説明

活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物

【課題】 機械物性(耐擦傷性等)や外観を損なうことなく、永久的な帯電防止性および透明性に優れた硬化物を与え、とくにコーティング剤として有用な活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 エチレン性不飽和基を有するイオン性液体(A)および少なくとも3個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(B)を含有してなり、(A)と(B)が0.2〜1.0のSP値差の絶対値を有し、数平均粒子径5μm以下の(A)の粒子状硬化物が(B)の硬化物中に分散してなる硬化物を与えることを特徴とする活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線の照射により硬化し、優れた帯電防止性を発現する硬化物を与える帯電防止性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、機械物性、帯電防止性および光学特性に優れた硬化物を与える活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラスチックは自動車業界、家電業界を始めとする産業界で幅広く大量に使用されている。その理由としては、プラスチックの加工性、透明性等に加えて、軽量、安価なこと等が挙げられる。しかしプラスチックは高い体積固有抵抗を有するために摩擦などにより接触面で容易に静電気を帯び、塵埃が付着しやすいという問題がある。また一旦帯びた静電気が漏洩し難いという欠点を有している。該欠点を解消する対策として、プラスチック表面に帯電防止性を付与するため帯電防止性付与剤を含有するコーティング層を形成させる方法があり、該帯電防止性付与剤として、水との親和性が高いイオン性液体(例えば特許文献1参照)、および水との親和性が低いイオン性液体(例えば特許文献2参照)が提唱されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−70399号公報
【特許文献2】特開2005−314332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、イオン性液体は蒸気圧がないことから、時間経過と共に消失することはないものの、水との親和性が高いものでは、イオン性液体とはいえ流水で比較的容易に消失し帯電防止性の長期持続性に欠けるという問題があった。また、水との親和性が低いイオン性液体では、流水で容易に消失することはないものの、コーティング樹脂との相溶性が悪いため配合物が白濁し、コーティング層の透明性を損ねたり、透明になっても経時的にブリードアウトするという問題があった。
本発明の目的は、機械物性(耐擦傷性等)や外観を損なうことなく、永久的な帯電防止性および透明性に優れた硬化物を与える樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、エチレン性不飽和基を有するイオン性液体(A)および少なくとも3個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(B)を含有してなり、(A)と(B)が0.2〜1.0のSP値差の絶対値を有し、数平均粒子径5μm以下の(A)の粒子状硬化物が(B)の硬化物中に分散してなる硬化物を与えることを特徴とする活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物は、下記の効果を奏する。
(1)該組成物を硬化させてなる硬化物は、機械物性(耐擦傷性等)に優れる。
(2)該硬化物は、永久帯電防止性に優れる。
(3)該硬化物は、透明性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[イオン性液体(A)]
本発明におけるエチレン性不飽和基を有するイオン性液体(A)は、下記の一般式(1)で表され、少なくとも一方がエチレン性不飽和基を有するカチオンX+とアニオンZ-で構成され、室温以下の融点を有し、初期電導度が通常1〜200ms/cm(好ましくは10〜200ms/cm)の常温溶融塩である。

+- (1)

[式中、X+はカチオン、Z-はアニオンを表す。]
【0008】
(A)の分子内のエチレン性不飽和基の個数は、少なくとも1個、好ましくは2個〜5個またはそれ以上である。少なくとも1個存在することで(A)と後述の(メタ)アクリレート(B)との共重合により(A)がポリマー分子に固定され、硬化物に永久帯電防止性能が付与されるとともに、優れた機械物性、透明性が付与されることとなる。
【0009】
エチレン性不飽和基には、ビニル基、プロペニル基および(メタ)アクリロイル基が含まれる。これらのうち活性エネルギー線硬化性および(A)と後述の(メタ)アクリレート(B)との共重合性の観点から好ましいのは(メタ)アクリロイル基である。
エチレン性不飽和基は(X+)および/または(Z-)のいずれに導入してもよく、(X+)、(Z-)の組み合わせには、
(1)エチレン性不飽和基を有する(X+)[以下これを(x1)とする]とエチレン性
不飽和基を有する(Z-)[以下これを(z1)とする]の組み合わせ;
(2)(x1)とエチレン性不飽和基を有しない(Z-)[以下これを(z2)とする]
の組み合わせ;および
(3)エチレン性不飽和基を有しない(X+)[以下これを(x2)とする]と(z1)
の組み合わせ、が含まれる。
【0010】
カチオン(X+)の種類としては、オニウムカチオン(含窒素オニウムカチオン、含硫
黄オニウムカチオン、含リンオニウムカチオン等)、金属カチオン等が挙げられる。
含窒素オニウムカチオンには、アミジニウム、グアニジニウムおよびアンモニウムカチオン;含硫黄オニウムカチオンには、スルホニウム、チオフェニウム、チオモルホリニウムおよびチオキサニウムカチオン等;含リンオニウムカチオンには、ホスホニウムカチオンおよびテトラブチルホスホニウムブロミドカチオン等が、それぞれ含まれる。
帯電防止の観点から好ましいのはオニウムカチオンさらに好ましいのは含窒素オニウムカチオン、とくに好ましいのはアミジニウムおよびアンモニウムカチオンである。
【0011】
(x1)の具体例としては、アミジニウムカチオン〔炭素数(以下Cと略記)5〜30、例えばイミダゾリニウムカチオン[1−メチル−3−ビニルイミダゾリニウム、1,2−ジメチル3−ビニルイミダゾリニウム、1−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチルイミダゾリニウム、1,3ジメチル−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイミダゾリウム等]、イミダゾリウムカチオン[1−メチル−3−ビニルイミダゾリウム、1−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチルイミダゾリウム等]、テトラヒドロ
ピリミジニウムカチオン[1−メチル−3−ビニル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,3−ジメチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,5−テトラメチル−4−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−1,5,6−トリヒドロピリミジニウム等]、およびジヒドロピリミジニウムカチオン[1−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチル、1,4−もしくは−1,6−ジヒドロピリミジニウム等]〕;グアニジニウムカチオン〔C6〜30、例えばイミダゾリニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン[2−メチル−2−ビ
ニルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−1,4−ジメチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチルイミダゾリニウム等]、イミダゾリウ
ム骨格を有するグアニジニウムカチオン[2−メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−ジエチルアミノ−1,4−ジメチル−3−ビニルイミダゾリウム等]、テトラヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン[2−メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ−1,3,4−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム等]等〕;アンモニウムカチオン〔C3〜50、例えば(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルアンモニウム、ビニルジラウリルアンモニウム〕;およびこれらの混合物が挙げられる。
