説明

波長多重信号測定装置とその測定方法

【課題】各チャネルが差動位相変調された波長多重信号光において、個々の変調信号の隣接シンボル間での位相差を一括かつ同時に評価可能とする。
【解決手段】評価対象の波長多重信号光Sに対して、該信号光を構成する変調信号の1シンボル長に相当する時間遅延ΔTを付与し(11)、時間遅延ΔTを付与前の信号光と付与後の信号光のそれぞれについて、サンプリングパルス光Lとの干渉効果を用いることにより全電界振幅を時間T毎にM回測定し(12−1,12−2)、測定されたM個のサンプルをフーリエ解析することで各波長の変調信号の電界振幅を算出し(13)、各波長毎に時間遅延ΔTを付与前の信号光の電界振幅と付与後の信号光の電界振幅とを比較することにより各波長の変調信号における隣接シンボル間の位相差を算出する(14−1〜14−M)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長多重信号光の各波長の変調信号の電界振幅及び隣接シンボル間の位相差を算出する波長多重信号測定装置とその測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波長分割多重伝送システムの変調信号波形測定技術として、波長多重信号光の全電界振幅を局発短パルスとの線形相関を利用することにより超高速サンプリングした後、取得されたデータをデジタル信号処理にてフーリエ解析して個々の変調信号波形を再構築する方法が提案されている(特許文献1参照)。このような方法では波長多重信号光を光学フィルタ等を使って光段で個々の波長に分離する必要なく、波長多重信号光の全電界振幅を受信した後、設計制御の容易なデジタルフィルタを使って波長分離を行い各変調信号の電界振幅を同時かつ一括に再構築することができる。
【0003】
特許文献1の手法を用いることによって、波長多重信号光をデジタル信号処理により波長分離を行い各変調信号の電界振幅を一括かつ同時に再構築することができる。再構築された各変調信号の電界振幅の二乗和を演算することで強度情報を得られるため、例えば波長多重信号光の各チャネルが強度変調されていた場合にはそれらの強度アイパターン等をモニターすることが可能である。
【0004】
一方、近年の波長分割多重を用いた超高速・大容量光伝送システムでは、従来の強度変調方式に加えて、キャリアの位相情報を活用したDPSK(Differential Phase Shift Keying)やDQPSK等の差動位相変調方式が導入されつつある。
【0005】
各チャネルが差動位相変調(ここではシンボル間の位相差にビット情報を載せる)されていた場合には、例えば非特許文献1記載のような手段を用いて再構築した電界振幅の位相を隣接サンプリングイベント間で比較することによって隣接サンプリングイベント間での変調信号の位相差を算出することが可能である。
【0006】
しなしながら、非特許文献1の手法によって算出された測定結果はサンプリングイベント間隔に依存する光源コヒーレンスに応じた位相雑音を過剰に含んでおり、変調信号の隣接シンボル間での位相差を正確に評価することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2009/145070
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】C. Dorrer, “Monitoring of optical signals from constellation diagrams measured with linear optical sampling,” Journal of Lightwave Technology, vol. 24, Issue 1, pp.313-321, 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、従来の手法によって算出された測定結果はサンプリングイベント間隔に依存する光源コヒーレンスに応じた位相雑音を過剰に含んでおり、変調信号の隣接シンボル間での位相差を正確に評価することは困難である。
本発明は上記の事情を鑑みてなれたもので、各チャネルが差動位相変調された波長多重信号光において、個々の変調信号の隣接シンボル間での位相差を一括かつ同時に評価可能な波長多重信号測定装置とその測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る波長多重信号測定装置は、以下のような態様の構成とする。
(1)互いに異なる波長の信号光がそれぞれ変調され合波されることで生成される波長多重信号光に対して、前記波長多重信号光を構成する変調信号の1シンボル長に相当する時間遅延ΔTを付与する遅延付与手段と、スペクトルが前記波長多重信号光の全帯域よりも大きくかつ前記波長多重信号光の帯域全体をカバーするようなサンプリングパルス光を発生するサンプリングパルス光発生手段と、前記サンプリングパルス光との干渉効果を用いて前記波長多重信号光の全電界振幅を時間T毎にM回測定する測定手段と、前記測定手段でサンプリングされた波長多重信号光の全電界振幅を演算処理することで個々の変調信号の電界振幅を算出し前記変調信号の隣接シンボル間ΔTでの位相差を解析する演算処理手段とを具備し、前記測定手段は、前記波長多重信号光の全帯域をΔftotalとした時、時間Tを1/Δftotalよりも小さく設定し、全観測時間の逆数1/(MT)を前記波長多重信号光の個々の波長(周波数)間隔Δfよりも小さくなるように設定した上で、前記波長多重信号光の全電界振幅Jを時間T毎にM回測定し、前記演算処理手段は、前記測定手段を介して得られる前記波長多重信号光の全電界振幅Jの一連のサンプルをフーリエ解析することで個々の変調信号の電界振幅を算出し、前記1シンボル長の時間遅延ΔTの効果によって算出される時刻tおよび時刻t+ΔTにおける電界振幅を、波長毎に比較することでそれぞれの変調信号に対して隣接シンボル間での位相差を算出する態様とする。
