、特に、それ自体が毛髪コンディショニング効果を有する点及び本発明の成分(C)と併用し易い点において、陽イオン性界面活性剤が好適に使用できる。陽イオン性界面活性剤として、具体的には塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、臭化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジベヘニルジメチルアンモニウム、臭化ジベヘニルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、臭化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジラウリルジメチルアンモニウム、塩化ジポリオキシエチレン(15EO)ヤシ油アルキルメチルアンモニウム、塩化ジポリオキシエチレン(4EO)ラウリルエーテルジメチルアンモニウム、塩化ステアリン酸アミドプロピルトリメチルアンモニウム、ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ジステアロイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート等を例示することができる。これらのうち塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、臭化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジベヘニルジメチルアンモニウムが特に好ましい。
【0042】
上記の原液に添加可能な界面活性剤の配合可能量は、原液が乳化物や可溶化物を形成しない範囲内であり、かつ、原液100部中において1部以下、好ましくは0.001〜0.6部である。
【0043】
更に、本発明の泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤には本発明の効果を損なわない量的、質的範囲内において、上記した成分の他に、通常化粧料や医薬部外品、外用医薬品等の製剤に使用される他の成分、例えばアルコール類、粉体、油剤(成分(A)、成分(E)を除く)、水溶性高分子(成分(C)を除く)、油溶性高分子、樹脂、毛髪セット用高分子、金属セッケン、油性ゲル化剤、包接化合物、保湿剤、抗菌・防腐剤、消臭剤、塩類、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、キレート剤、退色防止剤、清涼剤、美容成分(植物エキス、タンパク質誘導体、ビタミン類等)、香料、色素等を、その性質及び目的に応じて原液の水系、油系又は噴射剤層の少なくとも何れかに配合できる。
【0044】
上記油剤としては常温で液体、ペースト状及び固形状の油性成分を使用することができる。具体的には、例えば非揮発性の炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、有機変性シリコーン類、フッ素系油剤類、ラノリン誘導体類等が使用可能であり、より具体的には流動パラフィン、スクワラン、植物性スクワラン、スクワレン、ワセリン、プリスタン、ポリブテン、パラフィンワックス、セレシンワックス、オゾケライト、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、エチレンプロピレンコポリマー、モンタンワックス、フィッシュトロプスワックス等の炭化水素類;モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油、カメリア油、ローズヒップ油、アボカド油、シア脂、硬化油、馬脂、卵黄油等の油脂類;ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ等のロウ類;ホホバ油、2−エチルヘキサン酸酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ステアリン酸コレステリル、ラノリン脂肪酸コレステリル、オレイン脂肪酸フィトステリル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジオクチルドデシル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)等のエステル類;ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類;架橋型オルガノポリシロキサン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン等の有機変性シリコーン類;パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類;ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、硬質ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル等のラノリン誘導体等のラノリン誘導体等を例示することができる。
【0045】
アルコール類としては、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコ−ル、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール;ソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール;ショ糖、ブドウ糖、果糖等の糖類等を例示できる。
【0046】
粉体は必要に応じ、トリートメント剤の感触調整や着色、経時安定性向上等の目的で配合される。粉体としては、化粧品に一般に使用される粉体であれば、特にその材質や粒子径、粒子形状を問わず、更に疎水化、親水化、媒体への分散性向上等の目的で粉体の表面を油剤、シリコーン類、フッ素系化合物等で処理してあっても良い。
【0047】
