説明

波長フィルターの製造方法

【課題】製作されたモールドを利用して導波路及び格子を一度に押圧して簡単に形成できる波長フィルターの製造方法を提供すること。
【解決手段】波長分割多重(WDM)光通信システムに使われる波長フィルターの製造において、基板200上に高分子で構成された下部クラッド層210とコア層220を形成する段階と、コア層220をモールド230で押圧してモールドのパターンを転写する段階と、下部クラッド層210とコア層220を硬化させる段階と、モールド230をコア層220から分離する段階と、コア層上に上部クラッド層240を形成する段階と、上部クラッド層240の上側に電極250を形成する段階とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)光通信システムに使われる波長フィルターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近急増する音声データ、映像データなどの多様な形態の情報を統合して高速で伝送し、これを処理できる超高速広帯域総合通信網を構築するための光通信システムの研究が世界的に活発に推進されている。
【0003】
特に、波長分割多重化方式の光通信システムは、波長が他の複数個の光源にそれぞれ他の情報を入力した後、これを多重化して一つの光ファイバーを介して伝送し、受信端ではこの多重化された信号を逆多重化(Demultiplexing)して分離した後、各波長別に光信号を受信することによって、処理できる情報の帯域幅を大きく増やすことが可能になる長所がある。
【0004】
したがって、波長分割多重化技法は、超高速光通信網を構成するための核心的な技術として知られている。
【0005】
このような波長分割多重化光通信システムで使われる核心的な部品の一つは、所望する信号を伝送する特定波長の光を選択できる波長フィルター(Wavelength Filter)である。
【0006】
従来の波長フィルターとして光敏感性光ファイバーに位相マスクを介して紫外線を照射することによって形成される光ファイバーブラッグ格子(Fiber Bragg Grating:FBG)が利用されている。
また、光ファイバーは、光ファイバーブラッグ格子に熱またはストレスを加えて、波長を選択できる可変波長フィルターとしても使われている。
【0007】
しかし、光ファイバーブラッグ格子は、優秀な特性にもかかわらず、光ファイバーの特性上その大きさを減らすのが難しくて、他の光通信素子との集積が容易でない。
したがって、平面導波路型波長フィルターを開発しようとする努力が進行している。
【0008】
この平面導波路型素子は、半導体製造工程を用いて生産性が優秀であって大きさが小さくて複数の素子を集積させて製造することに有利である。
【0009】
このように商用化された平面導波路型素子としてはAWG(Arrayed Waveguide Grating)、電力分配器(power Splitter)、可変型光減衰器、光スイッチなどがある。
【0010】
このように、波長分割多重方式の光通信システムは、一チャネル当たり複数個の他の波長の光を総合して伝送したり、分離処理できるだけでなく、周期的にチャネル間の光スイッチングを行うことができて、超高速光通信システムに活用する場合、テラ級(Tbps)の情報処理能力を有することができる。
【0011】
一方、光素子の主な要求事項は光損失が少なくなければならないことであり、このような光素子の材料でシリカが大部分使われている。
【0012】
シリカの光損失は0.01dB/cm程度に非常に小さいが光導波路を製作しようとするなら1000℃以上の高温の工程を経るようになるので光素子の製作に障害要素となる。
【0013】
反面、最近では、光通信波長帯域での進行損失が小さいポリマー材料の開発と共にポリマー材料の優秀な熱光学特性を利用した素子が登場している。
【0014】
このようなポリマーを光素子材料で利用する場合、経済性及び他の受動光素子との集積が可能であって最近になって関心が高まっている。
ポリマー基板の光通信素子は、温度増加による屈折率の変化がシリカに比べて10倍以上大きいため、低電力消耗の熱光学素子及び熱光学素子アレイの製作において有利である。
【0015】
特に、多様な熱光学素子のうちからアレイ形態の可変型光減衰器及び可変波長フィルターがポリマー材料の特性により競争力を有するものと期待されている。
【0016】
図1は、一般的な平面導波路型波長フィルターを概略的に示す図面である。
この平面導波路型波長フィルターは、導波路上に格子を形成して導波路長さの方向に屈折率が周期的に変わるようにすることによって製作できる。
【0017】
平面導波路型波長フィルターにλ1、λ2、λ3、....λNのN個の波長の光が波長フィルターに入射するようになれば、次の条件を満足する波長の光は反射されて、残りの波長の光は波長フィルターを通過するようになる。
【0018】
λ=2neffΛ ここで、neffは、平均屈折率であり、Λは、格子周期である。
【0019】
このような波長フィルターを製作するためには格子を形成しなければならないが、一般的に格子は、位相マスクを介して紫外線の干渉パターンを光敏感性高分子材料に転写することによって屈折率変化が周期的に起こるようにして形成する。
