説明

波長選択スイッチ

【課題】広帯域化を実現しつつ、ミラーの振れ角の範囲を大きくする事なく、ヒットレス動作を実現する。
【解決手段】第1方向にアレイ状に並び、波長多重された光の入力部及び出力部を有する光入出力部と、入力部から入力された波長多重光をそれぞれの信号波長に分離する光分散手段と、信号波長に分離された光を集光させる集光素子と、集光素子により集光されたそれぞれの信号波長光を所望の出力部にスイッチングさせるように、第1方向、及び、第1方向に直交する第2方向に、信号光を偏向させる光偏向素子アレイと、を備える波長選択スイッチにおいて、光偏向素子アレイの偏向範囲内において、入力部から出射された光が、その進行方向と垂直な面に対し、垂直と異なる角度で入射するように集光素子及び光偏向素子アレイが配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長選択スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
波長に対応してミラーアレイのミラーの傾きを制御する波長選択スイッチにおいて、任意の入力ポートのある波長の光が出力ポートに出力された状態で、違う入力ポートに切り替えたい場合、意図しない入力ポートの光が出力ポートに出力されてはいけない。意図しない入力ポートの光が出力ポートに出力されることを防ぐ方法として、ミラーを一度、角度分散方向に振って、繋がっていた入力ポートの光強度を十分に落とすものがある。この方法では、全ての入力ポートの光が出力ポートに出力されない状態を保ちながら、ポート切り替え方向にミラーを振った後に、再度、角度分散方向にミラーを振って、任意のポートに切り替える(例えば特許文献1)。この方法は、一般的にヒットレスと呼ばれている。
また、波長選択スイッチの広帯域化を実現するには、ミラーアレイのミラー上でのスポット径を小さくする事が有効である事が広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6798941号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、広帯域化の実現のためにミラー上のビーム径を小さくすると、ヒットレスの際にミラーの振れ角度に対する透過率の低下量が小さくなってしまい、ヒットレスを行う事が困難となる。従って波長選択スイッチの広帯域化において、ヒットレスを行うにはミラーの振れ角度幅を大きくする必要があるが、ミラーの構造上、振れ角度幅には制限があり、大きくする事はできないという課題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、広帯域の波長選択スイッチにおいて、ミラーの振れ角の範囲を大きくする事なく、ヒットレス動作を実現する事を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る波長選択スイッチは、第1方向にアレイ状に並び、波長多重された光の入力部及び出力部を有する光入出力部と、入力部から入力された波長多重光をそれぞれの信号波長に分離する光分散手段と、信号波長に分離された光を集光させる集光素子と、集光素子により集光されたそれぞれの信号波長光を所望の出力部にスイッチングさせるように、第1方向、及び、第1方向に直交する第2方向に、信号光を偏向させる光偏向素子アレイと、を備える波長選択スイッチにおいて、光偏向素子アレイの偏向範囲内において、入力部から出射された光が、その進行方向と垂直な面に対し、垂直と異なる角度で入射するように集光素子及び光偏向素子アレイが配置されていることを特徴としている。
【0007】
本発明に係る波長選択スイッチにおいては、集光素子により集光されたそれぞれの信号波長光の進行方向が、第2方向において、集光素子の中心軸と一致しないように、光分散手段と集光素子が配置されていることが好ましい。
【0008】
本発明に係る波長選択スイッチにおいては、集光素子により集光されたそれぞれの信号波長光の進行方向が、第2方向において、集光素子の中心軸と一致し、光偏向素子アレイの偏向範囲内において、入力部から出射された光が、その進行方向と垂直な面に対し、垂直と異なる角度で入射するように光偏向素子アレイが傾斜していることが好ましい。
【0009】
本発明に係る波長選択スイッチにおいて、集光素子は、集光素子により集光されたそれぞれの信号波長光の進行方向と集光素子の中心軸とが一致する位置から、第2方向へずらして配置されていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る波長選択スイッチにおいて、光偏向素子アレイは、第2方向に配列された複数のミラーを有するミラーアレイであって、複数のミラーは、複数のミラーのそれぞれに集光する点を結んだ軸に対して常に斜めに傾いていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る波長選択スイッチは、広帯域化を実現しつつ、ミラーの振れ角の範囲を大きくする事なく、ヒットレス動作を実現するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態の波長選択スイッチの構成を示す側面図である。
【図2】第1実施形態の波長選択スイッチの構成を示す上面図である。
【図3】図2の分散素子及び集光レンズの拡大図である。
【図4】第1実施形態のミラーアレイの構成を示す斜視図である。
【図5】(a)は、α傾いてミラーへ入射する入射光の反射を第2方向から見た図、(b)はβ傾いてミラーへ入射する入射光の反射を第1方向から見た図である。
【図6】第1実施形態の入出力ポートとレンズアレイの配置を示す斜視図である。
【図7】図6の一部を拡大して第2方向から見た側面図である。
【図8】図6の一部を拡大して第1方向から見た側面図である。
【図9】第1変形例に係る入出力ポートとレンズアレイの配置を示す斜視図である。
【図10】図9の一部を拡大して第2方向から見た側面図である。
【図11】図9の一部を拡大して第1方向から見た側面図である。
【図12】第1実施形態のミラーの角度を変更したときの、角度Xθ及び角度Yθに対する光強度Iの分布を示す図である。
【図13】第1実施形態のミラーの角度Xθ、Yθと出力ポートに入る光の光強度Iとの関係を示した図である。
