説明

洗浄装置および洗浄方法

【課題】従来のシャワー方式、浸漬方式での洗浄と比較して格段に洗浄効果が向上され、特に寿命の短いヒドロキシラジカルなどを含むラジカルを洗浄液として用いた場合であっても優れた洗浄効果を発揮することができる洗浄装置および洗浄方法を提供する。
【解決手段】底部において処理後の洗浄液を排水し得るように構成された処理槽と、前記処理槽の上側からシャワーヘッドを介して洗浄液をシャワー方式で供給する手段とを備え、前記洗浄液を供給する手段は、前記処理槽の底部より処理後の洗浄液を排水した状態で、処理槽内に被処理物が浸漬され得る量の洗浄液が溜まるように、処理槽内に洗浄液を供給するように構成された洗浄装置、ならびに、処理槽の底部より処理後の洗浄液を排水した状態で、処理槽内に被処理物が浸漬され得る量の洗浄液が溜まるように、処理槽の上側から洗浄液をシャワー方式で供給して、被処理物を洗浄する洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカル水、オゾン水、次亜塩素酸水などの洗浄液により被処理物を殺菌、除菌するために洗浄する装置(洗浄装置)、および洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本国内では輸入食物の増加に伴い、野菜や果実などに使用されるポストハーベスト農薬の残留による安全性の問題、あるいは、国内生産の農作物においても、ポストハーベスト農薬に比べ残留量は少ないとされているものの栽培時に使用されるプレハーベスト農薬の残留による安全性の問題が注目されている。一方で、農薬を使用しない無農薬栽培や有機農法栽培による農作物も年々増加してきている。これらの農作物は、農薬の残留は少ないものの有害な細菌が付着していることがあり、決して安全であるとは限らない。
【0003】
したがって、食品の安全性、衛生の確保の面で農作物を十分に洗浄することが重要となってくる。
【0004】
従来においては、化学薬品を用いた洗浄殺菌が行われてきたが、人体に影響が懸念されており、近年では人体に影響を与えない仕方で十分に食品を洗浄殺菌する方式が種々提案されている。その1つとしてヒドロキシラジカルを含む水溶液やオゾン水を用いた洗浄方法が提案されている。
【0005】
たとえば特開2001−231525号公報(特許文献1)には、シャワー方式としてヒドロキシラジカルを含む水溶液を被処理物に高速で衝突させることによって、より効率的に殺菌を行う方法が開示されている。しかし、ヒドロキシラジカルの短い寿命(10-6-1-1)の問題があるとともに、シャワーの当たらない部分では殺菌が行われない可能性がある。
【0006】
またたとえば特開2005−237230号公報(特許文献2)には、オゾン水洗浄液槽、オゾン水殺菌水槽、オゾン水鮮度維持水槽を個別に設けることで、食品から放出される有機物によるオゾン消費を抑える方法が開示されている。しかし、この特許文献2に開示された方法は、2段または3段処理が必要であるため、装置が大きくなってしまうという不具合がある。
【0007】
洗浄方式としては、一般に、浸漬方式とシャワー方式とがあるが、浸漬方式では、被処理物が一部のカット野菜などのように液(滲出液)を滲出しやすいものでは、この滲出液によって洗浄効果が低くなる傾向にある。特に、洗浄液としてラジカル水やオゾン水を用いた場合には、洗浄液は滲出液を分解することにより洗浄成分が消費されるため、この滲出液による洗浄効果の低下は著しいものとなる。また、シャワー方式では、浸漬方式とは異なり、上述した滲出液の影響は少ないものの、被処理物のうち洗浄液がかかった面しか洗浄できないという問題がある。
【特許文献1】特開2001−231525号公報
【特許文献2】特開2005−237230号公報
【特許文献3】特開2005−185144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、従来のシャワー方式、浸漬方式での洗浄と比較して格段に洗浄効果が向上され、特に寿命の短いヒドロキシラジカルなどを含むラジカルを洗浄液として用いた場合であっても優れた洗浄効果を発揮することができる洗浄装置および洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の洗浄装置は、底部において処理後の洗浄液を排水し得るように構成された処理槽と、前記処理槽の上側からシャワーヘッドを介して洗浄液をシャワー方式で供給する手段とを備え、前記洗浄液を供給する手段は、前記処理槽の底部より処理後の洗浄液を排水した状態で、処理槽内に被処理物が浸漬され得る量の洗浄液が溜まるように、処理槽内に洗浄液を供給するように構成されたものであることを特徴とする。
【0010】
ここにおいて、処理槽は、その底部においてのみメッシュ状に形成されたものであることが好ましい。
【0011】
