説明

洗浄方法及び洗浄装置

【課題】細棒材に形成された止まり穴の内部を簡単に且つ確実に洗浄する。
【解決手段】止まり穴2が形成された中間素材1を閉鎖容器10に収容し、減圧ポンプ11によって閉鎖容器10の内部を減圧すると共に液タンク12から洗浄液を供給して中間素材1、止まり穴2を浸漬し、昇圧部材13によって閉鎖容器10の内部を昇圧し、洗浄液を排水した後、閉鎖容器10の内部を再度減圧することで、中間素材1に形成された止まり穴2を洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細棒材に形成された止まり穴の内部に入り込んだ異物を排除し得るようにした洗浄方法と、この洗浄方法を実施するための洗浄装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば手術の際に患部を縫合する医療用アイレス縫合針は、直径が約0.10mm〜約1.60mm程度で長さが数十mmの鉄系金属からなる素材の端面に、素材の直径の略半分の直径を持つ止まり穴が形成され、この止まり穴に患部を縫合する縫合糸が結合される。
【0003】
上記医療用アイレス縫合針の止まり穴は、端面にドリル加工或いはレーザー加工を施すことによって形成されている。そして、端面に止まり穴が形成された中間素材を更に加工して目的の医療用アイレス縫合針を形成した後、止まり穴に縫合糸の端部を挿入して外周部分をかしめ加工することで結合している。
【0004】
医療用アイレス縫合針を製造するに際し、長尺状の材料から素材を切断したとき、また素材の端面に止まり穴をドリル加工によって形成したとき、これらの機械加工された部位にはバリが生じる。また素材の端面に止まり穴をレーザー加工によって形成したとき、素材の端面には蒸発した母材を含む溶融物(スパッタ)が付着する。このため、素材の端面に止り穴を形成した後、止り穴の周縁及び端面の外周縁のバリ取り加工や、端面のスパッタの除去加工を施している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療用アイレス縫合針の素材の端面に形成された止まり穴の周縁、及び端面の外周縁のバリ取り加工や、端面に付着したスパッタの除去加工を施すのに伴って、微細な切粉が生じ、この切粉が止まり穴の内部に入り込んでしまうことがある。そして、止まり穴の内部に切粉が入り込んだまま焼き鈍し等の熱処理を施した場合、切粉が止まり穴の内面に焼き付いてしまい、止まり穴に対する縫合糸の挿入を妨げてしまうという問題や、かしめる際に焼き付いた切粉が縫合糸を傷つけてしまう虞が生じる。
【0006】
このため、止まり穴の内部に入り込んだ切粉をエアブローして排除する作業を行うが、前述したように止まり穴の径が約0.05mm〜約1.3mm程度であることと、1本ずつ治具に固定して作業を行う必要があるため、この作業に手間がかかるという問題が生じている。
【0007】
また医療用アイレス縫合針の製造過程で化学研磨を行うが、この化学研磨工程を終了した後、止まり穴の内部に入り込んだ化学研磨液を充分に排除しておくことが必要である。しかし、前述したように止まり穴の径が極めて小さいため、止まり穴の内部に入り込んだ化学研磨液を排除する作業に手間がかかるという問題が生じている。
【0008】
本発明の目的は、細棒材に形成された止まり穴の内部を簡単に且つ確実に洗浄することが出来る洗浄方法とこの方法を実施することができる洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る洗浄方法は、止まり穴が形成された細棒材を閉鎖容器に収容し、前記閉鎖容器の内部を減圧すると共に該閉鎖容器に洗浄液を供給して閉鎖容器に収容された細棒材に形成された止まり穴を浸漬し、閉鎖容器の内部の減圧を停止すると共に該閉鎖容器の内部を昇圧し、閉鎖容器の内部を排水した後、該閉鎖容器の内部を再度減圧することで、細棒材に形成された止まり穴を洗浄することを特徴とするものである。
【0010】
上記洗浄方法に於いて、細棒材が、鋭い針先或いは鈍い針先を有するもの、又は湾曲したものであると好ましい。
【0011】