【図14】第1実施形態の出力ポートに入る光の光強度I、ミラーの角度Yθ、及びヒットレス範囲の関係を示す図であり、(a)は角度Yθの位置をオフセットしていない比較例を示し、(b)は角度Yθをオフセットした例を示す図である。
【図15】第1実施形態のMEMSミラーの構成を示す斜視図である。
【図16】図15の軸方向から見た側面図であって、(a)は角度YθがYθ1であるときの状態を、(b)は角度YθがYθ2であるときの状態を、それぞれ示す図である。
【図17】第2変形例に係るMEMSミラーの構成を示す斜視図である。
【図18】図17の軸方向から見た側面図であって、(a)は角度YθがYθ1であるときの状態を、(b)は角度YθがYθ2であるときの状態を、それぞれ示す図である。
【図19】第3変形例に係るMEMSミラーの構成を示す斜視図である。
【図20】図19の軸方向から見た側面図であって、(a)は角度YθがYθ1であるときの状態を、(b)は角度YθがYθ2であるときの状態を、それぞれ示す図である。
【図21】第1実施形態の波長選択スイッチを組み立てる手順の1つの例を示すフローチャートである。
【図22】第1実施形態の波長選択スイッチの組立過程のうち、集光レンズを配置した状態を示す図である。
【図23】第1実施形態の波長選択スイッチの組立過程のうち、ミラーアレイを駆動して出力ポートの光強度分布を測定する状態を示す図である。
【図24】第4変形例に係る分散素子、集光レンズ、及びミラーアレイの構成を示す斜視図である。
【図25】第2実施形態の波長選択スイッチの構成を示す側面図である。
【図26】第2実施形態の波長選択スイッチの構成を示す上面図である。
【図27】図26の分散素子及び集光レンズの拡大図である。
【図28】ミラーアレイの構成を示す第1方向から見た側面図である。
【図29】(a)は、角度YθをYθ1としたときのミラーへの入射光の反射を第1方向から見た図、(b)は、角度YθをYθ2としたときのミラーへの入射光の反射を第1方向から見た図である。
【図30】第2実施形態のMEMSミラーの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る波長選択スイッチの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の波長選択スイッチの構成を示す側面図、図2は、第1実施形態の波長選択スイッチの構成を示す上面図、図3は、図2の分散素子112及び集光レンズ113の拡大図である。
第1実施形態の波長選択スイッチは、光入出力部としての入出力ポート110、レンズアレイ111、光分散手段としての分散素子112、集光素子としての集光レンズ113、及び、光偏向素子アレイとしてのミラーアレイ114を有している。
【0015】
入出力ポート110は、複数の入出力ポートを備え、例えば図1に示すように、4つの入力ポート110a、110b、110c、110dと、1本の出力ポート110eと、が出力ポート110eを中心に第1方向A1にアレイ状に等間隔で並んだ状態で構成される。入出力ポートの本数、入力ポートと出力ポートの並び等はこの状態で限定されるものではない。また、図2では、1つの入力ポートのみから波長多重された光が入力されている様子を簡略化して示しているが、実際は複数の入力ポートから、波長多重された光が入力される。
【0016】
レンズアレイ111は、少なくとも、入出力ポート110のそれぞれの入出力ポートに対応した複数のレンズを有している。それぞれの入力ポート110a、110b、110c、110dから出た光は、レンズアレイ111の対応するレンズによって、コリメートされた光となり分散素子112の方向へ出ていく。
【0017】
分散素子112は、レンズアレイ111でコリメートされた光を第1方向A1(図1)に直交する第2方向B1(図2)において、波長に応じて角度分散させる。分散素子112に入る波長多重された光は、分散点P1から、各波長に応じて第2方向B1において、互いに異なる角度で進行する。
なお、分散素子112は、図1、図2のような透過型の分散素子のほか、反射型の分散素子を用いても良い。
【0018】
集光レンズ113は、焦点距離fを有している。分散素子112により分散された各波長の光は、集光レンズ113によって、ミラーアレイ114の複数のミラー114m上にそれぞれ集光する。
【0019】
ここで、分散素子112と集光レンズ113の間隔は焦点距離fだけ離れていることが望ましい。なぜなら、分散素子112と集光レンズ113の間隔は焦点距離fからずれていると、集光レンズ113から出た各波長の光の角度が波長ごとに異なってしまう為である。つまり、分散素子112と集光レンズ113の間隔がfであると、集光レンズ113から出た光は波長ごとに一致した方向にミラーアレイ114のミラー114mに向かって進んでいく。
【0020】
図3に示すように、集光レンズ113は、前側焦点位置FP1と後側焦点位置FP2を結んだ軸である光軸が、分散素子112の分散点P1から第2方向B1にΔQオフセットさせた位置を通るように配置されている。
【0021】
これにより、分散素子112により分散された各波長の光のうち、第2方向B1の角度が光軸と同一となる波長λcの光と、集光レンズ113の光軸と、は分散素子112から分散して集光レンズ113に入るまでの間、集光レンズ113の光軸と第2方向B1に対する角度が同一で進行する。波長λcの光は、集光レンズ113の光軸に対してΔQだけ第2方向B1にオフセットした位置を通り、集光レンズ113によって、第2方向B1において集光レンズ113の光軸と異なる方向に、ミラーアレイ114のミラー114mに向かって進む。したがって、集光レンズ113から出る各波長の光は、第2方向B1において集光レンズ113の光軸とは一致しない方向に、それぞれ平行な状態で進んでいく。
ここで、波長λcの光は、分散素子112から集光レンズ113までの区間において集光レンズ113の光軸と第2方向B1の角度方向が一致する信号波長の光である。
【0022】
図4は、ミラーアレイ114の構成を示す斜視図である。図5(a)は、α傾いてミラー114mへ入射する入射光の反射を第2方向B1から見た図、(b)はβ傾いてミラー114mへ入射する入射光の反射を第1方向A1から見た図である。
