説明

洗浄装置および分析装置

【課題】キュベット洗浄のために要する洗浄液量を低減できる洗浄装置および分析装置を提供すること。
【解決手段】この発明にかかる分析装置においては、洗浄ノズルを構成する供給ノズル191および吸引ノズル192の壁断面積S12、S22を内径断面積S11,S21よりも大きくすることによって、供給ノズル191および吸引ノズル192の壁を厚くしてノズルがキュベット21内に占める体積を大きくしたため、キュベット21内において洗浄液Lsが占める割合を減らし、キュベット21洗浄のために要する洗浄液量を低減することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器内部を洗浄する洗浄装置と、この洗浄装置を有する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の検体を自動的に分析する装置として、キュベットに試薬と検体とを分注し、キュベット内の試薬と検体の間で生じた反応を光学的に検出する分析装置が知られている。このような分析装置においては、複数の洗浄ノズルによって、光学的測定が終了したキュベット内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで洗浄を行ない、キュベットを繰り返し利用している(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−228951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の分析装置においては、一般的に洗浄ノズルが挿入された状態では、キュベット内において洗浄液が占める割合が多い。つまり、キュベット内の洗浄のためには、キュベットの内容積分に近い量の洗浄液が必要であった。
【0005】
本発明は、上記した従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、容器洗浄のために要する洗浄液量を低減できる洗浄装置および分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる洗浄装置は、容器内部を洗浄する洗浄装置において、前記容器内に挿入されて前記容器内の液体を吸引する吸引ノズルと、前記容器に挿入されて前記容器内部に洗浄液を供給する供給ノズルと、を備え、前記吸引ノズルおよび前記供給ノズルの少なくとも一方の壁断面積は、内径断面積よりも大きいことを特徴とする。
【0007】
また、この発明にかかる洗浄装置は、前記吸引ノズルおよび前記供給ノズルが前記容器に挿入された場合における前記吸引ノズルの液中部分の体積と前記供給ノズルの液中部分の体積との和は、前記容器内部の液体が占める体積よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる分析装置は、容器に保持された液体検体を分析する分析装置において、請求項1または2に記載の洗浄装置を備え、前記洗浄装置は、当該分析装置において前記液体検体が分注される前記容器を洗浄することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗浄ノズルを構成する吸引ノズルおよび供給ノズルの少なくとも一方の壁断面積を内径断面積よりも大きくすることによって、ノズルの壁を厚くしてノズルが容器内に占める体積を大きくしたため、容器内において洗浄液が占める割合を減らし、分析処理に使用する容器の洗浄のために要する洗浄液量を低減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である洗浄装置および分析装置について、血液や尿などの液体検体が分注されたキュベットを洗浄する洗浄装置を有する分析装置を例に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0011】
図1は、実施の形態にかかる分析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態にかかる分析装置1は、分析対象である検体および試薬をキュベット21にそれぞれ分注し、分注したキュベット21内で生じる反応を光学的に測定する測定機構2と、測定機構2を含む分析装置1全体の制御を行なうとともに測定機構2における測定結果の分析を行なう制御装置3とを備える。分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の生化学分析を自動的に行なう。なお、キュベット21は、容量が数nL〜数mLと微量な容器であり、測光部18の光源から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。キュベット21は、側壁と底壁とによって液体を保持する液体保持部が形成され、液体保持部の上部に開口を有するキュベット21である。
【0012】
まず、測定機構2について説明する。測定機構2は、大別して検体移送部11、検体分注機構12、反応テーブル13、試薬庫14、試薬分注機構16、攪拌部17、測光部18および洗浄部19を備える。
【0013】
