説明

注入同期発振装置

【課題】位相雑音を改善する注入同期発振装置を得る。
【解決手段】基準発振器1の出力波を所定の電力に調整する電力調整手段2と、電力調整された電波を分配する同相分配手段3と、分配された電波が各々入力され、入力される周波数の自然数倍の周波数で発振する複数の注入同期発振器4と、複数の注入同期発振器4の各々の出力を合成して出力する同相合成手段5とを備えた。
低離調周波数では、注入同期発振器4の出力波が、低離調周波数で位相雑音特性が良い基準発振器1の出力波に同期するので、位相雑音が改善される。一方、高離調周波数では、各々の注入同期発振器4の出力波の位相雑音が無相関のため、同相合成手段5により各々の注入同期発振器4の出力波を合成することで、位相雑音が改善される。
したがって、低離調周波数および高離調周波数の全離調周波数において位相雑音を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列接続された注入同期発振器からなる注入同期発振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、フリーラン状態の高周波数帯の発振器の安定度は低く、位相雑音(発振周波数の短期的なゆらぎ)は高い。安定度を高め、位相雑音を低減する従来の高周波発振源として、位相同期発振器がある。
【0003】
従来の位相同期発振器として、電圧制御発振器(VCO)、緩衝増幅器、分周器、位相比較器、基準発振器(水晶発振器)、およびループフィルタ(ローパスフィルタ)からなるものがある。
【0004】
次に動作について説明する。
電圧制御発振器の出力は、緩衝増幅器を介して負荷に供給されており、その出力の一部が分周器に入力され、低周波数に変換される。分周器の出力は、位相比較器により安定度の高い基準発振器の出力と比較され、その位相差に応じた直流近傍の電圧がループフィルタに入力される。ループフィルタにより平滑化された直流電圧は、電圧制御発振器の制御端子に入力され、電圧制御発振器の発振周波数が、基準発振器の発振周波数のN(Nは任意の自然数)倍に等しい周波数となるように制御される。
【0005】
このとき、電圧制御発振器の発振周波数の安定度は、基準発振器の安定度と等しくなる。また、ループフィルタで決定されるループ帯域内では、基準発振器、位相比較器および分周器の位相雑音で決定され、ループ帯域外では、電圧制御発振器の位相雑音はフリーラン時の電圧制御発振器の位相雑音となる(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
一般に、高周波発振源の位相雑音は、所望の発振周波数(中心周波数またはキャリア周波数)からオフセットした周波数における雑音電力とキャリア電力との比で定義されるが、このオフセット周波数のことを離調周波数という。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“10GHz Band Compact Phase Locked Oscillator with Low Phase Noise”,20th European Microwave Conference,Vol.2,pp.1766-1771,1990.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の位相同期を用いた高周波発振源は、以上のように構成されているので、低離調周波数の位相雑音が位相比較器および分周器のために高くなっており、位相雑音が劣化するという課題があった。また、高離調周波数の位相雑音はフリーラン時の電圧制御発振器の位相雑音であり、高いという課題があった。
【0009】
本発明は、以上のような課題を解消するためになされたものであり、位相雑音を改善する注入同期発振装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の注入同期発振装置は、基準発振器の出力を所定の電力に調整する電力調整手段と、電力調整された電波をi分配する分配手段と、i分配された電波を各々入力し、入力される周波数のN倍の周波数で各々発振するi個の注入同期発振器と、i個の注入同期発振器の出力を合成して出力する合成手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、注入同期発振器の出力が基準発振器の出力に同期する離調周波数の範囲は、電力調整手段により調整された(注入)電力によって決まる。
