説明

活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、活性エネルギー線硬化型ハードコート剤、これらを用いた硬化被膜および硬化被膜を有する物品

【目的】幅広い材質、特に、金属メッキ面、金属蒸着面などの金属面などに対し、高い密着性を有する硬化被膜を形成することができる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(ハードコート剤)を提供することを目的とする。
【解決手段】
分子中にエポキシ基を有するビニル化合物を含有する重合成分(a1)を重合してえられた重合体にカルボキシル基含有(メタ)アクリル化合物を付加反応させてなる反応生成物(A)とコロイダルシリカ(B)、特定のリン酸化合物(C)および多官能(メタ)アクリル化合物(D)を必須成分として含有し、コロイダルシリカ(B)に対する反応生成物(A)の使用割合((A)/(B))を0.25〜1.75とし、樹脂組成物全体の(メタ)アクリル当量を320〜550の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線、電子線などの活性エネルギー線により硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、当該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有するハードコート剤、当該ハードコート剤を硬化させて得られる硬化被膜および硬化被膜を有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、各種物品の表面に塗工し、紫外線等の活性エネルギー線の照射により容易に硬化し、高硬度で耐擦傷性、透明性などに優れた硬化被膜(ハードコート被膜)を形成させることができることから、プラスチック材料等の表面を保護するハードコート剤等として広く用いられている。
【0003】
近年、各種電気製品、化粧品の容器および自動車内外装部品などに見られるように、プラスチック表面に金属の真空蒸着処理やメッキ処理等を施しメタリックな色調や光沢としたり、プラスチックと金属材料とを組み合わせるなどして表面に装飾性や意匠性が付与された物品に対してもハードコート処理が行われるようになっている。しかし、従来の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いた場合、金属面に対する密着性が不足し、これらを保護するのに適したハードコート性(高硬度性、耐擦傷性、耐摩耗性など)を有する硬化被膜を形成させることが困難である。
【0004】
そこで、金属面等との密着性を向上させることを目的として、例えば、モノマー成分として分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A)とシリカ(B)を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に、更にリン酸基含有エチレン性不飽和化合物(C)を含有させる技術(特許文献1)などが提案されているが、さらなる密着性の向上が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−016145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、幅広い材質、特に、金属メッキ面、金属蒸着面などの金属面に高い密着性を有する硬化被膜(ハードコート被膜)を形成することができる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(ハードコート剤)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討したところ、特定の反応生成物(A)、コロイダルシリカ(B)、特定のリン酸化合物(C)および多官能(メタ)アクリル化合物(D)を必須成分とし、さらに、その使用比率と樹脂組成物全体の(メタ)(メタ)アクリル当量(「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。以下、同じ。)を特定の範囲内に調整して得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いることより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、分子中にエポキシ基を有するビニル化合物(a1)を含有する重合成分を重合して得られた重合体にカルボキシル基含有(メタ)アクリル化合物(a2)を付加反応させてなる反応生成物(A)、コロイダルシリカ(B)、分子中に1または2個のビニル基を含有するリン酸化合物(C)、および多官能(メタ)アクリル化合物(D)を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、コロイダルシリカ(B)に対する反応生成物(A)の使用割合((A)/(B))が重量比で0.25〜1.75、当該樹脂組成物全体の(メタ)アクリル当量が320〜550であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物;コロイダルシリカ(B)に対する反応生成物(A)の使用割合((A)/(B))が重量比で0.30〜1.00である請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物;コロイダルシリカ(B)の平均一次粒子径が6〜100nmである前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物;さらに、光重合開始剤(E)を含有する前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物;前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含有するハードコート剤;前記ハードコート剤を硬化してなる硬化被膜。;前記硬化被膜を表面に有する物品およびその表面が金属面である物品、に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いたハードコート剤は、各種プラスチックフィルムや成形体、ガラスなどの各種物品の表面との密着性に優れ、かつ高硬度で耐擦傷性や耐摩耗性などのハードコート性に優れた硬化被膜(ハードコート被膜)を形成することができる。特に、金属面に対して幅広く優れた接着性を有することから、例えば、アルミ、鉄、銅等の金属材料や銀、クロムなどによるメッキ処理面、金属蒸着面等の金属面を有する物品を保護するためのハードコート剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、分子中にエポキシ基を有するビニル化合物(a1)を含有する重合成分を重合して得られた重合体にカルボキシル基含有(メタ)アクリル化合物(a2)を付加反応させてなる反応生成物(A)、コロイダルシリカ(B)、分子中に1または2個のビニル基を含有するリン酸化合物(C)、および多官能(メタ)アクリル化合物(D)を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、コロイダルシリカ(B)に対する反応生成物(A)の使用割合((A)/(B))が重量比で0.25〜1.75、(メタ)アクリル当量が320〜550であることを特徴とする。