本発明の洗浄装置における処理槽は、底部に処理後の洗浄液を排水するためのポンプを備えることが好ましい。
【0012】
また本発明の洗浄装置は、処理槽内の洗浄液の水位を一定に保ち得るものであることが好ましい。
【0013】
また本発明の洗浄装置における処理槽は、揺動可能であるか、または、底部にバブリング用エアを供給する手段が設けられてなることが好ましい。
【0014】
本発明の洗浄装置に用いられる洗浄液は、ラジカル水、オゾン水または次亜塩素酸水であることが好ましい。また前記洗浄液がラジカル水である場合、ヒドロキシラジカルを含むものであることがより好ましい。
【0015】
本発明はまた、処理槽の底部より処理後の洗浄液を排水した状態で、処理槽内に被処理物が浸漬され得る量の洗浄液が溜まるように、処理槽の上側から洗浄液をシャワー方式で供給して、被処理物を洗浄することを特徴とする洗浄方法をも提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来のシャワー方式、浸漬方式での洗浄と比較して格段に洗浄効果が向上され、特に寿命の短いヒドロキシラジカルなどを含むラジカルを洗浄液として用いた場合であっても洗浄効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の好ましい一例の洗浄装置1を模式的に示す図である。本発明の洗浄装置1は、処理槽2と、処理槽2の上側からシャワーヘッド3を介して洗浄液4をシャワー方式で供給する手段とを基本的に備える。
【0018】
本発明の洗浄装置1では、たとえば図1に示すように、シャワーヘッド3を介して供給された洗浄液6を収容し得る内部空間を有するバケット5が処理槽2内に設けられ、当該バケット5および処理槽2は、その底部から処理後の洗浄液を排水し得るように構成されている。本発明の洗浄装置1における処理槽2は、図1に示すように、バケット5の底面7のみがメッシュ状に形成され、側面にはメッシュを形成していないように構成されることが好ましい。このように底面7のみをメッシュ状に形成してなることで、バケットの側面にもメッシュを形成した場合とは異なり、シャワーヘッドを介して供給された洗浄液が側面から排出されることなく底面まで到達するため、処理槽の底面上に載置された被処理物の洗浄効果が低下することを防止することができる。バケット5は、図1に示す例のように、上方から下方に向かって水平方向に関する面積が徐々に小さくなるように(たとえばすり鉢状に)形成された内部空間を有するように実現されることが好ましい。バケット5がこのような形状の内部空間を有するように実現されることで、被処理物の間を洗浄液が通過するという利点があるためである。
【0019】
本発明の洗浄装置1における洗浄液を供給する手段は、たとえば、シャワーヘッド3に洗浄液を供給するための管路8が連結されて実現される。この管路8には、シャワーヘッド3に連結されたのとは反対側において、洗浄液の種類に応じた従来公知の適宜の供給手段、発生手段が連結されている(図示せず)。管路8の中途には、図1に示す例のように、供給する洗浄液の流量を制御するためのバルブ9が設けられていてもよい。なお、本発明の洗浄装置1に用いられ得るシャワーヘッド3としては、従来公知のものを適宜用いることができ、特に制限されるものではない。
【0020】
本発明においては、当該洗浄液を供給する手段は、処理槽2の底部より処理後の洗浄液を排水した状態で、処理槽2内に被処理物が浸漬され得る量の洗浄液が溜まるように、処理槽2内に洗浄液を供給するように構成されることを特徴とする。これによって、本発明の洗浄装置1を用いた洗浄処理は、前記バケット5の内部空間に溜められた洗浄液6に被処理物を浸漬し、かつ、洗浄液を供給する手段にて処理槽2の上方からシャワー方式にて洗浄液4を処理槽2内に供給することで行われる。これによって、シャワー方式により洗浄液4を供給するために被処理物からの滲出液による影響が少なく、かつ、処理槽2内で被処理物を洗浄液に浸漬させ、被処理物のシャワーが当たる面だけではなく被処理物の全体にわたって洗浄液を接触させることができるため、均一で高い洗浄効果を得ることができる。したがって従来のシャワー方式のみ、浸漬方式のみで洗浄を行う洗浄装置と比較して、洗浄効果が格段に向上される。また、本発明の洗浄装置は、浸漬方式のみで洗浄を行う洗浄装置とは異なり攪拌が不要であることから、浸漬方式のみで洗浄を行う洗浄装置と比較して小さな処理槽を用いても十分な洗浄効果を発揮することができ、かつ節水効果も高い。
【0021】
