説明

注入材の浸透注入工法、注入材の配合量制御システム、注入材の注入用有孔管及び注入材の注入用パッカー

【課題】注入ステップ長とその回数を地山の地盤状況に応じて任意に設定でき、地山改良と管内充填との連続作業が可能で、かつ、短時間で確実に地山改良が可能な注入材の配合量制御システム、注入用有孔管及び注入用パッカー、並びにこれらを用いた注入材の浸透注入工法を提供する。
【解決手段】 地山12に形成された掘削孔10内に所定の深さまで注入用有孔管14を挿入する工程と、前記注入用有孔管14の内部に注入用パッカー16を設置する工程と、前記注入用パッカー16よりも孔底18側の前記注入用有孔管14内に浸透配合注入材34を圧入して孔22を介して地山12に注入する工程と、浸透配合注入材34より硬化時間が短い急硬配合注入材66を前記注入用パッカー16よりも孔底18側の前記注入用有孔管14内に充填する工程と、前記急硬配合注入材66の硬化後に、直ちに前記注入用パッカー16を移動する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地質等の地山に打設した有孔管の内部から注入材を注入し、地山を改良する浸透注入工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、地山に形成された掘削孔内に所定の深さまで挿入した有孔管の口元にパッカー又は注入キャップを設置し、このパッカー又は注入キャップよりも孔底側の有孔管内に注入材を圧入して有孔管のすべての孔を介して地山内に注入材を一度に浸透させる方法が行われていた。しかし、この方法では、例えば、水平より上向き掘削孔では、掘削孔の孔口側の圧力が孔底側の圧力よりも大きくなるために、孔口側の地山に多く注入材が注入され、注入材による改良領域の偏りが掘削孔の長さ方向に生じるという問題点があった。また、地山が軟弱であるほどこの傾向は大きくなるという問題点があった。
【0003】
そこで、1つの掘削孔を所定の長さに分割し、この分割した箇所の湧水や地盤条件に応じてそれぞれ注入量等を変えて注入する方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、逆止弁付きの孔が複数設けられた有孔管を掘削孔内に設置し、シングルパッカーを有孔管内に挿入して有孔管の孔底側端部近傍で拡径させて、このシングルパッカーよりも孔底側の有孔管内に注入材を圧入し、逆止弁付きの孔を介して地山に硬化時間が短い低強度の注入材を一次注入し、次に、硬化時間が長い高強度の二次注入材を地山に向けて二次注入する方法が開示されている。この方法では、硬化時間が短い低強度の一次注入材は、有孔管と地山との隙間を辿って有孔管体の口元側に流動し、その過程で地山に弱層部が存在していると、その部分に沿って有孔管の外方に流動し、弱層部内に充満するようにして浸透して、弱層部に粗詰めされた状態になる。この状態で、硬化時間が長い高強度の二次注入材を注入して硬化させ、有孔管の外周に筒状の改良体を形成する。二次注入材が硬化した後に、シングルパッカーを所定の距離だけ孔口側に移動し、再び一次注入材を注入する。つまり、一次注入材を注入する工程と、二次注入材を注入する工程と、シングルパッカーを移動する工程からなる一連のステップを繰り返し、有孔管の外周に筒状の改良体を形成する。
【0005】
また、逆止弁付きの孔が複数設けられた有孔管を掘削孔内に設置し、ダブルルパッカーを有孔管内に挿入して有孔管の孔底側端部近傍で拡径させて、このダブルパッカー間の有孔管内に注入材を圧入して逆止弁付きの孔を介して地山に注入材を注入し、注入材が硬化するとダブルパッカーを所定の距離だけ孔口側に移動し、有孔管内を注入材にて充填する方法が行われている。この方法では、ダブルパッカー間に注入材を注入する工程と、ダブルパッカーを移動する工程とからなる一連のステップを繰り返して有孔管の外周に筒状の改良体を形成した後に、有孔管内を充填する。
【特許文献1】特開2004−68473
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている方法では、硬化時間が長い高強度の二次注入材が硬化するまでの間は、シングルパッカーを設置した状態を維持しなければならず、次の注入作業を行うことができないために、作業効率が悪いという問題点があった。
【0007】
