説明

洗濯乾燥機

【課題】洗濯液の状態を検出し、乾燥工程で衣類に噴霧する霧化量および噴霧時間を最適化して、衣類の消臭効果を高める。
【解決手段】外槽2内の洗濯液の状態を検出する洗濯液状態検出手段10と、ドラム3内に乾燥用空気を送風する送風ファン12と、送風ファン12により送風する乾燥用空気を加熱する加熱手段11と、液体を霧化する静電霧化装置(霧化装置)14と、モータ4等を制御し洗濯、乾燥の動作を制御する制御部15とを備え、制御部15は、洗濯工程時の洗濯液状態検出手段の検知度合いに基き、乾燥工程において静電霧化装置14で発生させる霧化量と発生時間の少なくともいずれか1つを調整するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等の洗濯、乾燥をおこなう洗濯乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の洗濯乾燥機は、光の透過度を利用した透過度センサや、洗濯槽に電極を設け、導電度により汚れ度合いを検出する洗濯乾燥機が考えられている。導電率センサによる検出は、図5に示すように、電極51間に介在する液および空気の抵抗と、回路上のコンデンサ52でRC発振回路を構成し、液および空気の抵抗変化をインバータIC53で増幅、波形修正し、周波数変化として出力するものである。この出力特性は、変化量が大きく、微少の抵抗の変化でも検出できるものとなっており、洗濯、すすぎ、脱水を見分ける周波数帯も、洗剤水で38kHz、一般の水道水で10kHz、空気で4.5kHzと明確に区分化できるものである。
【0003】
この区分化により、洗濯中に水の汚れがひどい時は洗い水流を強くし、あるいは、洗い時間を長くする。また、すすぎ時は、水の透過度に近くなった時点ですすぎ完了と判断し、次の工程へ移行する。さらに、脱水時は、水と空気の透過度の差で水が抜け切った時点から脱水時間を設定するといったことを行なっている。このように透過度センサや導電率センサにより、洗濯、脱水工程での利用は知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、静電霧化装置における乾燥工程での消臭機能については、送風ファンにより水槽内の空気を排気して結露水の排水を伴い除湿した後加熱し、水槽内に送風することを繰り返し、水槽に収容され多数の透孔を持った回転ドラム内の衣類等を乾燥させる循環送風経路と、この循環送風経路の送風側に設けられたミスト供給部とを利用し、回転ドラムを回転させずに、ミスト供給部から供給するミストにより回転ドラム内の乾燥した衣類を濡らして後、加熱空気により衣類を乾燥させて消臭を図る消臭モードを備え、消臭モードは、ミスト処理と、乾燥を少なくとも1回ずつ行うことにより、乾燥した衣類に霧状のミストを噴霧し、乾燥することで消臭することが知られている。したがって、一般的に汚れが臭いに影響することは知られており、汚れと臭いの関係は相関があると考えられている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−300590号公報
【特許文献2】特開2009−61294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、洗濯工程で検知した透過度センサおよび導電率センサの検出度合いから洗濯の流水や洗濯時間を長くすることがおこなわれ、また、脱水工程では、脱水時の水分の透過度センサによる検出度合いから脱水時間を長くするなど、洗濯、すすぎ、脱水工程で、透過度センサおよび導電率センサを利用しているが、乾燥工程では、それらのセンサは利用されていない。
【0007】
したがって、消臭機能としてミスト動作をおこなう場合でも、臭いセンサなどは無く、一定時間の一定霧化量によるミスト動作となっており、必要な霧化量となっているかどうかわからず調整機能が無い。また、臭いセンサを搭載する場合には、新たに部品を追加して設ける必要があり、経済性においても不利である。
【0008】
また、従来の霧化量は、布量検知による衣類量に応じて霧化量を変化させていたが、本来の臭い成分を抑制するには、衣類量だけではなく、汚れ度合いによる霧化量の判断が必要であり、衣類量だけで霧化量を変化させるだけでは、必要以上の霧化量を発生するなど省エネ性に劣るといった課題があった。
