説明

泡状クーラント液による研削方法と研削装置

【課題】 被加工物の防錆、洗浄、腐敗防止効果と研削屑の泡状クーラント液への吸着効果・分離効果を高めるとともに、設備の低減・ランニングコストの低減を図った泡状クーラント液による研削方法と研削装置を提供する。
【解決手段】 不活性ガスを電着砥石10の中心部10Aから砥石10B内を浸透して砥石外周面10Cに噴出させ、クーラント液Kは天然石鹸系発泡剤Sを混入した強アルカリ性液K1とし、この強アルカリ性液を上記砥石両側面から外周面に向けて噴射時に泡立ち作用させて泡状クーラント液KOとし、上記泡状クーラント液は電着砥石の加工点P及び全外周面を包囲して無酸素状態に冷却及び研削屑吸着する泡状クーラント液による研削方法・研削装置100とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工工具となる研削砥石の中心部から外周へクーラント液を浸透噴出して研削点を直接泡状クーラント液で冷却するものにおいて、特に、被加工物の防錆、洗浄、泡状クーラント液への腐敗防止効果と研削屑の吸着効果・分離効果を高めた泡状クーラント液による研削方法と研削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、研削砥石の開発や砥石のクーラント方式の開発が積極的に行われ、その多様性が見られる。図8には、研削砥石の種類と研削方法を図解している。先ず、一般砥石のWA,GCと、電着砥石のダイヤモンド、CBNが知られている。上記各砥石に対する典型的な従来研削の冷却は、低圧の研削液を外掛け方式としているから、砥石の研削焼け・研削割れを頻繁に引き起こしている。そこで、バイパー研削では、専用多孔質砥石とし、研削液を、高圧&大流量外掛け方式としている。これにより、クリープフィード研削(高切り込み)がとなるが低速研削時には、摩擦熱が大きく発生する。そこで、本願発明者は、ハイパー研削方式を開発した。この方式は、クーラント液の浸透性のある多孔質砥石を使用し、この砥石の中心部から砥石内部叉は両側面を高圧クーラント液を浸透させることで、スピードストローク、クリープフードを可能としたものである。しかしながら、以下の欠点が指摘される。▲1▼多量のクーラント液が必要。▲2▼高圧叉は超高圧のクーラントポンプが必須であり、ランニングコストが高く、大電力を消費する。▲3▼高圧叉は超高圧のクーラント液は、研削屑とクーラント液との分離効率と回収効率が悪く、多量のヘドロ処理・スラッジ処理を必要とする。即ち、研削屑やクーラント液の回収を困難とするばかりか、作業環境を悪化している事が問題化している。▲4▼研削面に酸素が存在している為、高温度研削状態と相俟って、ダイヤモンド砥石等においては、砥石外周面をクーラント液で冷却するものにおいて、クーラント液中の酸素が熱化学反応してダイヤモンドを酸化させてその摩耗を早めるという問題点が有る。
【0003】
そこで、加工工具と被加工物との接触部を泡状の加工液で覆って加工する加工方法となるバブル研削が提供されている。このバブル研削の特徴は、ドライ研削、スラッジ吸引、酸素を遮断して酸化を防止できるメリットを持つ。その具体的な公知例の構成の1つには、発泡装置で切削液が泡立てられ、その泡が被加工物に供給され、被加工物と切刃との接触部が泡で覆われた状態で切削が行われる。切削時に発生する粉塵状の切粉が泡に捕捉されて飛散が回避される。泡は液体より滞留性がよく、使用する切削液の量を少なくしてもこれらの間の潤滑性を良好に保つことができコストダウンを図ることができる。また、泡は切刃を急激に冷却することがないため、サーマルクラックの発生を抑制し得、フライスの寿命を長くするものが提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
更に、使用量が少なくて済み、かつ、加工工具や被加工物の化学反応を抑制し得る加工液が提供されている。その構成は、図8の最下段に示すように提供されている。加工液の一種である水溶性クーラントから消泡剤を除いたものを、不活性ガスの一種であるアルゴンガスにより泡立てて、泡状クーラントとする。この泡状クーラントを被加工物とスローアウェイチップとの加工部位周辺に供給すれば、切削熱により高温となる部分がアルゴンガスにより覆われることとなって酸化等の化学反応が抑制され、スローアウェイチップの寿命が延び、被加工物の加工品質が向上する。また、泡状クーラントは被加工物等に付着して滞留し易いため、少量のクーラントにより潤滑,冷却の目的を達成することができるものである(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