本発明の洗浄装置における処理槽は、底部に処理後の洗浄液を排水するためのポンプを備えることが好ましい。図1には、処理槽2の底部に、ポンプ10を介した管路11が連結され、バケット5内に一定量の洗浄液6を溜めつつ、ポンプ10による汲み出しによってその底面7から順次洗浄液が排水されるように構成された例を示している。これによって、バケット5内に溜められた洗浄液6には、上方から下方へ向かった流れが生じることになり、バケット5の内部空間に溜められた洗浄液6に被処理物を浸漬し、かつ、洗浄液を供給する手段にてシャワー方式にて洗浄液4を処理槽2内に供給することによる上述した洗浄効果に加え、上記流れにより被処理物の全体にわたって洗浄液6を接触させることができるため、格段に優れた洗浄効果を得ることができる。
【0022】
本発明の洗浄装置はまた、処理槽内の洗浄液の水位を一定に保ち得るものであることが好ましい。これにより、処理槽に被処理物が浸漬され得る量の洗浄液を溜めて、効率的に洗浄を行うことができる。たとえば図1に示す例の洗浄装置1の場合には、バルブ9による洗浄水の供給量、または、排出バルブによる洗浄液の排出量を、手動にて調整することで、処理槽2内の洗浄液の水位を一定に保つことが可能となる。
【0023】
また図2は、本発明の好ましい他の例の洗浄装置21を模式的に示す図である。なお、図2に示す例の洗浄装置21は、一部を除いては図1に示した例の洗浄装置1と同様であり、同様の構成を有する部分については同一の参照符を付して説明を省略する。図2に示す例の洗浄装置21は、処理槽2に収容された洗浄液6の液面を検知する手段として、超音波センサ22および電極センサ23を備えてなる。超音波センサ22と電極センサ23とのいずれか一方のみを備える構成であっても勿論よい。また、図2に示す例では、この超音波センサ22および電極センサ23から得られた洗浄液の液面に関する情報(図2中、1点鎖線で示している)を得て、洗浄液の供給量および/または排出量を制御し得る制御手段24を備える。また、上述した洗浄液の供給のための管路8に設けられたバルブ9、および/または、洗浄液の排出のための管路11に設けられたバルブをたとえば電磁バルブにて実現し、制御手段24によって、上記情報に応じて洗浄液の流量を制御するようにする。この場合、図2に示す例のように洗浄液の排出のための管路11にポンプ10が設けられてなる場合には、ポンプ10の制御(オン/オフ、回転数)によっても洗浄液の排出量を制御し得るように実現されてもよい。このような図2に示す例の洗浄装置21によれば、処理槽2内に収容された洗浄液6の水位を、自動的に一定保つことが可能となる。なお、図2に示す例における超音波センサ22、電極センサ23、制御手段24および電磁バルブは、従来公知のものを適宜組み合わせて用いることができ、特に制限されるものではない。
【0024】
また本発明の洗浄装置における処理槽は、揺動可能であるか、または、底部にバブリング用エアを供給する手段が設けられてなることが好ましい。図1には、たとえば、バケット5の底部からバブリングのためのエアを供給するためのバブリング用エア供給路12が設けられてなる例を示している。洗浄処理を行っている最中に、処理槽を揺動する、または、バブリング用エアを供給することで、処理槽内における被処理物を攪拌し、洗浄効果をさらに高めることができる。また、被処理物を一定時間洗浄処理後、処理槽を揺動する、または、バブリング用エアを供給することで、バケット5内で被処理物を反転させ、その後、さらに被処理物を一定時間洗浄処理するようにすることもできる。このようにすることで、被処理物の全体にわたってさらに均一に洗浄液を接触させることができる。なお、本発明において、処理槽を揺動可能とするための手段やバブリング用エアを供給する手段としては特に制限されるものではなく、当業者であれば従来公知の適宜の手段を組み合わせて実現することが可能である。
【0025】
本発明の洗浄装置に用いられる洗浄液としては、従来公知の適宜の洗浄液を特に制限されることなく用いることができ、このような洗浄液としてたとえばラジカル水、オゾン水、次亜塩素酸水、電解次亜水、中性洗剤などを挙げることができる。中でも、有害成分が食品に残留しないことから、ラジカル水、オゾン水または次亜塩素酸水を洗浄液として用いることが好ましい。なお、従来の浸漬方式の洗浄装置では、被処理物からの滲出液が洗浄効果に悪影響を及ぼし、特に洗浄液としてラジカル水やオゾン水を用いて場合には洗浄効果が著しく低下してしまうという不具合があったが、上述したように本発明の洗浄装置では、シャワー状の洗浄液の供給と処理槽内に溜められた洗浄液への浸漬とを併用してなる構成であるため、ラジカル水やオゾン水を洗浄液として用いた場合であっても滲出液から受ける影響が少なく、優れた洗浄効果を発揮し得るものである。なお、本発明における「洗浄」とは、いわゆる洗浄以外に殺菌、除菌、除粒子、脱色などを包含するものであってよい。
【0026】
本発明の洗浄液としてラジカル水を用いる場合、含有されるラジカル種としては、ヒドロキシラジカル、水素ラジカル、炭素ラジカル(メチルラジカルなど)、窒素ラジカル、一酸化窒素ラジカル、塩素ラジカル、一酸化塩素ラジカル、臭素ラジカルなどが挙げられ、特に制限されるものではない。中でも、強い殺菌能力を示すことから、ヒドロキシラジカルを含むラジカル水を洗浄液として好適に用いることができる。
