説明

活性光線硬化型インクジェットインク組成物

【課題】画像耐候性に優れる印字物を作製することのできる活性光線硬化型インクジェットインク組成物を提供する。
【解決手段】オキセタン環を有する化合物と、エポキシ基を有する化合物と、光重合開始剤と、芳香族系化合物とを、含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性光線硬化型インクジェットインク組成物に関し、さらに詳しくは、画像耐候性に優れる印字物を作製することのできる活性光線硬化型インクジェットインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式は簡便・安価に画像を作製出来るため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。特に、微細なドットを出射、制御する記録装置や、色再現域、耐久性、出射適性等を改善したインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢などを飛躍的に向上させた専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。今日のインクジェット記録方式の画質向上は、記録装置、インク、専用紙の全てが揃って初めて達成されている。
【0003】
しかしながら、専用紙を必要とするインクジェットシステムは、記録媒体が制限されること、記録媒体のコストアップが問題となる。そこで、専用紙と異なる被転写媒体へインクジェット方式により記録する試みが多数なされている。具体的には、室温で固形のワックスインクを用いる相変化インクジェット方式、速乾性の有機溶剤を主体としたインクを用いるソルベント系インクジェット方式や、記録後紫外線(UV)光により架橋させるUVインクジェット方式などである。
【0004】
UVインクジェット方式は、ソルベント系インクジェット方式に比べ比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い記録媒体への記録が出来る点で、近年注目されつつあり、紫外線硬化型インクジェットインクが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
中でも、カチオン重合性化合物を用いたインクは、酸素阻害作用を受けないのでエネルギー照度の低い光源であっても硬化させることが出来るという利点があるが(例えば、特許文献2参照。)、得られた画像の耐候性が劣るという問題がある。
【特許文献1】特表2000−504778号公報
【特許文献2】特開2002−188025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、画像耐候性に優れる印字物を作製することのできる活性光線硬化型インクジェットインク組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0008】
1.オキセタン環を有する化合物と、エポキシ基を有する化合物と、光重合開始剤と、芳香族系化合物とを、含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0009】
2.更に顔料を含有することを特徴とする前記1に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0010】
3.前記顔料がC.I Pigment Yellow−120、138、150、151、154、180から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記2に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0011】
4.前記オキセタン環を有する化合物を30〜95質量%、前記エポキシ基を有する化合物を5〜70質量%含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0012】
5.前記エポキシ基を有する化合物が、少なくとも1種の脂環式エポキシ化合物であることを特徴とする前記前記1〜4のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0013】
6.前記エポキシ基を有する化合物が、少なくとも1種の2官能性エポキシ化合物であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0014】
7.前記2官能性エポキシ化合物の含有量が10〜30質量%であることを特徴とする前記6に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0015】
8.前記芳香族系化合物が芳香族エーテル化合物であることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0016】
9.前記芳香族エーテル化合物を5〜40質量%含有することを特徴とする前記8に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0017】
10.前記芳香族エーテル化合物を10〜20質量%含有することを特徴とする前記8に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0018】
11.前記芳香族エーテル化合物が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする前記8〜10のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0019】
一般式(1)
Ar(−O−R)
(式中、Arは置換基を有していてもよい芳香族環、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、グリシジル基、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル基または3−エチル−3−オキセタニルメチル基を表す。nは1〜10の整数を表す。nが2以上の場合、Rは全て同一でも、互いに異なっていてもよい。)
12.前記芳香族エーテル化合物が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする前記8〜10のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0020】
一般式(2)
Ar(−CH−O−R)
(式中、Ar及びRは、前記一般式(1)のAr及びRと同義の基を表し、nは前記一般式(1)のnと同義の整数を表す。nが2以上の場合、Rは全て同一でも、互いに異なっていてもよい。)
13.前記芳香族系化合物が芳香族系ポリマーであることを特徴とする前記1〜12のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0021】
14.前記芳香族系ポリマーの含有量が0.5〜10質量%であることを特徴とする前記13に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0022】
15.前記芳香族系ポリマーの含有量が1〜5質量%であることを特徴とする前記13に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0023】
16.前記芳香族系ポリマーが下記一般式(3)または(4)で表される構造単位を有することを特徴とする前記13〜15のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【0024】
【化1】

