説明

活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物

【課題】非水系の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に比べて遜色のない硬化膜物性を有し、保存安定性に優れた活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物を提供すること
【解決手段】ポリウレタン(メタ)アクリレート(A)と、下記一般式(1):
1−O―(CHCHRO)−(CHCHO)−H(式中、R1は炭素数3〜5のアルケニル基を、Rはメチル基またはエチル基を、mは5〜15の整数を、nは20〜80の整数を示す。)で示され、かつ該HLB値(疎水性親水性バランス値)が11〜17である反応性乳化剤(B)とを転相乳化して調製されたことを特徴とする活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線、電子線などの活性エネルギー線により硬化する活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物に関し、より詳細には、硬化膜物性、貯蔵安定性に優れた活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、溶剤を含有していないため安全性に優れるほか、硬化性に優れるため生産性、省エネルギーの観点からも特長を有するものとして一般的に認識されている。かかる特性に照らし、各種プラスチックフィルム用オーバーコート剤、木工用塗料、印刷インキなどの各種コーティングや接着剤などの有効成分として採用されている。
【0003】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の一つとして、ポリエステルジオールやポリエーテルジオールなどのジオール化合物、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの有機ポリイソシアネート化合物およびヒドロキシエチルアクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレートなどを主原料とし、これらをウレタン化反応させて得られる各種のポリウレタンアクリレートが知られている。
【0004】
該ポリウレタンアクリレートは一般的に粘度が高いため、特に低粘度化や塗工適性を高めることが要求される場合には、反応性希釈剤を多量に使用したり、有機溶剤を用いるなどの便法が採られている。しかしながら、反応性希釈剤を使用した場合には、得られる組成物の硬化性低下や皮膚刺激性の問題が生じ易く、また有機溶剤を用いる場合には大気汚染や火災の危険性が高くなる。そのため、有機溶剤を含まず、かつ、反応性希釈剤を多量に含まない活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の開発が求められている。
【0005】
前記問題の解決策として、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の水性化につき種々検討されている。該水性化方法としては、水可溶性の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いる方法と、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を水中に乳化分散する方法が一般的である。
【0006】
活性エネルギー線樹脂組成物を水可溶化する場合には、水に溶解する性能を該樹脂に付与するために該樹脂構造が限定されてしまい、各種用途に広範囲に適用できないという不利がある。
【0007】
一方、乳化分散する方法としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に乳化性を付与する方法と、乳化剤を使用して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を乳化する方法とがある。前者の方法として、水酸基含有(メタ)アクリレート、1個の水酸基を含有するポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類、および有機ポリイソシアネートとからなる反応生成物を用いる方法が開示されている(特許文献1参照)。しかし、該反応生成物では、乳化性を付与するために親水成分としてポリエチレングリコールモノアルキルエーテル構造を含まれているため、プラスチックへの密着性が不満足であるなどの問題がある。また、特許文献2には、アミノ化合物で中和されたカルボキシル基およびオキシアルキレン基を有する多官能ウレタンアクリレート、光重合開始剤、ならびに水を含んでなる光硬化性樹脂組成物が記載されている。また特許文献3には、カルボキシル基含有ウレタン(メタ)アクリレートを、水混和率が100重量%以上である水溶性反応性希釈剤の存在下で製造した後、該カルボキシル基をアミン類で中和してアミン塩とし、さらに水を加え、乳化することにより得られる水性活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、特許文献2、3記載の発明では、アミン類による中和が必要であるため、乾燥時にアミン類が飛散し、臭気等の問題が生じるおそれがある。
【0008】