また、一次注入材を注入した後に、二次注入材を注入する際は、主材と硬化材との配合比率を変更するために主材及び硬化材のそれぞれの注入ポンプの注入量の変更及び調整、主材及び硬化材の配管等の盛替え作業等を行わねばならず、人間がこれらの変更、調整等を行うために、作業が多く煩雑で敏速な変更ができないという問題点があった。
【0008】
そして、有孔管内にダブルパッカーを設置し、ダブルパッカー間の有孔管内に注入材を圧入する方法では、ダブルパッカー間の有孔管内から硬化時間が短い注入材又は硬化強度が高い注入材を注入すると、注入材の一部が有孔管内で硬化してしまい孔底側のパッカーの移動が困難になるという問題があった。
【0009】
また、ダブルパッカー間の有孔管内にて注入材が硬化することを防ぐために注入区間距離のステップ長を短くしてステップ回数を増加すると、1つの掘削孔に要する注入作業時間が長くなり作業効率が悪くなるという問題点があった。
【0010】
さらに、有孔管の外周に筒状の改良体を形成した後に、ダブルパッカーを掘削孔内から撤去して有孔管内を充填する作業が必要となり、資機材の盛替え作業量が多くなり時間を要するという問題点があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、注入ステップ長とその回数を地山の地盤状況に応じて任意に設定でき、地山改良から管内充填までの連続注入が可能で、かつ、短時間で確実に地山改良が可能な注入材の配合量制御システム、注入用有孔管及び注入用パッカー、並びにこれらを用いた注入材の浸透注入工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明の注入材の浸透注入工法は、地山に形成された掘削孔内に所定の深さまで挿入した有孔管の内部にパッカーを設置し、該パッカーよりも孔底側の前記有孔管内に注入材を圧入して前記有孔管の孔を介して地山内に浸透させる浸透注入工法であって、前記掘削孔内に前記有孔管を挿入する工程と、前記パッカーを前記有孔管内に挿入して所定の位置に設置する工程と、前記パッカーよりも孔底側の有孔管内に浸透配合注入材を圧入して前記孔を介して地山に注入する工程と、前記浸透配合注入材より硬化時間が短い急硬配合注入材を前記パッカーよりも孔底側の前記有孔管内に充填する工程と、前記急硬配合注入材の硬化後に、直ちにパッカーを孔口側に移動する工程とを有することを特徴とする(第1の発明)。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記浸透配合注入材を注入する工程と、前記急硬配合注入材を注入する工程と、前記パッカーを移動する工程からなる一連のステップを繰り返すことを特徴とする。
【0014】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記パッカーは、主材を送給する主材用管と、硬化材を送給する硬化材用管と、前記主材用管及び前記硬化材用管の外周側に配設され、作動流体圧により膨縮可能な袋状の膨張体と、先端を切り落とした中空の円錐形状を有し、拡開側の端部が該膨張体の一端に接続され、狭閉側の端部が前記主材用管及び前記硬化材用管の端部を囲うように配設される先端カバーとを備え、該先端カバーの内側にて前記主材と前記硬化材とを混合することを特徴とする。
【0015】
第4の発明は、第1〜3のいずれかの発明において、前記浸透配合注入材及び前記急硬配合注入材は、セメント系材料の主材と硬化材とを配合してなるセメント系注入材であり、所望の強度及び硬化時間に応じて、前記主材と前記硬化材との配合比率を調整可能な配合量制御システムにて制御し、前記浸透配合注入材と前記急硬配合注入材とを連続注入することを特徴とする特徴とする。
【0016】
第5の発明は、第1の発明において、前記有孔管は、一端の端部から長手方向に所定の長さ位置までは前記孔のみが設けられ、該所定の長さの位置から他端の端部までは逆止弁付き孔が設けられ、前記有孔管の前記一端が孔底側になるように、前記掘削孔を掘削しながら又は掘削した後に、前記掘削孔内に挿入されることを特徴とする。
【0017】