【0011】
(2)(1)の装置において、前記遅延付与手段は、前記サンプリングパルス光および前記波長多重信号光を2分岐する第1の分岐手段と、前記分岐後のサンプリングパルス光もしくは前記波長多重信号光の一方に前記波長多重信号光を構成する変調信号の1シンボル長に相当する時間遅延ΔTを付与する第1の遅延手段とを備え、前記測定手段は、前記2分岐されたサンプリングパルス光および前記波長多重信号光をM分岐する第2の分岐手段と、前記M分岐された前記サンプリングパルス光もしくは前記波長多重信号光の一方に時間Tの整数倍の時間遅延を(M−1)Tまで付与する第2の遅延手段と、前記時間Tの整数倍の時間遅延を付与されたサンプリングパルス光もしくは前記波長多重信号光を他方と合波し干渉信号を得るための2M個の光90度ハイブリッドと、前記2M個の光90度ハイブリッドからの出力光を受光して実部I、虚部Qの直交電流を出力する4M個のバランス型受光器とを備え、前記演算処理手段は、前記4M個のバランス型受光器から出力される直交電流の実部I、虚部Qを数値化する数値化手段と、前記数値化された直交電流の実部I、虚部Qの2M個のペアを用いて、個々の変調信号の隣接シンボル間ΔTでの位相差を算出する演算処理部とを備える態様とする。
【0012】
(3)(1)の装置において、前記遅延付与手段は、前記サンプリングパルス光と前記波長多重信号光をそれぞれ2Mの支流に分岐する第1の分岐手段と、前記分岐後のサンプリングパルス光または前記波長多重信号光のどちらか一方に、時間Tの整数倍の時間遅延を0から(M−1)T、およびΔTから(M−1)T+ΔTまで付与する遅延手段(但し、ΔTは前記波長多重信号光を構成する変調信号の1シンボル長に相当する固定遅延)とを備え、前記測定手段は、前記分岐、遅延されたサンプリングパルス光もしくは前記波長多重信号光を他方と合波し干渉信号を得るための2M個の光90度ハイブリッドと、前記2M個の光90度ハイブリッドからの出力光を受光して実部I、虚部Qの直交電流を出力する4M個のバランス型受光器とを備え、前記演算処理手段は、前記4M個のバランス型受光器から出力される直交電流の実部I、虚部Qを数値化する数値化手段と、前記数値化された直交電流の実部I、虚部Qの2M個のペアを用いて、個々の変調信号の隣接シンボル間ΔTでの位相差を算出する演算処理部とを備える態様とする。
【0013】
(4)(1)の装置において、前記サンプリングパルス光に、前記波長多重信号光を構成する変調信号の繰り返し周波数の整数分周から僅かに離調した繰り返し周波数を持つパルス光を用いることで前記変調信号の波形全体を測定する態様とする。
また、本発明に係る光周波数領域反射測定方法は、以下のような態様の構成とする。
【0014】
(5)互いに異なる波長の信号光がそれぞれ変調され合波されることで生成される波長多重信号光に対して、前記波長多重信号光を構成する変調信号の1シンボル長に相当する時間遅延ΔTを付与し、スペクトルが前記波長多重信号光の全帯域よりも大きくかつ前記波長多重信号光の帯域全体をカバーするようなサンプリングパルス光を発生し、前記サンプリングパルス光との干渉効果を用いて前記波長多重信号光の全電界振幅を時間T毎にM回測定し、前記サンプリングされた波長多重信号光の全電界振幅を演算処理することで個々の変調信号の電界振幅を算出して前記変調信号の隣接シンボル間ΔTでの位相差を解析するものとし、前記全電界振幅の測定は、前記波長多重信号光の全帯域をΔftotalとした時、時間Tを1/Δftotalよりも小さく設定し、全観測時間の逆数1/(MT)を前記波長多重信号光の個々の波長(周波数)間隔Δfよりも小さくなるように設定した上で、前記波長多重信号光の全電界振幅Jを時間T毎にM回測定し、前記測定を通じて得られる前記波長多重信号光の全電界振幅Jの一連のサンプルをフーリエ解析することで個々の変調信号の電界振幅を算出し、前記1シンボル長の時間遅延ΔTの効果によって算出される時刻tおよび時刻t+ΔTにおける電界振幅を、波長毎に比較することでそれぞれの変調信号に対して隣接シンボル間での位相差を算出する態様とする。
【発明の効果】
【0015】
以上の構成によれば、評価対象の波長多重信号光に対して、該信号光を構成する変調信号の1シンボル長に相当する時間遅延ΔTを付与し、時間遅延ΔTを付与前の信号光と付与後の信号光のそれぞれについて、サンプリングパルス光との干渉効果を用いることにより全電界振幅を時間T毎にM回測定し、測定されたM個のサンプルをフーリエ解析することで各波長の変調信号の電界振幅を算出し、各波長毎に時間遅延ΔTを付与前の信号光の電界振幅と付与後の信号光の電界振幅とを比較することにより各波長の変調信号における隣接シンボル間の位相差を算出するので、各チャネルが差動位相変調された波長多重信号光における個々の変調信号の隣接シンボル間での位相差を一括して正確に評価することができる。