後者の方法として、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートから選ばれる硬化性オリゴマーの少なくとも1種を反応性乳化剤の存在下に、水溶媒中に分散させてなる水分散型硬化性樹脂組成物を用いる方法が開示されている(特許文献4参照)。当該組成物は、25℃での保存安定性は比較的優れているものの、より高温(例えば40℃)での保存安定性は不十分である。
【0009】
【特許文献1】特許第2590682号掲載公報
【特許文献2】特開平11−209448号公報
【特許文献3】特開平11−279242号公報
【特許文献4】特開2000−159847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、水系活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関する前記実情に鑑み、非水系の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に比べて遜色のない硬化膜物性を有し、保存安定性に優れた活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく、用いる反応性乳化剤および乳化方法に着目して鋭意研究を重ねた結果、以下に示す特定の活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物により、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、ポリウレタン(メタ)アクリレート(A)と、下記一般式(1):
1−O―(CHCHRO)−(CHCHO)−H(式中、R1は炭素数3〜5のアルケニル基を、Rはメチルまたはエチル基を、mは5〜15の整数を、nは20〜80の整数を示す。)で示され、かつ該HLB値(疎水性親水性バランス値)が11〜17である反応性乳化剤(B)とを転相乳化して調製されたことを特徴とする活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物は、保存安定性に優れ、さらに非水系の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に比べて遜色のない硬化膜物性を有しており、紙、ガラス、各種プラスチックフィルム用のオーバーコート剤、印刷インキ、木工塗料等の各種用途に適用できる。特に、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、プラスチック成形物に耐擦傷性、耐薬品性、透明性等の諸性能を付与しうるプラスチック用ハードコーティング剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のポリウレタン(メタ)アクリレート(A)は、水酸基含有(メタ)アクリレート(a1)と、有機ポリイソシアネート化合物(a2)を公知の方法で反応させて得られる。
【0015】
水酸基含有(メタ)アクリレート(a1)としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類などのεーカプロラクトン縮合物、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシフェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等との反応により得られるエポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらはいずれも1種を単独使用したり、2種以上を適宜に組み合わせて使用できる。
【0016】
有機ポリイソシアネート化合物(a2)としては、各種ポリウレタンアクリレートに使用されている各種公知の芳香族、脂肪族及び脂環族のイソシアネート類であって、該分子内に反応性のイソシアネート基を2個以上有する有機ポリイソシアネート類が該当する。たとえば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等や、それらジイソシアネートから得られる3量体、該ジイソシアネート類をトリメチロールプロパンなどの多価アルコールと反応させたプレポリマー、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどが挙げられ、これらはいずれも単独使用したり、2種以上を適宜に組み合わせて使用できる。
【0017】
前記成分の使用割合は特に限定されるものではないが、成分(a1)の水酸基と成分(a2)のイソシアネート基との当量比[(a1)/(a2)]が1以下の場合は該反応生成物の分子末端にイソシアネート基が残る場合がある。一方、該当量比[(a1)/(a2)]が1を超える場合は、成分(a1)が反応性希釈剤として使用しうるため、該当量比の上限が格別に限定されるものではない。
【0018】
本発明のポリウレタン(メタ)アクリレート(A)の(メタ)アクリル当量は、格別限定されないが、2×10−3〜9×10−3eq/gであることが好ましく、さらに好ましくは5×10−3〜8×10−3eq/gである。ポリウレタン(メタ)アクリレート(A)の(メタ)アクリル当量が2×10−3に満たない場合には硬化膜の耐傷つき性が不十分となる傾向があり、また9×10−3eq/gを超える場合は当該樹脂の設計が困難となる傾向がある。
【0019】
