説明

洗浄装置

【課題】少ない洗浄液で効率よく被洗浄物を洗浄できる洗浄装置を提供する。
【解決手段】超音波が印加された洗浄液を洗浄ヘッド20から噴射してガラス基板Gを洗浄する場合において、洗浄ヘッド20を外部ヘッド24と内部ヘッド26とで構成する。洗浄液は、外部ヘッド20に形成された供給口28から供給され、外部ヘッド24と内部ヘッド26との間に形成される流路32を通って噴射口22から噴射される。外部ヘッド24を内部ヘッド26に対して前後移動させると、流路32の断面積が変化し、噴射口22から噴射される洗浄液の流量が調整される。これにより、ガラス基板Gのサイズや汚れの程度、求められる洗浄の程度に応じて適切な流量で洗浄液を噴射することができ、必要最小限の洗浄液でガラス基板Gを洗浄することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄装置に係り、特に超音波を印加した噴流で大型のガラス基板等を洗浄する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトマスク用のガラス基板は、高い平坦性を確保するため、基板成形後、研磨処理が施される。そして、研磨後のガラス基板は、表面に付着した研磨剤等の汚れを除去するため、洗浄処理が施される。従来、ガラス基板の洗浄は、ディップ方式やスクラブ方式などで行われていた。
【0003】
ディップ方式は、洗浄液を満たした洗浄槽にガラス基板を浸漬し、超音波による振動などを併用しながら、表面に付着した汚れを除去する(たとえば、特許文献1)。
【0004】
一方、スクラブ方式は、ガラス基板の表面に洗浄液を供給しながら、回転するブラシを表面に接触させて、表面に付着した汚れを除去する(たとえば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−276759号公報
【特許文献2】特開2003−29394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スクラブ方式は、ブラシの擦れにより発塵し、この発塵によりガラス基板が汚れるという欠点がある。
【0006】
一方、ディップ方式は、このような発塵の問題はないが、処理するガラス基板の大きさに応じた洗浄槽を用意しなければならないという問題がある。このため、処理するガラス基板が大型化すると、それに伴い装置も大型化するという欠点がある。また、装置が大型化すると、洗浄液も大量に必要になるという欠点もある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、少ない洗浄液で効率よく被洗浄物を洗浄できる洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、前記目的を達成するために、供給口から供給された洗浄液に超音波を印加して噴射口から噴射する洗浄ヘッドを有し、該洗浄ヘッドで被洗浄物の表面を走査して、被洗浄物を洗浄する洗浄装置において、前記噴射口から噴射する洗浄液の流量を調整する流量調整手段を前記洗浄ヘッドに備えたことを特徴とする洗浄装置を提供する。
【0009】
請求項1に係る発明によれば、超音波を印加した噴流で被洗浄物を洗浄する場合において、噴射口から噴射する洗浄液の流量を調整することができる。これにより、被洗浄物のサイズ、汚れの程度、求められる洗浄の程度に応じて適切な流量で洗浄液を噴射することができ、必要最小限の洗浄液で洗浄することができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記目的を達成するために、前記流量調整手段は、前記供給口から供給された洗浄液を前記噴射口に導く流路の断面積を変えて、前記噴射口から噴射する洗浄液の流量を調整することを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置を提供する。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、噴射口から噴射される洗浄液の流量は、供給口から供給された洗浄液を噴射口に導く流路の断面積を変えて調整する。