また本発明に係る洗浄装置は、止まり穴が形成された細棒材を収容して閉鎖空間を形成する閉鎖容器と、前記閉鎖容器に接続され該閉鎖容器の内部を減圧する減圧部材と、前記閉鎖容器に接続され該閉鎖容器に洗浄液を供給する洗浄液供給部材と、前記閉鎖容器に接続され減圧された閉鎖容器の内部を昇圧する昇圧部材と、を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る洗浄方法では、閉鎖容器に止まり穴を形成した細棒材を収容して該閉鎖容器の内部を減圧すると共に洗浄液を供給することで、閉鎖容器の内部に収容されている細棒材の止まり穴を浸漬し、その後、閉鎖容器の内部を昇圧させることで、洗浄液を止まり穴の内部に充填することができる。そして、閉鎖容器の内部から洗浄液を排水した後、この閉鎖容器の内部を再度減圧することで、止まり穴の内部に入り込んでいる洗浄液を排除し、同時に異物を排除することができる。
【0013】
このように、閉鎖容器に収容された細棒材に形成された止まり穴まで洗浄液で浸漬し、この閉鎖容器の内部を昇圧させることで、洗浄液を強制的に止まり穴の内部に充填することができる。そして閉鎖容器から洗浄液を排水した後、該閉鎖容器の内部を再度減圧することで、止まり穴に充填された洗浄液を排除することができ、このとき、同時に止まり穴に入り込んだ切粉や、化学研磨液等の異物を排除することができる。
【0014】
特に、細棒材が針先を有する構成や、湾曲している構成の場合、従来は、1本ずつ冶具に固定させて切れ味が落ちないように注意を払いながらエアブロー等で洗浄作業を行う必要があったが、本発明に係る洗浄方法では、方向性を気にすることなくまとめて閉鎖容器に収容するだけで、止まり穴を洗浄することができるとともに、針先に触れずに作業を行うことができるため、切れ味の劣化を防ぐことができる。
【0015】
また本発明の洗浄装置では、閉鎖容器に止まり穴が形成された細棒材を収容することが可能であり、細棒材を収容した後、閉鎖空間を形成することができる。また、減圧部材によって閉鎖容器の内部を減圧することができる。また洗浄液供給部材によって閉鎖容器に洗浄液を供給することができる。更に、昇圧部材によって減圧された閉鎖容器の内部を昇圧することができる。このため、本発明の洗浄方法を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る洗浄方法と洗浄装置について説明する。本発明の洗浄方法は極めて細い棒状の材に形成されている止まり穴の内部を洗浄して、該止まり穴に入り込んだ切粉や化学研磨液等の異物を排除し得るようにしたものである。また本発明の洗浄装置は、前記洗浄方法を合理的に実施し得るように構成したものである。
【0017】
本発明に於いて、止まり穴を形成した細棒材を対象とする製品を限定するものではなく、端面に或いは側面に止まり穴が形成された極めて細い棒状の材であれば良い。このような細棒材を素材とする代表的な製品に医療用アイレス縫合針(以下単に「アイレス針」という)があり、この発明はアイレス針を製造する際に好ましく採用することが可能である。
【0018】
上記アイレス針は、元端面に止まり穴が形成されており、元端面から先端に向けて元端部、胴部、針先部が形成されている。また全体の形状や太みは縫合すべき組織に対応させて選択しうるように多数の種類が提供されている。
【0019】
このようなアイレス針では患部を縫合する際に生体組織を刺し通すのに対抗し得るだけの硬さと強さが必要である。このため、アイレス針を構成する材料として、ピアノ線を含む鋼線材、ステンレス鋼からなる線材等が選択的に採用されている。ピアノ線やマルテンサイト系ステンレス鋼の場合、熱処理により所望の硬度を得ることが可能であり、強度も満足し得るが、流通過程での錆が生じる虞がある。またオーステナイト系ステンレス鋼の場合、錆が生じる虞がないが、熱処理による硬化を期待することができない。このような材料に応じた特性を考慮したとき、アイレス針の材料として、冷間線引き加工することで加工硬化させたオーステナイト系ステンレス鋼を用いることが好ましい。
【0020】