本発明のポリウレタン(メタ)アクリレート(A)を製造する方法としては、特に限定されないが、前記の成分(a1)、成分(a2)を同時、または分割して仕込み、ウレタン化反応させることにより目的とするポリウレタン(メタ)アクリレート(A)が得られる。反応温度は40〜100℃程度、好ましくは60〜80℃であり、全反応時間は4〜12時間程度である。上記のウレタン化反応に際しては、反応促進のためにオクチル酸第一スズなどの公知のウレタン化触媒を使用するのが好ましい。また、ウレタン化反応に際しては、成分(a1)の重合を防止するため、ハイドロキノン、メトキシフェノール、フェノチアジンなどの重合防止剤を反応系に対して10〜5000ppm程度、好ましくは50〜2000ppm程度を用いたり、エアーシールを行うのがよい。
【0020】
本発明のポリウレタン(メタ)アクリレート(A)には、硬化後の塗膜物性を調節する目的で、皮膚刺激性やエマルジョン組成物の安定性に悪影響を及ぼさない範囲で、一分子中に一つ以上のエチレン性不飽和結合を有する不飽和単量体を含有させることができる。不飽和単量体の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリ(繰り返し数1〜3)プロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリ(繰り返し数1〜3)エトキシ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリ(繰り返し数1〜4)プロポキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリ(繰り返し数1〜4)エトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(繰り返し数1〜6)プロポキシヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(繰り返し数1〜6)エトキシヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは、いずれも単独使用、または2種以上を適宜に組み合わせて使用できる。
【0021】
本発明に用いる反応性乳化剤(B)としては、前記一般式(1)で示され、かつ該HLB値(疎水性親水性バランス値)が11〜17である反応性乳化剤が用いられる。反応性乳化剤(B)のHLBが11未満の場合には反応性乳化剤の親水性が低くなり乳化力が弱まるため、得られるエマルジョン組成物の保存安定性が低下する傾向がある。また、HLBが17を超える場合には反応性乳化剤の親水性が高まるため、得られる硬化膜の耐水性が低下する傾向がある。また、一般式(1)中のR1の炭素数が5を超える場合は、nの値を大きくするか、またはmの値を小さくすることにより、反応性乳化剤(B)のHLBを11〜17の間に保ちうる。しかしながら、nを大きくすると乳化剤中の親水部の占める割合が大きくなり得られる硬化膜の耐水性が低下する傾向があるため好ましくない。またmを小さくすると、R1の炭素数の増加による乳化剤のHLB低下に比べ、mの減少によるHLBの低下の方が大きいため、mを過小にする必要があり、その結果、乳化剤中の疎水部の占める割合が極端に小さくなり乳化剤の乳化力が弱まる不利がある。さらに、一般式(1)中のRがエチル基を超えて炭素数が多くなる場合は、乳化剤のHLBを11〜17の範囲とするためにはnを大きくする必要があるが、その結果として、乳化剤の親水部の占める割合が多くなり、硬化膜の耐水性が低下する傾向にある。本発明に用いる反応性乳化剤(B)としては、例えば、ラテムルPD−420(HLB12.0)、ラテムルPD−430(HLB13.8)、ラテムルPD−450(HLB16.2)〔いずれも花王(株)製商品名〕等の市販品が挙げられる。
【0022】
本発明の活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物における、ポリウレタン(メタ)アクリレート(A)と反応性乳化剤(B)の配合割合に関しては特に限定されないが、ポリウレタン(メタ)アクリレート(A)100重量部に対して反応性乳化剤(B)が0.1〜20重量部であることが好ましく、更に好ましくは3〜10重量部である。反応性乳化剤(B)の使用量が0.1重量部未満ではエマルジョン組成物の保存安定性が低下する傾向があり、また20重量部を超えると密着性、硬度、耐水性が低下する傾向がある。
【0023】
本発明のエマルジョン組成物は転相乳化法により製造される。具体的には、攪拌装置を有する容器にポリウレタン(メタ)アクリレート(A)と反応性乳化剤(B)をそれぞれ所定量仕込み、攪拌下に徐々に水を滴下することにより、油中水滴型エマルジョンから水中油滴型エマルジョンへ転相させる。該系内温度は60℃以下とすることが好ましい。60℃を超える場合には油中水滴型エマルジョンから水中油滴型エマルジョンへの転相が円滑に進行しないため、目的とする水中油型エマルジョン組成物が得られ難い。転相乳化に要する水の使用量は特に限定されないが、固形分濃度(エマルジョン中の(A)と(B)の合計含有量)が低くなるに従い塗工後の水の乾燥に長時間を要することから、固形分濃度が40重量%程度以上となるような使用量とするのがよく、また固形分濃度が高くなるに従い得られるエマルジョン組成物の粘度が高くなることから、固形分濃度は70重量%程度以下となるような使用量とするのがよい。
【0024】