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記目的を達成するために、前記洗浄ヘッドは、前記供給口と前記噴射口とを有する中空の外部ヘッドと、前記外部ヘッドの内部に摺動自在に設けられ、前記噴射口から噴射される洗浄液に超音波を印加する内部ヘッドと、からなり、前記流路は、前記外部ヘッドと前記内部ヘッドとの間に形成され、前記流量調整手段は、前記外部ヘッドと前記内部ヘッドとを相対的に移動させて、前記流路の断面積を変えることを特徴とする請求項2に記載の洗浄装置を提供する。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、流路は外部ヘッドと内部ヘッドとの間に形成され、この外部ヘッドと内部ヘッドとを相対的に移動させることにより、断面積が変えられて、噴射口から噴射される洗浄液の流量が調整される。また、超音波を印加する内部ヘッドの位置を調整することにより、被洗浄物までの距離を調整することができ、超音波による洗浄効果を調整することができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記目的を達成するために、前記内部ヘッドは、前記噴射口に向けて開口する凹部内に超音波発振手段を有し、該凹部は、開口部が超音波を伝播可能な蓋材で密封されるとともに、内部に超音波を伝播可能な液体が充填されることを特徴とする請求項3に記載の洗浄装置を提供する。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、内部ヘッドは、噴射口に向けて開口する凹部を有し、この凹部内に超音波発振手段が収容配置される。そして、この凹部は、開口部が超音波を伝播可能な蓋材で密封されるとともに、内部が超音波を伝播可能な液体で満たされる。これにより、超音波の発振源からの汚れが洗浄液中に流れ出るのを効果的に防止することができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、前記目的を達成するために、前記超音波発振手段は、所定の集束点で集束するように超音波を印加することを特徴とする請求項4に記載の洗浄装置を提供する。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、超音波が所定の集束点で集束するように印加される。これにより、効果的に汚れを除去することができる。
【0018】
請求項6に係る発明は、前記目的を達成するために、前記内部ヘッドは、前記凹部内に連通する供給口と排出口とを有し、該供給口と排出口とを介して前記凹部内の液体が定期的に交換、又は、前記凹部に液体が常時又は間欠的に循環して供給されることを特徴とする請求項4又は5に記載の洗浄装置を提供する。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、凹部内の液体が、定期的に交換、又は、循環して供給される。これにより、凹部内の液体が汚れて、超音波の伝播を阻害するのを有効に防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る洗浄装置によれば、少ない洗浄液で効率よく被洗浄物を洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面に従って本発明に係る洗浄装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0022】
図1、図2は、それぞれ本発明に係る洗浄装置の一実施形態の構成を示す正面図と側面図である。
【0023】
この洗浄装置10は、フォトマスク用の大型ガラス基板の洗浄装置として構成されており、ガラス基板Gをほぼ垂直な姿勢で搬送する搬送ユニット12と、その搬送ユニット12によって所定の洗浄位置に搬送されたガラス基板Gの両側から超音波を印加した洗浄液を噴射して洗浄する一対の洗浄ユニット14とで構成されている。
【0024】
