説明

洗浄装置およびこれに用いる治具

【課題】ワークを治具により姿勢制御可能な洗浄装置において、省スペースで安定した治具を提供することを目的とする。
【解決手段】治具2は、外枠3と、基台10と接続可能な接続台4と、ワークWを保持するための支持台5と、リンク機構とを備える。リンク機構は、外枠3に一端が回転可能にジョイントされ、他端が支持台5に回転可能にジョイントされた2つのリンク6aと、接続台4にヒンジ8bにより回転可能にジョイントされたロッド8aを備えた2つのエアシリンダ8とを有する。この構成により、エアシリンダ8のロッド8aが動作することで、リンク6aが回転すると共に、ワークWの中心を回転中心としてワークWの姿勢制御をすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク、たとえば機械加工部品や機械加工製品(金属製、樹脂製等)など、の表面に付着する金属屑片や樹脂屑片、ガラス粉、有機性油脂分等の残留付着物(以下、残留異物ともいう)を、洗浄ノズルから流体を噴射して洗い流すための洗浄装置およびこれに用いる治具に関し、特に、ワークを姿勢制御してワークを各面から洗浄する洗浄装置およびこれに用いる治具に関する。
【背景技術】
【0002】
このような先行技術として、たとえば特許文献1のように、ワークWを支持するテ−ブル30が駆動用モータ30eを支点として、水平軸を中心に垂直方向に90度傾斜することができ、これによりワ−クWの洗浄面を多関節形ロボットの正面に向け、多関節形ロボットに設けられた洗浄ノズルがワ−クの各面を洗浄する構成とする洗浄装置が開示されている。
【0003】
一方、特許文献2のように、洗浄室80と、流体をワーク30に噴射するノズル71・72と、ワーク30を姿勢制御自在に載置するテーブル5と、テーブル5とは垂直の仮想軸に対する傾斜角度を持ってテーブル5に植設されたテーブル旋回軸50と、テーブル旋回軸50を回転自在に軸支する支持具4と、前記テーブル旋回軸50に対する傾斜角度を持って配され前記支持具4を 回転自在に軸支するシャフト40とを備えた洗浄装置が開示されている。このようにワークを載置するテーブルが傾斜したシャフトにより回転可能に配されているため、テーブルの回転によりワークの姿勢を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−104578号公報(0022、0023、図4参照)
【特許文献2】特開2004−141811号公報(0030、0031、図4、図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、テーブルの端部を中心にワークが回転するため、ワークの姿勢制御がワーク中心より大きく偏心する必要があり、大きなスペースを必要とする。さらに、ワークを姿勢制御して各表面を洗浄する場合、洗浄ノズルの移動距離(ストローク)も大きくなり(図6(a)中のS1参照)、装置全体がより大きくなる。また、洗浄ノズルの移動距離が大きいと洗浄にも時間を要し非効率的である。
【0006】
一方、特許文献2では、テーブルが傾斜したシャフトによって支持されているため、テーブルに載置したワークも傾斜したシャフトで支持されることとなる。そのため、重量の大きいワークを洗浄する際など、シャフトに撓みが生じるおそれがある。また、このような洗浄装置は通常NC制御された洗浄ノズルにより精密にワークを洗浄するものが多く、洗浄ノズルをミリ単位で制御するとき、シャフトに微少な撓みが生じると正確な洗浄が行えず一定の洗浄効果を得られないおそれがある。
【0007】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたもので、
(1)ワーク自体の姿勢制御範囲を小さくして効率のよい洗浄を行うことができ、
(2)ワークを載置する支持台(テーブル)を、これに垂直に配したシャフトによって堅牢に支持し、ワーク重量による撓み等の誤差を抑制して正確な洗浄を行える、
洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る洗浄装置は、ワークを、洗浄ノズルから噴射した洗浄流体により洗浄するための洗浄装置であって、