こうして得られた活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物は、活性エネルギー線として電子線等により当該組成物を硬化させる場合には光重合開始剤は不要であるが、紫外線により硬化させる場合には、当該組成物固形分100重量部に対して、通常、光重合開始剤1〜15重量部程度を含有することができる。光重合開始剤としては、ダロキュアー1173、イルガキュアー651、イルガキュアー184、イルガキュアー907、イルガキュアー754〔チバスペシャリティーケミカルズ社製商品名〕、ベンゾフェノン等の各種公知のものを使用できる。また、必要に応じて、上記以外の各種添加剤、例えば、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤が挙げられる。場合によっては、顔料、充填剤、ケイ素化合物等を本発明の目的を逸脱しない範囲で目的に応じて含有してもよい。
【0025】
上記のようにして得られる本発明の活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物は、優れた硬化膜物性、保存安定性を有するため、従来公知の非水系活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の使用されていた各種用途、例えば紙、ガラス、各種プラスチックフィルム用のオーバーコート剤、印刷インキ、木工塗料、プラスチック成形物に耐擦傷性、耐薬品性、透明性等の諸性能を付与しうるプラスチック用ハードコーティング剤として使用できる。なお、プラスチック成形物としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂やポリオレフィン樹脂等の各種のプラスチック成形物があげられる。具体的には、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリメチルペンテンまたはポリエーテルスルホン等の種々形状の成形物、シート状物が挙げられる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、各例中、部は重量基準である。
【0027】
実施例1
温度計、還流冷却装置および攪拌機を備えたフラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ビスコート300」)146.3部、イソホロンジイソシアネート53.4部およびp−メトキシフェノール0.2部を仕込み、次いで攪拌下にオクチル酸第一スズ0.1部を仕込み、系内を75〜80℃まで昇温し、4時間保温することによりアクリル当量が7.4×10−3eq/gであるポリウレタンアクリレートを得た。なお、ウレタン化反応の終点確認は、イソシアネート基の消滅をIR測定して行った。次いで、ペンタエリスリトールトリアクリレート(前記商品名「ビスコート300」)800部および反応性乳化剤(花王(株)製、商品名「ラテムルPD−430」)50部を加え、30℃に保温しながら、脱イオン水1050部を攪拌下に滴下し、固形分50%、粘度28mPa・s/25℃のエマルジョンを得た。なお、粘度は、B型粘度計を用いて30rpmで測定した(以下、同様)。
【0028】
実施例2
実施例1で用いたのと同様のフラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(前記商品名「ビスコート300」)365.5部、イソホロンジイソシアネート133.6部およびp−メトキシフェノール0.5部を仕込み、次いで攪拌下にオクチル酸スズ0.2部を仕込み、系内を75〜80℃まで昇温し、4時間保温し、前記と同様にウレタン化反応の終点確認を行い、アクリル当量が7.4×10−3eq/gであるポリウレタンアクリレートを得た。次いで、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(荒川化学工業(株)製、商品名「ビームセット710」)500部および反応性乳化剤(前記商品名「ラテムルPD−430」)70部を加え、40℃に保温しながら、脱イオン水1070部を攪拌下に滴下し、固形分50%、粘度35mPa・s/25℃のエマルジョンを得た。
【0029】
実施例3
実施例1で用いたのと同様のフラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(前記商品名「ビスコート300」)292.6部、イソホロンジイソシアネート106.8部およびp−メトキシフェノール0.4部を仕込み、次いで攪拌下にオクチル酸スズ0.2部を仕込み、系内を75〜80℃まで昇温し、4時間保温し、前記と同様にウレタン化反応の終点確認を行い、アクリル当量が7.4×10−3eq/gであるポリウレタンアクリレートを得た。次いで、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート600部および反応性乳化剤(花王(株)製、商品名「ラテムルPD−450」)60部を加え、40℃に保温しながら、脱イオン水1065部を攪拌下に滴下し、固形分50%、粘度44mPa・s/25℃のエマルジョンを得た。
【0030】
実施例4
実施例1で用いたのと同様のフラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(前記商品名「ビスコート300」)256.6部、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(日本ポリウレタン(株)製、商品名「コロネートHX」)142.8部、p−メトキシフェノール0.4部を仕込み、次いで攪拌下にオクチル酸スズ0.2部を仕込み、系内を75〜80℃まで昇温し、4時間保温し、前記と同様にウレタン化反応の終点確認を行い、アクリル当量が6.4×10−3eq/gであるポリウレタンアクリレートを得た。次いで、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(荒川化学工業(株)製、商品名「ビームセット730」)400部、ポリエチレングリコール#400ジメタクリレート(新中村化学(株)製、商品名「NKエステルジメタクリレート」)200部および反応性乳化剤(花王(株)製、商品名「ラテムルPD−420」)100部を加え、40℃に保温しながら、脱イオン水1100部を攪拌下に滴下し、固形分50%、粘度32mPa・s/25℃のエマルジョンを得た。