【0012】
(x2)としては、アミジニウムカチオン〔C3〜30、例えばイミダゾリニウムカチオン[1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリニウム等]、イミダゾリウムカチオン[1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム等]、テトラヒドロピリミジニウムカチオン[1
,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム等]、およびジヒドロピリミジニウムカチオン[1,3−ジメチル−1,4−もしくは−1,6−ジヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチル−1,4−もしくは−1,6−ジヒドロピリミジニウム、1,2,3,4−テトラメチル−1,4−もしくは−1,6−ジヒドロピリミジニウム等]〕;グアニジニウムカチオン〔C4〜30、例えばイミダゾリニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン[
2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−4−エチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−1−メチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウム等]、イミダゾリウム骨格を有するグアニジニウムカチオン[2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−4−エチルイミダゾリウム、2−ジメチルアミノ−1−メチル−3,4−ジエチルイミダゾリウム等]、テトラヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン[2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−4−エチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム等]、ジヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン[2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチル−1,4−および−1,6−ジヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチル−1,4−および−1,6−ジヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−4−エチル−1,4−および−1,6−ジヒドロピリミジニウム等]〕;アンモニウムカチオン〔C3〜50、例えばメチルジラウリルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム];およびこれらの混合物が挙げられる。
【0013】
(z1)の具体例としては、カルボン酸(エステル)〔C3〜30、例えば、(メタ)アクリル酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピオン酸、モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、モノビニルコハク酸、モノ(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロフタル酸、水酸基含有多価(メタ)アクリレート[例えば、グリセリン(以下GRと略記)ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(以下TMPと略記)のエチレンオキサイド(以下EOと略記)付加物のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(以下PEと略記)トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(以下DPEと略記)ペンタアクリレート、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応物等]と2塩基酸とのモノエステル等〕、スルホン酸エステル〔
C2〜30、例えば、(メタ)アクリロイルオキシEO5モル付加物のスルホン酸モノエステル、ビニルアルコールのプロピレンオキサイド(以下POと略記)3モル付加物のスルホン酸モノエステル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパン−1−スルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸等〕、リン酸エステル〔C3〜30、例えば、モノ−およびジ(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸エステル、(メタ)アクリロイルオキシEO5モル付加物のリン酸モノ−およびジエステル(メタ)アクリロイルオキシエチルPO3モル付加物のリン酸モノ−およびジエステル、(メタ)アクリロイルオキシエチルカプロラクトン7モル付加物のリン酸モノ−およびジエステル、水酸基含有多価(メタ)アクリレート[例えば、GRジ(メタ)アクリレート、TMPのEO付加物のジ(メタ)アクリレート、PEトリ(メタ)アクリレート、DPEペンタアクリレート、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応物]とリン酸とのモノ−およびジエステル〕、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0014】
(z2)としては、有機酸(C1〜30、例えばカルボン酸、硫酸エステル、高級アルキルエーテル硫酸エステル、スルホン酸エステルおよびリン酸エステル)、無機酸[例えば超強酸(ホウフッ素酸、四フッ化ホウ素酸、過塩素酸、六フッ化リン酸、六フッ化アンチモン酸および六フッ化ヒ素酸等)、リン酸およびホウ酸]が挙げられる。
超強酸の共役塩基以外のアニオンとしては、例えばハロゲン(例えばフッ素、塩素および臭素)イオン、アルキル[C1〜12]ベンゼンスルホン酸(例えばp−トルエンスルホン酸)イオンおよびポリ(n=1〜25)フルオロアルカンスルホン酸(例えばウンデカフルオロペンタンスルホン酸)イオンが挙げられる。
超強酸としては、プロトン酸およびプロトン酸とルイス酸との組み合わせから誘導されるもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
超強酸としてのプロトン酸としては、例えばビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド酸、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタン、過塩素酸、フルオロスルホン酸、アルカン(C1〜30)スルホン酸(例えばメタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸)、ポリ(n=1〜30)フルオロアルカン(C1〜30)スルホン酸(例えばトリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸およびトリデカフルオロヘキサンスルホン酸)、ホウフッ素酸および四フッ化ホウ素酸が挙げられる。
ルイス酸と組合せて用いられるプロトン酸としては、例えばハロゲン化水素(例えばフッ化水素、塩化水素、臭化水素およびヨウ化水素)、過塩素酸、フルオロスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸およびこれらの混合物が挙げられる。
ルイス酸としては、例えば三フッ化ホウ素、五フッ化リン、五フッ化アンチモン、五フッ化ヒ素、五フッ化タンタルおよびこれらの混合物が挙げられる。
プロトン酸とルイス酸の組み合わせは任意であるが、これらの組み合わせからなる超強酸としては、例えばテトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、六フッ化タンタル酸、六フッ化アンチモン酸、六フッ化タンタルスルホン酸、四フッ化ホウ素酸、六フッ化リン酸、塩化三フッ化ホウ素酸、六フッ化ヒ素酸およびこれらの混合物が挙げられる。
