説明

波長特性測定装置

【課題】波長特性測定を実施するにあたって、広い波長範囲にわたって高速かつ高い波長確度で波長トラッキングを行える波長特性測定装置を実現する。
【解決手段】波長特性測定装置は、信号光を出力する波長可変光源101と、信号光を被測定物114に入射して得られる被測定光のスペクトル分布を計測する光スペクトラムアナライザ100とを備える。波長可変光源101からの信号光の信号光波長が分光器104の持つ平坦な波長透過特性となっている所定波長範囲内に収束するように、分光器104および分光素子119の角度をそれぞれ可変させるモータ106,120の回転速度を予め決めておき、これらのモータ回転速度に従ってモータ106,120を等速度回転させながら、抽出波長及び信号光波長を掃引波長範囲にわたって掃引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光フィルタや光伝送路などの光コンポーネントの光波長特性を測定するための波長特性測定装置に関し、さらに詳細には、光信号のスペクトルを測定する光スペクトラムアナライザと、異なる波長を出力可能な波長可変光源とを用いた波長特性測定における波長トラッキング制御技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図21は、光スペクトラムアナライザと波長可変光源を用いた波長特性測定における波長トラッキングを実現するための従来の装置構成例を示したブロック図である。同図において、符号100は光スペクトルを測定するための光スペクトラムアナライザであって、符号101は異なる波長を出力することができる波長可変光源である。
【0003】
光スペクトラムアナライザ100は、このスペクトラムアナライザ100の全体動作を統括する制御部102、外部機器(この場合は波長可変光源101)との間で通信を行うための通信回路103、通信回路103の入出力インターフェースとなる端子[3]、回折格子,プリズム,干渉フィルタなどの分光素子を利用した分光によって被測定光から特定波長を抽出して出力する分光器104、外部から与えられる被測定光を分光器104に入力する光入力端子105、分光器104の抽出波長を可変させるためのモータ106、制御部102から設定されたモータ回転速度や回転量などの条件に従ってモータ106を駆動する駆動回路107、モータ106の回転量および回転位置を検出する位置検出回路108、分光器104から出力される抽出光を受光してこれを電気信号に変換する光検出器110、光検出器110から出力される微小電気信号を増幅する増幅回路111、増幅回路111から出力されるアナログ信号を量子化してディジタル信号に変換するA/D(アナログ/ディジタル)変換器112、A/D変換器112から出力される測定データをプロットして得られる光スペクトルを表示するための表示部113から構成されている。
【0004】
ここで、制御部102はその内部にあらかじめ記憶されているモータ制御情報を基に、駆動回路107を介してモータ106を駆動して分光器104の抽出波長を所望の値に設定する。また制御部102は、モータ106に結合された位置検出回路108から得られる位置情報を監視して分光器104の抽出波長が所定の波長に設定されたことを確認した後に、A/D変換器112から測定データを読み出して所定の演算処理を行い、この演算結果を表示部113に表示する。
【0005】
このとき制御部102は、測定者によって設定された波長範囲および測定数に基づいて分光器104の抽出波長として等間隔の波長を求め、分光器104の抽出波長をこれら等間隔の各波長に設定した時に得られる測定データを断続的に求めながら表示部113上にプロットしてゆくことで、被測定光に関するスペクトルの測定波形を表示させることが可能になる。
【0006】
また、光スペクトラムアナライザ100は外部に接続された波長可変光源101を制御するホストとしての機能を有している。すなわち、制御部102は通信回路103および端子[3]ならびに波長可変光源101の端子[3]’および通信回路116(何れも後述)を介して、波長可変光源101の制御部115(後述)に対して制御命令を送信し、それによって、波長可変光源101が出力する信号光の波長および光電力を設定するようにしている。
【0007】
なお、被測定物114は波長対損失特性といった波長特性を測定すべき光コンポーネントであって、光ファイバグレーティング,誘電体多層膜フィルタ,WDM(波長分割多重)用光コンポーネント等である。そして、波長可変光源101の光出力端子118(後述)から供給される単一モード信号光を用いた波長トラッキング測定によって、被測定物114から被測定光が光スペクトラムアナライザ100に供給されてこの被測定物114の波長特性が測定されることになる。
【0008】
一方、波長可変光源101は、この波長可変光源101の全体動作を統括する制御部115、外部機器(この場合は光スペクトラムアナライザ100)との間で通信を行うための通信回路116、通信回路116の入出力インターフェースとなる端子[3]’、後述する光源122から出力される光信号を外部の被測定物114に出力するための光出力端子118、単一モードスペクトラムを発振しその発振波長が可変である光源122、光源122を駆動すると共にその温度制御等を行う光源駆動回路123、測定者によって設定された測定波長範囲などの諸条件(詳細については後述)を表示するための表示部124、光源122から出力される光信号の波長を制御する波長制御回路126から構成されている。
【0009】
ここで、制御部115はその内部にあらかじめ記憶されている光源駆動情報および波長情報を基に光源駆動回路123および波長制御回路126を制御して、光源122の単一モード発振波長および発振光電力を可変させる。すなわち、制御部115は設定された上記諸条件に基づいて測定波長間隔等のパラメータ(詳細については後述)を演算によって求め、光源駆動回路123および波長制御回路126に指示を行い、設定された任意の条件で光源122を発振させるほか、測定者によって設定された波長範囲の全体にわたって所定の波長間隔で光源122の発振波長を断続的に変化させる。なお、光スペクトラムアナライザ100と同様に、波長可変光源101においても光源122の発振波長を可変とするために、図示しない分光素子やこの分光素子を駆動するための図示しないモータなどが用いられる。
【0010】
次に、図22に示したフローチャートに沿って、従来技術による波長特性測定装置で行われる波長トラッキング制御の手順について説明する。なお、以下に述べるような光スペクトラムアナライザ100および波長可変光源101における制御は、これらとは別に用意されたコンピュータなどを用いて行っても良い。まず、測定者が測定開始波長λ,測定終了波長λ,測定サンプル数などの複数の測定条件を光スペクトラムアナライザ100に設定する。これによって、制御部102はこれら設定された測定条件に基づいて波長間隔Δλなどのパラメータを演算によって導出する(ステップS1)。
【0011】
次に、制御部102は求められたパラメータに従って駆動回路107へ信号を送出することでモータ106を駆動し、それによって分光器104の抽出波長を或る初期波長に設定するとともに、位置検出回路108から出力される位置情報を監視して分光器104の抽出波長が前述した初期波長に設定されたことを確認する。また制御部102は通信回路103及び入出力端子[3]を介して波長可変光源101に対して「初期波長への移動コマンド」を送信する(ステップS2)。
【0012】
すると、波長可変光源101の制御部115は通信回路116を介して光スペクトラムアナライザ100から送信されたコマンドに基づき、光源駆動回路123および波長制御回路126へ与えるパラメータを演算によって求めてこれら各回路に供給する。これによって、光源122の発振波長を初期波長に設定し、この設定が終了した後に通信回路116を介して光スペクトラムアナライザ100の制御部102に対して「波長設定完了コマンド」を送信する(ステップS3の判断結果が“YES”)。
【0013】
次に、測定者が測定開始の命令を光スペクトラムアナライザ100に与える(ステップS4)と、制御部102は分光器104の抽出波長λが測定開始波長λとなるように駆動回路107へ制御信号を送ってモータ106を駆動するとともに、位置検出回路108から出力される位置情報を監視してモータ106の移動完了を待つ。また、制御部102は通信回路103を介して波長可変光源101に「測定波長λ(即ち、測定開始波長λ)への移動コマンド」を送信したのち、上述した初期波長の場合と同様にして、波長可変光源101からの「波長設定完了コマンド」が返信されてくるのを待ち合わせる(ステップS5)。
【0014】
