説明

注射器型調理器具。

【課題】
肉厚の厚い鶏肉、牛肉、豚肉など味や香りが浸透しにくい食材の仕込み時間の短縮を計り、油で揚げたり焼いたり火を通すと、肉の表面近くや衣にしか残らなかった香りや旨みや隠し味、スパイス風味を、従来にない方法で肉中にも留め置く注射器型調理器具を提供することである。
【解決手段】
一端側に注射筒接続部7aを備え、他端側にピストン受入部10を備えた注射筒9と、前記注射筒接続部7aに気密性を保ち接続される刃部4を設けた刃付翼3を有す刃付翼穿刺針2と、前記注射筒9におけるピストン受入部10に対して気密的に差し入れられるピストン11との組み合わせでなる注射器型調理器具1であって、前記刃付翼穿刺針2の尖端の先端近傍から穿刺針接続部7の間に少なくとも一つ以上の注射口5や刃付翼穿刺針2を設けたことを特徴とする注射器型調理器具1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉の調理時に利用する香りや味付けの調理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
鶏肉の唐揚げ、豚の角煮、焼き豚など食材の臭みを取ったり、味付け、下ごしらえ、仕込みには、醤油、味醂、調味料、酒、砂糖、ねぎ、生姜、香辛料、ハーブ、果物などが配合された液に肉を浸したり、又、一度揚げてから再度揚げる二度揚げをしたりと、時間をかけ食材に味の浸透を図っている。
【0003】
注射器と注射針を利用しても肉中にスパイスや独自に調合された旨みエキスなどを注入できるが、スパイスを注入後に肉に触れると注射針を刺した針跡からスパイスが漏れてきたりする。これは肉中に無理に注入されたスパイスが針孔だけの容積に留まることができず、液注入後の仕込み作業中に注入された肉の辺りに触れ注入液が逆流したり、肉の弾力で針孔が元に戻ろうとしてスパイスが押し出されるからである。肉中にスパイスが留まったとしても、料理終了後の肉中でスパイスが分散されず一箇所に固まりスパイスの塊を食すことになったりするのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
焼き物、揚げ物、炒め物など肉料理の種類にもよるが、仕込には時間を要するものである。食材の肉厚が厚く味が浸透しにくい部分の味付けや香り付けを、今迄にない方法で確実に肉の深部まで行う。数多くの香りやスパイスの効いた料理やエスニック料理が紹介されているが、これらの香り、スパイスや独自性をもった旨みエキスを、肉中により浸透させることにより、世界中の香辛料が入手できる日本の家庭で、今迄味わったことがない風味豊かな料理ができる調理器具の提供と、浸透時間及び仕込み時間の短縮をはかるものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る注射器型調理器具は、一端側に注射筒接続部を備え、他端側にピストン受入部を備えた注射筒と、前記注射筒接続部に気密性をもち接続される少なくとも一枚以上の刃を設けた翼を有す刃付翼穿刺針と、前記注射筒におけるピストン受け入れ部に対して気密的に差し入れられるピストンとの組み合わせでなる注射器型調理器具であって、前記刃付翼穿刺針の尖端の先端近傍から穿刺針接続部の間に少なくとも1個以上の注射口を有すことを特徴とする注射器型調理器具を提供するものである。
本発明の注射器型調理器具を利用することで、肉中にスパイスが確保され香りや旨みが肉中に留まる。揚げたり炒めたり焼くことで肉の周囲にだけしか留まらなかった香りや独自の旨みエキス、隠し味を肉中に留めることができ、より豊かな香りの肉料理となるのである。
【0006】
請求項2に係る注射器型調理器具は、請求項1に記載の注射器型調理器具であって、穿刺針接続部側の注射筒の端部近傍に滑り止めを設けたもので、肉からでる肉汁や脂肪などが注射筒と手に付着し作業時に滑ることを防ぐためのものである。
【0007】
請求項3に係る注射器型調理器具は、請求項1または2のいずれかに記載の注射器型調理器具であって、注射筒の外周を波形としたことを特徴とするもので、肉の脂肪分などが注射筒や手に付着し作業時に滑ることを防止するためのものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明を利用すれば、肉を一層おいしく料理するためのスパイスやハーブなどの香りと旨みを肉中に留めおくのでことができる。また、脂肪分の少ない部位を揚げたり、焼いたりし火を通すとパサパサになり味気がなくなるが、この部分に調味料や独自性をもった旨みエキスとなるダシの注入でこれを防げるのである。
【0009】
スパイスを肉中に留めおくことで香りの浸透時間も早くなり仕込み時間の短縮ができる。
【0010】
本発明の注射器型調理器具は刃付翼幅の切断面積内にスパイスが分散され、肉中に香りや独自の旨み味の拡散が可能となり一層肉料理を際立てることになるのである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
図1の注射器型調理器具1について説明する。注射筒9は一端側に注射筒接続部7aを備え、他端側にピストン受入口10を備えてある。
【0012】
刃部4を設けた刃付翼3を有す刃付翼穿刺針2を、穿刺針接続部7に設けた接続部雌ネジ8にて、注射筒9の注射筒接続部7aに取付ける。刃付翼3に設けた刃部4は内側方向に向いており指を傷つけたりすることは少ない。
【0013】
刃付翼3を刃付翼穿刺針2上に、3枚以上設けてもよい。刃部4上に交差する刃部4を設けてもよい。
【0014】
穿刺針尖端14近傍の刃付翼穿刺針2の断面形状は楕円形で、注射口5に近付くほどに円形状とする形状でもよい。
【0015】