よって、注入同期発振器の出力が、低離調周波数で位相雑音特性の良い基準発振器の出力に同期するので、注入同期発振器の出力の位相雑音が改善される。
【0012】
また、高離調周波数は、注入同期発振器の出力が基準発振器の出力に同期しない。
しかし、高離調周波数では、各々の注入同期発振器の出力の位相雑音が無相関のため、合成手段により各々の注入同期発振器の出力を合成すれば、キャリア電力の増加に対して雑音電力の増加が少なく、合成出力の位相雑音が改善される。
【0013】
したがって、低離調周波数および高離調周波数の全離調周波数において位相雑音を抑制することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1による注入同期発振装置を示す回路図である。
【図2】この発明の実施の形態1による注入同期発振装置の位相雑音対離調周波数特性を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1による注入同期発振装置の他の位相雑音対離調周波数特性を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1による注入同期発振装置の同相分配手段および同相合成手段の詳細を示す回路図である。
【図5】この発明の実施の形態1による注入同期発振装置の同相分配手段および同相合成手段の他の詳細を示す回路図である。
【図6】この発明の実施の形態2による注入同期発振装置を示す回路図である。
【図7】この発明の実施の形態2による注入同期発振装置の同相合成手段の他の詳細を示す回路図である。
【図8】この発明の実施の形態2による他の注入同期発振装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による注入同期発振装置を示す回路図である。
図1において、基準発振器1は、安定度が高く、周波数frで発振する。
電力調整手段2は、基準発振器1の出力波を適切な電力に調整する。
同相分配手段3は、入力された電波を複数に同相分配する。
【0016】
複数(例えば、i個:iは2以上の任意の自然数)の注入同期発振器4の入力端子は、同相分配手段3の各々の出力端子に接続され、注入同期発振器4は各々の入力波に同期すると共に、入力周波数frのN(Nは任意の自然数)倍の周波数N・frで各々発振する。
同相合成手段5は、複数の注入同期発振器4の各々の出力波を同相で合成して出力する。
【0017】
次に動作について説明する。
図1において、安定度の高い基準発振器1の周波数frの出力波は、電力調整手段2および同相分配手段3を介して注入同期発振器4に入力される。注入同期発振器4では、入力波に同期すると共に、周波数frのN倍の周波数N・frで発振する。
【0018】
このとき、電力調整手段2によって注入同期発振器4への注入電力を適切な電力に設定することで、注入同期発振器4の低離調周波数での位相雑音を基準発振器1の位相雑音と(同じ周波数で比較して)同等になるように同期させ、高離調周波数での位相雑音をフリーラン(注入電力が無い)時の注入同期発振器4の位相雑音とすることができる。
ちなみに、基準発振器1の出力波の位相雑音がPNrとすると、注入同期発振器4の位相雑音はPNr+20Log(N)で同等の位相雑音となる。これは同じ周波数で比較すると、基準発振器1、注入同期発振器4ともに周波数frで位相雑音PNrの特性である。
【0019】
以下に、低離調周波数における位相雑音の抑制効果を更に詳しく説明する。
図2は位相雑音対離調周波数特性を示したものである。簡単のために、N=1として説明する。
注入同期発振器4は、基準発振器1からの注入電力が無い状態では、一般的に、図2上図の鎖線に示すような特性となり、位相雑音は高い状態である。
【0020】
これに対して、図2上図の点線に示すような、低離調周波数で位相雑音特性の良い基準発振器1からの電力を注入すると、注入同期発振器4は、基準発振器1に同期し、位相雑音が改善される。
このとき、注入同期発振器4が基準発振器1に同期する離調周波数の範囲は、基準発振器1からの注入電力で決まり、注入電力が大きいほど高い離調周波数まで同期する。
【0021】
ところで、図2上図の点線に示すように、基準発振器1の位相雑音特性は、低離調周波数では良好であるが、離調周波数が高くなるにつれて位相雑音は一定の値にとどまる傾向にある。
そこで、図2下図に示すように、電力調整手段2により、注入同期発振器4の位相雑音と基準発振器1の位相雑音とが等しい離調周波数まで同期する電力となるように注入電力を調整する。
