説明

波長選択スイッチ

【課題】出力光ビーム位置を空間的にシフトさせるための偏波ビームディスプレーサを不要とする、偏光依存性を有するアレイ導波路回折格子合波器を用いた波長選択スイッチを提供する。
【解決手段】空間光学系(51, 61, 62, 52)により結合された、入力ポートを有する波長分波器(1)と、波長分波器により分波された各波長の光信号の偏光状態を独立に制御する偏光制御素子アレイ(2)と、2つの出力ポートを有するアレイ導波路回折格子合波器(241)とを備えた波長選択スイッチにおいて、アレイ導波路回折格子合波器(241)が、偏光制御素子アレイにより偏光状態が制御された各波長の光信号を合波して2つ出力ポートのいずれかから出力し、かつ出力ポートの透過中心波長が偏光依存性を有しており、当該偏光依存性による透過中心波長シフトが2つの出力ポート間の透過中心波長差に等しくなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイ導波路回折格子合波器および光ファイバ通信におけるルーティングデバイスなどとして使用される波長選択スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを伝送媒体とする光通信技術は、信号の伝送距離の拡大をもたらし、大規模な光通信網が構築されてきた。近年では、インターネット通信が広範に普及するのに伴って、通信トラフィックが急速に増大しており、通信網に対する大容量化、高速化、高機能化の要求が高まっている。これまでに、波長の異なる複数の光信号を1本の伝送路で同時に伝送する波長分割多重通信技術の導入によって、二地点間の伝送容量を増大することが可能となった。しかし、通信網においては、複数の伝送路が集まるノードにおいて、信号の経路を設定(ルーティング)したり、切替(スイッチング)したりする必要があり、伝送容量の増大に伴って、これらの信号処理がボトルネックになってきている。これまでは、伝送されてきた光信号を一旦電気信号に変換した後に経路設定や経路切替を行ない、再び電気信号を光信号に変換して伝送路に送出する方式が用いられてきたが、今後は光信号を電気信号に変換することなく、信号経路の設定や切替処理を行なう方式を用いることによって、ノードのスループットを飛躍的に拡大することができるものと期待されている。
【0003】
このような方式の一つとして、複数のノードをリング状またはバス状に接続した再構成可能光アドドロップ多重(ROADM: Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexing)システムが知られている。ROADMシステムの各ノードには、波長毎に接続を切り替える光スイッチが装備されており、波長多重光信号のうち任意の波長の光信号について、一方の光ファイバ伝送路から入力された光信号を、他方の光ファイバ伝送路へ出力するスルーモードと、光ファイバ伝送路側から入力された光信号をノードに接続された端局装置に出力する(ドロップ動作)とともに、端局装置から入力された光信号を光ファイバ伝送路に出力する(アド動作)アド/ドロップモードとの切り替えが可能である。
【0004】
このようなROADMシステムの光信号切替部には、これまで主として、波長合分波器と多連の光スイッチの組合せが用いられてきた。しかし、最近では、アド/ドロップポートも含め全ての入出力ポートを波長多重化した波長選択スイッチ(WSS:Wavelength Selective Switch)が、広い通過帯域特性や、多ポート化への拡張性などの特徴から、注目されてきている。
【0005】
波長選択スイッチは、少ポートの1入力×2出力(あるいは2入力×1出力)から、多ポートとして1入力×9出力(あるいは9入力×1出力)までの規模のものが実現されている。1入力×9出力のような多ポートの波長選択スイッチは、複数のリング間を接続するノードにおいて必要なデバイスであるが、実際のROADMシステムにおいて、大多数のノードは端局へのアド/ドロップを行なうノードであり、そのようなノードで必要とされるのは、1入力×2出力(あるいは2入力×1出力)の波長選択スイッチである。
【0006】
従来、波長選択スイッチの構成として、種々の形式が知られているが、その一つとして、アレイ導波路回折格子(AWG:Arrayed Waveguide Grating)、液晶素子、および偏波ビームディスプレーサを用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