【0023】
ミラーアレイ114は、第2方向B1に配列された複数のミラー114mを有している。各ミラー114mは、図4、図5に示すように、X軸に沿った軸Xmを中心に角度Xθ、Y軸に沿った軸Ym中心に角度Yθ、それぞれ独立して回転する事が可能である。
ここで、X軸は第2方向B1、Y軸は第1方向A1に対応している。
【0024】
各ミラー114mは、分散素子112によって波長ごとに分散された光にそれぞれ対応する。これらの光は、集光レンズ113によって、集光レンズ113の光軸とは異なる方向にそれぞれ出射され、対応するミラー114mの中心にそれぞれ集光される。ミラー114m上に集光される光は、ミラー114mの反射面に対して斜めに入射し、ミラー114mによって、入射方向とは異なった方向に反射される。
【0025】
ミラーアレイ114は、各ミラー114mの反射面の中心と集光レンズ113との間隔が、fと一致するように配置されている。ここで、ミラー114mの反射面の中心は、角度Xθの回転軸Xmと角度Yθの回転軸Ymの交点と略一致する。この配置により、分散素子112において波長ごとに分散された光はミラー114mの反射面の中心位置に集光する。このときの各波長の光の集光位置を結んだ軸は、X軸に沿った軸であり、集光レンズ113の光軸に対して垂直である。
【0026】
このとき、図5のように角度Xθ、Yθミラー114mを回転して、第1方向A1の入射角をα、第2方向B1の入射角をβとした光を入射させると、ミラー114mから反射される光は、第1方向A1では角度2α(図5(a))、第2方向B1では角度2β(図5(b))だけ、入射光に対して、傾いた方向に反射される。
【0027】
ミラーアレイ114のミラー114mによって反射された光は広がりを持った光束の状態で集光レンズ113に入る。各ミラー114mの回転角が同じの場合、集光レンズ113に入った各波長の光は分散素子112上の一点に集まり、波長多重されたコリメート光となって集光レンズ113から分散素子112へ進んでいく。
【0028】
分散素子112上で一点に集まる集合点は分散素子112によって、入力ポートから波長多重された光が波長によって異なる方向に分散素子112上で分散される分散点とは距離Lだけ離れた位置にある。距離Lの第2方向B1の成分をLX及び第1方向A1の成分LYは、集光レンズ113の焦点距離fとミラー114mへの入射角α、βを用いると以下の式(1)、(2)で表される。
LX=f・tan(2β) ・・・(1)
LY=f・tan(2α) ・・・(2)
【0029】
分散素子112によって波長多重されたコリメート光は、レンズアレイ111のレンズのうち、出力ポート110eに対応したレンズ上に入る。レンズ上に入る位置はレンズの中心ではなく、中心から第2方向B1にLXだけずれた位置であり、レンズの光軸と同じ角度で入り、レンズから出た光は出力ポート110e上に集光される。
【0030】
図6は、入出力ポート110とレンズアレイ111の配置を示す斜視図である。図7は、図6の一部を拡大して第2方向B1から見た側面図、図8は、図6の一部を拡大して第1方向A1から見た側面図である。
図6〜図8は入出力ポート110の入力ポート110cから出る光と出力ポート110eに入る光の関係を示している。
【0031】
ここで、U面110Uは、入出力ポート110の各入力ポートから出る光に対して垂直な仮想面である。図5に示すようにミラー114mへの入射角βがゼロでないとき、出力ポート110eに入る光はU面110Uに対して、第2方向B1に斜めに入射する。ミラー114mへの入射角βがゼロのとき、出力ポート110eに入る光はU面110Uに対して、第2方向B1に垂直に入射する。U面110Uに斜めに入射する角度をθとすると、入射角βが大きくなればなるほど、出力ポート110eに入る光の入射角θは大きくなる。入射角βがある大きさを越えると、出力ポート110e上に入射する位置がレンズアレイ111のレンズの収差によって第2方向B1にずれる事となり、さらに入射角βを大きくすると、最終的に入力ポートと出力ポート110eは繋がらなくなってしまう。
【0032】
出力ポート110eに入射する光が、U面110Uに対して角度θだけ斜めに入った場合の出力ポート110eの結合効率ηは次式(3)で表される。
η=exp(−πωθ/λ) ・・・(3)
ここで、ωは出力ポート110eに入射するスポットサイズ、λは入射光の波長を示している。
【0033】
角度θが大きくなると、結合効率ηは小さくなる事がこの式(3)から分かる。出力ポート110eに入射する第1方向A1の入射角をθX、第2方向B1の入射角をθYとすると、θX=0の場合、出力ポート110eと繋がっている入力ポートの中心軸間隔Pは次式(4)で表される。
P=LY=f・tan(2α) ・・・(4)
【0034】
また、入射角βがミラー114mの回転範囲において最も小さい場合、θX=0(P=LX)のときは、入力ポート110cの光が最も損失が少ない状態で出力ポート110eに繋がった状態となる。
【0035】
図9は、第1変形例に係る入出力ポート210とレンズアレイ211の配置を示す斜視図である。図10は、図9の一部を拡大して第2方向B1から見た側面図、図11は、図9の一部を拡大して第1方向A1から見た側面図である。
上述の実施形態では、入出力ポート110の各入力ポート内から光が進行し、入力ポート端面で光が出射しており、その入出力ポート110の各ポートのレンズアレイ111側の端面と、入力ポート内及び出力ポート内を進行する光の進行方向と、が互いに垂直となっている。
【0036】
これに対して、図9、図10、図11に示すように、入出力ポート210の各ポートのレンズアレイ211側の端面が、入力ポート210a、210b、210c、210d内及び出力ポート210e内を進行する方向に対して斜めになるように、入出力ポート210とレンズアレイ211を配置しても良い。この第1変形例においても、U面210Uは、入出力ポート210の各入力ポートから出る光に対しては垂直な仮想面である。
【0037】
第1実施形態の波長選択スイッチでは、ミラー114mを回転する事によって、入射光の入射角α、βを変化させる事が可能である。入射角α、βを変化させることにより、入出力ポート110のU面110Uに入射する入射角θX、θYを変化させる事が可能である。したがって、ミラー114mを回転する事によって、出力ポート110eに出力される光強度を任意に減少させる事が可能である。