【0009】
さらに、近年のドラム式洗濯乾燥機では、乾燥工程における温風温度が低く、乾燥工程後に雑菌が残っているために臭いが残るという課題もあり、乾燥工程の仕上げ段階で消臭機能が必要であるが、その場合に布量に応じた一定の霧化量を噴霧することとなり、残っている雑菌や汚れ成分に応じた霧化量にできないという課題があった。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、汚れが臭いの発生源であることから汚れセンサの汚れ度合いにより、消臭機能であるミスト時間やミスト量を調整することにより、乾燥工程のミスト発生による省エネおよび乾燥工程の省エネをおこなうことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の洗濯乾燥機は、外槽内の洗濯液の状態を検出する洗濯液状態検出手段と、ドラム内に乾燥用空気を送風する送風ファンと、前記送風ファンにより送風する乾燥用空気を加熱する加熱手段と、液体を霧化する霧化装置と、モータ等を制御し洗濯、乾燥の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、洗濯工程時の洗濯液状態検出手段の検知度合いに基き、乾燥工程において前記霧化装置で発生させる霧化量と発生時間の少なくともいずれか1つを制御するようにしたものである。
【0012】
これによって、洗濯液状態検出手段の検知度合いに応じて乾燥工程での霧化量および霧化発生時間を最適にすることができ、省エネ性の高い動作を実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の洗濯乾燥機は、洗濯液状態検出手段の検知度合いに応じて、乾燥工程での霧化量および霧化発生時間を最適化することができ、乾燥衣類の消臭効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における洗濯乾燥機の構成図
【図2】同洗濯乾燥機の制御機能のブロック図
【図3】同洗濯乾燥機の洗濯液状態検出手段の検知度合いの時系列変化グラフ
【図4】同洗濯乾燥機の制御機能のフローチャート
【図5】従来の洗濯乾燥機の回路図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、衣類を収容するドラムと、前記ドラムを回転可能に内包した外槽と、前記ドラムを回転駆動するモータと、前記外槽内の洗濯液の状態を検出する洗濯液状態検出手段と、前記ドラム内に乾燥用空気を送風する送風ファンと、前記送風ファンにより送風する乾燥用空気を加熱する加熱手段と、液体を霧化する霧化装置と、前記モータ等を制御し洗濯、乾燥の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、洗濯工程時の洗濯液状態検出手段の検知度合いに基き、乾燥工程において前記霧化装置で発生させる霧化量と発生時間の少なくともいずれか1つを制御するようにしたことにより、洗濯工程時の洗濯液状態検出手段の検知度合いから、乾燥工程での霧化装置の発生霧化量および発生時間を調整することで、乾燥工程における霧化発生による省エネ性の向上および最適な霧化量により消臭効果を高めることができる。また、新たなセンサを用いることなく、洗濯工程時の洗
濯液状態検出手段の検知度合い応じて、霧化発生の量と時間を最適にすることができ、無駄な動作をなくして消費電力を抑制することができるとともに、洗濯物の汚れに合わせて霧化量を調整し消臭効果を高めることができる。
【0016】
第2の発明は、特に、第1の発明の洗濯液状態検出手段は、外槽内の洗濯液状態を導電度で検出する導電率センサと、透過度で検出する透過度センサを有し、制御部は、前記導電率センサが洗濯液状態を検出開始から洗濯液状態の良化判定をするまでの時間を計測する第一計時手段と、前記透過度センサが洗濯液状態を検出開始から洗濯液状態の良化判定をするまでの時間を計測する第二計時手段を有し、前記第一計測手段と前記第二計測手段の計測時間から、霧化装置で発生させる霧化量と発生時間の少なくともいずれか1つを制御するようにしたことにより、洗濯液状態の検知度合いに加えて、洗濯液状態の検知時間経過により、臭いの付着度を判断することができ、最適な霧化量および動作時間の調整ができ、省エネ性の向上および消臭効果を高めることができる。