こうして光スペクトラムアナライザ100および波長可変光源101における波長設定が完了(ステップS6の判断結果が“YES”)したならば、制御部102はA/D変換器112を起動して同A/D変換器からディジタル信号を取り込み(ステップS7)、あらかじめ設定されている増幅回路111の条件などに基づいて光電力値を演算によって求めて表示部113上にプロットする(ステップS8)。
【0015】
次いで、制御部102は現時点における測定波長λから波長間隔Δλだけ離れた次の測定波長λを演算(ステップS9)によって求めて、再度、分光器104の抽出波長および波長可変光源101の出力波長を設定する。これによって、上述したステップS5〜S9と同様の動作が光スペクトラムアナライザ100および波長可変光源101で繰り返される。制御部102はこの波長設定およびデータ測定を測定波長が測定終了波長λを越える(ステップS10の判断結果が“YES”)まで続ける。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上のように、光スペクトラムアナライザおよび波長可変光源における従来方式の波長トラッキング制御に於いては、ホストとなる光スペクトラムアナライザ100が通信インターフェースを経由して波長可変光源101の動作を制御している。これにより、設定された掃引波長範囲(測定波長範囲)にわたって求められた測定波長間隔ごとに分光器104の抽出波長および波長可変光源101の出力波長を断続的に設定して測定を行い、さらに上記通信インターフェースを経由して光スペクトラムアナライザ100と波長可変光源101の間でコマンド送信を逐次行っている。このため、波長トラッキングのために多大なる時間を要してしまうという問題がある。
【0017】
また、光スペクトラムアナライザ100の分光器104および波長可変光源101の光源122を高速に掃引させる場合に、分光器104を駆動するモータ106の回転量に対する抽出波長の変化特性が、波長可変光源101の分光素子を駆動するモータの回転量に対する出力波長の変化特性に一致することは希であって、ほとんどの場合は互いに異なる特性となってしまう。これは、分光器104の変化特性が、分光器104を構成する分光素子の特性,この分光素子の角度を可変させるための方式,分光器104のレイアウトなどの様々な要因から決定される一方で、波長可変光源101の分光素子に関わる変化特性も同様な理由で様々な要因から決定されることによるものである。
【0018】
このため、光スペクトラムアナライザ100および波長可変光源101の各々に備えられたモータを等速回転させた場合に、これらモータの回転量に対して分光器104の抽出波長と波長可変光源101の出力波長がそれぞれの特性に応じて変化する。このため、抽出波長と出力波長の間における波長差が大きくなってトラッキングできなくなり、結果的に、非常に狭い波長範囲でしか波長のトラッキングを行うことができないことになる。
【0019】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光スペクトラムアナライザおよび波長可変光源を用いた波長特性測定を実施するにあたって、両者の掃引を同期させるとともに、光スペクトラムアナライザの抽出波長と波長可変光源の出力信号光波長を一致させあるいは両者の波長差を僅少にすることができ、広い波長範囲にわたって高速かつ高い波長確度で波長トラッキングを行うことの可能な波長特性測定装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
以上の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、信号光を出力する波長可変光源と、該信号光を被測定物に入射して得られる被測定光のスペクトル分布を計測する光スペクトラムアナライザとを用いて、前記被測定物の光波長特性を測定する波長特性測定装置において、前記光スペクトラムアナライザは、第1の分光素子によって前記被測定光から特定の波長成分を抽出し、予め設定された分解能に対して、抽出波長を中心とした前後の所定波長範囲にわたって平坦な最大透過量となる波長透過特性を持った分光手段と、前記第1の分光素子の角度を可変させて抽出波長を所定の掃引波長範囲にわたって掃引する第1の駆動手段とを備え、前記波長可変光源は、前記信号光として単一モード信号光を出力するレーザ素子と該レーザ素子を任意の波長でレーザ発振させる第2の分光素子とで構成される外部発振器と、前記第2の分光素子の角度を可変させて前記信号光の信号光波長を前記掃引波長範囲にわたって掃引する第2の駆動手段とを備え、前記第1及び第2の分光素子の角度をそれぞれ可変させる第1及び第2のモータの回転速度は、前記信号光波長が前記所定波長範囲内に収束するように予め決められており、前記第1及び第2の駆動手段はこれら回転速度に従って前記第1及び第2のモータを等速度回転させることを特徴とする。
【0021】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記掃引波長範囲は、前記信号光波長が前記所定波長範囲内に収束する波長区間を単位とした複数の波長区間に分割されており、前記第1及び第2の駆動手段は、前記各波長区間について予め決められている前記第1及び第2のモータの回転速度に従って、前記第1及び第2のモータを等速度回転させることを特徴としている。
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記第1及び第2の駆動手段は、前記第1及び第2のモータの各々にモータ回転パルスを出力している最中に、前記第1及び第2のモータのパルスレートを可変させることを特徴としている。
また、請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記第1及び第2の駆動手段は、前記波長区間毎に掃引動作を一旦停止させ、次に掃引すべき波長区間に関する条件設定を行ってから当該区間の掃引を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、請求項1記載の発明では、信号光波長が分光手段の持つ平坦な波長透過特性となっている所定波長範囲内に収束するように、第1及び第2の分光素子の角度をそれぞれ可変させる第1及び第2のモータの回転速度を予め決めておき、これらのモータ回転速度に従って第1及び第2のモータを等速度回転させながら、抽出波長及び信号光波長を掃引波長範囲にわたって掃引している。これにより、第1及び第2の駆動手段は、定常運転領域において等速度回転制御のみを行うごく一般的なものを使用することが可能となる。
【0023】
また、請求項2記載の発明では、信号光波長が上記所定波長範囲内に収束する波長区間を単位として掃引波長範囲を複数の波長区間に分割し、各波長区間について予め決められている第1及び第2のモータの回転速度に従って、これらモータを等速度回転させている。このため、光スペクトラムアナライザが備える分光手段の特性と波長可変光源の特性が大きく異なる場合や、分光手段の持つ分光特性で決定される平坦な波長領域が狭いために、波長可変光源から出力される信号光波長がこの平坦な波長領域を越えてレベル変動する場合などにおいても、光スペクトラムアナライザの抽出波長特性と波長可変光源の出力信号光波長特性を掃引波長範囲全体にわたって一致させ、あるいは、それらの間の差を僅少にすることが可能となる。このため、高速に波長トラッキングを行うことができ、非常に広い光学的ダイナミックレンジで高い波長確度かつ高速に測定できる。
【0024】
また、請求項3記載の発明では、第1及び第2のモータに対してそれぞれモータ回転パルスを出力している最中にこれら各モータのパルスレートを可変させるようにしている。このため、掃引波長範囲の全体にわたって一括して掃引することができて、高速に波長トラッキングを行うことが可能となる。
また、請求項4記載の発明では、波長区間毎に掃引動作を一旦停止させ、次に掃引すべき区間について条件設定を行ってから当該区間の掃引を行うようにしている。これによって、第1及び第2の駆動手段として、定常運転領域において等速度回転制御のみを行うごく一般的なものを使用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の各実施形態について説明してゆく。
〔第1実施形態〕
図1は本実施形態による波長特性測定装置の構成を示すブロック図であって、図21に示したものと同じ構成要素については同一の符号を付してある。また、図2は本実施形態におけるモータ回転速度の変化について示した説明図である。なお、この図2を含めて各実施形態で参照するグラフに記載した数値はいずれも単なる一例を示したに過ぎないものであって、本発明がこれらグラフに記載されている数値に限定的に適用されるものでないことは当然である。
【0026】
