説明

洋式便器装置

【課題】ボウル部の表面を含む便器内部を洗浄する間は便器外部への洗浄水の飛散を低減し、洗浄後、加熱乾燥し、加熱された便座の温度が適温に降下した後、快適に使用できる洋式便器装置を提供する。
【解決手段】便蓋13で便器本体19を閉じた状態で便器内部に洗浄水を噴出する便器洗浄手段を備えた洋式便器装置10であって、上記便蓋13の閉じた状態を保持するロック手段と、該ロック手段によるロック動作の完了を検知して、上記便器洗浄手段を作動する制御手段11とを備え、さらに、上記制御手段11は、便器洗浄手段の作動を完了させた後、便座乾燥手段を作動させ、便座乾燥手段の作動完了後、便座13の温度を検知し、便座13の温度が所定温度に降下したとき、便座ロック手段を解除する洋式便器装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋式便器に関する。さらに詳しくは、ボウル部の表面を含む便器内部を洗浄、乾燥する機能を備えた洋式便器装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洋式便器においては、ボウル部に排泄された汚物は、フラッシュ弁の操作により勢いよく吐出する洗浄水によってボウル部の下方に位置する排水口から排出する構成となっている。しかしながら、強固に付着した汚物は洗浄水によっては流れないこともあり、また、水垢、カビ等も流れずにボウル部の表面に付着して汚れとして残ることが多い。とくに便器本体の上端に周設されたリム部の下方近辺には洗浄水が届かないため、汚れを落とすことができず、通常、人手により洗剤等を用いて清掃することが行われている。
【0003】
しかしながら、リム部の下方近辺に付着した汚れは、普段、目に見えることがなく、汚れがかなりひどくなって、初めて気付くため、汚れを落としにくく、また、不衛生であるという問題もある。このような問題を解決するため、下記特許文献1には、本願図4に示すように、弁蓋3と弁座4を閉じた状態で、便器内部5を洗浄する洗浄ノズル2を備え、使用者が弁蓋3を閉めて、図外操作部のスイッチをオンにすると、洗浄ノズルから洗浄水を吐出し、便器内部5を洗浄できる大便器1が提案されている。
【特許文献1】特開2000−144846号公報(第1〜3頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、大便器洗浄用ノズルから水、洗剤、酸性水、次亜塩素酸等を吐出させて便座、便蓋の裏面等、便蓋を閉じることにより形成されるボウル空間全体を洗浄する技術が開示されている。しかし、例えば、水により洗浄する場合、洗浄水の噴出により便蓋が僅かに開き、便器本体上端部と便蓋との間に空隙が形成され、そこから洗浄水が飛散するおそれがある。また、洗浄後、便座に付着した洗浄水が乾かず、濡れていることを知らずに便座に座ったとき、不快感を覚えるという問題もある。
【0005】
本発明はこのような問題を解決して、ボウル部の表面を含む便器内部を洗浄する間は便器外部への洗浄水の飛散を低減できるとともに、洗浄後、加熱乾燥し、加熱された便座の温度が適温に降下した状態で快適に使用できる洋式便器装置を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明においては、つぎのような技術的手段を講じている。すなわち、請求項1に記載の発明によれば、便蓋で便器本体を閉じた状態で便器内部に洗浄水を噴出する便器洗浄手段を備えた洋式便器装置であって、上記便蓋の閉じた状態を保持する便座ロック手段と、該ロック手段によるロック動作の完了を検知して、上記便器洗浄手段を作動する制御手段とを備え、さらに、上記制御手段は、便器洗浄手段の作動を完了させた後、便座乾燥手段を作動させ、便座乾燥手段の作動完了後、便座の温度を検知し、便座の温度が所定温度に降下したとき、便座ロック手段を解除する洋式便器装置が提供される。
【0007】
ここに、便器内部とは、便蓋が閉じられた状態で形成される空間の便器洗浄手段により洗浄される部分を指し、ボウル部のみを指すものではなく、少なくともリム部の一部も含むものである。また、ロック手段による便蓋の閉状態の保持は、少なくとも上記便器洗浄手段からの噴出により便蓋が開状態とならない程度の保持を含むものである。
【0008】
さらに、ロック手段としては、例えば、便器本体、上記便蓋のうち、一方には電磁石を配設し、かつ、他方には磁性体を配設し、電磁石を通電させてロック動作する構成にされているものを用いることができる。
【0009】
請求項2に記載の洋式便器装置は、請求項1に記載の発明に加えて、上記便座乾燥手段が便座に内設された便座用ヒータであることが好ましい。上記便座用ヒータに加えて、公知の人体局部の洗浄後に人体局部を乾燥する、便器内に備えられた既設の加熱装置等を併用してもよい。