第6の発明の注入材の配合量制御システムは、地山に形成された掘削孔内に挿入した有孔管内に注入する主材及び硬化材の配合量を制御する注入材の制御システムであって、主材と水とを混合する第1の混合装置と、硬化材と水とを混合する第2の混合装置と、前記第1及び第2の混合装置へ水をそれぞれ供給する第1及び第2の水ポンプと、前記主材及び前記硬化材が水と混合してなる主材及び硬化材をそれぞれ掘削孔内に送給する第1及び第2の注入ポンプと、前記第1の注入ポンプを介して前記第1の混合装置から前記掘削孔まで前記主材を送給する第1の送給管と、前記第2の注入ポンプを介して前記第2の混合装置から前記掘削孔まで前記硬化材を送給する第2の送給管と、前記第1及び第2の送給管の途中に設けられ、前記主材及び前記硬化材のそれぞれの送給状況を監視する第1及び第2の計測装置と、前記主材と前記硬化材との配合比率を入力する入力部を有し、該入力部に入力される配合比率と前記第1及び第2の計測装置による計測値とに基づいて、前記第1及び第2の水ポンプ、前記第1及び第2の注入ポンプの供給量を制御する制御装置とを備えることを特徴とする。
【0018】
第7の発明の注入材の注入用有孔管は、地山に形成された掘削孔内に挿入され、外周部に設けられた孔を介して注入材を地山に浸透させる浸透注入工法に使用される有孔管であって、前記有孔管は、一端の端部から長手方向に所定の長さ位置までは孔が設けられ、該所定の長さの位置から他端の端部までは逆止弁付き孔が設けられることを特徴とする。
【0019】
第8の発明の注入材の注入用パッカーは、地山に形成された掘削孔内に挿入され、外周部に設けられた孔を介して注入材を地山に浸透させる浸透注入工法に使用されるパッカーであって、主材を送給する主材用管と、硬化材を送給する硬化材用管と、前記主材用管及び前記硬化材用管の外周側に配設され、作動流体圧により膨縮可能な袋状の膨張体と、先端を切り落とした中空の円錐形状を有し、拡開側の端部が該膨張体の一端に接続され、狭閉側の端部が前記主材用管及び前記硬化材用管の端部を囲うように配設される先端カバーとを備えることを特徴とする。
【0020】
第9の発明は、第8の発明において、前記先端カバーは、ゴム系の弾性体からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明による注入材の浸透注入工法によれば、パッカーよりも孔底側の有孔管内に硬化時間が短い急硬配合注入材を圧入した後に、直ちにパッカーを移動することができるため、注入材の注入作業時間が短くなる。また、浸透配合注入材を圧入した後に、連続して急硬配合注入材を有孔管内に圧入することができるために、配管の盛替え等の作業が不要になり、施工能率が大幅に向上する。
【0022】
注入材の注入用パッカーにて地山へ注入される直前の有孔管内で主材と硬化材とを混合するために、硬化時間の短い注入材を使用することができる。また、注入用パッカーの先端カバーが弾性体からなることにより、注入材が先端カバーの内側にて硬化しても、再度、注入材を注入すると先端カバーの先端部が拡開し、硬化した注入材を吐出することができる。
【0023】
また、浸透配合注入材を圧入する工程と、急硬配合注入材を圧入する工程と、パッカーを移動する工程とからなる一連のステップにおいては、注入材注入用のパッカーを使用することにより硬化時間及び硬化強度の影響を受けにくいために、注入ステップ長及び注入回数を地山の状況に応じて適宜変更することができる。
【0024】
そして、主材と硬化材との配合比率を調整する配合量制御システムは、主材及び硬化材の注入量を計測する計測装置の計測結果を踏まえて調整されるために、精度良く主材と硬化材との配合比率を保つことができる。また、主材と硬化材との配合比率を入力部に入力するだけで主材及び硬化材の注入ポンプの送給量が瞬時に変更されるために、浸透配合注入材を注入した後に、連続して急硬配合注入材を注入することができる。さらに、地山条件が急に変化した場合においても瞬時に、かつ高精度に配合量を変更することができ、効果的な注入ができる。
【0025】
注入用有孔管は、一端の端部から長手方向の所定の長さ位置までは孔のみが、所定の長さの位置から他端の端部までは逆止弁付き孔が設けられており、すべての孔に逆止弁を設ける場合よりも材料費及び加工費が安価になり、コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る注入材の配合量制御システム、注入用有孔管及び注入用パッカー、並びに注入材の浸透注入工法の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、発明の理解の便宜上、本実施形態においては、トンネル掘削時の切羽から切羽前方までの地山を改良する方法について説明するが、本発明の適用対象はトンネル掘削工事に限定されるものではなく、地山を改良する工事一般に広く適用が可能である。