図1は、特許文献1に記載の波長選択スイッチの概略図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図1に示す従来の波長選択スイッチは、アレイ導波路回折格子分波器1と、液晶素子アレイ2と、偏波ビームディスプレーサ(偏波分離結晶)3と、上下方向に平行に重ねられたアレイ導波路回折格子合波器41および42とを備える。アレイ導波路回折格子分波器1と液晶素子アレイ2とは、シリンドリカルレンズ51および主レンズ61からなる空間光学系により結合され、偏波ビームディスプレーサ(偏波分離結晶)3とアレイ導波路回折格子合波器41および42とは、主レンズ62およびシリンドリカルレンズ52からなる空間光学系により結合されている。
【0008】
図1に示す従来の波長選択スイッチにおいて、アレイ導波路回折格子分波器1に入力された波長多重信号光は、波長ごとに分波された後、空間光学系により液晶素子アレイ2に入力される。液晶素子アレイ2は、波長ごとに偏光状態を制御することができ、偏波ビームディスプレーサ3に入力する光の偏光面を、結晶軸に対して0度もしくは90度回転することができる。偏光面の角度に応じて、偏波ビームディスプレーサ3からの出力は偏波分離されて、空間的なビーム位置が上下方向にシフトすることになる。したがって、液晶素子アレイ2により偏光状態を切替えることで、アレイ導波路回折格子合波器41に結合されるか、あるいはアレイ導波路回折格子合波器42に結合されるかを選択することができる。これによって、各波長について出力ポートを切替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−042557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図1に示したような従来の波長選択スイッチでは、各波長の光信号の光路の切り替えを担う部分が液晶素子と偏波ビームディスプレーサとの組み合わせで構成されているため、部品点数が多く、かつ、各部品の光軸を精密に合わせて組み立てる必要があるため、製造工程が煩雑である、という問題点があった。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、入力された各波長の光信号を合波し、各波長の光信号の偏光状態に応じた出力ポートから出力する、偏光依存性を有するアレイ導波路回折格子合波器を提供することにある。さらに、偏光依存性を有するアレイ導波路回折格子合波器を用いることにより、出力光ビーム位置(各波長の光信号の出力位置)を空間的にシフトさせるための偏波ビームディスプレーサを不要とし、部品点数が少なく、かつ製造工程が簡易な波長選択スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、アレイ導波路回折格子合波器であって、入力された各波長の光信号を合波して2つの出力ポートの何れかから出力するアレイ導波路回折格子合波器であって、前記出力ポートの透過中心波長が偏光依存性を有し、前記偏光依存性による透過中心波長シフトが前記2つの出力ポート間の透過中心波長差に等しくなるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、入力ポートを有する波長分波器と、偏光制御素子アレイと、2つの出力ポートを有するアレイ導波路回折格子合波器とが、空間光学系により結合された、波長選択スイッチであって、前記偏光制御素子アレイは、前記波長分波器により分波された各波長の光信号の偏光状態を独立に制御するように構成され、前記アレイ導波路回折格子合波器は、前記偏光制御素子アレイにより偏光状態が制御された各波長の光信号を合波して前記2つ出力ポートのいずれかから出力するものであって、かつ前記出力ポートの透過中心波長が偏光依存性を有しており、前記偏光依存性による透過中心波長シフトが前記2つの出力ポート間の透過中心波長差に等しくなるように構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の波長選択スイッチにおいて、前記偏光制御素子アレイは、反射型の素子であり、前記波長分波器と前記アレイ導波路回折格子合波器が同一の光回路であって、前記入力ポートと前記2つの出力ポートのうち1つが同一であることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、波長選択スイッチであって、光信号を、第1の偏光状態の光信号と第1の偏光状態と異なる第2の偏光状態の光信号とに分離する偏光分離素子と、前記第1の偏光状態の光信号が入力される入力ポートを有する第1の波長分波器と、前記第2の偏光状態の光信号が入力される入力ポートを有