前記洗浄流体を噴射する洗浄ノズルと、上下方向に伸びたシャフトに支持される回転可能な基台と、前記基台に載置でき、前記ワークを支持した状態で、前記ワークの略中心を回転中心として前記ワークの姿勢制御可能な治具と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、ワークの略中心を回転中心に姿勢制御できる。その結果、ワーク各面を洗浄する際、洗浄ノズルの移動距離(ストローク)を抑えることができるため、洗浄を効率よく行うことができる(図6(b)中のS2参照)。また、ワークおよび治具を、上下方向に伸びたシャフトに支持される基台に載置する構成であるため、重量の大きいワークを洗浄する場合にも、しっかりとワークおよび治具を支えることができる。
【0010】
ここで、「洗浄流体」とは、水等の液体や空気等の気体をいう。たとえば気中洗浄の場合、洗浄流体には液体を用いる。液中洗浄の場合は液体または気体を用いる。さらに、「洗浄ノズル」に2流体ノズルを用いて、液体と気体の双方を噴射することとしてもよい。2流体ノズルとは、同心円状に異なる流体を噴射可能であり、洗浄ノズルの中心部から洗浄液体を、その周囲からエアを噴射することができるノズルである。これにより、とくに液中洗浄において、洗浄液体のみを洗浄ノズルから噴射する場合と比較して、より確実にワークの内部まで、たとえば穴の奥まで、洗浄流体が届き洗浄効果が高まる。なお、「基台」には、矩形のものや円形のもの、矩形枠状や円形枠状のものなど、種々の形状のものを用いることができる。
【0011】
請求項2に係る洗浄装置は、前記治具は、外枠と、前記基台と接続するための接続台と、前記ワークを支持するための支持台と、前記接続台と前記支持台との間に配するリンク機構とを備え、
前記リンク機構が、前記接続台または前記外枠に回転可能に一端がジョイントされ、他端が前記支持台に回転可能にジョイントされたリンクと、前記接続台または前記外枠に回転可能に一端がジョイントされ、他端が前記リンクに回転可能にジョイントされた伸縮装置と、前記外枠に設けたガイド溝を摺動可能な前記支持台に固設された摺動部材と、を有することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、伸縮装置が伸びる方向にスライドしてリンクを押すことによって、リンクが接続台とのジョイント部を支点として起き上がり、それと同時に支持台も起き上がる。それと同時に、支持台が、リンクと支持台とのジョイント部を支点に回転しつつ、支持台に固設された摺動部材がガイド溝を摺動して、通常時接続台と平行に配置された支持台が回転して基台と垂直な状態まで傾斜した状態となる。このとき、支持台が起き上がると同時に傾斜しつつ回転するため、ワークはワーク略中心を回転中心として回転し、ワークの姿勢が90度傾斜する。逆に、伸縮装置が縮む方向にスライドすると、ワークはワーク略中心を回転中心として回転し、ワークの姿勢が90度傾斜した状態から通常状態に戻る。
【0013】
これにより、ワークの略中心を回転中心として姿勢制御されるため、ワークの姿勢制御を省スペースで行うことができる。
【0014】
ここで、「伸縮装置」として、たとえばシリンダやモータを用いることができる。
【0015】
請求項3に係る洗浄装置は、前記リンク機構が2つ配され、前記伸縮装置は前記接続台または前記外枠に回転可能に一端がジョイントされ、他端が2つの前記リンクを繋ぐジョイント部材に回転可能にジョイントされていてもよい。
【0016】
この構成によれば、治具に前記リンク機構が2つ配されているため、剛性が高まる。ここで、「ジョイント部材」とは2つの前記リンクを平行に繋ぐ棒状部材等をいう。
【0017】
請求項4に係る洗浄装置は、前記支持台に、前記ワークの前記支持台側の面の一部または全部を露出するための切り欠きが設けられていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、洗浄ノズルによって、支持台側からも洗浄することができる。
【0019】