【0017】
第3の発明は、特に、第1の発明の洗濯液状態検出手段は、外槽内の洗濯液状態を導電度で検出する導電率センサを有し、制御部は、前記導電率センサが洗濯液状態を検出開始から洗濯液状態の良化判定をするまでの時間を計測する第一計時手段を有し、前記第一計測手段の計測時間から、霧化装置で発生させる霧化量と発生時間の少なくともいずれか1つを制御するようにしたことにより、洗濯液状態検出手段の簡易化が図れ、簡単な回路構成で乾燥工程の省エネ性を向上することができる。
【0018】
第4の発明は、特に、第2または第3の発明の制御部は、第一計時手段の計時時間が短い場合、霧化装置の霧化量を標準値より少なくするか、もしくは、発生時間を短くするようにしたことにより、霧化量または動作時間またはその両方を少なくすることができ、消費電力を抑制して乾燥工程における省エネ性を向上することができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における洗濯乾燥機の構成図を示すものである。図1において、洗濯乾燥機1は、その内部に外槽2が配設され、外槽2の内側にドラム3が水平方向から少し前上がりに傾斜した回転軸によって回転可能に配設されている。ドラム3は、背面に接続されたモータ4の回転によって回転するようになっている。また、ドラム3は周側壁面に複数の通水孔(図示せず)が設けられており、洗濯槽、脱水槽、乾燥槽としても機能するものである。
【0021】
外槽2の最低部には、取水口5が設けられており、排水弁6を介して排水管7につながっている。また、取水口5と排水弁6の間には、取水口5から取り込んだ洗濯液をドラム3内に吐出する吐出口8につながった循環水路9が連通している。循環水路9には、洗濯液の状態を検知する洗濯液状態検出手段10が設置されている。洗濯液状態検出手段10は、洗濯液の汚れの状態を透過度と導電率で検知する。
【0022】
また、循環水路9には循環ポンプ16が設けてあり、外槽2内の洗濯液やすすぎ液を取水口5から循環水路9に導入し、洗濯液状態検出手段10を通過させて吐出口8からドラム3内へ吐出し、循環できるようにしている。
【0023】
また、乾燥工程で衣類を乾燥させるために乾燥風を加熱する加熱手段11と、加熱手段11で加熱された乾燥用空気を温風として送風する送風ファン12が設けてあり、送風管13を通してドラム3内に加熱された乾燥用空気を送風するようにしている。送風管13
の途中には、乾燥工程で衣類にミスト状の水滴を噴霧するために静電霧化装置(霧化装置)14を設けてあり、この静電霧化装置14で生成したミスト状の水滴は、ドラム3内へ温風を送風する際に同時にドラム3内に供給される。なお、霧化装置として、静電霧化装置のほか、超音波霧化装置等でもよく、水等の液体を細かな微粒子状にしてミストが生成されるものであればよい。
【0024】
そして、これらの一連の洗濯、脱水、乾燥の各工程などの動作を制御する制御部15が洗濯乾燥機1内に設けてあり、モータ4、排水弁6、加熱手段11、送風ファン12、静電霧化装置14、循環ポンプ16等を制御する。
【0025】
図2は、本発明の第1の実施の形態における洗濯乾燥機の制御機能のブロック図を示すものである。図2において、洗濯乾燥機1内に設けた洗濯液状態検出手段10は、検知度合いを導電度で検知する導電率センサ101と、透過度で検知する透過度センサ102を有している。
【0026】
また、制御部15は、導電率センサ101の検出値を計測する導電率計測部151と、その計測値を時系列に計測するための時間を計測する第一計時手段153を有し、さらに透過度センサ102の検出値を計測する透過度計測部152と、その計測値を時系列に計測するための時間を計測する第二計時手段154を有している。また、静電霧化装置14は、制御部15で計時した洗濯液状態検出手段10の汚れ度合いの時系列データに基き、霧化量および霧化時間を制御し調整する構成としている。
【0027】
図3は、本発明の第1の実施の形態における洗濯液状態検出手段10の検知度合いの時系列変化のグラフである。図3において、横軸は時間経過を示し、縦軸は洗濯液状態検出手段10の検知度合いを示している(上方が洗濯液の汚れが多く残っており、下方が洗濯液の汚れが少なくなっている)。また、洗濯液状態の検知度合いの良化点R0は、洗濯工程での洗濯液の検知状態が良化したと判断する、良化判断基準点を示している。