更に、切削加工や研削加工によって排出される切粉、粉塵などの微粉体を捕捉しながら、それを安全に運搬して回収・処理し、加工工具とその周囲の作業環境を改善可能な微粉体回収装置とその方法が提供されている。その構成は、第一の液体を貯留し不活性ガスを導入して多量の泡を発生させて泡塊を形成させる泡発生部と、この泡発生部に接続されるとともに微粉体を発生する箇所の周囲に設置され泡発生部から供給される泡塊を移動させながら微粉体を捕集して運搬する泡充填部と、この泡充填部に接続され微粉体を捕集した泡塊を導いて消泡させる第二の液体を貯留する微粉体回収部からなるものである(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開平5−104393号公報
【特許文献2】 特開平5−329742号公報
【特許文献3】 特開2003−236730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特開平5−104393号公報は、加工工具と被加工物との接触部を泡状の加工液で覆い、切削時に発生する粉塵状の切粉を捕捉して飛散回避でき、泡は滞留性がよく、切削液の量も少なく潤滑性を良好に保てる特長を持つ。しかし、発泡装置で切削液を空気と混ぜて泡立たせたものであるから、設備の増大やランニングコストの増大、発泡装置のメンテナンスの増大を招く。そして、切削液と混じり合う気体は酸素を含有する空気であるから、加工点に泡中の酸素が停滞する状態で接触し、加工点の酸化を促すことで加工点の防錆低減、加工点の洗浄不良、加工後の泡と切削屑の分離不良の現象が見られる。
【0008】
上記特開平5−329742号公報は、加工液は水溶性クーラントから消泡剤を除き、これに不活性ガスのアルゴンガスで泡立て、泡状クーラントとした。これにより、泡状クーラントを被加工物とスローアウェイチップとの加工部位周辺に供給すると、切削熱により高温となる部分がアルゴンガスにより覆われて酸化等の化学反応が抑制され、スローアウェイチップの寿命が延び、被加工物の加工品質が向上するという。しかし、発泡装置等の設備が必須で、この設備費の増大とランニングコストの増大、発泡装置のメンテナンスの増大を招く。更に、加工液は水溶性クーラントであるから、不活性ガスのアルゴンガスで泡立させても水溶性クーラントとの混合泡であるから弱酸性に止まり、高い防錆、洗浄、腐敗防止効果が期待できない。
【0009】
また、上記特開2003−236730号公報は、第一の液体を貯留し不活性ガスを導入して多量の泡と泡塊を形成させる泡発生部と、微粉体を発生する箇所の周囲に設置され泡発生部からの泡塊を移動して微粉体を捕集運搬する泡充填部と、泡充填部に接続され微粉体を捕集した泡塊を導いて消泡する第二の液体を貯留する微粉体回収部とを必要とし、発泡装置となる泡充填部の設備費の増大やランニングコストの増大、発泡装置のメンテナンスの増大を招く。更に、液体との混合泡は弱酸性に止まり、高い防錆、洗浄、腐敗防止効果が期待できない。
【0010】
上記公知技術の問題点を整理すれば、▲1▼工具刃先や砥石外周に泡供給するものであるから、砥石内部に目詰まりを引き起こす。▲2▼加工点に確実に泡供給でき難く、砥石外周面に対して不活性ガスを含んだ泡で完全包囲でき難い。▲3▼砥石移動が激しいと、泡が砥石外周を完全包囲して追随移動出来ず、加工面の冷却と無酸素状態が不完全と成り易い。▲4▼研削盤や加工機の機内全体を泡で充満出来ないから加工面の冷却と無酸素状態が不完全と成り易く、研削屑・切削屑の回収処理が不完全となる。
【0011】
本発明の目的は、上記泡状の加工液による加工方法や微粉体回収装置とその方法における数々の問題点に鑑みてなされたもので、特に、加工工具となる研削砥石の中心部から外周面に向けて不活性ガスを浸透噴出し、強アルカリ性研削液を研削砥石から噴出する不活性ガスに直接噴射する泡状クーラント液による研削方法と研削装置を提供するものとした。これにより、特に、被加工物の防錆、洗浄、腐敗防止効果と研削屑の泡状クーラント液への吸着効果・分離効果を高めるとともに、発泡装置の不要化で、設備の低減・ランニングコストの低減・メンテナンスフリーを図った新規なものである。