アイレス針は最も太いサイズでも太みが約1.60mm程度であり、最も細いサイズでは太みが約0.10mm程度である。そして前記太みの範囲内で複数のサイズのアイレス針が設定されている。また、止まり穴の径は、約0.05mm〜約1.30mmの範囲に設定されている。また止まり穴の深さは、約0.5mm〜約3.0mm程度の範囲に設定されており、穴径の2倍以上となる深穴として形成されている。
【0021】
細棒材に止まり穴を形成する際の加工方法は特に限定するものではなく、ドリルによる加工方法や、レーザー加工、放電加工等の加工方法を採用することが可能である。特に、比較的大きい径の止まり穴を加工する場合、止まり穴の寸法精度や加工に要する時間等を考慮したときドリルによる機械加工であることが好ましい。また止まり穴の径が小さい場合、レーザーによる加工であることが好ましい。
【0022】
ドリルにより加工する止まり穴の径の範囲とレーザーにより加工する止まり穴の径の範囲を限定するものではないが、アイレス針を製造する工程では、約0.5mmを境界としてこれよりも大きい径ではドリル加工を採用し、これよりも小さい径ではレーザー加工を採用することが好ましい。
【0023】
閉鎖容器は細棒材を収容した後、内部の減圧、昇圧、洗浄液の供給及び排水が行われる。このため、閉鎖容器としては開閉可能な容器であり、閉鎖したときに適度な密閉状態を保持し得る構造であることが必要である。また、閉鎖容器の大きさは特に限定するものではないが、複数の細棒材を収容し得るような大きさであることが好ましい。
【0024】
閉鎖容器の内部を減圧する場合、減圧された圧力の値は特に限定するものではないが、本件発明者等の実験では、約−60kPa〜約−130kPaの範囲内であれば良く、好ましくは約−75kPa〜約−110kPaの範囲であった。
【0025】
細棒材を収容した閉鎖容器の内部を上記の如き範囲で減圧する減圧手段としては、該閉鎖容器に接続された真空ポンプであることが好ましいが、必ずしも真空ポンプである必要はなく、ブロワやファン等であっても良い。更に、ブロワやファンと真空ポンプを並列に配置した減圧手段であっても良い。何れにしても、閉鎖容器の容量や、洗浄の際に必要とされる真空度等の条件に対応させて適宜選択することが好ましい。
【0026】
洗浄液は、細棒材に形成された止まり穴に入り込んでいる異物に対応させて適宜選択することが好ましい。例えば止まり穴に入り込んだ切粉を排除することを目的とした洗浄の場合、洗浄液として、炭化水素系洗浄液・水系洗浄液・有機溶剤・工業用水・水道水・純水のうちいずれも使用可能であり、また止まり穴に入り込んでいる化学研磨液を排除することを目的とした洗浄の場合、洗浄液として純水或いは化学研磨液を中性化し得る液を用いることが好ましい。また、どちらの洗浄液も予め脱泡しておくとなお良い。
【0027】
細棒材を洗浄する洗浄液の温度は特に限定するものではなく、常温或いは室温で十分であるが、多少暖かめの温度である約40℃〜45℃程度に上昇させても良い。
【0028】
洗浄液は閉鎖容器の内部と接続された洗浄液容器に収容され、閉鎖容器の減圧に伴って供給され、閉鎖容器の昇圧に伴って排水されるように構成することが好ましい。このとき、排水された洗浄液を廃水として排水するか、洗浄液として再利用するかを選択し、廃水として排水する場合いは廃水処理装置に導き、洗浄液として再利用する場合には洗浄液容器に戻すように構成することが好ましい。
【0029】
閉鎖容器を昇圧させる場合、該閉鎖容器の内部にブロワやファン或いはコンプレッサー等の昇圧手段と接続しておきこれらの昇圧手段を駆動することによって閉鎖容器の内部を昇圧させることが好ましい。しかし、必ずしも前記の如き昇圧手段を必要とするものではなく、減圧されている閉鎖容器の内部に大気を導入することでも、閉鎖容器の内部を昇圧させたことになるため、このように構成しても良い。
【0030】
本発明の洗浄方法では、洗浄すべき細棒材を閉鎖容器の内部に収容した後、内部を減圧することで洗浄液を供給して細棒材を浸漬する。このとき、浸漬された細棒材に形成さrた止まり穴に洗浄液が浸入することが好ましいが、確実な浸入を保証し得るものではない。このため、細棒材を洗浄液によって浸漬した後、閉鎖容器の内部を昇圧させることで洗浄液を止まり穴の内部に確実に浸入させている。