【0010】
請求項3に記載の洋式便器装置は、請求項1に記載の発明に加えて、上記便座の温度が所定の便座表面温度であるとともに、任意の温度に設定自在であることが好ましい。上記便座表面温度は、通常、サーミスタを用いて検知される。
【0011】
請求項4に記載の洋式便器装置は、請求項1に記載の発明に加えて、上記ロック手段、便器洗浄手段、便座乾燥手段の作動を報知する報知手段をさらに備えることが好ましい。報知手段としては、スピーカからアラーム、音声メッセージ等、所定の態様の音響を出力させることにより報知する構成としてもよく、また、報知用LED等発光体を所定の態様で点灯あるいは点滅させることにより報知する構成としてもよい。
【0012】
請求項5に記載の洋式便器装置は、請求項1に記載の発明に加えて、上記便蓋と便器本体の上端周辺との隙間には、シール部材が介在されることが好ましい。シール部材としては、水密性のある部材であれば、特に限定されることなく使用することができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明にかかる洋式便器装置は上記のとおりであり、ロック手段によるロック動作の完了を検知して、上記便器洗浄手段を作動する制御手段を備え、さらに、上記制御手段は、便器洗浄手段の作動を完了させた後、便座乾燥手段を作動させ、便座乾燥手段の作動完了後、便座の温度を検知し、便座の温度が所定温度に降下したとき、便座ロック手段を解除する構成としているので、便器洗浄手段からの洗浄水の噴出により便蓋がわずかに開くことがなく、洗浄水が便器外部へ飛散することを低減できる。また、便座乾燥後、熱いまま着座して不快感を覚えたり、甚だしい場合は火傷を負う等の危険を防ぐことができる。
【0014】
請求項2に記載の洋式便器装置は上記のとおりであり、請求項1の洋式便器装置の有する効果に加え、上記便座乾燥手段として便座に内設された便座用ヒータを利用するため、既設のヒータを用いて簡単に乾燥することができる。
【0015】
請求項3に記載の洋式便器装置は上記のとおりであり、請求項1の洋式便器装置の有する効果に加え、上記便座の温度として便座の表面温度を測定するため、直接、人体に接する部分の温度を測定できる。また、夏期、冬期等、季節に応じて最も快適な温度を選んで、任意に設定できる。上記便座温度が所定の温度に降下した以降は、通常の暖房便座として使用できる。
【0016】
請求項4に記載の洋式便器装置は上記のとおりであり、請求項1の洋式便器装置の有する効果に加え、上記ロック手段、便器洗浄手段、便座乾燥手段の作動を報知する報知手段がさらに備えられているため、使用者は便器内部が自動洗浄中であることや、乾燥中であることを容易に知ることができる。
【0017】
請求項5に記載の洋式便器装置は上記のとおりであり、請求項1の洋式便器装置の有する効果に加え、上記便蓋と便器本体の上端周辺との隙間には、シール部材が介在されているため、便器洗浄ノズルによる便器内部の洗浄時に洗浄水が便器外部に飛散することを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明にかかる洋式便器装置の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、上記洋式便器装置10を示す斜視図である。図1に示す洋式便器装置10では、便器本体19の後部に水洗タンクを備えていない、水道配管直結方式、いわゆるタンクレスタイプのものを図示しているが、水洗タンクを備えたものにも適用可能である。
【0019】
図例の便器本体19は、ボウル部15と、ボウル部15の上端に周設されたリム部12と、ボウル部15の外周に形設されたスカート部16と、便器本体19の後方に位置する便蓋・便座設置部17に開閉自在に枢着された便座14及び便蓋13と、スカート部16の後方位置に各種装置やボウル部15への水洗用水を供給する吐出口などを内包するサイドカバー18を備えている。
【0020】
なお、詳細は省略するが、洋式便器装置10は、ボウル部15に排泄された排泄物を流すための給水システム及び排水システム等の便器装置として必要な他の構成を備えていることは当然である。
【0021】
また、本実施形態にかかる洋式便器装置10は、便器内部に洗浄水を噴出する便器洗浄ノズル(便器洗浄手段)21を備えている。便器洗浄ノズル21は、ボウル部15の後方から便器内部の空間の略中央に、その便器内部用の噴出口21aが位置するように、便蓋・便座設置部17内の便器洗浄ノズル駆動機構(不図示)により伸長駆動され、洗浄水を便器内部に向けて噴出する構成となっている。
【0022】