【0027】
図1は、本実施形態に係る注入材の注入状況を示す図である。図1に示すように、トンネルの切羽面の外周に沿って注入材を注入するための掘削孔10を地山12に向かって斜め上向きにドリルジャンボ20等の削孔機により掘削するとともに掘削孔10内に注入用有孔管14を挿入する。そして、注入用有孔管14内に注入用パッカー16を設置し、この注入用パッカー16と掘削孔10の孔底18との間に注入材を注入して地山12を改良する。
【0028】
以下に、本実施形態に係る注入材の浸透注入工法の工程を示す。
【0029】
図2は、本実施形態に係る注入用有孔管を示す図である。図2に示すように、注入用有孔管14は一端の端部から長手方向に所定の長さ位置までは孔22が設けられ、この所定の長さの位置から他端の端部までは逆止弁付き孔24が設けられる。この逆止弁付き孔24の逆止弁は、注入用有孔管14の内部から所定の圧力がかかると弁体が注入用有孔管14の外方に移動して孔を開放するが、地山側からの圧力に対しては、弁体は孔に密着して孔を開放しないように構成されている。
【0030】
図3は、本実施形態に係る掘削孔内に注入用有孔管を挿入した状態を示す図である。図3に示すように、地山12に形成された掘削孔10内に所定の深さまで注入用有孔管14を挿入する。そして、注入用有孔管14の一端が孔底18側になるように掘削孔10内に挿入し、注入用有孔管14と掘削孔10との隙間の口元部分に注入材の流出を防ぐためのコーキング26を行う。
【0031】
図4は、注入用有孔管内に注入用パッカーを設置した状態を示し、図5は、この注入用パッカーの構成を示す図である。図4に示すように、注入用パッカー16を注入用有孔管14内に挿入する。注入用パッカー16は、図5に示すように、主材を送給する主材用管27と、硬化材を送給する硬化材用管28と、主材用管27及び硬化材用管28の外周側に配設され、作動流体圧により膨縮可能な袋状の膨張体30と、先端を切り落とした中空の円錐形状を有し、拡開側の端部が該膨張体30の一端に接続され、狭閉側の端部が主材用管27及び硬化材用管28の端部を囲うように配設される先端カバー32とを備える。この先端カバー32の内側にて主材と硬化材とを混合する。先端カバー32の材質はゴム等の弾性体であり、注入材が先端カバー32の内側に残置して硬化しても、再度、注入材を注入すると先端カバー32が拡開し、硬化した注入材と新しい注入材とが吐出される。
【0032】
注入用パッカー16は、膨張体30内に窒素又は水等の流体を圧入して膨張させ、膨張体30部分が注入用有孔管14の逆止弁付き孔24のうち最も孔底18側の逆止弁付き孔24を塞ぐように設置する。
【0033】
図6は、本実施形態の浸透注入工法における1ステップ目において浸透配合注入材を地山に注入した状態を示す図である。図6に示すように、浸透配合注入材34は、注入用パッカー16よりも孔底18側の注入用有孔管14内に圧入され、孔22を介して地山12に注入されるが、その際に、逆止弁付き孔24の逆止弁によって注入用有孔管14と地山12との間に入り込んだ浸透配合注入材34aが注入用有孔管14の内部へ流入することが防止される。浸透配合注入材34は、超微粒子セメントである主材と硬化材とを配合してなるセメント系注入材であり、所望の強度及び硬化時間に応じて、主材と硬化材との配合比率を調整可能な配合量制御システム36(後述する)にて制御され、注入される。浸透配合注入材34の硬化時間は、例えば、15〜30分程度に設定される。なお、本実施形態においては、浸透配合注入材34の硬化時間を15〜30分としたが、これに限定されるものではなく、地山12の状況に応じて適宜変更することができる。
【0034】
そして、浸透配合注入材34が所定量注入されると注入用有孔管14の外周の地山12に筒状の改良体64が形成される。
【0035】