検体移送部11は、血液などの液体検体を収容した複数の検体容器11aを保持し、図中の矢印方向に順次移送する複数の検体ラック11bを備える。検体移送部11上の所定位置に移送された検体容器11a内の検体は、検体分注機構12によって、反応テーブル13上に配列して搬送されるキュベット21に分注される。
【0014】
検体分注機構12は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアーム12aを備える。このアーム12aの先端部には、検体の吸引および吐出を行なうノズルが取り付けられている。検体分注機構12は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。検体分注機構12は、上述した検体移送部11上の所定位置に移送された検体容器11aの中からノズルによって検体を吸引し、アーム12aを図中時計回りに旋回させ、キュベット21に検体を吐出して分注を行なう。
【0015】
反応テーブル13は、キュベット21への検体や試薬の分注、キュベット21の攪拌、測光、洗浄および汚れ検出用測光を行なうためにキュベット21を所定の位置まで移送する。この反応テーブル13は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、反応テーブル13の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。反応テーブル13の上方と下方には、図示しない開閉自在な蓋と恒温槽がそれぞれ設けられている。
【0016】
試薬庫14は、キュベット21内に分注される試薬が収容された試薬容器15を複数収納できる。試薬庫14には、複数の収納室が等間隔で配置されており、各収納室には試薬容器15が着脱自在に収納される。試薬庫14は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、試薬庫14の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬容器15を試薬分注機構16による試薬吸引位置まで移送する。試薬庫14の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられている。また、試薬庫14の下方には、保冷庫が設けられている。このため、試薬庫14内に試薬容器15が収納され、蓋が閉じられたときに、試薬容器15内に収容された試薬を冷却し、試薬容器15内に収容された試薬の蒸発や変性を抑制することができる。
【0017】
試薬分注機構16は、検体分注機構12と同様に、試薬の吸引および吐出を行なう試薬ノズルが先端部に取り付けられたアーム16aを備える。アーム16aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なう。試薬分注機構16は、試薬庫14上の所定位置に移動された試薬容器15内の試薬をノズルによって吸引し、アーム16aを図中時計回りに旋回させ、反応テーブル13上の所定位置に搬送されたキュベット21に分注する。攪拌部17は、キュベット21に分注された検体と試薬との攪拌を行い、反応を促進させる。
【0018】
測光部18は、たとえば、所定の測光位置に搬送されたキュベット21に光源から分析光(340〜800nm)を照射し、キュベット21内の液体を透過した光を分光し、PDAなどの受光素子による各波長光の強度測定を行なうことによって、分析対象である検体と試薬との反応液に特有の波長の吸光度を測定する。
【0019】
洗浄部19は、洗浄ノズルによって、測光部18による測定が終了したキュベット21内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで分析処理が終了したキュベット21を洗浄する。
【0020】
つぎに、制御装置3について説明する。制御装置3は、制御部31、入力部32、分析部33、記憶部35および出力部36を備える。測定機構2および制御装置3が備えるこれらの各部は、制御部31に電気的に接続されている。
【0021】
制御部31は、CPU等を用いて構成され、分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行なう。入力部32は、キーボード、マウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部33は、測光部18によって測定された吸光度に基づいて検体の成分分析等を行なう。記憶部35は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部35は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。出力部36は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。また、出力部36は、図示しない通信ネットワークを介して外部装置に諸情報を出力する。
【0022】
以上のように構成された分析装置1では、列をなして順次搬送される複数のキュベット21に対して、検体分注機構12が検体容器11a中の検体を分注し、試薬分注機構16が試薬容器15中の試薬を分注した後、測光部18が検体と試薬とを反応させた状態の検体の分光強度測定を行い、この測定結果を分析部33が分析することで、検体の成分分析等が自動的に行われる。また、洗浄部19が測光部18による測定が終了した後に搬送されるキュベット21を搬送させながら洗浄することで、一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。
