説明

洗浄剤組成物

【課題】油性メーキャップの洗浄力が高く、かつ泡性能に優れた洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】アニオン性界面活性剤、ラウリン酸ポリグリセリル−10及び/又はテトラグリセリンモノラウリルエーテルを特定の比率で配合し、さらに炭素数8〜16のアルキルグルコシドを特定の割合で配合することにより、メーキャップへの洗浄力を飛躍的に高め、かつ泡性能に優れた洗浄剤組成物を提供することを可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メーキャップに対する洗浄力が高く、かつ泡性能に優れた洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄剤においては、その目的や用途に応じ、泡性能や洗浄力などを考慮して各種の界面活性剤を選択したり、それらを組み合わせたりして要求される機能を満たすことが行われてきた。中でも皮膚用洗浄剤の主成分としては、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤等が、特に泡量、泡質や泡立ち等の泡性能に優れ、その他洗浄力、水系での溶解性の点でも優れていることから、処方の骨格を成す洗浄剤成分として使用されてきた。
【0003】
しかしながら、これ等洗浄剤は、泡性能、洗浄力、水系での溶解性などに関しては優れた性質を有しているものの、油性ファンデーション、アイメイク製品や口紅、油性紫外線吸収剤を含む日焼け止め料等の油性メーキャップ製品に対して用いると、泡立ちが大変悪く、洗浄力が発揮されない欠点がある。このため、一般には、油分が多く含まれるクレンジング料で、一度油汚れを落とした後、更に洗浄剤で顔を洗浄するといった二重洗浄が行われることが多い。このようなアニオン性界面活性剤を骨格とする洗浄剤の問題点を解決する方法として、アシルアルキルタウリン塩系、アシルイセチオン酸塩系、リン酸エステル塩系、アシルアミノ酸塩系、アルキルアミノ酢酸ベタイン系などの界面活性剤との併用などが検討されたり(例えば、特許文献1、2参照)、両性ポリマーやカチオン性ポリマーとの併用が検討されたり(例えば、特許文献3参照)、油分やポリアミド変性シリコーンの添加なども検討されてきた(例えば、特許文献4、5参照)。
【特許文献1】特開平6−248298号公報
【特許文献2】特開平6−88100号公報
【特許文献3】特開2003−73257号公報
【特許文献4】特開昭59−117598号公報
【特許文献5】特開2005−281190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、両性界面活性剤やアミノ酸系界面活性剤を添加したアニオン性界面活性剤を主成分とした洗浄剤は、泡性能に優れるが、油性メーキャップに対する洗浄力が弱い。また、油分やポリアミド変性シリコーンを添加したものは、洗浄剤中の界面活性剤成分が油分の乳化に使用され、洗浄力が十分でなく、泡性能が非常に悪く満足できるものではなかった。従って、これらの点について、より改善された皮膚用洗浄剤の開発が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、油性メーキャップに対する洗浄力が高く、かつ泡性能に優れた洗浄剤組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記問題点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、アニオン性界面活性剤、ラウリン酸ポリグリセリル−10及び/又はテトラグリセリンモノラウリルエーテルを特定の比率で配合し、さらに炭素数8〜16のアルキルグルコシドを特定の割合で配合することにより、メーキャップへの洗浄力を飛躍的に高め、かつ泡性能に優れた洗浄剤組成物を提供することを可能とした。
【0007】
即ち、本発明は、下記の成分(A)〜(C)を含有し、(A)の配合量が組成全体に対して15〜40重量%、(B)の配合量が組成全体に対して3〜25重量%、(C)の配合量が組成全体に対して5重量%以上であり、且成分(B)と(A)との配合重量比(B)/(A)が0.15〜0.65であることを特徴とする洗浄剤組成物を提供するものである。
(A)アニオン性界面活性剤
(B)下記の式(1)で示されるラウリン酸ポリグリセリル−10、及び/又は下記の式(2)で示されるテトラグリセリンモノラウリルエーテル
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
(C)下記の一般式(3)で示される炭素数8〜16のアルキルグルコシド。
【0011】
【化3】