【0011】
反応生成物(A)
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に用いられる反応生成物(A)(以下、(A)成分という)は、分子中にエポキシ基を有するビニル化合物(a1)を含有する重合成分を重合して得られた重合体にカルボキシル基含有(メタ)アクリル化合物(a2)を付加反応させてなるものである。(a1)成分としては、ラジカル重合性ビニル単量体であってエポキシ基およびビニル基をそれぞれ1つ有するものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、得られる硬化膜のハードコート性の点から、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0012】
さらに、重合体の重合成分としては、(a1)成分以外の成分(以下、その他の重合成分という。)を使用することができる。その他の重合成分としては、(a1)成分と共重合できるものであって、かつ分子中にエポキシ基と反応性がある官能基を有さないものであれば、特に限定されず公知のものを用いることができる。その他の重合成分としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの脂環式(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロイルモルフォリンなどの窒素含有アクリル酸エステル類を含む(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族系ビニル化合物などが挙げられる。これらのなかでは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルが、得られる硬化被膜の耐水性や耐熱性を向上させる点において好ましい。
【0013】
(a1)成分とその他の重合成分の使用割合は、特に限定されないが、(a1)成分とその他の重合成分とを重量比で10/0〜2/8程度とすることが、得られる硬化被膜の耐摩耗性と耐熱性のバランスが取れるため好ましく、10/0〜5/5とすることが特に好ましい。
【0014】
重合体の製造方法(重合方法)としては、例えば、公知のラジカル重合法を採用すればよく、例えば、(a1)成分およびその他の重合成分をラジカル重合開始剤の存在下、加熱することにより製造することができる。ラジカル重合開始剤としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の無機過酸化物、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、ラジカル重合開始剤の使用量は、全重合成分((a1)成分とその他の重合成分の合計)100重量部に対し、0.01〜8重量部程度とすることが好ましい。なお、必要に応じ、連鎖移動剤などを用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、ブロムトリクロルメタン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。連鎖移動剤の使用量は、使用する全重合成分100重量部に対し、0.01〜5重量部程度とすることが好ましい。
【0015】
このようにして得られた重合体は、重量平均分子量(ゲルパーメーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値)6,000〜40,000程度、エポキシ当量は固形分換算で142〜710g/eq程度とすることが好ましい。なお、本発明においてエポキシ当量とは、JIS−K−7236にて定義される値である。
【0016】
重合体に付加反応させる(a2)成分としては、分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する(メタ)アクリル化合物であれば特に限定されず公知のものを用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、などが挙げられる。これらのなかでは、樹脂組成物の光硬化性が良好である点からアクリル酸を用いることが好ましい。(a2)成分の使用量は、特に限定されないが、活性エネルギー線照射後の残存を防止し、また、得られる硬化被膜の耐擦傷性、耐摩耗性などのハードコート性確保や樹脂の保存安定性の観点から(A)成分中のエポキシ基と等モル程度とすることが好ましい。
【0017】
前記重合体と(a2)成分の反応は、エポキシ開環反応であり、公知の反応条件を採用することができる。例えば、必要に応じて触媒の存在下、加熱することにより得られる。触媒としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等のホスフィン類;テトラメチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン、トリブチルアミン等のアミン類;2−メチルイメダゾール等のイミダゾール類;ジブチル錫ラウレート等のラウリン酸エステル類などが挙げられる。触媒の使用量は、特に限定されないが、重合体と(a2)成分の合計重量100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部程度とすることが好ましい。なお、必要に応じ、有機溶媒や重合禁止剤を用いてもよい。有機溶媒としては、重合体および(a2)成分と反応しないものであれば、特に限定されず公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、エチルアルコール、プロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸ブチル、酢酸エチル、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等が挙げられる、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。重合禁止剤としては、メトキノン、ハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン等が挙げられる。なお、重合禁止剤の使用量は特に限定されないが、得られるコーティング剤の重合性が悪化する場合があるため、重合体と(a2)成分の合計重量100重量部に対して、通常、1重量部程度以下とすることが好ましい。また、重合を防止するために、反応系中に空気を吹き込む等してもよい。