【0038】
図12は、ミラー114mの角度を変更したときの、角度Xθ及び角度Yθに対する光強度Iの分布を示す図である。図12では、ある任意の入力ポートが出力ポートと繋がっている状態において、光強度が最も高くなるように、ミラー114mを、角度Xθ=0かつ角度Yθ=0から振ったときの出力ポートの光強度Iの分布を示している。図12によれば、ミラー114mを回転軸Xm及び/又は回転軸Ymの周りに回転させる事によって、出力ポートの光強度Iを減少させる事が可能である事が分かる。
【0039】
また、図1に示すように入力ポートは4つあるため、入力ポートの中心軸間隔PがLXとなる箇所も4つ存在し、それぞれのミラー114mの回転角は、角度Yθは同一であるが、角度Xθはそれぞれ違う値である。つまり、ミラー114mのXθを回転する事によって、入射角αを変化させ、任意の入力ポートを出力ポート110eに接続する事が可能である。
【0040】
入出力ポート110の各入力ポートに入力される波長多重された光は、波長ごとに入力される光強度が異なる。波長選択スイッチには、波長ごとに異なる強度を揃えて、波長多重し、出力ポートから出力するという機能(アッテネーション)がある。第1実施形態の波長選択スイッチでは、光強度が最も高くなるように集光レンズ113のミラー114mを振った状態から、各波長の光強度に対応してミラー114mの回転角を可変する事によって、アッテネーションを達成している。
【0041】
アッテネーションにおいて揃える光強度の値は、最も小さい光強度値より小さい値とする必要があり、その最も小さい光強度との強度差が大きい波長はミラー114mを可変させる回転量は大きく、強度差が小さい波長はミラー114mを可変させる回転量は小さくなる。つまり、アッテネーションしている状態とは、各ミラー114mを光強度が最も高くなるようにミラー114mを振った状態から、各ミラー114mを各波長の強度に対応して、ミラー114mを回転させて、出力ポート110eに光強度を揃えた状態で出力する事である。一方、アッテネーションしていない状態とは、ミラー114mを光強度が最も高くなるようにミラー114mを振った状態のまま、出力ポート110eに出力する事である。
【0042】
図13は、ミラー114mの角度Xθ、Yθと出力ポート110eに入る光の光強度Iとの関係を示した図である。図14は出力ポート110eに入る光の光強度I、ミラー114mの角度Yθ、及びヒットレス範囲H10の関係を示す図であり、(a)は角度Yθの位置をオフセットしていない比較例を示し、(b)は角度Yθをオフセットした例を示す図である。
【0043】
第1実施形態の波長選択スイッチでは、出力ポート110eの光強度が最大を示す角度Yθの位置(光強度分布のピーク位置)を、Yθ1(Yθ=0)からミラー114mを振る方向とは逆の方向にβ1だけオフセットしている(図14(b))。また、ミラー114mの角度Yθの回転範囲をYθ1(Yθ=0)〜Yθ2としている。
【0044】
このようにオフセットしてミラー114mの角度Yθの回転範囲をYθ1(Yθ=0)〜Yθ2とすると、ミラー114mは、角度Yθを変更しても、出力ポートの光強度が最大を示す位置の状態にならない。これは、出力ポート110eのU面110Uに対する入射角θYがゼロとならない為である。
【0045】
図13に示す破線の矢印は、入力ポート110dと出力ポート110eが接続している状態C11から、状態C12、C13を経て、入力ポート110aと出力ポート110eが接続している状態C14に切り替える動作を示している。具体的な動作は以下に説明する。
【0046】
ミラー114mの可動範囲内における入力ポート110dと出力ポート110eが接続する光強度が最も高い状態を状態C11とし、その時のミラー114mの振れ角をXθ1、Yθ1とする。状態C11から、入力ポートを切り替えるにはXθを一定に保ったまま、Yθが大きくなる方向にミラー114mを最大振れ角まで回転させる。その状態を状態C12とし、その時にミラー114mの振れ角はXθ1、Yθ2である。
【0047】
次にミラー114mの角度Yθを保ったまま、入力ポート110aの方向にミラー114mのXθを回転させる。その時の回転量ΔXθは、入力ポート110aと入力ポート110dの中心軸間隔をL10a−dとすると、次式(5)で表される。
ΔXθ=tan−1(L10a−d /f)/2 ・・・(5)
ミラー114mが角度ΔXθ回転した時の状態を状態C13とし、その時のミラー114mの振れ角をXθ2、Yθ2としている。
【0048】
次に、ミラー114mの角度Xθを保ったまま、ミラー114mの振れ角が小さくなる方向にミラー114mのYθをYθ1まで回転させる。この状態を状態C14とし、その時のミラー114mの振れ角をXθ2、Yθ1としている。
【0049】
光強度が最大を示す角度Yθの位置をβ1オフセットした事によって、ヒットレス動作の途中動作である状態C12〜C13への移行を行う際、光強度がある許容値以下であるヒットレス可能な範囲を通る事を実現している。
【0050】
仮に図14(a)に示すような従来の構成のようにβ1=0とした場合、ミラー114mの最大振れ角Yθ2までミラー114mを振ったとしても、光強度Iはヒットレス可能範囲H10内に達していない。これに対して、図14(b)に示す第1実施形態の構成のようにβ1がゼロではない状態では、ミラー114mの最大振れ角Yθ2までミラー114mを振ったときの光強度Iはヒットレス可能範囲H10内に十分に達している事が分かる。
【0051】
ここで、図14(b)に示すようにオフセットした場合、最小振れ角のYθ1での光強度Iが、オフセットしない場合と比べてΔWだけ低下してしまう。しかし、ミラー114mに集光するスポット径は十分に小さい為、その低下量ΔWも小さい値となる。したがって、ΔW低下しても実用上問題はない。
【0052】
また、図14(a)に示す従来の構成においても、ミラー114mの最大振れ角Yθ2を大きくすればヒットレス可能範囲に到達する事は可能である。しかし、ミラーアレイ114の構成によっては最大振れ角Yθ2を大きくすることが困難となる場合がある。