【0028】
グラフY1は、洗濯液状態の良化度合いが早い衣類、グラフY2は、洗濯液状態の良化度合いが中間(標準的な)の衣類、グラフY3は、洗濯液状態の良化度合いが遅い衣類であり、それぞれの洗濯工程における洗濯液状態の検知度合いを時系列にしたグラフを示している。また、それぞれのグラフが良化点R0と交差する交点R1、R2、R3を示し、その交点における時間を時間T1、T2、T3として示している。
【0029】
さらに洗濯工程後、各グラフY1、Y2、Y3の良化点R0からの一定時間のすすぎ工程後の洗濯液状態の検知度合いを交点S1、S2、S3として示している。この交点S1、S2、S3の洗濯液状態の検知度合い(洗濯液の汚れが多い)は、S3>S2>S1の状態となっている。
【0030】
図4は、本発明の第1の実施の形態における制御機能のフローチャートを示すものである。図4において、フローチャートF01は、洗濯液状態検出手段10からの検出信号、フローチャートF02は、制御部15の導電率計測部151と透過度計測部152での検知度合いの計測値、フローチャートF03は、時系列に測定するための第一計時手段153と第二計時手段154の時間計測値、フローチャートF04は、その時系列に記録したデータを記録するデータを示している。
【0031】
次に、フローチャートF05は、洗濯工程時に連続計測している洗濯液状態検出手段10の検知度合いが良化点R0に達したかどうかを判定する判定部を示し、未到達の場合には計測を継続し、到達していた場合には、フローチャートF06の洗濯工程終了動作をおこなう。
【0032】
次に、フローチャートF07は、フローチャートF04の時系列データを洗濯液状態検出手段10の検知度合い変化の近似式計算をおこない、フローチャートF08は、その近似式計算からすすぎ工程後の洗濯液状態検出手段10の検知度合いを予測するフローチャートを示している。
【0033】
次に、フローチャートF09は、すすぎ工程後の洗濯液状態検出手段10の検知度合いの予測に基き、洗濯液状態の良化の早さ度合いから霧化量または霧化発生時間を決定する。フローチャートF10は、良化点R0通過時の時間がT1、T2、T3の場合の霧化量の制御動作を示している。
【0034】
以上のように構成された洗濯乾燥機1について、以下その動作、作用を説明する。まず、図1に示す洗濯乾燥機1は、利用者が洗濯をおこなう衣類をドラム3内に投入し、洗濯、脱水、乾燥工程をおこなう際に、まず、洗剤と水を投入後、洗濯工程で洗浄をおこないながら循環ポンプ16によって外槽2内の洗濯水を取水口5から循環水路9に導入し、洗濯液状態検出手段10を通して吐出口8からドラム3内に戻す動作を繰り返しおこなう。
【0035】
この洗濯工程では、洗濯工程開始から洗濯工程終了までの間、洗濯液状態検出手段10は、通過する洗濯液の汚れ度合いの状態を、導電率センサ101と透過度センサ102によって導電率と透過度を検出し(フローチャートF01)、その検出値を制御部15内の導電率計測部151と透過度計測部152により計測する(フローチャートF02)。その計測値と同時に時間変化を第一計時手段153と第二計時手段154により導電率の時系列、透過度の時系列を計時し(フローチャートF03)、データとして計測記録する(フローチャートF04)。
【0036】
洗濯工程時に、図3に示す良化点R0に洗濯液状態検出手段10の状態検知度合いが達した場合、制御部15は、洗濯液の状態が良化したと判断して、洗濯工程の終了動作をおこなう(フローチャートF06)。
【0037】
次に、洗濯工程終了後は、排水弁6を開いて外槽2内の洗濯水を排水管7から排水した後、排水弁6を閉じて新たにすすぎ水を注水し、ドラム3を回転させてすすぎをおこなう。すすぎ工程では、洗剤を除去するために一定時間の間、洗濯工程での洗濯動作と同様のすすぎ動作をおこない、再度、排水弁6を開いて排水をおこなう。
【0038】
次に、すすぎ工程終了後、脱水工程ではドラム3をモータ4で駆動して所定時間、高速回転をおこない衣類に含まれている水分を遠心分離する。脱水時は排水弁6が開かれ、外槽2内の洗濯水を取水口5から開かれた排水弁6を経て排水管7から排水する。
【0039】