【0020】
しかし、このように位相マスクを利用した転写方法は、非常に精密なマスク整列が要求されるだけでなく、高分子材料の選択に制限を与えるようになる。
【0021】
一方、波長フィルターを製作するための他の方法はレーザービームに敏感な高分子材料を用いて導波路と共に直接格子を描くレーザー直接転写法である。
【0022】
レーザー直接転写法は、高い解像度を有する微細なパターンを速い速度で形成させることができる方法である。
【0023】
物質に照射されるレーザービームは、非常に短い時間に局部的な温度上昇を起こして物質の表面に干渉性または非干渉性構造を形成させる。
干渉性構造の周期性は、使われるレーザー変数と物質自らの変数により左右されるようになる。
【0024】
レーザービームの変数としては、スポットサイズ、レーザーの波長などがあり、そして基板の物質の変数としては入射光に対する吸収度、反射度、熱拡散率、熱伝導率などを挙げることができる。
【0025】
レーザー直接転写法は、光学系の構成が簡単で短い時間に大面積にわたりポリマー薄膜パターニングに使うことができるが、レーザービームに敏感な同時に光通信波長帯域で損失が少ない高分子を用いなければならないので、クラッディング材料の選択に難しさがある。
【0026】
また、レーザービームを利用して直接格子を描く方式は、生産性が低いため波長フィルターの大量生産に適合しない。産業上利用における低コストの大量生産には適合しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は、製作されたモールド(型)を用いて導波路及び格子を一度に押圧(compressing)して簡単に形成することができるようにした、波長分割多重(WDM)光通信システムに使われる波長フィルターの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記目的を達成するために、本発明による波長フィルターの製造方法は、基板上に高分子で構成された下部クラッド層とコア層を形成する段階と、前記コア層をモールドで押圧して前記モールドのパターンを転写する段階と、前記下部クラッド層と前記コア層を硬化させる段階と、前記モールドを前記コア層から分離する段階と、前記コア層上に上部クラッド層を形成する段階と、前記上部クラッド層の上側に電極を形成する段階と、を含んでいることを特徴とする。
【0029】
望ましくは、前記モールドの製作は、基板上に高分子層を形成する段階と、前記高分子層をパターニングする段階と、前記パターニングされた高分子層上に金属をメッキする段階と、前記金属を高分子層から分離する段階と、を含んでいることを特徴とする。
【0030】
望ましくは、前記モールドの製作は、基板上に高分子層を形成する段階と、前記高分子層をパターニングする段階と、前記パターニングされた高分子層上に透明な高分子材料を塗布する段階と、前記透明な高分子材料を硬化させて高分子層から分離する段階、を含んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、波長フィルターの製作において、まずモールドを製作して、このモールドでコア層を押圧して一度に導波路及び格子を形成することができるので、製作費用を節減して大量生産できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、添付した図面を参照にして本発明の具体的な実施形態に対して詳細に説明する。
図2Aないし図2Eは、本発明による波長フィルターを製造するためのモールド(型)を製作する過程を概略的に示す図面である。
【0033】
モールドのパターンは、得ようとする高分子微細パターンの凹凸と反対に形成し、モールドの材質は、ニッケル(Ni)のように材質の強度が高い金属材質が望ましい。
【0034】
図2Aに示したように、シリコーンのような基板100に高分子層110をスプレー法、スピンコーティング法などの方法により形成する。この時、高分子層110は数μmの厚さに蒸着する。
【0035】
また、高分子層110は電子ビームに敏感な材料を用いており、PMMA(polymethylmethacrylate)などがある。
ここで、高分子は電子ビームに敏感で照射される部位に多重化が進められ、このような性質を利用して電子ビーム照射及び現像を介して所望するパターン形成が可能である。
【0036】
高分子の種類が陽性(ポジティブ)感光剤の場合に電子ビームに照射された部分が現像溶液に溶けて、陰性(ネガティブ)感光剤の場合に電子ビームに照射できない部分が現像溶液に溶けるようになる。
【0037】
したがって、上記したように、基板100上に高分子層110を形成した後、図2Bに示したように、電子ビームを高分子層110に照射して導波路と格子を描く。
【0038】
以後、図2Cに示したように、現像溶液に浸して所望するパターン通り現像できるようにする。
この時、ネガティブ感光剤を用いたので、図示したように電子ビームが照射できない部分が現像される。
【0039】
ここで、導波路の幅と高さは、単一モード素子で用いる場合は数μm程度であり、多重モード素子で用いる場合は数10μmになる。
