説明

洗浄装置

【課題】 洗浄に用いる洗浄液の使用量を減らし、簡単な構造で装置の小型化が可能であり、複雑な形状の被洗浄物でもむらなく洗浄することができる洗浄装置を提供する。
【解決手段】 被洗浄物12を載置する基台部16と、基台部16に載せられた被洗浄物12を基台部16とともに囲む有底筒状の筒体18を有する。筒体18内に回転自在に設けられた回転体120と、回転体120に連結され筒体18内で回転しながら洗浄液を噴射する洗浄ノズル部材84と、回転体120の外周の歯部126に加圧エアを吹き付ける加圧エアの吹出口128を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属加工部品やセラミック部品等に対して、洗浄、脱脂、または異物除去等を行う洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属加工部品等の洗浄は、洗浄用溶剤や洗剤が入れられた洗浄槽内に、籠に入れた被洗浄物を浸漬して加工油や切り屑等を除去するものであった。また、密閉容器内に被洗浄物を入れて洗浄する装置も知られている。そのほか、容器を被洗浄物に覆い被せて、容器内に洗浄液を吹き付ける方法も提案されている。
【特許文献1】特開2002−370071号公報
【特許文献2】特開2001−205201号公報
【特許文献3】特開平6−315669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来の技術の洗浄装置は、洗浄用の溶剤や洗剤を溜めた洗浄槽内に被洗浄物を浸漬しているので、溶剤や洗剤の使用量が多く、洗浄装置自体も大きなものとなっていた。また、密閉容器内に被洗浄物を入れて洗浄する装置も、密閉容器の構造や周囲の配管が複雑になり、装置も大がかりなものとなっていた。そのほか、容器を被洗浄物に覆い被せて洗浄液を吹き付ける方法では、吹き付け箇所が偏ってしまい、複雑な形をした造形物の洗浄では、隅々まで洗浄し難いものであった。
【0004】
この発明は、前記従来の技術の問題点に鑑みてなされたもので、洗浄に用いる洗浄液の使用量を減らし、簡単な構造で装置の小型化が可能であり、複雑な形状の被洗浄物でもむらなく洗浄することができる洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、閉鎖空間内で洗浄液により被洗浄物を洗浄する洗浄装置であって、被洗浄物を載置する基台部と、この基台部に載せられた前記被洗浄物を前記基台部とともに囲む有底筒状の筒体と、前記筒体内に回転自在に設けられた回転体と、前記回転体に連結され前記筒体内で回転しながら洗浄液を噴射する洗浄ノズル部材と、前記回転体を回転させる回転手段とを備えた洗浄装置である。
【0006】
前記回転手段は、前記筒体に接続され前記回転体の外周に加圧エアを吹き付ける加圧エア供給手段から成る。さらに、前記回転体は、外周部が歯車状に形成され、この歯部に加圧エアを吹き付けることにより回転するものである。
【0007】
さらに、前記洗浄ノズルから供給する洗浄液と乾燥用エアは、切り替え可能なものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の洗浄装置によれば、洗浄物の洗浄を筒体内で洗浄しているので、洗浄液の使用量も少なく、回転する洗浄ノズル部材により、複雑な形状の被洗浄物でも隅々まで洗浄することができる。また、回転体の駆動機構が簡単であるとともに、装置自体も小型化が可能であり、設置場所を選ばずスペースを取らずに多くの被洗浄物の洗浄が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の洗浄装置の一実施形態について、図1〜図3を基にして説明する。この実施形態の洗浄装置10は、図1に示すように、被洗浄物12が固定具14により固定され位置決めされて載置される基台部16と、この基台部16に載せられた被洗浄物12を覆い囲む有底筒状の筒体18とを備える。筒体18は、開口部が基台部16に対面し、被洗浄物12よりも僅かに大きい程度の内部空間20を有する。また、筒体18に覆われる基台部16には、筒体18の内部空間20の空気及び洗浄液などを排出する排出孔46が設けられている。基台部16に当接する筒体端部22には、端部全周に溝24が設けられ、溝24の筒体内側側面26には、シール材28が貼着され、溝24には基台部16の表面と筒体端部22とに密着し、筒体18の内部を密閉するOリング30が嵌合されている。
【0010】
筒体18の側面部32の上端面は、略円盤状の上面部材34により閉鎖され、その周縁部の当接部36で、シール材38を介して取付けボルト40により側面部32の端面に固定され、一体に形成されている。また、側面部32の上端部内側全周にわたり、当接部36側端部に平行かつ適宜な幅で、わずかに薄い薄壁部42が形成され、側面部32の他の部分との境界部で適宜な幅の段差部44が設けられている。
【0011】