搬送ユニット12は、上下一対のローラ列16A、16Bによって構成されており、ガラス基板Gの上辺部及び下辺部を保持して、ガラス基板Gをほぼ垂直な姿勢(直立姿勢)で水平に搬送する。
【0025】
各ローラ列16A、16Bは、複数個のガイドローラ18A、18Bを直列配置して構成されている。このローラ列16A、16Bを構成する各ガイドローラ18A、18Bは、それぞれその外周面にV字状のガイド溝18a、18bが形成されており、このガイド溝18a、18bにガラス基板Gの上辺部及び下辺部を係合させて、ガラス基板Gをほぼ垂直な姿勢で保持する。
【0026】
また、各ガイドローラ18A、18Bは、図示しない搬送モータと連結されており、このモータに駆動されて回転する。そして、この搬送モータに駆動されて、各ガイドローラ18A、18Bが回転することにより、各ガイドローラ18A、18Bに保持されたガラス基板Gが垂直な姿勢を維持したまま水平に搬送される。
【0027】
洗浄ユニット14は、所定の洗浄位置(図2に示す位置)に搬送されたガラス基板Gに超音波が印加された洗浄液を噴射する洗浄ヘッド20と、その洗浄ヘッド20をガラス基板Gに沿って垂直に昇降させて、ガラス基板Gの表面を走査させる昇降装置60とで構成されており、所定の洗浄位置に搬送されたガラス基板Gを挟んで互いに対向するように設けられている。
【0028】
図3、図4は、それぞれ洗浄ヘッドの構成を示す鳥瞰図と側面断面図である。
【0029】
同図に示すように、洗浄ヘッド20は、洗浄液の噴射口22を有する中空の外部ヘッド24と、その外部ヘッド内に設けられ、噴射口22から噴射する洗浄液に超音波を印加する内部ヘッド26とで構成されている。
【0030】
外部ヘッド24は、全体が横方向に細長い矩形の枠状に形成されており、角部24Bと、その角部24Bの先端に設けられたテーパ部24Aとで構成されている。洗浄液の噴射口22は、テーパ部24Aの先端にスリット状に形成されており、洗浄するガラス基板Gの幅よりも長く形成されている。角部24Bの上部には、洗浄液の供給口28が形成されており、この供給口28から外部ヘッド24の内部に洗浄液が供給される。
【0031】
なお、この供給口28には、洗浄液供給パイプ72を介して図示しない洗浄液供給タンクが接続され、この洗浄液供給タンクから図示しない洗浄液供給ポンプに送液されて、供給口28に洗浄液が供給される。
【0032】
内部ヘッド26は、ベース部26Cと、そのベース部上に設けられた角部26Bと、角部26Bの先端に設けられたテーパ部26Aとで構成されており、超音波振動子44を内蔵している。
【0033】
ベース部26Cは、矩形の板状に形成されており、角部26Bとテーパ部26Aは、外部ヘッド24の内部形状に対応して形成されている。外部ヘッド24は、この角部26Bとテーパ部26Aを覆いかぶせるようにして取り付けられている。
【0034】
なお、外部ヘッド24の内周部には、矩形の枠状に形成されたスペーサ30が取り付けられており、このスペーサ30を介して角部26Bとテーパ部26Aとが外部ヘッド24の内周部に収容されている。
【0035】
そして、このスペーサ30を介して角部26Bとテーパ部26Aとが外部ヘッド24の内周部に収容されることにより、内部ヘッド26と外部ヘッド24との間に供給口28と噴射口22とを連通する流路32が形成され、この流路32を介して供給口28から供給された洗浄液が噴射口22に導かれる。
【0036】
また、このスペーサ30をガイドとして外部ヘッド24が、内部ヘッド26の角部26Bを摺動自在に支持され、内部ヘッド26に対して前後移動可能に設けられる。そして、この外部ヘッド24が内部ヘッド26に対して前後移動することにより、外部ヘッド24の内周部と内部ヘッド26の外周部との間隔が拡縮し、この結果、流路32の断面積が拡縮される。そして、この流路32の断面積が拡縮されることにより、噴射口22から噴射される洗浄液の流量が調整される。
【0037】