【0040】
そして、格子周期は使われる波長によって違っており、1550nm波長帯域では400〜600nm範囲になり、格子の深さは最終製作される素子の高分子屈折率によって決定される。
通常、上記のように所定のパターンを含んでいる高分子層110をマスターと呼ぶ。
【0041】
図2Dを参照すれば、マスター上に電鋳メッキ(electroforming)方法を利用して金属モールド120を製作する。
ここで、電鋳メッキ方法とは電気的性質を利用して対象表面に薄い金属膜を被せる技術をいう。金属材料としてはニッケル(Ni)が多く使われる。
【0042】
そして、このように電鋳メッキ方法を利用すればパターニングされているマスターの表面に薄い薄膜の金属膜が形成されるので、パターンが形成された金属モールド120の反対面を平坦にする作業を行う。
【0043】
最終的に、図2Eに示したように、マスターで金属モールド120を分離する。
このように製作された金属モールド120のパターンはマスター(高分子層)に形成されたパターンと陰陽が反対になる。
金属モールド120は熱硬化方式を利用した波長フィルターの製作に使われる。
【0044】
図3は、本発明による波長フィルターを製造するためのモールド(型)を製作する過程を概略的に示す図面である。
図3Aないし図3Eの実施形態によるモールドは、紫外線硬化方式を利用した波長フィルターの製作に使われる。
【0045】
図3Aに示したように、モールドは、シリコンのような基板100に高分子層110をスプレー法、スピンコーティング法などの方法により形成する。この時、高分子層110は数μmの厚さに蒸着される。
【0046】
また、高分子層110は、電子ビームに敏感な材料を用いており、PMMAなどを使うことができる。
ここで、高分子は、電子ビームに敏感で照射される部位に多重化が進められ、このような性質を利用して電子ビーム照射及び現像を介して所望するパターン形成が可能である。
【0047】
高分子の種類が陽性感光剤の場合に電子ビームに照射された部分が現像溶液に溶けて、陰性感光剤の場合に電子ビームに照射できない部分が現像溶液に溶けるようになる。
【0048】
したがって、上記したように、基板100上に高分子層110を形成した後、図3Bに示したように、電子ビームを高分子層110に照射して導波路と格子を描く。
【0049】
以後、図3Cに示したように、現像溶液に浸して所望するパターン通り現像できるようにする。
ここで、導波路の幅と高さは、単一モード素子で用いる場合は数μm程度であり、多重モード素子で用いる場合は数10μmになる。
【0050】
そして、格子周期は使われる波長によって違っており、1550nm波長帯域では400〜600nm範囲になり、格子の深さは最終製作される素子の高分子屈折率によって決定される。
通常、上記のように所定のパターンを含んでいる高分子層110をマスターと呼ぶ。
【0051】
図3Dに示すように、マスター上に高分子モールド130を形成するために紫外線に透明な高分子膜材料を注いだり、スピンコーティングする。
透明な高分子材料としてはPDMS(polydimethylsiloxane)などを用いることができる。
【0052】
続いて、図3Eに示したように、マスター上に塗布されて硬化した固形状の高分子膜を分離して所望するパターンを有する高分子モールド130を得る。
上記のように製作された金属モールド120または高分子モールド130を利用して波長フィルターを製作する。
【0053】
図4Aないし4Eは、本発明による波長フィルターの製作方法を示す図面である。
【0054】
まず、図4Aに示したように、シリコーンのような基板200上に高分子を二層210、220にスピンコーティングして、下部クラッド層210とコア層220を形成する。
ここで、下部クラッド層210の屈折率はコア層220より小さくて、光がコア層220を介して伝送できなければならない。
【0055】
続いて、図4Bに示したように、既に製作されたモールド(型)230でコア層220に圧力を加えて押圧し、モールドのパターンがコア層220に転写できるようにする。
ここで、高分子が熱硬化材料の場合には金属モールドを用いており、紫外線硬化材料の場合は、透明な高分子モールドを用いる。
【0056】
したがって、モールド230上に熱を加えたり紫外線を照射して高分子を硬化させる。
【0057】
以後、図4Cのようにモールド230をコア層220から分離する。
そうすれば、コア層220には、モールド230のパターンが転写されてモールド230と陰陽が反対であるパターンが形成される。
【0058】
そして、図4Dに示したように、コア層220上に上部クラッド層240をスピンコーティングする。
上部クラッド層240は、下部クラッド層210と同一屈折率を有する高分子を用いる。
【0059】
上記のように製作された波長フィルターは、格子の周期及び深さ、使われた高分子の屈折率により定義される特定の波長の光を反射するようになる。
反射される光の波長を変化させることができる可変波長フィルターは、格子上側の上部クラッド層240上に金のような金属電極250を形成して製作する(図4E参照)。
【0060】