【0016】
したがって、本発明によれば、各チャネルが差動位相変調された波長多重信号光において、個々の変調信号の隣接シンボル間での位相差を一括かつ同時に評価可能な波長多重信号測定装置とその測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る波長多重信号測定装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の実施形態の具体的な構成を示すブロック図である。
【図3】図2の構成において、遅延器を集約させた場合の構成を示すブロック図である。
【図4】図1の実施形態において、波長多重信号光を構成する変調信号の1つとサンプリングパルス光の干渉を時間軸上で模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
図1は本発明に係る波長多重信号測定装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。図1において、Sは被測定光信号となる波長多重信号光、Lは測定装置内で発生される局発光パルス(サンプリングパルス光)である。波長多重信号光Sおよびサンプリングパルス光Lはそれぞれ2分岐される。
【0019】
上記波長多重信号光Sの経路の一方には、1シンボル長遅延付与部11が設けられ、この遅延付与部11により波長多重信号光Sを構成する変調信号の1シンボル長に相当する相対遅延ΔTが付与される。その後、波長多重信号光Sとサンプリングパルス光Lとのペア、遅延された波長多重信号光S’とサンプリングパルスLとのペアは、それぞれ連続時系列電界サンプリング部12−1および12−2に入力される。
【0020】
上記連続時系列電界サンプリング部12−1では、波長多重信号光Sの全電界振幅b(t)に対して、b(t)、b(t+T),…,b(t+(M−1)T)が測定される。また、連続時系列電界サンプリング部12−2では相対的な時間遅延ΔTの効果によって、波長多重信号光S’の全電界振幅b(t+ΔT)に対して、b(t+ΔT)、b(t+ΔT+T),…,b(t+ΔT+(M−1)T)が測定される。ここで、時間遅延Tおよびトータル遅延量MTは本方式によって実現されるデジタルフィルタのそれぞれ自由スペクトルレンジおよび分解能を決定する。
【0021】
電界振幅算出部13では、連続時系列電界サンプリング部12−1,12−2で測定されたb(t)、b(t+T),…,b(t+(M−1)T)およびb(t+ΔT)、b(t+ΔT+T),…,b(t+ΔT+(M−1)T)の一連のサンプルを用いて、波長多重信号光S,S’を構成する個々の変調信号の時刻tにおける電界振幅a(t)〜a(t)、および時刻t+ΔTにおける電界振幅a(t+ΔT)〜a(t+ΔT)が算出される。
【0022】
差動位相演算部14−1,…,14−Mでは、上記電界振幅算出部13で算出された電界振幅a(t)〜a(t)、および時刻t+ΔTにおける電界振幅a(t+ΔT)〜a(t+ΔT)を個々の波長毎に比較することによって1シンボル長ΔTでの位相差arg(a(t+ΔT)−arg(a(t)),…,arg(a(t+ΔT))−arg(a(t))を算出する。
【0023】
図2は図1の具体的な構成を示すブロック図である。図2において、波長多重信号光Sおよびサンプリングパルス光発生器19から発生されたサンプリングパルス光Lはそれぞれ分岐器20−1および20−2によって2分岐され、分岐された波長多重信号光Sの一方には1ビット遅延器21によって波長多重信号光Sを構成する変調信号の1シンボル長に相当する時間遅延ΔTが付与される。
【0024】
このようにして分岐、遅延された波長多重信号光S,S’およびサンプリングパルス光Lはそれぞれ分岐器22−1および22−2によってM個の支流に分岐され、遅延器23−1〜23−Mおよび24−1〜24−Mによって時間Tの整数倍の時間遅延が0〜(M−1)Tまで付与される。
【0025】
その後、波長多重信号光S,S’それぞれとサンプリングパルス光Lとの各ペアは2M個の光90度ハイブリッド27−1〜27−Mおよび28−1〜28−Mを介してバランス受光器29−1i,29−1q〜29−Mi,29−Mqおよび30−1i,30−1q〜30−Mi,30−Mqで受光され、電気信号I,Q〜I,QおよびI’,Q’〜I ’,Q’に変換されて、数値演算処理器31に送られる。
【0026】
上記遅延器21、遅延器23−1〜23−Mおよび遅延器24−1〜24−Mは、波長多重信号光S,S’とサンプリングパルス光Lとの間に相対的な時間遅延を付与するものであり、波長多重信号光S,S’もしくはサンプリングパルス光Lのいずれの経路上に設置されてもよい。また、上記遅延器21、遅延器23−1〜23−Mおよび遅延器24−1〜24−Mは、図3に示すように遅延器32−1〜32−Mおよび33−1〜33−Mのように集約してもよい。
【0027】
次に本実施形態の動作原理を詳細に説明する。
上記波長多重信号光Sは、複数の波長(チャネル)の光をそれぞれ変調しそれらを合波したものである。各々のチャネルの光周波数をfとして、それに対応する信号の電界振幅をa(t)とすると、iチャネルの信号の電界は
【0028】
【数1】