【0015】
上記カチオンとアニオンで構成されるイオン性液体(A)の組み合わせのうち、帯電防止性の観点から好ましいのはエチレン性不飽和基を有しないカチオン(x2)とエチレン性不飽和基を有するアニオン(z1)の組み合わせ、さらに好ましいのはエチレン性不飽和基を有しないアミジニウムカチオンとエチレン性不飽和基を有するスルホン酸エステルまたはリン酸エステルの組み合わせ、とくに好ましいのはエチレン性不飽和基を有しないイミダゾリウムカチオンとエチレン性不飽和基を有するスルホン酸またはリン酸エステルの組み合わせであり、具体的には、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−2−アクリ
ルアミド−2−メチルプロパン−1−スルホン酸塩、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムモノ−およびジ(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸エステル塩が挙げられる。
また、機械物性の観点から、最も好ましい組み合わせは、イミダゾリウムカチオンと多価(メタ)アクリレートを有する酸の組み合わせであり、具体的には、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムとPEトリ(メタ)アクリレートの2塩基酸またはリン酸のエステル塩が挙げられる。
【0016】
イオン性液体(A)のホモポリマーの導電率(S/cm)の下限は、硬化物の帯電防止性の観点から好ましくは1×10-8、さらに好ましくは1×10-7であり、上限はイオン濃度に限界があることから1×10-4を超えることはない。該導電率は、後述の方法で測定される。
【0017】
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により(A)以外のイオン性液体を併用することができる。(A)以外のイオン性液体の具体例としては、上述した(x2)と(z2)を組み合わせたものが挙げられる。
(A)以外のイオン性液体を併用する場合、その使用量は、(A)の重量に基づいて通常500%以下、帯電防止性およびその持続性の観点から好ましくは10〜100%である。
【0018】
本発明における(メタ)アクリレート(B)としては、下記の(1)〜(6)およびこれらの混合物が挙げられる。
【0019】
(1)ポリ(3価〜6価またはそれ以上)(メタ)アクリレート
C3〜40の多価(3価〜6価またはそれ以上)アルコールおよびそのアルキレンオキシド(以下AOと略記)付加物のポリ(メタ)アクリレート
TMPトリ(メタ)アクリレート、GRのトリ(メタ)アクリレート、TMPのEO3モルおよびPO3モル付加物の各トリ(メタ)アクリレート、GRのEO3モルおよびPO3モル付加物の各トリ(メタ)アクリレート、PEのトリ(メタ)アクリレート、PEのテトラ(メタ)アクリレート、PEのEO4モル付加物のテトラ(メタ)アクリレート、DPEのペンタ(メタ)アクリレート、DPEのヘキサ(メタ)アクリレート等;
【0020】
(2)ポリエステル(メタ)アクリレート
多価(2価〜4価)カルボン酸、多価(2価〜8価またはそれ以上)アルコールおよびエステル形成性のアクリロイル基含有化合物のエステル化により得られる複数のエステル基と5個以上のアクリロイル基を有する分子量150以上かつMn4,000以下のポリエステルアクリレート
上記多価カルボン酸としては、例えば脂肪族[C3〜20、例えばマロン酸、マレイン酸(無水物)、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、酸無水物の反応物(DPEと無水マレイン酸の反応物等)]、脂環含有[C5〜30、例えばシクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸、メチルテトラヒドロ(無水)フタル酸]および芳香族多価カルボン酸[C8〜30、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸(無水物)、トリメリット酸(無水物)、ピロメリット酸(無水物)]が挙げられる。
【0021】
(3)ウレタン(メタ)アクリレート
ポリ(2官能〜3官能またはそれ以上)イソシアネート(以下PIと略記することがある)、多価(2価〜6価またはそれ以上)ポリオール、水酸基含有(メタ)アクリレートとのウレタン化反応により得られる複数のウレタン結合と3個以上のアクリロイル基を有する分子量400以上かつMn5,000以下のウレタン(メタ)アクリレート
該PIとしては、C6〜33(NCO基の炭素を除く)、例えば脂肪族PI[ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等]、芳香(脂肪)族PI[2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(
NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等]、脂環含有PI[イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等]が挙げられる。
該ポリオールとしては、分子量62以上かつMn3,000以下、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(以下それぞれEG、1,4−BD、NPGと略記)、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリテトラメチレングリコール(以下PTMGと略記)等が挙げられる。
該水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、C5〜30、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、PEトリ(メタ)アクリレート、DPEペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
(4)エポキシ(メタ)アクリレート
多価(3〜4価)エポキシドと(メタ)アクリル酸の反応により得られる分子量400以上かつMn5,000以下のエポキシ(メタ)アクリレート等;
(5)主鎖および/または側鎖に(メタ)アクリロイル基を有するブタジエン重合体
ポリブタジエンポリ(メタ)アクリレート(Mn500〜500,000)等
(6)ジメチルポリシロキサンの主鎖および/または側鎖に(メタ)アクリロイル基を
有するシロキサン重合体[Mn300〜20,000、例えばジメチルポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート]
【0023】
上記(1)〜(6)は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。該(1)〜(6)のうち、硬化物の強靭性の観点から好ましいのは(1)〜(4)、さらに好ましいのは(1)および(3)である。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりさらに、下記のモノ(メタ)アクリレート(1)および/またはジ(メタ)アクリレート(2)を含有させることができる。
(1)モノ(メタ)アクリレート
(1−1)1価アルコール[脂肪族(C1〜30)、脂環含有(C6〜30)および芳香脂肪族(C7〜10)]の(メタ)アクリレート
ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等;
(1−2)1価アルコール[脂肪族(C1〜30)、脂環含有(C6〜30)および芳香脂肪族(C7〜10)]のAO[C2〜4、例えばEO、PO、1,2−および2,3−ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン(以下、THFと略記)。以下同じ。]1〜30モル付加物の(メタ)アクリレート
上記(1−1)における1価アルコールのAO付加物の(メタ)アクリレート、例えばラウリルアルコールのEO2モル付加物の(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールのPO3モル付加物の(メタ)アクリレート;
(1−3)[アルキル(C1〜20)]フェノール(C6〜30)のAO1〜30モル付加物の(メタ)アクリレート
フェノールのPO3モル付加物の(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのEO1モル付加物の(メタ)アクリレート等;
【0025】
(2)ジ(メタ)アクリレート
(2−1)ポリオキシアルキレン(アルキレンはC2〜4)〔分子量106以上かつ数平均分子量[以下Mnと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]3,000以下〕のジ(メタ)アクリレート