図4Eに図示したような可変波長フィルターは、金属電極250に電流を流して熱を発生させることによって駆動される。
【0061】
最終的に、このような工程により製作された可変波長フィルターは、光ファイバーを入出力導波路に連結してハウジング作業などのパッケージングを経て製品を完成させる。
【0062】
以上、本発明を具体的な実施形態を介して詳細に説明したが、これは、本発明を具体的に説明するためのことであって、本発明による波長フィルターの製造方法は、これに限らず、本発明の技術的思想の範囲内で当該分野の通常の知識を有する者によりその変形や改良が可能であることが明白である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】一般的な平面導波路型波長フィルターを概略的に示す図面。
【図2】本発明による波長フィルターを製造するためのモールドを製作する過程(A)〜(E)を概略的に示す図である。
【図3】本発明による波長フィルターを製造するためのモールドを製作する過程(A)〜(E)を概略的に示す図である。
【図4】本発明による波長フィルター製作方法を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
100;基板
110;高分子層
120;金属モールド
130;高分子モールド
200;基板
210;下部クラッド層
220;コア層
230;モールド
240;上部クラッド層
250;金属電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に高分子で構成された下部クラッド層とコア層を形成する段階と、
前記コア層をモールドで押圧して前記モールドのパターンを転写する段階と、
前記下部クラッド層と前記コア層を硬化させる段階と、
前記モールドを前記コア層から分離する段階と、
前記コア層上に上部クラッド層を形成する段階と、
前記上部クラッド層の上側に電極を形成する段階と、を含んでいることを特徴とする波長フィルターの製造方法。
【請求項2】
前記モールドの製作は、
基板上に高分子層を形成する段階と、
前記高分子層をパターニングする段階と、
前記パターニングされた高分子層上に金属をメッキする段階と、
前記金属を高分子層から分離する段階と、を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の波長フィルターの製造方法。
【請求項3】
前記金属はニッケル(Ni)であることを特徴とする請求項2に記載の波長フィルターの製造方法。
【請求項4】
前記高分子層上に金属をメッキする段階は、電鋳メッキ方法を用いることを特徴とする請求項2に記載の波長フィルターの製造方法。
【請求項5】
前記高分子層の材料は、PMMA(polymethylmethacrylate)であることを特徴とする請求項2に記載の波長フィルターの製造方法。
【請求項6】
前記高分子層をパターニングする段階は、高分子層に導波路と格子を形成する段階であることを特徴とする請求項2に記載の波長フィルターの製造方法。
【請求項7】
前記モールドの製作は、
基板上に高分子層を形成する段階と、
前記高分子層をパターニングする段階と、
前記パターニングされた高分子層上に透明な高分子材料を塗布する段階と、
前記透明な高分子材料を硬化させて高分子層から分離する段階と、を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の波長フィルターの製造方法。
【請求項8】
前記高分子層の材料はPMMAであることを特徴とする請求項7に記載の波長フィルターの製造方法。
【請求項9】
前記透明な高分子材料はPDMS(polydimethylsiloxane)であることを特徴とする請求項7に記載の波長フィルターの製造方法。
【請求項10】
前記高分子層をパターニングする段階は、高分子層に導波路と格子を形成する段階であることを特徴とする請求項7に記載の波長フィルターの製造方法。
【請求項11】
前記下部クラッド層と前記コア層を硬化させる段階は、モールドに熱を加える方法によることを特徴とする請求項1に記載の波長フィルターの製造方法。
【請求項12】
前記下部クラッド層と前記コア層を硬化させる段階は、モールドに紫外線を照射する方法によることを特徴とする請求項1に記載の波長フィルターの製造方法。
【請求項13】
前記下部クラッド層と前記上部クラッド層は、屈折率が同じである高分子であることを特徴とする請求項1に記載の波長フィルターの製造方法。
【請求項14】
前記下部クラッド層の屈折率は、前記コア層より小さいことを特徴とする請求項1に記載の波長フィルターの製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−39292(P2006−39292A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220284(P2004−220284)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(596066770)エルジー エレクトロニクス インコーポレーテッド (384)
【Fターム(参考)】