【0031】
そして、閉鎖容器から洗浄液を排水した後、該閉鎖容器の内部を再度減圧することで、止まり穴に浸入している洗浄液を該止まり穴から排除し、同時に止まり穴に入り込んでいる切粉や化学研磨液等の異物を排除している。
【0032】
上記の如く、洗浄すべき細棒材を閉鎖容器に収容して洗浄液による浸漬、昇圧に伴う確実な洗浄液の止まり穴に対する浸入、洗浄液を排水した後の閉鎖容器の内部の減圧に伴う洗浄液の止まり穴の内部からの排除、からなる一連の工程を経ることによって、止まり穴からの洗浄液の排除に伴って、該止まり穴に入り込んでいる異物の排除を行うことが可能である。
【0033】
閉鎖容器の内部の減圧工程、閉鎖容器に対する洗浄液の供給工程、閉鎖容器の内部の昇圧工程、洗浄液の排水工程、閉鎖容器の内部の減圧工程、からなる一連の工程は1回の洗浄作業で何度繰り返しても良い。この繰り返し回数は特に限定するものではなく、洗浄すべき細棒材の止まり穴に入り込んでいる異物の量や種類に対応させて選択することが好ましい。
【0034】
少なくとも上記一連の工程を1回経ることで、細棒材の止まり穴に入り込んでいる異物の排除を行うことが可能である。
【実施例1】
【0035】
次に、本実施例に係る洗浄装置の構成について図を用いて説明し、合わせて洗浄方法について説明する。図1は洗浄装置の構成を説明する図である。図2は細棒材としてのアイレス針の素材の構成を説明する図である。
【0036】
先ず、図2によりアイレス針の中間素材1の構成について説明する。中間素材1は、目的のアイレス針に対応した太みと長さとを有する直線状の細長い棒材として構成されている。中間素材1の先端側には、組織を刺通する針先1aが形成され、該針先1aに連続してテーパ状に太みが拡大する針先部1bが形成されている。また針先部1bに連続して略同じ太みを持った胴部1cが形成され、更に、胴部1cに連続して元端部1dが形成されている。元端部1d側の端面である元端面1eに、胴部1cの太みの約半分の径を持った止まり穴2が形成されている。
【0037】
中間素材1に形成された針先1a、針先部1bは、夫々目的のアイレス針に対応した形状を有している。即ち、目的のアイレス針が鈍針である場合には、針先1aは球状に形成されると共に針先部1bは断面が円形のテーパ状に形成されている。また目的のアイレス針が切刃を有する針である場合には、針先1aは鋭い尖端として形成されると共に針先部1bは断面が多角形で複数の稜線に切刃が形成されている。
【0038】
また、止まり穴2は径によって異なるものの、深さは約0.5mm〜約3.0mm程度の範囲で形成されている。中間素材1の止まり穴2には、元端面1eに付着したバリやスパッタを除去したときに生じた切粉(粉塵状の切粉)が入り込んでいることが多く、このため、中間素材1に対する止まり穴2の加工及びバリやスパッタを除去する作業が終了した後、該止まり穴2に対する洗浄を行うことが好ましい。しかし、必ずしも止まり穴2の加工とバリやスパッタを除去した直後に洗浄を行う必要はなく、より後工程で行っても良い。
【0039】
例えば、図1に示す直線状の中間素材1を湾曲加工して目的のアイレス針の形状に加工した後、化学研磨又は電解研磨をするのが一般的であるが、この化学研磨工程又は電解研磨工程では、湾曲加工後の中間素材1を酸性或いはアルカリ性の液体に浸漬して表面の研磨を行うため、化学研磨工程又は電解研磨工程が終了した後で洗浄することでも良い。従って、湾曲加工に入る以前の中間素材1に対して洗浄する場合は直線状の細棒材を取り扱うこととなり、湾曲加工後の中間素材に対して洗浄する場合は湾曲状の細棒材を取り扱うこととなる。
【0040】
直線状の中間素材1、或いは湾曲した中間素材は夫々寸法が小さいため、洗浄液が容易に流通し得るような容器に多数本収容した状態で洗浄することが可能である。即ち、多数の直線状の中間素材1、或いは多数の湾曲した中間素材を籠状又は箱状の容器に収容した状態で洗浄することが好ましい。
【0041】