まず、図1に示した光スペクトラムアナライザ100において、本実施形態の駆動回路107は、制御部102から設定されたモータ回転速度や回転量などの条件に従ってモータ106を駆動する従来技術と同様の機能を有する。これに加えて、駆動回路107はモータ106の回転始動時にモータ回転開始同期信号(図中の符号Aに相当)を出力する機能を有する。このほかに駆動回路107は、外部(この場合は波長可変光源101内の後述する駆動回路125)からのモータ回転開始同期信号に応じてモータ106の回転を始動させる機能を有していても良い。この場合は、駆動回路107がマスター,駆動回路125がスレーブとなってそれぞれ作動するような形態である。なお、いまの場合とは逆に、駆動回路125がマスター,駆動回路107がスレーブとしてそれぞれ作動するような形態であっても良い。このように信号Aは、駆動回路107および駆動回路125を互いに同期させて各駆動回路からモータ106およびモータ120に対してモータ駆動信号を同一タイミングで出力させるためのモータ回転開始同期信号である。
【0027】
また、端子[1]は駆動回路107が出力するモータ回転開始同期信号を外部機器(この場合は波長可変光源101)に供給するための同期信号出力端子である。ただし、これは駆動回路107がマスターとなる場合であって、駆動回路107がスレーブとなって外部(即ち、駆動回路125)からのモータ回転開始同期信号に応じてモータ106の回転を始動させる場合は同期信号入力端子となる。また、端子[1]’は外部機器(この場合は光スペクトラムアナライザ100)から駆動回路125に対してモータ回転開始同期信号が供給される同期信号入力端子である。ただし、これは駆動回路125がスレーブとなる場合であって、駆動回路125がマスターとなって外部機器(即ち、光スペクトラムアナライザ100)へモータ回転開始同期信号を供給する場合には同期信号出力端子となる。
【0028】
さらに、駆動回路107は分割された波長区間に相当するモータ回転量毎にパルスレートを可変させる機能を有しており、当該機能は後述する第3実施形態で使用される。そして信号Cは、第3実施形態において、分割された波長区間毎にモータ106の回転速度を変化させる場合に、駆動回路107がモータ106へ出力する駆動信号のパルスレートの切換点となる波長情報を位置検出回路108から得るための信号である。このため、駆動回路107が駆動信号の出力パルスをカウントするなどして波長情報をモニタしている構成とすれば信号Cは特に必要ではなくなる。また、波長可変光源101が備えるモータ120の回転速度を分割された波長区間毎に変化させ、モータ106を一定速度で回転させる場合においても信号Cは特に必要なくなる。
【0029】
次に、本実施形態の位置検出回路108は、モータ106の回転量および回転位置を検出する従来技術と同様の機能を有すると共に、モータ106の回転量が制御部102から設定される特定の波長に対応した回転量に達した際に、次に説明する切換/遅延回路109に対して回転量が所期の値に到達したことを示すトリガパルスを出力する機能を有している。また駆動回路107のところで説明したように、第3実施形態において位置検出回路108は、駆動回路107がモータ106へ出力する駆動信号のパルスレートの切換点となる波長情報を生成する機能を有している。
【0030】
次に、切換/遅延回路109は、位置検出回路108から入力されるトリガパルスと、端子[2]を経由して波長可変光源101から入力されるサンプリングタイミング信号(図中の符号Bに相当)とを切り換えて、A/D変換器112および制御部102に対してサンプリングタイミングを通知する。また、切換/遅延回路109は切り換えられたトリガパルス又はサンプリングタイミング信号を制御部102によって予め設定された所定時間だけ遅延させる機能を有している。
【0031】
つまり信号Bは、A/D変換器112を起動させてA/D変換によって得られたディジタルデータを制御部102に取り込ませるためのサンプリングタイミング信号を波長可変光源101の備える位置検出回路121から切換/遅延回路109に対して供給するための信号である。そして端子[2]は、このサンプリングタイミング信号が入力される光スペクトラムアナライザ100側の信号入力端子である。また、端子[2]’は位置検出回路121の出力するサンプリングタイミング信号を外部機器(この場合は光スペクトラムアナライザ100)に供給するための信号出力端子である。
次に、本実施形態の制御部102は光スペクトラムアナライザ100内の各ブロックに対する制御を行う機能を有すると共に、切換/遅延回路109から出力されるサンプリングタイミング信号に同期してA/D変換器112から出力されるディジタルデータを内部に取り込む機能を有している。
【0032】
次に、本実施形態のA/D変換器112は、制御部102からの制御によってA/D変換を行う従来技術と同様の機能を有すると共に、切換/遅延回路109から出力されるサンプリングタイミング信号に同期して増幅回路111から出力される信号に対するA/D変換を行ってディジタルデータを出力する機能を有している。
次に、波長可変光源101において、レーザ素子117は単一モード信号光を出力する光源であって、半導体レーザ素子が一般的であるが、希土類元素が添加された光ファイバ等であっても良い。レーザ素子117は、外部からの励起によってエネルギー準位を高めることで自然放出光を出力するほか、特定の波長を有する信号光が入力された場合は誘導放出によって増幅を行ってレーザ発振するようになっている。
【0033】
次に、分光素子119はレーザ素子117との組み合わせによって外部共振器を構成している。そして分光素子119は、レーザ素子117から出力される自然放出光から回折現象を利用して波長を分散させるとともに、分光素子119自身の角度で決定される波長成分をレーザ素子117に帰還することで任意の波長でレーザ発振させることを可能ならしめている。つまり、分光素子119の角度を可変させることによってレーザ素子117が発振するレーザ光の波長を可変させることができる。なお、分光素子119としては、反射面に多数の溝を有する回折格子が一般的であるが、プリズムや多層膜干渉フィルタなどを用いた構成であっても良い。
【0034】
次に、モータ120は、駆動回路125からの駆動信号に従って分光素子119の回転角度を制御するためのものである。モータ120の具体的な構成としては、パルスによって回転角度を制御するステッピングモータやサーボモータなどが一般的であるが、これらに限られるものでないのは勿論である。
次に、位置検出回路121はモータ120の回転角度を検出すると共に、レーザ素子117がレーザ発振する波長が制御部115によって設定された目標波長に到達した際にサンプリングタイミング信号を出力する。
【0035】
そして信号C’は、第3実施形態において、分割された波長区間毎にモータ120の回転速度を変化させる場合に、駆動回路125からモータ120へ出力される駆動信号のパルスレート切替点となる波長情報を位置検出回路121から駆動回路125に対して出力するための信号である。このため、駆動回路125が駆動信号のパルスをカウントするなどして波長情報をモニタしている場合には、信号C’は特に必要なくなる。また、分割された波長区間毎に光スペクトラムアナライザ100が備えるモータ106の回転速度を変化させ、モータ120については一定速度で回転させる場合にも、信号C’は特に必要とされなくなる。
【0036】
駆動回路125はモータ120を駆動するための制御回路であって、端子[1]’及び端子[1]を通じて光スペクトラムアナライザ100内の駆動回路107から供給されるモータ回転開始同期信号に同期して駆動信号をモータ120に出力する。なお、これは駆動回路125がスレーブ,駆動回路107がマスターとして作動する場合である。したがって、駆動回路125がマスター,駆動回路107がスレーブとして作動する場合、駆動回路125は、モータ120に駆動信号を出力するのと同一タイミングでモータ回転開始同期信号を端子[1]’へ出力するものであっても良い。
【0037】
ここで、光スペクトラムアナライザ100に備えられた分光器104としては、回折格子やプリズムなどの分光素子を用いて信号光の波長パラメータを角度パラメータに変換し、これら分光素子の角度を可変させることによって波長パラメータを抽出するものが一般的である。また、分光器104の具体的な構成としては図3や図4に示すものが代表的である。このうち、図3は2個の凹面鏡10,11を用いることによって、入射スリット13から入ってくる入射光のコリメートと回折格子12からの出射光のフォーカシングとを別々の凹面鏡で行い、出射スリット14にその像を結ぶことを特徴としたツェルニ・ターナー配置型の構成である。また、図4は1個の凹面鏡15で入出射スリット16から入ってくる入射光のコリメート、および、入出射スリット16から出てゆく出射光のフォーカシングを行うことを特徴としたリトロー配置型の構成である。以下、これらの各々について詳述する。
【0038】