【0031】
比較例1
実施例1と同様の方法でポリウレタンアクリレートを得た。次いで本発明の一般式(1)に相当しない下記一般式(2)で示される化合物である旭電化工業(株)製、商品名「アデカリアソープSR−20」50部を加え、30℃に保温しながら、脱イオン水1050部を攪拌下に滴下しエマルジョンを得たが、攪拌を停止したと同時に該エマルジョンに分離が観察された。
【0032】
一般式(2):R−O−CH−CHR−(OCHCH20−OSONH
(式中、Rはアルキル基、RはCH=CH−CH−O−CH−を示す。)
【0033】
比較例2
実施例1と同様の方法でポリウレタンアクリレートを得た。次いで本発明の一般式(1)に相当しない下記一般式(3)で示される化合物である旭電化工業(株)製、商品名「アデカリアソープER−40」(固形分60%)66.7部を加え、30℃に保温しながら、脱イオン水1033.3部を攪拌下に滴下し固形分50%、粘度35mPa・s/25℃のエマルジョンを得た。
【0034】
一般式(3):R−O−CH−CHR−(OCHCH40−OH
(式中、Rはアルキル基、RはCH=CH−CH−O−CH−を示す。)
【0035】
比較例3
実施例1と同様の方法でポリウレタンアクリレートを得た。次いで本発明の一般式(1)に相当しない下記一般式(4)で示される化合物である旭電化工業(株)製、商品名「アデカリアソープER−20」(固形分75%)66.7部を加え、30℃に保温しながら、脱イオン水1033.3部を攪拌下に滴下し固形分50%、粘度41mPa・s/25℃のエマルジョンを得た。
【0036】
一般式(4):R−O−CH−CHR−(OCHCH20−OH
(式中、R7はアルキル基、RはCH=CH−CH−O−CH−を示す。)
【0037】
比較例4
実施例1と同様の方法でポリウレタンアクリレートを得た。次いで本発明の一般式(1)に相当しない下記一般式(5)で示される化合物である第一工業製薬(株)製、商品名「アクアロンKH−05」50部を加え、30℃に保温しながら、脱イオン水1050部を攪拌下に滴下しエマルジョンを得たが、攪拌を停止したと同時に該エマルジョンに分離が観察された。
【0038】
一般式(5):R−CHR10−O−(CHCHO)−SONH
(式中、Rはアルキル基、R10はCH=CH−CH−O−CH−を、nは1以上の整数を示す。)
【0039】
比較例5
実施例1と同様の方法でポリウレタンアクリレートを得た。次いで本発明の一般式(1)に相当しない前記一般式(5)で示される化合物である第一工業製薬(株)製、商品名「アクアロンKH−10」50部を加え、30℃に保温しながら、脱イオン水1050部を攪拌下に滴下しエマルジョンを得たが、攪拌を停止したと同時に該エマルジョンに分離が観察された。
【0040】
比較例6
実施例1と同様の方法でポリウレタンアクリレートを得た。次いで本発明の一般式(1)に相当しない下記一般式(6)で示される化合物である花王(株)製、商品名「ラテムルS−180A」(固形分50%)100部を加え、30℃に保温しながら、脱イオン水1000部を攪拌下に滴下しエマルジョンを得たが、攪拌を停止したと同時に該エマルジョンに分離が観察された。
【0041】
一般式(6):R11OCOCHCHXCOOCHCH(OH)CHOCHCH=CH
(式中、R11はアルキル基、Xは−OSONHを示す。)
【0042】
比較例7
実施例1と同様の方法でポリウレタンアクリレートを得た。次いで本発明の一般式(1)に相当しない下記一般式(7)で示される化合物である花王(株)製、商品名「ラテムルPD−104」(固形分20%)250部を加え、30℃に保温しながら、脱イオン水850部を攪拌下に滴下しエマルジョンを得たが、攪拌を停止したと同時に該エマルジョンに分離が観察された。
【0043】
一般式(7):R12−O―(CHCHR13O)−(CHCHO)−SONH
(式中、R12、R13はアルキル基、mおよびnは1以上の整数を示す。)
【0044】
比較例8
実施例1と同様の方法でポリウレタンアクリレートを得た。次いで本発明の一般式(1)に相当しない下記一般式(8)で示される化合物である日本乳化剤(株)製、商品名「RA−1820」50部を加え、30℃に保温しながら、脱イオン水1050部を攪拌下に滴下しエマルジョンを得たが、攪拌を停止したと同時に該エマルジョンに分離が観察された。
【0045】
一般式(8):R14−(OCHCH20OCO−CH=CH−COOH
(式中、R14はアルキル基を示す。)
【0046】
比較例9
実施例1と同様の方法でウレタンアクリレートを得た。次いで本発明の一般式(1)に相当しない下記一般式(9)で示される化合物である日本乳化剤(株)製、商品名「Antox MS−60」50部を加え、30℃に保温しながら、脱イオン水1050部を攪拌下に滴下し固形分50%、粘度50mPa・s/25℃のエマルジョンを得た。
【0047】
一般式(9):R15CO−(OCHCH10−OPhCHPhO−(CHCHO)10−SONH