図7は、本実施形態で用いられる注入材の配合量制御システムを示す概略図である。図7に示すように、主材と硬化材とを配合する配合量制御システム36は、主材38と混練水60(後述する)とを混合する第1の混合装置としてのミキサー42と、硬化材39と水40とを混合する第2の混合装置としての攪拌器43と、ミキサー42から送給される主材38の濃度を調整するために水40を供給する第1の水ポンプとしての主材濃度調整用水ポンプ44と、水40を攪拌器43から送給される硬化材39の濃度を調整するために水40を供給する第2の水ポンプとしての硬化材濃度調整用水ポンプ45と、主材38が水40と混合してなる主材を掘削孔10内に送給する第1の注入用ポンプとしての主材用注入ポンプ46と、硬化材39が水40と混合してなる硬化材を掘削孔10内に送給する第2の注入用ポンプとしての硬化材用送給ポンプ47及び硬化材用注入ポンプ48と、主材用注入ポンプ46を介してミキサー42から注入用パッカー16の主材用管27まで主材を送給する第1の送給管としての主材用送給管50と、硬化材用送給ポンプ47及び硬化材用注入ポンプ48を介して攪拌器43から注入用パッカー16の硬化材用管28まで硬化材を送給する第2の送給管としての硬化材用送給管51と、主材用送給管50の途中に設けられ、主材の注入量及び注入圧を計測する第1の計測装置としての主材用流量計52及び主材用圧力計53と、硬化材用送給管51の途中に設けられ、硬化材の注入量及び注入圧を計測する第2の計測装置としての硬化材用流量計54及び硬化材用圧力計55と、硬化材用送給ポンプ47から硬化材用注入ポンプ48までの送給量を計測するポンプ用流量計56と、主材と硬化材との配合比率を人間が入力する入力部57を有し、この入力部57に入力される配合比率と主材用流量計52、主材用圧力計53、硬化材用流量計54、硬化材用圧力計55、ポンプ用流量計56による計測値とに基づいて、主材濃度調整用水ポンプ44、硬化材濃度調整用水ポンプ45、主材用注入ポンプ46、硬化材用送給ポンプ47、硬化材用注入ポンプ48のそれぞれの供給量を制御する制御装置58とを備える。また、超微粒子セメントの凝集を防ぐために、分散材と水とを混合する混練水60と、この混練水60をミキサー42に供給する混練水供給ポンプ62とを備え、主材と硬化材との配合比率に基づいて制御装置58が混練水供給ポンプ62の供給量を制御する。なお、硬化時間を調整するために、硬化材用送給ポンプ47から送給される硬化材に混和材(図示せず)を添加しても良い。
浸透配合注入材34を地山12に注入する際は、所望の強度及び硬化時間を満たす主材と硬化材との配合比率を入力部57に入力する。入力部57に入力された配合比率となるように制御装置58が主材用注入ポンプ46、硬化材用注入ポンプ48を制御する。
【0036】
浸透配合注入材34の注入中は、主材用流量計52、主材用圧力計53、硬化材用流量計54、硬化材用圧力計55にて注入材及び硬化材の注入量及び注入圧力が常時計測され、これらの計測結果に基づいて、制御装置58が主材用注入ポンプ46、硬化材用注入ポンプ48を制御し、所定の配合比率となるように調整する。また、主材濃度調整用水ポンプ44、硬化材濃度調整用水ポンプ45にて水の送水量、ポンプ用流量計56にて硬化材の送給量が常時計測され、これらの計測結果に基づいて、制御装置58が主材濃度調整用水ポンプ44、硬化材濃度調整用水ポンプ45、硬化材用送給ポンプ47を制御し、浸透配合注入材34に適した主材、硬化材の濃度となるように調整する。主材用注入ポンプ46、硬化材用注入ポンプ48、主材濃度調整用水ポンプ44、硬化材濃度調整用水ポンプ45は、流量の精度確保のために、例えば、インバータ制御、機械式回転数制御等の機能を有するポンプを使用する。
【0037】
図8は、本実施形態の浸透注入工法における1ステップ目において急硬配合注入材を注入用有孔管内に充填した状態を示す図である。図8に示すように、浸透配合注入材34を注入した後に、浸透配合注入材34より硬化時間が短い急硬配合注入材66を注入用パッカー16よりも孔底18側の注入用有孔管14内に充填する。硬化時間の短い急硬配合注入材66を使用する場合においては、より高い圧力で急硬配合注入材66を注入しなければならず、主材用注入ポンプ46、硬化材用注入ポンプ48の注入量、注入圧等の設定変更が必要である。急硬配合注入材66の硬化時間は、例えば、30秒〜1分程度に設定される。なお、本実施形態においては、急硬配合注入材66の硬化時間を30秒〜1分としたが、これに限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0038】
