説明

洋式便器の構造

【課題】車輛や航空機等のトイレで使用される洋式便器において、便座や便蓋が揺れたり、傾くことなく倒れて来るのを有効に防止した洋式便器の構造を提供する。
【解決手段】1は便器本体、2は便座3及び便蓋4のヒンジで、便座3及び便蓋4はこのヒンジ2を支点a中心に上方または下方に旋回するように構成されている。5は便器本体1の背面壁を示している。便器本体1の便座3と便蓋4との間、及び便蓋4と背面壁5との間には、便座3及び便蓋4の開放,閉鎖時の各保持力を変化させた係止保持部材6が設けてある。この実施形態では、便座3及び便蓋4の先端側の内側と、便蓋4の先端側に対面する背面壁5の側面に、前記係止保持部材6が取付けてあり、この係止保持部材6の保持力は、便器本体1の便座3と便蓋4との間の保持力Faに比べて、便蓋4と背面壁5との間の保持力Fbを強く(Fa<Fb)設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洋式便器の構造に係わり、更に詳しくは特に車輛や航空機等のトイレで使用される洋式便器の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に洋式トイレの便座及び便蓋は、便器本体1からヒンジ2を支点として便座3及び便蓋4を上方に旋回させて使用する場合、図3に示すように、支点aを中心に上方に旋回させながら開き、頂点bを越えて背面壁5のc点まで移動させることにより開くようにしている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
そしてこの時に、頂点bからc点までの角度dを十分に取ることにより、便座3及び便蓋4の自重によりc点に固定され、便座3及び便蓋4が倒れてこないようにすることが出来る。
【0004】
然しながら、車輛や航空機等のトイレの場合、トイレ室内の容積が狭く、図4に示すように奥行きが無いために背面壁5との間の角度dを十分に取ることが出来ず、航空機の飛行中や車輛の走行中に揺れたり、傾いたたすることがあった。また、メンテナンスのために、便器本体1の外側にはカバーが付いており、便座3及び便蓋4ともに取外せるようになっている。この結果、ヒンジ2(支点a)の位置が変わり易く、角度dが小さくなることがある。このような理由から、従来の洋式便器の構造では、使用中に便座3及び便蓋4が倒れて来ることがあり、危険であったり、不愉快な思いをする等が問題があった。
【0005】
また、便座3及び便蓋4が倒れてこないように、便座3及び便蓋4の一部にマグネット等を埋設したものも提案されているが、便座3や便蓋4のみを簡単に開閉させることが難しいと言う問題があった(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭2003−144348号公報
【特許文献2】特開昭2001−78924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明はかかる従来の問題点に着目し、車輛や航空機等のトイレで使用される洋式便器において、便座や便蓋が揺れたり、傾くことなく倒れて来るのを有効に防止した洋式便器の構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記目的を達成するため、便器本体の便座と便蓋との間、及び便蓋と背面壁との間に各保持力を変化させた係止保持部材を設けたことを要旨とするものである。
【0008】
ここで、前記係止保持部材の保持力は、便座と便蓋との間の保持力に比べて、便蓋と背面壁との間の保持力を強く設定するものである。
【0009】
また前記係止保持部材は、永久磁石または電磁石であり、前記磁石の磁力は、便座と便蓋との間の磁力に比べて、便蓋と背面壁との間の磁力を強く設定するものである。更に、前記永久磁石または電磁石の回りを緩衝材により被覆するのが好ましい。
【0010】
また、前記係止保持部材が、弾性部材と係合部とで構成し、前記係止保持部材の保持力は、便座と便蓋との間の弾性力に比べて、、便蓋と背面壁との間の弾性力を強く設定するのが好ましい。
【0011】
このように、便器本体の便座と便蓋との間、及び便蓋と背面壁との間に各保持力を変化させた係止保持部材を設けることで、車輛や航空機等のトイレで使用される洋式便器の場合には、便座や便蓋が倒れて来るのを有効に防止出来るものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、上記のように便器本体の便座と便蓋との間、及び便蓋と背面壁との間に各保持力を変化させた係止保持部材を設けたので、以下のような優れた効果を奏するものである。
【0013】
(a).係止保持部材として、磁石の磁力や弾性部材と係合部との保持力により、便座や便蓋 の開放状態を保ち、特に車輛や航空機の洋式便器の場合には、車輛や航空機の揺れ、傾 き、加速度等による倒れを有効に防止でき、安全にしかも心地良く使用出来る。
【0014】
(b).係止保持部材を緩衝材により被覆することにより、外観を綺麗に見せ、また清掃もし 易いため清潔に保ち、安全に使用出来る。
【0015】
(c).便座や便蓋の回転支点から遠い位置に、係止保持部材としての磁石や、弾性部材及び 係合部を配設することで、弱い磁力や保持力でも効果的に便座及び便蓋を保持させるこ とが出来る。
【0016】
(d).便器本体の便座と便蓋との間、及び便蓋と背面壁との間に各保持力に変化させた係止 保持部材を設け、係止保持部材の距離を調整することで、便座だけを倒したい時に片手 で便座を倒しても、便蓋が外壁に保持されて倒れてこないようにすることが出来る。
【0017】
(e).係止保持部材としての磁石や、弾性部材及び係合部を球面状に曲率を設けて加工する ことで、回転支点の位置がずれても係止保持部材間の距離が大きく変わることは無く、 保持力を一定に保つことが可能となる。
