説明

波長360〜430nmの光線用光学材料及び光学素子

【課題】透明性、耐熱性、寸法安定性、機械的強度、耐光性に優れた光学材料を提供する。
【解決手段】含フッ素アクリル樹脂を含有する波長360〜430nmの光線用光学材料であって、含フッ素アクリル樹脂は、特定の繰り返し単位を有し、フッ素含有率が20%以上であり、ガラス転移温度が50℃以上であることを特徴とする光学材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は波長360〜430nmの光線用光学材料及び光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光情報記録媒体の高密度化が進み、短い波長の近紫外線〜青紫色半導体レーザー、近紫外線〜青紫色SHGレーザー、近紫外線LED、青紫色LED等の利用が進んでいる。
【0003】
半導体レーザー光の光路上に配置される光学素子などに使用する光学材料として、特許文献1には、光ピックアップ装置に用いる対物レンズに脂環式構造を有する重合体を使用することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、光ディスク基板や導光板に、特定のポリフェニル化合物を配合したポリフェニレンエーテル系樹脂を使用することが記載されている。
【0005】
特許文献3には、光学部材に延伸ポリイミドフィルムを利用することが記載されている。
【0006】
特許文献4には、光学素子の母材樹脂として、旭硝子株式会社製の「サイトップ」(登録商標)や、デュポン社製の「テフロンAF」(登録商標)を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−234702号公報
【特許文献2】特開2004−124027号公報
【特許文献3】特開2008−163107号公報
【特許文献4】特開2006−40352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
波長360〜430nmの近紫外線〜青紫色の光線の光路上に配置される光学素子には、透明性、耐熱性、寸法安定性、機械的強度が要求される。
【0009】
また、波長360〜430nmの光線は非常に大きな光エネルギーを有しており、光学素子が長期間照射されることによって劣化が生じる。従って、波長360〜430nmの光線用の光学素子は耐光性に優れることも重要である。
【0010】
従って、従来の光学材料よりも更に透明性、耐熱性、寸法安定性、機械的強度、耐光性に優れた光学材料が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、含フッ素アクリル樹脂を含有する波長360〜430nmの光線用光学材料であって、上記含フッ素アクリル樹脂は、下記式(1):
【0012】
【化1】

【0013】
で表される繰り返し単位(a)、下記式(2):
【0014】
【化2】

【0015】
で表される繰り返し単位(b)、下記式(3):
【0016】
【化3】

【0017】
で表される繰り返し単位(c)、下記式(4):
【0018】
【化4】

【0019】
で表される繰り返し単位(d)、及び、下記式(5):
【0020】
【化5】

【0021】
で表される繰り返し単位(e)からなる群より選択される少なくとも1つの繰り返し単位を有し、フッ素含有率が20%以上であり、ガラス転移温度が50℃以上であることを特徴とする光学材料に関する。
【0022】
本発明は、含フッ素アクリル樹脂を含有する波長360〜430nmの光線用光学材料であって、上記含フッ素アクリル樹脂は、下記式(6):
【0023】
【化6】

【0024】
で表される繰り返し単位(f)、下記式(2):
【0025】
【化7】

【0026】
で表される繰り返し単位(b)、及び、下記式(3):
【0027】
【化8】

【0028】
で表される繰り返し単位(c)、を有し、フッ素含有率が20%以上であり、ガラス転移温度が50℃以上であることを特徴とする光学材料にも関する。
【0029】
含フッ素アクリル樹脂を含有する波長360〜430nmの光線用光学材料であって、上記含フッ素アクリル樹脂は、下記式(6):
【0030】
【化9】

【0031】
で表される繰り返し単位(f)、下記式(5):
【0032】
【化10】

【0033】
で表される繰り返し単位(e)、及び、下記式(7):
【0034】
【化11】

【0035】
で表される繰り返し単位(g)、を有し、フッ素含有率が20%以上であり、ガラス転移温度が50℃以上であることを特徴とする光学材料にも関する。
【0036】
含フッ素アクリル樹脂を含有する波長360〜430nmの光線用光学材料であって、上記含フッ素アクリル樹脂は、下記式(1):
【0037】
【化12】