【0025】
(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、グリシジル基、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル基または3−エチル−3−オキセタニルメチル基を表す。)
17.25℃における粘度が7〜50mPa・sであることを特徴とする前記1〜16のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、画像耐候性に優れる印字物を作製することのできる活性光線硬化型インクジェットインク組成物を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明を更に詳しく説明する。
【0028】
本発明に用いられる芳香族エーテル化合物としては、市販のあらゆるものを用いることができるが、一般式(1)または(2)で表される構造を有するものを用いることが好ましい。
【0029】
一般式(1)または(2)において、Arは置換基を有していてもよい芳香族環、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、グリシジル基、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル基または3−エチル−3−オキセタニルメチル基を表す。nは1〜10の整数を表す。nが2以上の場合、Rは全て同一でも、互いに異なっていてもよい。
【0030】
一般式(1)または(2)において、Arは置換基を有していてもよいベンゼン環またはナフタレン環、Rは炭素数1〜3のアルキル基、グリシジル基、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル基、3−エチル−3−オキセタニルメチル基であることが好ましい。nは1〜4であることが好ましい。また、一般式(1)において、Rがメチル基またはエチル基である場合は、nは2以上であることが好ましい。
【0031】
本発明において、活性光線硬化型インクジェットインク組成物(単に、インク組成物とも言う)中の芳香族エーテル化合物の含有量は、5〜40質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。芳香族エーテル化合物の含有量が1質量%未満だと効果が不十分であり、40質量%を超えると画像が脆くなって耐候性が逆に劣化したり、インクの粘度が高くなりすぎて実用上問題になることがある。
【0032】
以下に本発明に用いられる芳香族化合物を例示するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0033】
【化2】

【0034】
【化3】

【0035】
【化4】

【0036】
本発明に用いられる芳香族系ポリマーとしては、市販のあらゆるものを用いることができるが、一般式(3)または(4)で表される構造単位を有するものを用いることが好ましい。
【0037】
一般式(3)または(4)において、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、グリシジル基、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル基、3−エチル−3−オキセタニルメチル基であることが好ましい。
【0038】
これらの具体例として、ポリパラビニルフェノール樹脂およびその共重合体、フェノール/ホルムアルデヒド樹脂、フェノール/ジシクロペンタジエン樹脂等が挙げられる。また、それらのフェノール性水酸基の水素原子をグリシジル基、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル基、3−エチル−3−オキセタニルメチル基で置換したものも好適に使用できる。
【0039】
本発明において、インク組成物中の芳香族系ポリマーの含有量は、0.5〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。芳香族系ポリマーの含有量が0.5質量%未満だと効果が不十分であり、10質量%を超えると画像が脆くなって耐候性が逆に劣化したり、インクの粘度が高くなりすぎて実用上問題になることがある。
【0040】
本発明のインク組成物は、光重合性化合物として、少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を含有する。
【0041】
本発明で用いることのできるオキセタン環を有する化合物としては、特開2001−220526号、同2001−310937号に紹介されているような公知のあらゆるオキセタン化合物を使用できる。また、オキセタン環を1個含有する単官能オキセタン化合物とオキセタン環を2個以上含有する多官能オキセタン化合物とを併用することが、硬化後の膜強度と記録材料への密着性を向上させる上で更に好ましい。ただし、オキセタン環を5個以上有する化合物を使用すると、インク組成物の粘度が高くなるため、取扱いが困難になったり、またインク組成物のガラス転移温度が高くなるため、得られる硬化物の粘着性が十分でなくなってしまう。本発明で使用するオキセタン環を有する化合物は、オキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。
【0042】
本発明において、インク組成物中のオキセタン環を有する化合物の含有量は、30〜95質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましい。
【0043】
また、本発明のインク組成物は、エポキシ基を有する化合物を含有する。
【0044】
エポキシ化合物としては、以下の脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシド等が挙げられる。
【0045】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロヘキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
【0046】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0047】
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、脂環式エポキシドが好ましい。また、本発明のインク組成物は、画像の耐候性を向上させるために、2官能性のエポキシ化合物を10〜30質量%含有することが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0048】
また、本発明においてはAMES及び感作性などの安全性の観点から、オキシラン基を有するエポキシ化合物として、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドを用いることができる。
【0049】
エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセライドにエポキシ基を導入したものであれば、特に制限はなく用いられる。
【0050】
エポキシ化脂肪酸エステルとしては、オレイン酸エステルをエポキシ化して製造されたもので、エポキシステアリン酸メチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等が用いられる。また、エポキシ化脂肪酸グリセライドは、同様に、大豆油、アマニ油、ヒマシ油等をエポキシ化して製造されたもので、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ヒマシ油等が用いられる。
【0051】
更に、本発明においてはあらゆる公知のビニルエーテル化合物を用いてもよい。
【0052】
ビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0053】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。ビニルエーテル化合物はインク中に0〜40質量%の範囲で含有させることができる。
【0054】
本発明のインク組成物においては、光重合性化合物として、オキセタン環を有する化合物を30〜95質量%、オキシラン基を有する化合物を5〜70質量%含有させることが、耐候性を向上させるためには好ましい。
【0055】
本発明のインク組成物には、公知のあらゆる光酸発生剤(光重合開始剤)を用いることができる。
【0056】
光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。
【0057】
本発明で用いることのできる光酸発生剤について説明する。
【0058】
光酸発生剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。
【0059】
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C、PF、AsF、SbF、CFSO塩を挙げることができる。
【0060】
本発明で用いることのできるオニウム化合物の具体的な例を、以下に示す。
【0061】
【化5】