【0027】
洗浄液としてラジカル水を用いる場合、当該ラジカル水は従来公知の方法にて生成することができる。たとえば、ヒドロキシラジカルを含有するラジカル水の場合には、自体公知の方法であるオゾン/紫外線併用法にて好適に生成することができる。オゾン/紫外線併用法でのヒドロキシラジカルの生成経路としては、たとえば、以下のようにオゾンが処理液中の水と反応して自己分解によりHO2ラジカルを経由してOHラジカルが発生する経路が想定される。
【0028】
3+H2O→HO3++OH-
HO3++OH-→2HO2
3+2HO2・→2OH・+2O2
またオゾン/紫外線併用法でのヒドロキシラジカルの生成経路には、以下のようにオゾンに紫外線を照射することにより過酸化水素を経由してOHラジカルを生成する経路も想定される。
【0029】
3+H2O+hν→H22+O2
22+hν→2OH・
また、洗浄液として水素ラジカル、炭素ラジカルを含有する場合には、上述したオゾン/紫外線併用法にてヒドロキシラジカルを発生させた水に予め水溶性有機物(R)を混合しておき、以下のようにして、ヒドロキシラジカルと水溶性有機物とを反応させて、水溶性有機物から水素を引き抜く形でラジカル反応を開始させる。
【0030】
RH+OH・→R・+H2
さらに生成した炭素ラジカルR・は、水中の他の水溶性有機物(R’)と反応し、以下のようにして連鎖的に炭素ラジカルや水素ラジカルが生成される。
【0031】
R・+R’H→RH+R’・
R・+R’H→RR’+H・
なお、水素ラジカルや炭素ラジカルを含有するラジカル水を生成する際に用いられる水溶性有機物としては、公知の指定食品添加物や既存食品添加物を好適に用いることができ、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、過酸化水素、酢酸エチル、次亜塩素酸などが挙げられる。中でも、エタノールなどの食品添加物を水溶性有機物として用いることが好ましい。なお、水溶性有機物を含有する水には、水道水(TOC<5mL/h)も包含される。
【0032】
本発明の洗浄液としてラジカル水を用いる場合、たとえば図1に示す例においてシャワーヘッド3に連結された管路8の先は、上述した経路にてラジカル発生を実現し得る適宜の手段、たとえばオゾン発生器や紫外線ランプなどを組み合わせた公知の手段に連結されてなる。このような手段により生成されたラジカル水が、管路8を介してシャワーヘッド3に供給され、シャワー状の洗浄液として処理槽2内に供給される。
【0033】
ここで、ヒドロキシラジカルを含むラジカル水は、上述したように強い殺菌作用を有することから、ラジカル水の中でも洗浄液として特に好適に用いることができるが、ヒドロキシラジカルは寿命が短く(10-6-1-1)、ヒドロキシラジカルを含む水を生成して、系外に取り出して被処理物に作用させたとしても、十分な洗浄効果が得られにくくなる虞がある。
【0034】
そこで、図1に示す例の洗浄装置1では、シャワーヘッド3の内部に紫外線ランプ13が組み込まれ、このシャワーヘッド3に管路8を介して、たとえばオゾン水(ヒドロキシラジカルを含有する)が供給されるように構成されている。このような構成により、シャワーヘッド3内の紫外線ランプ13により、シャワーヘッド3に供給されたオゾン水に紫外線ランプ13により紫外線を照射することで、当該オゾン水でさらにヒドロキシラジカルが発生させることができる。これによって、処理槽2にシャワー方式で供給する直前にヒドロキシラジカルを発生させて洗浄水を生成することで、常に新鮮な状態でヒドロキシラジカルを含有するラジカル水を洗浄液として処理槽2内に供給することができ、寿命の短いヒドロキシラジカルを含有するラジカル水の洗浄効果を損なうことなく、洗浄液として用いることが可能となる。
【0035】
なお、本発明における洗浄液としてオゾン水や次亜塩素酸水を用いる場合には、これらを生成するための公知の手段、たとえばオゾン発生器や電解次亜水などの洗浄水の製造装置などを適宜組み合わせて、管路8の先に連結しておき、オゾン水や次亜塩素酸水を管路8を介してシャワーヘッド3に供給し得るように構成すればよい。
【0036】
本発明の洗浄装置を用いた洗浄処理に供する被処理物としては、特に制限されるものではないが、有機物を多く含むような被処理物、たとえばカット野菜、鶏卵、その他の農産物、海産物、食品製造機器、食器、医療器具、リネン、衣類、精密機器、半導体製造機器などに特に好適に適用することができる。
【0037】