【0038】
で表される繰り返し単位(a)を有し、フッ素含有率が20%以上であり、ガラス転移温度が50℃以上であることを特徴とする光学材料にも関する。
【0039】
本発明は、上記光学材料からなる光学素子にも関する。
【0040】
本発明は、上記光学材料を射出成形し、得られた光学素子を波長360〜430nmの光線の光路上に配置し、波長360〜430nmの光線を光源から出射し、波長360〜430nmの光線を屈折させて発散又は集束させることを特徴とする波長360〜430nmの光線の制御方法にも関する。
【0041】
本発明は、波長360〜430nmの光線を屈折させて発散又は集束させるための上記光学材料の使用にも関する。
【発明の効果】
【0042】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、透明性、耐熱性、寸法安定性、機械的強度、耐光性に優れる。また、成形性にも優れ、射出成形法によって成形することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、繰り返し単位(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)からなる群より選択される少なくとも1つの繰り返し単位を有する含フッ素アクリル樹脂を含有することを特徴とする。
【0044】
繰り返し単位(a)は、下記式(1):
【0045】
【化13】

【0046】
で表される。
【0047】
繰り返し単位(b)は、下記式(2):
【0048】
【化14】

【0049】
で表される。
【0050】
繰り返し単位(c)は、下記式(3):
【0051】
【化15】

【0052】
で表される。
【0053】
繰り返し単位(d)は、下記式(4):
【0054】
【化16】

【0055】
で表される。
【0056】
繰り返し単位(e)は、下記式(5):
【0057】
【化17】

【0058】
で表される。
【0059】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、繰り返し単位(a)〜(e)のうち少なくとも1つの繰り返し単位を有する含フッ素アクリル樹脂を含有することから、波長360〜430nmの光線に対して、優れた透明性、耐熱性、寸法安定性、機械的強度、耐光性を示す。
【0060】
上記含フッ素アクリル樹脂は、全繰り返し単位に占める繰り返し単位(a)〜(e)の含有量が合計で40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
【0061】
上記含フッ素アクリル樹脂は、繰り返し単位(a)〜(e)のうち、2つ以上の繰り返し単位を有するものであってよく、繰り返し単位(a)〜(e)のうち、1つの繰り返し単位のみを有するものであってもよい。1つの繰り返し単位のみを有する含フッ素アクリル樹脂を含有する波長360〜430nmの光線用光学材料は、波長360〜430nmの光線に対して特に優れた透明性、耐光性を示す。
【0062】
上記含フッ素アクリル樹脂は、繰り返し単位(a)〜(e)からなる群より選択される少なくとも1つの繰り返し単位を有し、かつ、繰り返し単位(f)、繰り返し単位(g)、アクリル酸に基づく繰り返し単位、又は、メタクリル酸に基づく繰り返し単位を有するものであってもよい。
【0063】
繰り返し単位(f)は、下記式(6):
【0064】
【化18】