する第2の波長分波器と、前記第1の波長分波器および前記第2の波長分波器により分波された各波長の光信号の偏光状態を独立に制御するように構成された偏光制御素子アレイと、2つの出力ポートを有し、前記第1の波長分波器により分波され、前記偏光制御素子アレイにより偏光状態が制御された各波長の光信号を合波して当該2つの出力ポートのいずれから出力する第1のアレイ導波路回折格子合波器と、2つの出力ポートを有し、前記第2の波長分波器により分波され、前記偏光制御素子アレイにより偏光状態が制御された各波長の光信号を合波して当該2つの出力ポートのいずれから出力する第2のアレイ導波路回折格子合波器と、前記第1のアレイ導波路回折格子合波器の2つの出力ポートのうちの一方から出力される前記第1の偏光状態の光信号と、前記第2のアレイ導波路回折格子合波器の2つの出力ポートのうちの一方から出力される前記第2の偏光状態の光信号とを合成する第1の偏波合成素子と、前記第1のアレイ導波路回折格子合波器の2つの出力ポートのうちの他方から出力される前記第2の偏光状態の光信号と、前記第2のアレイ導波路回折格子合波器の2つの出力ポートのうちの他方から出力される前記第2の偏光状態の光信号とを合成する第2の偏波合成素子と、を備え、前記前記第1の波長分波器および前記第2の偏波分離器と前記偏光制御素子アレイと、ならびに前記偏光制御素子アレイと前記第1のアレイ導波路回折格子合波器および前記第2のアレイ導波路回折格子合波器とが空間光学系により結合された、波長選択スイッチであって、前記第1のアレイ導波路回折格子合波器および前記第2のアレイ導波路回折格子合波器は各々、前記出力ポートの透過中心波長が偏光依存性を有し、前記偏光依存性による透過中心波長シフトが前記2つの出力ポート間の透過中心波長差に等しくなるように構成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の波長選択スイッチにおいて、前記偏光制御素子アレイは反射型の素子であり、前記偏光分離素子、前記第1の波長分波器、前記第2の波長分波器、前記第1アレイ導波路回折格子合波器、前記第2アレイ導波路回折格子合波器、前記第1偏光合成素子および前記第2偏光合成素子が1つの基板上に形成され、前記偏光分離素子と前記第1偏光合成素子とが同一であり、前記第1の波長分波器と前記第1アレイ導波路回折格子合波器とが同一であり、前記第2の波長分波器と前記第2アレイ導波路回折格子合波器とが同一であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、入力された各波長の光信号を合波し、各波長の光信号の偏光状態に応じた出力ポートから出力する、偏光依存性を有するアレイ導波路回折格子合波器が提供される。
【0018】
また、本発明によれば、偏光依存性を有するアレイ導波路回折格子合波器を用いることにより、出力光ビーム位置(各波長の光信号の出力位置)を空間的にシフトさせるための偏波ビームディスプレーサを不要とし、部品点数が少なく、かつ製造工程が簡易な波長選択スイッチが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の波長選択スイッチの概略図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る波長選択スイッチの概略図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る波長選択スイッチの概略図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る波長選択スイッチの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図2は本発明の第1の実施形態の波長選択スイッチの概略図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図2に示す波長選択スイッチは、波長分波器1と、各波長の光信号の偏光状態を制御する偏光制御素子アレイ2と、偏光制御された光信号を合波して出力するアレイ導波路回折格子合波器241とを備える。波長分波器1と偏光制御素子アレイ2とは、シリンドリカルレンズ51および主レンズ61からなる空間光学系により結合されている。偏光制御素子アレイ2とアレイ導波路回折格子合波器241とは、シリンドリカルレンズ52および主レンズ62からなる空間光学系により結合されている。
【0022】
