説明

活性物質を肺送達するための多糖

低分子量のヘパリン、および治療用、予防用または診断用の物質を含む、治療用、予防用または診断用の物質を肺へ送達するための製剤を提供する。


【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
優先権の主張
本願は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる2004年6月18日出願の米国特許出願第60/580,869号、および2003年10月1日出願の米国特許出願第60/508,062号に基づき、35USC§119(e)の下で優先権を主張するものである。
【0002】
発明の概要
本発明は、多糖、特にヘパリンおよび低分子ヘパリン(LMWH)のようなHLHGAGが、活性物質のサイズに無関係に、治療および予防に有効なレベルで肺組織を通して活性物質を送達するという発見に基づく。例えば上肺の正常な生理機能およびホメオスタシスのような上肺の活性に関与する多糖に伴う糖構造を用いて、肺組織を通した活性物質の送達を増強することができることが分かった。
【0003】
したがって、1つの局面では本発明は、本明細書に説明されるように修飾された、ヘパリン(例えば、LMWH)のような多糖(例えば、HLGAG)の調製品、例えば精製調製品に関する。別の態様では、多糖は肺の活性、例えば肺の正常な生理機能および/またはホメオスタシス(例えば、水和、上皮の完全性、および密着結合のバリア機能のうちの1つまたは複数)に関与する多糖またはその一部である。
【0004】
好ましい態様では、多糖はLMWHであり、エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン(reviparin)、チンザパリン(tinzaparin)、ナドロパリン、セルトパリン(certoparin)、アルデパリン(ardeparin)、およびパルナパリン(parnaparin)からなる群より選択される。
【0005】
1つの態様では、多糖は約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20の二糖からなる。多糖が六糖またはそれ以上であることが特に好ましく、八糖またはそれ以上であることがさらに好ましい。
【0006】
1つの態様では、多糖は、標準品(例えば、市販の多糖または修飾多糖が由来した多糖)、例えば、修飾前の多糖と比較して、そのサイズが低下するように修飾される。多糖のサイズを、例えば、標準品と比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%またはそれ以上低下させることができる。1つの態様では、提供される多糖のサイズを、例えば、少なくとも1つの物質(例えば、多糖の化学的特徴に基づいて選択される物質)を用いて多糖を消化することによって、低下させることができる。例えば、物質は、酵素(例えば、化学的特徴に基づいて多糖の既知の位置において多糖を切断できる酵素)、または化学薬品(例えば、化学的特徴に基づいて多糖の既知の位置において多糖を切断できる化学薬品)、または選択的に官能基を修飾する化学薬品、またはその組み合わせであってもよい。使用可能な酵素の例には、ヘパリン分解酵素、例えば、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼのようなヘパリンリアーゼ、ならびにそれらの機能的に活性な断片および変種が含まれ得る。使用可能な化学薬品の例には、H2O2またはCu+およびH2O2を用いた酸化的脱重合、硝酸イソアミルまたは亜硝酸による脱アミノ化切断、アルカリ処理またはヘパリナーゼによるヘパリンのベンジルエステルを用いたβ除去切断が含まれ得る。選択的な官能基の変化のための化学薬品の例には、NaOHのような塩基を用いた処理による2-O脱スルホンおよび凍結乾燥;ピリジンおよびDMSOを用いたN-脱スルホン;ピリジンおよびDMSO/ジオキサン/メタノールを用いたN+O脱スルホン;ピリジンおよびNMP/H2Oを用いた6-O脱スルホン;SO3/トリメチルアミン/H2Oを用いた3-O脱スルホン;ならびに当技術分野で公知の他の手法が含まれる。
【0007】