【0012】
上記目的を達成させるべく、本願の出願人は、下記項目について技術開発を行った。
加工分野を研削・磨きの用途に限定した。▲1▼不活性ガスを研削砥石の中心部から外周へクーラント液を浸透噴出するものに限定した。▲2▼クーラント液は天然の泡材(人体に無害な強アルカリ性石鹸水)に限定した。▲3▼気液混合機能は、砥石直前の導入路上に設置する方式に限定した。▲4▼泡の特性は、研削直後の屑吸着性・研削点の冷却性・屑吸着後の消泡と屑分離性が高い作用を呈するものに限定した。▲5▼泡の包囲は、砥石から出た不活性ガスを研削点近傍空間に止め拡散しない作用のものに限定した。▲6▼研削屑の拡散も泡の包囲と吸着力で抑えるモノに限定した。▲7▼泡は、円筒カバー体叉は包囲箱内に充満して完全に無酸素状態にする。▲8▼泡は研削屑等を吸引した状態で気液分離装置へ移動する方式に限定した。▲9▼気液分離装置は、研削屑と不活性ガスと石鹸水に分離する作用に限定した。▲10▼不活性ガスと強アルカリ石鹸水は循環再利用する方式に限定した。▲11▼特別装置(高圧ポンプ、振動装置、バブル発生器)の省略及び処理を行う為のエネルギーを必要としない新技術に限定した。▲12▼総括的に、泡を強アルカリ性として、洗浄の容易性、高い防錆が得られるものに限定した。等々を総合的に満たす泡状クーラント液による研削方法と研削装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するべく本発明の請求項1による泡状クーラント液による研削方法は、不活性ガスでクーラント液を泡立たせた泡状クーラント液を電着砥石の研削加工点に対して供給してその周囲を無酸素状態で冷却する泡状クーラント液による研削方法において、上記不活性ガスを窒素ガス・アルゴン等とし、上記不活性ガスを電着砥石の中心部から砥石内を浸透して砥石外周面に噴出させ、上記クーラント液は天然石鹸系発泡剤を混入した強アルカリ性液とし、上記強アルカリ性液を上記砥石両側面から加工点付近に噴射時に気化器の原理により、上記不活性ガスと混合して泡立現象を起こさせた泡状クーラント液とし、上記泡状クーラント液は電着砥石の全外周面を包囲して無酸素状態に冷却及び研削屑吸着することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項2による泡状クーラント液による研削方法は、請求項1記載の泡状クーラント液による研削方法において、上記砥石両側面からの噴射前に、上記クーラント液の強アルカリ性液を上記不活性ガスと混合して泡立たせた泡状クーラント液とすることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項3による泡状クーラント液による研削装置は、不活性ガスとなる窒素ガス・アルゴン等を電着砥石の中心部から外周面に噴出するガス供給部と、強アルカリ性のクーラント液に天然石鹸系発泡剤を混入した強アルカリ性液のクーラント液供給部と、上記クーラント液供給部からのクーラント液を砥石外周面へ噴出する不活性ガスと砥石両側面で気化器の原理により、混合して泡立現象を起こさせる気泡生成部と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項4による泡状クーラント液による研削装置は、請求項3記載の泡状クーラント液による研削装置において、上記クーラント液供給部からのクーラント液を上記ガス供給部からの不活性ガスと混合して気化器の原理により気泡とした後に砥石両側面に供給する気液混合器を、備えたことを特徴とする請求項2記載の泡状クーラント液による研削装置。
【0017】