で表される。a(t)は複素数である。波長多重信号光の全電界振幅をb(t)とすると、信号全体の電界は個々のチャネルの電界振幅の和であるため、
【0029】
【数2】

と表すことができる。このb(t)もまた複素数であり、波長多重信号光Sの全帯域Δftotalとしたとき、その逆数に相当する速度で極めて高速に変動する。
一方、サンプリングパルス光Lの電界振幅は
【0030】
【数3】

とする。δ(t)はt=0近傍でのみ振幅が1となり、それ以外はゼロであるようなデルタ関数である。サンプリングパルス光Lのスペクトルが波長多重信号光Sの全帯域Δftotalよりも十分に大きい(サンプリングパルス光Lが波長多重信号光Sの変動時間より短いパルス幅を持つ)とき、このようにデルタ関数として近似することができる。また、サンプリングパルス光Lのスペクトルは波長多重信号光Sの帯域全体をカバーしているとする。
【0031】
上記サンプリングパルス光Lには、遅延器23−1〜23−Mによってそれぞれ0,T,…,(M−1)Tの遅延が付与されるので、サンプリングパルス光Lが1番目の光90度ハイブリッド27−1に到着する時刻をtとすると、第m番目の光90度ハイブリッド27−mに入射されるサンプリングパルス光Lは
【0032】
【数4】

となる。
一方、サンプリングパルス光Lが光90度ハイブリッド22−1〜22−Mに入射する時刻0,T,2T,…,(M−1)Tにおける波長多重信号光Sの全電界振幅bは、
【0033】
【数5】

である。この場合、時間遅延Tを1/Δftotalより小さく設定すれば、標本化定理に基づきb(t)が一意に決定される。
光90度ハイブリッド27−1〜27−Mを介して得られるi及びqアームからの出力電流I〜I、Q〜Qは、
【0034】
【数6】