【0065】
で表される。
【0066】
繰り返し単位(g)は、下記式(7):
【0067】
【化19】

【0068】
で表される。
【0069】
上記含フッ素アクリル樹脂としては、本発明の光学材料の機械的物性のバランスが取れる点で、繰り返し単位(f)、(b)及び(c)を有するものが好ましい。各繰り返し単位は、(f)/(b)/(c)が質量比で(5〜50)/(10〜60)/(20〜80)であることが好ましく、(10〜30)/(20〜40)/(40〜60)であることがより好ましい。
【0070】
上記含フッ素アクリル樹脂は、全繰り返し単位に占める繰り返し単位(f)、(b)及び(c)の含有量が合計で40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
【0071】
上記含フッ素アクリル樹脂としては、本発明の光学材料の透明性、耐熱性、寸法安定性、機械的強度、耐光性が優れることから、実質的に繰り返し単位(f)、(b)及び(c)のみからなるものが好ましい。
【0072】
上記含フッ素アクリル樹脂としては、本発明の光学材料が高い耐熱性を示すことから、繰り返し単位(f)、(e)及び(g)を有するものが好ましい。各繰り返し単位は、(f)/(e)/(g)が質量比で(5〜45)/(40〜80)/(0〜40)であることが好ましく、(15〜35)/(50〜70)/(5〜25)であることがより好ましい。
【0073】
上記含フッ素アクリル樹脂は、全繰り返し単位に占める繰り返し単位(f)、(e)及び(g)の含有量が合計で40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
【0074】
上記含フッ素アクリル樹脂としては、本発明の光学材料の透明性、耐熱性、寸法安定性、機械的強度、耐光性が優れることから、実質的に繰り返し単位(f)、(e)及び(g)のみからなるものが好ましい。
【0075】
上記含フッ素アクリル樹脂としては、本発明の光学材料が高い透明性を示すことから、繰り返し単位(a)を有するものが好ましい。
【0076】
上記含フッ素アクリル樹脂は、全繰り返し単位に占める繰り返し単位(a)の含有量が合計で1〜100質量%であることが好ましく、50〜100質量%であることがより好ましく、95〜100質量%であることが更に好ましい。
【0077】
上記含フッ素アクリル樹脂としては、本発明の光学材料の透明性、耐熱性、寸法安定性、機械的強度、耐光性が優れることから、実質的に繰り返し単位(a)のみからなるものが好ましい。
【0078】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、上記含フッ素アクリル樹脂を光学材料に対して90質量%以上含有することが好ましく、99質量%以上含有することがより好ましい。
【0079】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、透明性の点で、含フッ素アクリル樹脂のフッ素含有率が20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、33%以上であることが更に好ましい。上限は特に限定されないが、80%であってよい。
【0080】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、耐熱性の点で、含フッ素アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)が50℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、75℃以上であることが更に好ましく、80℃以上であることが特に好ましく、流動性の点で、150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、105℃以下であることが更に好ましく、100℃以下であることが特に好ましい。
【0081】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、耐熱性の点で、含フッ素アクリル樹脂の熱分解温度(Td)が180℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、上限は特に限定されないが、300℃であってよい。
【0082】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、成型物の強度の観点から含フッ素アクリル樹脂の重量平均分子量が10,000以上であることが好ましく、より好ましくは50,000以上、さらに好ましくは100,000以上である。分子量が高すぎると成型加工性が悪くなるため10,000,000以下、より好ましくは5,000,000以下、さらに好ましくは2,000,000以下がよい。
【0083】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、成型加工性の観点から、後述する測定方法により得られる含フッ素アクリル樹脂のメルトインデックスの値が、0.1以上であることが好ましく、成型体の機械特性が悪化するため、80以下であることが好ましい。
【0084】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、屈折率が1.46以下であることが好ましく、1.42以下であることがより好ましく、1.40以上であることが更に好ましい。
【0085】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、特開2006−40352号公報に記載の微細粒子を含むものであってもよい。硫化亜鉛等の微細粒子は屈折率の温度依存性を低下させる。
【0086】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、JIS K 6911に準じて測定した吸水率が、0.40質量%以下であることが好ましく、0.30質量%以下であることがより好ましく、0.20質量%以下であることがさらに好ましい。下限は特に制限されない。吸水率が大きすぎると吸湿による変形が発生しやすく、使用できなくなる可能性が大きくなるため好ましくない。
【0087】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、破断強度が0.1MPa以上であることが好ましく、1.0MPa以上であることがより好ましく、15MPa以上であることが更に好ましい。
【0088】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、非常に高い透過率で波長360〜430nmの光線を透過させる。本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、波長405nmの光線の軸上厚1mmでの透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、波長365nmの光線の軸上厚1mmでの透過率が75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることが更に好ましい。また、波長405nmの光線又は波長365nmの光線のいずれの光線を24時間以上連続照射しても、透過率が5%以上低下しないような材料であることがより好ましい。
【0089】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、ヘイズが5%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましい。上記ヘイズは、JIS K 7105に準じて測定される。本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、また、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。上記全光線透過率は、JISK6714に準じて測定される。
【0090】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料に対して、本発明の目的を損なわない範囲で、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、天然繊維、有機繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ワラステナイト、タルク、クレイ、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土など)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤等)、滑剤、離形剤、難燃剤、染料および顔料を含む着色剤、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤などを添加することができる。中でも、機械特性、成形性、耐熱性および透明性などに優れた光学材料が得られるという点で、離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、通常熱可塑性樹脂の離型剤に用いられるものを用いることができる。具体的には、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変成シリコーンなどを挙げることができる。
【0091】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料に対して、酸化防止剤、紫外線吸収剤、および耐光安定剤を配合することも好ましい。
【0092】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、成形時の酸化劣化等による着色や強度低下を防止できる。
【0093】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中でも、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミディルメチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノールなどが耐熱性、低揮発性などの観点から好ましい。
【0094】
耐光安定剤としては、ベンゾフェノン系耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系耐光安定剤、ヒンダードアミン系耐光安定剤などが挙げられるが、本発明においては、透明性、耐着色性等の観点から、ヒンダードアミン系耐光安定剤を用いるのが好ましい。