請求項5に係る洗浄装置は、前記支持台と前記接続台とが平行に位置した状態において前記支持台を補助するための第1補助支持部材と、前記支持台と前記接続台とが垂直に位置した状態において前記支持台を補助するための第2補助支持部材とを備えている。また、これら補助支持部材は、位置(高さ)調整可能に構成することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、各補助支持部材によって、支持台が接続台と平行および垂直の各状態において、支持台がしっかりと保持できる。したがって、洗浄ノズルから洗浄流体が高圧噴射された場合にも、支持台およびワークの位置がずれにくい。
【0021】
請求項6に係る洗浄装置は、前記支持台に、前記ワークを保持するためのクランプが設けられている。
【0022】
この構成によれば、ワークを支持台に保持するとき、クランプがワークの支持を補助し、よりしっかりと保持でき、ワークの位置ずれがより生じにくい。
【0023】
請求項7に係る洗浄装置に用いる治具は、洗浄流体を噴射する洗浄ノズルと、上下方向に伸びたシャフトに支持される回転可能な基台とを有し、ワークを洗浄ノズルから噴射した洗浄流体により洗浄するための洗浄装置における治具であって、
外枠と、前記基台と接続するための接続台と、前記ワークを支持するための支持台と、前記接続台と前記支持台との間に配するリンク機構とを備え、
前記リンク機構が、前記接続台または前記外枠に回転可能に一端がジョイントされ、他端が前記支持台に回転可能にジョイントされたリンクと、前記接続台または前記外枠に回転可能に一端がジョイントされ、他端が前記リンクに回転可能にジョイントされた伸縮装置と、前記外枠に設けたガイド溝を摺動可能な前記支持台に固設された摺動部材とを有し、前記ワークを支持した状態で、前記ワークの略中心を回転中心として前記ワークの姿勢制御が可能である。
【0024】
請求項8に係る洗浄装置に用いる治具は、前記リンク機構が2つ配され、前記伸縮装置は、前記接続台または外枠に回転可能に一端がジョイントされ、他端が2つの前記リンクを繋ぐジョイント部材に回転可能にジョイントされる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明に係る洗浄装置およびこれに用いる治具によれば、ワーク略中心を回転中心としてワークを姿勢制御できるため、洗浄ノズルのストロークも短くでき、省スペースで効率的・効果的にワークを洗浄できる。また、ワークおよび治具が、上下方向に伸延するシャフトに接続された基台によりしっかりと支持されているため、洗浄時のワークの位置ずれが生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る洗浄装置の模式図であって、ワークを載置した状態の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る洗浄装置の模式図であって、ワークの姿勢を90度傾けた状態の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る洗浄装置の治具を2基配置した全体図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る洗浄装置におけるワークを載置した状態の側面図であって、(a)は載置した当初状態、(b)は(a)から水平方向に180度回転した状態、(c)は(a)から姿勢を90度傾けた状態、(d)は(c)から水平方向に180度回転した状態である。
【図5】(a)は、本発明の一実施形態に係る洗浄装置におけるワークを載置した状態の上面図である。(b)は、ワークWの寸法を示す説明図である。
【図6】従来の洗浄装置の治具と、本発明の洗浄装置の治具との洗浄ノズルのストロークを対比した図であって、(a−1)は従来の側面図、(a−2)は従来の上面図、(b−1)は本発明の側面図、(b−2)は本発明の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づき説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0028】
1.[実施形態1]
(洗浄装置および治具の構成)
図1〜図3に示すように、実施形態1に係る洗浄装置1は、治具2を配置してワークWを洗浄するための洗浄室1aを有する。洗浄室1aには、基台10が2基配され、基台10はその下部で洗浄装置1の内部に設けた回転機構11によって、基台10は水平回転(自転)する。なお、本実施形態において回転機構11はモータを動力とする。そして、ワークWを保持した状態の治具2を、基台10に載置し、洗浄室1aの蓋を閉めワークWを洗浄する。