【0022】
よって、注入同期範囲(注入同期発振器4の位相雑音と基準発振器1の位相雑音とが等しい離調周波数)より低離調周波数では、注入同期発振器4の出力の位相雑音が改善される。
【0023】
次に、図1において、複数の注入同期発振器4による各々の出力は、同相合成手段5によって同相合成されて出力される。
このとき、複数の注入同期発振器4による各々の(キャリアの)出力電力は電圧加算されるが、注入同期範囲より高離調周波数の位相雑音成分はそれぞれ無相関のため電力加算され、結果として位相雑音が低減する。
【0024】
以下に、高離調周波数における位相雑音の抑制効果を更に詳しく説明する。
注入同期範囲より高離調周波数では、注入同期発振器4の出力が基準発振器1の出力に同期していないために、高離調周波数における位相雑音は高い状態であるが、注入同期発振器4の各々の出力の位相雑音は無相関である。
【0025】
無相関の電力を合成すると電力加算となり、同相で合成した電力と比較して、2合成の場合は電力が3dB低くなる。複数の注入同期発振器4の出力を同相合成手段5によって同相合成することで、キャリア電力は電圧加算されるが、雑音電力は電力加算となるため、2合成であれば雑音電力はキャリア電力より3dB低くなり、4合成であれば6dB低くなる。したがって、合成後の位相雑音が改善される。
【0026】
この実施の形態1によれば、低離調周波数では、注入同期発振器4の出力が、低離調周波数で位相雑音特性が良い基準発振器1の出力に同期するので、注入同期発振器4の出力の位相雑音が改善される。
一方、高離調周波数では、各々の注入同期発振器4の出力の位相雑音が無相関のため、同相合成手段5により各々の注入同期発振器4の出力を合成すれば、キャリア電力の増加に対して雑音電力の増加が少なく、合成出力の位相雑音が改善される。
したがって、低離調周波数および高離調周波数の全離調周波数に渡って位相雑音を抑制することができる。
【0027】
なお、この実施の形態1における注入同期発振器4の発振周波数は、基準発振器1の出力周波数の概略N逓倍となる周波数であっても良いが、ちょうどN逓倍となる周波数の方がより良い。これにより、電力調整手段2によって注入同期発振器4の同期範囲を、基準発振器の位相雑音特性が良好な離調周波数範囲に設定することができ、低離調周波数での位相雑音をより有効に改善することができる。
【0028】
また、前記実施の形態1では、電力調整手段2により、注入同期発振器4の位相雑音と基準発振器1の位相雑音とが等しい離調周波数まで同期する電力となるように注入電力を調整したが、図3に示すように、電力調整手段2により、合成後の位相雑音と基準発振器1の位相雑音とが等しい離調周波数まで同期する電力となるように注入電力を調整しても良い。
【0029】
また、前記実施の形態1における基準発振器1は、発振周波数が固定の発振器でも、発振周波数が可変できる電圧制御発振器や電流制御発振器などであっても良く、水晶発振器やSAW発振器、周波数シンセサイザなどであっても良い。さらに、基準発振器の出力周波数は、発振周波数でも良く、発振周波数の高調波であっても良い。
【0030】
さらに、前記実施の形態1における電力調整手段2は、可変アッテネータ、可変抵抗、トランジスタ、ダイオード、共振回路、結合線路などで構成され、制御は手動で行っても良く、電圧または電流など電子的に行っても良い。例えば、可変抵抗や可変アッテネータであれば機械的または電子的に減衰量を変化させることができる。また、トランジスタであればバイアス電圧または電流により利得を変化させることができ、ダイオードでは端子間電圧により容量を変化させることで結合量すなわち通過量を変えることができる。これらにより、電力の調整が可能である。
【0031】
また、電力調整手段2は、基準発振器1による出力周波数を(例えば、M:Mは任意の自然数)倍の周波数に逓倍する機能を備えても良い。
【0032】
また、電力調整手段2は、基準発振器1による出力周波数を(例えば、1/K:Kは任意の自然数)倍の周波数に分周する機能を備えても良い。
【0033】
また、前記実施の形態1における注入同期発振器4は、発振周波数が固定の発振器でも、発振周波数が可変できる電圧制御発振器や電流制御発振器などであっても良い。
【0034】
また、前記実施の形態1における同相分配手段3および同相合成手段5は、図4に示す縦続直列共振回路であっても良い。