(式中、R15はCH=C(CH)−を、Phはフェニレン基を示す。)
【0048】
比較例10
実施例1で用いたと同様のフラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(前記商品名「ビスコート300」)935.8部、イソホロンジイソシアネート46.7部およびp−メトキシフェノール9.7部を仕込み、次いで攪拌下にオクチル酸第一スズ1.5部を仕込み、系内を75〜80℃まで昇温し、3時間保温し、前記と同様にウレタン化反応の終点確認を行い、ポリウレタンアクリレートを得た。次いで、温度計、攪拌機を備えた別のフラスコに、脱イオン水1050部と反応性乳化剤(前記商品名「ラテムルPD−430」)50部を加え、40℃に保温しながら、上記ポリウレタンアクリレート1000部を強攪拌下に30分間で添加し、更に同温度で30分間攪拌を続け、固形分50%、粘度55mPa・s/25℃のエマルジョンを得た。
【0049】
(保存安定性試験)
実施例、比較例で得られたエマルジョンを40℃で所定期間放置した後、エマルジョンの外観を目視観察した。結果を表1に示す。
○:エマルジョン分離なし
×:エマルジョン分離
【0050】
(硬化膜物性の試験)
ワニスの調製:実施例、比較例で得られたエマルジョンをビーカーに100部量りとり、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名「イルガキュア754」)を固形分に対し5%加え、混合、溶解しワニスを調製し、以下の試験を行った。結果を表2に示す。
【0051】
耐傷つき性:各ワニスをガラス板上にバーコーター#9で塗布し、80℃の、80℃の循風乾燥機中で2分間乾燥し、その後、高圧水銀灯80W/cm(1灯)、照射距離10cm、ベルトスピード10m/minの条件で3回照射(照射線量180mJ/cm2)した塗膜を300gのおもりの底に10mm×10mmの範囲に付けたスチールウールで50回擦り、外観を観察し、以下の基準で評価した。
○:変化無し
△:細かいキズ有り
×:大きなキズ有
【0052】
密着性:各ワニスをアクリル板上にバーコーター#9で塗布し、80℃の、80℃の循風乾燥機中で2分間乾燥し、その後、高圧水銀灯80W/cm(1灯)、照射距離10cm、ベルトスピード10m/分の条件で3回照射(照射線量180mJ/cm2)した塗膜をクロスカットし、セロハンテープ剥離試験を行い、試験片の状態を以下の基準で評価した。
○:剥離せず、欠けも生じない
△:欠けがわずかに見られる
×:組成物硬化被膜完全剥離、大部分剥離
【0053】
耐水性:各ワニスをアクリル板上にバーコーター#9で塗布し、80℃の、80℃の循風乾燥機中で2分間乾燥し、その後、高圧水銀灯80W/cm(1灯)、照射距離10cm、ベルトスピード10m/分の条件で3回照射(照射線量180mJ/cm2)した塗膜を50℃の温水中に1週間浸漬した後、外観変化を観察した。
○:変化なし
△:やや白濁
×:白濁
【0054】
【表1】

【0055】
表1中、−とは測定しなかったことを意味する。
【0056】
表1に示すように、一般式(1)に相当しない反応性乳化剤を使用した場合(比較例1〜9参照)は、実施例1〜4と比較して40℃での保存安定性が劣っていることが確認できた。また、一般式(1)に相当する反応性乳化剤を使用しているが転相乳化法ではない方法で乳化分散させた場合(比較例10参照)は、実施例1〜4と比較して40℃での保存安定性が劣っていることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン(メタ)アクリレート(A)と、下記一般式(1):
1−O―(CHCHRO)−(CHCHO)−H(式中、R1は炭素数3〜5のアルケニル基を、Rはメチル基またはエチル基を、mは5〜15の整数を、nは20〜80の整数を示す。)で示され、かつ該HLB値(疎水性親水性バランス値)が11〜17である反応性乳化剤(B)とを転相乳化して調製されたことを特徴とする活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物。
【請求項2】
ポリウレタン(メタ)アクリレート(A)が、有機ポリイソシアネート(a2)と水酸基含有(メタ)アクリレート(a1)との反応生成物である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物。
【請求項3】
ポリウレタン(メタ)アクリレート(A)の(メタ)アクリル当量が2×10−3〜9×10−3eq/gである請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物。
【請求項4】
反応性乳化剤(B)の含有量がポリウレタン(メタ)アクリレート(A)100重量に対し0.1〜20重量部である請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物。
【請求項5】
ポリウレタン(メタ)アクリレート(A)と反応性乳化剤(B)との合計含有量が当該組成物中で40〜70重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性水中油型エマルジョン組成物。


【公開番号】特開2007−191530(P2007−191530A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9508(P2006−9508)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】