この筒体18の上面部材34の中央には、貫通穴48が設けられ、回転軸50が、筒体18の内側からベアリング52を介して挿着されている。この回転軸50は、貫通穴48内に固定された軸用止め輪56により、ベアリング52を介して貫通穴48内に止められ、ベアリング52は、穴用止め輪58により上面部材34の中央の貫通穴48に外輪が係止されている。そして、回転軸50には、洗浄液を導入する貫通した導入孔54が形成されている。
【0012】
筒体18の上面部材34の外側には、図示しない洗浄液等の供給源からの洗浄用配管が接続される連結部60を備える。この連結部60は、円環状の軸止め部62と、その外周に接した円形開口部を備えた矩形平板状の固定部64とから成る。連結部60の軸止め部62の中央には透孔66が設けられ、この透孔66に回転軸50が挿通され、軸止め部62の上面に回転軸50の一端部が面一の位置で露出している。
【0013】
透孔66の周囲には、Oリング70の直径よりも僅かに浅い適宜な段差68が設けられ、段差68の内周縁にOリング70が装着され、図示しない洗浄用配管のロータリージョイントと連結部60が、透孔66の周囲で水密状態で接続可能に形成されている。
【0014】
回転軸50の他端部には、上面部材34の貫通穴48近傍の筒体18内に位置したフランジ72が、回転軸50と一体に形成されている。このフランジ72には、中央部に同心状の段部が形成され、中心側の段部73にベアリング52の内輪が係止され、段部73の外側の段部74にはオイルシール76が嵌合している。オイルシール76は、上面部材34の内側面に密着するように取り付けられている。そして、フランジ72の外周には、回転体120が固定されている。
【0015】
回転体120は円形で、側面が歯車状に形成されている。筒体18の側面部32には、回転体120の側面の歯部126に向けて、適度な角度で圧縮エアを吹き付ける吹出口128が設けられている。吹出口128は、図3に示すように、回転軸50の中心線に対して回転対称に、筒体18の側面部32に一対設けられている。吹出口128は、図示しない加圧エア供給源と配管と共に加圧エア供給手段を構成する。
【0016】
回転軸50のフランジ72の下面には、適宜な浅い凹部78が設けられ、Oリング80が装着されている。そして、フランジ72の下面には、筒体18の内部空間20の中央方向に洗浄液を噴射する洗浄ノズル部材84が、取付けボルト86により取り付けられている。
【0017】
洗浄ノズル部材84は、フランジ72に取り付けられた取付部88と、取付部88の端部に接続された洗浄アーム82と、取付部88の中央部から下方に設けられた中央洗浄部104から成る。取付部88の内部には、回転軸50の導入孔54を中心に、直角方向の四方に洗浄液の分配管路90が形成されている。そのうちの一対の分配管路90の端部に洗浄アーム82が接続され、洗浄アーム82内の中空の洗浄管路94に繋がっている。洗浄アーム82には、洗浄管路94に連通した噴射ノズル92が、筒体18内の中心部に向いて設けられている。洗浄アーム82の噴射ノズル92は、洗浄アーム82の長さや被洗浄物12の状態に合わせて決定される。なお、取付部88の他の一対の分配管路90は閉じられている。また、洗浄アーム82の端部には、シール材98を挟んで蓋100が取付けボルト102により取り付けられ、閉じている。
【0018】
取付部88の中央の回転軸50の延長上に設けられた中央洗浄部104は、円柱状に形成され、一側端のフランジ106部分により、取付部88に取付けボルト108で取り付けられている。この中央洗浄部104には、内部中央に洗浄管路110を備え、側面に適宜な数の噴射ノズル92が設けられており、洗浄管路110の端部には蓋112がシール材114を挟んで嵌着されている。また、中央洗浄部104が取付部88と当接する洗浄管路110の端部の周囲は、適宜な凹部116が設けられ、Oリング118が装着されて液密に管路が接続されている。
【0019】
次に、この洗浄装置10の動作について説明する。まず、基台部16の固定具14に被洗浄物12を固定し、図示しない装置により筒体18を、被洗浄物12を覆うように基台部16へ密着状態に被せる。また、筒体18の連結部60及び回転軸50の導入孔54に図示しない洗浄用配管のロータリージョイントを密着状態に取り付ける。さらに、筒体18の側面部32の吹出口128に、図示しない加圧エアホースを接続し、図示しない供給用ポンプより加圧エアを送り込む。これにより、吹出口128から吹き出された加圧エアが、回転体120の歯部126に当たり、回転体120がおおよそ60〜120rpmの早さで一方向に回転する。この際に、回転体120に取り付けられた洗浄ノズル部材84も共に回転する。そして、図示しない洗浄用配管から図示しない供給ポンプにより、洗浄液が回転軸50の導入孔54に送り込まれる。この洗浄液は、取付部88の分配管路90を通り、それぞれ洗浄アーム82の洗浄管路94に導かれ、同様に、中央洗浄部104の洗浄管路110にも導かれる。導かれた洗浄液は、洗浄アーム82及び中央洗浄部104に各々設けられた各噴射ノズル92から洗浄液が被洗浄物12に向かって噴射される。また、この際に、取付部88に設けられた噴射ノズル92からも、洗浄液が被洗浄物12に向かって、筒体内に噴射される。