【0018】
(f).緩衝材の材質を軟質熱可塑性樹脂材料とすることで、高精度で射出成形または切削加 工が可能となり、保持力を高精度に保つことが可能となり、またゲルコート仕上げされ た便座と便蓋等の表面を傷付けることなく使用することが可能となる。
【0019】
(g).既存の設備の一部を交換するだけで実施出来るので、従来品を安価に改善させること が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。
なお、以下の説明において、従来例と同一構成要素は同一符号を付して説明は省略する。
【0021】
図1は、この発明を実施した洋式便器の構造の側面図、図2は図1のX部の拡大断面図を示し、1は便器本体、2は便座3及び便蓋4のヒンジで、便座3及び便蓋4はこのヒンジ2を支点a中心に上方または下方に旋回するように構成されている。5は便器本体1の背面壁を示している。
【0022】
前記便器本体1の便座3と便蓋4との間、及び便蓋4と背面壁5との間には、便座3及び便蓋4の開放,閉鎖時の各保持力を変化させた係止保持部材6が設けてある。
【0023】
この実施形態では、便座3及び便蓋4の先端側の内側と、便蓋4の先端側に対面する背面壁5の側面に、前記係止保持部材6が取付けてあり、この係止保持部材6の保持力は、便器本体1の便座3と便蓋4との間の保持力Faに比べて、便蓋4と背面壁5との間の保持力Fbを強く(Fa<Fb)設定してある。
【0024】
前記係止保持部材6の第1実施形態の構成としては、図2に示すように永久磁石または電磁石等の磁石6aにより構成してあり、この磁石6aは、上述したように便座3及び便蓋4の先端側の内側と、便蓋4の先端側に対面する背面壁5の側面に固定し、更に先端を円弧状に形成すると共に、その表面を軟質熱可塑性樹脂材料から成る緩衝材7により所定の厚さで被覆してある。なお前記磁石6aの磁力は、上記と同様に便器本体1の便座3と便蓋4との間の磁力に比べて、便蓋4と背面壁5との間の磁力を強く設定してある。
【0025】
このように、緩衝材7の材質を軟質熱可塑性樹脂材料とすることで、高精度で射出成形または切削加工が可能となり、保持力を高精度に保つことが可能となり、またゲルコート仕上げされた便座3と便蓋4等の表面を傷付けることなく使用することが出来るものである。
【0026】
また係止保持部材6としての磁石6aを球面状に曲率を設けて加工することで、回転支点aの位置がずれても係止保持部材6間の距離が大きく変わることは無く、保持力を一定に保つことが可能となる。更に、便座3や便蓋4の回転支点から遠い位置に、係止保持部材6としての磁石6aや、弾性部材及び係合部を配設することで、弱い磁力や保持力でも効果的に便座3及び便蓋4を保持させることが出来る。
【0027】
また、前記係止保持部材6の他の実施形態としては、板バネやスプリング等の弾性部材とフック状の係合部とで構成し、弾性部材の弾性力を可変にすることで、係止保持部材6の保持力を、第1実施形態と同様に便器本体1の便座3と便蓋4との間の弾性力に比べて便蓋4と背面壁5との間の弾性力を強く設定することも可能である。
【0028】
以上のように係止保持部材6として、磁石6aの磁力や弾性部材と係合部との保持力により、便座3や便蓋4の開放状態を保ち、特に車輛や航空機の洋式便器の場合には、車輛や航空機の揺れ、傾き、加速度等による倒れを有効に防止でき、安全にしかも心地良く使用出来る。また、係止保持部材6を緩衝材7により被覆することにより、外観を綺麗に見せ、また清掃もし易いため清潔に保ち、安全に使用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明を実施した洋式便器の構造の側面図である。
【図2】図1のX部の拡大断面図である。
【図3】従来の洋式便器の構造の側面図である。
【図4】従来の洋式便器の構造の説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 便器本体 2 ヒンジ
3 便座 4 便蓋
5 背面壁 6 係止保持部材
6a 磁石 7 緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体上に、ヒンジを支点として便座,便蓋を開閉可能に取付けて成る洋式便器の構造において、
前記便器本体の便座と便蓋との間、及び便蓋と背面壁との間に各保持力を変化させた係止保持部材を設けたことを特徴とする洋式便器の構造。
【請求項2】
前記係止保持部材の保持力は、便座と便蓋との間の保持力に比べて、便蓋と背面壁との間の保持力を強く設定した請求項1に記載の洋式便器の構造。
【請求項3】
前記係止保持部材が、永久磁石または電磁石である請求項1または2に記載の洋式便器の構造。
【請求項4】
前記磁石の磁力は、便座と便蓋との間の磁力に比べて、便蓋と背面壁との間の磁力を強く設定した請求項3に記載の洋式便器の構造。
【請求項5】
前記永久磁石または電磁石の回りを緩衝材により被覆した請求項3または4に記載の洋式便器の構造。
【請求項6】
前記係止保持部材が、弾性部材と係合部とで構成した請求項1または2に記載の洋式便器の構造。
【請求項7】
前記係止保持部材の保持力は、便座と便蓋との間の弾性力に比べて、便蓋と背面壁との間の弾性力を強く設定した請求項6に記載の洋式便器の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−61791(P2008−61791A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242320(P2006−242320)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】