ポリエチレングリコール(以下、PEGと略記)(Mn400)、ポリプロピレングリコール(以下、PPGと略記)(Mn200)およびPTMG(Mn650)の各ジ(メタ)アクリレート等;
(2−2)2価フェノール化合物のAO(2〜30モル)付加物のジ(メタ)アクリレート
2価フェノール化合物[C6〜18、例えば単環フェノール(カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等)、縮合多環フェノール(ジヒドロキシナフタレン等)、ビスフェノール化合物(ビスフェノールA、−Fおよび−S等)]のAO付加物[レゾルシノールのEO4モル付加物のジ(メタ)アクリレート、ジヒドロキシナフタレンのPO4モル付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA、−Fおよび−Sの、EO2モル、およびPO4モル各付加物等]の各ジ(メタ)アクリレート等;
(2−3)脂肪族2価アルコール(C2〜30)のジ(メタ)アクリレート
NPGおよび1,6−ヘキサンジオール(以下1,6−HDと略記)の各ジ(メタ)アクリレート等;
(2−4)脂環含有2価アルコール(C6〜30)のジ(メタ)アクリレート
ジメチロールトリシクロデカンのジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールのジ(メタ)アクリレートおよび水素化ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート等。
【0026】
本発明におけるエチレン性不飽和基を有するイオン性液体(A)と(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(B)のSP値差の絶対値は、0.2〜1.0(好ましくは0.3〜0.8)である。SP値差の絶対値が0.2未満では(A)の粒子状硬化物が(B)の硬化物中に分散(ミクロ相分離)してなる、帯電防止性に優れた硬化物が得られず、1.0を超えると(A)の硬化物が大きくなり耐擦傷性および帯電防止性が悪くなる。
【0027】
SP値は、例えばFedorsの方法(A Method for
Estimating both the Solubility
Parameters and Molar Volumes of Liquids’,POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,
FEBRUARY,1974,vol.14,Issue2、p.147−154)により求められる。
【0028】
本発明の樹脂組成物中の(A)と(B)の重量比は、帯電防止性および塗膜の強靭性、塗工性の観点から好ましくは1/99〜50/50、さらに好ましくは10/90〜40/60である。
【0029】
本発明の組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により、さらに重合開始剤(C)を含有させることができる。
(C)としては光重合開始剤(C1)、熱重合開始剤(C2)およびこれらの混合物が挙げられる。
(C)を含有させない場合は電子線で硬化させることができるが、(C1)を含有させた場合は、電子線以外の後述の活性エネルギー線(紫外線等)でも硬化させることができ、(C2)を含有させた場合は、電子線以外に熱でも硬化させることができる。
紫外線で硬化させる場合の紫外線の照射量(mJ/cm2)は、通常10〜10,00
0、組成物の硬化性および硬化物(硬化膜)の可撓性の観点から好ましくは100〜5,000である。熱により硬化させる場合は、通常50〜200℃のオーブンで1分〜20時間、組成物の硬化性および基材の耐熱性の観点から好ましくは80〜180℃のオーブンで5分〜10時間加熱処理することが好ましい。
【0030】
光重合開始剤(C1)としては、ベンゾイン化合物[C14〜18、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル
、ベンゾインイソブチルエーテル];アセトフェノン化合物〔C8〜18、例えばアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン〕;アントラキノン化合物[C14〜19、例えば2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン];チオキサントン化合物[C13〜17、例えば2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン];ケタール化合物[C16〜17、例えばアセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール];ベンゾフェノン化合物[C13〜21、例えばベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン];ホスフィンオキシ化合物[C22〜28、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド]、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0031】
上記(C1)のうち、活性エネルギー線照射後の硬化物が黄変しにくいという耐光性の観点から好ましいのは、アセトフェノン化合物およびホスフィンオキシド化合物、さらに好ましいのは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドおよびビス−(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、とくに好ましいのは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンである。
【0032】
熱重合開始剤(C2)としては、過酸化物[C4〜24、例えばt−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド];アゾ化合物[C8〜14、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1−アゾビス−1−シクロヘキサンカーボニトリル、]、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0033】
上記(C2)のうち、本発明の組成物の安定性、反応性の観点から好ましいのはt−ブチルパーオキシベンゾエートおよびメチルエチルケトンパーオキシドである。
【0034】
重合開始剤(C)の使用量は、(A)と(B)の合計重量に基づいて通常20%以下、組成物の活性エネルギー線硬化性および塗膜の耐光性の観点から好ましくは0.1〜20%、さらに好ましくは0.3〜15%である。
【0035】
本発明の組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりさらに充填材(D)を加えることができる。
【0036】
(D)としては、無機充填材〔カーボンブラック、シリカ(例えば微粉ケイ酸、含水ケイ酸、ケイ藻およびコロイダルシリカ)、ケイ酸塩(例えば微粉ケイ酸マグネシウム、タルク、ソープストーン、ステアライト、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸マグネシウムおよびアルミノケイ酸ソーダ)、炭酸塩[例えば沈降性(活性、乾式、重質または軽質)炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウム]、クレー(例えばカオリン質クレー、セリサイト質クレー、バイロフィライト質クレー、モンモリロナイト質クレー、ベントナイトおよび酸性白土)、硫酸塩[例えば硫酸アルミニウム(例えば硫酸バンドおよびサチンホワイト)、硫酸バリウム(例えばバライト粉、沈降性硫酸バリウムおよびリトポン)、硫酸マ
グネシウムおよび硫酸カルシウム(石コウ)(例えば無水石コウおよび半水石コウ)]、鉛白、雲母粉、亜鉛華、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、活性フッ化カルシウム、セメント、石灰、亜硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、アスベスト、ガラスファイバー、ロックファイバーおよびマイクロバルーン等〕、有機充填材(例えば、スチレンビーズ、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ)、並びに、有機無機複合充填材(例えば、特開平10−330409号公報、特開2004−307644号公報等に開示の有機無機複合ビーズ)が挙げられる。