【0095】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料に対して、最も低いガラス転移温度が30℃以下である軟質重合体を配合することにより、透明性、耐熱性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止できる。上記軟質重合体の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)などのオレフィン系軟質重合体;ポリイソブチレン、イソブチレン−イソプレンゴム、イソブチレン−スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−スチレン・ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン・ブロック共重合体、イソプレン−スチレン・ブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン・ブロック共重合体などのジエン系軟質重合体;ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサンなどのケイ素含有軟質重合体;ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレートなどのアクリル系軟質重合体;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴムなどのエポキシ系軟質重合体;フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素系軟質重合体;天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体などが挙げられる。これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、また、変性反応により官能基を導入したものでもよい。
【0096】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、屈折率調整剤を含むことも好ましい。屈折率調整剤の具体例としては、フタル酸ベンジル−n−ブチル(屈折率:1.575)、1−メトキシフェニル−1−フェニルエタン(屈折率:1.571)、安息香酸ベンジル(屈折率:1.568)、ブロモベンゼン(屈折率:1.557)、o−ジクロロベンゼン(屈折率:1.551)、m−ジクロロベンゼン(屈折率:1.543)、1,2’−ジブロモエタン(屈折率:1.538)、3−フェニル−1−プロパノール(屈折率:1.532)、ジフェニルフタル酸(C(COOC)、トリフェニルフォスフィン((CP)、ジベンジルフォスフェート((CCHO)PHO)、4,4’−ジブロモベンジル、4,4’−ジブロモビフェニル、2,4’−ジブロモアセトフェノン、3’,4’−ジクロロアセトフェノン、3,4−ジクロロアニリン、2,4−ジブロモアニリン、2,6−ジブロモアニリン1,4−ジブロモベンゼンなどの化合物などがあげられる。
【0097】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、射出成形や押出成形などの方法によって、光学素子等の各種成形品に加工し利用することができる。
【0098】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料からなる成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フィルム、シートなどが挙げられる。
【0099】
成形品としては、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジングおよび内部部品、コピー機のハウジングおよび内部部品、ファクシミリのハウジングおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。更に、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、プロジェクターなどの映像機器部品、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、ブルーレイディスクなどの光ディスク基板、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。
【0100】
特に、本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、波長360〜430nmの光線の光路上に配置される光学素子の材料として好適であり、光学レンズ、光ディスク基板、導光板又は光学フィルムに好適に使用できる。本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料からなる光学素子も本発明の1つである。
【0101】
光学レンズとしては、青紫色レーザーを使用する光ピックアップ装置に設置するピックアップレンズ、ビームシェーパー、コリメートレンズ、カップリングレンズ、センサーレンズ等が挙げられる。光学レンズの製造方法は特に限定されることなく公知の方法を用いることができ、生産性の観点から射出成形法が好ましい。
【0102】
光ディスク基板としては、ブルーレイディスクの基板が挙げられる。光ディスク基板の製造方法は特に限定されることなく公知の方法を用いることができ、例えば、射出成形法、押出成形法、射出プレス成形法等が挙げられ、良好な特性を有する製品を安定して大量に製造できる点で、射出成形法が好ましい。また、基板の上に形成される反射層、記録層、接着層、誘電体層、保護層などの種々の層は、公知の方法を用いて形成させることができる。
【0103】
導光板としては、液晶表示装置のバックライト用導光板、フロントライト用導光板等が挙げられる。導光板の製造方法は特に限定されることなく公知の方法を用いることができ、例えば、射出成形法、押出成形法等が挙げられる。
【0104】
光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、光学フィルター、レンズシート、反射防止フィルム、透明電磁波遮蔽フィルム等が挙げられる。また、光学フィルムは、ブルーレイディスクの保護層にも使用することができる。
【0105】
本発明の本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料およびそれからなる成形品は、リサイクルすることが可能である。
【0106】
本発明は、上述の波長360〜430nmの光線用光学材料を射出成形して光学素子を得て、
得られた光学素子を波長360〜430nmの光線の光路上に配置し、
波長360〜430nmの光線を光源から出射し、
波長360〜430nmの光線を屈折させて発散又は集束させる
ことを特徴とする波長360〜430nmの光線の制御方法でもある。
【0107】
光源としては、波長360〜430nmの光線を出射するレーザー又は発光ダイオード(LED)が好ましく、波長域400〜420nmの光線を出射する光源がより好ましく、波長405nmの光線を出射する光源が更に好ましい。また、波長域360〜370nmの光線を出射する光源がより好ましく、波長365nmの光線を出射する光源が更に好ましい。レーザーとしては、半導体レーザーが挙げられる。
【0108】
本発明の制御方法によれば、波長360〜430nmの光線の損失を大きく抑制することができ、しかも長期間安定した性能を発揮することができる。
【0109】
波長360〜430nmの光線を屈折させて発散又は集束させるための、上述の波長360〜430nmの光線用光学材料の使用も本発明の1つである。
【実施例】
【0110】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0111】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0112】
(1)ガラス転移温度(Tg)
DSC(示差走査熱量計)を用いて、含フッ素アクリル樹脂を1st runを昇温速度10℃/分で200℃まで上げ、200℃で1分間維持したのち降温速度10℃/分で25℃まで冷却し、ついで昇温速度10℃/分で得られる2nd runの吸熱曲線の中間点に対応する温度をガラス転移温度とした。
【0113】
(2)屈折率(n)
ナトリウムD線を光源として25℃においてアッベ屈折率計を用いて測定した値を採用した。
【0114】
(3)重量平均分子量
重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、東ソー(株)製のGPC HLC−8020を用い、Shodex社製のカラム(GPC KF−801を1本、GPC KF−802を1本、GPC KF−806Mを2本直列に接続)を使用し、溶媒としてテトラハイドロフラン(THF)を流速1ml/分で流して測定したデータより、重量平均分子量を算出した。
【0115】
(4)吸水率
10mmφ×1mmの円盤状サイズの試験片を用いた以外はJIS K 6911に準拠した方法により吸水率を求めた。
【0116】
(5)破断強度
各サンプルの、厚さ1mmのシートをヒートプレス成型方法で作製した。このシートからJIS K 6301に準拠して3号形ダンベルを打抜き、引張り速度500mm/分で引張り試験をおこなった。
【0117】
(6)メルトインデックス(MI)
(株)島津製作所製の降下式フローテスターを用い、含フッ素アクリル樹脂を内径9.5mmのシリンダーに装着し、温度230℃で5分間保った後、7kgのピストン荷重部に内径2.1mm、長さ8mmのオリフィスを通して押し出し、10分間に押し出された含フッ素アクリル樹脂のグラム数をメルトインデックスとした。
【0118】
(7)透過率
厚さ1mmのシートの405nmおよび365nmでの透過率を日立分光光度計U−4100を用いて測定した。
【0119】
(8)フッ素含有率
酸素フラスコ燃焼法により試料10mgを燃焼し、分解ガスを脱イオン水20mlに吸収させ、吸収液中のフッ素イオン濃度をフッ素選択電極法(フッ素イオンメーター、オリオン社製901型)で測定することにより求めた(質量%)。
【0120】
(9)熱分解温度(Td)
熱重量計((株)島津製作所のTGA−50)を用い、空気雰囲気の条件で昇温速度10℃/minの条件で測定し、1%質量減の温度で評価した。
【0121】
(10)耐光性
オムロン社製UV−LED装置ZUV−C10を用いて、365nmのUV光を厚さ1mmのシートに120分照射した後、405nmの透過率を測定した。
【0122】
(11)共重合体組成
BRUKER社製NMR AC−300を使用して測定した。
H−NMR測定条件:300MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:300MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
【0123】
実施例では以下のモノマーを使用した。
【0124】
【化20】