【0062】
第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができ、その具体的な化合物を、以下に例示する。
【0063】
【化6】

【0064】
第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができ、以下にその具体的な化合物を例示する。
【0065】
【化7】

【0066】
第4に、鉄アレン錯体を挙げることができる。
【0067】
【化8】

【0068】
本発明の活性光線硬化型インクは、上述の活性光線硬化型組成物と共に、各種公知の顔料を含有させることができる。
【0069】
本発明で好ましく用いることのできる顔料を、以下に列挙する。
C.I Pigment Yellow−1、3、12、13、14、17、81、83、87、95、109、42、120、138、150、151、154、180
C.I Pigment Orange−16、36、38、
C.I Pigment Red−5、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、122、144、146、185、101、
C.I Pigment Violet−19、23、
C.I Pigment Blue−15:1、15:3、15:4、18、60、27、29、
C.I Pigment Green−7、36、
C.I Pigment White−6、18、21、
C.I Pigment Black−7。
【0070】
本発明においては、Yellow顔料、特にC.I Pigment Yellow−120、138、150、151、154、180を用いた際により効果が発揮される。
【0071】
また、本発明において、プラスチックフィルムのような透明基材での色の隠蔽性を上げる為に、白インクを用いることが好ましい。特に、軟包装印刷、ラベル印刷においては、白インクを用いることが好ましいが、吐出量が多くなるため、前述した吐出安定性、記録材料のカール・しわの発生の観点から、自ずと使用量に関しては制限がある。
【0072】
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。また、顔料の分散を行う際に、分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、高分子分散剤を用いることが好ましく、高分子分散剤としてはルーブリゾール社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のアジスパーシリーズが挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し1〜50質量部添加することが好ましい。分散媒体は、溶剤または重合性化合物を用いて行うが、本発明のインク組成物では、インク着弾直後に反応・硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤では無く重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0073】
顔料の分散は、顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.5μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3〜10μm、好ましくは0.3〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を適宜設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。
【0074】
本発明のインク組成物においては、色材濃度としては、インク全体の1〜10質量%であることが好ましい。
【0075】
本発明のインク組成物には、上記説明した以外に様々な添加剤を用いることができる。例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。また、保存安定性を改良する目的で、公知のあらゆる塩基性化合物を用いることができるが、代表的なものとして、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミンなどの塩基性有機化合物などがあげられる。また、ラジカル重合性モノマーと開始剤を組み合わせ、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも可能である。
【0076】
本発明のインク組成物においては、25℃における粘度が7〜50mPa・sであることが、硬化環境(温度・湿度)に関係なく吐出が安定し、良好な硬化性を得るために好ましい。
【実施例】
【0077】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0078】
実施例1
《顔料分散液1の調製》
以下の方法に従って、顔料を含む顔料分散液1を調製した。
【0079】
下記の2種の化合物をステンレスビーカーに入れ、60℃ホットプレート上で加熱しながら1時間加熱、撹拌して溶解した。
【0080】
アジスパーPB822(味の素ファインテクノ社製、分散剤) 9.5部
OXT−221(東亞合成社製、オキセタン化合物) 71.5部
上記溶液を室温まで冷却した後、これに下記の各顔料をそれぞれ19部加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーで8時間を要して分散処理した後、ジルコニアビーズを除去した。
【0081】
顔料1:Pigment Yellow 150(LANXESS社製、E4GN−GT)
(顔料分散液2〜7の調製)
上記顔料分散液1の調製において、顔料1を下記顔料2〜6に変更した以外は、同様の方法で顔料分散液2〜6を調製した。
【0082】
顔料2:Pigment Yellow 120
顔料3:Pigment Yellow 138
顔料4:Pigment Yellow 151
顔料5:Pigment Yellow 154
顔料6:Pigment Yellow 180
顔料7:Pigment Yellow 12
《活性光線硬化型インクジェットインク組成物の調製》
上記調製した顔料分散液を用い、表1〜表4に記載の各構成で、それぞれの活性光線硬化型インクジェットインク組成物(以下表において、インク組成物と言う)No.1〜60及び比較例1、2を調製した。なお、各活性光線硬化型インクジェットインク組成物は調製後、ADVANTEC社製のテフロン(登録商標)3μmメンブランフィルターで濾過を行った。尚、表1〜4における数値は質量部を表す。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
【表4】