【0023】
つぎに、図1に示す洗浄部19について説明する。図2は、図1に示す洗浄部19の構成を説明する図である。図2に示すように、図1に示す洗浄部19は、反応テーブル13を構成するホルダー131にセットされ、洗浄位置に搬送されたキュベット21を洗浄するための洗浄ノズルとして、供給ノズル191、吸引ノズル192およびオーバーフロー吸引ノズル193の3本の状ノズルを有する。なお、ホルダー131には、光学的測定を行なうためにキュベット21への入射光およびキュベット21を透過した透過光のための経路を形成する測光窓W1,W2が設けられている。
【0024】
供給ノズル191は、キュベット21に挿入されてキュベット21内部に洗浄液を供給する。吸引ノズル192は、キュベット21内に挿入されて排出対象であるキュベット21内の液体を吸引する。オーバーフロー吸引ノズル193は、キュベット21から洗浄液が溢れ出ないように洗浄液の溢れ分を吸引する。洗浄部19は、この3本の洗浄ノズルを一体として昇降させる昇降機構194を有し、供給ノズル191による洗浄液供給処理、吸引ノズル192による排液吸引処理、オーバーフロー吸引ノズル193によるオーバーフロー高さ位置で溢れた液体の吸引処理がそれぞれ円滑に行なわれるように、この3本の洗浄ノズルを一体として昇降機構194に昇降させることによってキュベット21に対する洗浄処理を行なっている。
【0025】
供給ノズル191は、管191aを介して、洗浄液Lsを収容する洗浄液容器191bと接続している。管191aには、洗浄液Lsの供給処理を制御する開閉弁191cと、洗浄液容器191bから洗浄液Lsの吸排動作を行うポンプ191dが設けられており、開閉弁191cが開いたときにポンプ191dによって吸い上げられた洗浄液Lsが供給ノズル191からキュベット21内に供給される。
【0026】
吸引ノズル192は、管192aを介して、排液Ldを回収する排液容器195と接続されている。管192aには、排液を一時的に溜めるタンク192bが設けられている。タンク192bは、一時的に溜まった排液を排液容器195に流す時に開く開閉弁192eと管192fを介して接続されている。さらに、タンク192bは、吸引ノズル192でキュベット21内の液体を吸引する時に開く開閉弁192cと、管192dを介して真空ポンプ196とに接続されている。また、管192dからは分配コネクタ192iにおいて管192hが分岐しており、管192dは、分岐した管192hを介して大気開放弁192gと接続されている。大気開放弁192gは、片方の管接続口が大気と接続されている。大気開放弁192gと開閉弁192eが閉じた状態で開閉弁192cを開くと、真空ポンプ196の吸引処理により吸引ノズル192から吸引されたキュベット21内の液体が吸引されタンク192bに溜まる。吸引動作を終えたところで、開放弁192cを閉じ、大気開放弁192gを開くことにより、吸引ノズル192からタンク192b間の管路内の真空状態が解除される。その後、開閉弁192eを開くと、タンク192bに溜まった液体が重力に従って排液容器195側に流れ落ちる。
【0027】
オーバーフロー吸引ノズル193は、管193aを介して、排液Ldを回収する排液容器195と接続されている。管193aには、排液を一時的に溜めるタンク193bが設けられている。タンク193bは、一時的に溜まった排液を排液容器195に流す時に開く開閉弁193eと管193fを介して接続されている。さらに、タンク193bは、オーバーフロー吸引ノズル193でキュベット21内の液体を吸引する時に開く開閉弁193cと、管193dを介して真空ポンプ196と接続されている。また、管193dからは分配コネクタ193iにおいて管193hが分岐しており、管193dは、分岐した管193hを介して大気開放弁193gと接続されている。大気開放弁193gは、片方の管接続口が大気と接続されている。大気開放弁193gと開閉弁193eが閉じた状態で開閉弁193cを開くと、真空ポンプ196の吸引処理によりオーバーフロー吸引ノズル193から吸引されたキュベット21内の液体が吸引されタンク193bに溜まる。吸引動作を終えたところで、開放弁193cを閉じ、大気開放弁193gを開くことにより、吸引ノズル193からタンク193b間の管路内の真空状態が解除される。その後、開閉弁193eを開くと、タンク193bに溜まった液体が重力に従って排液容器195側に流れ落ちる。
【0028】
つぎに、供給ノズル191および吸引ノズル192の形状について説明する。図3は、供給ノズル191および吸引ノズル192の断面形状を示す図である。図3においては、供給ノズル191および吸引ノズル192が、洗浄液Lsが充填されたキュベット21内に挿入された場合について示している。なお、オーバーフロー吸引ノズル193は、キュベット21開口部に位置し洗浄液の溢れ分を吸引することから、キュベット21内の洗浄液Lsが充填された部分まで挿入されないため、図3においては二点鎖線で示している。
【0029】