図3に示したツェルニ・ターナー配置型の分光器に於いて、入射スリット13を通じて入射した被測定光は凹面鏡10で平行光線に変換されたのちに回折格子12に入射する。この回折格子12で分散されたスペクトルは凹面鏡11によって集光されたのちに出射スリット14上の分散方向に結像する。このような配置で回折格子12の角度をモータ等で可変させることによって出射スリット14の中心に結像されるスペクトルを可変させることができる。
【0039】
こうしたツェルニ・ターナー配置に於いて、回折格子12の角度と出射スリット14の中心に結像するスペクトルの波長との間には次式の関係がある。
【数1】

ここで、λは同スペクトルの波長,dは回折格子12が有する溝の間隔,mは回折格子12の回折次数,aは回折格子12に対する入射光および出射光の為す角の二等分線[5]がこれら入射光および出射光に対して為す角度,θはこの二等分線[5]と回折格子12の法線[4]が為す角度である。
【0040】
一方、図4に示したリトロー配置型分光器では、図3に示したツェルニ・ターナー配置における角度aを“0”度として、凹面鏡10と凹面鏡11を凹面鏡15で兼用することによって回折格子12の角度とスペクトルの波長との間の関係が得られる。つまりこの場合は上述した(1)式において角度aに“0”を代入すれば良い。
他方、波長可変光源101が備える分光素子119の配置についても上記同様にツェルニ・ターナー型およびリトロー配置型が一般的であって、分光素子119の角度に対する信号光出力波長は(1)式から得ることができる。
【0041】
ところで、回折格子12などの実際の分光素子は、ギアを組み合わせた減速機構にモータを接続することによって、このモータが本来持っている分解能よりも細かな設定ができるような構成となっている。光スペクトラムアナライザ100が備えるモータ106や波長可変光源101が備えるモータ120もこれと同様である。前述したように、これらのモータはステッピングモータ,サーボモータ,ダイレクトモータなどを使用してパルス信号で制御する構成が一般的である。
【0042】
いま、モータの回転に比例する減速機構を有することを想定したときに、(1)式で示されるような回折格子12の角度とスペクトルの波長との間の関係は、回折格子12の角度θをモータの回転量を制御するための駆動パルス数で表すことで次式が得られる。
【数2】

ここで、Δθはモータの分解能とギアによる減速比で表される定数,Nはモータを駆動するパルス数である。
【0043】
減速機構としては図5に示すようなサインバー方式によるものも用いられる。同図に示されている減速機構は、回転アーム17,回転アーム17の正弦となる移動アーム18,回転アーム17の余弦となる固定アーム19で構成されている。もっとも、図5に示した構成は最も代表的なものであって本発明がこうした構成に限定されるものでないのは当然である。同図において、回転アーム17は回折格子12に接続されており、固定アーム19の片端を支点として固定アーム19との為す角度を可変させる構造である。また、固定アーム19は長さが一定長l_sであって角度変化の支点となる。
【0044】
また、移動アーム18は長さがl_mであって、固定アーム19の片端を基準としてその長さを可変させて回転アーム17を押し、それによって、回転アーム17と固定アーム19の為す角度βを可変させて回折格子12の角度を決定している。このほか、符号[4]は回折格子12の法線,符号[6]は回折格子12に対する入射光および出射光が為す角の二等分線,符号[7]は回折格子12への入射光、符号[8]は回折格子12からの出射光,角度αは固定アーム19の支点に回折格子12の面を置いたときに二等分線[6]と固定アーム19とが為す角度,角度θは法線[4]および二等分線[6]が為す角度である。
【0045】
いま、ギアを用いた簡易な減速機構を考えた場合、モータの回転量と減速された分光素子の回転量との間には直線的な比例関係がある。このため、モータを駆動するパルス数Nと回折格子の角度θも直線的に比例する。これに対して、図5に示したサインバー方式による減速機構では、モータによって移動アーム18の長さを変化させて、回転アーム17,移動アーム18,固定アーム19で形成される直角三角形の為す角度βを変化させている。このため、モータの回転量と移動アーム18の長さの変化との間の関係が直線的な比例関係にあっても、モータの回転量に対してこの直角三角形の為す角度βを逆三角関数に比例して変化させることが可能となる。
【0046】
すなわち、図5に示した例では、直角三角形の余弦の長さであるl_sを固定しつつ、直角三角形の正弦の長さであるl_mを可変させることになる。このため、次式で示されるように、角度βは移動アーム18の長さl_mに関する正接の逆関数として求められる。
【数3】

したがって、サインバー方式による減速機構を用いて回折格子12の角度を変化させたとき、回折格子12の角度ないしは移動アーム18の長さl_mに対するスペクトルの波長λは次式の関係として得られることになる。
【数4】

【0047】
また、移動アーム18の長さl_mをモータによって可変させる場合、(4)式に示されているような回折格子12の角度とスペクトルの波長との間の関係は、これをモータの回転量を制御するパルス数で表すことで、次式のように表すことが可能となる。
【数5】

ここで、Δl_mはモータの分解能と移動アーム18の変化量で表される定数,ΔlはΔl_mと固定アーム19の長さの比をとって得られる定数,Nはモータを制御するパルス数である。
【0048】
いま、光スペクトラムアナライザ100が有する分光器104と波長可変光源101が有する分光素子119とで、それらの光学配置,回折次数m,回折格子の溝の間隔d,入射光[7]および出射光[8]の為す角から決定される角度aの条件が互いに全く同一であるならば、光スペクトラムアナライザ100による抽出波長と波長可変光源101の出力する信号光波長は、如何なる波長および掃引波長範囲に於いても一致する。したがって、分光器104が備える回折格子12と波長可変光源101が備える分光素子119を同時かつ同一の回転速度で回転させるようにすることによって、互いの波長を一致させることができる。
【0049】
しかしながら、一般に、分光器104の光学配置や回折格子の仕様と分光素子119の光学配置や回折格子の仕様が一致していないことが多い。また、波長可変光源101ではモードホップを解消するために分光素子119の回転をサインバー方式の減速機構で行うなどした場合にも両者の使用が相違することになる。ここで、(2)式からもわかるようにモータの回転パルス数Nの正弦関数と波長λが比例関係にあるため、回折格子の溝の間隔dや角度aなどのパラメータが異なってくると、モータ回転パルス数Nは波長λの逆正弦関数に比例して異なるようになる。
【0050】
ここで、図6は光スペクトラムアナライザ100の抽出波長と波長可変光源101の出力信号光波長との間における波長ズレの様子を示したものであり、同図において、横軸はモータの回転量を制御するパルス数(任意単位;Arbitrary Unit),縦軸はスペクトルの波長(ナノメートル単位)であって、これ以後に掲げる図においても同様である。そして同図は、分光器104が有する回折格子12と分光素子119の特性が違う場合において、モータ回転パルス数で正規化した波長特性を示したものであって、図中に示した<4>,<5>がそれぞれ波長可変光源101,光スペクトラムアナライザ100に関するパルス−波長特性となっている。
【0051】
また、図7は図6に示した<4>,<5>の各特性の間における波長差量を示したものであって、縦軸が波長差(ナノメートル単位)である。一方、図8は掃引開始点(即ち、波長が約1500nm)に於ける波長変化量で正規化したときのモータ回転パルス数に対する波長特性を示したものである。図中、<4>で示した特性は図6のものと同様であり、一方で、<6>で示した特性は光スペクトラムアナライザ100に関するパルス−波長特性である。また、図9は図8に示した<4>,<6>の各特性の間における波長差量を示したものである。なお、これらの図における分光器104の光学配置はいずれもリトロー配置である。
【0052】
そして、図7および図9に示したように、分光器104が備える回折格子12と分光素子119との間における特性の違いから生じる波長差は、モータ回転パルス数に対して一定の比率で変化してはいない。このため、光スペクトラムアナライザ100が備えるモータ106と波長可変光源101が備えるモータ120を互いに異なるモータ回転速度でそれぞれ等速度回転させただけでは、光スペクトラムアナライザ100の抽出波長と波長可変光源101の出力信号光波長を一致させることはできない。
【0053】
こうしたことから、本実施形態ではまず、分光器104の光学配置および回折格子12の特性で決定される(2)式または(5)式と同様な特性関数、および、波長可変光源101の光学配置および分光素子119の特性で決定される特性関数に関して、波長を変数としてモータ回転パルス数を求めるような逆関数をそれぞれの特性関数から導出する。次に、実際に信号光を出力する波長可変光源101側を基準として、波長トラッキングを行うべき掃引波長範囲に於けるそれぞれの波長について、2つの逆関数から得られるそれぞれのモータ回転パルス数の間の差からモータ106の回転速度を求める。