この外部ヘッド24の駆動は、ヘッド駆動モータにより行われる。内部ヘッド26のベース部26Cには、この外部ヘッド24を駆動するヘッド駆動モータ36が取り付けられている。このヘッド駆動モータ36の出力軸には、外部ヘッド24の移動方向に沿ってネジ棒38が取り付けられている。一方、外部ヘッド24の角部24Bには、このネジ棒38に螺合するナット部材40が取り付けられている。ヘッド駆動モータ36を駆動すると、ネジ棒38が回転し、そのネジ棒38の回転により、ナット部材40がネジ棒38に沿って前後移動する。この結果、外部ヘッド24が内部ヘッド26に対して前後移動する。
【0038】
なお、スペーサ30の内周部には、パッキン42が取り付けられており、このパッキン42によって、スペーサ30と内部ヘッド26との隙間が密閉されている。
【0039】
超音波振動子44は、内部ヘッド26の先端部に形成された凹部46に収容配置されている。この凹部46は、噴射口22に向けて開口して形成されており、その内部形状は、内部ヘッド26の外部形状に沿って形成されている。すなわち、四角い箱状に形成された角部46Bと、その角部46Bの先端に形成されたテーパ状のテーパ部46Aとで構成されている。また、その開口部46Xは、内部ヘッド26のテーパ部26Aの先端にスリット状に形成されている。
【0040】
超音波振動子44は、凹部46の角部46Bの内部に収容配置されており、その前段には、音響レンズ48が配置されている。この音響レンズ48は、超音波振動子44から発振された超音波を所定の集束点Pに集束させる。
【0041】
なお、この超音波振動子44を収容する凹部46は、その開口部46Xが、超音波を伝播可能な蓋材50によって密封されており、その内部には、超音波を伝播可能な液体(たとえば、純水や超純水)47で充填されている。
【0042】
このように超音波振動子44を密閉することにより、超音波発振部からのゴミの流出を防止することができ、洗浄度の高い洗浄液を噴射することができるようになる。
【0043】
昇降装置60は、図1及び図2に示すように、垂直に立設された支柱62と、その支柱62に沿って昇降する昇降体64とで構成されている。
【0044】
支柱62には、図示しないガイドレールが敷設されており、昇降体64は、このガイドレール上を摺動自在に設けられている。そして、このガイドレール上を摺動することにより、支柱62に沿って垂直に昇降する。
【0045】
なお、この昇降体64の駆動は、図示しない走査駆動モータにより行われる。この走査駆動モータは、支柱62に設けられており、その出力軸にはネジ棒が連結されている。ネジ棒は、ガイドレールに沿って配設されており、このネジ棒に昇降体64に設けられたナット部材が螺合されている。走査駆動モータを駆動すると、ネジ棒が回転し、そのネジ棒の回転により、ナット部材がネジ棒に沿って移動する。この結果、昇降体64が支柱62に沿って昇降する。
【0046】
洗浄ヘッド20は、この昇降体64に取り付けられており、昇降体64が昇降することにより、所定の洗浄位置に搬送されたガラス基板Gに沿って昇降し、ガラス基板Gの表面を走査する。
【0047】
なお、洗浄ヘッド20は、上死点において、所定の洗浄位置に搬送されたガラス基板Gの上方に位置するとともに、下死点において、所定の洗浄位置に搬送されたガラス基板Gの下方に位置するように、移動ストロークが設定されている。すなわち、ガラス基板Gの全面にわたって走査可能に移動ストロークが設定されている。
【0048】
また、一対の洗浄ユニット14は、超音波の集束点Pが、洗浄位置に位置したガラス基板Gの表面近傍に位置するように位置調整されて設置されている。
【0049】
また、洗浄位置に位置したガラス基板Gの下部には、トレイ70が設置されており、このトレイ70に洗浄液が回収されるように構成されている。
【0050】
以上のように構成された本実施の形態の洗浄装置10の作用は次のとおりである。
【0051】
図5は、本実施の形態の洗浄装置10によるガラス基板Gの洗浄手順の概略図である。
【0052】
洗浄対象のガラス基板Gは、搬送ユニット12を構成する上下のローラ列16A、16Bの間にセットされて、ほぼ垂直な姿勢で保持される。この状態で図示しない搬送モータを駆動すると、ローラ列16A、16Bを構成する個々のガイドローラ18A、18Bが回転し、図5(a)に示すように、ガラス基板Gが垂直な姿勢を保持したまま水平に搬送される。