【0029】
治具2は、外枠3と、基台10と接続可能な接続台4と、ワークWを保持するための支持台5と、リンク機構とを備える。
【0030】
基台10と接続台4との接続は、基台10と接続台4に設けられた係合凹部(図示せず)と係合凸部(図示せず)を係合させることで行うため、これらをしっかりと接続できる。
【0031】
リンク機構は、外枠3にピン6bにより一端が回転可能にジョイントされた2つのリンク6aと、接続台4にヒンジ8bにより回転可能にジョイントされた、ロッド8aを備えた2つのエアシリンダ8とを有する。ロッド8aは、2つのリンク6aどうしを繋ぎ固定されたジョイント部材7に、ロッド8a先端に設けた接続部8cで、回転可能にジョイントされる。エアシリンダ8によってロッド8aが伸縮して、ジョイント部材7を介し、リンク6aを押し引きする。これにより、リンク6aがピン6bを中心に回転する。
【0032】
リンク6aの他端は、支持台5に固設された接続部5cに回転可能にピン結合される。また、支持台5に固設された摺動部5dには、外枠3に斜めに傾斜して設けられたガイド溝3aに嵌合する嵌合部が設けられている。嵌合部がガイド溝3aに嵌合された状態で、摺動部5dがガイド溝3aを摺動する。なお、嵌合部に円筒状の部材を用い、ガイド溝3aの幅寸法よりも径を僅かに小さくして適当な隙間を確保することで、スムーズな摺動を行える。また、本実施形態においては摺動抵抗を小さくするため、嵌合部に回転自在のローラを用いている。
【0033】
支持台5の中央には切り欠き5aが設けられており、切り欠き5aの周りにはワークWを載置する4つの保持部5bが設けられ、保持部5bにワークWを取り付ける。なお、ワークWには、あらかじめ治具2に取り付けるための取付孔(図示せず)が設けられ、保持部5bに設けた係合片(図示せず)をワークWの取付孔に差し込み、ワークWを保持部5bに取り付ける。そして、ワークWを取り付けた後、2つのクランプ9によってワークWをしっかりと保持する。
【0034】
洗浄ノズル12は、NC制御されてX,Y,Z方向に移動可能に、洗浄装置1の治具2が配されるべき位置の後方に1つずつ配されている。洗浄ノズル12は洗浄装置1のポンプ(図示せず)に接続され、ポンプから供給された洗浄液が先端から噴射され、ワークWの後方からワークWを洗浄する。なお、洗浄ノズル12には2流体ノズルを用いることもでき、たとえば中心に洗浄液用の噴射口を備え、その周囲にエアを噴射する噴射口を備える構成などとしてもよい。
【0035】
(洗浄装置および治具の動作)
次に、治具2の動作について説明する。
エアシリンダ8のロッド8aが伸びることで、ジョイント部材7を介しリンク6aが押され、リンク6aがピン6bを中心に上方に回転して、支持台5も上方に起き上がる。このとき、摺動部5dはガイド溝3aを斜め上方に摺動して、支持台5は接続部5cのピン6cを中心に下方に徐々に倒れる。そして、当初接続台4と平行な状態の支持台5が、接続台4と垂直な状態に至る。
【0036】
2.[実施形態2]
(洗浄装置および治具の構成)
図4,5に示すように、実施形態2に係る洗浄装置1’および治具2’は、実施形態1に係る洗浄装置1および治具2に、支持台5を補助する補助支持部材を設けた構成である。なお、実施形態1と共通する部分には同一の符号を付す。図4,5においては、ワークWの保持を補助するクランプ9を省略している。
【0037】
治具2’と治具2との相違点は次の通りである。
治具2’には、支持台5を補助するための補助支持部材3b・3cを設けている。補助支持部材3bは接続台4と支持台5とが平行に位置する時に、支持台5を補助支持するためのもので、補助支持部材3cは接続台4と支持台5とが垂直に位置する時に、支持台5を補助支持するためのものである。
【0038】
これに加え、摺動部5dが摺動するガイド溝3aの始端と終端にも補助支持部材3dと3eをそれぞれ配し、摺動部5dを介して支持台5を補助する。また、これら補助支持部材3d、3eは、摺動部5dがガイド溝3aを摺動する際のストッパの役割をし、ガイド溝3aにかかる負荷も補助する。
【0039】