波長分波器1は、入力された波長多重光信号を波長ごとに分波する。波長分波器1は、基板上に作製された入力導波路(入力ポート)、スラブ導波路およびアレイ導波路により構成されたPLC(Planar Lightwave Circuit)型のアレイ導波路回折格子(AWG)とすることができる。波長分波器1により分波された光信号は、波長により水平面(基板面)内に異なる角度に出射する。
【0023】
シリンドリカルレンズ51は、波長分波器1から出射した光ビームが上下方向(波長多重光信号の分波方向に垂直な方向)への広がりを防ぐ。主レンズ61は、シリンドリカルレンズ51を透過した各波長の光ビームを偏光制御素子アレイ2に集光する。シリンドリカルレンズ51の焦点はPLCの出射端面になるように構成および配置されている。したがって、波長分波器1から水平面内で波長により異なる角度で出射した光ビームは全て中心光軸が平行な光ビームとなりそれぞれ偏光制御素子アレイ2を構成する偏光制御素子に集光する(異なる波長の光ビームは、異なる偏光制御素子に集光する)。
【0024】
偏光制御素子アレイ2は、捩れネマチック(TN:Twisted Nematic)液晶素子(セル)や、電界制御複屈折(ECB:Electrically Controlled Birefringence)液晶素子(セル)などを、波長分波器1により光信号が分波される方向に配列したデバイスとことができる。偏光制御素子アレイ2は、波長分波器1により分波された各波長の光信号の偏光状態を独立に制御する。
【0025】
主レンズ62およびシリンドリカルレンズ52は、偏光制御素子アレイ2を透過した各波長の光ビームをアレイ導波路回折格子合波器241に結合するように、構成・配置されている。
【0026】
アレイ導波路回折格子合波器241は、2つの出力導波路(出力ポート)401および402、スラブ導波路およびアレイ導波路により構成された石英系ガラスPLC(Planar Lightwave Circuit)型のアレイ導波路回折格子(AWG)とすることができる。2つの出力ポートから出力される光の中心波長は、スラブ導波路端面における出力ポートの間隔Dに応じて、次式(1)で与えられる一定の波長差Δλ1-2を有する。
【0027】
【数1】

【0028】
ここで、nsはスラブ導波路の実効屈折率、dはアレイ導波路のピッチ、fはスラブ導波路の焦点距離、mは回折次数、ncおよびNcはアレイ導波路の実効屈折率および群屈折率である。
【0029】
アレイ導波路回折格子合波器241は、その透過中心波長が偏光依存性を有するように作製されている。すなわち、ある出力ポートからの透過中心波長が、TMモード(電界の振動方向が基板面に対して垂直な方向)とTEモード(電界の振動方向が基板面に対して平行な方向)とで、次式(2)で与えられる波長シフトΔλTM-TEを有する。
【0030】
【数2】

【0031】
ここで、Δncはアレイ導波路の実効屈折率の偏波依存性(すなわち、複屈折)、ΔLはアレイ導波路の光路長差である。式(2)からわかるように、アレイ導波路回折格子の偏光依存波長シフトは、アレイ導波路の複屈折によって決まるので、アレイ導波路の導波路形状や応力を調整することで、透過中心波長が偏光依存性を有するアレイ導波路回折格子を作製することができる。
【0032】
本実施形態の波長選択スイッチは、式(1)で与えられる波長差と、式(2)で与えられる波長シフトが等しくなるように構成したアレイ導波路回折格子合波器241を用いたことを特徴とする。
【0033】
このように設定することで、アレイ導波路回折格子合波器241に、ある波長の光が入力されたとき、偏光状態がTMモードであれば出力ポート401から出力され、偏光状態がTEモードであれば出力ポート402から出力されるようにすることができる。
【0034】
したがって、偏光制御素子アレイ2によって各波長の光信号の偏光状態を切替えることで、出力ポートを選択することができる。
【0035】
(実施例1)
コアとクラッドの比屈折率差Δ=1.5%のシリカガラス系PLCを用いて、100GHz間隔40chのAWGを作製し、これをアレイ導波路回折格子合波器241として用いて、第1の実施形態の波長選択スイッチを作製した。作製したAWGの偏光依存波長シフトはΔλTM-TE=0.6nmであった。入力側AWGにTMモードの偏光を入力し、TN液晶セルを配列したデバイスを偏光制御素子アレイ2として用いて偏光状態を制御して、アレイ導波路回折格子合波器241から出力される光信号を観測した。40chのうち任意の光信号について、液晶セルの出力光の偏光方向がTMモードのままの場合は出力ポート401から出力され、偏光方向をTEモードに回転させた場合には出力ポート402から出力されることを確認した。挿入損失は4dB、消光比は35dBであった。
