説明

注出具及びそれを備える収納容器

【課題】注出口から溢れ出た内容物を容易に除去することができるとともに内容物を円滑に注出可能な注出具を提供する。
【解決手段】蓋部20の雄ネジ部21が注出部30の内周面に螺合し、リング部22の外周面に突設した凸部24が注出部30の内周面に設けた凹部34と嵌合し、注出部30の下端から下方に延びて径方向に屈曲可能な突出片36の内面をリング部22の下端で押圧して先端を外側に向けて屈曲させ、蓋部20の開封時に切断部23を切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体物を収納する収納容器の注出口を形成する注出具に関する。また、本発明は、注出口を有して流体物を収納する収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の収納容器の注出具が特許文献1、特許文献2に開示される。この注出具はフィルム状の積層体の周縁を熱接着して袋状に形成される収納容器に設けられ、注出口を形成する筒状の注出部と注出部の上面を開閉する冠状の蓋部とを備えている。注出部の外周面及び蓋部の内周面には互いに螺合するネジ部が設けられ、注出部の下方は積層体に挟持されて熱接着される。
【0003】
注出部のネジ部の下方には環状の凹部が形成されている。蓋部のネジ部の下方には接続部を介して環状のリング部が設けられる。接続部は周方向に所定間隔で設けられ、ネジ部とリング部とを連結する。リング部の内周面には凹部に係合する凸部が突設される。
【0004】
蓋部を注出部に螺着すると、注出部の上面が塞がれるとともに凸部が凹部に脱離不能に係止される。これにより、蓋部を螺脱すると接続部が切断され、リング部が凹部に係止された状態で収納容器が開封される。また、開封後に蓋部を再度螺合することによって注出口が塞がれ、内容物が残った状態で収納容器を携行することができる。
【0005】
また、収納容器に内容物を充填して蓋部を螺合する際に、注出口から内容物が溢れ出て蓋部の内周面と注出部の外周面との間から流下する場合がある。このため、蓋部の螺着後に収納容器が高圧のシャワーにより洗浄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−022572号公報
【特許文献2】特開2008−143592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記注出具によると、冠状の蓋部の周壁が注出部の外周面を覆うため、蓋部の内周面と注出部の外周面との間に溢れ出た内容物を十分に除去できず、残渣が残る問題があった。また、積層体からなる収納容器は注出部近傍の内面に付着した内容物の表面張力により、対向する積層体が接して注出部への流路が閉塞する。これにより、内容物が注出部から注出し難い問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑み、注出口から溢れ出た内容物を容易に除去することができるとともに内容物を円滑に注出可能な注出具及び収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、上面に注出口を開口した筒状の注出部と前記注出部の内周に螺合する雄ネジ部を有して前記注出部の上面を塞ぐ蓋部とを備えた注出具であって、前記蓋部が前記雄ネジ部の下方に接続部を介して連結されるとともに外周面に凸部を突設した環状のリング部を有し、前記注出部が内周面に凹設して前記凸部に嵌合する環状の凹部と、下端から下方に延びて径方向に屈曲可能な突出片と、を有し、前記リング部の下端によって前記突出片の内面を押圧して前記突出片が先端を外側に向けて屈曲し、前記蓋部の開封時に前記凸部と前記凹部の係合により前記接続部が切断されることを特徴としている。
【0010】
この構成によると、開封時に蓋部を螺脱すると、リング部と蓋部を連接する接続部が切断される。このとき、リング部は凸部が注出部の内周面に設けられた凹部に嵌合して脱離不能な状態で注出部の内周面に係止される。係止されたリング部の下端は注出部の下端から下方に延びて径方向に屈曲可能な突出片の内面を押圧して突出片を屈曲させ、突出片の先端を外側に向けた状態で保持する。
【0011】
また、本発明の注出具は、上記構成において、前記突出片の外面に鋭形に突出する楔部が形成されていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の注出具は、上記構成において、前記凸部の下端の外周部に傾斜面が形成されていることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の収納容器は、上記構成の注出具を備え、フィルム状の積層体により袋状に形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、蓋部のネジ部が注出部の内周面に螺合し、リング部の外周面に突設した凸部が注出部の内周面に設けた凹部と嵌合して蓋部の開封時に切断部が切断される。これにより、注出部の外周面が蓋部により覆われないため、注出口から溢れ出て注出部の外周面に付着した内容物を容易に除去することができる。従って、注出具に残る残渣を防止することができる。また、係止されたリング部の下端が注出部の下端から下方に延びて径方向に屈曲可能な突出片の内面を押圧して突出片を屈曲させ、突出片の先端を外側に向けた状態で保持するため、突出片が収納容器の内面を支持して注出部への内容物の流路を確保する。従って、内容物を注出部から円滑に注出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る注出具を備える収納容器の斜視図