【0037】
これらのうち硬化物の透明性の観点から好ましいのは無機充填材のうちのシリカ、ケイ酸塩、および有機充填材、さらに好ましいのはシリカ、有機充填材である。
(D)は、2種以上併用してもよい。(D)の形状は、特に限定されず、例えば不定形状、中空状、多孔質状、花弁状、凝集状、造粒状および球状のいずれでもよい。
(D)の使用量は組成物の全重量に基づいて、通常50%以下、機械物性および硬化物の可撓性の観点から好ましくは0.5〜30%、さらに好ましくは1〜25%である。
【0038】
本発明の組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により、さらにその他の添加剤(E)を加えることができる。(E)としては、分散剤(E1)、消泡剤(E2)、レベリング剤(E3)、シランカップリング剤(E4)、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)(E5)、スリップ剤(E6)、酸化防止剤(E7)および紫外線吸収剤(E8)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0039】
分散剤(E1)としては、有機分散剤[高分子分散剤(Mn2,000〜500,000)および低分子分散剤(分子量100以上かつMn2,000以下)]および無機分散剤が挙げられる。
【0040】
有機分散剤のうち、高分子分散剤としては、例えばナフタレンスルホン酸塩[例えばアルカリ金属(例えばNaおよびK)塩およびアンモニウム塩]のホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩(上記に同じ)、ポリアクリル酸塩(上記に同じ)、ポリカルボン酸塩(上記に同じ)、カルボキシメチルセルロース(Mn1,000〜10,000)およびポリビニルアルコール(Mn1,000〜100,000)が挙げられる。
【0041】
有機分散剤のうち、低分子分散剤としては、下記のものが挙げられる。
(1)ポリオキシアルキレン型
脂肪族アルコール(C4〜30)、[アルキル(C1〜30)]フェノール、脂肪族(C4〜30)アミンおよび脂肪族(C4〜30)アミドのAO(C2〜4)1〜30モル付加物
脂肪族アルコールとしては例えばn−、i−、sec−およびt−ブタノール、オクタノールおよびドデカノール、アルキルフェノールとしては例えばメチルフェノールおよびノニルフェノール、脂肪族アミンとしては、例えばラウリルアミンおよびメチルステアリルアミンおよび脂肪族アミドとしては、例えばステアリン酸アミドが挙げられる。
(2)多価アルコール型
C4〜30の脂肪酸(例えばラウリン酸およびステアリン酸)と多価(2価〜6価またはそれ以上)アルコール(例えばGR、PE、ソルビットおよびソルビタン)のモノエステル化合物
(3)カルボン酸塩型
C4〜30の脂肪酸(前記に同じ)のアルカリ金属(前記に同じ)塩
(4)硫酸エステル型
C4〜30の脂肪族アルコール(前記に同じ)および脂肪族アルコールのAO(C2〜4)1〜30モル付加物の硫酸エステルアルカリ金属(前記に同じ)塩等
【0042】
(5)スルホン酸塩型
[アルキル(C1〜30)]フェノール(前記に同じ)のスルホン酸アルカリ金属(前記に同じ)塩
(6)リン酸エステル型
C4〜30の脂肪族アルコール(前記に同じ)および脂肪族アルコールのAO(C2〜4)1〜30モル付加物のモノまたはジリン酸エステルの塩(例えばアルカリ金属(前記に同じ)塩および4級アンモニウム塩)
(7)1〜3級アミン塩型
C4〜30の脂肪族アミン[1級(例えばラウリルアミン等)、2級(例えばジブチルアミン)および3級(例えばジメチルステアリルアミン)]塩酸塩、トリエタノールアミンとC4〜30の脂肪酸(前記に同じ)のモノエステルの無機酸(例えば塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸)塩
(8)4級アンモニウム塩型
C4〜30の4級アンモニウム(例えばブチルトリメチルアンモニウム、ジエチルラウリルメチルアンモニウムおよびジメチルジステアリルアンモニウム)の無機酸(上記に同じ)等
が挙げられる。
【0043】
無機分散剤としては、ポリリン酸のアルカリ金属(前記に同じ)塩およびリン酸系分散剤(例えばリン酸、モノアルキルリン酸エステルおよびジアルキルリン酸エステル等)が挙げられる。
(E1)の使用量は本発明の組成物の全重量に基づいて、通常10%以下、好ましくは0.1〜5%である。
【0044】
消泡剤(E2)としては、低級アルコール(C1〜6)消泡剤(例えばメタノールおよびブタノール)、高級アルコール(C8〜18)消泡剤(例えばオクチルアルコールおよびヘキサデシルアルコール)、脂肪酸(C10〜20)消泡剤(例えばオレイン酸およびステアリン酸)、脂肪酸エステル(C11〜30)消泡剤(例えばグリセリンモノラウリレート)、リン酸エステル消泡剤(例えばトリブチルホスフェート)、金属石けん消泡剤(例えばステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸アルミニウム)、ポリエーテル消泡剤[例えばPEG(Mn200〜10,000)およびPPG(Mn200〜10,000)]、シリコーン消泡剤等(例えばジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイルおよびフルオロシリコーンオイル)および鉱物油(例えばシリカ粉末を鉱物油に分散させたもの)消泡剤が挙げられる。
(E2)の使用量は本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、好ましくは0.01〜2%である。
【0045】
レベリング剤(E3)としては、PEG型非イオン系界面活性剤(例えばノニルフェノールEO1〜40モル付加物およびステアリン酸EO1〜40モル付加物)、多価アルコール型非イオン系界面活性剤(例えばソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステルおよびソルビタンステアリン酸トリエステル)、フッ素系界面活性剤(例えばパーフルオロアルキルEO1〜50モル付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩およびパーフルオロアルキルベタイン)、変性シリコーンオイル[ポリエーテル変性シリコンオイルおよび(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル等]が挙げられる。
(E3)の使用量は本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、好ましくは0.01〜2%である。
【0046】
シランカップリング剤(E4)としては、アミノ系シランカップリング剤(例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびγ−
フェニルアミノフロピルトリメトキシシラン)、ウレイド系シランカップリング剤(例えばウレイドプロピルトリエトキシシラン)、ビニル系シランカップリング剤[例えばビニルエトキシシラン、ビニルメトキシシランおよびビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン]、メタクリレート系シランカップリング剤(例えばγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランおよびγ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン)、エポキシ系シランカップリング剤(例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、イソシアネート系シランカップリング剤(例えばγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)、ポリマー型シランカップリング剤(例えばポリエトキシジメチルシロキサンおよびポリエトキシジメチルシロキサン)、カチオン型シランカップリング剤[例えばN−(N−ベンジル−β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩]が挙げられる。
(E4)の使用量は本発明の組成物の全重量に基づいて、通常10%以下、好ましくは0.5〜7%である。
【0047】
チクソトロピー性付与剤(増粘剤)(E5)としては、無機系(例えばベントナイト、有機処理ベントナイトおよび極微細表面処理炭酸カルシウム)および有機系(例えば水添ヒマシ油ワックス、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アルミニウムおよび重合アマニ油)が挙げられる。
(E5)の使用量は本発明の組成物の全重量に基づいて、通常20%以下、好ましくは0.5〜10%である。