【0036】
(第2の実施形態)
図3は本発明の第2の実施形態の波長選択スイッチの概略図である。(a)は平面図、(b)は側面図である。
【0037】
図3に示す波長選択スイッチは、偏光制御素子アレイ2として、反射型の液晶素子を用いており、アレイ導波路回折格子合分波器11が、図2に示す波長選択スイッチの波長分波器1とアレイ導波路回折格子合波器241を兼ねることで、アレイ導波路回折格子を共通化した構成となっている。すなわち、図3に示す波長選択スイッチは、図2に示す波長選択スイッチを構成するアレイ導波路回折格子合波器241をアレイ導波路回折格子合分波器11として用い、アレイ導波路回折格子合波器241の2つ出力導波路(出力ポート)のうちの一方を入出力導波路101(入出力兼用ポート)とし、他方を出力導波路102(出力ポート)することで、波長分波器1を不要としている。
【0038】
アレイ導波路回折格子合分波器11の前段には、入出力光信号を分離するために、光サーキュレータ7が配置される。
【0039】
偏光制御素子アレイ2は、第1の実施形態と同様に捩れネマチック(TN:Twisted Nematic)液晶素子(セル)や、電界制御複屈折(ECB:Electrically Controlled Birefringence)液晶素子(セル)などを配列し、さらに主レンズ61と反対側にミラー(図示しない)を設けたデバイスとすることができる。
【0040】
光サーキュレータ7を介して、アレイ導波路回折格子合分波器11の入出力ポート101に入力された波長多重光信号は、分波された波長ごとに、偏光制御素子アレイ2の設定に応じて、偏光状態がそのままの場合は再び入出力ポート101から出力され、偏光面が90°回転された場合は出力ポート102から出力される。
【0041】
(実施例2)
コアとクラッドの比屈折率差Δ=1.5%のシリカガラス系PLCを用いて、100GHz間隔40chのAWGを作製し、これをアレイ導波路回折格子合分波器11として用いて、第2の実施形態の波長選択スイッチを作製した。作製したAWGの偏光依存波長シフトはΔλTM-TE=0.6nmであった。AWGの入出力兼用ポート101にTMモードの偏光を入力し、反射型ECB液晶セルを配列したデバイスを偏光制御素子アレイ2として用いて偏光状態を制御して、再びAWGに結合して出力される光信号を観測した。40chのうち任意の光信号について、液晶セルの出力光の偏光方向がTMモードのままの場合はポート101から出力され、偏光方向をTEモードに回転させた場合にはポート102から出力されることを確認した。挿入損失は5dB、消光比は35dBであった。
【0042】
(第3の実施形態)
第1および第2の実施形態に示した波長選択スイッチは、入力される偏光状態を所定の状態に規定する必要がある。実用上は、入力光信号の偏光状態によらず動作することが望まれるので、第1および第2の実施形態に示した波長選択スイッチを2系統配置し、波長分波器の入力導波路同士およびアレイ導波路回折格子合波器の出力導波路同士がそれぞれ接続される偏波分離素子、あるいはアレイ導波路回折格子合分波器の入出力導波路同士および出力導波路同士がそれぞれ接続される偏波分離素子を設けることで、入力偏光状態によらない動作を実現することができる。
【0043】
図4は本発明に係る波長選択スイッチの概略図である。
図4に示す波長選択スイッチは、同一基板上に作製された、入出力導波路101、出力導波路102、スラブ導波路およびアレイ導波路により構成された第1のアレイ導波路回折格子合分波器11と、入出力導波路111、出力導波路112、スラブ導波路およびアレイ導波路により構成された第2のアレイ導波路回折格子合分波器12と、入出力導波路111と入出力導波路111とに接続された偏波分離合成素子81と、出力導波路101と出力導波路102とに接続された偏波分離合成素子82とを備える。また、図4に示す波長選択スイッチは、第2の実施形態で説明した反射型の偏光制御素子アレイ2を備える。第1のアレイ導波路回折格子合分波器11と偏光制御素子アレイ2とはシリンドリカルレンズ51および主レンズ61からなる空間光学系により結合されている。同様に、第2のアレイ導波路回折格子合分波器12と偏光制御素子アレイ2とはシリンドリカルレンズ52および主レンズ61からなる空間光学系により結合されている。
【0044】
ここで、偏波分離合成素子81からアレイ導波路回折格子合分波器11および12のスラブ導波路までの経路(すなわち、入出力導波路101および111)、および偏波分離合成素子82からアレイ導波路回折格子合分波器11および12のスラブ導波路までの経路(すなわち、出力導波路102および112)は、いずれも等長になるように設計されている。