で表される。ここでReとImは実部と虚部を意味する。また*は位相共役を意味する。
式(6)に式(4)、(5)を代入し、J≡I+jQとすると、
【0035】
【数7】

が成り立つ。これは全電界振幅Jが波長多重信号光の個々の電界振幅a(0)とフーリエ変換の関係にあることを示している。したがって、全電界振幅Jに対して
【0036】
【数8】

なるフーリエ逆変換処理を実行することによって、a(0)を求めることができる。
同様にして、時間遅延ΔTが付与された系列のI’、Q’〜I ’、Q’の出力を用いることで、
【0037】
【数9】

が求まり、式(8)に対して時間ΔTだけ遅延したチャネルiの電界振幅a(ΔT)を算出することができる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態によれば、波長多重信号光Sを構成するiチャネルの変調信号の時刻t=0およびt=ΔTにおける電界振幅を検出することができるため、以下のようにこれらの位相を比較することで差動位相変調信号の隣接シンボル間の位相差Δφ(ΔT)を算出することができる。
【0038】
【数10】

図4は、本発明における上記波長多重信号光を構成する変調信号の1つとサンプリングパルス光の干渉(サンプリングイベント)を時間軸上で模式的に示したものである。図4において、サンプリングパルス光Lの繰り返し周波数Rを、信号光のシンボルレートBのk分周から僅かに離調させれば、等価時間サンプリング方式の原理により、以下のように一定の時間間隔Δtづつずれながらサンプリングイベントが発生することになり、波形全体を再構築することが可能である。
【0039】
【数11】