注射筒9のピストン受入口10に気密的に差入れられるピストンヘッド12を有したピストン11を挿入する。ピストン11の挿入で注射筒9内に充填された、細かく粉砕され水や調味料液などで溶いたスパイス、独自の旨みエキス、又はペースト状のスパイスがピストンの押圧によって刃付翼穿刺針2内に設けた中空孔6を通り注射口5へと送り出される構造である。
【0016】
使用方法は、刃付翼穿刺針2を取付けた注射器型調理器具1の、スパイスが充填された注射筒9を握り、まな板の上に置いた肉に突き刺す。刃付翼穿刺針2の尖端がまな板、もしくは調理中の肉の骨に当たった位置でピストン11を押すと、スパイスは注射口5より肉中に注出される。肉に押付けることで刃付翼穿刺針2は肉を切り裂き、刃付翼の2枚の幅の分の面積の刺し傷ができ、スパイスの注出後に刃付翼穿刺針2を抜き取ることで、前記刺し傷の面積にスパイスが拡散され味付けや香り付けが行われるのである。
【0017】
注射筒9の外周に、目盛りを設けるとスパイスの注出量が一定し、味が均一化されて便利である。
【0018】
図2は注射筒接続部7aに接続される刃付翼穿刺針2の図で、一部は断面図である。
注射筒9に設けた注射筒接続部7aに接続される穿刺針接続部7内には接続部雌ネジ8を設けてある。刃付翼穿刺針2には穿刺針尖端14の近傍に注射口5が明けてあり、該注射口5まで中空孔6が通っている。注射口5は刃付翼穿刺針2の周囲に、穿刺針尖端14近傍から穿刺針接続部7までの位置に少なくとも1個以上設ける。
【0019】
図2は合成樹脂、金属などにより刃付翼穿刺針2が一体で成型できるが、図3の刃付翼、図4の刃付翼穿刺針2は、刃付翼3と刃付翼穿刺針2を個々に製造し着脱可能とする場合の図である。
【0020】
図4の、刃付翼穿刺針2の外周に設けてある刃付翼雄ネジ15は、図3の刃付翼3に設けられた刃付翼雌ネジ16と螺合し刃付翼穿刺針2となる。業務用などで使用頻度が高く強度を有す金属の刃付翼3の製造に適っている。その他の構造は図2と同様の構造である。
【0021】
刃付翼3は、刃付翼穿刺針2に有す刃付翼雄ネジ15により螺合されるが、刃付翼穿刺針2の穿刺針接続部側にワッシャー(座金)を入れ、刃付翼3の順で螺合すると、翼穿刺尖端14と刃付翼3の間を縮めることができる。
【0022】
本発明では、穿刺針接続部7と注射筒接続部7aとが、又図3の刃付翼3に設けた刃付翼雌ネジ16と図4の刃付翼雄ネジ15が螺合され係止されるが、嵌合タイプの係止方法でもよい。
【実施例2】
【0023】
図5は注射筒やピストンを利用せず、多品種生産されるスパイスの製造を食品メーカーに依頼し、多品種のスパイスの使い分け、収納に蛇腹ボトルに利用するものである。一度に使い切らなかった場合、数種のスパイスを利用する際に重宝である。ボトルは一般的な蛇腹なしのストレートの物でもよいが、蛇腹ボトルはピストン代わりに利用でき、空気接触も少なく残量の酸化防止に役立つ。
【0024】
取付け方法は、蛇腹ボトル18の頭部のボトル雄ネジ19を、フレーム17内のボトル雌ネジ20に取付ける。使用方法は前記実施例と同様である。
【0025】
フレーム17を波状形としたり、フレーム17端部の注射筒接続部7a側に滑り止めを設けてもよい。
【実施例3】
【0026】
図6は本発明の請求項3に記載の注射筒9の外周を波形とした注射器型調理器具1であり、注射筒9を握った場合の肉の脂肪分などの付着による滑り止めである。
【0027】
使用方法は前記実施例1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の注射器型調理器具を分解した斜視図。
【図2】本発明の刃付翼穿刺針の図。一部断面を表す。
【図3】本発明の刃付翼の図。
【図4】本発明の刃付翼穿刺針の図。
【図5】本発明の注射器型調理器具に蛇腹ボトルを利用した図。一部断面を表す。
【図6】本発明の注射器型調理器具の注射筒を波形にした図。
【符号の説明】
【0029】
1 注射器型調理器具
2 刃付翼穿刺針
3 刃付翼
4 刃部
5 注射口
6 中空孔
7 穿刺針接続部
7a 注射筒接続部
8 接続部雌ネジ
9 注射筒
9a 波形注射筒
10 ピストン受入部
11 ピストン
12 ピストンヘッド
13 滑り止め
14 穿刺針尖端
15 刃付翼雄ネジ
16 刃付翼雌ネジ
17 フレーム
18 蛇腹ボトル
19 ボトル雄ネジ
20 ボトル雌ネジ
21 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に注射筒接続部を備え、他端側にピストン受入部を備えた注射筒と、前記注射筒接続部に気密性をもち接続され少なくとも一枚以上の刃を設けた翼を有す刃付翼穿刺針と、前記注射筒におけるピストン受入部に対して気密的に差し入れられるピストンとの組み合わせでなる注射器型調理器具であって、前記刃付翼穿刺針の尖端の先端近傍から穿刺針接続部の間に少なくとも1個以上の注射口を有すことを特徴とする注射器型調理器具。
【請求項2】
前記注射筒接続部側の注射筒の端部近傍に滑り止めを設けたことを特徴とする請求項1に記載の注射器型調理器具。
【請求項3】
前記注射筒の外周を波形としたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の注射器型調理器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−55279(P2012−55279A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204045(P2010−204045)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【特許番号】特許第4809491号(P4809491)
【特許公報発行日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(509091734)
【Fターム(参考)】