説明

注水機構付き電動工具

【課題】ハウジングを長くしなくても工具カバーをプラグと干渉することなく装着すると共に、装着した工具カバーの回り止め及び抜け止めも低コストで合理的に行う。
【解決手段】工具10を覆うカバー部17と、ベアリングボックス7の下部に外装されるリング状のバンド部20とを含んでなる工具カバー16を備え、ベアリングボックス7の後面に流体供給口12を開口する円形突起13を突設させたディスクサンダ1において、バンド部20を、前バンド22と後バンド23とに分割して流体供給口12を含むベアリングボックス7の外周部分に沿って外装させると共に、後バンド23における流体供給口12との重合部に、ベアリングボックス7への外装状態で円形突起13が嵌合してバンド部20の周方向の回り止めと下方への抜け止めとを行う逃げ部29を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状のハウジングから下方に突出させた回転軸に工具を装着したグラインダやサンダ等の電動工具であって、特に工具の下方への注水機構を具備してなる注水機構付き電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
グラインダやサンダ等の電動工具においては、モータを収容したモータハウジングの前方に、ベベルギヤを介して回転伝達される回転軸を直交状に軸支したギヤハウジングを連結し、ギヤハウジングに連結した筒状のハウジングから下方に突出させた回転軸の端部に、サンディングディスク等の工具が装着可能となっている。また、ハウジングの下方には、回転軸に装着された工具を上方から覆うカバー部と、そのカバー部の上方に設けられてハウジングの下部に外装されるリング状のバンド部とからなる工具カバーが装着されている。
また、このような電動工具にあっては、例えば特許文献1に開示のように、回転軸の軸心に貫通穴を設けると共に、回転軸を軸支するハウジングの側面に貫通穴と連通する流体供給口を設けてプラグを差し込み接続して、プラグに接続したホースから水や洗浄剤等の流体を供給し、回転軸の貫通穴を介して流体を工具の下方に飛散させる注水機構を備えたものが知られている。例えば作業中に注水することで粉塵の飛散防止を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−57054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記注水機構付き電動工具では、ハウジングに連結するプラグに工具カバーのバンド部が干渉しないように、プラグの下方に延設したハウジングの下端にバンド部を外装している。従って、ハウジングが上下方向に長くなってコンパクト化を阻害してしまう。また、工具カバーの回り止め及び抜け止めのための凹凸等をハウジングとバンド部との間に形成する必要もあってコストアップに繋がる。
【0005】
そこで、本発明は、ハウジングを長くしなくても工具カバーをプラグと干渉することなく装着することができ、而も外装した工具カバーの回り止め及び抜け止めも低コストで合理的に行うことができる注水機構付き電動工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、筒状のハウジングから下方に突出させた回転軸に工具を装着して、ハウジングに、工具を覆うカバー部と、そのカバー部の上方に設けられてハウジングの下部に外装されるリング状のバンド部とを含んでなる工具カバーを設ける一方、ハウジングの側面に突設した流体供給口から供給された流体を工具の下面に噴出させる注水機構を備えた注水機構付き電動工具であって、バンド部を、複数の円弧状部材に分割して、流体供給口を含むハウジングの外周部分に沿って外装させると共に、円弧状部材における流体供給口との重合部に、ハウジングへの外装状態で流体供給口が嵌合してバンド部の周方向の回り止めと下方への抜け止めとを行う逃げ部を形成したことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、バンド部を、逃げ部が形成される一方の半円の円弧状部材と、他方の半円の円弧状部材とに二分割したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、工具カバーのバンド部に、突設した流体供給口に嵌合する逃げ部を形成したことで、ハウジングを長くしなくても工具カバーをプラグと干渉することなく装着することができる。而もバンド部を形成する円弧状部材に逃げ部を形成するだけで工具カバーの回り止めと抜け止めとが可能となるため、低コストで合理的な構成となる。
請求項2の発明によれば、請求項1の効果に加えて、ハウジングへのバンド部の組み付けが容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ディスクサンダの一部縦断面図である。