成分(C)以外の水溶性高分子としては、非イオン性セルロース誘導体、陽イオン性セルロース誘導体以外で化粧品一般に用いられる水溶性高分子であれば何れのものも使用できる。具体的には、例えばデンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン、カチオン化デンプン等のデンプン系高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子;カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子;高重合度のポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等のポリアルキレングリコール系高分子;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子;ベントナイト、ラポナイト、ヘクトライト等の無機系水溶性高分子;コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムチン、デルマタン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸等のムコ多糖類又はその塩;アラビアゴム、トラガカントガム、ガラクタン、キャロブガム、グァーガム、カチオン化グァーガム、ヒドロキシプロピルグァーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード、アルゲコロイド、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン等の植物系多糖類;キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子が挙げられる。
【0048】
毛髪セット用高分子は、通常はヘアトリートメント剤に配合されるものではないが、添加により毛髪保護効果を更に向上させることができるような場合には、更に配合することも有り得る。毛髪セット用高分子としては、例えばビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、ジアリル4級アンモニウム塩重合物等の陽イオン性重合体;ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリビニルメチルエーテル等の非イオン性重合体;メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体ハーフエステル、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル樹脂アルカノールアミン等の陰イオン性重合体;ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート−(メタ)アクリレート共重合体のクロル酢酸両性化物、オクチルアクリルアミド−ブチルアミノエチルメタクリレート−ヒドロキシプロピルメタクリレート−アクリレート共重合体等の両性重合体が挙げられる。
【0049】
抗菌・防腐剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸エステル、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール等が挙げられる。
【0050】
その他、pH調整剤としては例えば乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、又はこれらの塩、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が、清涼剤としては例えばL−メントール、カンファー、ハッカ油、ユーカリ油等が、紫外線吸収剤としては例えばベンゾフェノン系、パラアミノ安息香酸系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4´−メトキシベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられる。
酸化防止剤としては例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が、ビタミン類としては例えばビタミンA及びその誘導体、ビタミンB及びその誘導体、ビタミンC及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、リノレン酸やその誘導体のビタミンF類、フィトナジオン、メナキノン、メナジオン、メナジオール等のビタミンK類、エリオシトリン、ヘスペリジン等のビタミンP類、その他ビオチン、カルチニン、フェルラ酸等が挙げられる。
また、植物エキスとしては例えばアロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キウイ、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ、ゼニアオイ、アルテア、ヨモギ、スギナ、サンザシ、ブドウ、茶、海藻等の植物の少なくとも一部を圧搾又は溶媒抽出して得られるものが挙げられる。
【0051】
本発明の泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤は、その製造方法が特に限定されるものではないが、例えば一方法として、成分(A)の重合度2000〜10000の高重合ジメチルポリシロキサン又はそれを成分(E)に溶解した油系と、成分(B)のアミノ酸及び/又はその水溶性誘導体、成分(C)の陽イオン性セルロース誘導体及び/又は非イオン性セルロース誘導体を成分(D)の水に溶解した水系とを容器に充填し、容器にバルブを装着後、噴射剤を所定の(原液)/(噴射剤)配合質量比で充填し、泡沫の吐出に適した吐出用部材等をエアゾール容器に装着することにより製造することができる。この時、エアゾール容器は通常の泡沫エアゾール化粧料に用いられる缶容器や内面樹脂被覆の缶容器、樹脂容器等を使用することが好ましいが、透明ガラス容器や陶器の容器等、他の材質の容器を使用しても良い。