図4はこの発明の実施の形態1による注入同期発振装置の同相分配手段および同相合成手段の詳細を示す回路図である。
【0035】
図4において、縦続直列共振回路6は、コンデンサCおよびインダクタLからなる直列共振回路7を、(例えば、i−1個)縦続接続されたものである。例えば、i−1個の縦続接続とすると、第j番目の直列共振回路7の一端は第j−1番目の他端に接続され、第j番目の他端は第j+1番目の一端と接続される。ただし、jは2以上の自然数(=2,3,4,・・・)である。縦続直列共振回路6の両端である第1番目の一端および第i−1番目の他端は開放である。注入同期発振器4の個数がi個の場合、縦続接続される共振回路7の個数はi−1個以上あれば良い。
【0036】
図4に示した縦続直列共振回路6を同相分配手段3に用いる場合は、直列共振回路7の直列共振周波数を電力調整手段2の出力周波数となるように、コンデンサCおよびインダクタLを設定する。
さらに、電力調整手段2の出力端子を、i−1個の直列共振回路7のうちの、任意の直列共振回路7の一端に接続する。
さらに、複数の注入同期発振器4の各々の入力端子は、縦続直列共振回路6における直列共振回路7の各々の接続点、または端点に接続する。
よって、直列共振周波数では各々の直列共振回路7の両端で出力波が同相になるので、各々の接続点および端点から同相の出力波を取り出すことができ、複数の注入同期発振器4への入力波を同相にすることができる。
【0037】
図4に示した縦続直列共振回路6を同相合成手段5に用いる場合は、直列共振回路7の直列共振周波数を注入同期発振器4の出力周波数となるように、コンデンサCおよびインダクタLを設定する。
さらに、注入同期発振器4の各々の出力端子を、縦続直列共振回路6における直列共振回路7の各々の接続点、または端点に接続する。
さらに、i−1個の直列共振回路7のうちの、任意の直列共振回路7の一端から出力波を取り出す。
よって、直列共振周波数では各々の直列共振回路7の両端で同相になるので、各々の注入同期発振器4の出力波を同相で合成することができ、高離調周波数の位相雑音を改善することができる。
【0038】
さらに、前記実施の形態1における同相分配手段3および同相合成手段5は、図5に示す0次共振回路8であっても良い。
図5はこの発明の実施の形態1による注入同期発振装置の同相分配手段および同相合成手段の他の詳細を示す回路図である。
【0039】
図5において、0次共振回路8は、インダクタLおよびコンデンサCからなる右手系回路9と、コンデンサCおよびインダクタLからなる左手系回路10とを組み合わせた伝送線路により構成されたものである。
【0040】
0次共振回路8は、右手系回路9と左手系回路10を組み合わせた構成であることから、共振周波数(0次共振周波数)の波長は無限大に等価であり、原理的には0次共振回路8の任意の点で同相となる。
図5に示した0次共振回路8を同相分配手段3に用いる場合は、0次共振回路8の0次共振周波数を電力調整手段2の出力周波数となるように、コンデンサCおよびインダクタLを設定する。
また、0次共振回路8において0次共振周波数で同相となる点に、電力調整手段2の出力端子および複数の注入同期発振器4の各々の入力端子を接続する。
これにより、電力調整手段2の出力波は、複数の注入同期発振器4に同相入力される。
【0041】
図5に示した0次共振回路8を同相分配手段3に用いる場合は、0次共振回路8の0次共振周波数を注入同期発振器4の出力周波数となるように、コンデンサCおよびインダクタLを設定する。
また、0次共振回路8において0次共振周波数で同相となる点に、注入同期発振器4の各々の出力端子を接続し、0次共振周波数で同相となる点から出力させる。
これにより、各々の注入同期発振器4の出力波を同相で合成することができ、高離調周波数の位相雑音を改善することができる。
【0042】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2による注入同期発振装置を示す回路図である。
図6において、分配手段11は、入力された電波を複数に分配する。
合成手段12は、入力された2つの電波を混合して出力する複数のミキサ13a〜13cで構成され、注入同期発振器4の各々の出力を、トーナメント状に接続した複数のミキサ13a〜13cにより混合して出力する。
その他の構成については、前記実施の形態1と同様である。
【0043】
次に動作について説明する。