本実施形態では、便器洗浄ノズル21は、洗浄ノズル20の一部をなし、洗浄ノズル20は、人体局部に向けて洗浄水を噴出する人体局部用の噴出口22aと、便器内部に向けて洗浄水を噴出する便器内部用の噴出口21aとを有し、図示のような二段構成とし、人体局部用の噴出口22aを先端とする局部洗浄用ノズル22と、それに回転及び伸縮自在に内装され、便器内部用の噴出口21aを先端とする便器洗浄ノズル21から構成されている。
【0023】
このように構成された洗浄ノズル20は、人体局部を洗浄する際には、局部洗浄ノズル22のみが、便器後方から伸長され、人体局部用の噴出口22aのみより洗浄水を噴出し、また、便器内部を洗浄する際には、局部洗浄用ノズル22とともに便器洗浄ノズル21も伸長され、便器内部用の噴出口21aより洗浄水を噴出する構成となっている。さらに、便器洗浄ノズル21は、洗浄水の噴出中には、回転作動、伸縮作動するように構成されており、これにより、便器内部の全体に洗浄水が噴出される構成となっている。
【0024】
また、便器洗浄ノズル21による便器内部の洗浄後は、便座14に内設された便座用ヒータ40を便座乾燥手段として用い、便器内部を乾燥させる構成としている。さらに、洋式便器装置10は、便座13の閉じた状態を保持するロック手段を備えており、本実施形態では、ロック手段は、便器本体19の左右に配設された電磁石30と、便蓋13の上記電磁石30に対応する位置に配設された磁性体31とで構成されている。なお、図例では発明の理解を容易とするために電磁石30及び磁性体31ともに、それぞれ露出した状態を図示しているが、それぞれ、埋設あるいは、それぞれに防水処理を施すことが好ましい。
【0025】
上記磁性体31は、鉄板等から構成され、電磁石30の配設箇所に対応する便蓋13の所定位置に配設されている。電磁石30は、駆動電源からの通電により励磁され、磁性体31を吸引し、便蓋13の閉じた状態を保持、すなわち、ロック動作するが、本実施形態では、少なくとも便器洗浄ノズル21からの洗浄水の噴出により便蓋13が開状態とならない程度の磁力となるように構成され、また、上記便器内部を乾燥させるため、便座用ヒータ40を作動させる乾燥状態においても開状態とならない程度の磁力となるように構成している。上記便座用ヒータ40で加熱された便座の温度は、便座の表面温度を検知するサーミスタ41でモニタされる。
【0026】
また、洋式便器装置10は、後記の洗浄モードを開始する便器洗浄ボタン23及び、報知手段を構成する報知用LED24を便座・便蓋設置部17の上面に備え、報知手段を構成するスピーカ25をサイドカバー18に備えており、さらに、便器本体19の各種装置を制御するCPU(制御手段)11を便蓋・便座設置部17内に備えている。なお、報知手段による報知は、スピーカ25からアラーム、音声メッセージ等、所定の態様の音響を出力させることにより報知する構成としてもよく、また、報知用LED24を所定の態様で点灯あるいは点滅させることにより報知する構成としてもよい。また、それらの音、光を組み合わせて出力して報知する構成としてもよい。
【0027】
ここで、本実施形態では、光源として、報知用LED24を適用しているが、これに限られず、ハロゲンランプ、蛍光灯等、点灯、点滅により報知するものであれば、どのようなものでも適用できる。また、各報知手段24、25の配設箇所も図示したものに限られず、使用者に自動洗浄中である旨の報知が可能な場所に適宜、配設可能である。なお、本実施形態では、報知手段として、前記のように、報知用LED24とスピーカ25の2つの態様のものを設けているが、いずれか一つを設ける構成としてもよい。
【0028】
つぎに、上記のように構成された洋式便器装置10における上記CPU(制御手段)11による制御の基本動作を図2に示すフローチャートに基づいて説明する。まず、使用者が図1に示される便器洗浄ボタン23の押下を行うと、自動洗浄を開始する。すなわち、前記した電磁石30及び磁性体31からなるロック手段を作動するとともに、報知手段24、25を作動し、自動洗浄中である旨の報知をする(ステップ100、101)。続いて、ロック手段によるロック動作の完了を検知して、便器洗浄ノズル21を作動して(ステップ102)便器内部の洗浄を開始し、自動洗浄完了後、便座乾燥手段としての便座用ヒータ40を作動させ、乾燥を行う(ステップ103)。乾燥終了後、便座14の表面温度を検知するサーミスタ41が所定の温度まで便座表面の温度が降下したことを検知したとき(ステップ104)、便蓋13のロックを解除してから、報知を停止する(ステップ105)。ロック解除、報知停止は、便器洗浄ボタン23の押下がなされない間継続され、この間便座13は、通常の便座暖房温度に保持されながら、ボタン23の押下がなされるまで待機をする(ステップ100)。