【0052】
本発明の泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤は、朝使用するタイプや夜使用するタイプのヘアトリートメント化粧料等、主としてアウトバス仕様の毛髪用外用製品としての実施が多いが、使用後に洗い流すタイプのインバス仕様の製品として実施することもできる。
【0053】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【実施例1】
【0054】
本発明品1〜6及び比較品1〜3:フォームタイプヘアトリートメント
表1に示すフォームタイプヘアトリートメントを下記製造方法により調製し、得られたフォームタイプヘアトリートメントの各試料について、吐出時の泡のキメ細かさ、髪全体への均一な塗布のし易さ、仕上がりの髪のなめらかさ、髪のなめらかさの持続性、毛髪補修効果について、下記方法により評価、判定した。得られた結果を表1に併記する。
【0055】
【表1】

【0056】
注1:ペリセアL−30(旭化成ケミカルズ社製)(ジN−ラウロイルグルタミン酸リジンナトリウム水溶液。組成中の配合量は純分量として記載)
【0057】
(製造方法)
A:成分(1)〜(5)を混合溶解する。
B:成分(6)〜(16)を成分(17)に溶解する。
C:AとBを原液として、エアゾール容器に入れる。
D:エアゾール容器にバルブを装着後、成分(18)、(19)の噴射剤を表1に記載の所定(原液)/(噴射剤)配合質量比となるように充填する。
E:エアゾール容器に吐出用部材を装着してフォームタイプヘアトリートメントを得た。
【0058】
(評価項目)
[1]吐出時の泡のキメ細かさ
[2]髪全体への均一な塗布のし易さ
[3]仕上がりの髪のなめらかさ
[4]髪のなめらかさの持続性
[5]毛髪補修効果
【0059】
(評価方法)
[1]吐出時の泡のキメ細かさ
表1の各試料の吐出直後の泡を光学顕微鏡を用いて観察し、プレパラートのスケールにより泡径を測定した。その結果を下記(イ)判定基準により判定した。
(イ)判定基準
(判定) : (泡径又は泡の状態)
◎ : 100μm以下
○ : 100μmを超える500μm未満
△ : 500μmを超える1000μm未満
× : 1000μm以上、又は泡沫を形成しない
【0060】
[2]髪全体への均一な塗布のし易さ
[3]仕上がりの髪のなめらかさ
[4]髪のなめらかさの持続性
上記[2]〜[4]については、専門パネル20名に表1の各試料を使用してもらい、吐出した泡が毛先まで均一に塗布し易いか(毛髪全体への均一な塗布のし易さ)を評価してもらい、そして仕上がりの髪についてそのなめらかさと持続性を、仕上がり直後及び使用6時間後の毛髪について評価してもらった。評価は下記(ロ)評価基準にて評点をつけ、試料ごとにパネル全員の評点の平均値を算出して、それを下記(ハ)判定基準により判定した。
【0061】
(ロ)評価基準
(評点) : (評価)
6点 : 非常に良好
5点 : 良好
4点 : やや良好
3点 : 普通
2点 : やや不良
1点 : 不良
(ハ)判定基準
(判定) : (評点の平均値)
◎ : 5.0以上
○ : 3.5以上かつ5.0未満
△ : 2.0以上かつ3.5未満
× : 2.0未満
【0062】
[5]毛髪補修効果
以下の手順に従って毛髪のキューティクル補修効果の判定を行った。
A:同一人毛髪を、毛先を揃えた方向に束ねて毛束を作成した。
B:Aの毛束をPOE(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム2%水溶液に5分間浸漬後、水洗乾燥した。
C:Bの毛束をブリーチ処理し、乾燥後、ブラッシングを各々100回行った。
D:B→Cの処理を更に2回繰り返して行い、ダメージ毛束を作成した。
E:Dのダメージ毛束に対し、電子顕微鏡を用いてダメージ毛のキューティクルの状態(めくり上がりの程度)を観察した。
F:Eの毛束を小分けし、それぞれに表1の各試料を塗布して10分間放置した後、毛束の毛表面のキューティクル状態(めくり上がりの程度)を電子顕微鏡で観察した。
G:各試料について、EからFにかけてのキューティクル改善状態の変化度(めくり上がりが収まる程度)を下記(ニ)判定基準により判定した。
(ニ)判定基準
(判定) : (内容)
◎ : 著しいキューティクルの改善効果が観察された
○ : キューティクルの改善効果が観察された
△ : キューティクルの改善効果が少し観察された
× : キューティクルの改善効果が全くあるいは殆ど認められなかった
【0063】
表1の結果から明らかな如く、本発明品1〜6のフォームタイプヘアトリートメントは、泡沫のキメ細かさ、毛髪全体への均一な塗布のし易さ、仕上がりの髪のなめらかさ、髪のなめらかさの持続性及び毛髪補修効果の全ての項目において良好な結果を示し、フォームタイプヘアトリートメントとして優れた品質を有するものであることが実証された。
一方、成分(A)の代わりに、重合度100(粘度100mm/s程度)のジメチルポリシロキサンを用いた比較品1は、仕上がりの髪のなめらかさもその持続性も不十分なものであった。また、成分(B)を含有しない比較品2は、成分(A)の配合量が十分であるにもかかわらず、毛髪補修効果において良い結果が得られなかった。更に、成分(C)の代わりにセルロース系でない、陰イオン性のポリアクリル酸ナトリウムを配合した場合はキメの細かい泡が形成されず、毛髪全体への均一な塗布がしにくいため、結果的に髪のなめらかさや持続性についても良い結果が得られなかった。
【実施例2】
【0064】
本発明品7〜12及び比較品4〜5:フォームタイプヘアトリートメント
表2に示すフォームタイプヘアトリートメントを実施例1と同様の製造方法により調製し、得られたフォームタイプヘアトリートメントの各試料について、吐出時の泡形成の速度及び発泡の程度について目視にて観察し、下記(ホ)判定基準及び(ヘ)判定基準により判定した。得られた結果を表2に併記する。