本発明の請求項5による泡状クーラント液による研削装置は、請求項3または4記載の泡状クーラント液による研削装置において、使用後の泡状クーラント液を吸引器で収集し研削屑とクーラント液と天然石鹸系発泡剤に分離する気液分離部を、備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項6による泡状クーラント液による研削装置は、請求項2〜5記載のいずれか一つに記載の泡状クーラント液による研削装置において、電着砥石の外周をカバー体で包囲したことを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項7による泡状クーラント液による研削装置は、請求項2〜5記載のいずれか一つに記載の泡状クーラント液による研削装置において、電着砥石の外周となる加工空間を閉塞箱で包囲したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1記載の泡状クーラント液による研削方法は、不活性ガスを電着砥石の中心部から砥石内を浸透して砥石外周面に噴出させるとともに、天然石鹸系発泡剤を混入した強アルカリ性液を上記砥石両側面から外周面の加工点に噴射することで、気化器の原理により、泡立ち現象を簡便に起こさせて泡状クーラント液に出来る。これで、泡状クーラント液は電着砥石の全外周面を包囲して無酸素状態とし、研削砥石及びワークの冷却及び研削屑吸着作用が発揮される。
これで、研削液の飛散が無く、冷却潤滑液が気泡化して研削点での少量潤滑ができる。また、強アルカリ性液により高い防錆・洗浄・腐敗防止効果が得られる。そして、天然石鹸系発泡剤水による高い研削屑吸着効果と、高い気液分離性により、後処理となる研削屑の分離とクーラント液の清浄度維持が期待できる。
【0021】
更に、請求項2による泡状クーラント液による研削方法は、上記クーラント液の強アルカリ性液を上記不活性ガスと供給経路上で混合して泡立たせた泡状クーラント液とし、これを砥石の両側面から噴射するから、不活性ガスで包まれた砥石外周を泡状クーラント液で二重に包囲でき、より一層完璧に泡状クーラント液は電着砥石の全外周面を包囲して無酸素状態とし、研削砥石及びワークの冷却及び研削屑吸着作用がより一層発揮できる。
【0022】
また、請求項3による泡状クーラント液による研削装置によると、不活性ガスとなる窒素ガス・アルゴン等を電着砥石の中心部から外周面に噴出するガス供給部と、強アルカリ性のクーラント液に天然石鹸系発泡剤を混入した強アルカリ性液のクーラント液供給部と、上記クーラント液供給部からのクーラント液を砥石外周面へ噴出する不活性ガスと砥石両側面で混合して気化器の原理により泡立現象を起こさせる気泡生成部と、を備えたから、泡状クーラント液は砥石の外周面を包囲して無酸素状態とし、研削液の飛散が無く、冷却潤滑液が気泡化して研削点での少量潤滑ができる。また、強アルカリ性液により高い防錆・洗浄・腐敗防止効果が得られる。更に、天然石鹸系発泡剤水による高い研削屑吸着効果や研削砥石及びワークの冷却及び研削屑吸着作用が低廉なシステムで発揮できる。
【0023】
また、請求項4の泡状クーラント液による研削装置は、上記クーラント液供給部からのクーラント液を上記ガス供給部からの不活性ガスと混合して気化器の原理により、気泡とした後に砥石両側面に供給する気液混合器を備えたきから、不活性ガスで包まれた砥石外周を泡状クーラント液で二重に包囲でき、より一層完璧に泡状クーラント液は電着砥石の全外周面を包囲して無酸素状態とし、研削砥石及びワークの冷却及び研削屑吸着作用がより一層発揮できる。
【0024】
また、請求項5の泡状クーラント液による研削装置は、使用後の泡状クーラント液を吸引器で収集し研削屑とクーラント液と天然石鹸系発泡剤に分離する気液分離部を、備えたから、気液分離部において、使用後の泡状クーラント液から研削屑とクーラント液とを天然石鹸系発泡剤の分離作用で効率良く分離でき、使用後のクーラント液の清浄度維持が簡潔な気液分離部によって高いエコ効果が期待できる。
【0025】
また、請求項6と7の泡状クーラント液による研削装置は、電着砥石の外周をカバー体で包囲するか、叉は、電着砥石の外周となる加工空間を閉塞箱で包囲したから、研削砥石の全外周を包囲する泡状クーラント液は、機械外部への飛散が全く無く、電着砥石とその周辺空間を完璧に無酸素状態にでき、且つ、使用後のクーラント液の清浄度維持・気液分離部による成分分離処理が完璧に実施でき、更に高いエコ効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】 本発明の実施の形態を示し、泡状クーラント液による研削方法の工程図である。
【図2】 本発明の第1の実施の形態を示し、泡状クーラント液による研削装置の断面図である。