【0029】
上記のように構成された洋式便器装置10によれば、ロック手段によるロック動作の完了を検知して、便器洗浄ノズル21を作動する構成としているので、便器洗浄ノズル21からの洗浄水の噴出により便蓋13が僅かに開くことがなく、洗浄水が便器外部へ飛散することを低減できる。また、便座用ヒータ40を作動させ、乾燥を行う間もロック手段によってロックされた状態が継続し、タイマ等により便座用ヒータ40への通電を停止し、便座温度が所定の温度に降下したときに初めてロック手段を解除するため、便座が高温の状態で使用することを防げ、危険を防止できる。
【0030】
つぎに、本発明にかかる洋式便器装置の変形例を図3に基づいて説明する。図3は、本変形例を示し、便蓋が閉じられた状態の便器本体前方上端部の要部拡大縦断面図である。詳しくは、本変形例では、便蓋13と便器本体19の上端周辺との隙間には、シール部材27を介在させている。シール部材27は便蓋13を閉じた状態で、便蓋13の下方に突設した張出部の下端(便蓋13を閉じた状態における下端を指す)に沿って周状に配設されており、便蓋13を閉じると、シール部材27が、便器本体19の上端、すなわち、本変形例では、リム部12の上辺の略全周に亘って当接し、便蓋13と便器本体19との間に空隙が形成されないように構成されている。
【0031】
上記構成によれば、便器洗浄ノズル21による便器内部の洗浄時にも洗浄水が便器外部に飛散することを確実に防止できる。すなわち、便器洗浄ノズル21から噴出された洗浄水は、前述のようにボウル部15の全体、リム部12の底辺や内辺、上辺の一部及び便座14の裏面の一部等は十分に洗浄水の噴出により洗浄されるが、便器外部へは洗浄水が飛散しない構成となる。また、特に寒冷地域等では、便蓋13を閉じると便器内部の空間の密封性、保温性が増すため、ボウル部15に常時溜められている溜水の凍結を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明にかかる洋式便器装置を示す斜視図である。
【図2】上記洋式便器装置における制御の基本動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明にかかる洋式便器装置の変形例を示す要部拡大縦断面図である。
【図4】公知の大便器および便座装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
10 洋式便器装置
11 CPU(制御手段)
12 リム部
13 便蓋
14 便座
15 ボウル部
16 スカート部
17 便蓋・便座設置部
18 サイドカバー
19 便器本体
20 洗浄ノズル
21 便器洗浄ノズル
21a 噴出口
22 局部洗浄ノズル
22a 噴出口
23 便器洗浄ボタン
24 報知用LED
25 スピーカ
27 シール部材
30 電磁石
31 磁性体
40 便座用ヒータ
41 サーミスタ
1 公知技術における大便器
2 公知技術における洗浄ノズル
3 公知技術における便蓋
4 公知技術における便座
5 公知技術における便器内部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便蓋で便器本体を閉じた状態で便器内部に洗浄水を噴出する便器洗浄手段を備えた洋式便器装置であって、上記便蓋の閉じた状態を保持するロック手段と、該ロック手段によるロック動作の完了を検知して、上記便器洗浄手段を作動する制御手段とを備え、さらに、上記制御手段は、便器洗浄手段の作動を完了させた後、便座乾燥手段を作動させ、便座乾燥手段の作動完了後、便座の温度を検知し、便座の温度が所定温度に降下したとき、便座ロック手段を解除する洋式便器装置。
【請求項2】
上記便座乾燥手段が便座に内設された便座用ヒータである請求項1に記載の洋式便器装置。
【請求項3】
上記便座の温度が便座の表面温度であるとともに、所定の温度に設定自在である請求項1に記載の洋式便器装置。
【請求項4】
上記ロック手段、便器洗浄手段、便座乾燥手段の作動を報知する報知手段がさらに備えられた請求項1に記載の洋式便器装置。
【請求項5】
上記便蓋と便器本体の上端周辺との隙間には、シール部材が介在されている請求項1に記載の洋式便器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−61928(P2008−61928A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245270(P2006−245270)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】