【0053】
第1実施形態のミラーアレイ114のミラー114mは、例えば図15に示すMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーで構成されており、静電駆動方式が採用されている。図15は、MEMSミラー120の構成を示す斜視図である。図16は、図15の軸140c方向から見た側面図であって、(a)は角度YθがYθ1であるときの状態を、(b)は角度YθがYθ2であるときの状態を、それぞれ示す図である。なお、Yθ1、Yθ2は互いに異なる角度である。
【0054】
図15、図16を用いて静電駆動型MEMSミラーの駆動原理及び特徴を説明する。
120は、上面に反射面141を有する可動板140と、上面に2枚の駆動電極131、132が形成された基板130と、を有する。
【0055】
長板状の可動板140は、その長手方向の両端面から外側へそれぞれ延びる、一対のヒンジ142、143を備える。ヒンジ142、143は、図示しない支持具によって支持されており、ヒンジ142、143を通る軸140cの周りを回動することによって傾斜可能である。
【0056】
基板130の上面に形成された駆動電極131および駆動電極132は、長さL、幅Wであって、可動板140の下面144(図16)に対向し、軸140cに関して対象な位置に設けられている。また、可動板140と駆動電極131、132との間には静電ギャップD10と呼ぶ間隔が設けられている。
【0057】
可動板140の下面144は導電性を有しており、下面144と駆動電極131の間には駆動電圧V1を印加可能であり、下面144と駆動電極132の間には、駆動電圧V1とは独立して、駆動電圧V2を印加可能である。駆動電圧V1、V2のいずれも印加していない状態では、可動板140の下面144は一定電位(GND電位)となっている。このとき、可動板140と、駆動電極131及び駆動電極132と、は互いに平行になっている。
【0058】
次に図15、図16に示したMEMSミラーの駆動方法について説明する。
可動板140が駆動電極131に引き寄せられる方向に傾斜する場合については、駆動電極131に駆動電圧V1を印加すると、可動板140との間に静電引力Fが生じる。これにより、可動板140は、軸140cの周りを回動して駆動電極131側が駆動電極131に引き寄せられる方向に傾斜する(図16(b))。
可動板140が駆動電極132に引き寄せられる方向に傾斜する場合については、駆動電極132に駆動電圧V2を印加すると、可動板140との間に静電引力Fが生じる。これにより、可動板140は、軸140cの周りを回動して駆動電極132側が駆動電極132に引き寄せられる方向に傾斜する(図16(a))。
【0059】
ここで、駆動電圧V1と静電引力Fとの間には以下の式(6)が成り立つ。
F=(ε・W・L・V1)/d ・・・(6)
ここで、
εは比誘電率、
Wは駆動電極131の幅、
Lは駆動電極131の長さ、
dは静電ギャップD10、である。
なお、上式(6)は、駆動電圧V1を駆動電圧V2に置き換えれば、可動板140と駆動電極132との間の静電引力について成り立つ。
【0060】
式(6)から、大きな静電引力Fを得る為には駆動電極面積(W×L)を大きくする事、静電ギャップD10を小さくする事、駆動電圧V1を大きくする事が有効である事がわかる。
【0061】
ここで、大きな傾斜角を得る事について検討する。
まず、静電ギャップD10を小さくする事は可動板140の傾斜範囲を小さくする事になるため有効ではない。また、駆動電極131は可動板140に対向している事が必要であり、可動板140のサイズは仕様として設定される反射面141の大きさで決まってしまう事から、駆動電極面積を大きくする事で大きな傾斜角を得るには限界がある。さらに、大きな駆動電圧を印加すると静電ギャップで静電破壊あるいは絶縁破壊が発生する為、駆動電圧を大きくする事で大きな傾斜角を得るのも限界がある。
したがって、波長選択スイッチ用のMEMSミラーアレイとしては大きな傾斜角を実現する事が望まれるが、静電駆動型MEMSミラーにおいて、静電引力を大きくする事で大きな傾斜角を得るには限界がある事がわかる。
【0062】
大きな傾斜角を得る別の方法としてヒンジ142、143の剛性を小さくする方法も考えられる。ヒンジ剛性が軸140cの周りの動きに対して小さくなれば、小さな力で大きな傾斜角を得る事が出来る。しかしながら、ヒンジ剛性はミラーアレイ114の要求仕様の一つである耐衝撃性に対しても影響力を有しており、ヒンジ剛性は耐衝撃性を満足する様に設計されるため、大きな傾斜角を得る為にヒンジ剛性を小さくする事は困難である。
【0063】
以上述べたように、静電駆動型MEMSミラーアレイにおいて大きな傾斜角を実現するのは困難であると考えられる。第1実施形態の構成の波長選択スイッチに求められるミラーアレイは、1次元駆動型ではなく2次元駆動型であるが、大きな傾斜角を実現する観点では全く同様の問題が生じ得る。しかしながら、第1実施形態の波長選択スイッチによれば、この様にミラーの振れ角度幅に制限があった場合においても、振れ角度幅を大きくする事なく、ヒットレス動作を実現できる。
【0064】
図17は、第2変形例に係るMEMSミラー220の構成を示す斜視図である。図18は、図17の軸240c方向から見た側面図であって、(a)は角度YθがYθ1であるときの状態を、(b)は角度YθがYθ2であるときの状態を、それぞれ示す図である。
【0065】
図17、図18に示すように、第2変形例は、駆動電極が1つのみであり、ミラーが1方向にのみ傾斜する点が上述の実施形態と異なる。具体的な構成としては、MEMSミラー220は、上面に反射面241を有する可動板240と、上面に1枚の駆動電極231が形成された基板230と、を有する。長板状の可動板240は、上述の可動板140と同様に、その長手方向の両端面から外側へそれぞれ延びる、一対のヒンジ242、243を備え、ヒンジ242、243は、ヒンジ242、243を通る軸240cの周りを回動することによって傾斜可能である。さらに、駆動電極231は、長さL、幅Wであって、可動板240の下面244(図18)に対向している。また、可動板240と駆動電極231との間には静電ギャップD20が設けられている。
【0066】