図3に示すように、洗浄部19においては、供給ノズル191および吸引ノズル192の壁を厚くして、供給ノズル191および吸引ノズル192がキュベット21内に挿入された場合における供給ノズル191の液中部分の体積と吸引ノズル192の液中部分の体積を増やしている。具体的には、図3に示すように、供給ノズル191においては、供給ノズル191の内径断面積S11よりも壁断面積S12が大きくなるように、内径R11と壁厚さT21とが設定されている。また、吸引ノズル192においては、吸引ノズル192の内径断面積S21よりも壁断面積S22が大きくなるように、内径R21と壁厚さT22が設定されている。なお、供給ノズル191とキュベット21内壁との間隔D1および吸引ノズル192とキュベット21内壁との間隔D2は、キュベット21内壁上を洗浄液Lsが流れることができる程度であればよい。
【0030】
ここで、従来の分析装置における洗浄ノズルの形状について説明する。図4は、従来の供給ノズルおよび吸引ノズルの断面形状を示す図である。なお、図4にオーバーフロー吸引ノズル1193は、図3と同様に二点鎖線で示している。
【0031】
図4に示すように、従来においては、壁の薄い供給ノズル1191および吸引ノズル1192を使用していた。図4に示すように、供給ノズル1191においては、供給ノズル1191の内径R110の値よりも壁厚さT120が格段に小さいため、供給ノズル1191の壁断面積S120が供給ノズル1191の内径断面積S110よりも小さくなっている。吸引ノズル1192においても同様に、吸引ノズル1192の内径R210の値よりも壁厚さT220が格段に小さいため、吸引ノズル1192の壁断面積S220が吸引ノズル1192の内径断面積S210よりも小さくなっている。
【0032】
このように、従来においては、壁の薄い供給ノズル1191および吸引ノズル1192を使用していたため、図5に示すように、キュベット21内における供給ノズル1191の液中部分の体積V120と吸引ノズル1192の液中部分の体積V220の和よりも、洗浄液Lsがキュベット21内を占める体積VL0の方が格段に大きい。したがって、実際にはキュベット21内壁表面に洗浄液Lsが流れることができれば内壁表面の汚れを十分取り除けるにも関わらず、図5に示すように、壁の薄い供給ノズル1191および吸引ノズル1192を使用しており供給ノズル1191および吸引ノズル1192の液中部分の体積の和が少ないため、実際に洗浄可能である量よりも格段に多いキュベット21の内容積分に近い量の洗浄液Lsを使用せざるを得なかった。
【0033】
これに対し、実施の形態においては、図3に示すように、内径面積よりも壁断面積が大きくなるように供給ノズル191および吸引ノズル192の壁厚さを厚くしている。このため、図6に示すように、本実施の形態においては、従来と比較してキュベット21内部に占める洗浄液Lsの体積が小さくなっている。たとえば、供給ノズル191および吸引ノズル192の壁厚さを調整することによって、供給ノズル191および吸引ノズル192がキュベット21に挿入された場合における供給ノズル191の液中部分の体積V12と吸引ノズル192の液中部分の体積V22の和を、洗浄液Lsがキュベット21内を占める体積VL1よりも大きくしている。
【0034】
したがって、実施の形態においては、図6に示すように、壁断面積が内径段面積よりも大きな供給ノズル191および吸引ノズル192を使用しており供給ノズル191および吸引ノズル192の液中部分の体積の和が大きいため、洗浄液Lsがキュベット21内を占める体積を減らすことができる。そのため、キュベット21洗浄のために要する洗浄液量を低減することが可能になり、分析装置1内に設置される洗浄液容器191bの小型化を図ることができる。
【0035】
また、実施の形態においては、キュベット21内壁上を洗浄液Lsが流れることができる程度に供給ノズル191とキュベット21内壁との間隔D1および吸引ノズル192とキュベット21内壁との間隔D2が設定されているため、従来と同様にキュベット21内壁表面の汚れも十分取り除くことができる。
【0036】
また、実施の形態においては、キュベット21内に充填する洗浄液Lsの液量を減らすことができるため、キュベット21内への洗浄液Lsの充填時間の短縮化が可能になることから、充填時間を短縮した分、洗浄液Lsのキュベット21内への置換時間、すなわち、供給ノズル191による洗浄液供給時間およびオーバーフロー吸引ノズル193による溢れ分吸引時間を長くして、洗浄処理をさらに確実に行なうこともできる。また、実施の形態においては、同じ洗浄時間で従来よりも多くの回数の充填処理および置換処理を行なうことができるため、従来よりも洗浄効果を高めることも可能になる。
【0037】
なお、供給ノズル191および吸引ノズル192の壁の厚さは、キュベット21の容積、キュベット21の表面積、分析項目によって使用する試薬および検体の種別や分注量に対応させて、洗浄が十分に行えるように設定すればよい。洗浄ノズルは、試薬や検体を分注する分注ノズルに要求される高い分注精度を必要としないため、図3のように壁を厚くした場合であっても洗浄処理を十分に実行可能である。また、実施の形態においては、従来のように洗浄ノズルの壁を薄くする必要がないため、洗浄ノズルの材料選択も広げられる。
【0038】