【0045】
光サーキュレータ7を介して波長選択スイッチの入力ポートへ入力された光信号(波長多重光信号)は、偏光分離合成素子81により、TMモードとTEモードに分離され、TMモードの光信号はアレイ導波路回折格子合分波器11の入出力兼用ポート(入出力導波路)101へ、TEモードの光信号はアレイ導波路回折格子合分波器12の入出力ポート(入出力導波路)111へと導かれる。
【0046】
偏光分離合成素子81により分離されたTMモードの信号光は、アレイ導波路回折格子合分波器11により分波され、シリンドリカルレンズ51、主レンズ61および偏光制御素子アレイ2を構成する偏光制御素子を透過する。偏光制御素子アレイ2のミラー(図示しない)により反射された光信号は、偏光制御素子、主レンズ61およびシリンドリカルレンズ51を透過して再びアレイ導波路回折格子合分波器11に結合し、各波長についての偏光制御素子アレイ2の設定に応じて、入出力兼用ポート101または出力ポート102から出力される。より具体的には、偏光状態がTMモードのまま再び回折格子合分波器11へ結合した光信号は、入出力兼用ポート101から出力され、偏光状態がTEモードに変換されて再び回折格子合分波器11へ結合した光信号は出力ポート102から出力される。
【0047】
他方、偏光分離合成素子81により分離されたTEモードの信号光は、アレイ導波路回折格子合分波器12により分波され、シリンドリカルレンズ52、主レンズ61および偏光制御素子アレイ2を構成する偏光制御素子を透過する。偏光制御素子アレイ2のミラーにより反射された光信号は、偏光制御素子、主レンズ61およびシリンドリカルレンズ52を透過して再びアレイ導波路回折格子合分波器12に結合し、各波長についての偏光制御素子アレイ2の設定に応じて、入出力兼用ポート111または出力ポート112から出力される。より具体的には、偏光状態がTEモードのままの再び回折格子合分波器へ結合した光信号は、入出力兼用ポート111から出力され、偏光状態がTMモードに変換されて再び回折格子合分波器12へ結合した光信号は出力ポート112から出力される。
【0048】
入出力兼用ポート101から出力されるTMモードの信号光と、入出力兼用ポート111から出力されるTEモードの信号光とは、偏光分離合成素子81で再び合成されて、光サーキュレータ7を介して、出力ポート71から出力される。他方、出力ポート102から出力されるTEモードの信号光と、出力ポート112から出力されるTMモードの信号光とは、偏光分離合成素子82で合成されて、出力ポート72から出力される。
【0049】
なお、図2に示す波長選択スイッチの波長分波器を2つと、当該2つの波長分波器の入力導波路が接続された偏波分離合成素子とを1つの基板上に作製し、図2に示す波長選択スイッチのアレイ導波路回折格子合波器を2つと、当該2つのアレイ導波路回折格子合波器の対応する2つの出力導波路がそれぞれ接続された2つの偏波分離合成素子とを別の1つの基板上に作成し、シリンドリカルレンズおよび主レンズからなる空間光学系により透過型の偏光制御素子アレイと結合してもよい。
【0050】
(実施例3)
コアとクラッドの比屈折率差Δ=1.5%のシリカガラス系PLCを用いて、100GHz間隔40chのAWGと偏波分離合成回路を集積化したチップを作製し、第3の実施形態の波長選択スイッチを作製した。作製したAWGの偏光依存波長シフトはΔλTM-TE=0.6nmであった。光サーキュレータの入力ポート70に無偏光の光信号を入力し、各AWGからの出力光の偏光を、反射型ECB液晶素子を用いて制御して、再びAWGに結合して出力される光信号を観測した。40chのうち任意の光信号について、液晶セルにおいて偏光を回転させない場合はポート71から出力され、偏光方向を90°回転させた場合にはポート72から出力されることを確認した。挿入損失は6dB、消光比は35dBであった。
【符号の説明】
【0051】
1 アレイ導波路回折格子分波器
2 液晶素子アレイ
3 偏波ビームディスプレーサ(偏波分離結晶)
41、42、241 アレイ導波路回折格子合波器
51、52 シリンドリカルレンズ
61、62 主レンズ
401、402 出力ポート
11、12 アレイ導波路回折格子合分波器
101、111 入出力ポート
102、112 出力ポート
7 光サーキュレータ
70 入力ポート
71、72 出力ポート
81、82 偏波分離合成素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された各波長の光信号を合波して2つの出力ポートの何れかから出力するアレイ導波路回折格子合波器であって、