【0018】
このようにして得られた反応性生物(A)は、重量平均分子量(ゲルパーメーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値)を9,000〜60,000程度、(メタ)アクリル当量を214〜782g/eq程度、酸価を5mgKOH/g程度以下とすることが、得られる硬化被膜の耐擦傷性、耐摩耗性などのハードコート特性、密着性、樹脂の保存安定性の点から好ましい。
【0019】
(コロイダルシリカ(B))
本発明に用いられるコロイダルシリカ(B)(以下、(B)成分という)としては、特に限定されず有機溶剤等を分散媒とした市販品を使用することができる。(B)成分の平均一次粒子径は、6〜100nm程度であることが好ましく、20〜80nmであることがより好ましい。平均一次粒子径が6nmを下回る場合、表面硬度が不足し耐擦傷性が低下する傾向があり、100nmを超えると貯蔵安定性が不十分となり、密着性および透明性も悪くなる傾向がある。なお、平均一次粒子径は、動的光散乱法により決定された値である。なお、(B)成分の具体例としては、例えば、スノーテックス(日産化学工業(株)製)、クォートロン(扶桑化学工業(株)製)、アエロジル(日本アエロジル(株)製)、シルデックス(旭硝子(株)製)、およびシリシア470(富士シリシア化学(株)製)などを挙げることができる。また、製造の簡便化のため、あらかじめ有機溶媒に分散されたオルガノシリカゾルを用いることが好ましく、例えばIPA−ST、IPA−ST−MS、IPA−ST−L、IPA−ST−ZL(以上は、それぞれ日産化学工業(株)製 イソプロパノール分散体)、MA−ST−M(日産化学工業(株)製 メタノール分散体)、クォートロンPL−2−IPA(扶桑化学工業(株)製 イソプロパノール分散体)などが挙げられる。
【0020】
(A)成分と(B)成分の使用割合は、(B)成分に対する(A)成分の割合((A)/(B))として、重量比で0.25〜1.75の範囲となるように調整することが必要である。使用割合((A)/(B))が0.25を下回ると得られる硬化被膜の密着性が不十分となり、1.75を超えるとハードコート性が低下する。同様の観点から、前記使用割合は0.30〜1.00であることがより好ましく、さらに好ましくは0.35〜0.85である。なお、(A)成分と(B)成分の使用割合((B)/(A))における(B)成分の使用量は、固形分量を意味する。
【0021】
(分子中に1個または2個のビニル基を含有するリン酸化合物(C))
本発明に用いられる分子中に1個または2個のビニル基を含有するリン酸化合物(C)(以下、(C)成分という)としては、分子中に1個または2個のビニル基を有するリン酸化合物であれば特に限定せずに使用することができる。例えば、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(商品名
ライトエステルP−1M、ライトエステルP−2M 共栄社化学(株)製)、燐酸含有エポキシメタクリレート(商品名
ニューフロンティアS−23A 第一工業製薬(株)製)などのリン酸(メタ)アクリレート類、ビニルホスホン酸(商品名VPA−90,VPA−100 BASF社製)などのリン酸ビニル化合物が挙げられる。
また、(C)成分の使用量としては、特に限定されないが、通常、樹脂組成物の構成成分全量((A)〜(D)成分の合計量)に対して、0.01〜5重量%程度が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%である。
【0022】
(多官能(メタ)アクリル化合物(D))
本発明に用いられる多官能(メタ)アクリル化合物(D)(以下(D)成分という)としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であって、(C)成分以外のものであれば特に限定せずに使用することができる。具体的には、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の水酸基を有する多官能(メタ)アクリレートオリゴマーと1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物とを反応させることにより得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート等も挙げられる。これら多官能(メタ)アクリレートは、1種または2種以上を混合して使用できる。これらの中では、得られる硬化被膜の硬度、耐擦傷性の観点から、3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。(D)成分の使用量としては、特に限定されないが、通常、樹脂組成物の構成成分全量((A)〜(D)成分の合計量)に対して、20〜40重量%程度が好ましく、より好ましくは25〜35重量%である。
【0023】
こうして得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の(メタ)アクリル当量は、320〜550の範囲に調整されていることが必要である。(メタ)アクリル当量が320を下回ると金属などに対する密着性の高い硬化被膜が得られず、(メタ)アクリル当量が550を超えると耐擦傷性、耐摩耗性および鉛筆高度などが低下しハードコート性の高い硬化被膜を得ることができない。
なお、本発明において(メタ)アクリル当量とは、(メタ)アクリロイル基1モル当たりの重さであり、組成物においては、(メタ)アクリロイル基濃度(mol/g)の逆数で表される値である。
【0024】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、(A)〜(D)成分を含有するものであるが、さらに光増感剤、酸化防止剤、光安定剤、レベリング剤、顔料等の各種公知の添加剤および光重合開始剤(E)などを含有させてもよい。