【発明の効果】
【0012】
本発明の洗浄剤組成物は、油性メーキャップの洗浄力が高く、かつ泡性能に優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳述する。本発明において使用できる成分(A)のアニオン性界面活性剤としては、本発明の効果を有するものであれば特に限定はない。例えば、高級脂肪酸塩、アシル化アミノ酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、アルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩等が挙げられる。また、前期アニオン性界面活性剤に用いられる塩としては、ナトリウム、カリウム等の金属塩、アンモニウム塩、又は低級アルカノールアミン(例えばモノ、ジ、トリエタノールアミン)塩等が挙げられる。そして、前記アニオン性界面活性剤において、アルキル基又はアシル基等の疎水部の炭素数は6〜24が好ましく、炭素数10〜22のものが更に好ましく、12〜18のものが特に好ましい。また、前記アルキル基又はアシル基は、直鎖又は分岐のいずれでも良い。ポリオキシエチレン部を有するアニオン性界面活性剤においては、ポリオキシエチレン部の平均付加モル数は0.5〜5が好ましく、1〜5が更に好ましく、2〜3が特に好ましい。
【0014】
また、上記のアニオン性界面活性剤の中では高級脂肪酸塩が好ましく、具体的には、牛脂、豚脂などの動物油脂、ヤシ油、パーム核油、大豆油、オリーブ油、綿実油などの植物油脂などを加水分解して得られる脂肪酸混合物や、これらを分離精製して得られるラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸などの脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、2−アミノ−2−メチルプロパノール塩、リジン塩、アルギニン塩などが挙げられる。
【0015】
高級脂肪酸塩は、処方中に高級脂肪酸塩として配合するのみならず、高級脂肪酸と水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ剤を別々に配合し、本発明の洗浄剤組成物の製造工程中で反応により生成させることもできる。本発明においては、この方法により生成する高級脂肪酸塩も成分(A)に含まれる。尚、これら高級脂肪酸塩は、単独又は2種以上を組み合わせて使用することがでる。
【0016】
本発明の成分(A)の配合量は、本発明の効果を有する範囲においては特に限定はされないが、組成全体に対して15〜40重量%が好ましい。なお、15重量%未満では泡性能が悪くなる場合があり、40重量%を超えた場合にもその効果は変わらない。
【0017】
本発明において使用できる成分(B)のラウリン酸ポリグリセリル−10は下記の式(1)で示される。
【0018】
【化4】

【0019】
上記式(1)で示されるラウリン酸ポリグリセリル−10は、泡性能の観点から、モノエステル体を多く含有するように製造されたものが好ましい。ジエステル体やトリエステル体が多く配合されているものは、泡性能を損なう場合がある。
【0020】
また、成分(B)のテトラグリセリンモノラウリルエーテルは下記の式(2)で示される。
【0021】
【化5】

【0022】
尚、これら成分(B)は単独で又は2種を組み合わせて使用することがでる。
【0023】
本発明の成分(B)の配合量は、本発明の効果を有する範囲においては特に限定はされないが、組成全体に対して3〜25重量%が好ましい。配合量が3重量%未満では洗浄力が弱くなる場合があり、25重量%を超えて配合してもその効果は変わらない。
【0024】
また、成分(A)と(B)との質量比(B)/(A)は、0.15〜0.65が好ましい。0.15未満では洗浄力が弱くなる場合があり、0.65を超えて配合すると洗浄力は高くなるものの泡性能が損なわれる場合がある。
【0025】
本発明に使用できる成分(C)の炭素数8〜16のアルキルグルコシドは、下記の一般式(3)で示される。
【0026】
【化6】