【0087】
表1〜表4で使用した化合物は、以下の通り。
【0088】
〔カチオン重合性化合物〕
(エポキシ化合物)
2021P:セロキサイド2021P(ダイセル化学社製)
(オキセタン化合物)
OXT−212(東亞合成社製)
OXT−221(東亞合成社製)
〔光酸発生剤〕
UVI6992:ダウ・ケミカル社製 プロピオンカーボネート50%液
〔増感剤〕
DEA:川崎化成社製 9,10−ジエトキシアントラセン
〔添加剤〕
マルカリンカーM S1P:ポリパラビニルフェノール Mw=2000 (丸善石油化学社製)
マルカリンカーM S2P:ポリパラビニルフェノール Mw=5000 (丸善石油化学社製)
マルカリンカーCMM:パラビニルフェノール/メタクリル酸メチル共重合体(丸善石油化学社製)
マルカリンカーCST:パラビニルフェノール/スチレン共重合体(丸善石油化学社製)
マルカリンカーCHM:パラビニルフェノール/メタクリル酸エチル共重合体(丸善石油化学社製)
DPP−6085:フェノール/ジシクロペンタジエン樹脂(新日本石油社製)
DPP−6095H:フェノール/ジシクロペンタジエン樹脂(新日本石油社製)
DPP−6115H:フェノール/ジシクロペンタジエン樹脂(新日本石油社製)
フェノエートYP−50:ビスフェノールA/エピクロルヒドリン樹脂(東都化成社製)
スミライトレジンPR−5064:フェノール/ホルムアルデヒド樹脂(住友ベークライト社製)
ハイマーST−95:ポリスチレン(三洋化成工業社製)
ARUFON UP−1150:ポリスチレン(東亞合成社製)
日石ネオポリマー120:芳香族系石油樹脂(新日本石油社製)
ARUFON UP−1021:ノンスチレン型アクリル樹脂(東亞合成社製)
評価方法
《硬化物の耐候性評価》
「評価試料の作製」
得られた各活性光線硬化型インクジェットインク組成物をPVCフィルム上に膜厚が9μmになるように塗布した後、熱陰極管(ニッポ製、特注品)200W電源を用い、180mW/cmの光量を照射し、硬化物を得た。
【0089】
「硬化物の耐候性試験」
上記方法で作製した試料を、Xeウェザーメーターを用いて耐候性試験を行った。
【0090】
※耐候性試験条件
1:ランプ照射(照度=52W/m):60℃−55%RH環境で8時間
2:ランプ照射(照度=52W/m)+シャワー:50℃−95%RH環境で10分間
3:ランプ照射無し:50℃−95%RH環境で50分間
1+(2+3)×4を1サイクルとして、500時間まで繰り返す。
【0091】
評価基準は、以下の通り。
【0092】
(インク組成物No.1〜52、比較例1、2)
耐候性試験前後の濃度を測定し、比較した。
【0093】
AA:濃度残存率95%以上
A:濃度残存率90%以上95%未満
B:濃度残存率80%以上90%未満
C:濃度残存率70%以上80%未満
D:濃度残存率60%以上70%未満
E:濃度残存率60%未満
(インク組成物No.53〜60)
耐候性試験前後の硬化物の質量を測定し、比較した。
【0094】
AA:質量残存率95%以上
A:質量残存率90%以上95%未満
B:質量残存率80%以上90%未満
C:質量残存率70%以上80%未満
D:質量残存率60%以上70%未満
E:質量残存率60%未満
評価結果を表5〜8に示す。
【0095】
【表5】

