説明

泡沫状皮膚塗布剤

【課題】安全性を考慮し、内圧が0.7MPa未満のエアゾールにおいて、低温時においても良好な泡沫を保ち、二酸化炭素を皮膚上に長時間作用させて、十分な血行促進効果が得られる泡沫状皮膚塗布剤を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C)、
(A)二酸化炭素
(B)炭素数が3〜5の炭化水素から選ばれる混合物であり、前記混合物中に35℃における蒸気圧0.1MPa以上0.5MPa未満の飽和炭化水素が70〜100質量%含まれる炭化水素混合物 0.1〜3質量%
(C)界面活性剤 0.1〜25質量%
を含有する液体及び気体を含む組成物であって、(A)と(B)との質量比が35:65〜95:5であり、耐圧容器内に内圧が25℃で0.70MPa未満となるように封入してなる泡沫状皮膚塗布剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含有する泡沫状皮膚塗布剤に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(炭酸ガス)が皮膚に作用すると皮膚の血行が促進されることから、種々の二酸化炭素含有化粧料が提案されている。例えば、二酸化炭素を含有する化粧料において、一時的に飽和濃度の二酸化炭素を供給し、また水に比べて高い溶解度を示すエタノールなどの共存下でより高い二酸化炭素飽和溶液での供給方法が示されている(特許文献1)。さらに二酸化炭素の揮散を抑制するために噴射液体を高粘度に保つ手法や、二酸化炭素を高濃度に保持するために多価アルコールを高濃度に共存させる方法などが知られている(特許文献2〜3)。
【0003】
一方、多くのエアゾール剤において、泡沫を形成させるために噴射ガスとしてプロパン、イソブタン及びノルマルブタンを成分とする液化石油ガス(LPG)が用いられている。しかし、液化石油ガスは引火性が強く、低温時の発泡性に劣るという問題がある。この問題を解決するための技術として、例えば、水及び界面活性剤を含有する水性原液、液化石油ガスと共に炭酸ガスを含有させることにより、火気に対する安全性が高く、低温時でも発泡性に差がみられないエアゾールフォーム組成物(特許文献4)、原液100質量%に対し0〜4質量%の液化ガスに加えて炭酸ガスなどのような圧縮ガスを加え補圧することによる不燃性のエアゾール型フォーム製品(特許文献5)が知られている。一方、有効成分水性溶液を含有する原液、ノルマルブタン及び炭酸ガスのみからなる噴射剤を含有させることにより、引火性が低く、液化石油ガスを用いるよりも低温起泡性に優れ、高温安全性の良い起泡性エアゾール組成物(特許文献6)が知られているが、ノルマルブタンは高価である。
【0004】
さらに、炭酸ガスと共に炭化水素油を使用した血行促進作用を目的としたエアゾール剤として、二酸化炭素とイソペンタン、n−ペンタン等の特定の炭化水素を用いて、フォーム剤の泡持続性を改善した発泡性皮膚血行促進剤(特許文献7)が知られているが、低温下での泡もちや耐圧容器の内圧を低下させた場合の作用効果については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−141512号公報
【特許文献2】特開平11−228334号公報
【特許文献3】特開平11−171755号公報
【特許文献4】特開2001−72543号公報
【特許文献5】特開平09−59606号公報
【特許文献6】特許第3587547号
【特許文献7】特開2005−2046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、容器内の内圧が低圧でありながら、低温時においても良好な泡沫を保ち、二酸化炭素を皮膚上に長時間作用させて、十分な血行促進効果が得られる泡沫状皮膚塗布剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、二酸化炭素を皮膚上に長時間滞留させて良好な血行促進作用を賦与できる塗布剤を得るべく種々検討したところ、35℃における蒸気圧が0.1MPa以上0.5MPa未満の飽和炭化水素を主成分とした炭素数3〜5の炭化水素混合物を含有させることにより、二酸化炭素を高濃度で溶存させることができ、皮膚上に吐出したとき、二酸化炭素を高濃度に含む泡沫が長時間皮膚上に保持され、低温においても良好な泡沫が形成され、さらに良好な血行促進作用を有する泡沫状皮膚塗布剤が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C)、