本発明はまた、処理槽の底部より処理後の洗浄液を排水した状態で、処理槽内に被処理物が浸漬され得る量の洗浄液が溜まるように、処理槽の上側から洗浄液をシャワー方式で供給して、被処理物を洗浄することを特徴とする洗浄方法についても提供するものである。本発明の洗浄方法は、用いる装置については特に制限されるものではないが、上述した本発明の洗浄装置を用いて好適に実現することができる。本発明の洗浄方法において用いられる洗浄液、被処理物、処理槽などについては、本発明の洗浄装置について上述したのと同様である。
【0038】
以下、実験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
<実験例1>
図1に示した例の洗浄装置を用いて、野菜の洗浄実験を行い、洗浄効果を確認した。装置の処理槽(56L)内にキュウリ7.3kg(約18L)を入れ、槽内の水位を野菜がほぼ浸る程度に保ちながら、ラジカル水を15L/minでシャワー方式にて供給して、1分間、3分間および5分間の洗浄処理を行った。洗浄処理後、サンプルを一部採取し、野菜に付着した一般生菌数(個/g)を平均混釈法により算出した。
【0040】
また比較として、未洗浄の場合、浸漬方式にて洗浄を行った場合についても実験を行った。浸漬方式では、攪拌の問題から処理槽を大きくする必要があり、処理槽として135Lのものを用い、これにラジカル水を15L/minで注入してオーバーフローさせ、キュウリ7.3kg(約18L)を入れ、処理槽下部よりバブリングして攪拌を行った。これらの場合についても、同様に一般生菌数(個/g)を算出した。
【0041】
結果を図3に示す。図3から、浸漬方式ではキュウリの除菌に5分間要するのに対し、図1に示した本発明の洗浄装置を用いた場合には、3分間で同等の洗浄効果を奏することが確認された。また、シャワー方式を採用した本発明の洗浄装置では、攪拌が不要であることから、処理槽も小さくて済み、浸漬方式と比較すると節水効果も高い。
【0042】
今回開示された実施の形態および実験例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の好ましい一例の洗浄装置1を模式的に示す図である。
【図2】本発明の好ましい他の例の洗浄装置21を模式的に示す図である。
【図3】実験例1の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0044】
1,21 洗浄装置、2 処理槽、3 シャワーヘッド、4 洗浄液、5 バケット、6 洗浄液、7 バケットの底面、8 管路、9 バルブ、10 ポンプ、11 管路、12 バブリング用エア供給手段、13 紫外線ランプ、22 超音波センサ、23 電極センサ、24 制御手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部において処理後の洗浄液を排水し得るように構成された処理槽と、前記処理槽の上側からシャワーヘッドを介して洗浄液をシャワー方式で供給する手段とを備え、
前記洗浄液を供給する手段は、前記処理槽の底部より処理後の洗浄液を排水した状態で、処理槽内に被処理物が浸漬され得る量の洗浄液が溜まるように、処理槽内に洗浄液を供給するように構成されたものである、洗浄装置。
【請求項2】
処理槽がその底部においてのみメッシュ状に形成されてなることを特徴とする、請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記処理槽が、底部に処理後の洗浄液を排水するためのポンプを備える、請求項1または2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記処理槽内の洗浄液の水位を一定に保ち得るものである、請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項5】
処理槽が揺動可能である、請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
処理槽の底部にバブリング用エアを供給する手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
洗浄液が、ラジカル水、オゾン水または次亜塩素酸水である、請求項1〜6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記ラジカル水がヒドロキシラジカルを含むことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
処理槽の底部より処理後の洗浄液を排水した状態で、処理槽内に被処理物が浸漬され得る量の洗浄液が溜まるように、処理槽の上側から洗浄液をシャワー方式で供給して、被処理物を洗浄することを特徴とする洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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