説明

洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機、およびそのプログラム

【課題】洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機において、一時的に無線ICタグ同士の重なり合い、あるいは電磁波の反射や回折などにより特定の位置に存在して、無線ICタグから情報を読み取れないことがある。
【解決手段】洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機1は、洗濯あるいは乾燥のための回転手段4を用いて、被洗濯乾燥物を回転させながら、被洗濯乾燥物10に添付された無線ICタグ11の情報を読み取るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機、およびそのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線ICタグの家電分野への応用が検討されており、特許文献1のように非接触ICタグ(無線ICタグ)を被洗濯乾燥物に付してその被洗濯乾燥物に応じた洗濯制御を行い、更には使用者の好みまで反映する方式が考案されている。
【特許文献1】特開2004−195063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、無線ICタグは非常に弱い電磁波で通信するため、不安定な動作をすることがある。例えばタグ同士の重なり合いなどがあると電磁波が届かず無線ICタグから情報を読み取れない場合がある。また、電磁波の反射や回折などにより特定の位置に存在する無線ICタグから情報を読み取れない場合もある。こういった理由により現行では無線ICタグから情報を読み取れる確率は100%には達しない。このことが無線ICタグ利用上の大きな課題となっている。
【0004】
例えば洗濯あるいは乾燥させてはいけない被洗濯乾燥物の無線ICタグから情報を読み出せなかった場合には、気づかずに誤って洗濯あるいは乾燥させてしまい、大切な被洗濯乾燥物を台無しにしてしまうというトラブルも想定される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、前記の課題を解決するために、被洗濯乾燥物に添付された無線ICタグから情報を読み取る読取手段と、前記情報に基づいて洗濯あるいは乾燥の制御を行う制御手段と、回転により洗濯あるいは乾燥を促進させる回転手段とを具備して、前記回転手段により前記被洗濯乾燥物を回転させながら前記無線ICタグの情報を読み取るようにした。
【発明の効果】
【0006】
本発明の洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機、およびそのプログラムは、一時的にタグ同士の重なり合い、あるいは電磁波の反射や回折などにより特定の位置に存在して、無線ICタグから情報を読み取れないことがあっても、元々洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機には備わっている洗濯あるいは乾燥を促進させるための回転手段により、被洗濯乾燥物を回転させながら、無線ICタグの情報を読み取るようにした。
【0007】
これにより特に新たな機構を追加することなく、回転によって無線ICタグの位置が刻々と変わっていき、無線ICタグ同士の重なり合いがなくなった時点、あるいは電磁波の反射や回折などがないような場所に移動した時点で、読取手段が無線ICタグの情報を読み取るので、読取性能を向上させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
第1の発明は、被洗濯乾燥物に添付された無線ICタグから情報を読み取る読取手段と、前記情報に基づいて洗濯あるいは乾燥の制御を行う制御手段と、回転により洗濯あるいは乾燥を促進させる回転手段とを具備して、前記回転手段により前記被洗濯乾燥物を回転させながら前記無線ICタグの情報を読み取る。
【0009】
これにより、回転により状態を変えながら無線ICタグから情報を読み取るので、当初はタグ同士が重なり合っていた場合でも回転の途中で状態が変わり情報が読み取れるようになった時点で読み取るので、読み取り性能を向上させることが出来る。また、当初、無線ICタグが電磁波の反射や回折などにより読めなかった場合でも、回転により途中で状態が変わり、情報が読み出せるようになる。
【0010】
第2の発明は、被洗濯乾燥物に添付された無線ICタグから情報を読み取り、前記情報に基づいてネットワーク経由で情報サーバに蓄積された洗濯乾燥制御情報を取得する読取手段と、前記洗濯乾燥制御情報に従って洗濯あるいは乾燥の制御を行う制御手段と、回転により洗濯あるいは乾燥を促進させる回転手段とを具備して、前記回転手段により前記被洗濯乾燥物を回転させながら前記無線ICタグの情報を読み取る。
【0011】
これによって、無線ICタグの情報を読み取る際に、回転により状態を変えながら読み取るので、当初はタグ同士が重なり合っていて情報が読み取れなかった場合でも、回転によって途中で状態が変わり、無線ICタグの情報が読み取れるようになる。また、当初、無線ICタグが電磁波の反射や回折などにより読めなかった場合でも、回転により途中で状態が変わり、情報が読み出せるようになる。
【0012】
また、無線ICタグから読み取った情報に、単なるコード番号のような情報しか含まれない場合、このコード番号を元にネットワーク上の情報サーバにアクセスして洗濯あるいは乾燥に関する詳細な洗濯乾燥制御情報を読み取り手段が得ることになる。
【0013】