次に、脱水工程終了後、乾燥工程では、最初にドラム3をモータ4でゆっくり回転させ、ドラム3の内周面に張り付いた状態の衣類のほぐし動作をおこない、加熱手段11が空気を加熱し、送風ファン12がその加熱空気を送風し、送風管13を通してドラム3内にある衣類に温風を当てることで乾燥をおこなう。
【0040】
そして、衣類が規定の乾燥状態まで乾燥した後、乾燥の仕上げ工程で、制御部15が静電霧化装置14に対して霧化動作の制御をおこない、静電霧化装置14で生成した微粒子状のミストは、ドラム3内へ送風される温風とともにドラム3内に供給され、衣類に噴霧して衣類の消臭動作をおこなう。このとき、衣類はドラム3内でゆっくりと撹拌されている状態、または停止している状態のいずれであってもよい。
【0041】
この時に、制御部15で記録している洗濯液状態検出手段10の検出値と時間経過の計
測値(フローチャートF04)から洗濯液の良化が早い、または、標準的か遅いかを判断し、その良化の早さ度合いで、静電霧化装置14の霧化量および霧化発生時間を調整し制御する(フローチャートF09)。
【0042】
例えば、図3のグラフY1に示す洗濯液状態の良化が早い場合には、基準値より霧化量を少なくし(従って、一定量を発生する場合には霧化発生時間を短くする)、グラフY2に示す洗濯液状態の良化の早さ度合いが標準的な場合は、静電霧化装置14の霧化量を基準値どおりとし、グラフY3に示す洗濯液状態の良化の早さ度合いが遅い場合は、静電霧化装置14の霧化量を基準値より多くする(従って、一定量を発生する場合には霧化発生時間を長くする)(フローチャートF10)。
【0043】
しかし、実際には、洗濯水の温度や硬度等によっては、洗濯液状態の良化の早さ度合いが変化するため、同じ綿衣類や化繊衣類を使用した場合でも洗濯水の温度や硬度等によって変化することが分かっている。そのために、洗濯毎に洗濯液状態の検出値と時間経過の計測値を制御部15で測定することにより、洗濯液状態の良化の早さ度合いの曲線を洗濯毎に近似計算することができ(フローチャートF07)、図3に示すような一定時間のすすぎ工程終了後における洗濯液状態の良化度合いを予測することができる(フローチャートF08)。
【0044】
その結果、良化点R1、R2、R3の経過時間T1、T2、T3から、すすぎ工程後の外槽2内の洗濯液状態の良化度合い交点S1、S2、S3を予測できるため、静電霧化装置14で発生させる霧化量を制御部15で調整することができる。
【0045】
また、導電率センサ101と透過度センサ102が検知する導電率と透過度は、図3のような曲線をそれぞれ描くが、導電率は汗や油脂等の汚れに対して検出が有効であり、透過度は泥汚れやシミ汚れに対して検出が有効であり、この両方の汚れ落ち度合いを利用して検出すると、洗濯工程での洗濯液状態検出手段10としての精度は高くなる。したがって、その高い精度の検出値を用いて静電霧化装置14の霧化量または霧化発生時間を調整することで、噴霧の制御を一層最適にすることができる。
【0046】
ここで、静電霧化装置14は、一般的に衣類に霧状の水分を噴霧することで衣類に浸透し、臭い成分を吸着し、消臭効果がある。そのため脱水後の乾燥工程では、残留している臭いの元となっている体から分泌されるたんぱく質や皮脂等に吸着することで消臭する。ここでは、洗濯液状態検出手段10の検出度合いがS3>S2>S1としているように、洗濯液状態の良化度合いが早い場合に衣類に残っている汚れ成分も少ないことから(例えば、汚れの落ちやすい化繊の場合は、汚れの落ちる時間も早い)、臭い成分の元である体から分泌されるたんぱく質や皮脂なども少なく、静電霧化装置14で臭い成分を除去するために噴霧する霧化量を少なくすることができる。
【0047】
ここでは、導電率センサ101と透過度センサ102を使用して静電霧化装置14の霧化量または霧化発生時間の調整をおこなうことを示しているが、さらに経済性をよくするために、臭い成分の元となる体から分泌されるたんぱく質や皮脂等を検出するに有効な導電率センサ101のみで洗濯液状態検出手段10を構成することでおこなっても作用、効果は同じであり、より経済性の優れた洗濯乾燥機を提供することができる。
【0048】
以上のように、洗濯工程で汚れの落ち度合いを検知する洗濯液状態検出手段10を、乾燥工程における静電霧化装置14の霧化量の調整に利用することができ、余分な装置を設けることなく霧化量を最適値に調整することができるとともに、余分な霧化量発生のための消費電力の無駄を少なくすることができ、経済性、省エネ性の高い洗濯乾燥機を提供することができる。