【0065】
【表2】

【0066】
[6]吐出時の泡形成の速度
(ホ)判定基準
(判定) : (内容)
◎ : 吐出後、直ちに十分な泡形成する
○ : 吐出後、5秒未満で十分な泡形成する
△ : 吐出後、十分な泡形成に5秒〜30秒かかる
× : 吐出後、30秒を超えても十分な泡形成しない
【0067】
[7]吐出時の発泡の程度
(ヘ)判定基準
(判定) : (内容)
◎ : 吐出後、泡沫のかたまりが適度な大きさで発泡を終了し、使い易い
○ : 吐出後、泡沫のかたまりが適度な大きさになった後は過度には発泡せず、やや使い易い
× : 吐出後、過度に発泡し、使いにくい
【0068】
表2の結果から明らかな如く、本発明品7〜12のフォームタイプヘアトリートメントは、吐出時の泡形成の速度及び発泡の程度において、泡沫エアゾール型のヘアトリートメント剤として十分な特性を有することが実証された。
一方、原液と噴射剤の配合質量比(原液)/(噴射剤)を70/30より小さく外した比較品4は吐出後、過度の発泡により使いにくく、また配合質量比(原液)/(噴射剤)を97/3より大きく外した比較品5は吐出後の泡形成の速度が遅く、十分な品質を有するものではなかった。
【実施例3】
【0069】
本発明品13:泡沫エアゾール型ヘアトリートメント化粧料
<原液>
(成分) (部)
(1)ジメチルポリシロキサン(重合度3300) 2
(2)ジメチルポリシロキサン(粘度10mm/s) 18
(3)L−セリン 1
(4)キウイエキス 0.2
(5)ヒドロキシエチルセルロース 0.2
(6)エタノール 5
(7)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(8)グリセリン 5
(9)香料 0.1
(10)精製水 加えて100部とし、原液とする
<噴射剤>
(11)LPG 100
【0070】
(製造方法)
A:成分(1)〜(2)を混合溶解する。
B:成分(3)〜(9)を成分(10)に溶解する。
C:AとBを原液として、エアゾール容器に入れる。
D:エアゾール容器にバルブを装着後、噴射剤である成分(11)を、(原液)/(噴射剤)配合質量比が90/10となるように充填する。
E:エアゾール容器に吐出用部材を装着して、泡沫エアゾール型ヘアトリートメント化粧料を得た。
【0071】
本発明品13の泡沫エアゾール型ヘアトリートメント化粧料はキメ細かな泡沫で吐出し、毛髪全体に均一に塗布し易く、仕上がり後は1日中毛髪がなめらかな感触でパサつくことのない、優れたヘアトリートメント剤であった。
【実施例4】
【0072】
本発明品14:泡沫エアゾール型ヘアトリートメント料
<原液>
(成分) (部)
(1)ジメチルポリシロキサン(重合度2200) 7
(2)ジメチルポリシロキサン(粘度10mm/s) 7
(3)カメリア油 0.1
(4)N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジオクチルドデシル 0.1
(5)L−アルギニン 0.5
(6)N−アシルグルタミン酸リジン縮合物 0.5
(7)塩化O−〔2−ヒドロキシ−3−
(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース 0.2
(8)エタノール 5
(9)フェノキシエタノール 0.1
(10)1,3−ブチレングリコール 5
(11)香料 0.1
(12)精製水 加えて100部とし、原液とする
<噴射剤>
(13)DME 100
【0073】
A:成分(1)〜(4)を混合する。
B:成分(5)〜(11)を成分(12)に溶解する。
C:AとBを原液として、エアゾール容器に入れる。
D:エアゾール容器にバルブを装着後、噴射剤である成分(13)を、(原液)/(噴射剤)配合質量比が88/12となるように充填する。
E:エアゾール容器に吐出用部材等を装着して、泡沫エアゾール型ヘアトリートメント料を得た。
【0074】
本発明品14の泡沫エアゾール型ヘアトリートメント料はキメ細かな泡が吐出し、毛先に至るまで毛髪全体に均一に塗布し易く、なめらかな感触が1日中持続して、髪がごわついたりパサついたりすることのない、毛髪補修効果に優れた泡沫タイプのヘアトリートメント料であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D);
(A)重合度2000〜10000の高重合ジメチルポリシロキサン
(B)アミノ酸及び/又はその水溶性誘導体
(C)陽イオン性セルロース誘導体及び/又は非イオン性セルロース誘導体
(D)水
を含有する原液と、噴射剤とからなり、原液と噴射剤の配合質量比(原液)/(噴射剤)が70/30〜97/3の範囲内にあることを特徴とする泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤。
【請求項2】
更に、成分(E)として、成分(A)の溶媒を原液中に含有することを特徴とする請求項1記載の泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤。
【請求項3】
成分(B)のアミノ酸及び/又はその水溶性誘導体が、N−アシルグルタミン酸リジン縮合物及び/又はL−テアニンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤。
【請求項4】
原液100質量部中、成分(A)の含有量が0.1〜10質量部、成分(B)の含有量が0.001〜1質量部、かつ、成分(C)の含有量が0.01〜1質量部であることを特徴とする請求項1ないし3の何れかの項に記載の泡沫エアゾール型ヘアトリートメント剤。

【公開番号】特開2008−247808(P2008−247808A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91051(P2007−91051)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】