可動板240の下面244は導電性を有しており、下面244と駆動電極231の間には駆動電圧V1を印加可能である。駆動電圧V1を印加していない状態では、可動板240の下面244は一定電位(GND電位)となっている。駆動電極231に駆動電圧V1を印加すると、可動板240との間に静電引力Fが生じる。これにより、可動板240は、軸240cの周りを回動して駆動電極231側が駆動電極231に引き寄せられる方向に傾斜する(図18(b))。
【0067】
このようにミラーが振れる駆動領域が違った場合においても、上述の実施形態によれば、β1を任意に設定できる為、容易にヒットレスを実現できる。第1実施形態ではミラーの振れ角であるYθ1、Yθ2の絶対値には制約がなく、振れ角度幅にのみ制約がある為、ミラーの設計が容易となり、ミラーの小型化、ミラーのコスト削減、ミラー駆動の消費電力削減、ミラー振れ角度幅増大などの効果が容易に想像できる。
【0068】
図19は、第3変形例に係るMEMSミラー320の構成を示す斜視図である。図20は、図19の軸340c方向から見た側面図であって、(a)は角度YθがYθ1であるときの状態を、(b)は角度YθがYθ2であるときの状態を、それぞれ示す図である。
【0069】
図19、図20に示すように、第3変形例は、左右で駆動電極の大きさが異なり、ミラーが触れる範囲が左右で異なる点が第1実施形態と異なる。具体的な構成としては、MEMSミラー320は、上面に反射面341を有する可動板340と、上面に2枚の駆動電極331、332が形成された基板330と、を有する。長板状の可動板340は、上述の可動板140と同様に、その長手方向の両端面から外側へそれぞれ延びる、一対のヒンジ342、343を備え、ヒンジ342、343は、ヒンジ342、343を通る軸340cの周りを回動することによって傾斜可能である。駆動電極331は、長さL、幅Wであり、駆動電極332は、長さがL、幅がWより小さいW’である。駆動電極331、332は、可動板340の下面344(図20)に対向している。また、可動板340と駆動電極331との間には静電ギャップD30が設けられている。
【0070】
可動板340の下面344は導電性を有しており、下面344と駆動電極331の間には駆動電圧V1を、下面344と駆動電極332の間には駆動電圧V2を、それぞれ印加可能である。駆動電圧V1、V2を印加していない状態では、可動板340の下面344は一定電位(GND電位)となっている。駆動電極331に駆動電圧V1を印加すると、可動板340との間に静電引力Fが生じる。これにより、可動板340は、軸340cの周りを回動して駆動電極331側が駆動電極331に引き寄せられる方向に傾斜する(図20(b))。駆動電極332に駆動電圧V2を印加すると、可動板340との間に静電引力Fが生じる。これにより、可動板340は、軸340cの周りを回動して駆動電極332側が駆動電極332に引き寄せられる方向に傾斜する(図20(a))。
【0071】
このようにミラーが振れる駆動領域が違った場合においても、上述の実施形態によれば、β1を任意に設定できる為、容易にヒットレスを実現できる。第1実施形態ではミラーの振れ角であるYθ1、Yθ2の絶対値には制約がなく、振れ角度幅にのみ制約がある為、ミラーの設計が容易となり、ミラーの小型化、ミラーのコスト削減、ミラー駆動の消費電力削減、ミラー振れ角度幅増大などの効果が容易に想像できる。
【0072】
次に、第1実施形態の波長選択スイッチの組立について、図21から図23を参照しつつ説明する。図21は、第1実施形態の波長選択スイッチを組み立てる手順の1つの例を示すフローチャートである。図22は、第1実施形態の波長選択スイッチの組立過程のうち、集光レンズ113を配置した状態を示す図である。図23は、第1実施形態の波長選択スイッチの組立過程のうち、ミラーアレイ114を駆動して出力ポート110eの光強度分布を測定する状態を示す図である。
【0073】
まず、入出力ポート110を所定位置に設置(ステップS101)し、入出力ポート110に合わせてレンズアレイ111を設置する(ステップS102)。つづいて、分散素子12を所定位置に設置する(ステップS103)。次に、分散素子112で波長ごとに分散する分散点P1(図3)と、集光レンズ113との位置関係を示すΔQの値が0になるように集光レンズ113を仮設置する(ステップS104)。
【0074】
次に、ミラーアレイ114を所定位置に設置(ステップS105)した後に、ミラーアレイ114のミラー114mを駆動させ、図23に示すように、ミラー114mの回転角Xθ、Yθを、(Xθ1、Yθ1)(状態C15)、(Xθ1、Yθ2)(状態C16)、(Xθ2、Yθ2)(状態C17)、(Xθ2、Yθ1)(状態C18)の順に変化させ、各状態における出力ポート110eの光強度分布を測定する(ステップS106)。測定した光強度分布から、ヒットレス可能かどうかを判断し(ステップS107)、ヒットレス可能な場合(ステップS107でYES)、光強度の最大値の低下量であるΔWが許容値未満である事を確認する(ステップS108)。
【0075】
ヒットレスが可能ではない場合(ステップS107でNO)は、β1を大きくする為に、集光レンズ113を第2方向B1にΔXシフトさせる。ただし、そのシフト量であるΔXはΔWが許容値以上とならない範囲でシフトさせる。また、ΔWが許容値以上である場合(ステップS108でNO)はβ1を小さくする為に、集光レンズ113を第2方向B1にΔXシフトさせ、そのシフト量であるΔXはヒットレス可能な範囲でシフトさせる。その後、再び、ミラーを駆動してXθ、Yθと出力ポート110eの光強度分布を測定した後に、ヒットレスが可能かどうかの判断(ステップS107)及びΔWが許容値未満であるかどうかの判断(ステップS108)を行う。
ΔWが許容値未満であったとき(ステップS108でYES)は、集光レンズ113を本設置(ステップS109)して組立を終了する。
【0076】
このように、目標に達成するまで、すなわち、ヒットレス可能であり、かつ、ΔWが許容値未満となるまで、ステップS106〜S108を繰り返さなければならないが、ΔXのシフト量は設計の値から推測できるため、繰り返す数は2、3回程度と少ない回数で済む。このような組み立て方法を行う事で、特殊な組み立て装置を用いる事なく、簡単で短時間に高精度に組み立てを行う事ができる。