【0048】
スリップ剤(E6)としては、高級脂肪酸エステル(例えばステアリン酸ブチル)、高級脂肪酸アミド(例えばエチレンビスステアリン酸アミドおよびオレイン酸アミド)、金属石けん(例えばステアリン酸カルシウムおよびオレイン酸アルミニウム)、高分子量炭化水素(例えばパラフィンワックス)、ポリオレフィンワックス(例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスおよびカルボキシル基含有ポリエチレンワックス)およびシリコーン(例えばジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイルおよびフルオロシリコーンオイル)が挙げられる。
(E6)の使用量は本発明の組成物の全重量に基づいて、通常5%以下、好ましくは0.01〜2%である。
【0049】
酸化防止剤(E7)としては、ヒンダードフェノール系〔例えばトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドトキシフェニル)プロピオネートおよび3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル〕およびアミン系(例えばn−ブチルアミン、トリエチルアミンおよびジエチルアミノメチルメタクリレート)が挙げられる。
(E7)の使用量は本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、好ましくは0.005〜2%である。
【0050】
紫外線吸収剤(E8)としては、ベンゾトリアゾール系[例えば2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールおよび2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール]、トリアジン系〔例えば2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール〕、ベンゾフェノン系(例えば2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン)およびシュウ酸アニリド系(例えば2−エトキシ−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリド)が挙げられる。
(E8)の使用量は本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、好ましくは0.005〜2%である。
【0051】
(E)全体の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常50%以下、好ましくは0.005〜30%である。
【0052】
また、本発明の組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりさらに、活性エネルギー線カチオン硬化型樹脂(F)を含有することができる。(F)としては、下記の(F1)〜(F3)およびこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
(F1)単官能脂環式エポキシ樹脂
C5〜15、例えばシクロヘキサンオキシド、シクロペンタンオキシド、α−ピネンオキシド、3,4−エポキシビニルシクロヘキサン;
(F2)2官能脂環式エポキシ樹脂
C8〜30、例えば2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ−(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキサンジオキシド、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−エキソビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エンド−エキソビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、2,2−ビス(4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル)プロパン、2,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシシクロヘキシル−p−ジオキサン)、2,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ノルボルネン、リモネンジオキシド、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジオキシド、1,2−エポキシ−6−(2,3−エポキシプロポキシ)ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン、p−(2,3−エポキシ)シクロペンチルフェニル−2,3−エポキシプロピルエーテル、1−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル−5,6−エポキシヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン、o−(2,3−エポキシ)シクロペンチルフェニル−2,3−エポキシプロピルエーテル)、1,2−ビス〔5−(1,2−エポキシ)−4,7−ヘキサヒドロメタノインダノキシル〕エタン、シクロペンテニルフェニルグリシジルエーテル等;
【0054】
(F3)多官能(3価〜20価またはそれ以上)脂環式エポキシ樹脂
C40以上かつMn20,000以下、例えば3,4−エポキシシクロヘキサンメタノールのε−カプロラクトン(1〜10モル)付加物と多価(3価〜20価またはそれ以上)アルコール(GR、TMP、PE、DPE、ヘキサペンタエリスリトール等)のエステル化物等。
【0055】
これらのうち硬化性および硬化物の硬度の観点から好ましいのは上記(F2)の2官能脂環式エポキシ樹脂である。
【0056】
(F)の使用量は、(B)の重量に基づいて通常50%以下、硬化性および強靱性、低収縮性の観点から好ましくは0.5〜40%、さらに好ましくは1〜25%である。
【0057】
活性エネルギー線カチオン硬化型樹脂(F)を併用する場合、硬化性の観点から、光酸発生剤(f)を併用するのが好ましい。(f)としては、例えば、アリルスルホニウム塩[トリフェニルスルホニウムホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等]、アリルヨードニウム塩[ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等]、スルホン酸エステル[o−ニトロベンジルトシレート、ジメトキシアントラセンスルホン酸p−ニトロベンジルエステル、トシレートアセトフェノン等]、フェロセン〔(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート等〕が挙げられる。
【0058】
(f)のうち、本発明の組成物の安定性、反応性の観点から好ましいのは、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、さらに好ましいのは、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートである。
【0059】
(f)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて通常10%以下、組成物の活性エネルギー線硬化性および塗膜の耐光性の観点から好ましくは0.1〜5%、さらに好ましくは0.3〜3%である。
【0060】
本発明の組成物は、ホモミキサー等の混合装置を用い、前記(A)、(B)および必要により(C)、(D)、(E)、(F)を混合することにより製造することができる。これらの混合順序についてはとくに制限されることはない。
【0061】
本発明の組成物は、後述する基材への塗布に当たり有機溶剤で希釈して使用することもできる。該有機溶剤としては、例えば、アルコール(C1〜10、例えばメタノール、エタノール、n−およびi−プロパノール、n−、sec−およびt−ブタノール、ベンジルアルコール、オクタノール)、ケトン(C3〜8、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステルまたはエーテルエステル(C4〜10、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルアセテート等、エーテル[C4〜10、例えばEGモノメチルエーテル(メチルセロソロブ)、EGモノエチルエーテル(エチルセロソロブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソロブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル]、芳香族炭化水素(C6〜10、例えばベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(C3〜10、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン)、ハロゲン化炭化水素(C1〜2、例えばメチレンジクロライド、エチレンジクロライド)、石油系溶剤(石油エーテル、石油ナフサ等)が挙げられる。これらは1種単独使用でも、2種以上併用してもよい。