【図2】ベアリングボックス及び工具カバーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、注水機構付き電動工具の一例であるディスクサンダ1を示す。このディスクサンダ1は、モータ3を横向きに収容する筒状のモータハウジング2の前方(図1の左側)に、モータ3の出力軸4が突出するギヤハウジング6を連結し、ギヤハウジング6の下方に、下側のハウジングとしての筒状のベアリングボックス7を連結している。ギヤハウジング6とベアリングボックス7との間には、回転軸8が上下方向に軸支されて、回転軸8に外装したベベルギヤ9を、出力軸4の先端に設けたベベルギヤ5と噛合させている。また、回転軸8の下端はベアリングボックス7の下方に突出して、工具(ここではサンディングディスク)10が装着可能となっている。
【0010】
さらに、ベアリングボックス7及び回転軸8には注水機構が具備されている。まず、ベアリングボックス7内で回転軸8の周囲には、リング状の注水部11が形成され、この注水部11に半径方向で後ろ向きに流体供給口12が連設されている。ベアリングボックス7の後面には、流体供給口12が同軸で開口する円形突起13が突設されている。14は、流体供給口12に同軸で差し込み接続されてベアリングボックス7から後方へ突出するプラグで、このプラグ14に、水道管やポンプ等の供給源に接続した図示しないホースが接続可能となっている。
【0011】
一方、回転軸8の下端には、装着した工具10の下面で下向きに開口する流体噴出口15が形成されて、回転軸8の軸心には、上端が注水部11と、下端が流体噴出口15とそれぞれ連通する図示しない導入路が形成されている。
よって、この注水機構においては、外部の供給源からプラグ14を介して注水部11に流体(例えば水)を供給すると、回転軸8の導入路を通って下端の流体噴出口15から噴出することになる。
【0012】
そして、ベアリングボックス7の下端には、工具カバー16が装着されている。この工具カバー16は、図2にも示すように、工具10の全体を上方から覆って回転軸8が貫通する円盤状のカバー部17と、そのカバー部17の上面にネジ固定されて中央に回転軸の貫通孔を形成した正方形状のプレート18と、そのプレート18の上方に連結されてベアリングボックス7の下端に外装されるリング状のバンド部20とを備えている。21は、カバー部17の右側外周で接線方向且つ後ろ向きに突設された集塵ノズルで、ここに外部の集塵機からのホースを接続することで、カバー部17内の粉塵を飛散させることなく集塵可能となっている。
【0013】
ここでのバンド部20は、ベアリングボックス7の軸心を通る左右方向の面を分割面として、円弧状部材である前バンド22と後バンド23とに前後に二分割されている。このうち前バンド22は、ベアリングボックス7の前半分の外周部分に略合致した半円形状で、プレート18の貫通孔の内縁に立設した円弧状の縦壁19に固定されている。また、前バンド22の左右両端には、左右に長い透孔25を形成して分割面と平行となる一対の前連結片24,24が折曲形成されている。
一方、後バンド23は、ベアリングボックス7の後半分の外周部分に略合致した半円形状で、左右両端には、ナット27を後面に溶接して分割面と平行となる一対の後連結片26,26が折曲形成されている。
【0014】
よって、前バンド22と後バンド23とをベアリングボックス7を前後から挟んで互いの前後連結片24,26を合わせて、前連結片24の透孔25に前方から貫通させたボルト28を後連結片26のナット27にねじ込めば、バンド部20はベアリングボックス7に外装される。このバンド部20の外装位置は、円形突起13を含むベアリングボックス7の外周部分となっており、円形突起13と重合する後バンド23の後部中央には、円形突起13が嵌合する逆U字状の逃げ部29が、下端から切欠き形成されている。
【0015】
以上の如く構成されたディスクサンダ1においては、工具カバー16を装着する際は、バンド部20の前バンド22と後バンド23とを分離した状態で、工具10を装着していない回転軸8にカバー部17及びプレート18を貫通させて前バンド22をベアリングボックス7の前半分にあてがうと共に、後バンド23を、ベアリングボックス7の円形突起13を逃げ部29に合わせてベアリングボックス7の後半分にあてがって、前述のように左右の前連結片24と後連結片26とをボルト28で連結する。すると、図1に示すように、バンド部20がベアリングボックス7に外装されて工具カバー16が装着される。このとき後バンド23の逃げ部29に円形突起13が嵌合しているので、バンド部20はベアリングボックス7の周方向で回り止めされると共に、下方への抜け止めもなされた状態となる。
【0016】