次に、図2により洗浄装置10の構成について説明する。洗浄装置Aは、内部に閉鎖空間を形成する閉鎖容器10と、閉鎖容器10に接続された減圧部材となる減圧ポンプ11と、閉鎖容器10に接続され該閉鎖容器10に洗浄液を供給する洗浄液供給部材となる液タンク12と、閉鎖容器10と接続され該閉鎖容器10の内部を昇圧する昇圧部材13と、を有して構成されている。
【0042】
閉鎖容器10は、容器本体10aと、該容器本体10aに対し着脱可能に構成された蓋体10bとからなり、容器本体10aに蓋体10bを被せてボルト、ナット10c等の固定手段によって固定したとき、内部に閉鎖空間を形成することが可能である。容器本体10aの寸法や容積は特に限定するものではなく、多数の中間素材を収容することが可能な容器3を収容し得るような寸法であれば良い。
【0043】
閉鎖容器10は減圧ポンプ11の稼動に伴って内部が減圧される。このため、可及的にリークが少なくなるように、容器本体10aに蓋体10bを被せてボルト、ナット10cを利用して固定したとき、内部が密閉された空間となることが好ましい。このため、容器本体10aと蓋体10bとが接触する面には図示しないガスケットが設けられている。尚、容器本体10aと蓋体10bとの間にガスケットを設けることによってリークを防ぐことが可能となり、この場合、ボルト、ナット10cによって固定する必要がなくなる。
【0044】
尚、閉鎖容器10の構造は本実施例に限定するものではなく、内部に中間素材を挿入して閉鎖空間を形成することが可能な構造であれば良い。
【0045】
容器本体10aの内面には、液タンク12から供給される洗浄液の液面を制御するために一対の液面センサ14a、14bが設けられている。液面センサ14aは上位液面を検知して信号を発生するものであり、液面センサ14bは下位液面を検知して信号を発生するものである。
【0046】
減圧ポンプ11は、閉鎖容器10の上方から内部を吸引して減圧し得るように構成されている。即ち、減圧ポンプ11は上位液面よりも上方の空間から吸引して内部を減圧し得るように構成されている。このため、容器本体10aの底部には減圧ポンプ11に接続され且つ上位液面よりも上方で開口する長ニップル10dが起立している。
【0047】
尚、減圧ポンプ11の閉鎖容器10の内部に於ける開口部位は、上位の液面を検出する液面センサ14aよりも上部にあれば良く、必ずしも長ニップル10dを用いて底面から起立させる必要はなく、図示しない短ニップルを液面センサ14aよりも上方に於ける容器本体10aの側面に設置しても良い。
【0048】
減圧ポンプ11と容器本体10aとの間には電磁弁15が設けられており、該電磁弁15の開閉に伴って閉鎖容器10の内部を減圧し、或いは減圧を停止し得るように構成さtれている。また減圧ポンプ11と電磁弁15との間に電磁弁16、圧力センサ17を介して補助タンク18が接続されている。
【0049】
補助タンク18は、減圧ポンプ11によって内圧が予め設定された圧力になるように減圧されており、大気圧が作用している閉鎖容器10の内部を短時間で減圧する際に利用されるものである。この補助タンク18により閉鎖容器10の内部の圧力が一気に減圧されるため、止まり穴の異物除去を効率的に行うことが可能となる。尚、容器本体10の容積が小さい場合は補助タンク18、圧力センサ17、電磁弁16は無くても良い。
【0050】
液タンク12は、電磁弁20を有する供給配管20aと、電磁弁21を有する排水配管21aを介して容器本体10aと接続されている。供給配管20aは、容器本体10aの底部に設けたノズル10eに接続されており、該ノズル10eを利用して容器本体10aの内部に洗浄液を供給し得るように構成されている。
【0051】
また、排水配管21aに於ける電磁弁21と液タンク12との間から排水管21bが派生しており、該配水管21bに弁21cが設けられている。この弁21cは電磁弁であっても良く、また手動弁であっても良い。
【0052】
昇圧部材13は減圧されている閉鎖容器10の内部を昇圧するものである。即ち、現在大気圧以下に減圧されている閉鎖容器10の内部を昇圧し得るものであれば良く、該閉鎖容器10の内部を大気圧よりも高い圧力に昇圧させる必要はない。このため、昇圧部材13としては、大気に開放した電磁弁であって良い。本実施例では、電磁弁13によって昇圧部材13を構成している。