(A)二酸化炭素
(B)炭素数が3〜5の炭化水素から選ばれる混合物であり、前記混合物中に35℃における蒸気圧0.1MPa以上0.5MPa未満の飽和炭化水素が70〜100質量%含まれる炭化水素混合物 0.1〜3質量%
(C)界面活性剤 0.1〜25質量%
を含有し、(A)と(B)との質量比が35:65〜95:5である液体及び気体を含む組成物を耐圧容器内に内圧が25℃で0.7MPa未満となるように封入してなる泡沫状皮膚塗布剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の泡沫状皮膚塗布剤は、容器内圧が0.7MPa未満という低圧でありながら、皮膚上に吐出したとき、二酸化炭素を高濃度に含む泡沫が長時間皮膚上に保持され、その泡沫を皮膚上に拡げることにより、皮膚の優れた血行促進効果が得られる。また、吐出した泡沫が低温下でも安定であるため、皮膚上でのマッサージ等を容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の泡沫状皮膚塗布剤は、耐圧容器内に前記成分(A)、(B)及び(C)を含有する液体及び気体を含む組成物が封入されてなるものである。
【0011】
成分(A)の二酸化炭素は、気体として耐圧容器内に封入され、本発明の泡沫状皮膚塗布剤の噴射剤として機能するだけではなく、その一部は耐圧容器内の液体中に溶解しており、これを皮膚に適用したとき発泡する。そして、皮膚上において、泡中の気体状の二酸化炭素及び液体部分に溶存している二酸化炭素は、皮膚の血行を促進する作用を有する。従って、容器内において、二酸化炭素は前記液体中に高濃度存在するようにするのが好ましい。前記耐圧容器内における二酸化炭素の液体中への溶存量は、皮膚に塗布した際に十分な効果を付与できる点から、500〜25,000ppm、さらに1,000〜20,000ppm、特に5,000〜18,000ppmとするのが好ましい。
【0012】
成分(B)の炭化水素混合物は、本発明の泡沫状皮膚塗布剤を皮膚に適用するとき、二酸化炭素とともに発泡し、二酸化炭素を高濃度に含有した泡沫を形成する作用を有する。前記炭化水素混合物中は、本発明品の耐圧容器内圧において25℃で0.7MPa未満を維持し、かつ吐出した際に良好な泡質と血行促進効果を両立するために、35℃における蒸気圧が0.1MPa以上0.5MPa未満の飽和炭化水素が70〜100質量%であることが重要であり、特に使用時の効果を高める点から、80〜100質量%が好ましく、さらにまた90〜100質量%、特に95〜100質量%であるのが好ましい。当該35℃における蒸気圧が0.1MPa以上0.5MPa未満の飽和炭化水素としては、炭素数4のイソブタン(0.46MPa)、ノルマルブタン(0.33MPa);炭素数5のネオペンタン(0.23MPa)、イソペンタン(0.13MPa)などが挙げられる。このうちイソブタン、ノルマルブタンが低温における泡が良好となり好ましく、経済性の面からノルマルブタンを使用する際にはイソブタンを併用することが特に好ましい。また、炭素5の炭化水素としては、イソペンタンが好ましい。
【0013】
さらに、前記耐圧容器内の液体中に二酸化炭素を溶存させるためには、炭化水素混合物の蒸気圧を低くすることが好ましく、炭素数4のイソブタン、ノルマルブタンに加えて、イソペンタンを用いることも好ましい。イソペンタンを併用する場合、耐圧容器内の全組成物中に0.1〜1.8質量%であることが好ましく、さらに0.1〜1.2質量%、特に0.1〜0.9質量%が血行促進効果の点から好ましい。
【0014】