【図3】 本発明の第2の実施の形態を示し、泡状クーラント液による研削装置の断面図である。
【図4】 本発明の第3の実施の形態を示し、泡状クーラント液による研削装置の断面図である。
【図5】 本発明の第4の実施の形態を示し、電着砥石の加工空間を閉塞箱で覆う断面図である。
【図6】 本発明の第5の実施の形態を示し、気液分離部の周辺機器の配置図である。
【図7】 本発明の研削装置と従来方式の性能比較図である。
【図8】 研削砥石等の従来クーラント方式を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図1乃至図7を参照して本発明の実施の形態を順次に説明する。
【0028】
本発明の実施の形態となる泡状クーラント液による研削方法は、図1の工程図と図2に示す。不活性ガスでクーラント液Kを泡立たせた泡状クーラント液KOを電着砥石10の研削加工点Pに対して供給し、その周囲を無酸素状態で冷却する泡状クーラント液による研削方法であり、その特徴は、上記(不活性ガスを窒素ガスNやアルゴン他)Aとし、この窒素ガスN他を電着砥石10の中心部10Aから砥石内部10Bを浸透して砥石外周面10Cに噴出させる。即ち、(窒素ガスN他を電着砥石10の中心部から砥石外周面に噴出)Bする。上記クーラント液K1は、天然石鹸系発泡剤Sを混入した強アルカリ性液(pH9前後)の(強アルカリ性液K1)Cとする。続いて、上記強アルカリ性液K1を上記砥石両側面叉は外周面10Cに噴射して気化器の原理により、泡立ち現象を起こさせて泡状クーラント液KOとする。即ち、(強アルカリ性液を砥石外周面の不活性ガスと泡立ち作用させて泡状クーラント液)Dとする。上記泡状クーラント液KOは、砥石の全外周面10Cを包囲して無酸素状態に冷却及び研削屑吸着する。即ち、(泡状クーラント液で砥石の全外周面を包囲し無酸素状態で冷却・研削屑吸着)Eとする。特に、天然石鹸系発泡剤水SWによる高い研削屑吸着を発揮する。研削後は、(天然石鹸系発泡剤水による高い気液分離性)Fが得られ、研削屑Gとクーラント液Kと石鹸水の分離により清浄度維持が省エネのエコ作用のもとに得られる。
【0029】
続いて、上記泡状クーラント液による研削方法を実施する本発明の泡状クーラント液による研削装置100,200は、図2〜図6により、その外観及び全体構成を説明する。電着砥石10は、ダイヤモンド砥石やCBN砥石等の通気性の良好な気泡状砥石である。この電着砥石10は、アーバー1に通気回路Lを設け、この先端部のフランジ3A,3Bで固着されている。通気回路L2の繋がる通孔L1から電着砥石10の内部(砥石台金)10Bを浸透して外周面10Cの加工点Pへ不活性ガスとなる窒素ガスN等を供給するガス供給部20を備えている。また、強アルカリ性(pH9前後)のクーラント液K1に天然石鹸系発泡剤Sを混入したクーラント液供給部21を備えている。上記クーラント液供給部21からのクーラント液K1は、アーバー1の通気回路L2に配管P1で導き、砥石の中心部10Aから両側面10Dに向けてクーラント液K1を噴出と、ここで気化器の原理により、泡立ち現象を起こして泡立つ。勿論、図3に示す泡状クーラント液による研削装置200のように、クーラント液供給部21からのクーラント液K1と、ガス供給部20からの不活性ガスとを気液混合器22に導いて、気化器の原理により、完全な泡状クーラント液KOとして、アーバー1の通気回路Lに供給させても良い。しかして、電着砥石10の全外周面から噴出する窒素ガスNとの泡立ち作用と相俟って完全に泡立たった泡状クーラント液KOが砥石の外周を包囲する。上記泡状クーラント液KOは、電着砥石10の全外周面10Cから噴出する窒素ガスNをワークWの被研削面となる加工点Pにも封じ込ませ、無酸素状態に維持して砥石やワークの酸化を防御する。更に、図4に示すように、電着砥石10の全外周面に泡状クーラント液KOを包囲保持させ円筒カバー体30を具備し、ワークWとの加工面に面する部分に開口部30Aを有する。更に、図5に示すように、電着砥石10の外周となる加工空間SOを閉塞箱BOで包囲した構成としても良い。また、更に、図6に示すように、加工空間SOを閉塞箱BO及び図4に示す円筒カバー体30で包囲した使用後の研削済みの泡状クーラント液KO´をバキュームポンプBPで気液分離部23に導き、ここで、研削屑Gとクーラント液K1と天然石鹸系発泡剤Sの天然石鹸系発泡剤水SWと研削屑Gに分離する分離作用により短時間に分離する。上記クーラント液K1と天然石鹸系発泡剤Sの天然石鹸系発泡剤水SWは、再利用される。