【0053】
ガラス基板Gが、所定の洗浄位置まで搬送されると、搬送モータの駆動が停止される。これにより、図5(b)に示すように、ガラス基板Gが、ほぼ垂直な姿勢で洗浄位置に保持される。このとき洗浄ユニット14の洗浄ヘッド20は、上死点に位置している。
【0054】
ガラス基板Gが洗浄位置に保持されると、図示しない洗浄液供給タンクから各洗浄ヘッド20の供給口28に洗浄液が供給される。供給口28に供給された洗浄液は、図3及び図4に示すように、内部ヘッド26と外部ヘッド24との間に形成された流路32を通って噴射口22に導かれ噴射口22から噴流として噴射される。
【0055】
また、この洗浄液の供給と同時に超音波振動子44が駆動され、超音波が発信される。超音波振動子44から発信された超音波は、音響レンズ48によって所定の集束点Pに集束されて、噴射口22から噴射される洗浄液に印加される。
【0056】
供給口28に洗浄液が供給され、噴射口22から洗浄液の噴射が開始されると、図示しない走査駆動モータが駆動されて、図5(c)及び(d)に示すように、洗浄ヘッド20が下降を開始する。これにより、ガラス基板Gの表面が、下降する洗浄ヘッド20によって走査される。ガラス基板Gは、その洗浄ヘッド20による走査過程で表面に超音波が印加された洗浄液が吹き付けられて洗浄される。
【0057】
図5(e)に示すように、洗浄ヘッド20が下死点に到達すると、図示しない走査駆動モータの駆動が停止されて、下降が停止し、これと同時に洗浄液の供給及び超音波振動子44の駆動が停止される。そして、これにより、洗浄が終了する。
【0058】
洗浄が終了すると、図示しない搬送モータが駆動され、ガイドローラ18A、18Bが回転駆動される。これにより、図5(f)に示すように、ガラス基板Gが次工程へと搬送される。
【0059】
さて、以上のように、ガラス基板Gは、超音波が印加された洗浄液を噴射する洗浄ヘッド20で表面が走査させることにより洗浄されるが、ガラス基板Gの表面に噴射する洗浄液は、ガラス基板Gのサイズや汚染の程度、求められる洗浄の程度に応じて、その流量を制御することが好ましい。すなわち、一様な流量で洗浄液を噴射して洗浄すると、十分な洗浄ができなかったり、必要以上に洗浄液を供給して、洗浄液を無駄に消費してしまったりするので、ガラス基板Gのサイズや汚染の程度、求められる洗浄の程度に応じて適切な流量で噴射することが好ましい。
【0060】
そこで、本実施の形態の洗浄装置10では、ガラス基板Gのサイズや汚染の程度、求められる洗浄の程度に応じて、洗浄ヘッド20から噴射する洗浄液の流量を制御することにより、必要最小限の洗浄液でガラス基板Gを洗浄する。
【0061】
洗浄ヘッド20から噴射する洗浄液の流量調整は、外部ヘッド24を内部ヘッド26に対して前後移動させることにより行われ、これにより、供給口28から噴射口22に通じる流路32の断面積が変化して、流量が調整される。
【0062】
図6は、本実施の形態の洗浄ヘッド20における流量調整動作の説明図である。
【0063】
同図(a)は、基準流量で洗浄液を噴射している状態を示している。このとき、外部ヘッド24は、所定の基準位置に位置している。
【0064】
この状態からヘッド駆動モータ36を駆動して、同図(b)に示すように、外部ヘッド24を前進させると、外部ヘッド24が内部ヘッド26から離れ、その間に形成される流路32の断面積が拡大する。この結果、噴射口22から噴射される洗浄液の流量が増大する。
【0065】
一方、同図(c)に示すように、外部ヘッド24を後退させると、外部ヘッド24が内部ヘッド26に近づき、その間に形成される流路32の断面積が縮小する。この結果、噴射口22から噴射される洗浄液の流量が減少する。
【0066】
このように、本実施の形態の洗浄ヘッド20は、外部ヘッド24を内部ヘッド26に対して前後移動させることにより、噴射口22から噴射する洗浄液の流量を増減させることができる。これにより、ガラス基板Gのサイズや汚染の程度、求められる洗浄の程度に応じて適切な流量で洗浄液を噴射することができ、無駄な洗浄液の消費を防止することができる。
【0067】