【0025】
(光重合開始剤(E))
光重合開始剤(E)(以下、(E)成分という)としては、特に限定されず公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、(E)成分は、紫外線硬化を行なう場合に使用するが、電子線硬化をする場合には、必ずしも必要ではない。(E)成分を使用する場合の使用量は特に限定されないが、通常、(A)〜(D)成分の合計量100重量部に対し、1〜10重量部程度とすることが好ましい。
【0026】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、ハードコート剤として好適であり、各種物品(各種目的・用途に応じてフィルム状やシート状各種形状の成形体などに加工された物品)の表面に塗工され、紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射して反応硬化させることで、硬化被膜を形成させることができる。得られる硬化被膜は高硬度で耐擦傷性、耐摩耗性および透明性などハードコート性や、物品表面との接着性に優れるものである。
【0027】
本発明の硬化被膜は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有するハードコート剤を、各種物品表面上に、乾燥後の重量が0.1〜30g/m程度、好ましくは1〜20g/mになるように塗工し、乾燥した後に、活性エネルギー線を照射することにより得られる。
【0028】
本発明のハードコート剤が適用可能な物品表面の材質としては、特に制限はなく、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等)や、ガラス、紙(アート紙、キャストコート紙、フォーム用紙、PPC用紙、上質コート紙、クラフト紙、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙等)などが挙げられるほか、アルミ、鉄、銅等の金属材料や銀、クロムなどによるメッキ処理面、金属蒸着面等の金属面に対しても使用することができる。
【0029】
塗工方法としては、例えばバーコーター塗工、ワイヤーバー塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷法等が挙げられる。
【0030】
硬化に用いられる活性エネルギー線としては、例えば紫外線や電子線が挙げられる。紫外線の光源としては、キセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプを有する紫外線照射装置を使用できる。なお、光量や光源配置、搬送速度などは必要に応じて調整でき、例えば高圧水銀灯を使用する場合には、通常80〜160W/cm程度の光量を有するランプ1灯に対して搬送速度5〜50m/分程度で硬化させるのが好ましい。一方、電子線の場合には、通常10〜300kV程度の加速電圧を有する電子線加速装置にて、搬送速度5〜50m/分程度で硬化させるのが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、合成例、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。なお、各例中、部及び%は重量基準である。
なお、本実施例において、重量平均分子量は、ゲルパーメーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製、商品名「HLC−8220」、カラム:東ソー(株)製、商品名「TSKgel superHZ2000」、「TSKgel superHZM−M」により測定した値を示す。
【0032】
合成例1(反応生成物(A1)の合成)
攪拌装置、冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、グリシジルメタクリレート(以下、GMAという)250部、2,2−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)7.5部、ラウリルメルカプタン1.3部および酢酸ブチル1000部を仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約90℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめGMA750部、ラウリルメルカプタン3.7部及びAIBN22.5部からなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に混合液を約2時間要して系内に滴下し、3時間同温度に保温後、AIBN10部を仕込み、1時間保温した。その後、120℃に昇温し、2時間保温した。その後、反応系を60℃まで冷却した後、窒素導入管を空気導入管につけ替え、アクリル酸507部、メトキノン2.3部及びトリフェニルフォスフィン6.0部を仕込み混合した後、空気バブリング下にて、110℃まで昇温した。次いで、同温度にて8時間保温後、メトキノン1.6部を仕込み、冷却して、不揮発分が50%となるように酢酸エチルを加え、反応生成物(A1)を得た。得られた反応生成物(A1)の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は35,000、エポキシ当量142、(メタ)アクリル当量214であった。
【0033】
合成例2(反応生成物(A2)の合成)
合成例1と同様の反応容器に、GMA125部、メチルメタクリレート125部(以下、MMAという)、AIBN7.5部、ラウリルメルカプタン1.3部およびメチルイソブチルケトン1000部(以下、MIBKという)を仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約120℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめGMA375部、MMA375部、ラウリルメルカプタン3.7部及びAIBN22.5部からなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に混合液を約2時間要して系内に滴下し、3時間同温度に保温後、AIBN10部を仕込み、1時間保温した。その後、120℃に昇温し、2時間保温した。その後、反応系を60℃まで冷却した後、窒素導入管を空気導入管につけ替え、アクリル酸(以下、AAという)254部、メトキノン2.3部及びトリフェニルフォスフィン6.0部を仕込み混合した後、空気バブリング下にて、110℃まで昇温した。次いで、同温度にて8時間保温後、メトキノン1.6部を仕込み、冷却して、不揮発分が50%となるようにMIBKを加え、反応生成物(A2)を得た。得られた反応生成物(A2)の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は24,000、エポキシ当量284、(メタ)アクリル当量355であった。