【0030】
本発明の実施の形態となる上記泡状クーラント液の研削方法とこの研削装置100によると、以下の作用効果が得られる。先ず、図1と図2に示すように、窒素ガスN・アルゴン等の不活性ガスを電着砥石10の中心部10Aから砥石内10Bを浸透して砥石外周面10Aに噴出させるとともに、天然石鹸系発泡剤Sを混入した強アルカリ性液K1は窒素ガスN・アルゴン等の不活性ガスをアーバー1の通気回路L2に配管P1で導き、砥石の両側面10Dに向けてクーラント液K1を噴出すると、気化器の原理により、ここで泡立ち現象を起こす。これで、泡状クーラント液は砥石の外周面10Cを包囲している不活性ガスの外周を更に包囲して完全な無酸素状態とし、研削砥石10及びワークWの冷却及び研削屑吸着作用が発揮される。
【0031】
また、図3に示す研削装置200は、窒素ガスN・アルゴン等の不活性ガスを電着砥石10の中心部10Aから砥石内10Bを浸透して砥石外周面10Aに噴出させるとともに、クーラント液供給部21からのクーラント液K1と、ガス供給部20からの不活性ガスとを気液混合器22に導いて、気化器の原理により、完全な泡状クーラント液KOとして、アーバー1の通気回路L2に供給される。そして、砥石の両側面10Dから外方向に向けて泡状クーラント液KOを噴出する。これで、泡状クーラント液は砥石の外周面10Cを包囲している不活性ガスの外周を更に包囲して完全な無酸素状態とし、研削砥石10及びワークWの冷却及び研削屑吸着作用が発揮される。
【0032】
しかして、上記泡状クーラント液の研削方法によると、泡状クーラント液KOの飛散が無く、冷却潤滑液が気泡化して研削点での少量潤滑ができる。また、強アルカリ性液K1により高い防錆・洗浄・腐敗防止効果が得られる。そして、強アルカリ性液(pH9前後)K1に混入している天然石鹸系発泡剤水SWによる高い研削屑吸着効果と、高い気液分離性により、研削屑Gを含有した泡状クーラント液KO中から研削屑Gを分離してクーラント液Kに液化する分離作用と、清浄度維持が短時間に図られて高いエコ効果・環境保全効果が期待できる。
また、上記泡状クーラント液の研削装置100,200によると、泡状クーラント液は電着砥石の外周面を包囲して無酸素状態とし、研削液の飛散が無く、冷却潤滑液が気泡化して研削点Pでの少量潤滑ができる。また、強アルカリ性液K1により高い防錆・洗浄・腐敗防止効果が得られる。更に、天然石鹸系発泡剤水Sによる高い研削屑吸着効果や研削砥石及びワークWの冷却及び研削屑吸着作用が低廉なシステムとなる研削装置で発揮できる。
【0033】
また、本発明の実施の形態となる上記泡状クーラント液の研削装置100,200によると、図4に示すように、砥石外周10Cを包囲する円筒カバー体30を備えたから、泡状クーラント液KOの飛び散りを防ぎ、より一層のワークWや砥石の冷却及び研削屑吸着作用が得られる。円筒カバー体30は、より一層に、使用後の泡状クーラント液KOの回収効率を高めるとともに、気液分離部23により研削屑Gとクーラント液Kとを天然石鹸系発泡剤Sの天然石鹸系発泡剤水SWの分離作用により短時間に分離する。
【0034】
また、図5に示すように、砥石外周10C及びその加工空間SOを包囲する閉塞箱BOを備えたから、泡状クーラント液KOの飛び散りを広範囲にわたり防ぎ、より一層のワークWや砥石の冷却及び研削屑吸着作用が得られる。更に、閉塞箱BOは、より一層に、使用後の泡状クーラント液KOの回収効率を高める、そして、泡状クーラント液KOは、図6に示すように、使用後の研削済みの泡状クーラント液KO´をバキュームポンプBPで気液分離部23に導き、ここで、研削屑Gとクーラント液K1と天然石鹸系発泡剤Sの天然石鹸系発泡剤水SWと研削屑Gに分離する分離作用により短時間に分離する。上記クーラント液K1と天然石鹸系発泡剤Sの天然石鹸系発泡剤水SWは、再利用される。
【0035】
また、気液分離部23において、使用後の泡状クーラント液KOから研削屑Gとクーラント液Kとの分離作用は、天然石鹸系発泡剤Sで効率良く促進され、使用後のクーラント液の清浄度維持が簡潔な気液分離部23によって高いエコ効果とが期待できる。即ち、設備の低減・ランニングコストの低減・発泡装置のメンテナンスフリーを図った泡状クーラント液による研削方法と研削装置が提供できる。