図6において、注入同期発振器4a、4bの各々の出力を、ミキサ13aによって混合して出力する。また、注入同期発振器4c、4dの各々の出力を、ミキサ13bによって混合して出力する。さらに、ミキサ13aおよびミキサ13bの出力を、ミキサ13cによって混合して出力する。
【0044】
このとき、複数の注入同期発振器4の全ての出力は、ミキサ13a〜13cにより混合される。
高離調周波数では、各々の注入同期発振器4の出力波の位相雑音が無相関のため、ミキサ13a〜13cにより各々の注入同期発振器4の出力波を混合すれば、キャリア電力の増加に対して雑音電力の増加が少なく、混合後の位相雑音が改善される。
これは、位相雑音が無相関で、周波数が同じ2つの電波をミキサ13により混合することで、ミキサ13に入力された周波数の和の周波数と直流が出力され、このうちの、和の周波数では、ミクサ13において、キャリアは電圧加算されて6dB増加するのに対して、位相雑音は電力加算されて3dBしか増加しないためである。
【0045】
また、ミキサ13a、13bは、2個の注入同期発振器4の出力周波数N・frを混合することから、両周波数N・frの和である出力周波数2N・frが得られる。
さらに、ミキサ13cは、2個のミキサ13a、13bの出力周波数2N・frを混合することから、両周波数2N・frの和である出力周波数4N・frが得られる。
【0046】
この実施の形態2によれば、合成手段12は、複数の注入同期発振器4の出力波を合成して出力する複数のミキサ13a〜13cで構成され、複数の注入同期発振器4の各々の出力を、トーナメント状に接続した複数のミキサ13a〜13cにより合成して出力するようにした。
【0047】
また、前記実施の形態2における合成手段12は、図7に示す合成手段12a、12bであっても良い。
図7はこの発明の実施の形態2による注入同期発振装置の合成手段の他の詳細を示す回路図である。
【0048】
図7(a)において、合成手段12aは、2つの出力波を合成して出力する複数のミキサ13d〜13fで構成され、注入同期発振器4の3つの出力を、トーナメント状に接続した複数のミキサ13d〜13fにより合成して出力する。
この合成手段12aでは、ミキサ13d、13eが中央の注入同期発振器4の出力を共通に入力したものである。
【0049】
また、図7(b)において、合成手段12bは、複数の注入同期発振器4の出力波を合成して出力する複数のミキサ13g、13hで構成され、注入同期発振器4の3つの出力を、トーナメント状に接続した複数のミキサ13g、13hにより合成して出力する。
この合成手段12bでは、ミキサ13gに上側2個の注入同期発振器4の出力波が入力され、ミキサ13hにミキサ13gの出力と下側の注入同期発振器4の出力波が入力される。
なお、図6および図7に示した構成では、2段にトーナメント状に構成したものについて説明したが、注入同期発振器4の数に応じて3段以上のトーナメント状に構成しても良い。
【0050】
また、前記実施の形態2における合成手段12は、図8に示す合成手段14であっても良い。
図8はこの発明の実施の形態2による他の注入同期発振装置を示す回路図である。
【0051】
図8において、合成手段14は、注入同期発振器4の出力波を増幅してミキサ13a〜13cに出力する増幅器15a〜15cを備える。その他の構成については、図6と同様である。
【0052】
図8では、ミキサ13a、13bのLO端子へ出力する注入同期発振器の出力電力を増幅器15a、15bにより増幅している。また、ミキサ13cのLO端子へ出力するミキサ13bの出力電力を増幅器15cにより増幅している。
【0053】
このように、ミキサ13a〜13cのLO端子への入力を増幅器15a〜15cにより増幅することで、ミキサ13a〜13cを駆動するための十分な電力を与えることができる。
【0054】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 基準発振器、2 電力調整手段、3 同相分配手段、4 注入同期発振器、5 同相合成手段、6 縦続直列共振回路、7 直列共振回路、8 0次共振回路、9 右手系回路、10 左手系回路、11 分配手段、12、14 合成手段、13a〜13h ミキサ、15a〜15c 増幅器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準発振器と、
前記基準発振器の出力波を所定の電力に調整する電力調整手段と、
前記電力調整手段により電力調整された電波をi(iは2以上の任意の自然数)分配する分配手段と、