【0053】
尚、昇圧部材13として、ブロワやコンプレッサー等の昇圧機器を用いても良いことは当然である。
【0054】
また電磁弁13と容器本体10aの間には、常に閉鎖容器10の内部圧力を検知するための圧力センサ22が設けられている。
【0055】
次に、上記の如く構成された洗浄装置Aによって細棒材となるアイレス針の中間素材を洗浄する際の手順について説明する。
【0056】
先ず、蓋体10bを容器本体10aから離脱させておき、この容器本体10aに多数の中間素材1を収容した容器3を収容する。その後、容器本体10aに蓋体10bを被せてボルト、ナット10cにより固定し、閉鎖容器10の内部を閉鎖空間とする。このとき、減圧ポンプ11は停止しており、また各電磁弁15、16、20、21、13は夫々閉止されている。
【0057】
容器本体10aに蓋体10bを固定した後、減圧ポンプ11を作動させると共に電磁弁15を開放する。これに伴って、閉鎖容器10の内部が減圧される。閉鎖容器10の内部圧力(約−60kPa〜約−130kPaの範囲、好ましくは約−75kPa〜約−110kPaの範囲)は圧力センサ22によって監視され、圧力が予め設定された値になったとき、該圧力センサ22から信号が発生する。
【0058】
圧力センサ22からの信号に応じて電磁弁20が開放し、液タンク12に収容されている洗浄液が閉鎖容器10の内部に供給される。そして洗浄液の水位を液面センサ14aが検知したとき、該液面センサ14aから信号が発生し、この信号に応じて電磁弁20を閉止すると共に、電磁弁15の開放状態を継続させる。
【0059】
上記の如くして閉鎖容器10に洗浄液を供給することにより、閉鎖容器10に収容された中間素材1は洗浄液に浸漬され、該中間素材に形成された止まり穴2に洗浄液が入りこむ、しかし、止まり穴2の内部に空気が存在するような場合には、止まり穴2に気泡が形成されて洗浄液の浸入を妨害することがある。
【0060】
閉鎖容器10を減圧して中間素材1を洗浄液に浸漬した状態を保持した後、電磁弁13を開放し、同時に電磁弁15を閉止すると共に電磁弁16を開放する。電磁弁13の開放に伴って閉鎖容器10の内部は大気圧まで上昇し、この圧力が洗浄液に作用するため、中間素材1の止まり穴2に対し、確実に洗浄液が浸入することになる。
【0061】
また、減圧ポンプ11は継続して稼動しており、この状態での吸引は補助タンク18に対して行われる。補助タンク18の内圧は圧力センサ17によって監視され、該補助タンク18の内圧が予め設定された圧力(約−60kPa〜約−130kPaの範囲、好ましくは約−75kPa〜約−110kPaの範囲)まで減圧したとき、圧力センサ17から信号が発生し、この信号に応じて電磁弁16が閉止する。
【0062】
上記状態で数秒保持した後、電磁弁21を開放し、閉鎖容器10内の洗浄液を排水する。このとき、洗浄液の状態に応じて、電磁弁20、21を開放して液タンク12に戻すか、弁21cを開放して廃水として廃水処理施設に流す。このとき、中間素材1の止まり穴2に浸入していた洗浄液も流出し、この流出に伴って止まり穴2に入り込んでいた切粉も排除される。しかし、中間素材1の止まり穴2に浸入した洗浄液が確実に排除されたか否かの保証はない。
【0063】
閉鎖容器10内の洗浄液の排水によって該洗浄液の水位が液面センサ14bによって検知され、該液面センサ14bから信号が発生する。この状態で、閉鎖容器10の内部には洗浄液が略排水されたこととなる。
【0064】
液面センサ14bからの信号に伴って、電磁弁13、20、21が閉止し、同時に電磁弁15、16が開放して閉鎖容器10の内部を減圧し、設定時間経過後、電磁弁16を閉止する。このときの減圧に伴って、中間素材1の止まり穴2に浸入していた洗浄液は該止まり穴2から排除され、同時に切粉も排除される。このため、閉鎖容器10内の減圧状態を適度な時間保持することによって、止まり穴2に入り込んだ切粉を排除する洗浄を完了することが可能である。
【0065】