また、35℃における蒸気圧が0.5MPaより大きい飽和炭化水素としては、プロパン(1.25MPa)などが挙げられる。通常の場合、液化石油ガス(LPG)はプロパン及びブタンの混合物であって、目的に応じてこれらの比率を調整した混合ガスとして流通している。本発明においては、耐圧容器内を低圧下にし、かつ二酸化炭素を高濃度に含有し、長時間皮膚上に保持できる泡沫を得るために、35℃における蒸気圧が高い炭化水素の含有量が少ないことが好ましい。プロパンは実質的に配合しないことが好ましいが、工業的な入手性を考慮すると、LPGに含まれるノルマルブタン及びイソブタン:プロパン(質量比)は、70〜100:0〜30であることが好ましく、さらに90〜99.9:0.1〜10、特に97〜99.5:0.5〜3であることが好ましい。
炭素数3〜5の炭化水素混合物の好ましい形態としては、炭素数5の炭化水素をB1、炭素数4の炭化水素をB2、炭素数3の炭化水素をB3とした場合、B1:B2:B3(質量比)が0〜75:15〜100:0〜30の組成、さらに0〜75:20〜99:0.1〜3の組成、特に0〜50:49〜99:0.5〜1の組成の炭化水素混合物が好ましい。また、B2の含有量は、耐圧容器内の全組成物中に0.1〜3質量%、さらに0.1〜2質量%、特に0.3〜1.5質量%含有するのが好ましい。
【0015】
本発明において当該成分(B)の含有量は、耐圧容器内の全組成物中0.1〜3質量%であるが、良好な泡沫及び血行促進効果の両者を満足させるうえで、0.2〜2.5質量%が好ましく、特に0.5〜2質量%であるのが好ましい。
【0016】
また、耐圧容器内に封入する当該成分(A)と(B)との質量比(A:B)は、良好な泡沫及び血行促進効果の両者を満足させるうえで、35:65〜95:5であることが重要であり、血行促進効果の点から38:62〜95:5、さらに45:55〜90:10、特に50:50〜85:15であるのが好ましい。
【0017】
本発明において、成分(C)の界面活性剤は液体中に含まれ、成分(B)を分散あるいは乳化させるものであり、本発明の泡沫状皮膚塗布剤を皮膚に適用する際に泡の安定性を向上させる。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などの中から、単独で又は適宜2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
非イオン性界面活性剤としては、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキルアルカノールアミド、アルキルグリセリルエーテル、アルキルポリグルコシド、アミノ酸エステル、ポリエーテル変性シリコーン等の変性シリコーン、アルキルポリサッカライドなどが挙げられる。
【0019】
アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸塩、N−アシルタウリン塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩などが挙げられる。
【0020】
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルコキシプロピルトリメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩のようなアンモニウム塩やアミン塩が挙げられる。これらの成分の添加により、起泡性のほかに、殺菌作用や、トリートメント効果、帯電防止効果なども得られる。
【0021】
両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどを起泡力増強の目的などで必要によって添加できる。
【0022】
これらのうち、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上を用いるのが好ましい。非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキルアルカノールアミド、アルキルグリセリルエーテル、アルキルポリグルコシド、アミノ酸エステル等が好ましい。また、アニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪酸塩などが好ましい。これらの界面活性剤のうち、皮膚上での泡の安定性の点から、炭素数8〜16のアルキル鎖を有するものが好ましい。
【0023】