また、実施の形態においては、図3に示すように、供給ノズルおよび吸引ノズルの双方ともに壁断面積が内径面積よりも大きくなるように供給ノズルおよび吸引ノズルの双方の壁を厚くした場合を例に説明したが、もちろんこれに限らない。供給ノズルおよび吸引ノズルの少なくともいずれか一方のみに対して壁断面積が内径面積よりも大きくなるように壁を厚くしてもよい。たとえば、図7に示すように、従来と同様に壁厚さT212が薄く壁断面積S212が内径断面積S11よりも小さい供給ノズル2191を使用した場合であっても、キュベット21底壁付近まで挿入される吸引ノズル192に対しては、壁断面積S22が内径断面積S21よりも大きくなるように内径R21および壁厚さT22を設定することによって、従来と比較してキュベット21内部に占める洗浄液Lsの体積を小さくすることができる。
【0039】
また、実施の形態においては、図6に示すように、供給ノズル191の液中部分の体積V12と吸引ノズル192の液中部分の体積V22との和が、洗浄液Lsがキュベット21内を占める体積VL1よりも大きくなる場合を例に説明したが、もちろんこれに限らない。従来よりも洗浄のために要する洗浄液量を減らすには、図8に示すように、供給ノズル3191の液中部分の体積V312と吸引ノズル3192の液中部分の体積V322とを従来における供給ノズルの液中部分の体積と吸引ノズルの液中部分の体積よりも増やして、洗浄液Lsがキュベット21内を占める体積が従来よりも小さくなる値VL3となるようにすればよい。従来においては、各洗浄ノズルの壁断面積が内径面積よりも小さくなるように壁厚さが薄く設定されていた。したがって、洗浄液Lsがキュベット21内を占める体積を従来よりも小さくするには、図9に示すように、供給ノズル3191の壁断面積S312が内径断面積S11よりも大きくなるように内径R11および壁厚さT312を設定すれば足り、又は、吸引ノズル3192の壁断面積S322が内径断面積S12よりも大きくなるように内径R21および壁厚さT322を設定すれば足りる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施の形態にかかる分析装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す洗浄部の構成を説明する図である。
【図3】図2に示す供給ノズルおよび吸引ノズルの断面形状を示す図である。
【図4】従来技術にかかる供給ノズルおよび吸引ノズルの断面形状を示す図である。
【図5】図4に示す供給ノズルおよび吸引ノズルがキュベット内に挿入された状態を示す図である。
【図6】図3に示す供給ノズルおよび吸引ノズルがキュベット内に挿入された状態を示す図である。
【図7】図3に示す供給ノズルおよび吸引ノズルの断面形状の他の例を示す図である。
【図8】実施の形態における供給ノズルおよび吸引ノズルがキュベット内に挿入された状態を示す図である。
【図9】図8に示す供給ノズルおよび吸引ノズルの断面形状を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 分析装置
2 測定機構
3 制御装置
11 検体移送部
11a 検体容器
11b 検体ラック
12 検体分注機構
12a アーム
13 反応テーブル
14 試薬庫
15 試薬容器
16 試薬分注機構
16a アーム
17 攪拌部
18 測光部
19 洗浄部
21 キュベット
31 制御部
32 入力部
33 分析部
35 記憶部
36 出力部
131 ホルダー
191 供給ノズル
191a,192a,192d,193a,193d 管
191b 洗浄液容器
191c 開閉弁
191d ポンプ
191,1191,2191,3191 供給ノズル
192,1192,3192 吸引ノズル
193,1193 オーバーフロー吸引ノズル
192b,193b タンク
192c,193c 吸引弁
194 昇降機構
195 排液容器
196 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内部を洗浄する洗浄装置において、
前記容器内に挿入されて前記容器内の液体を吸引する吸引ノズルと、
前記容器に挿入されて前記容器内部に洗浄液を供給する供給ノズルと、
を備え、前記吸引ノズルおよび前記供給ノズルの少なくとも一方の壁断面積は、内径断面積よりも大きいことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記吸引ノズルおよび前記供給ノズルが前記容器に挿入された場合における前記吸引ノズルの液中部分の体積と前記供給ノズルの液中部分の体積との和は、前記容器内部の液体が占める体積よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
容器に保持された液体検体を分析する分析装置において、
請求項1または2に記載の洗浄装置を備え、
前記洗浄装置は、当該分析装置において前記液体検体が分注される前記容器を洗浄することを特徴とする分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−30995(P2009−30995A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192244(P2007−192244)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】