なお、補助支持部材3b〜3eは、ボルトによって位置(高さ)調整可能となっており、支持台5の位置決めの役割も担う。また、これら補助支持部材3b〜3eは、支持台5にそれぞれ左右一対で配置しているため、支持台5が接続台4と平行および垂直の場合に、それぞれ支持台5を4点支持するため、支持台5を安定して支持できる。このようにすれば、たとえばエアシリンダ8のストローク等に遊びを設けた場合にも、バックラッシュを抑制し、支持台5の安定支持を実現できる。
【0040】
これら補助支持部材3b〜3eにより、ワークWの重量が大きい場合や、ワークWに高圧の洗浄液が噴射された場合にも、支持台5がワークWをしっかりと保持し、ずれを抑制することができ、精密な洗浄が可能となる。なお、その他の構成については、実施形態1の洗浄装置1および治具2と同様の構成である。
【0041】
(洗浄装置および治具の動作)
続き、治具2’の動作について説明する。
エアシリンダ8のロッド8aが伸びることで、ジョイント部材7を介しリンク6aが押され、リンク6aがピン6bを中心に上方に回転して、支持台5も上方に起き上がる。このとき、摺動部5dはガイド溝3aを斜め上方に摺動して、支持台5は接続部5cのピン6cを中心に下方に徐々に倒れる。そして、当初接続台4と平行な状態の支持台5が、接続台4と垂直な状態に至る。
【0042】
3.[洗浄方法]
次に、図4,5を用いて、ワークWの洗浄について説明する。
図4(a)に示すように、まず操作者は、ワークWを支持台5に取付ける。そしてこの状態で洗浄ノズル12から洗浄液を噴射しワークW一側面を洗浄する。このとき洗浄ノズル12をNC制御し、洗浄ノズル12をX方向、Y方向に移動してワークWの一側面全体を洗浄する。なお、洗浄ノズル12のストロークは、X方向がワークWの幅寸法w1、Y方向がワークWの高さ寸法h分あればよい。
【0043】
そして、図4(a)の状態から、基台10を回転機構11によって回転させ、支持台5を水平回転させながら、洗浄ノズル12によってワークWの側面を洗浄する。なお、図4(b)は、図4(a)の状態から180度水平回転した状態の図である。その後、ワークWを図4(a)に示す当初状態まで基台10を回転させる。このとき、基台10の回転速度を低速としたり、基台10を複数回、回転させることで、ワークWをしっかりと洗浄するようにしてもよい。
【0044】
図4(a)の状態に戻した後、続き、ワークWの上下面を洗浄する工程に移る。
エアシリンダ8のロッド8aを伸ばし、ジョイント部材7を介してリンク6aを押し込み、支持台5とともにワークWを90度縦回転(姿勢制御)し、図4(c)の状態とする。この状態で、洗浄ノズル12をX方向、Y方向にNC制御しながら、洗浄液をワークWに噴射する。さらに、洗浄ノズル12とワークWとの距離が長い場合は、洗浄ノズル12をZ方向に移動させ、洗浄ノズル12とワークWとの距離を短くしてもよい。また、洗浄ノズル12のストロークは、X方向がw1、Y方向がw2、Z方向が(w2−h)/2分あればよい。なお、洗浄ノズル12とワークWとの間に支持台5があるが、支持台5の中央にはワークWの下面が全て露出可能な切り欠き5aがあるため、洗浄液は切り欠き5aを通過してワークWの下面を洗浄できる。
【0045】
そして、図4(c)の状態から、基台10を回転機構11によって180度回転させ、ワークWの上面を洗浄ノズル12側に向け、図4(d)の状態とする。これで、ワークWの上面を洗浄ノズル12によって洗浄できる。
【0046】
以上の工程でワークWの全面が洗浄される。最後に、ワークWを図4(a)の位置に戻して、操作者がワークWを支持台5から取り外し、洗浄が完了する。
【0047】
叙述のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。たとえば、エアシリンダ8に代えてオイルシリンダやモータ駆動のものとすることも可能であるし、洗浄装置1は治具2を2基配置する構成としているが、1基やその他複数を配置する構成とすることも可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1 洗浄装置
1a 洗浄室
2 治具
3 外枠
3a ガイド溝
3b 補助支持部材
3c 補助支持部材
3d 補助支持部材
3e 補助支持部材
4 接続台
5 支持台