【図2】本発明の実施形態に係る注出具の開封前の状態を示す縦断面図
【図3】本発明の実施形態に係る注出具において蓋部を螺着する前の注出部の縦断面図
【図4】本発明の実施形態に係る注出具の開封後の状態を示す縦断面図
【図5】本発明の実施形態に係る注出具を備える収納容器の層構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は注出具10を備える収納容器40の斜視図である。
【0017】
収納容器40は少なくとも基材層61とバリア層62と熱接着性樹脂層63とを含むフィルム状の積層体60(図5参照)で構成された収納容器40により形成される。収納容器40は最内層の熱接着性樹脂層63を対向させて所定幅で縁部の熱接着部41を熱接着することにより、内容物を収納する収納空間48が形成される。
【0018】
収納容器40の上部には開口部43が上方に突出して設けられ、開口部43には樹脂成型された注出具10が配されている。注出具10は注出部30と蓋部20とで構成され、開口部43に挿入される注出部30の外周面と開口部43の内周面とは接着部44で接着されている。このとき、対向する熱接着性樹脂層63に面して後述する突出片36が配されている。
【0019】
図2は注出具10の縦断面図を示している。注出具10は上面に注出口30aが開口する筒状の注出部30と注出部30の上面を塞ぐ蓋部20とを備えている。蓋部20の外周面には雄ネジ部21が設けられ、雄ネジ部21は注出部30の内周面に設けられた雌ネジ部31と螺合する。
【0020】
蓋部20には雄ネジ部21の下方に接続部23を介して環状のリング部22が連結されている。接続部23は周方向に所定間隔で設けられ、雄ネジ部21とリング部22とを連結する。接続部23はリング部22を固定した状態で蓋部23を周方向に回転させることにより容易に切断される。
【0021】
リング部22の外周面には凸部24が周方向に所定間隔で突設されている。また、凸部24の下端の外周部には傾斜面24aが形成されている。なお、傾斜面24aは曲面に形成してもよく平面に形成してもよい。
【0022】
注出部30の内周面において雌ネジ部31の下方には凸部24が嵌合する環状の凹部34が凹設されている。注出部30の下端には下方に延びる複数の突出片36が周方向に対向して設けられている。突出片36は屈曲部35を介して径方向に屈曲可能に連接している。これにより、突出片36の内面がリング部22の下端により押圧されて先端が外側に向いた状態で保持されている。また、突出片36の外面に鋭形に突出する楔部36aが設けられる。これにより、楔部36aが収納容器40の内面に食い込み、突出片36の屈曲状態が保持される。
【0023】
蓋部20はリング部22が連結された状態で注出部30の内側に螺合方向に回転させながら挿入して注出部30に螺着される。蓋部20の凸部24が注出部30の内周面の雌ネジ部31に当接すると、凸部24がリング部22側に屈曲しながら挿入される。このとき、凸部24の下端の外周部に形成された傾斜面24aにより、蓋部20が注出部30内に円滑に挿入される。
【0024】
図3に示すように、蓋部20を挿入する前の注出部30は下端に設けられた突出片36の先端が下方を向いているが、蓋部20の挿入により、突出片36の内面がリング部22の下端に押圧されて対向する突出片36は先端を外側に向けながら開いていく。
【0025】
リング部22の凸部24が注出部30の凹部34に嵌合したときに蓋部20が注出部30の内部に固定され、突出片36は先端が外側に向いた状態で保持される。一旦、凹部34に嵌合した凸部24は蓋部20の挿脱方向において固定され、接続部23を切断しなければ蓋部20を注出部30から螺脱して注出部30を開封することはできない。
【0026】
凸部24が凹部34に嵌合した蓋部20を螺脱方向に力を入れて回すと、雄ネジ部21が雌ネジ部31に沿って回転して蓋部20が注出部30から螺脱する。一方、リング部22は凸部24が凹部34と係合して注出部30の内周面に固定されており、蓋部20を螺脱方向に回してもリング部22は螺脱しない。
【0027】
このため、図4に示すように、蓋部20の回転により、蓋部20とリング部22が引き離されて接続部23が順次切断される。これにより、リング部22と切り離された蓋部20を螺脱方向に回し続けることにより蓋部20が注出部30から外れて注出部30が開封される。このとき、リング部22は凸部24が注出部10の内周面に設けられた凹部34に嵌合して脱離不能な状態で注出部30の内周面に残る。突出片36は残ったリング部22に押圧されて先端が外側に向いた状態で保持される。また、開封後に蓋部20を再度螺合することによって注出口30aが塞がれ、内容物が残った状態で収納容器40を携行することができる。
【0028】
図5は、収納容器40を構成する積層体60の層構成を示す断面図である。収納容器40を構成する積層体60は、少なくとも最外層である基材層61と最内層である熱接着性樹脂層63と中間層であるバリア層62を順次積層して構成される。各層は例えばドライラミネート接着剤により接着している。
【0029】
基材層61は、収納容器40が物理的及び化学的に過酷な条件におかれる場合、収納容器20に高い密封性、耐突き刺し(耐ピンホール)性、耐熱性、耐光性、品質保全性、作業性、衛生性等を付与するものである。
【0030】
基材層61としては、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエンスチレン共重合体(ABS系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ジエン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロース等の公知の樹脂フィルムないしシートを任意に選択して使用することができる。