【0049】
また、ここでは、洗濯工程での洗濯液状態検出手段10の洗濯液の状態検出度合いが、良化点R0に到達するまでの時間T1、T2、T3により、乾燥工程での静電霧化装置14の霧化量または霧化発生時間の少なくとも1つを調整するようにしているが、洗濯工程後のすすぎ工程終了直前の排水前の外槽2内の洗濯液を洗濯液状態検出手段10により検知し、その時の検知度合いである実測値S1、S2、S3の値から静電霧化装置14の霧化量または霧化発生時間の調整をおこなうようにすることもできる。
【0050】
このようにしても、洗濯、すすぎ工程で使用している洗濯液状態検出手段10の洗濯液状態の検知度合いから、静電霧化装置14の霧化量の調整に利用することができ、霧化量の最適化による省エネ性、および洗濯液状態検出手段10の利用による経済性の効果を向上することができる。
【0051】
ここでは、乾燥工程における加熱手段11は、乾燥時に温風を発生させる手段であり、ヒータ式であってもヒートポンプ式であってもよく、その作用効果は同じである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明にかかる洗濯乾燥機は、洗濯液状態検出手段の検知度合いに応じて、乾燥工程での霧化量および霧化発生時間を最適化することができ、乾燥衣類の消臭効果を高めることができるので、洗濯乾燥機として有用である。
【符号の説明】
【0053】
2 外槽
3 ドラム
4 モータ
10 洗濯液状態検出手段
11 加熱手段
12 送風ファン
14 静電霧化装置(霧化装置)
15 制御部
101 導電率センサ
102 透過度センサ
151 導電率計測部
152 透過度計測部
153 第一計時手段
154 第二計時手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類を収容するドラムと、前記ドラムを回転可能に内包した外槽と、前記ドラムを回転駆動するモータと、前記外槽内の洗濯液の状態を検出する洗濯液状態検出手段と、前記ドラム内に乾燥用空気を送風する送風ファンと、前記送風ファンにより送風する乾燥用空気を加熱する加熱手段と、液体を霧化する霧化装置と、前記モータ等を制御し洗濯、乾燥の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、洗濯工程時の洗濯液状態検出手段の検知度合いに基き、乾燥工程において前記霧化装置で発生させる霧化量と発生時間の少なくともいずれか1つを制御するようにした洗濯乾燥機。
【請求項2】
洗濯液状態検出手段は、外槽内の洗濯液状態を導電度で検出する導電率センサと、透過度で検出する透過度センサを有し、制御部は、前記導電率センサが洗濯液状態を検出開始から洗濯液状態の良化判定をするまでの時間を計測する第一計時手段と、前記透過度センサが洗濯液状態を検出開始から洗濯液状態の良化判定をするまでの時間を計測する第二計時手段を有し、前記第一計測手段と前記第二計測手段の計測時間から、霧化装置で発生させる霧化量と発生時間の少なくともいずれか1つを制御するようにした請求項1記載の洗濯乾燥機。
【請求項3】
洗濯液状態検出手段は、外槽内の洗濯液状態を導電度で検出する導電率センサを有し、制御部は、前記導電率センサが洗濯液状態を検出開始から洗濯液状態の良化判定をするまでの時間を計測する第一計時手段を有し、前記第一計測手段の計測時間から、霧化装置で発生させる霧化量と発生時間の少なくともいずれか1つを制御するようにした請求項1記載の洗濯乾燥機。
【請求項4】
制御部は、第一計時手段の計時時間が短い場合、霧化装置の霧化量を標準値より少なくするか、もしくは、発生時間を短くするようにした請求項2または3記載の洗濯乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−245090(P2011−245090A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122559(P2010−122559)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】