第3の発明は、特に第1あるいは第2の発明の洗濯機または洗濯乾燥機において、回転手段により水あるいは湯と共に被洗濯乾燥物を回転させる。これにより、水あるいは湯がない場合よりも効率良く回転するので、情報読み取り性能が向上する。
【0014】
第4の発明は、特に第1あるいは第2の発明の洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機において、無線ICタグの情報、あるいは洗濯乾燥制御情報に洗濯あるいは乾燥可能かどうかの情報を含むようにした。これにより、洗濯機または乾燥機で洗濯あるいは乾燥しても良い被洗濯乾燥物かどうかの判断が容易かつ確実に行うことが出来る。この結果、使用者に注意を促す、あるいは洗濯あるいは乾燥を中止させるなどにより、洗濯あるいは乾燥させてはいけないものを洗濯あるいは乾燥させてしまうというトラブルを回避できる。
【0015】
第5の発明は、第1〜4の発明の洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機において、少なくともひとつの機能をコンピュータに実行させるためのプログラムであり、CPU、RAM、ROM、記憶装置、I/Oなどを備えた電気情報機器、コンピュータ等のハードリソースを協働させて本発明の一部あるいは全てをプログラムとして容易に実現することができる。また記録媒体に記録あるいは、通信回線を用いてプログラム配信することにより、プログラム配布が他の手段に比べて極めて簡単に実現できる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて一実施形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は本実施の形態の洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機の構成一例を示す図である。洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機1は、被洗濯乾燥物10に添付された無線ICタグ11の情報を読み取るための読取手段2と、読み取った情報により回転手段4の制御を行う制御手段3、制御手段3により制御され回転により洗濯あるいは乾燥を促進させるための回転手段4を具備している。
【0018】
被洗濯乾燥物10は、洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機1の中にひとつあるいは複数存在し、それぞれの被洗濯乾燥物10に添付された無線ICタグ11から読取手段2が順次、情報を読み取っていく。無線ICタグ11から情報を読み取る時に、洗濯あるいは乾燥を促進させるための回転手段4を回転させる。これは本来の洗濯あるいは乾燥を促進させる目的ではなく、回転によって無線ICタグ同士の重なり合いの解消、あるいは無線ICタグの位置を移動させる目的であり、これによって読み取れなくなっていた無線ICタグ11の状態に変化を与えながら、読み取りを続けていき、読み取り可能となった時点で無線ICタグ11の情報を読み取る。
【0019】
なお、連続的な回転を行いながら読み取っても構わないし、間欠的に少し回転させて停止させてから読み取っても構わないし、停止と回転繰り返しながら読み取り続けても構わないし、これらを組み合わせて可能な限り被洗濯乾燥物10の位置や状態が変わるようにすることが好ましい。
【0020】
現状では無線ICタグ11の使用する電磁波周波数帯は、135KHz帯、13.56MHz帯、433MHz帯、900MHz帯、2.45GHz帯などが存在する。この中では135KHz帯、あるいは13.56MHz帯の電磁波周波数帯を使用した場合、2.45GHz帯ほど著しく水や水分の影響を受けないため、通信可能距離は短くなるものの読み出しは可能であるので、洗濯を行う時のように、回転手段4によって水や湯と一緒に被洗濯乾燥物10を回転することで、効率よく回転させることが可能となり、水や湯がない時よりも大きな状態変化を与えることが出来る。結果的に、それだけ読取手段2が無線ICタグ11から情報を読み取れる可能性がさらに高くなることが期待できる。
【0021】
以上のように、洗濯あるいは乾燥を促進させるために洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機に存在する回転手段を用いて、無線ICタグの添付された被洗濯乾燥物を回転させながら無線ICタグ11の情報を読み取ることで、読み出せる無線ICタグ11を増やすことが期待出来る。
【0022】
このような方法により読み出した無線ICタグの情報は洗濯あるいは乾燥に関する洗濯乾燥情報である。洗濯乾燥情報とは、例えば洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機において、洗濯あるいは乾燥可能かどうかの情報であったり、被洗濯乾燥物の製造者、型番、素材、加工に関する情報であったり、ドライクリーニング指定のような形式で洗濯あるいは乾燥不可能という情報であったり、洗濯・乾燥時の湯の温度や回転の強さに関する情報であったり、乾燥温度や回転方法に関する情報であったりする。これらの情報を用いて制御手段3により回転手段4を制御して、より適切あるいはより的確な洗濯あるいは乾燥を行うといったことが可能となる。
【0023】
上記のように、無線ICタグ11の情報には、その無線ICタグ11が添付されている被洗濯乾燥物10の洗濯あるいは乾燥に関する洗濯乾燥情報を含んでいる場合には、その洗濯乾燥情報をそのまま制御手段3に送信すれば制御手段3はその情報に応じて回転手段4を制御することが可能である。
【0024】