【0054】
掃引開始波長から掃引終了波長まで高速かつ連続でモータ106およびモータ120を回転させる場合には、まずモータ回転開始同期信号Aでこれら両モータを同期させて同時に始動するようにする。次に、図10に示したように、光スペクトラムアナライザ100が備える分光器104の抽出波長(図中の<8>)と波長可変光源101が出力する信号光波長(図中の<9>)が常に一致するように、モータ106の回転速度を変化させながら掃引を行ってゆく。例えば、図10では<8>と<9>,<8’>と<9’>,<8”>と<9”>でそれぞれ両者の中心波長が互いに一致している。なお、図10の縦軸は光スペクトラムアナライザ100の抽出光と波長可変光源101の出力光のそれぞれの最大光レベルを“0”デシベルとしたデシベル表示になっており、これ以降に掲げる同様の図面についても同じである。
【0055】
そして、先に触れた図2には本実施形態におけるモータ回転速度の変化が示されている。図中、縦軸はモータ回転速度をパルスレート(pusle per second)で表示したものであって、<1>で示した特性は波長可変光源101が備えるモータ120の各波長に対する回転速度を示している。また、<2>で示した特性は、光スペクトラムアナライザ100および波長可変光源101についてそれぞれ掃引開始波長(約1500nm)および掃引終了波長(約1650nm)で正規化を行い、なおかつ、波長可変光源101が出力する信号光波長および光スペクトラムアナライザ100側の抽出波長を互いに一致させた場合について、モータ106の各波長に対する回転速度を示している。一方、<3>は掃引開始波長でのみ光スペクトラムアナライザ100と波長可変光源101の正規化を行い、なおかつ、波長可変光源101が出力する信号光波長および光スペクトラムアナライザ100の抽出波長を互いに一致させた場合について、モータ106の各波長に対する回転速度を示したものである。
なお、本実施形態の分光器104は、図3または図4に示した構成により、分光素子である回折格子12への光照射を1回としたシングル・パス方式のものであるが、本発明に於いてはこれに限らず、ダブル方式,ダブル・パス方式,あるいはこれら以外の方式を採用した構成にも適用できることは当然である。
【0056】
次に、上記構成による動作を説明する。なお、以下では図2に<1>,<2>で示したように掃引開始波長及び掃引終了波長の双方で正規化されたモータ回転速度特性を用いる場合を例に挙げて説明するが、これ以外のモータ回転速度特性であっても同様の動作となる。また、以下では駆動回路107,駆動回路125のうち前者がマスター,後者がスレーブである場合を例に挙げて説明する。
【0057】
まず、測定者によって掃引範囲を特定するために測定開始波長および測定終了波長や測定サンプル数などの測定条件が光スペクトラムアナライザ100に設定される。これにより、制御部102は設定された測定条件に従って測定波長間隔などのデータを求めたのち、図2に<2>で示したモータ106の回転速度特性を駆動回路107に設定する。すなわち、制御部102は、光スペクトラムアナライザ100が備える分光器104に固有の特性関数と波長可変光源101に固有の特性関数とに基づいてモータ106の回転速度の補正関数を導出してこれを駆動回路107に設定する。これによって、駆動回路107は設定された補正関数に従ってモータ106の回転速度制御を行うことになる。
【0058】
次に、制御部102は通信回路103,端子[3],端子[3]’,通信回路116(以下、「通信インタフェース」という)を通じ、上記設定された測定条件を制御部115に送信する。制御部115は送信された測定条件に従って制御部102と同様に測定波長間隔などを求めるとともに、図2に<1>で示したモータ120の回転速度特性を駆動回路125に設定する。また、制御部115は予め設定された光源駆動情報に基づいて光源駆動回路123を制御し、それによって、レーザ素子117を駆動してレーザ発振させる。
【0059】
次に、駆動回路107は、制御部102からの制御信号に従って、分光器104の抽出波長が予め設定された測定開始波長に対してモータ106の加速に必要な区間を加えた掃引開始波長となるように、モータ106に対してモータ駆動信号を出力する。これにより、モータ106の回転に伴って分光器104内に配置された回折格子12が掃引開始波長に対応する角度まで回転させられる。このとき制御部102は、モータ106に接続された位置検出回路108からの出力結果に基づいて、モータ106の回転量が上記掃引開始波長に対応した値に到達しているか否かの監視を行う。同時に制御部102は、レーザ素子117からの出力波長が測定開始波長に対してモータ120の加速に必要な区間を加えた掃引開始波長となるように分光素子119の角度を設定する旨の指示を上記通信インタフェースを介して制御部115に送信する。これによって、制御部115は駆動回路125を設定してモータ120を駆動すると共に、このモータ120に接続された位置検出回路121の出力に基づいて、モータ120の回転量が上記掃引開始波長に対応した値に到達しているか否かの監視を行う。
【0060】
その後、測定者によって測定開始が指示されると、制御部102は駆動回路107を起動してモータ106の駆動信号を出力させると共に、位置検出回路108に対して目標波長を設定する。駆動回路107はモータ回転開始同期信号Aを端子[1]に出力し、これと同時に、モータ106を加速させる。このとき駆動回路125は端子[1]’を通じてモータ回転開始同期信号Aを受信すると、この信号に同期してモータ120に対する駆動信号の出力を開始してモータ120を加速させる。上記の加速動作が終了すると直ちに、駆動回路107は予め設定された補正関数に従ってモータ106の回転速度を可変させながら測定終了波長に到達するまでモータ106駆動したのちに減速動作を行い、掃引終了波長に対応する回転量でモータ106を停止させる。同様に、駆動回路125は上記の加速動作の終了後に、分光素子119の回転角度が測定終了波長に到達するまで等速度でモータ120を駆動したのちに減速動作を行い、掃引終了波長に対応する回転速度で分光素子119を停止させる。ここで、各モータの始動から測定開始波長に到達するまでの時間が同一となるように、加速に必要な区間および加速レートをそれぞれ設定しておく。なお、掃引開始波長および掃引終了波長を設定せずに、測定開始波長および測定終了波長からモータを始動させる場合には、これら加速に必要な区間および加速レートに加えて、減速に必要な区間および減速レートについても留意しておく必要がある。
【0061】
上記説明にも記したとおり、制御部102は駆動回路107を起動してモータ106に対する起動信号を出力させると共に、位置検出回路108に対して目標波長を設定する。そして、モータ106の回転量が目標波長に対応する回転量に到達したときに、位置検出回路108がトリガパルスを出力してこれを切換/遅延回路109に送出する。同様にして、制御部115は駆動回路125を起動してモータ120に対する駆動信号を出力させると共に、位置検出回路121に対して目標波長を設定する。そして、モータ120の回転量が目標波長に対応する回転量に到達したときに、位置検出回路121がサンプリングタイミング信号Bを出力してこれを制御部115および端子[2]’に出力する。このサンプリングタイミング信号Bは光スペクトラムアナライザ100側の端子[2]を経て切換/遅延回路109に送出される。切換/遅延回路109はトリガパルスおよびサンプリングタイミング信号Bが送出されるのを待ち合わせる。ここで、分光器104の抽出波長およびレーザ素子117の発振波長の何れもが上記目標波長に到達した際には、位置検出回路108からトリガパルスが出力されると共に、位置検出回路121からはサンプリングタイミング信号Bが出力される。そこで切換/遅延回路109は、トリガパルスおよびサンプリングタイミング信号Bが同一タイミングで入力されたときに互いの波長が一致していると見なし、制御部102から設定されている遅延時間を経過したのちに、サンプリングタイミング信号をA/D変換器112および制御部102に送出する。制御部102はこのサンプリングタイミング信号の受信によって、予め求めておいた次の目標波長を位置検出回路108に対して設定する。一方、制御部115はサンプリングタイミング信号Bを受信した時点で位置検出回路121に対して次の目標波長を設定する。
【0062】