急硬配合注入材66の配合比率を配合量制御システム36の入力部57に入力すると、直ちに制御装置58が主材用注入ポンプ46、硬化材用注入ポンプ48を制御し、急硬配合注入材66の配合比率となるように調整する。さらに、制御装置58が自動的に主材濃度調整用水ポンプ44、硬化材濃度調整用水ポンプ45、硬化材用送給ポンプ47をそれぞれ制御し、急硬配合注入材66に適した主材、硬化材の濃度となるように調整する。したがって、浸透配合注入材34を注入した後に連続して急硬配合注入材66を注入することができる。
【0039】
急硬配合注入材66の注入中は、上述したように、注入材及び硬化材の注入量及び注入圧力が常時計測され、計測結果に基づいて、制御装置58が主材用注入ポンプ46、硬化材用注入ポンプ48を制御し、所定の配合比率となるように調整するとともに、急硬配合注入材66に適した主材、硬化材の濃度となるように調整する。
【0040】
なお、本実施形態においては、浸透配合注入材34、急硬配合注入材66を注入する際に、それぞれ浸透配合注入材34、急硬配合注入材66の配合比率を入力部57に入力する方法について示したが、これに限定されるものではなく、浸透配合注入材34を注入する際に、浸透配合注入材34の配合比率及び注入量と急硬配合注入材66の配合比率及び注入量とを入力部57に予め入力することにより、浸透配合注入材34の注入から急硬配合注入材66の注入終了まで全く入力部57を操作すること無く、つまり、所定量の浸透配合注入材34を注入すると、自動的に制御装置58が主材用注入ポンプ46、硬化材用注入ポンプ48を制御し、急硬配合注入材66の配合比率となるように調整し、直ちに急硬配合注入材66を連続して所定量注入することも可能である。
【0041】
この配合量制御システム36は、主材及び硬化材の注入量及び注入圧を計測する計測装置の計測結果を踏まえて調整されるために、精度良く主材と硬化材との配合比率を保つことができる。また、主材と硬化材との配合比率を入力部57に入力するだけで主材及び硬化材の送給量が瞬時に変更されるために、浸透配合注入材34を注入した後に、連続して急硬配合注入材66を注入することができる。さらに、地山12条件が急に変化した場合においても瞬時に、かつ高精度に配合量を変更することができ、効果的な注入ができる。
【0042】
図9は、本実施形態の浸透注入工法における1ステップ目において注入用パッカーを孔口側に移動した状態を示す図である。図9に示すように、急硬配合注入材66が硬化した後に、直ちに注入用パッカー16の膨張体30の圧力を解放し、孔口側に移動して、所定の位置に設置する。孔口側への移動距離は、例えば、0.5〜1m程度に設定される。なお、本実施形態においては、注入用パッカー16の移動距離を0.5〜1mとしたが、これに限定されるものではなく、地山12の状況に応じて適宜変更することができる。
【0043】
浸透配合注入材34を圧入する工程と、急硬配合注入材66を圧入する工程と、注入用パッカー16を移動する工程からなる一連のステップを改良体64が孔口まで到達するまで繰り返し行う。
【0044】
図10は、本実施形態の浸透注入工法における2ステップ目において浸透配合注入材を地山に注入した状態を示す図である。図10に示すように、浸透配合注入材34は、注入用パッカー16と1ステップ目にて注入用有孔管14内に充填されて硬化した急硬配合注入材66との間の注入用有孔管14内に圧入され、逆止弁付き孔24を開放し、1ステップ目にて注入用有孔管14と地山12との間に充填され、まだ所定の強度に達していない浸透配合注入材34aを破壊しながら地山12に注入される。そして、浸透配合注入材34が所定量注入されると注入用有孔管14の外周の地山12に筒状の改良体64が形成される。
【0045】
図11は、本実施形態の浸透注入工法における2ステップ目において急硬配合注入材を注入用有孔管内に充填した状態を示す図である。図11に示すように、2ステップ目の浸透配合注入材34を注入した後に、急硬配合注入材66を注入用パッカー16と1ステップ目にて注入用有孔管14内に充填されて硬化した急硬配合注入材66との間の注入用有孔管14内に充填する。
【0046】