【0077】
組立を完了するには、光強度の最大値の低下量であるΔWが、許容値と同一、又は、許容値以下である必要がある。しかし、ΔWが許容値と等しい場合のβ1をβ1maxとすると、β1maxはミラー114mに集光するスポット径によって変化する。ミラー114mに集光するスポット径は、部品や組み立て精度によってばらついてしまう。このため、調整機構が無い状態でβ1maxを固定値として、設計、組み立てを行う事は非常に困難であり、仮に出来たとしても、β1maxに多くのマージン量を引いた状態となってしまうおそれがある。第1実施形態の波長選択スイッチでは、β1maxを実際の波長選択スイッチで設定する事ができる為、マージン量は考慮しなくて良く、そのマージン量分をミラー振れ角幅に充てる事が可能となる。したがって、よりスポット径が小さい場合においても、ヒットレスを実現する事が可能となる。また、β1maxの値を調整で設定できる為、1つのミラーアレイ114は様々な種類の波長選択スイッチに対応させる事が可能となる。
【0078】
図24は、第4変形例に係る分散素子412、集光レンズ413、及びミラーアレイ414の構成を示す斜視図である。
図24に示すように、光軸方向から見た集光レンズ413の面形状を、円形ではなく略矩形の形状にすることもできる。また、分散素子412、ミラーアレイ414も、集光レンズ413と同様に略矩形の面形状を備え、これらは同一の平面400上に載置される。これにより、組立時に集光レンズ413を第2方向B1に移動させる作業を簡単で且つ高精度に行う事が可能となる。
【0079】
(第2実施形態)
図25は、第2実施形態の波長選択スイッチの構成を示す側面図、図26は、第2実施形態の波長選択スイッチの構成を示す上面図、図27は、図26の分散素子512及び集光レンズ513の拡大図である。図28は、ミラーアレイ514の構成を示す、第1方向A1から見た側面図である。図29(a)は、角度YθをYθ1としたときのミラー514mへの入射光の反射を第1方向A1から見た図、(b)は、角度YθをYθ2としたときのミラー514mへの入射光の反射を第1方向A1から見た図である。
【0080】
第2実施形態の波長選択スイッチは、第1実施形態の波長選択スイッチのように、波長多重光を分散素子112上で波長ごとに分散する分散点P1と集光レンズ513の光軸とが第2方向B1においてΔQだけオフセットした配置ではなく、集光レンズ513の光軸が、分散点P1と第2方向B1で交わるように配置されている。
【0081】
また、第2実施形態の波長選択スイッチにおいては、第1実施形態と同様に、分散素子512と集光レンズ513の間隔は焦点距離fだけ離れている。このように配置したため、集光レンズ513によって、ミラーアレイ514のミラー514m上に向かって集光される各波長の光は、集光レンズ513の光軸と第2方向B1において同一の方向に進んでいく。ミラーアレイ514の位置は集光レンズ513との間隔がfとなるように配置され、全ての波長の光がミラー514m上に集光する。
【0082】
ここで、ミラーアレイ514は、第2方向B1に配列された複数のミラー514mを有している。各ミラー514mは、図4、図5に示すミラーアレイ114と同様に、X軸に沿った軸Xmを中心に角度Xθ、Y軸に沿った軸Ym中心に角度Yθ、それぞれ独立して回転する事が可能である。
【0083】
このときの各波長の集光位置を結んだ軸514c(図28)は、集光レンズ513の光軸に対して垂直である。また、集光レンズ513から出てミラーアレイ514のミラー514m上に入射する各波長の光の第2方向B1に進行する角度が軸514cに対して垂直である。ミラー514m上に集光される各波長の光はミラー514mの反射面に対して斜めに入射し、ミラー514mによって入射方向とは異なる方向に反射される。
【0084】
ミラーアレイ514のミラー514mによって反射された光は、広がりを持った光束の状態で集光レンズ513に入る。各ミラー514mの回転角が同じ場合、集光レンズ513に入った各波長の光は分散素子512上の一点に集まり、波長多重されたコリメート光となって集光レンズ513から出される。分散素子512上で一点に集まる集合点は、分散素子512によって、入力ポート510cから波長多重された光が波長によって異なる方向に分散素子512上で分散される分散点P1とはLだけ離れた位置にある。Lは、第2方向B1の成分がLX(図26)、第1方向A1の成分がLY(図25)である。
【0085】
分散素子512によって波長多重されたコリメート光は、レンズアレイ511の出力ポート510eに対応したレンズ上に入射する。このレンズ上に入射する位置はレンズの中心ではなく、少なくとも、中心から第2方向B1にLXだけずれた位置であり、レンズの光軸と同じ角度で入射し、レンズから出た光は出力ポート510e上に集光される。
ここで、入出力ポート510は、複数の入出力ポートを備え、例えば図25に示すように、4つの入力ポート510a、510b、510c、510dと、1本の出力ポート510eと、が出力ポート510eを中心に第1方向A1にアレイ状に等間隔で並んだ状態で構成される。
【0086】
ここで、U面510Uは、入出力ポート510の各入力ポートから出る光に対して垂直な仮想面である。図29に示すようにミラー514mへの入射角βがゼロでないとき、出力ポート510eに入る光はU面510Uに対して、第2方向B1に斜めに入射する。ミラー54mへの入射角βがゼロのとき、出力ポート510eに入る光はU面510Uに対して、第2方向B1に垂直に入射する。U面510Uに斜めに入射する角度をθとすると、入射角βが大きくなればなるほど、出力ポート510eに入る光の入射角θは大きくなる。入射角βがある大きさを越えると、出力ポート510e上に入射する位置がレンズアレイ511のレンズの収差によって第2方向B1にずれる事となり、さらに入射角βを大きくすると、最終的に入力ポートと出力ポート510eは繋がらなくなってしまう。
【0087】
ミラーアレイ514のミラー514mの反射面は、図28に示すように、各波長の光がミラー514mに集光する点を結んだ軸514cに対して、常に斜めに傾いた状態で構成されている。また、図29に示すように、ミラー514mの第2方向B1の駆動方向(図29の左右方向)は、傾いたミラー514mをさらに傾ける方向である。このような構成にする事により第1実施形態と同様な効果を得る事が可能となり、ミラー514mの振れ角度幅を大きくする事なく、ヒットレス動作を実現できる。