ここで、A/D変換器112の起動方法は上記説明による方式に限定されるものではない。例えば、本実施形態に於ける分光器104の抽出波長とレーザ素子117の出力する発振波長は互いに一致しているため、光スペクトラムアナライザ100内に配置された位置検出回路108から出力されるトリガパルスのみを選択するように切換/遅延回路109を設定しておき、このトリガパルスのみによってA/D変換器112を起動させる方式であっても良い。また、波長可変光源101内に配置された位置検出回路121から切換/遅延回路109に送出されるサンプリングタイミング信号BのみによってA/D変換器112を起動させる方式であっても良い。このほか、後述する第2実施形態および第3実施形態に於いては、波長可変光源101の備えているレーザ素子117から出力される単一モード信号光の波長を基準としているため、レーザ素子117から出力される信号光の発振波長を決定する分光素子119を駆動するモータ120に接続された位置検出回路121からのサンプリングタイミング信号BによってA/D変換器112を起動させることが望ましい。
【0063】
これ以後は、上述説明と同様の動作が、測定終了波長までの全掃引波長範囲にわたって測定波長間隔毎に行われ、測定終了波長に於けるデータ取得後、測定を終了する。すなわち、駆動回路107および駆動回路125は、あらかじめ制御部102にて設定されたモータ制御条件およびパルスレート補正関数に従って、図2に示されているモータ回転速度特性となるように、モータ106ならびにモータ120を連続回転させることで、分光器104の抽出波長と波長可変光源101の出力波長とを掃引波長の全範囲にわたって一致させる。またモータ106またはモータ120に接続された位置検出回路109(121)のいずれか、または双方に目標波長を設定し、波長が一致した際A/D変換器112を起動させることでサンプリングを行い、演算により光電力値を求め、表示部113にプロットさせ、この一連の動作を、設定された掃引波長範囲の全体にわたって測定波長間隔ごとに行うことで、被測定物114の波長特性が測定されて表示部113上に表示される。
【0064】
以上のように、本実施形態では、モータ106およびモータ120を連続回転させながら、これらモータの回転速度がともにサンプリングを行うべき各波長に到達した時点でA/D変換器112を起動して測定データを取り込むようにしている。また、本実施形態では、被測定物114のプローブとなるのが波長可変光源101から出力される単一モード信号光であるため、波長可変光源101が備える位置検出回路121の出力するサンプリングタイミング信号Bで光スペクトラムアナライザ100のA/D変換器112を起動することが可能となっている。こうしたことから、従来手法では、モータ106およびモータ120を測定波長間隔毎に停止させてA/D変換器112を起動していたために非常に時間を要していたのに対し、本実施形態ではこうした問題を生じることはない。
【0065】
実際、図1に破線で示したように、光スペクトラムアナライザ100が備える光入力端子105と波長可変光源101が備える光出力端子118との間を平坦な波長特性を有する光ファイバのコード130で接続して波長トラッキング測定を行うと、図11に<22>で示した通りの平坦な測定結果が表示部113上に得られる。これに対して、本実施形態による波長トラッキングを実施しない場合では、光スペクトラムアナライザ100の抽出波長と波長可変光源101の出力信号光波長との間に波長差が生じてしまう。このため、光スペクトラムアナライザ100内の分光器104の分光特性によって損失が増加して、図12に<23>で示した波形のように測定レベルの変動が生じ、これが波長トラッキング測定における測定誤差となってしまう。
【0066】
図12では図8に示したものと全く同じパルス−波長特性(横軸:パルス数,縦軸:波長)を示すとともに、図11に準じて測定波形(横軸:波長,縦軸:測定レベル)を併せて示したものである。図12から分かるように、パルス数が増大するにつれて波長差が増加してゆき、波長が約1610nmよりも大きくなった辺りから測定レベルが平坦な状態から急激に落ち込んでいるのが見て取れる。このほか、図13に<24>で示した波形は、本実施形態を適用した波長トラッキング測定を行うにあたって、光入力端子105と光出力端子118の間に波長フィルタを接続して測定を行った時の結果である。
【0067】
なお、モータ106の回転速度を導出するにあたっては、図2に<2>で示したモータ回転速度特性のように、モータ106の回転速度が掃引開始波長および掃引終了波長の双方において一致するようなパルス数で正規化を行うものに限られない。すなわち、図2に<3>で示した特性のように、掃引開始点に於ける波長変化量で正規化を行って導出する方法や、図14に<7>で示した特性のように、掃引終了点に於ける波長変化量で正規化を行って導出する方法であってもよい。なお、図14に示した<1>及び<2>の特性は図2に示したものと同じである。
【0068】
また、分光器104の光学配置はリトロー配置に限られるものではなく、上述したツェルニ・ターナー配置などでもよい。また、減速機構はギアやベルトによる線形の減速比を備えたものに限られず、上述したサインバー方式などであっても良く、さらには減速機構を使用せずに直接モータで駆動するように構成しても良い。また、モータ106の回転速度を導出するにあたって、上述した説明では、波長可変光源101に関する関数を基準としてモータ106の回転速度を導出するようにしていたが、これに限られるものでもない。例えば、上記とは逆に、光スペクトラムアナライザ100が備える分光器104に関する関数を基準として、波長可変光源101が備えるモータ120の回転速度を導出するようにしても良い。
【0069】
〔第2実施形態〕
第1実施形態では、光スペクトラムアナライザ100が備える分光器104に固有の特性関数と波長可変光源101に固有の特性関数とに基づいてモータ回転速度の補正関数を導出している。そして、導出された補正関数に従ったモータ制御を行うことによって、掃引を行うべき全波長範囲にわたって、光スペクトラムアナライザ100の抽出波長と波長可変光源101から出力される信号光波長を互いに一致させるようにしている。このため、第1実施形態を実現するためには、モータを制御する駆動回路(図1の駆動回路107および駆動回路125のいずれか)が上記補正関数に従ったモータ回転速度制御機能を備えている必要がある。
【0070】
しかるに、一般的なモータの駆動回路は、モータ始動時の加速制御およびモータ停止時における減速制御機能を備えてはいても、定常運転領域に於いて複雑なモータ回転速度を制御する機能を具備していることは希であって通常は等速度回転制御のみを行うことが可能である。こうしたことから本実施形態では、一般的なモータの駆動回路を用いるだけで波長トラッキング制御を実現することを目的とするものである。したがって、本実施形態の装置構成は基本的に第1実施形態と同様であって、駆動回路107および駆動回路125として上述した一般的なものを使用する点ならびに次に述べる点が第1実施形態と異なっている。
【0071】
すなわち本実施形態では、レーザ素子117の出力信号光のスペクトル幅が数kHz〜数MHzと狭帯域になっている。ここで、分光器104の抽出波長特性は、図3に示した回折格子12の特性および具体的な光学配置,凹面鏡10および凹面鏡11の焦点距離,入射スリット13および出射スリット14の幅などから決定される分光特性によって定まる。通常であれば、分光器104の分光特性は、例えば入射スリット13および出射スリット14の幅を可変することによって分光器104の分光帯域幅を可変することができ、そのプロファイルは凹面鏡10および凹面鏡11の性能で決定されるスリット上の結像形状およびスリット幅の関係によって変化する。
【0072】
いま仮に、入射スリット13および出射スリット14の幅を結像形状よりも十分広いスリット幅に設定したとき、分光器104の分光特性は、図10において<8>,<8’>,<8”>で示したように、設定された抽出波長を中心とした前後の波長領域のうちの特定の波長範囲にわたって最大透過量が平坦な特性となっている。このため、図15に示したように、光スペクトラムアナライザ100の抽出波長と波長可変光源101の出力信号光波長との間の波長差に対する測定レベルの変化態様からもわかる通り、この分光特性に於ける平坦な波長領域内で狭帯域な単一モード信号光の波長が変化したとしても、分光器104で抽出された光検出器110への入射信号光の強度は変化しない。
【0073】
そこで本実施形態では、波長トラッキングを行うために測定者によって設定された掃引波長範囲に於いて、光スペクトラムアナライザ100の抽出波長と波長可変光源101の出力信号光波長の間における波長差(図7又は図9を参照)が、分光器104の分光特性に於ける平坦な波長領域内に収束するようにしている。そして、モータ120の回転速度に対するモータ106の回転速度を決定し、この決定された回転速度による一定速度でこれらモータを回転させるようにしている。
【0074】