【0031】
熱接着性樹脂層63は、熱によって溶融して対向する積層体60を相互に融着し得るものであればよく、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒(シングルサイト触媒)を使用して重合したエチレン・α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂等から選ばれた1種ないし2種以上を使用することができる。好ましいものとしては、直鎖状低密度ポリエチレンを挙げることができる。熱接着性樹脂層63の厚さとしては、ヒートシール性等を考慮すると、10μm〜100μm程度、特に15μm〜50μm程度であることが好ましい。
【0032】
バリア層62はアルミニウム、ニッケルなどの金属、酸化珪素、アルミナ等を蒸着したフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートの耐熱性樹脂を使用することができる。また、バリア層62を省略して軟質性の積層体60とすることもできる。
【0033】
ドライラミネート接着剤は、積層体60を構成する基材層61、バリア層62、熱接着性樹脂層63を強固に密着させて層間剥離(デラミネーション)の発生を防止するものである。ドライラミネート接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマー、或いは、これらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤等を使用することができる。
【0034】
本実施形態によると、蓋部20の雄ネジ部21が注出部30の内周面に螺合し、リング部22の外周面に突設した凸部24が注出部30の内周面に設けた凹部34と嵌合して蓋部20の開封時に切断部23が切断される。これにより、注出部30の外周面が蓋部20により覆われないため、注出口30aから溢れ出て注出部30の外周面に付着した内容物を容易に除去することができる。従って、注出具10に残る残渣を防止することができる。
【0035】
また、係止されたリング部22の下端が注出部30の下端から下方に延びて径方向に屈曲可能な突出片36の内面を押圧して突出片36を屈曲させ、突出片36の先端を外側に向けた状態で保持する。このため、突出片36が収納容器40の内面を支持して注出部30への内容物の流路を確保する。従って、内容物を注出部30から円滑に注出することができる。
【0036】
また、突出片36の外面に鋭形に突出する楔部36aが形成されており、先端が外側に向けて突出片36が屈曲したときに楔部36aが収納容器40の内面に食い込む。これにより、突出片36の屈曲状態が保持される。
【0037】
また、凸部24の下端の外周部には傾斜面24aが形成されており、蓋部20を円滑に挿入することができる。
【0038】
なお、本発明は突出片36を周方向に2箇所対向して設ける場合に限定されない。例えば、注出部30の周方向に放射線状に複数設けてもよい。これにより、突出片36により収納容器40がより安定的に支持される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、内容物として液状、ゲル状等の食品や日用品、医薬製剤を包装する収納容器に取り付けられる注出具に利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 注出具
20 蓋部
21 雄ネジ部
22 リング部
23 接続部
24 凸部
24a 曲面
30 注出部
31 雌ネジ部
34 凹部
35 屈曲部
36 突出片
36a 楔部
40 収納容器
41 熱接着部
43 開口部
44 接着部
60 積層体
61 基材層
62 バリア層
63 熱接着性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に注出口を開口した筒状の注出部と前記注出部の内周に螺合する雄ネジ部を有して前記注出部の上面を塞ぐ蓋部とを備えた注出具であって、前記蓋部が前記雄ネジ部の下方に接続部を介して連結されるとともに外周面に凸部を突設した環状のリング部を有し、前記注出部が内周面に凹設して前記凸部に嵌合する環状の凹部と、下端から下方に延びて径方向に屈曲可能な突出片と、を有し、前記リング部の下端によって前記突出片の内面を押圧して前記突出片が先端を外側に向けて屈曲し、前記蓋部の開封時に前記凸部と前記凹部の係合により前記接続部が切断されることを特徴とする注出具。
【請求項2】
前記突出片の外面に鋭形に突出する楔部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の注出具。
【請求項3】
前記凸部の下端の外周部に傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の注出具。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の注出具を備え、フィルム状の積層体により袋状に形成されることを特徴とする収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−52906(P2013−52906A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192430(P2011−192430)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】