したがって、上記実施形態によれば、各チャネルが差動位相変調された波長多重信号光において、個々の変調信号の隣接シンボル間での位相差を一括かつ同時に評価することができる。
なお、本発明は、上記実施例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施例に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種種の発明を形成できる。例えば、異なる実施例に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0040】
11…1シンボル長遅延付与部、12−1,12−2…連続時系列電界サンプリング部、13…電界振幅算出部、14−1,…,14−M…差動位相演算部、19…サンプリングパルス光発生器、20−1,20−2…分岐器、21…1ビット遅延器、22−1,22−2…分岐器、23−1〜23−M,24−1〜24−M…遅延器、27−1〜27−M,28−1〜28−M…光90度ハイブリッド、29−1i,29−1q〜29−Mi,29−Mq,30−1i,30−1q〜30−Mi,30−Mq…バランス受光器、31…数値演算処理器、遅延器32−1〜32−M,33−1〜33−M…遅延器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる波長の信号光がそれぞれ変調され合波されることで生成される波長多重信号光に対して、前記波長多重信号光を構成する変調信号の1シンボル長に相当する時間遅延ΔTを付与する遅延付与手段と、
スペクトルが前記波長多重信号光の全帯域よりも大きくかつ前記波長多重信号光の帯域全体をカバーするようなサンプリングパルス光を発生するサンプリングパルス光発生手段と、
前記サンプリングパルス光との干渉効果を用いて前記波長多重信号光の全電界振幅を時間T毎にM回測定する測定手段と、
前記測定手段でサンプリングされた波長多重信号光の全電界振幅を演算処理することで個々の変調信号の電界振幅を算出し前記変調信号の隣接シンボル間ΔTでの位相差を解析する演算処理手段と
を具備し、
前記測定手段は、前記波長多重信号光の全帯域をΔftotalとした時、時間Tを1/Δftotalよりも小さく設定し、全観測時間の逆数1/(MT)を前記波長多重信号光の個々の波長(周波数)間隔Δfよりも小さくなるように設定した上で、前記波長多重信号光の全電界振幅Jを時間T毎にM回測定し、
前記演算処理手段は、前記測定手段を介して得られる前記波長多重信号光の全電界振幅Jの一連のサンプルをフーリエ解析することで個々の変調信号の電界振幅を算出し、前記1シンボル長の時間遅延ΔTの効果によって算出される時刻tおよび時刻t+ΔTにおける電界振幅を、波長毎に比較することでそれぞれの変調信号に対して隣接シンボル間での位相差を算出することを特徴する波長多重信号測定装置。
【請求項2】
前記遅延付与手段は、
前記サンプリングパルス光および前記波長多重信号光を2分岐する第1の分岐手段と、前記分岐後のサンプリングパルス光もしくは前記波長多重信号光の一方に前記波長多重信号光を構成する変調信号の1シンボル長に相当する時間遅延ΔTを付与する第1の遅延手段とを備え、
前記測定手段は、
前記2分岐されたサンプリングパルス光および前記波長多重信号光をM分岐する第2の分岐手段と、前記M分岐された前記サンプリングパルス光もしくは前記波長多重信号光の一方に時間Tの整数倍の時間遅延を(M−1)Tまで付与する第2の遅延手段と、前記時間Tの整数倍の時間遅延を付与されたサンプリングパルス光もしくは前記波長多重信号光を他方と合波し干渉信号を得るための2M個の光90度ハイブリッドと、前記2M個の光90度ハイブリッドからの出力光を受光して実部I、虚部Qの直交電流を出力する4M個のバランス型受光器とを備え、
前記演算処理手段は、
前記4M個のバランス型受光器から出力される直交電流の実部I、虚部Qを数値化する数値化手段と、前記数値化された直交電流の実部I、虚部Qの2M個のペアを用いて、個々の変調信号の隣接シンボル間ΔTでの位相差を算出する演算処理部とを備えることを特徴する請求項1記載の波長多重信号測定装置。
【請求項3】
前記遅延付与手段は、
前記サンプリングパルス光と前記波長多重信号光をそれぞれ2Mの支流に分岐する第1の分岐手段と、前記分岐後のサンプリングパルス光または前記波長多重信号光のどちらか一方に、時間Tの整数倍の時間遅延を0から(M−1)T、およびΔTから(M−1)T+ΔTまで付与する遅延手段(但し、ΔTは前記波長多重信号光を構成する変調信号の1シンボル長に相当する固定遅延)とを備え、
前記測定手段は、
前記分岐、遅延されたサンプリングパルス光もしくは前記波長多重信号光を他方と合波し干渉信号を得るための2M個の光90度ハイブリッドと、前記2M個の光90度ハイブリッドからの出力光を受光して実部I、虚部Qの直交電流を出力する4M個のバランス型受光器とを備え、
前記演算処理手段は、
前記4M個のバランス型受光器から出力される直交電流の実部I、虚部Qを数値化する数値化手段と、前記数値化された直交電流の実部I、虚部Qの2M個のペアを用いて、個々の変調信号の隣接シンボル間ΔTでの位相差を算出する演算処理部とを備えることを特徴する請求項1記載の波長多重信号測定装置。
【請求項4】
前記サンプリングパルス光に、前記波長多重信号光を構成する変調信号の繰り返し周波数の整数分周から僅かに離調した繰り返し周波数を持つパルス光を用いることで前記変調信号の波形全体を測定することを特徴する請求項1記載の波長多重信号測定装置。
【請求項5】
互いに異なる波長の信号光がそれぞれ変調され合波されることで生成される波長多重信号光に対して、前記波長多重信号光を構成する変調信号の1シンボル長に相当する時間遅延ΔTを付与し、
スペクトルが前記波長多重信号光の全帯域よりも大きくかつ前記波長多重信号光の帯域全体をカバーするようなサンプリングパルス光を発生し、
前記サンプリングパルス光との干渉効果を用いて前記波長多重信号光の全電界振幅を時間T毎にM回測定し、
前記サンプリングされた波長多重信号光の全電界振幅を演算処理することで個々の変調信号の電界振幅を算出して前記変調信号の隣接シンボル間ΔTでの位相差を解析するものとし、
前記全電界振幅の測定は、前記波長多重信号光の全帯域をΔftotalとした時、時間Tを1/Δftotalよりも小さく設定し、全観測時間の逆数1/(MT)を前記波長多重信号光の個々の波長(周波数)間隔Δfよりも小さくなるように設定した上で、前記波長多重信号光の全電界振幅Jを時間T毎にM回測定し、
前記測定を通じて得られる前記波長多重信号光の全電界振幅Jの一連のサンプルをフーリエ解析することで個々の変調信号の電界振幅を算出し、前記1シンボル長の時間遅延ΔTの効果によって算出される時刻tおよび時刻t+ΔTにおける電界振幅を、波長毎に比較することでそれぞれの変調信号に対して隣接シンボル間での位相差を算出することを特徴する波長多重信号測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−38679(P2013−38679A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174748(P2011−174748)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】