ここで、前述したのとは異なるがいま仮に、図16に示したように、掃引波長範囲が1546.5nm〜1553.5nmであって、その中心波長が1550nmであるものとする。そして、分光器104に固有の光学配置等から決定される抽出波長(図16に示した<20>又は<21>)と波長可変光源101の出力信号光波長(同図の<9>)とが、設定された掃引波長範囲の中心波長で一致するようにモータ106の回転速度を求めたとする。
【0075】
そうすると、図16に示した通り、掃引波長範囲の短波長側および長波長側において、光スペクトラムアナライザ100の抽出波長と波長可変光源101の出力信号光波長との間で波長差が生じてくる。しかしこの場合においても、両波長の間における波長差は、分光器104が持っている分光特性の平坦な波長領域内に収束しているため、測定される光信号の強度に変化が生じることはない。このため、簡易なモータ回転速度の制御を行うだけで波長トラッキング制御を実現することが可能となる。
【0076】
そして、本実施形態における波長特性測定装置の動作は、以下の点を除いて第1実施形態で説明したのと同様であるため、ここではその詳細を説明することはしない。すなわち本実施形態では、第1実施形態のように、掃引波長範囲の全体にわたって分光器104の抽出波長と波長可変光源101の出力信号光波長を完全に一致させるような補正は行わない。その代わりに本実施形態では、設定された掃引波長範囲における抽出波長と出力信号光波長との間の波長差が、分光器104の最大透過特性の平坦な領域に相当する波長範囲内に収束するように制御している。
【0077】
そのために本実施形態では、分光器104を駆動するモータ106の初期回転時の回転量および停止時の回転量に基づいて掃引に必要なモータ回転量を求めるとともに、波長可変光源101の掃引時間からモータの回転速度を求め、これらモータ回転量およびモータ回転速度に従ってモータ106およびモータ120を等速度で回転させて、分光器104および波長可変光源101のトラッキングを行っている。このため本実施形態では、駆動回路107および駆動回路125が最初にモータ106,モータ120の回転速度および回転量を制御するのみであって、掃引中はこれらモータを等速度運転させるように制御している。斯かる点において、本実施形態は第1実施形態と異なっている。
【0078】
なお、モータ106の回転速度は掃引波長範囲における中心波長で一致するような場合に限られない。例えば、図17に示すように掃引開始波長および掃引終了波長の双方が一致するようなモータ回転速度であっても良く、掃引開始波長または掃引終了波長の何れか一方でのみ一致するようなモータ回転速度であっても良く、さらには、これら以外のモータ回転速度であっても良い。
また、上述した説明では、モータ120の回転パルス数に対する波長特性を基準としてモータ106のモータ回転速度を求めていたがこれに限定されるものでもない。例えばこれとは逆に、モータ106の回転パルス数に対する波長特性を基準としてモータ120のモータ回転速度を求めるようにしても良い。
【0079】
〔第3実施形態〕
本実施形態は第2実施形態において以下のような状況となった場合に好適な実施形態である。すなわち斯かる状況として、光スペクトラムアナライザ100が備える分光器104のパルス−波長特性(図6に示した<5>の特性)と波長可変光源101のパルス−波長特性(図6に示した<4>の特性)とが大きく異なる場合が考えられる。またこれ以外にも、分光器104の有する分光特性で決定される平坦な波長領域(図10を参照)が狭いために、波長可変光源101の出力信号光波長が、設定された掃引波長範囲において、分光器104の分解能で決定される分光特性の平坦な波長領域を越えてレベル変動する場合などが考えられる。
【0080】
そこで本実施形態では、波長可変光源101の出力信号光波長が分光器104の平坦な波長領域内で収束する波長範囲ないし波長区間を求め、掃引波長範囲の全体を当該波長区間で分割し、分割された波長区間毎に分光器104を駆動するモータ106の回転速度について最適値を決定している。そして、分割された区間毎にそれぞれの区間に適したモータ回転速度によるモータ制御を行って、波長可変光源101の出力信号光波長を分光器104の分光特性で決定される平坦な波長領域に収束させるようにしている。
【0081】
ここで、分割を行った場合(本実施形態)および分割を行わなかった場合(第2実施形態)におけるパルス−波長特性の具体例をそれぞれ図18に示す。図中、<25>で示される特性は波長可変光源101に於けるパルス数に対する出力信号光波長の特性,<26>で示される特性は第2実施形態を適用した場合に於ける光スペクトラムアナライザ100のパルス数に対する抽出波長の特性,<27>で示される特性は本実施形態を適用した場合において分割された区間毎のパルス数に対する抽出波長の特性である。第2実施形態を適用した場合と比べると、本実施形態を適用した場合における光スペクトラムアナライザのパルス−波長特性が掃引波長範囲の全体にわたって波長可変光源のパルス−波長特性に近接しており、両波長間における波長差がほとんど無いことが分かる。
【0082】
そして、図19は図18に示した光スペクトラムアナライザ100と波長可変光源101のそれぞれのパルス−波長特性における波長差を示したものである。図中、<28>で示される特性は分割を行わない第2実施形態を適用した場合に於ける波長差の特性であり、<29>で示される特性は本実施形態を適用した場合における波長差の特性である。同図では、掃引波長範囲の全体をパルス数が0〜320000強,320000強〜680000弱,680000弱〜1E+006(=10)の3区間に分割した場合を例示してある。第2実施形態を適用した場合には波長差の最大値が4〔nm〕を越えているのに対して、本実施形態を適用することで波長差の最大値が1〔nm〕程度にまで低減されている。これによって、波長可変光源101の出力信号光波長を分光器104の分光特性で決定される平坦な波長領域に収束される。
【0083】
次に、図20において、<30>で示される特性はモータ106を駆動するパルスレートの変化を本実施形態について示したものである。また同図では、図2又は図14と同様に、波長可変光源101のモータ回転速度特性(図中の<1>で示す特性を示すとともに、比較のために第1実施形態においてモータ106を駆動する際のパルスレートの変化(図中、<3>で示される特性)を示してある。第1実施形態を適用した場合には光スペクトラムアナライザ100の備えるモータ106の回転速度が掃引波長範囲全体にわたって連続的に変化しているのに対し、本実施形態を適用した場合は図19に示した3つの区間にそれぞれ対応するようにモータ回転速度が区間毎に不連続、かつ、各区間内では一定のパルスレートで制御されている。
【0084】
本実施形態に於ける波長トラッキングによる掃引を実現するにあたっては、駆動回路107がモータ106を駆動するためのパルスを出力している最中にそのパルスレートを可変できる機能を備えていれば、測定者によって設定された掃引波長範囲の全体にわたって一括して掃引することが可能である。また、駆動回路107が斯かる機能を持たない通常の駆動回路であったとしても、分割された区間毎に掃引を一旦停止させて、次の区間についての掃引開始波長,掃引終了波長,パルスレート等の条件設定を行った後に、当該次の区間の掃引を行うことで同様に実現可能である。
【0085】
そして本実施形態における波長特性装置の動作は以下の点を除いて第2実施形態に同じである。すなわち、第2実施形態では掃引波長範囲の全体にわたってモータ106及びモータ120を等速度運転させていた。これに対して本実施形態では、掃引中にこれらモータのパルスレートを切り換えてゆく点で第1実施形態に類似している。もっとも、第1実施形態では与えられた測定条件から算出される測定波長間隔毎にモータのパルスレートを可変させていたのに対し、本実施形態では分割された波長区間のそれぞれに対応したモータ回転量毎にモータ106のパルスレートを可変させている。そのために、位置検出回路108はパルスレートの切換点に相当するモータ106の回転量を検出すると、その都度、波長情報を信号Cとして駆動回路107に送出するようにしている。
【0086】
同様にして波長可変光源101側では、位置検出回路121がパルスレートの切換点に相当するモータ120の回転量を検出する度にその波長情報を信号C’として駆動回路125に送出する。そして駆動回路125が、分割された波長区間に相当するモータ回転量毎にモータ120のパルスレートを可変させている。なお、本実施形態では必ずしも信号Cや信号C’を用いて実現しなくても良いことは前述した通りである。以上の通りであるから、本実施形態の動作の詳細は特に説明を要しない。
【0087】
なお、本実施形態では、波長可変光源101が備えるモータ120の回転パルス数に対する波長特性を基準として、光スペクトラムアナライザ100が備えるモータ106の回転速度を求めていたが、これに限定されるものではない。例えば上述したのとは逆に、モータ106の回転パルス数に対する波長特性を基準としてモータ120の回転速度を求めるようにしても良いのは勿論である。