これらの界面活性剤は、皮膚上での泡の安定性及び泡感触の点からその量が多い方が好ましく、一方で皮膚への刺激等の面から多量の使用は刺激などの問題から容器内の全組成物全量中に0.1〜25質量%の範囲が好ましい。特に、洗浄剤やマッサージ剤などの洗い流す系では、2.0〜20質量%、さらに4.0〜16質量%含有するのが好ましい。また、乳液や化粧水などそのまま皮膚上に残る系では、0.1〜10質量%、さらに0.2〜6質量%、特に0.3〜3質量%が好ましい。
【0024】
二酸化炭素はアルカリ側では二酸化炭素としてではなく、炭酸塩となってしまい、血行促進効果を奏さない。従って、前記組成物のpHは、二酸化炭素を高濃度溶存させておくことにより、優れた血行促進効果を得る点から、2.5〜7、特に4.5〜6.5が好ましい。これらの範囲にpHを調整する際のpH調整剤として、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸又はこれらの塩、あるいはリン酸又はそれらの塩などが利用できる。
【0025】
本発明の泡沫状皮膚塗布剤において、耐圧容器に封入する液体の粘度は、前記成分(B)の分散あるいは乳化状態を安定に保つため、及び皮膚上に塗布した泡沫中の二酸化炭素を保持し良好な血行促進効果を満足させるために、100〜500,000mPa・s、さらに200〜200,000mPa・s、特に300〜50,000mPa・sであることが好ましい。特に、耐圧容器内で前記成分(B)が分離して良好な泡沫が得られなくなることを防止するためには、100mPa・s以上とすることが好ましい。一方で、工業的に安定な製造を考慮すると、前記耐圧容器が単室構造のエアゾール容器である場合は200〜2,000mPa・sであることが好ましく、二重構造のエアゾール容器である場合は2,000〜30,000mPa・sであることが好ましい。粘度調整剤としては、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸・アクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、高分子シリコーン等の合成高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース等のセルロース系高分子、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、デキストリン脂肪酸エステル、アルギン酸プロピレングリコール、ヒドロキシプロピル化グァーガム等の半合成高分子;アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、寒天、グァーガム、クインスシードガム、マンナン、デキストリン、デンプン、ローカストビーンガム、アラビアガム、トラガントガム、ペクチン、キチン、キトサン、アルブミン、カゼイン、コラーゲン、カードラン、キサンタンガム、デキストラン、プルラン、サクシノグルカン等の天然高分子が挙げられる。これらのうち、泡沫の形成性、皮膚に塗布した際の泡もちの点からカルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸・アクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム等の(メタ)アクリル酸系高分子の1種又は2種以上を容器内組成物全量中に0.01〜3質量%用いることが好ましい。さらに、本発明の泡沫状皮膚塗布剤は、泡沫中の高濃度な二酸化炭素を皮膚上に保持する点から、(メタ)アクリル酸系高分子とその他の粘度調整用の増粘性高分子を併用することが好ましい。これら(メタ)アクリル酸系高分子を含む粘度調整剤の合計量は、0.02〜5質量%が好ましい。
【0026】
本発明の泡沫状皮膚塗布剤には、さらに、水、アルコール類、油剤、保湿剤、香料、植物エキス類、殺菌・防腐剤、キレート剤等を含有させることができる。
【0027】
本発明の泡沫状皮膚塗布剤は、前記成分(A)、(B)、(C)及びその他の成分を耐圧容器に封入することにより製造される。例えば、耐圧容器内に、成分(C)を含む液体を充填した後、成分(A)二酸化炭素及び成分(B)炭化水素混合物を封入する。このとき、必要に応じて、他の噴射ガスを充填することも可能である。
【0028】