なお、本実施の形態の洗浄装置10では、外部ヘッド24を内部ヘッド26に対して前後移動させることにより、その間に形成される流路32の断面積を変えて、噴射口22から噴射する洗浄液の流量を変えているが、内部ヘッド26を外部ヘッド24に対して前後移動させることにより、その間に形成される流路32の断面積を変えて、噴射口22から噴射する洗浄液の流量を変えるようにしてもよい。
【0068】
たとえば、図7に示すように、内部ヘッド26を外部ヘッド24の内側に摺動自在に設けるとともに、ヘッド駆動モータ36を外部ヘッドの角部24Bの内側に設置する。そして、そのヘッド駆動モータ36の出力軸に内部ヘッド26の移動方向に沿ってネジ棒38を取り付けるとともに、取り付けたネジ棒38の先端部に内部ヘッド26を係合させる。すなわち、内部ヘッド26の基端部にナット部26Nを形成し、このナット部26Nにネジ棒38を螺合させる。
【0069】
これにより、ヘッド駆動モータ36を駆動すると、ネジ棒38が回転し、そのネジ棒38の回転により、ナット部26Nがネジ棒38に沿って移動する。そして、ナット部材26Nがネジ棒38に沿って移動することにより、ナット部材26Nが形成された内部ヘッド26が外部ヘッド24内を移動する。この結果、内部ヘッド26と外部ヘッド24との間に形成される流路32の断面積が変化し、噴射口22から噴射する洗浄液の流量が調整される。
【0070】
なお、このように内部ヘッド26を移動させて流量を調整する構成とすることにより、印加する超音波の集束点Pの位置を調整することができ、超音波による洗浄効果の調整を行うことができる。
【0071】
また、図8に示すように、内部ヘッド26と外部ヘッド24を互いに移動させて、噴射口22から噴射する洗浄液の流量を変えるようにしてもよい。この図8に示す例の場合、内部ヘッド26を外部ヘッド24の内側に摺動自在に設けるとともに、外部ヘッド24を昇降体64に対して摺動自在に設けている。そして、昇降体64にヘッド駆動モータ36を設置するとともに、そのヘッド駆動モータ36の出力軸にネジ棒38を取り付け、外部ヘッド24の基端部に形成したナット部24Nに螺合させている。また、そのネジ棒38の先端を内部ヘッド26の基端部に形成した軸受部26Mに回動自在に支持させている。
【0072】
この構成により、ヘッド駆動モータ36を駆動すると、ネジ棒38が回転し、そのネジ棒38の回転により、内部ヘッド26と外部ヘッド24とが相対的に移動する。すなわち、外部ヘッド24を昇降体64に対して前進させると、内部ヘッド26が後退(外部ヘッド24に近づく方向に移動)し、この結果、内部ヘッド26と外部ヘッド24との間に形成される流路32の断面積が縮小して、噴射口22から噴射される洗浄液の流量が減少する。一方、外部ヘッド24を昇降体64に対して後退させると、内部ヘッド26が前進(外部ヘッド24から離れる方向に移動)し、この結果、内部ヘッド26と外部ヘッド24との間に形成される流路32の断面積が拡大して、噴射口22から噴射される洗浄液の流量が増大する。
【0073】
このように、内部ヘッド26と外部ヘッド24とを相互に移動させて、流量を調整する構成とすることもできる。この場合も印加する超音波の集束点Pの位置を調整することができ、超音波による洗浄効果の調整を行うことができる。
【0074】
なお、本実施の形態では、洗浄ヘッドを内部ヘッドと外部ヘッドとで構成し、内部ヘッドと外部ヘッドとを相対的に移動させることにより、流路の断面積を変えて、噴射口から噴射する洗浄液の流量を調整する構成としているが、噴射口から噴射する洗浄液の流量を調整する機構は、これに限定されるものではなく、他の機構を用いて調整するようにしてもよい。
【0075】
また、本実施の形態の洗浄装置10では、洗浄液に印加する超音波を集束させているが、集束させずに印加してもよい。
【0076】