有機溶剤の使用量は、有機溶剤を加える前の本発明の組成物の全重量に基づいて、通常400%以下、取り扱いの容易さおよび塗工安定性の観点から好ましくは25〜250、さらに好ましくは40〜150%である。
【0062】
本発明の組成物は、基材に塗工し必要により乾燥させることで基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗工膜を形成し、後述の活性エネルギー線を照射して該組成物を硬化させることで、硬化膜を有する被覆物を得ることができる。該塗工に際しては、種々の装置、例えば塗工機[バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(サイズプレスロールコーター、ゲートロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーター、ブレードコーター等]が使用できる。
塗工膜厚は、乾燥後の膜厚として、通常0.5〜250μm、耐摩耗性、耐溶剤性、耐汚染性および乾燥性、硬化性の観点から好ましくは1〜100μmである。
【0063】
基材としては、通常の塗料が適用できるものであれば、材質、形状、寸法等、特に限定されないが、材質としては例えば紙、木材、金属(鉄、アルミニウム、銅等)、ガラス、
プラスチック(PET、PC、PMMA、スチレン、MMA−スチレン共重合物等)、形状としては、例えばフィルム状、板状が挙げられる。
【0064】
本発明の組成物は、金型等に注型してから、後述の活性エネルギー線で硬化させることで、板状、フィルム状および特定の形状を有する成形物を得ることができる。例えばレンズアレイ形状が得られるキャビティ(充填空間)を有する型(金型、樹脂型等)にディスペンサー等を用いて、硬化後の厚みが50〜150μmとなるように塗工(または充填)し、上記金型に塗工(または充填)した樹脂組成物の上から透明基板(透明フィルムを含む)を空気が入らないように加圧積層し、さらに該透明基板上から後述の活性エネルギー線を照射して該組成物を硬化させた後に、金型から離型しレンズシートを得る。
【0065】
本発明の組成物は、透明基材(プラスチック、ガラス等)とその他基材(前述の透明基材、木材、金属等)の接着剤、粘着剤として使用することができる。例えば、ガラス板上に塗工した後、必要により溶剤を乾燥させ、その後、PETフィルム等で挟み、PETフィルム上から後述の活性エネルギー線を照射して該組成物を硬化させることで、ガラスとPETを接着することができる。
【0066】
本発明の組成物の基材への塗工後の乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。乾燥温度は、通常10〜200℃、乾燥速度および塗膜の表面平滑性の観点から好ましくは30〜150℃である。乾燥時間は通常10分以下、硬化膜の物性および生産性の観点から好ましくは1〜5分である。
【0067】
本発明の樹脂組成物を硬化させる際に照射する活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線および可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のうち硬化性と樹脂劣化抑制の観点から好ましいのは紫外線と電子線である。
【0068】
本発明の組成物を紫外線照射で硬化させる場合は、種々の紫外線照射装置〔例えば型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製〕、光源としてはキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を使用することができる。
紫外線の照射量(mJ/cm2)は、通常10〜10,000、組成物の硬化性および
硬化物(硬化膜)の可撓性の観点から好ましくは100〜5,000である。
【0069】
電子線で硬化させる場合は、種々の電子線照射装置[例えば商品名「エレクトロンビーム」、岩崎電気(株)製]を使用することができる。電子線の照射量(Mrad)は、通常0.5〜20、組成物の硬化性並びに硬化物(硬化膜)の可撓性、硬化物および基材の損傷を避けるとの観点から好ましくは1〜15、さらに好ましくは2〜7である。
【0070】
本発明の組成物は、通常、活性エネルギー線により硬化させるが、必要により前記熱重合開始剤(C2)を含有させた場合は熱で硬化させることもでき、また活性エネルギー線と熱を併用して硬化させることもできる。熱硬化の条件は前記のとおりである。
【0071】
本発明の組成物は、上記硬化させることにより、(A)の粒子状硬化物が(B)の硬化物中に分散してなる硬化物を与える。
(A)の粒子状硬化物は、走査型電子顕微鏡で観察することができ、その数平均粒子径は5μm以下、帯電防止性および耐擦傷性の観点から好ましくは0.01〜3μm、さらに好ましくは0.1〜2μmである。
【0072】
該数平均粒子径は以下のようにして求められる。
本発明の組成物をフィルムの片面にバーコーターを用い、乾燥硬化後の膜厚が5μmになるように塗布し、60℃で3分間乾燥させた後、紫外線照射装置により、紫外線を300mJ/cm2照射し、フィルム表面に硬化膜を有する被覆物試験片を作成する。作成
した被覆物試験片中の(A)の硬化物粒子を四酸化ルテニウム染色法で染色する。その被覆物試験片表面における(A)の硬化物の分散状態を透過型電子顕微鏡、または走査型電子顕微鏡で観察する。
分散した(A)の硬化物の数平均粒子径は撮影した写真について目視または画像解析装置によって求める。適当な観察範囲(例えば100μm×100μm)の中でN個の粒子について下記の計算式から粒子径dLm(m=1、2、3、・・・、N)が得られたとき、
その分散した(A)の数平均粒子径Dは、D=(ΣdLm)/Nにより算出する。

粒子径dLm=(第m番目の粒子の最大長径+第m番目の粒子の最小短径)×(1/2)
【0073】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。以下において、特に指定しない限り、「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示す。
【0074】
製造例1
撹拌機、温度計を備えた減圧可能な反応容器に、モノ(アクリロイルオキシエチル)フタレート[商品名「アロニックスM−5400」、東亞合成(株)製]と1−エチル−3−メチルイミダゾリウムモノメチル炭酸塩(合成方法は、特開2001−316372号公報記載の方法に従った。以下同じ。)を等モルで仕込み均一混合した。50℃で脱炭酸反応させ、メタノールを留去することによって1−エチル−3−メチルイミダゾリウムモノ(アクリロイルオキシエチル)フタレート塩(A−1)を得た。
【0075】
製造例2
製造例1において、モノ(アクリロイルオキシエチル)フタレートに代えてアクリル酸を用いたこと以外は製造例1と同様にして、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアクリル酸塩(A−2)を得た。
【0076】
製造例3
製造例1において、モノ(アクリロイルオキシエチル)フタレートに代えてモノ(メタクリロイルオキシエチル)リン酸エステル[商品名「ライトエステルP−1M」、共栄社化学(株)製]を用いたこと以外は製造例1と同様にして、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムモノ(メタクリロイルオキシエチル)リン酸エステル塩(A−3)を得た。
【0077】
製造例4
製造例1において、モノ(アクリロイルオキシエチル)フタレートに代えて2,2,2−トリアクリロイルオキシメチルエチルコハク酸[商品名「NKエステルCBX−0」、新中村化学工業(株)製]を用いたこと以外は製造例1と同様にして、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−2,2,2−トリアクリロイルオキシメチルエチルコハク酸塩(A−4)を得た。
【0078】
製造例5