【0096】
表5から、本発明の芳香族系エーテル化合物を添加した活性光線硬化型インクジェットインク組成物の硬化物は、耐候性が改良されていることが分かる。
【0097】
【表6】

【0098】
表6から、本発明の芳香族系エーテル化合物を10〜20質量%含有させた場合より効果が高いことが分かる。
【0099】
【表7】

【0100】
表7から、本発明の芳香族系ポリマーを添加した活性光線硬化型インクジェットインク組成物の硬化物は、耐候性が改良されていることが分かる。
【0101】
【表8】

【0102】
表8から、顔料としてC.I Pigment Yellow−120、138、150、151、154、180を用いた場合に、本発明の効果がより発揮されることが分かる。
【0103】
実施例2
《活性光線硬化型インクジェットインク組成物の調製》
表9に示す組成を有する活性光線硬化型インクジェットインク組成物No.61〜66を作製した。
【0104】
まず、各成分の内、OXT−221、2021P、OXT−212およびアジスパーPB822をステンレスビーカーに入れ、60℃ホットプレート上で加熱しながら1時間加熱、撹拌して溶解した。
【0105】
次に、上記溶液を室温まで冷却した後、これに残りの成分を加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーで8時間を要して分散処理した後、ジルコニアビーズを除去した。なお、各活性光線硬化型インクジェットインク組成物は調製後、ADVANTEC社製のテフロン(登録商標)3μmメンブランフィルターで濾過を行った。
【0106】
得られた各活性光線硬化型インクジェットインク組成物を実施例1と同様の方法で耐候性試験を行い結果を表9に示す。
【0107】
【表9】

【0108】
表9から、エポキシ化合物の含有量が5〜70質量%の場合に、本発明の効果がより発揮されていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキセタン環を有する化合物と、エポキシ基を有する化合物と、光重合開始剤と、芳香族系化合物とを、含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項2】
更に顔料を含有することを特徴とする請求項1に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項3】
前記顔料がC.I Pigment Yellow−120、138、150、151、154、180から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項4】
前記オキセタン環を有する化合物を30〜95質量%、前記エポキシ基を有する化合物を5〜70質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項5】
前記エポキシ基を有する化合物が、少なくとも1種の脂環式エポキシ化合物であることを特徴とする請求項請求項1〜4のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項6】
前記エポキシ基を有する化合物が、少なくとも1種の2官能性エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項7】
前記2官能性エポキシ化合物の含有量が10〜30質量%であることを特徴とする請求項6に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項8】
前記芳香族系化合物が芳香族エーテル化合物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項9】
前記芳香族エーテル化合物を5〜40質量%含有することを特徴とする請求項8に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項10】
前記芳香族エーテル化合物を10〜20質量%含有することを特徴とする請求項8に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項11】
前記芳香族エーテル化合物が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
一般式(1)
Ar(−O−R)
(式中、Arは置換基を有していてもよい芳香族環、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、グリシジル基、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル基または3−エチル−3−オキセタニルメチル基を表す。nは1〜10の整数を表す。nが2以上の場合、Rは全て同一でも、互いに異なっていてもよい。)
【請求項12】
前記芳香族エーテル化合物が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
一般式(2)
Ar(−CH−O−R)
(式中、Ar及びRは、前記一般式(1)のAr及びRと同義の基を表し、nは前記一般式(1)のnと同義の整数を表す。nが2以上の場合、Rは全て同一でも、互いに異なっていてもよい。)
【請求項13】
前記芳香族系化合物が芳香族系ポリマーであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項14】
前記芳香族系ポリマーの含有量が0.5〜10質量%であることを特徴とする請求項13に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項15】
前記芳香族系ポリマーの含有量が1〜5質量%であることを特徴とする請求項13に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項16】
前記芳香族系ポリマーが下記一般式(3)または(4)で表される構造単位を有することを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。
【化1】

(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、グリシジル基、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル基または3−エチル−3−オキセタニルメチル基を表す。)
【請求項17】
25℃における粘度が7〜50mPa・sであることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインク組成物。

【公開番号】特開2010−13596(P2010−13596A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176745(P2008−176745)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】