別の態様では、標準品(例えば、市販の多糖または修飾多糖が由来した多糖)と比較して、多糖の電荷が修飾(例えば、増加または減少)するように、多糖は修飾される。多糖の電荷を減少させることは、本明細書において電荷を「中和する」とも呼ばれる。いくつかの態様では、多糖の電荷が中和されると、多糖の正味の負または正の電荷を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%低下させることができる。別の態様では、多糖の電荷が中和されると、正味の負または正の電荷が0となるように中和され得る。多糖は、例えば、少なくとも1つの物質(例えば、多糖の化学的特徴に基づいて選択された物質)を用いてポリペプチドを消化することによって、中和することができる。例えば、物質は、酵素(例えば、化学的特徴に基づいて多糖の既知の位置において多糖を切断できる酵素)、または化学薬品(例えば、化学的特徴に基づいて多糖の既知の位置において多糖を切断できる化学薬品、および/または特定の官能基を修飾できる化学薬品)、またはその組み合わせであってもよい。使用可能な酵素の例には、ヘパリン分解酵素、例えば、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼのようなヘパリンリアーゼ、ならびにそれらの機能的に活性な断片および変種が含まれ得る。使用可能な化学薬品の例には、H2O2またはCu+およびH2O2を用いた酸化的脱重合、硝酸イソアミルまたは亜硝酸による脱アミノ化切断、アルカリ処理またはヘパリナーゼによるヘパリンのベンジルエステルを用いたβ除去切断が含まれ得る。他の例には選択的な官能基の変化のための化学薬品が含まれる:NaOHのような塩基を用いた処理による2-O脱スルホンおよび凍結乾燥;ピリジンおよびDMSOを用いたN-脱スルホン;ピリジンおよびDMSO/ジオキサン/メタノールを用いたN+O脱スルホン;ピリジンおよびNMP/H2Oを用いた6-O脱スルホン;SO3/トリメチルアミン/H2Oを用いた3-O脱スルホン;ならびに当技術分野で公知の他の手法である。
【0008】
他の態様では、多糖の電荷が中和される場合には、多糖に電荷中和剤、例えば、一価または二価イオンのような対イオン(例えば、バリウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、マグネシウム、亜鉛)、遷移金属(例えば、鉄、ニッケル、および銅)、および/または他の中和化合物(例えば、有機低分子、スペルミン、スペルミジン、低分子プロタミン、塩基性ペプチド)を接触させることによって中和できる。
【0009】
別の態様では、例えば電荷密度を上昇させることによって、多糖の正味の電荷が増加する。電荷密度を、例えば、1つもしくは複数の硫酸基、および/またはリン酸、酢酸等のような他の荷電した種の付加によって、例えば1つまたは複数の低荷電ドメインを除去することによって上昇させることができる。いくつかの態様では、硫酸基および/または他の荷電した種を、1つまたは複数の酵素的、化学的、または物理的な手法で付加することができる。
【0010】
いくつかの態様では、多糖が由来する多糖の化学的特徴が決定され、多糖はその化学的特徴に基づいて修飾される。多糖の化学的特徴を、例えば、多糖の1つまたは複数の治療活性を低下させるために多糖を修飾する、多糖のサイズを修飾する、および/または多糖の電荷を修飾するためなどに使用することができる。他の態様では、多糖の化学的特徴が決定できる。多糖の化学的特徴に関する情報を用いて、例えば、他の多糖がその多糖と類似した送達特性を持つ可能性が高いかどうかを決定する、または別の多糖がその多糖と類似した送達特性を持つ可能性が低いかを決定することができる。いくつかの態様では、多糖の化学的特徴は、肺の活性、例えば、肺の正常な生理機能および/またはホメオスタシスに関与する多糖の化学的特徴と比較される。本発明は、本多糖と肺の活性に関与する多糖の化学的性質の類似性および/または相違に基づいて多糖を修飾する段階を含んでもよい。
【0011】
好ましい態様では、多糖の少なくとも1つの治療活性が、標準と比較して少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれ以上低下するように、多糖は修飾される。いくつかの態様では、標準は市販の多糖の治療活性のレベル、または修飾前の多糖の治療活性のレベルである。
【0012】