こうして工具カバー16を装着した後、回転軸8の下端に工具10を取り付ければ研磨作業が可能となる。このとき、プラグ14に接続したホースから注水を行うと、供給源からの水が流体供給口12を介して注水部11に流れ込み、回転軸8の導入路を通って流体噴出口15から工具10の下方へ噴出される。よって、研磨に伴い発生する粉塵を飛散させることなく水と共に排出可能となる。
【0017】
このように、上記形態のディスクサンダ1によれば、バンド部20を、前バンド22と後バンド23とに分割して流体供給口12を含むベアリングボックス7の外周部分に沿って外装させると共に、後バンド23における流体供給口12の円形突起13との重合部に、ベアリングボックス7への外装状態で円形突起13が嵌合してバンド部20の周方向の回り止めと下方への抜け止めとを行う逃げ部29を形成したことで、ベアリングボックス7を長くしなくても工具カバー16をプラグ14と干渉することなく装着することができる。而もバンド部20を形成する後バンド23に逃げ部29を形成するだけで工具カバー16の回り止めと抜け止めとが可能となるため、低コストで合理的な構成となる。
【0018】
特にここでは、バンド部20を、逃げ部29が形成される一方の半円の後バンド23と、他方の半円の前バンド22とに二分割しているので、ベアリングボックス7へのバンド部20の組み付けが容易に行える。
【0019】
なお、上記形態では、流体供給口はハウジング(ベアリングボックス)の後面中央に突設されているが、この位置に限るものではなく、左右の側面や前面であってもよい。この場合はバンド部の分割形態や逃げ部の位置もそれに合わせて変更することになる。
また、流体供給口の突設も円形突起に限らず、四角形や多角形、長円等の他の形状で突設させても差し支えない。
さらに、逃げ部は、上記形態ではバンド部の下端から切欠き形成されているが、流体供給口の突設位置によっては透孔として嵌合させても回り止めと抜け止めとは可能である。
【0020】
一方、バンド部も、上記形態では前後二分割した前後バンドをボルトで組み付けているが、前後バンドの一端同士をヒンジ結合してもよい。また、このような二分割に限らず、三分割以上の円弧状部材でバンド部を形成することも可能である。
さらに、工具カバーの他の構造も上記形態に限らず、後バンドをプレートに連結して前バンドを別体としたり、プレートを省略して前バンド又は後バンドをカバー部に直接連結したり等、適宜変更可能である。集塵ノズルも省略できる。
【0021】
その他、上記形態では、ディスクサンダに水を供給する例で説明しているが、研磨剤や洗浄剤等の他の流体であっても本発明は適用可能であるし、注水機構自体の構造も流体噴出口の数を変えたり等、適宜変更できる。勿論ディスクサンダに限らず、グラインダ等の他の注水機構付き電動工具であっても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1・・ディスクサンダ、2・・モータハウジング、3・・モータ、4・・出力軸、6・・ギヤハウジング、7・・ベアリングボックス、8・・回転軸、10・・工具、11・・注水部、12・・流体供給口、13・・円形突起、14・・プラグ、15・・流体噴出口、16・・工具カバー、17・・カバー部、20・・バンド部、22・・前バンド、23・・後バンド、29・・逃げ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジングから下方に突出させた回転軸に工具を装着して、前記ハウジングに、前記工具を覆うカバー部と、そのカバー部の上方に設けられて前記ハウジングの下部に外装されるリング状のバンド部とを含んでなる工具カバーを設ける一方、前記ハウジングの側面に突設した流体供給口から供給された流体を前記工具の下面に噴出させる注水機構を備えた注水機構付き電動工具であって、
前記バンド部を、複数の円弧状部材に分割して前記流体供給口を含む前記ハウジングの外周部分に沿って外装させると共に、前記円弧状部材における前記流体供給口との重合部に、前記ハウジングへの外装状態で前記流体供給口が嵌合して前記バンド部の周方向の回り止めと下方への抜け止めとを行う逃げ部を形成したことを特徴とする注水機構付き電動工具。
【請求項2】
前記バンド部を、前記逃げ部が形成される一方の半円の前記円弧状部材と、他方の半円の前記円弧状部材とに二分割したことを特徴とする請求項1に記載の注水機構付き電動工具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−51053(P2012−51053A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194522(P2010−194522)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】