そして、上記状態を保持した後、電磁弁13、16を開放すると共に電磁弁15を閉止することで、閉鎖容器10の内部に大気圧を導入し、その後、ボルト、ナット10cの固定を解除して蓋体10bを容器本体10aから離脱させて、容器3を取り出すことで、多数の中間素材1に対する洗浄が終了する。
【0066】
尚、上記サイクルによって中間素材1に対する洗浄が不充分である場合、閉鎖容器10に対する洗浄液の供給、排水、の工程を複数回繰り返すことで、より確実な洗浄を行うことが可能である。
【0067】
また、洗浄の目的が止まり穴2に入り込んだ化学研磨液を排除するような場合でも、上記と同じ工程を実施することで、化学研磨液を排除して洗浄することが可能である。特に、化学研磨液の洗浄の場合、洗浄液として中和剤を用いることで、より効果的な洗浄を行うことが可能となる。
【0068】
また、予め容器本体10aの底部に超音波振動子を取り付けておき、中間素材1を洗浄液によって浸漬したとき、該超音波振動子を作動させるようにすると、より効率良く止まり穴に入り込んでいる切粉を排除することが可能である。ただし、中間素材1が鋭い針先を有する細棒材である場合は、超音波振動を与えると針先の切れ味が劣化する可能性もあるため、上記の通り、洗浄を複数回繰り返すなどして、製品や用途に応じ、洗浄方法を選択することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の洗浄方法は、極めて細い細棒材に、極めて小さい径を持った止まり穴が形成されているような製品を洗浄する際に利用して有利である。
【0070】
また、本発明の洗浄装置は、本発明の洗浄方法を合理的に実施できるため有利である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】洗浄装置の構成を説明する図である。
【図2】細棒材としてのアイレス針の素材の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0072】
A 洗浄装置
1 中間素材
1a 針先
1b 針先部
1c 胴部
1d 元端部
1e 元端面
2 止まり穴
3 容器
10 閉鎖容器
10a 容器本体
10b 蓋体
10c ボルト、ナット
10d 長ニップル
11 減圧ポンプ
12 液タンク
13 昇圧部材、電磁弁
14a、14b 液面センサ
15、16、20、21
電磁弁
17、22 圧力センサ
18 補助タンク
20a 供給配管
21a 排水配管
21b 排水管
21c 弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
止まり穴が形成された細棒材を閉鎖容器に収容し、前記閉鎖容器の内部を減圧すると共に該閉鎖容器に洗浄液を供給して閉鎖容器に収容された細棒材に形成された止まり穴を浸漬し、閉鎖容器の内部の減圧を停止すると共に該閉鎖容器の内部を昇圧し、閉鎖容器の内部を排水した後、該閉鎖容器の内部を再度減圧することで、細棒材に形成された止まり穴を洗浄することを特徴とする洗浄方法。
【請求項2】
前記細棒材が、針先を有することを特徴とする請求項1に記載した洗浄方法。
【請求項3】
前記細棒材が、湾曲していることを特徴とする請求項1に記載した洗浄方法。
【請求項4】
止まり穴が形成された細棒材を収容して閉鎖空間を形成する閉鎖容器と、前記閉鎖容器に接続され該閉鎖容器の内部を減圧する減圧部材と、前記閉鎖容器に接続され該閉鎖容器に洗浄液を供給する洗浄液供給部材と、前記閉鎖容器に接続され減圧された閉鎖容器の内部を昇圧する昇圧部材と、を有することを特徴とする洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−202216(P2009−202216A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49162(P2008−49162)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(390003229)マニー株式会社 (66)
【Fターム(参考)】