前記出力ポートの透過中心波長が偏光依存性を有し、前記偏光依存性による透過中心波長シフトが前記2つの出力ポート間の透過中心波長差に等しくなるように構成されていることを特徴とするアレイ導波路回折格子合波器。
【請求項2】
入力ポートを有する波長分波器と、偏光制御素子アレイと、2つの出力ポートを有するアレイ導波路回折格子合波器とが、空間光学系により結合された、波長選択スイッチであって、
前記偏光制御素子アレイは、前記波長分波器により分波された各波長の光信号の偏光状態を独立に制御するように構成され、
前記アレイ導波路回折格子合波器は、前記偏光制御素子アレイにより偏光状態が制御された各波長の光信号を合波して前記2つ出力ポートのいずれかから出力するものであって、かつ前記出力ポートの透過中心波長が偏光依存性を有しており、前記偏光依存性による透過中心波長シフトが前記2つの出力ポート間の透過中心波長差に等しくなるように構成されていることを特徴とする波長選択スイッチ。
【請求項3】
前記偏光制御素子アレイは、反射型の素子であり、
前記波長分波器と前記アレイ導波路回折格子合波器が同一の光回路であって、前記入力ポートと前記2つの出力ポートのうち1つが同一であることを特徴とする請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項4】
光信号を、第1の偏光状態の光信号と第1の偏光状態と異なる第2の偏光状態の光信号とに分離する偏光分離素子と、
前記第1の偏光状態の光信号が入力される入力ポートを有する第1の波長分波器と、
前記第2の偏光状態の光信号が入力される入力ポートを有する第2の波長分波器と、
前記第1の波長分波器および前記第2の波長分波器により分波された各波長の光信号の偏光状態を独立に制御するように構成された偏光制御素子アレイと、
2つの出力ポートを有し、前記第1の波長分波器により分波され、前記偏光制御素子アレイにより偏光状態が制御された各波長の光信号を合波して当該2つの出力ポートのいずれから出力する第1のアレイ導波路回折格子合波器と、
2つの出力ポートを有し、前記第2の波長分波器により分波され、前記偏光制御素子アレイにより偏光状態が制御された各波長の光信号を合波して当該2つの出力ポートのいずれから出力する第2のアレイ導波路回折格子合波器と、
前記第1のアレイ導波路回折格子合波器の2つの出力ポートのうちの一方から出力される前記第1の偏光状態の光信号と、前記第2のアレイ導波路回折格子合波器の2つの出力ポートのうちの一方から出力される前記第2の偏光状態の光信号とを合成する第1の偏波合成素子と、
前記第1のアレイ導波路回折格子合波器の2つの出力ポートのうちの他方から出力される前記第2の偏光状態の光信号と、前記第2のアレイ導波路回折格子合波器の2つの出力ポートのうちの他方から出力される前記第2の偏光状態の光信号とを合成する第2の偏波合成素子と、
を備え、
前記前記第1の波長分波器および前記第2の偏波分離器と前記偏光制御素子アレイと、ならびに前記偏光制御素子アレイと前記第1のアレイ導波路回折格子合波器および前記第2のアレイ導波路回折格子合波器とが空間光学系により結合された、波長選択スイッチであって、
前記第1のアレイ導波路回折格子合波器および前記第2のアレイ導波路回折格子合波器は各々、前記出力ポートの透過中心波長が偏光依存性を有し、前記偏光依存性による透過中心波長シフトが前記2つの出力ポート間の透過中心波長差に等しくなるように構成されていることを特徴とする波長選択スイッチ。
【請求項5】
前記偏光制御素子アレイは反射型の素子であり、
前記偏光分離素子、前記第1の波長分波器、前記第2の波長分波器、前記第1アレイ導波路回折格子合波器、前記第2アレイ導波路回折格子合波器、前記第1偏光合成素子および前記第2偏光合成素子が1つの基板上に形成され、前記偏光分離素子と前記第1偏光合成素子とが同一であり、前記第1の波長分波器と前記第1アレイ導波路回折格子合波器とが同一であり、前記第2の波長分波器と前記第2アレイ導波路回折格子合波器とが同一であることを特徴とする請求項4に記載の波長選択スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−232457(P2011−232457A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101237(P2010−101237)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】