製造例1において、モノ(アクリロイルオキシエチル)フタレートに代えて2−アクリルアミド−2−メチルプロパン−1−スルホン酸[商品名「ATBS」、東亞合成(株)製]を用いたこと以外は製造例1と同様にして、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−2−アクリルアミド−2−メチルプロパン−1−スルホン酸塩(A−5)を得た。
【0079】
製造例6
製造例1において、モノ(アクリロイルオキシエチル)フタレートに代えてメタクリル酸を用いたこと以外は製造例1と同様にして、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメタクリル酸塩(A−6)を得た。
【0080】
実施例1〜12、比較例1〜3
表1の配合組成に従ってディスパーザーで混合撹拌し、実施例1〜12、比較例1〜3の樹脂組成物を得た。下記の<被覆物作成法−1>に従い、該組成物をフィルム基材に塗布して、被覆物を作成した。表中の配合成分は下記の通りである。なお、実施例、比較例はいずれも成分を一括配合し均一混合して樹脂組成物を作成した。
【0081】
実施例13
表1の配合組成に従ってディスパーザーで混合撹拌し、実施例13の樹脂組成物を得た。
下記の<被覆物作成法−2>に従い、該組成物をフィルム基材に塗布して、被覆物を作成した。
【0082】
PE3A :PEトリアクリレート[商品名「ライトアクリレートPE3A」、共栄社
化学(株)製、平均官能基数3.1]、SP値11.5
DA−600:DPEポリアクリレート[商品名「ネオマーDA−600」、三洋化成工
業(株)製、平均官能基数5.5]、SP値10.4
TMPTA :TMPトリアクリレート[商品名「ライトアクリレートTMP−A」、共
栄社化学(株)製、平均官能基数3]、SP値9.9
TMP :TMPトリメタアクリレート[商品名「ライトエステルTMP」、共栄社
化学(株)製、平均官能基数3]、SP値9.7
DCPA :トリシクロデカンジメタノールジアクリレート[商品名「ライトアクリレ
ートDCP−A」、共栄社化学(株)製、平均官能基数2]、SP値9.9
I184 :1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン[商品名「イルガキュア1
84」、チバスペシャルティケミカルズ(株)製]
【0083】
<被覆物作成方法−1>
樹脂組成物をメタノールで希釈し、不揮発分50%に調整する。厚さ100μmの透明PETフィルム[商品名「コスモシャインA4300」、東洋紡績(株)製]基材の片面にバーコーターを用い、乾燥硬化後の膜厚が5μmになるように塗布し、60℃で3分間乾燥させた後、紫外線照射装置[型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製]により、紫外線を300mJ/cm2照射し、基材フィルム表面に硬化膜を有する被覆物を作成した。
【0084】
<被覆物作成方法−2>
前記<被覆物作成方法−1>において、紫外線照射装置に代えて電子線照射装置[商品名「エレクトロンビーム」、岩崎電気(株)製]を用い、電子線を10Mrad照射し、基材フィルム表面に硬化膜を有する被覆物を作成した。
【0085】
(A)のホモポリマー、および前記被覆物について下記の方法[それぞれ下記の(1)および(2)〜(6)]で性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
<性能評価方法>
(1)(A)のホモポリマーの導電率(単位:S/cm)
(A)100部に光重合開始剤としてイルガキュア184を5部添加し、均一混合した後、前記の<被覆物作成方法−1>に従って、基材フィルム表面に(A)のホモポリマーの硬化膜を有する被覆物を作成する。該被覆物の硬化膜について、導電率測定機[機器名「Loresta HP MCP−T410」、三菱化学(株)製]を用い、四探針法にて導電率を測定する。
(2)(A)の硬化物の数平均粒子径(単位:μm)
前記の方法により、硬化物(硬化膜)中の(A)の硬化物の数平均粒子径を測定する。電子顕微鏡による観察範囲は100μm×100μmとする。
(3)透明性(ヘイズ)(単位:%)
JIS−K7105に準拠し、全光線透過率測定装置[商品名「haze−gard dual」BYK gardner(株)製]を用いてヘイズを測定する。
(4)耐擦傷性
スチールウール#0000を用い、250g/cm2荷重にて、被覆物の塗膜表面を3
0往復擦傷後、外観を目視により下記の基準で評価する。

○ 全く傷がつかない。
△ 擦り傷が数本程度認められる。
× 多数の擦り傷が認められ、表面が白化する。
【0087】
(5)鉛筆硬度
JIS K−5400に準じ、鉛筆硬度を測定する。
(6)帯電防止性[ASTM D257(1984年制定)に準拠]
(6−1)表面抵抗値(単位:Ω)
被覆物から切り出した試験片(100×100mm)を23℃、湿度50%RHの条件で24時間静置後、デジタル超絶縁計[DSM−8103、東亜電波工業(株)製、以下同じ。]により同条件の雰囲気下で測定する。
(6−2)水洗後の表面抵抗値(単位:Ω)
(6−1)と同様の試験片を、25℃のイオン交換水1,000ml中に浸漬し、24
時間静置する。ついで試験片を取り出し25℃のイオン交換水100ml×3回の流水で塗膜表面を洗い流した後、循風乾燥機内80℃で3時間乾燥させる。該水洗−乾燥の操作を3回繰り返した後、試験片を23℃、湿度50%RHの条件で24時間静置後、超絶縁計により同条件の雰囲気下で測定する。
【0088】
【表1】

表1の結果から、本発明の活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物は、比較のものに比べ耐擦傷性等の機械物性、透明性および永久帯電防止性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物を基材に塗布し硬化させてなる硬化物(硬化膜)を基材の少なくとも片面の少なくとも一部に有する被覆物は、帯電防止性の持続性、耐擦傷性、透明性等に優れるため、特にプラスチック光学部品、フラットパネルディスプレイ、タッチパネル等、表面硬度と埃の付着防止が必要とされる分野に幅広く好適に使用することができ、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和基を有するイオン性液体(A)および少なくとも3個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(B)を含有してなり、(A)と(B)が0.2〜1.0のSP値差の絶対値を有し、数平均粒子径5μm以下の(A)の粒子状硬化物が(B)の硬化物中に分散してなる硬化物を与えることを特徴とする活性エネルギー線硬化型帯電防止性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)のホモポリマーの導電率が1×10-8〜1×10-4S/cmである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
(A)と(B)の重量比が、1/99〜50/50である請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
さらに、重合開始剤(C)を含有させてなる請求項1〜3のいずれか記載の組成物。
【請求項5】
さらに、充填剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、チクソトロピー性付与剤、スリップ剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤からなる群から選ばれる1種または2種以上の添加剤を含有させてなる請求項1〜4のいずれか記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の組成物を、基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布し、硬化させてなる硬化物。
【請求項7】
請求項6記載の硬化物を、基材の少なくとも片面の少なくとも一部に有する被覆物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか記載の組成物を、基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させることを特徴とする被覆物の製造方法。
【請求項9】
請求項7記載の被覆物からなるプラスチック光学部品、フラットパネルディスプレイまたはタッチパネル。

【公開番号】特開2009−263627(P2009−263627A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42628(P2009−42628)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】