図12は、本実施形態に係る掘削孔の周囲を改良した状態を示す図である。図12に示すように、一連のステップを繰り返すと、掘削孔10の外周に筒状の改良体64が形成され、この改良体64が孔口まで到達すると浸透注入作業を終了する。
【0047】
このような改良体64は、例えば、トンネルの切羽に形成する際には、切羽面の外周に沿って地山12内に改良体64が相互に重なるようにして、複数が隣接設置される。
【0048】
なお、本実施形態では、浸透配合注入材34を圧入する工程と、急硬配合注入材66を圧入する工程と、注入用パッカー16を移動する工程からなる一連のステップを2回繰り返す方法について示したが、これに限定されるものではなく、地山12の状況に応じて適宜ステップ数は変更することができる。
【0049】
本浸透注入工法によれば、注入用パッカー16よりも孔底18側の注入用有孔管14内に硬化時間が短い急硬配合注入材66を圧入することにより、その注入後、直ちに注入用パッカー16を移動できるので、注入材の注入時間を短くすることができる。また、注入用パッカー16よりも孔底18側の注入用有孔管14内に浸透配合注入材34を圧入した後に、連続して急硬配合注入材66を注入用有孔管14内に圧入するために、配管の盛替え等の段取りが不要になり、施工能率を大幅に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態に係る注入材の注入状況を示す図である。
【図2】本実施形態に係る注入用有孔管を示す図である。
【図3】本実施形態に係る掘削孔内に注入用有孔管を挿入した状態を示す図である。
【図4】注入用有孔管内に注入用パッカーを設置した状態を示す図である。
【図5】注入用パッカーの構成を示す図である。
【図6】本実施形態の浸透注入工法における1ステップ目において浸透配合注入材を地山に注入した状態を示す図である。
【図7】本実施形態で用いられる注入材の配合量制御システムを示す概略図である。
【図8】本実施形態の浸透注入工法における1ステップ目において急硬配合注入材を注入用有孔管内に充填した状態を示す図である。
【図9】本実施形態の浸透注入工法における1ステップ目において注入用パッカーを孔口側に移動した状態を示す図である。
【図10】本実施形態の浸透注入工法における2ステップ目において浸透配合注入材を地山に注入した状態を示す図である。
【図11】本実施形態の浸透注入工法における2ステップ目において急硬配合注入材を注入用有孔管内に充填した状態を示す図である。
【図12】本実施形態に係る掘削孔の周囲を改良した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
10 掘削孔 12 地山
14 注入用有孔管 16 注入用パッカー
18 孔底 20 ドリルジャンボ
22 孔 24 逆止弁付き孔
26 コーキング 27 主材用管
28 硬化材用管 30 膨張体
32 先端カバー 34 浸透配合注入材
36 配合量制御システム 38 主材
39 硬化材 40 水
42 ミキサー 43 攪拌器
44 主材濃度調整用水ポンプ 45 硬化材濃度調整用水ポンプ
46 主材用注入ポンプ 47 硬化材用送給ポンプ
48 硬化材用注入ポンプ 50 主材用送給管
51 硬化材用送給管 52 主材用流量計
53 主材用圧力計 54 硬化材用流量計
55 硬化材用圧力計 56 ポンプ用流量計
57 入力部 58 制御装置
60 混練水 62 混練水供給ポンプ
64 改良体 66 急硬配合注入材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山に形成された掘削孔内に所定の深さまで挿入した有孔管の内部にパッカーを設置し、該パッカーよりも孔底側の前記有孔管内に注入材を圧入して前記有孔管の孔を介して地山内に浸透させる浸透注入工法であって、
前記掘削孔内に前記有孔管を挿入する工程と、
前記パッカーを前記有孔管内に挿入して所定の位置に設置する工程と、
前記パッカーよりも孔底側の有孔管内に浸透配合注入材を圧入して前記孔を介して地山に注入する工程と、
前記浸透配合注入材より硬化時間が短い急硬配合注入材を前記パッカーよりも孔底側の前記有孔管内に充填する工程と、
前記急硬配合注入材の硬化後に、直ちにパッカーを孔口側に移動する工程とを有することを特徴とする注入材の浸透注入工法。
【請求項2】