前記分配手段によりi分配された電波が各々入力され、入力される周波数のN(Nは任意の自然数)倍の周波数で各々発振するi個の注入同期発振器と、
前記i個の注入同期発振器の出力を合成して出力する合成手段とを備えた注入同期発振装置。
【請求項2】
分配手段は、
電力調整手段の出力周波数を共振周波数とする直列共振回路を、(i−1)個以上縦続接続した縦続直列共振回路で構成され、
前記電力調整手段の出力端子は、前記縦続直列共振回路における前記直列共振回路同士の接続点、または端点のうちの、任意の一つに接続され、
i個の注入同期発振器の各々の入力端子は、前記縦続直列共振回路における前記直列共振回路同士の接続点、または端点のうちの、任意のi個に各々接続されたことを特徴とする請求項1記載の注入同期発振装置。
【請求項3】
分配手段は、
電力調整手段の出力周波数を0次共振周波数とする0次共振回路で構成され、
前記電力調整手段の出力端子およびi個の注入同期発振器の各々の入力端子は、前記0次共振回路において0次共振周波数で同相となる点に接続されたことを特徴とする請求項1記載の注入同期発振装置。
【請求項4】
合成手段は、
同相で合成することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の注入同期発振装置。
【請求項5】
合成手段は、
注入同期発振器の出力周波数を共振周波数とする直列共振回路を、(i−1)個以上縦続接続した縦続直列共振回路で構成され、
前記i個の注入同期発振器の各々の出力端子は、前記縦続直列共振回路における前記直列共振回路同士の接続点、または端点のうちの、任意のi個に各々接続され、
前記縦続直列共振回路における前記直列共振回路同士の接続点、または端点のうちの、任意の1個から出力することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の注入同期発振装置。
【請求項6】
合成手段は、
注入同期発振器の出力周波数を0次共振周波数とする0次共振回路で構成され、
前記i個の注入同期発振器の各々の出力端子は、前記0次共振回路において0次共振周波数で同相となる点に接続され、
前記0次共振回路において0次共振周波数で同相となる点から出力することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の注入同期発振装置。
【請求項7】
合成手段は、
i個の注入同期発振器の各々の出力を、トーナメント状に構成された複数のミキサにより、合成して出力することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の注入同期発振装置。
【請求項8】
合成手段は、
ミキサのLO端子に入力する電力を増幅する増幅器を備えたことを特徴とする請求項7記載の注入同期発振装置。
【請求項9】
電力調整手段は、
基準発振器の出力周波数をM(Mは任意の自然数)倍の周波数に逓倍することを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載の注入同期発振装置。
【請求項10】
電力調整手段は、
基準発振器の出力周波数を1/K(Kは任意の自然数)倍の周波数に分周することを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載の注入同期発振装置。
【請求項11】
電力調整手段は、
i個の注入同期発振器の各々が、基準発振器の位相雑音と前記注入同期発振器のフリーラン時の位相雑音が同じ周波数で比較して同等となる離調周波数まで、基準発振器に同期する電力に調整することを特徴とする請求項1から請求項10のうちのいずれか1項記載の注入同期発振装置。
【請求項12】
注入同期発振器のフリーラン時の位相雑音は、合成出力後の位相雑音であることを特徴とする請求項11に記載の注入同期発振装置。
【請求項13】
i個の注入同期発振器は、基準発振器の出力周波数の概略N逓倍の周波数で発振することを特徴とする請求項1から請求項12のうちのいずれか1項記載の注入同期発振装置。
【請求項14】
i個の注入同期発振器は、基準発振器の出力周波数のN逓倍の周波数で発振することを特徴とする請求項1から請求項12のうちのいずれか1項記載の注入同期発振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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