【0020】
次に、所定期間洗浄液を噴射した後、洗浄液の配管を乾燥用エアの供給源に切り替える。これにより、乾燥用エアが図示しない洗浄用配管から回転軸50の導入孔54に送り込まれる。送り込まれたエアは、取付部88の分配管路90を通り、それぞれ洗浄アーム82の洗浄液配管に94導かれる。そして、洗浄液の場合と同様に、洗浄アーム82に設けられた噴出ノズル92より、乾燥用エアを被洗浄物12に吹きつけるように筒体18の内部空間20に噴射される。この際、取付部88に設けられた噴射ノズル92からも、洗浄液の場合と同様に、乾燥用エアが被洗浄物12に向かって、筒体18の内部空間20内で噴射される。また、筒体18内で、被洗浄物12に噴射された洗浄液及び乾燥用エアや回転体に吹き付けられたエアは、基台部16の排出孔46から排出される。
【0021】
この実施形態の洗浄装置10によれば、被洗浄物12の洗浄を筒体18内で洗浄しているので、洗浄液の使用量が少ない。さらに、洗浄ノズル80が被洗浄物12の周囲を回りながら洗浄するため、複雑な形状をした被洗浄物12でも、隅々までむらなく洗浄することができるものである。また、洗浄ノズル部材84の回転動力に圧縮エアを使用するため、モータなどを使用しなくても良く、構造が簡単で装置自体も小型化され、スペースを取らずに多くの被洗浄物12の洗浄が可能なものである。
【0022】
なお、この発明の回転体は、側面が歯車状でなくても良く、圧縮エアを受けて回転可能であれば、側面の形状は適宜選択可能である。また、この発明の洗浄装置の洗浄ノズルは、前記実施形態に限定されるものではなく、被洗浄物の形状に合わせて、中央洗浄部は取り外して用いても良く、中央洗浄部のない洗浄ノズル部材を用いてもよい。この際、中央洗浄部を外したあとは、中央洗浄部の洗浄液配管と繋がっていた洗浄ノズルの分配管路の開口部は、蓋などにより塞ぐ。
【0023】
また、この発明の洗浄装置は、回転体に吹き付ける圧縮エアの強さは適宜設定可能なものである。この回転体に吹き付ける駆動源は、圧縮エアのほか、水などの液体でもよく適宜選択可能である。また、吹出口の数は、適宜設定可能である。さらに、この発明の洗浄装置は、被洗浄物の種類や筒体の形状は適宜設定可能なものであり、洗浄液も、洗剤や有機溶剤等適宜のものを利用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の一実施形態の洗浄装置を示す概略縦断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 洗浄装置
12 被洗浄物
16 基台部
18 筒体
20 内部空間
46 排出孔
50 回転軸
54 導入孔
60 筒体固定具
82 洗浄アーム
84 洗浄ノズル部材
88 取付部
90 分配管路
92 噴射ノズル
94,110 洗浄管路
104 中央洗浄部
120 回転体
126 歯部
128 吹出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖空間内で洗浄液により被洗浄物を洗浄する洗浄装置において、被洗浄物を載置する基台部と、この基台部に載せられた前記被洗浄物を前記基台部とともに囲む有底筒状の筒体と、前記筒体内に回転自在に設けられた回転体と、前記回転体に連結され前記筒体内で回転しながら洗浄液を噴射する洗浄ノズル部材と、前記回転体を回転させる回転手段とを備えたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記回転手段は、前記筒体に接続され前記回転体の外周に加圧エアを吹き付ける加圧エア供給手段から成ることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記回転体は、外周部が歯車状に形成され、この歯車に加圧エアを吹き付けることにより回転することを特徴とする請求項2記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄ノズルは、洗浄液と乾燥用エアが切り替え可能であることを特徴とする請求項1,2または3記載の洗浄装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−122811(P2006−122811A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314132(P2004−314132)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(391032370)エヌアイシ・オートテック株式会社 (7)
【Fターム(参考)】