【0034】
合成例3(多官能(メタ)アクリル化合物(D)の合成)
攪拌装置、滴下ロートを備えた反応容器に、イソホロンジイソシアネート189部、ペンタエリスリトールトリアクリレート812部、オクチル酸スズ0.6部、メトキノン1部を仕込んだ後、系内温度が80℃になるまで昇温し、3時間保温した。赤外分光法(IR)でイソシアネートピークが消失した時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート(D1)を得た。
【0035】
実施例1 (活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の調製)
(A)成分として合成例1で得た反応生成物(A1)を33部、(B)成分としてイソプロパノール分散コロイダルシリカ(SiO2 不揮発分30% 商品名IPA−ST 日産化学工業(株)製)を100部(固形分換算)、(C)成分として、2−メタクリロキシエチルアシッドホスフェート(商品名 ライトエステルP−2M、共栄社化学(株)製)1部、(D)成分としてペンタエリスリトールトリアクリレート33部、(E)成分としてとして1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(商品名 イルガキュアー184、チバ・ジャパン(株)製)5部を配合し、不揮発分が30%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PMという)で希釈し、(メタ)アクリル当量380g/eqの活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。
【0036】
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の調製)
実施例2〜7および比較例1〜10
実施例1における各成分の種類と使用量を表1または表2記載のとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。
なお、得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の(メタ)アクリル当量は、樹脂組成物の全固形分重量に対し、使用した各成分中に存在するアクリル酸のモル数で除することによって求めた。
【0037】
(硬化被膜の作製)
厚さ2mmのアルミ板上に、各実施例・比較例で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をバーコーター#16を用いて塗布し、80℃で1分乾燥させた。次いで、得られた塗工フィルムを大気中で、高圧水銀灯(紫外線照射量400mJ/cm)の下を通過させて(搬送速度10m/分)、塗工面を硬化させることにより、硬化被膜を作製した。得られた硬化被膜について、以下の方法で評価を行った。なお、比較例8は、被膜にクラックが発生したため、評価を行わなかった。
【0038】
(1)硬度
硬化被膜をJIS K 5600に従い荷重500gの鉛筆引っかき試験によって評価した。JIS K 5600に準拠して鉛筆硬度を測定した。
【0039】
(2)耐擦傷性
硬化被膜を、底部に10mm×10mmの範囲でスチールウールを貼り付けた300gのおもりで30回擦り、外観を観察し、以下の基準で評価した。
○:変化無し。
△:細かいキズ有り。
×:大きなキズ有り。
【0040】
(3)密着性
JIS K
5600に記載された方法で碁盤目セロハンテープ剥離試験を行った。結果は、全100マスの碁盤目セロハンテープ(分母)に対して剥離しなかった数(分子)で評価した。さらに、銀メッキ処理した金属板に硬化被膜を形成させ、同様に密着性を評価した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
各表中の記載は以下のとおりである。
リン酸メタクリレート(ビニル基数2):ライトエステルP−2M 共栄社化学株式会社
リン酸メタクリレート(ビニル基数1):ライトエステルP−1M 共栄社化学株式会社
リン酸メタクリレート(ビニル基数3):ビスコート3PA 大阪有機化学工業株式会社
PET3A:ペンタエリスリトールトリアクリレート



【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中にエポキシ基を有するビニル化合物を含有する重合成分(a1)を重合して得られた重合体にカルボキシル基含有(メタ)アクリル化合物(a2)を付加反応させてなる反応生成物(A)、コロイダルシリカ(B)、分子中に1または2個のビニル基を含有するリン酸化合物(C)、および多官能(メタ)アクリル化合物(D)を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、コロイダルシリカ(B)に対する反応生成物(A)の使用割合((A)/(B))が重量比で0.25〜1.75、当該樹脂組成物全体の(メタ)(メタ)アクリル当量が320〜550であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
コロイダルシリカ(B)に対する反応生成物(A)の使用割合((A)/(B))が重量比で0.30〜1.00である請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
コロイダルシリカ(B)の平均一次粒子径が6〜100nmである請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、光重合開始剤(E)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含有するハードコート剤。
【請求項6】
請求項5記載のハードコート剤を硬化してなる硬化被膜。
【請求項7】
請求項6記載の硬化被膜を表面に有する物品。
【請求項8】
表面が金属面である請求項7記載の物品。

【公開番号】特開2009−286972(P2009−286972A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143660(P2008−143660)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】