一方、無線ICタグ11の情報が単なるコード番号のような場合には、そのコード番号だけでは不十分であり、読取手段2はネットワーク20を通じて情報サーバ30にアクセスして、その無線ICタグ11が添付されている被乾燥洗濯物10の洗濯や乾燥に関する洗濯乾燥情報を取得した後に、その洗濯乾燥情報を制御手段3に送信する。このように、無線ICタグ11の情報の差異を情報サーバ30を利用して読取装置2が解消することにより、無線ICタグ11の情報に関わりなく、制御手段3および回転手段4は同一の動作をすることができる。
【0025】
なお、ネットワーク20は家庭内のLANであって、情報サーバ30が自宅内にあっても構わないし、ネットワーク20はインターネットのようなWANであって、情報サーバ30が服飾メーカなどによって運営されている外部のサーバであっても構わない。
【0026】
すなわち無線タグ11が、比較的価格の安い日常雑貨品のような靴下や下着などに添付される無線ICタグである場合、無線ICタグ11は読み出しオンリー、しかも、例えば128ビット長のコード番号だけであり、洗濯乾燥情報が一切含まれておらず、単なるIDのようなコード番号だけであることが想定される。このような場合には読取手段2が情報サーバ30から洗濯乾燥情報を取得することがシステム構成上からは最も望ましいが、情報サーバ30に相当する機能が洗濯機、または乾燥機、または洗濯乾燥機1の内部に含まれていても構わないし、洗濯乾燥情報の取得は必ずしも読み取り手段2が行うものではなく、他の手段が取得しても構わない。
【0027】
なお、洗濯乾燥情報に洗濯あるいは乾燥が可能かどうかの情報が含まれていれば、制御手段3は、洗濯あるいは乾燥を禁止あるいは警報報知することも可能である。
【0028】
ここまでの説明において回転手段3は被洗濯乾燥物10を回転させるとして記述してきたが、回転手段3により回転だけではなく攪拌を加えた複雑な運動をさせることが更に望ましい。
【0029】
また、本実施の形態で説明した手段は、CPU(またはマイコン)、RAM、ROM、記憶・記録装置、I/Oなどを備えた電気・情報機器、コンピュータ、サーバ等のハードリソースを協働させるプログラムの形態で実施してもよい。プログラムの形態であれば、磁気メディアや光メディアなどの記録媒体に記録、もしくはインターネットなどの通信回線を用いて配信することで新しい機能の配布・更新やそのインストール作業が簡単にできる。
【0030】
また、本実施例では非常に限られた用途だけを例として用いているが、一般家電や業務用機器にも適用可能な技術であり、いずれの場合にも効果を発揮するものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明にかかる洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機、およびそのプログラムは、一時的にタグ同士の重なり合い、あるいは電磁波の反射や回折などにより特定の位置に存在して、無線ICタグから情報を読み取れないことがあっても、回転手段により被洗濯乾燥物を回転させながら、無線ICタグの情報を読み取るようにした。これにより、回転によって無線ICタグの位置が刻々と変わっていき、無線ICタグ同士の重なり合いがなくなった時点、あるいは電磁波の反射や回折などがないような場所に移動した時点で、無線ICタグの情報を読み取るので読取性能を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機の構成一例を示す図
【符号の説明】
【0033】
1 洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機
2 読取手段
3 制御手段
4 回転手段
10 被洗濯乾燥物
11 無線ICタグ
20 ネットワーク
30 情報サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗濯乾燥物に添付された無線ICタグから情報を読み取る読取手段と、前記情報に基づいて洗濯あるいは乾燥の制御を行う制御手段と、回転により洗濯あるいは乾燥を促進させる回転手段とを具備して、前記回転手段により前記被洗濯乾燥物を回転させながら前記無線ICタグの情報を読み取ることを特徴とする、洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機。
【請求項2】
被洗濯乾燥物に添付された無線ICタグから情報を読み取り、前記情報に基づいてネットワーク経由で情報サーバに蓄積された洗濯乾燥制御情報を取得する読取手段と、前記洗濯乾燥制御情報に従って洗濯あるいは乾燥の制御を行う制御手段と、回転により洗濯あるいは乾燥を促進させる回転手段とを具備して、前記回転手段により前記被洗濯乾燥物を回転させながら前記無線ICタグの情報を読み取ることを特徴とする、洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機。
【請求項3】
回転手段により水あるいは湯と共に被洗濯乾燥物を回転させることを特徴とする、請求項1あるいは請求項2記載の洗濯機または洗濯乾燥機。
【請求項4】
無線ICタグの情報あるいは洗濯乾燥制御情報に、洗濯あるいは乾燥可能かどうかの情報を含むことを特徴とする、請求項1記載の洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の洗濯機または乾燥機または洗濯乾燥機において少なくともひとつの機能をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−141428(P2006−141428A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331521(P2004−331521)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】