前記浸透配合注入材を注入する工程と、前記急硬配合注入材を注入する工程と、前記パッカーを移動する工程からなる一連のステップを繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の注入材の浸透注入工法。
【請求項3】
前記パッカーは、主材を送給する主材用管と、
硬化材を送給する硬化材用管と、
前記主材用管及び前記硬化材用管の外周側に配設され、作動流体圧により膨縮可能な袋状の膨張体と、
先端を切り落とした中空の円錐形状を有し、拡開側の端部が該膨張体の一端に接続され、狭閉側の端部が前記主材用管及び前記硬化材用管の端部を囲うように配設される先端カバーとを備え、該先端カバーの内側にて前記主材と前記硬化材とを混合することを特徴とする請求項1又は2に記載の注入材の浸透注入工法。
【請求項4】
前記浸透配合注入材及び前記急硬配合注入材は、セメント系材料の主材と硬化材とを配合してなるセメント系注入材であり、所望の強度及び硬化時間に応じて、前記主材と前記硬化材との配合比率を調整可能な配合量制御システムにて制御し、前記浸透配合注入材と前記急硬配合注入材とを連続注入することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の注入材の浸透注入工法。
【請求項5】
前記有孔管は、一端の端部から長手方向に所定の長さ位置までは前記孔のみが設けられ、該所定の長さの位置から他端の端部までは逆止弁付き孔が設けられ、前記有孔管の前記一端が孔底側になるように、前記掘削孔を掘削しながら又は掘削した後に、前記掘削孔内に挿入されることを特徴とする請求項1に記載の注入材の浸透注入工法。
【請求項6】
地山に形成された掘削孔内に挿入した有孔管内に注入する主材及び硬化材の配合量を制御する注入材の制御システムであって、
主材と水とを混合する第1の混合装置と、
硬化材と水とを混合する第2の混合装置と、
前記第1及び第2の混合装置へ水をそれぞれ供給する第1及び第2の水ポンプと、
前記主材及び前記硬化材が水と混合してなる主材及び硬化材をそれぞれ掘削孔内に送給する第1及び第2の注入ポンプと、
前記第1の注入ポンプを介して前記第1の混合装置から前記掘削孔まで前記主材を送給する第1の送給管と、
前記第2の注入ポンプを介して前記第2の混合装置から前記掘削孔まで前記硬化材を送給する第2の送給管と、
前記第1及び第2の送給管の途中に設けられ、前記主材及び前記硬化材のそれぞれの送給状況を監視する第1及び第2の計測装置と、
前記主材と前記硬化材との配合比率を入力する入力部を有し、該入力部に入力される配合比率と前記第1及び第2の計測装置による計測値とに基づいて、前記第1及び第2の水ポンプ、前記第1及び第2の注入ポンプの供給量を制御する制御装置とを備えることを特徴とする注入材の配合量制御システム。
【請求項7】
地山に形成された掘削孔内に挿入され、外周部に設けられた孔を介して注入材を地山に浸透させる浸透注入工法に使用される有孔管であって、
前記有孔管は、一端の端部から長手方向に所定の長さ位置までは孔が設けられ、該所定の長さの位置から他端の端部までは逆止弁付き孔が設けられることを特徴とする注入材の注入用有孔管。
【請求項8】
地山に形成された掘削孔内に挿入され、外周部に設けられた孔を介して注入材を地山に浸透させる浸透注入工法に使用されるパッカーであって、
主材を送給する主材用管と、
硬化材を送給する硬化材用管と、
前記主材用管及び前記硬化材用管の外周側に配設され、作動流体圧により膨縮可能な袋状の膨張体と、
先端を切り落とした中空の円錐形状を有し、拡開側の端部が該膨張体の一端に接続され、狭閉側の端部が前記主材用管及び前記硬化材用管の端部を囲うように配設される先端カバーとを備えることを特徴とする注入材の注入用パッカー。
【請求項9】
前記先端カバーは、ゴム系の弾性体からなることを特徴とする請求項8に記載の注入材の注入用パッカー。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−241786(P2006−241786A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57471(P2005−57471)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【出願人】(000158910)株式会社亀山 (5)
【Fターム(参考)】