5a 切り欠き
5b 保持部
5c 接続部
5d 摺動部
6a リンク
6b ピン(ジョイント部)
6c ピン(ジョイント部)
7 ジョイント部材
8 エアシリンダ
8a ロッド
8b ヒンジ
8c 接続部
9 クランプ
10 基台
11 回転機構
12 洗浄ノズル
102 治具(従来)
105 支持台(従来)
W ワーク
w1 幅寸法
w2 幅寸法
h 高さ寸法
S1,S2 ストローク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを、洗浄ノズルから噴射した洗浄流体により洗浄するための洗浄装置であって、
前記洗浄流体を噴射する洗浄ノズルと、
上下方向に伸びたシャフトに支持される回転可能な基台と、
前記基台に載置でき、前記ワークを支持した状態で、前記ワークの略中心を回転中心として前記ワークの姿勢制御可能な治具と、を備えることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記治具は、
外枠と、
前記基台と接続するための接続台と、
前記ワークを支持するための支持台と、
前記接続台と前記支持台との間に配するリンク機構とを備え、
前記リンク機構が、
前記接続台または前記外枠に回転可能に一端がジョイントされ、他端が前記支持台に回転可能にジョイントされたリンクと、
前記接続台または前記外枠に回転可能に一端がジョイントされ、他端が前記リンクに回転可能にジョイントされた伸縮装置と、
前記外枠に設けたガイド溝を摺動可能な前記支持台に固設された摺動部材と、を有することを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記リンク機構が2つ配され、
前記伸縮装置は、前記接続台または前記外枠に回転可能に一端がジョイントされ、他端が2つの前記リンクを繋ぐジョイント部材に回転可能にジョイントされることを特徴とする請求項2記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記支持台に、前記ワークの前記支持台側の面の一部または全部を露出するための切り欠きが設けられたことを特徴とする請求項2または3記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記支持台と前記接続台とが平行に位置した状態において、前記支持台を補助するための第1補助支持部材と、
前記支持台と前記接続台とが垂直に位置した状態において、前記支持台を補助するための第2補助支持部材とを備えたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記支持台に、前記ワークを保持するためのクランプが設けられたことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項記載の洗浄装置。
【請求項7】
洗浄流体を噴射する洗浄ノズルと、上下方向に伸びたシャフトに支持される回転可能な基台とを有し、ワークを洗浄ノズルから噴射した洗浄流体により洗浄するための洗浄装置における治具であって、
外枠と、
前記基台と接続するための接続台と、
前記ワークを支持するための支持台と、
前記接続台と前記支持台との間に配するリンク機構とを備え、
前記リンク機構が、
前記接続台または前記外枠に回転可能に一端がジョイントされ、他端が前記支持台に回転可能にジョイントされたリンクと、
前記接続台または前記外枠に回転可能に一端がジョイントされ、他端が前記リンクに回転可能にジョイントされた伸縮装置と、
前記外枠に設けたガイド溝を摺動可能な前記支持台に固設された摺動部材とを有し、
前記ワークを支持した状態で、前記ワークの略中心を回転中心として前記ワークの姿勢制御が可能であることを特徴とする治具。
【請求項8】
前記リンク機構が2つ配され、
前記伸縮装置は、前記接続台または前記外枠に回転可能に一端がジョイントされ、他端が2つの前記リンクを繋ぐジョイント部材に回転可能にジョイントされることを特徴とする請求項7記載の治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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