【0125】
実施例1
6FNPMの50部、メチルメタクリレート(MMA)の30部、8FMの20部、n−ラウリルメルカプタンの0.04部、アゾイソブチロニトリルの0.025部を500mlのガラス製フラスコ内で溶解混合し、脱気および窒素置換を繰り返し、密封した後、70℃で16時間重合させた。
【0126】
重合終了後、生成物にアセトン300gを加えて溶解させ、得られた溶液をメタノール5リットルに注ぎ込んだ。沈殿した重合物を液体から分離し、100℃の温度で10時間減圧乾燥し、固体状の含フッ素アクリル樹脂を92g(収率92%)得た。
【0127】
得られた含フッ素アクリル樹脂を19F−NMR、H−NMRで測定し、6FNPM/MMA/8FM =50/30/20(mass%)の共重合体であることを確認した。フッ素含有率は32質量%であった。
【0128】
また、得られた含フッ素アクリル樹脂の重量平均分子量、フッ素含有率、ガラス転移温度、熱分解温度、メルトインデックスを測定した。
【0129】
更に、得られた含フッ素アクリル樹脂を光学材料とした場合の各種物性(屈折率、光透過率、破断強度、耐光性および吸水率)を調べた。結果を表1に示す。
【0130】
実施例2
単量体として、3FMの100部を用いた以外は実施例1と同様にして含フッ素アクリル樹脂を得た。得られた含フッ素アクリル樹脂の組成、および各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0131】
実施例3
単量体として、5FMの50部、MMAの20部、4FMの30部を用いた以外は実施例1と同様にして含フッ素アクリル樹脂を得た。得られた含フッ素アクリル樹脂の組成、および各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0132】
実施例4
単量体として、HFIPMの55部および4FMの45部を用いた以外は実施例1と同様にして含フッ素アクリル樹脂を得た。得られた含フッ素アクリル樹脂の組成、および各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0133】
比較例1
単量体として、8FMの100部を用いた以外は実施例1と同様にして含フッ素アクリル樹脂を得た。得られた含フッ素アクリル樹脂の組成、および各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0134】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の波長360〜430nmの光線用光学材料は、光学レンズ、光ディスク基板、導光板又は光学フィルムに利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素アクリル樹脂を含有する波長360〜430nmの光線用光学材料であって、
前記含フッ素アクリル樹脂は、下記式(1):
【化1】