【0027】
上記一般式(3)で示されるアルキルグルコシドは、デシルグルコシド及びラウリルグルコシドが好ましい。前記のアルキルグルコシドは、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
本発明の組成物中の成分(C)の配合量は組成全体に対して5重量%以上である。5重量%未満では、十分な泡性能が得られない。
【0029】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、本発明の必須成分に加え、通常洗浄剤に配合可能な成分、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール等の保湿剤、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などの界面活性剤、油脂、エステル油、炭化水素油、シリコーン油等の油剤、アルキルセルロース等の増粘剤、高分子化合物などの感触向上剤、エタノールなどの溶媒、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸や水酸化カリウム等のpH調整剤、タルク、セルロース、金属石けん、顔料等の粉体、香料、紫外線吸収剤、殺菌剤、防腐剤、酸化防止剤、安定化剤、パール化剤、キレート剤、色素、着色剤、エキス類、スクラブ剤抗、ニキビ剤等を適宜配合することができる。
【0030】
本発明の皮膚洗浄剤組成物のpHは、皮膚への影響等を考慮し、4〜11程度が好ましい。
【0031】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、各構成成分を適宜混合して製造することができ、用いる成分の性状等により、必要に応じて、投入順序の変更、加温、冷却、撹拌混合等を行うことにより得られる。また、その形状は、液状、クリーム状、固形状等好みに応じ調製することが出来る。
【実施例】
【0032】
以下、実施例にて本発明を詳述するが、本発明はこの実施例により限定されない。
【0033】
実施例1〜4,比較例1〜3を表1に示す。なお、実施例及び比較例の処方は、脂肪酸等の油性成分及び保湿剤、多価アルコールや防腐剤、及び界面活性剤を加熱溶解し、80℃に保ち、予め精製水にて溶解した水酸化カリウム油相中に添加し、中和させる。その後、精製水にて溶解させたキレート剤を添加し撹拌混合し、冷却し、作製した。
【0034】
評価項目と評価結果と、成分(A)である高級脂肪酸を水酸化カリウムで中和させて生成された高級脂肪酸石けんの計算量、及び成分(A)と成分(B)の重量比(B)/(A)を表1示す。また、以下に評価項目の評価方法を説明する。
【0035】
(1)泡性能の評価
10名の専門パネラーによる官能評価を行い、泡量、泡質、泡立ちの速さの3項目について、それぞれ下記基準に基づいて評価した。10名の評価点の平均値を算出し、3.0点未満を×、3.0点以上4.0点未満を△、4.0点以上4。5点未満を○、4.5点以上を◎とした。
【0036】
(泡量の評価基準)
5点:非常に多い
4点:やや多い
3点:ふつう
2点:やや少ない
1点:少ない
【0037】
(泡質の評価基準)
5点:泡が細かくクリーミィ
4点:泡は細かいがややクリーミィさに欠ける
3点:泡に細かさがないが粗くもない
2点:泡がやや粗い
1点:泡が粗い
【0038】
(泡立ちの速さの評価基準)
5点:非常に速い
4点:やや速い
3点:ふつう
2点:やや遅い
1点:遅い
【0039】
(2)洗浄力の評価
10名の専門パネラーによる洗浄力評価を行った。皮膚に市販の油性ファンデーションを使用した状態で、水道水で20%水溶液に調整した洗浄剤組成物を泡立てて洗顔し、すすいだ後のファンデーションの落ちを、下記基準に基づいて評価した。10名の評価点の平均値を算出し、2.0点未満を×、2.0点以上3.0点未満を△、3.0点以上4.0点未満を○、4.0点以上を◎とした。
【0040】
(洗浄力の評価基準)
5点:メイクが殆ど落ちた
4点:メイクが落ちた
3点:メイクが少し落ちた
2点:メイクがあまり落ちない
1点:メイクが全く落ちない
【0041】
【表1】

【0042】
表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜4の洗浄剤組成物は、いずれもメーキャップへの洗浄力が高く、泡性能に優れていた。一方、成分(B)非配合の比較例1は、泡性能に優れていたものの、洗浄力が弱かった。また、比較例2では、洗浄力は優れているものの、成分(C)のアルキルグルコシドがないため、泡性能に不満の残る結果であった。比較例3では、成分(A)と成分(B)の重量比(B)/(A)が0.65を超えているため、洗浄力は高かったものの、泡性能に問題があった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の洗浄剤組成物は、洗浄力が高く、かつ泡性能に優れているため、全身洗浄料、洗顔料、ハンドソープ等の皮膚洗浄剤に広く応用が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)〜(C)を含有し、(A)の配合量が組成全体に対して15〜40重量%、(B)の配合量が組成全体に対して3〜25重量%、(C)の配合量が組成全体に対して5重量%以上であり、且成分(B)と(A)との配合重量比(B)/(A)が0.15〜0.65であることを特徴とする洗浄剤組成物。
(A)アニオン性界面活性剤
(B)一般式(1)で示されるラウリン酸ポリグリセリル−10及び/又は一般式(2)で示されるテトラグリセリンモノラウリルエーテル
【化1】

【化2】

(C)一般式(3)で示される炭素数8〜16のアルキルグルコシド
【化3】


【公開番号】特開2008−94812(P2008−94812A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281755(P2006−281755)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(591230619)株式会社ナリス化粧品 (200)
【Fターム(参考)】