【0088】
図30は、第2実施形態のMEMSミラー520の構成を示す斜視図である。
図30に示すように、MEMSミラー520は、上面に反射面541を有する可動板540と、上面に1枚の駆動電極531が形成された基板530と、を有する。長板状の可動板540は、第1実施形態の可動板140と同様に、その長手方向の両端面から外側へそれぞれ延びる、一対のヒンジ542、543を備え、ヒンジ542、543は、ヒンジ542、543を通る軸540cの周りを回動することによって傾斜可能である。さらに、駆動電極531は、長さL、幅Wであって、可動板540の下面に対向している。また、可動板540と駆動電極531との間には静電ギャップD50が設けられている。
【0089】
可動板540の下面は導電性を有しており、この下面と駆動電極531の間には駆動電圧V1を印加可能である。駆動電圧V1を印加していない状態では、可動板540の下面は一定電位(GND電位)となっている。駆動電極531に駆動電圧V1を印加すると、可動板540との間に静電引力Fが生じる。これにより、可動板540は、軸540cの周りを回動して駆動電極531側が駆動電極531に引き寄せられる方向に傾斜する。
【0090】
ミラーアレイ514は、例えば図30に示すように、ヒンジ542、543を軸540cの周りにねじる事により、ミラー514mの傾斜軸に残留応力を持たせ、ミラー514mの反射面を傾ける事が可能である。このねじり量を自由に変える事により、ミラー514mの入射角βのオフセット量であるβ1の大きさを容易に設定する事ができる。このような構成により、入出力ポート510から集光レンズ513までの光学系の構成を変更する事なく、さまざまな波長選択スイッチに対して応用可能な構成でヒットレス動作を実現する事が可能となる。
なお、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上のように、本発明に係る波長選択スイッチは、ミラーの振れ角の範囲を大きくすることなくヒットレス動作を行うことが必要な波長選択スイッチに有用である。
【符号の説明】
【0092】
110 入出力ポート
110U U面
110a、110b、110c、110d 入力ポート
110e 出力ポート
111 レンズアレイ
112 分散素子
113 集光レンズ
114 ミラーアレイ
114m ミラー
120 MEMSミラー
130 基板
131、132 駆動電極
140 可動板
140c 軸
141 反射面
144 下面
210 入出力ポート
210U U面
210a、210b、210c、210d 入力ポート
210e 出力ポート
211 レンズアレイ
220 MEMSミラー
230 基板
231 駆動電極
240 可動板
240c 軸
241 反射面
244 下面
320 MEMSミラー
330 基板
331、332 駆動電極
340 可動板
340c 軸
341 反射面
344 下面
412 分散素子
413 集光レンズ
414 ミラーアレイ
510 入出力ポート
510U U面
510a、510b、510c、510d 入力ポート
510e 出力ポート
511 レンズアレイ
512 分散素子
513 集光レンズ
514 ミラーアレイ
514m ミラー
520 MEMSミラー
530 基板
531 駆動電極
540 可動板
540c 軸
541 反射面
A1 第1方向
B1 第2方向
D10、D20、D30、D50 静電ギャップ
P1 分散点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向にアレイ状に並び、波長多重された光の入力部及び出力部を有する光入出力部と、
前記入力部から入力された波長多重光をそれぞれの信号波長に分離する光分散手段と、
前記信号波長に分離された光を集光させる集光素子と、
前記集光素子により集光されたそれぞれの信号波長光を所望の出力部にスイッチングさせるように、前記第1方向、及び、前記第1方向に直交する第2方向に、前記信号光を偏向させる光偏向素子アレイと、
を備える波長選択スイッチにおいて、
前記光偏向素子アレイの偏向範囲内において、前記入力部から出射された光が、その進行方向と垂直な面に対し、垂直と異なる角度で入射するように前記集光素子及び前記光偏向素子アレイが配置されていることを特徴とする波長選択スイッチ。
【請求項2】
前記集光素子により集光されたそれぞれの信号波長光の進行方向が、前記第2方向において、前記集光素子の中心軸と一致しないように、前記光分散手段と前記集光素子が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項3】
前記集光素子により集光されたそれぞれの信号波長光の進行方向が、前記第2方向において、前記集光素子の中心軸と一致し、前記光偏向素子アレイの偏向範囲内において、前記入力部から出射された光が、その進行方向と垂直な面に対し、垂直と異なる角度で入射するように前記光偏向素子アレイが傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項4】
前記集光素子は、前記集光素子により集光されたそれぞれの信号波長光の進行方向と前記集光素子の中心軸とが一致する位置から、前記第2方向へずらして配置されていることを特徴とする請求項2に記載の波長選択スイッチ。
【請求項5】
前記光偏向素子アレイは、第2方向に配列された複数のミラーを有するミラーアレイであって、前記複数のミラーは、前記複数のミラーのそれぞれに集光する点を結んだ軸に対して常に斜めに傾いていることを特徴とする請求項3に記載の波長選択スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−197400(P2011−197400A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64064(P2010−64064)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】