耐圧容器としては、内容液を泡状にして吐出できる形態であればよく、例えば、通常のアルミニウム、ブリキなどの金属製の単室構造の缶が使用でき、また、容器材質としてアセタール系樹脂、ポリカーボネート系の樹脂等の合成樹脂容器、ガラスなども圧力限界内であれば利用できる。特に工業的に1回で高圧の二酸化炭素を封入する場合には、アルミニウムの容器肉厚を調整したインパクト缶などが好ましい。また、原液の粘度によっては、耐圧容器内に内袋をもつ二重容器も利用できる。二重容器の場合、本発明のエアゾール組成物は内袋の中に充填され、耐圧容器と内袋との間に別に噴射ガスが充填される。この噴射ガスは、一般的にエアゾールにて用いられるガスであれば使用することができる。
【0029】
耐圧容器内の圧力は、25℃において0.7MPa未満であるが、良好な泡沫を得る点から0.4MPa以上0.7MPa未満、さらに0.45MPa以上0.7MPa未満、特に0.5〜0.65MPaであることが好ましい。
【0030】
本発明の泡沫状皮膚塗布剤は皮膚上に適用し、生じた泡を皮膚上に拡げることにより使用するのが好ましい。ここで皮膚上への適用手段としては、所望の皮膚上に直接吐出して、その場で泡を形成させてもよいが、手に吐出して泡を形成させ、その泡を所望の皮膚上に塗布してもよい。本発明の泡沫状塗布剤により形成された泡は長時間安定であり、皮膚上に拡げる操作、軽いマッサージ等を行っても安定であることから、高濃度の二酸化炭素が皮膚に長時間作用し、優れた血行促進効果を奏する。
【0031】
従って、本発明の泡沫状皮膚塗布剤は化粧料や皮膚外用剤として使用でき、皮膚洗浄剤、毛髪洗浄剤、メイク落とし剤、マッサージ剤、パック・マスク剤、クリーム・乳液・化粧水・ジェル・美容液などのスキンケア剤、毛髪コンディショニング剤、メーキャップ剤、芳香化粧料、デオドラント剤、脱色剤、脱毛・除毛剤、養毛・育毛料、また褥創などの予防や治療用の塗布剤・清拭剤、むくみや浮腫に対する予防や治療用の塗布剤・清拭剤等として使用できる。これらの用途に応じて、それらの有効成分を配合できる。例えば化粧料(洗浄料を含む)に対しては、前記保湿剤の他、サンスクリーン剤(UV−A及び又はUV−Bの吸収剤・反射剤)、美白剤、痩身剤、消臭剤、制汗剤、収れん剤、清涼剤、シワ・くすみ防止剤としての各種合成ビタミン、天然ビタミン及びそれらの誘導体、アミノ酸及びその誘導体などが使用できる。養毛・育毛料の有効成分としては、各種血流促進剤や、植物抽出物などが使用できる。マッサージ剤や清拭剤としては、各種抗炎症剤や局所麻酔剤、消炎鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、殺菌剤などが添加できる。
【実施例】
【0032】
実施例1〜8及び比較例1〜4
表1記載の処方により、A及びB以外を混合して原液(液体成分)を調整し、耐圧容器に充填した後、炭化水素混合物(B)、二酸化炭素(A)の順に封入してエアゾール組成物を得た。得られたエアゾール組成物を25℃で1週間保存後に、泡安定性及び皮膚血流を評価した。このとき、全ての組成物において、pHは7未満であった。粘度は、BM型粘度計(東機産業(株))を用いて、測定温度を25℃とし、ロータNo.2、30r/min、1分間の測定条件により測定できる。
【0033】
【表1】

【0034】
(測定方法)
(1)二酸化炭素濃度
25℃雰囲気下で泡を噴射し、二酸化炭素濃度を測定した。炭酸ガス測定器は、Orion社製 二酸化炭素電極モデル9502BNを用いた。
(2)泡安定性
皮膚上に3cmφとなるように泡を噴射し、2分間保持して評価した。
○:泡を形成し、2分間保つ
△:泡を形成するが、だれてしまう
×:泡を形成しない
(3)皮膚血流
前腕部に3cmφとなるように泡を噴射し、2分間保持後に泡を拭き取って、皮膚の状態(皮膚紅潮)を目視で観察した。
◎:はっきりと紅潮を認める
○:紅潮を認める
△:微かに紅潮を認める
×:紅潮を認めない
【0035】
その結果、本発明の実施例1〜8は、高濃度で二酸化炭素が溶存しており、また25℃での泡安定性が良好で、皮膚の紅潮が認められた。なお、皮膚血流に関しては、(3)同様に、前腕部に泡を噴射し拭き取り後、5秒後にリアルタイム血流画像化装置FLPI(Moor Instruments製、moorFLPI)を用いて、皮膚組織血流量を測定して無塗布安静時の血流量と比較したところ、皮膚紅潮の認められたものは血流量の増加がしていた。