で表される繰り返し単位(a)、下記式(2):
【化2】

で表される繰り返し単位(b)、下記式(3):
【化3】

で表される繰り返し単位(c)、下記式(4):
【化4】

で表される繰り返し単位(d)、及び、下記式(5):
【化5】

で表される繰り返し単位(e)
からなる群より選択される少なくとも1つの繰り返し単位を有し、
フッ素含有率が20%以上であり、
ガラス転移温度が50℃以上である
ことを特徴とする光学材料。
【請求項2】
含フッ素アクリル樹脂を含有する波長360〜430nmの光線用光学材料であって、
前記含フッ素アクリル樹脂は、下記式(6):
【化6】

で表される繰り返し単位(f)、下記式(2):
【化7】

で表される繰り返し単位(b)、及び、下記式(3):
【化8】

で表される繰り返し単位(c)、を有し、
フッ素含有率が20%以上であり、
ガラス転移温度が50℃以上である
ことを特徴とする光学材料。
【請求項3】
含フッ素アクリル樹脂を含有する波長360〜430nmの光線用光学材料であって、
前記含フッ素アクリル樹脂は、下記式(6):
【化9】

で表される繰り返し単位(f)、下記式(5):
【化10】

で表される繰り返し単位(e)、及び、下記式(7):
【化11】

で表される繰り返し単位(g)、を有し、
フッ素含有率が20%以上であり、
ガラス転移温度が50℃以上である
ことを特徴とする光学材料。
【請求項4】
含フッ素アクリル樹脂を含有する波長360〜430nmの光線用光学材料であって、
前記含フッ素アクリル樹脂は、下記式(1):
【化12】

で表される繰り返し単位(a)を有し、
フッ素含有率が20%以上であり、
ガラス転移温度が50℃以上である
ことを特徴とする光学材料。
【請求項5】
前記光線は、レーザー又は発光ダイオードを光源とする請求項1、2、3又は4記載の光学材料。
【請求項6】
波長405nmの光線の1mm厚の透過率が85%以上である請求項1、2、3、4又は5記載の光学材料。
【請求項7】
波長365nmの光線の1mm厚の透過率が80%以上である請求項1、2、3、4又は5記載の光学材料。
【請求項8】
波長360〜430nmの光線の光路上に配置される光学素子に使用される請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の光学材料。
【請求項9】
光学レンズ、光ディスク基板、導光板又は光学フィルムに使用される請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の光学材料。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の光学材料からなる光学素子。
【請求項11】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の光学材料を射出成形し、
得られた光学素子を波長360〜430nmの光線の光路上に配置し、
波長360〜430nmの光線を光源から出射し、
波長360〜430nmの光線を屈折させて発散又は集束させる
ことを特徴とする波長360〜430nmの光線の制御方法。
【請求項12】
波長360〜430nmの光線を屈折させて発散又は集束させるための請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の光学材料の使用。

【公開番号】特開2011−84648(P2011−84648A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238454(P2009−238454)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】