しかしながら、本実施の形態の洗浄装置10のように、ガラス基板Gの表面近傍に超音波を集束させることにより、超音波による洗浄効果をより高めることができ、少ない洗浄液で効果的に汚れを除去することができるようになる。すなわち、超音波をガラス基板Gの表面に集束させると、ガラス基板Gの表面に高密度で細かな気泡の気泡群を発生させることができる。この高密度で細かな気泡の気泡群は、崩壊時に強力な衝撃力を発生し、その強力な衝撃力により、表面に付着した微細な粒子や膜状の汚れを効果的に除去することができる。また、その強力な衝撃力により効率的にラジカルを生成することができるので、ラジカルによる化学的な洗浄効果も高めることができる。
【0077】
なお、本実施の形態では、音響レンズによって超音波振動子から発振した超音波を集束させているが、超音波振動子自身に集束機能を持たせるようにしてもよい。たとえば、超音波の出射面の形状を兼古城にすることにより、出射する超音波を所定の集束点に集束させるようにしてもよい。
【0078】
また、本実施の形態では、内部ヘッド26に形成した凹部46内に超音波振動子44を収容し、その凹部46を超音波伝播可能な液体47で満たして、開口部46Xを蓋材50で密封する構成としているが、開口部46Xを開放する構成としてもよい。この場合、凹部46内には、供給口28から供給される洗浄液が満たされる。
【0079】
なお、本実施の形態のように、超音波振動子44を凹部46に設置して密封する構成とすることにより、超音波の発振源から発生したゴミ等が洗浄液に流入するのを防止できる。
【0080】
なお、このように超音波振動子44を密封する構成の場合、凹部内に充填する液体を定期的に交換、あるいは、常時循環させることが好ましい。すなわち、液体は密閉すると、次第に汚れ、緒音波の伝播を阻害するおそれがあるので、凹部内の液体47を常に清浄に保つため、凹部内に充填する液体を定期的に交換、あるいは、常時循環させる。このため、凹部46内に充填する液体47は、交換あるいは循環させることができるように構成することが好ましい。たとえば、内部ヘッド26に凹部46の内側に連通する供給口と排出口を形成し、この供給口と排出口から凹部内の液体47を常時あるいは間欠的に循環できるように構成する。あるいは、内部ヘッド26に凹部46の内側に連通する供給/排出口を形成し、この供給/排出口から凹部内の液体47を交換できるように構成する。
【0081】
また、本実施の形態では、使用する洗浄液の種類について、特に言及していないが、洗浄液は洗浄用途に応じたものを使用する。たとえば、フォトマスク用のガラス基板の洗浄工程では、通常、薬液洗浄→リンス→洗剤洗浄→リンス→乾燥という工程で洗浄されるので、各工程で用いる洗浄液を使用する。したがって、たとえば、薬液洗浄工程では、硫酸や硫酸過水等の薬液を洗浄液として使用して洗浄し、リンス工程では、純水や超純水等を洗浄液として使用して洗浄する。また、洗剤洗浄工程では、洗剤液(たとえば、純水に洗剤を添加したもの)を洗浄液として使用して洗浄する。
【0082】
また、本実施の形態の洗浄装置10では、ガラス基板Gをほぼ垂直な姿勢で保持して洗浄しているが、水平な姿勢で保持して洗浄するようにしてもよい。
【0083】
しかしながら、本実施の形態の洗浄装置10のように、ガラス基板Gをほぼ垂直な姿勢で保持し、その両側から洗浄ヘッド20で走査する構成とすることにより、ガラス基板Gの両面を一度に同じ条件で洗浄することができ、効率よくガラス基板Gを洗浄することができる。また、垂直な姿勢で洗浄する構成とすることにより、装置構成もコンパクトにすることができ、省スペース化も図ることができる。
【0084】
さらに、ガラス基板が複数の洗浄工程を経て段階的に洗浄される場合、各工程での洗浄処理を流れ作業として連続的に行うことができ、効率よく処理することができるようになる。すなわち、垂直な姿勢を保持したままガラス基板を各工程に搬送して処理することができるので、効率よく洗浄作業を行うことができる。
【0085】
また、本実施の形態では、スリット状の噴射口を有する洗浄ヘッドによって洗浄液を噴射する構成としているが、多数のノズルを直線上に配置した洗浄ヘッドによって洗浄液を噴射する構成としてもよい。この場合、各ノズルの噴射口の形状は、円形状に形成してもよいし、また、スリット状に形成してもよい。
【0086】