【0036】
最後に、図7において、一般研削、バイパー研削、ハイパー研削、泡ハイパー(本発明の研削方法と研削装置)を比較評価した。その結果は、全ての項目、特に電着砥石(ダイヤモンド、CBN)において、最良の評価が得られた。
【0037】
上記泡状クーラント液KOによる研削方法や研削装置100は、上記実施例に限定されず、発明の要旨内での設計変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、その対象物を通気性の良好な気泡状砥石に通気回路を設けた電着砥石を対象の実施例で説明したものであるが、様々な加工手段となる加工工具や研削砥石を対象としての適用が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 アーバー
3A,3B フランジ
10 電着砥石
10A 中心部
10B 砥石内部
10C 砥石外周面
10D 両側面
20 ガス供給部
21 クーラント液供給部
22 気液混合器
23 気液分離部
30 円筒カバー体
30A 開口部
100,200 泡状クーラント液による研削装置
BO 閉塞箱
BP バキュームポンプ
N 窒素ガス
K クーラント液
K1 強アルカリ性液(pH9前後)
KO 泡状クーラント
KO´ 使用済み液泡状クーラント液
G 研削屑
L 通気回路
L1 通孔
L2 通気回路
P 研削加工点
P1 配管
S 天然石鹸系発泡剤
SW 天然石鹸系発泡剤水
SO 加工空間
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガスでクーラント液を泡立たせた泡状クーラント液を電着砥石の研削加工点に対して供給してその周囲を無酸素状態で冷却する泡状クーラント液による研削方法において、上記不活性ガスを窒素ガス・アルゴン等とし、上記不活性ガスを電着砥石の中心部から砥石内を浸透して砥石外周面に噴出させ、上記クーラント液は天然石鹸系発泡剤を混入した強アルカリ性液とし、上記強アルカリ性液を上記砥石両側面から加工点付近に噴射時に上記不活性ガスと混合して泡立現象を起こさせた泡状クーラント液とし、上記泡状クーラント液は電着砥石の全外周面を包囲して無酸素状態に冷却及び研削屑吸着することを特徴とする泡状クーラント液による研削方法。
【請求項2】
上記砥石両側面からの噴射前に、上記クーラント液の強アルカリ性液を上記不活性ガスと混合して泡立たせた泡状クーラント液とすることを特徴とする請求項1記載の泡状クーラント液による研削方法。
【請求項3】
不活性ガスとなる窒素ガス・アルゴン等を電着砥石の中心部から外周面に噴出するガス供給部と、強アルカリ性のクーラント液に天然石鹸系発泡剤を混入した強アルカリ性液のクーラント液供給部と、上記クーラント液供給部からのクーラント液を砥石外周面へ噴出する不活性ガスと砥石両側面で混合して泡立現象を起こさせる気泡生成部と、を備えたことを特徴とする泡状クーラント液による研削装置。
【請求項4】
上記クーラント液供給部からのクーラント液を上記ガス供給部からの不活性ガスと混合して気泡とした後に砥石両側面に供給する気液混合器を備えたことを特徴とする請求項3記載の泡状クーラント液による研削装置。
【請求項5】
使用後の泡状クーラント液を吸引器で収集し研削屑とクーラント液と天然石鹸系発泡剤に分離する気液分離部を、備えたことを特徴とする請求項3または4記載の泡状クーラント液による研削装置。
【請求項6】
電着砥石の外周をカバー体で包囲したことを特徴とする請求項2〜5記載のいずれか一つに記載の泡状クーラント液による研削装置。
【請求項7】
電着砥石の外周となる加工空間を閉塞箱で包囲したことを特徴とする請求項2〜5記載のいずれか一つに記載の泡状クーラント液による研削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−187700(P2012−187700A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68787(P2011−68787)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(509153364)
【Fターム(参考)】