表1において、成分(A)の比率が30質量%以下の場合(比較例1)に、皮膚紅潮は認められず、血流促進作用もほとんど認められなかった。また、成分(A)の比率が100質量%、すなわち成分(B)が含有されない場合(比較例2)は、皮膚紅潮ははっきりと認められ、血流促進作用も顕著に増加するが、泡はだれてしまい、泡の安定性が悪かった。さらに、成分(B)中に含まれる35℃における蒸気圧0.1MPa以上0.5MPa未満の飽和炭化水素の割合が70質量%より小さい炭化水素混合物(比較例3)を用いると、内圧が0.7MPaを超えてしまった。また、粘度が低い比較例4の組成液は分離したため、評価は行わなかった。
【0036】
実施例9〜14及び比較例5
表2記載の処方により、A及びB以外を混合して原液を調整し、原液と、二酸化炭素及び炭化水素混合ガスを耐圧容器に密封してエアゾール組成物を得た。得られたエアゾール組成物を25℃で1週間保存後に、泡安定性及び皮膚血流を評価した。このとき、全ての組成物において、pHは7未満であった。
【0037】
【表2】

【0038】
その結果、本発明の実施例9〜14は、高濃度で二酸化炭素が溶存しており、また25℃での泡安定性が良好で、皮膚の紅潮が認められた。成分(B)としてイソペンタンのみを用いた比較例5は、低温(5℃)における泡はだれやすかった。
【0039】
実施例15及び16
表3記載の泡沫状保湿液(実施例15)及び泡沫状美容液(実施例16)を調整し、25℃で1週間保存後に、泡安定性及び皮膚血流を評価した。このとき、全ての組成物において、pHは7未満であった。いずれも、泡安定性が良く、皮膚血流の促進効果も認められた。
【0040】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C)、
(A)二酸化炭素
(B)炭素数が3〜5の炭化水素から選ばれる混合物であり、前記混合物中に35℃における蒸気圧0.1MPa以上0.5MPa未満の飽和炭化水素が70〜100質量%含まれる炭化水素混合物 0.1〜3質量%
(C)界面活性剤 0.1〜25質量%
を含有し、(A)と(B)との質量比が35:65〜95:5である液体及び気体を含む組成物を耐圧容器内に内圧が25℃で0.7MPa未満となるように封入してなる泡沫状皮膚塗布剤。
【請求項2】
前記耐圧容器内の液体中に溶存する二酸化炭素の量が500〜25,000ppmである請求項1記載の泡沫状皮膚塗布剤。
【請求項3】
(B)炭化水素混合物が、炭素数4のノルマルブタン及びイソブタンを含むものである請求項1又は2記載の泡沫状皮膚塗布剤。
【請求項4】
(B)炭化水素混合物が、炭素数4及び炭素数5の炭化水素を含み、炭素数5の炭化水素含有量が前記耐圧容器内の前記組成物中に0.1〜1.8質量%である請求項1又は2記載の泡沫状皮膚塗布剤。
【請求項5】
前記組成物中の液体のpHが2.5〜7である請求項1〜4のいずれか1項記載の泡沫状皮膚塗布剤。
【請求項6】
前記耐圧容器内の液体の粘度が100〜500,000mPa・sである請求項1〜5のいずれか1項記載の泡沫状皮膚塗布剤。
【請求項7】
前記耐圧容器が単室構造のエアゾール容器である請求項1〜6のいずれか1項記載の泡沫状皮膚塗布剤。
【請求項8】
前記耐圧容器が二重構造のエアゾール容器である請求項1〜6のいずれか1項記載の泡沫状皮膚塗布剤。
【請求項9】
前記耐圧容器より噴射して形成した泡沫を、皮膚上に拡げることにより皮膚の血行を促進するためのものである請求項1〜8のいずれか1項記載の泡沫状皮膚塗布剤。
【請求項10】
前記耐圧容器より噴射して形成した泡沫を、皮膚上に拡げることにより皮膚をマッサージするためのものである請求項1〜8のいずれか1項記載の泡沫状皮膚塗布剤。

【公開番号】特開2009−269914(P2009−269914A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95939(P2009−95939)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】