また、本実施形態では、本発明を実現するための代表的な構成として図1に示した構成を例示したに過ぎず、本発明が図1の構成に限定されるものでないことは当然である。すなわち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、同図に示した構成に回路や機能を付加した場合も当然ながら本発明の範囲に含まれるものである。例えば、他の構成により掃引の同期始動およびパルスレートの可変を行っても良いことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1実施形態による波長特性測定装置の構成を示したブロック図である。
【図2】同実施形態において、光スペクトラムアナライザおよび波長可変光源の各々についてモータ回転速度の変化を示した説明図である。
【図3】同実施形態において、分光素子に対する信号光入出射の様子を示した図であって、ツェルニ・ターナー配置について示した説明図である。
【図4】同実施形態において、分光素子に対する信号光入出射の様子を示した図であって、リトロー配置について示した説明図である。
【図5】同実施形態において、サインバー方式による分光素子の減速機構(角度可変方式)の一例を示した説明図である。
【図6】同実施形態において、光学配置や分光素子の特性によって光スペクトラムアナライザの抽出光波長と波長可変光源の出力信号光波長との間に生じる波長差の関係を示した説明図である。
【図7】同実施形態において、光学配置や分光素子の特性によって光スペクトラムアナライザの抽出光波長と波長可変光源の出力信号光波長との間に生じる波長差の量を示した説明図である。
【図8】同実施形態において、光学配置や分光素子の特性によって光スペクトラムアナライザの抽出光波長と波長可変光源の出力信号光波長との間に生じる波長差の関係を示した図であって、掃引開始点に於ける波長変化量で正規化したときのモータ回転パルス数に対する波長特性を示した説明図である。
【図9】同実施形態において、光学配置や分光素子の特性によって光スペクトラムアナライザの抽出光波長と波長可変光源の出力信号光波長との間に生じる波長差の量を示した図であって、図8に示した両特性の間における波長差量を示した説明図である。
【図10】同実施形態による波長トラッキングを実施した際における光スペクトラムアナライザの抽出波長と波長可変光源の出力信号光波長との間における関係を示した説明図である。
【図11】同実施形態において、光スペクトラムアナライザと波長可変光源との間を光ファイバコードで接続して測定を行うことで得られる測定波形を示した説明図である。
【図12】同実施形態による波長トラッキングを実施せずに掃引を行った場合に、光スペクトラムアナライザおよび波長可変光源の各々に関するパルス−波長特性ならびに両者の波長差に起因して発生する測定波形のレベル変動の様子を示した説明図である。
【図13】同実施形態による波長トラッキング測定を実施した場合における波長フィルタの透過波長特性の測定結果を示した説明図である。
【図14】同実施形態において、光スペクトラムアナライザおよび波長可変光源の各々についてモータ回転速度の変化を示した図であって、掃引開始点に於ける波長変化量で正規化したときの特性と掃引終了点に於ける波長変化量で正規化したときの特性を併記した説明図である。
【図15】本発明の第2実施形態において、光スペクトラムアナライザが備える分光器の分光特性によって決定され、光スペクトラムアナライザの抽出波長および波長可変光源の出力信号光波長との間における波長差が原因となって生じる測定レベルの変動特性を示した説明図である。
【図16】同実施形態による波長トラッキング測定を実施した場合における光スペクトラムアナライザの抽出波長と波長可変光源の出力信号光波長との間の関係を示した説明図である。
【図17】同実施形態による波長トラッキング測定を実施した場合における光スペクトラムアナライザの抽出波長と波長可変光源の出力信号光波長との間の関係を示した図であって、掃引開始波長および掃引終了波長の双方が一致するモータ回転速度とした場合について示した説明図である。
【図18】本発明の第3実施形態による波長トラッキング測定を実施した場合における光スペクトラムアナライザの抽出波長と波長可変光源の出力信号光波長との間の関係を示した説明図である。
【図19】光スペクトラムアナライザの抽出光波長と波長可変光源の出力信号光波長との間に生じる波長差の量を分割を行った同実施形態の場合と分割を行わなかった場合を対比させて示した説明図である。
【図20】同実施形態において、光スペクトラムアナライザおよび波長可変光源の各々についてモータ回転速度の変化を示した図であって、光スペクトラムアナライザについては分割を行った同実施形態の場合と分割を行わなかった場合を対比させて示した説明図である。
【図21】従来技術による波長特性測定装置の構成を示したブロック図である。
【図22】従来技術による波長特性測定装置において実施される光スペクトラムアナライザおよび波長可変光源の波長トラッキングの手順を示したフローチャートである
【符号の説明】
【0089】
12…回折格子、100…光スペクトラムアナライザ、101…波長可変光源、102…制御部、103…通信回路、104…分光器、105…光入力端子、106…モータ、107…駆動回路、108…位置検出回路、109…切換/遅延回路、110…光検出器、111…増幅回路、112…A/D変換器、113…表示部、114…被測定物、115…制御部、116…通信回路、117…レーザ素子、118…光出力端子、119…分光素子、120…モータ、121…位置検出回路、123…光源駆動回路、124…表示部、125…駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号光を出力する波長可変光源と、該信号光を被測定物に入射して得られる被測定光のスペクトル分布を計測する光スペクトラムアナライザとを用いて、前記被測定物の光波長特性を測定する波長特性測定装置において、
前記光スペクトラムアナライザは、第1の分光素子によって前記被測定光から特定の波長成分を抽出し、予め設定された分解能に対して、抽出波長を中心とした前後の所定波長範囲にわたって平坦な最大透過量となる波長透過特性を持った分光手段と、前記第1の分光素子の角度を可変させて抽出波長を所定の掃引波長範囲にわたって掃引する第1の駆動手段とを備え、
前記波長可変光源は、前記信号光として単一モード信号光を出力するレーザ素子と該レーザ素子を任意の波長でレーザ発振させる第2の分光素子とで構成される外部発振器と、前記第2の分光素子の角度を可変させて前記信号光の信号光波長を前記掃引波長範囲にわたって掃引する第2の駆動手段とを備え、
前記第1及び第2の分光素子の角度をそれぞれ可変させる第1及び第2のモータの回転速度は、前記信号光波長が前記所定波長範囲内に収束するように予め決められており、前記第1及び第2の駆動手段はこれら回転速度に従って前記第1及び第2のモータを等速度回転させることを特徴とする波長特性測定装置。
【請求項2】
前記掃引波長範囲は、前記信号光波長が前記所定波長範囲内に収束する波長区間を単位とした複数の波長区間に分割されており、
前記第1及び第2の駆動手段は、前記各波長区間について予め決められている前記第1及び第2のモータの回転速度に従って、前記第1及び第2のモータを等速度回転させることを特徴とする請求項1記載の波長特性測定装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の駆動手段は、前記第1及び第2のモータの各々にモータ回転パルスを出力している最中に、前記第1及び第2のモータのパルスレートを可変させることを特徴とする請求項2記載の波長特性測定装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の駆動手段は、前記波長区間毎に掃引動作を一旦停止させ、次に掃引すべき波長区間に関する条件設定を行ってから当該区間の掃引を行うことを特徴とする請求項2記載の波長特性測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−162632(P2006−162632A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7662(P2006−7662)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【分割の表示】特願平11−125373の分割
【原出願日】平成11年4月30日(1999.4.30)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】