また、本実施の形態では、被洗浄物としてフォトマスク用の大型ガラス基板を洗浄する場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではなく、この他、液晶用ガラス基板や半導体基板等の基板を洗浄する場合にも同様に適用することができる。
【0087】
なお、フォトマスク用のガラス基板は、全面においてサブミクロンオーダでの清浄化が要求されることから、少ない洗浄液で効果的に洗浄できる本発明は有効に作用する。特に、近年フォトマスク用のガラス基板は、大型化の傾向にあるので、装置構成もコンパクト化できる本発明は、特に有効に作用する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係る洗浄装置の一実施形態の構成を示す正面図
【図2】本発明に係る洗浄装置の一実施形態の構成を示す側面図
【図3】洗浄ヘッドの構成を示す鳥瞰図
【図4】洗浄ヘッドの構成を示す側面断面図
【図5】洗浄装置によるガラス基板Gの洗浄手順の概略図
【図6】洗浄ヘッドにおける流量調整動作の説明図
【図7】洗浄ヘッドの他の実施の形態の構成を示す側面断面図
【図8】洗浄ヘッドの他の実施の形態の構成を示す側面断面図
【符号の説明】
【0089】
G…ガラス基板、10…基板洗浄装置、12…搬送ユニット、14…洗浄ユニット、16A、16B…ローラ列、18A、18B…ガイドローラ、20…洗浄ヘッド、22…噴射口、24…外部ヘッド、26…内部ヘッド、28…供給口、32…流路、36…ヘッド駆動モータ、44…超音波振動子、46…凹部、48…音響レンズ、50…蓋材、60…昇降装置、62…支柱、64…昇降体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給口から供給された洗浄液に超音波を印加して噴射口から噴射する洗浄ヘッドを有し、該洗浄ヘッドで被洗浄物の表面を走査して、被洗浄物を洗浄する洗浄装置において、
前記噴射口から噴射する洗浄液の流量を調整する流量調整手段を前記洗浄ヘッドに備えたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記流量調整手段は、前記供給口から供給された洗浄液を前記噴射口に導く流路の断面積を変えて、前記噴射口から噴射する洗浄液の流量を調整することを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄ヘッドは、前記供給口と前記噴射口とを有する中空の外部ヘッドと、前記外部ヘッドの内部に摺動自在に設けられ、前記噴射口から噴射される洗浄液に超音波を印加する内部ヘッドと、からなり、前記流路は、前記外部ヘッドと前記内部ヘッドとの間に形成され、前記流量調整手段は、前記外部ヘッドと前記内部ヘッドとを相対的に移動させて、前記流路の断面積を変えることを特徴とする請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記内部ヘッドは、前記噴射口に向けて開口する凹部内に超音波発振手段を有し、該凹部は、開口部が超音波を伝播可能な蓋材で密封されるとともに、内部に超音波を伝播可能な液体が充填されることを特徴とする請求項3に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記超音波発振手段は、所定の集束点で集束するように超音波を印加することを特徴とする請求項4に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記内部ヘッドは、前記凹部内に連通する供給口と排出口とを有し、該供給口と排出口とを介して前記凹部内の液体が定期的に交換、又は、前記凹部に液体が常時又は間欠的に循環して供給されることを特徴とする請求項4又は5に記載の洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−80293(P2008−80293A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265395(P2006−265395)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】