いくつかの態様では、多糖は、活性物質(例えば、治療用、診断用または予防用の物質)に連結されている。活性物質は、治療または予防用のポリペプチド、核酸、低分子、脂質/糖脂質等を含んでもよい。1つの態様では、活性物質は、インスリン、プロインスリン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、α-1プロテイナーゼ阻害剤、アルカリホスファターゼ、アンジオジェニン、嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ、フィブリノーゲン、グルコセレブロシダーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、ヒト血清アルブミン、ミエリン塩基性蛋白質、可溶性CD4、ラクトフェリン、ライソザイム、ラクトアルブミン、エリスロポエチン、組織プラスミノーゲン活性化因子、アンチトロンビンIII、プロラクチン、およびα1-アンチトリプシンからなる群より選択される治療用ポリペプチドである。治療または予防用のペプチドは、そのようなポリペプチドの活性誘導体または断片でも良い。活性物質は、副甲状腺ホルモンならびにその誘導体および断片、エリスロポエチン、エポエチンβ、遺伝子活性化エリスロポエチン、第2世代EPO、新規赤血球形成刺激蛋白質、インスリンリスプロ、インスリン(ウシ)、インスリン、インスリンアスパルト、インスリンアナログ、カルシトニン、セラシン(theraccine)、ベカプレルミン(becaplermin)(組換えヒト血小板由来成長因子-BB)、トラフェルミン(trafermin)、ヒト成長ホルモン放出因子、BMP-7、PEGアスパラギナーゼ、ドルナーゼα、アルグルセラーゼ(alglucerase)、アガルシダーゼβ、ドルナーゼα、アガルシダーゼα、ストレプトキナーゼ、テネテプラーゼ(teneteplase)、レテプラーゼ(reteplase)、アルテプラーゼ、パミテプラーゼ(pamiteplase)、Rh因子VIII、Rh FVIIa、因子IX(ヒト)、因子IX(複合体)、HGH、ソマトレム/ソマトロピン、抗CD33-カリケアマイシン(calicheamicin)結合体、エドレコロマブ(edrecolomab)、リタキスマブ(rituxumab)、ダクリズマブ、トラスツズマブ、スレソマブ(sulesomab)、アブシキシマブ、インフリキシマブ、ムロモナブ-CD3、パリビズマブ(palivizumab)、アレムツズマブ、バシリキシマブ、オプレルベキン(oprelvekin)、ゲムツズマブオゾガミシン、イブリツモマブチウキセタン、スレソマブ、パリビズマブ、インターロイキン-2、セルモロイキン(celmoleukin)(rIL-2)、インターフェロンアルファコン-1(interferon alphacon-1)、インターフェロンα、インターフェロンα+リバビリン、ペグインターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα3n、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ、インターフェロンβ1b、インターフェロンγ、インターフェロンγ-1b、フィルグラスチム、サルグラモスチム(sargramostim)、レノグラスチム、モルグラモスチム(molgramostim)、ミリモスチム(mirimostim)、ナルトグラスチム、オプレルベキン、ペプチドチロシン-チロシン(PYY)、アポリポ蛋白質A-IV、レプチン、メラノコルチン、アミリン、オレキシン、アディポネクチン、ならびにグレリンのうちの1つまたは複数であってもよいが、これらに限定されない。1つの態様では、活性物質は活性ポリペプチド、例えば、治療用または予防用のポリペプチドであり、ポリペプチドは150 kDa未満、より好ましくは100 kDa未満、およびより好ましくは50 kDa未満の分子量を有する。1つの態様では、活性化剤は活性ポリペプチド、例えば、治療用または予防用のポリペプチドであり、ポリペプチドは約500 Da〜5 kDa、約5 kDa〜10 kDa、約10 kDa〜30 kDa、約18 kDa〜35 kDa、約30 kDa〜50 kDa、約50 kDa〜100 kDa、約100 kDa〜150 kDaの分子量を有する。1つの態様では、活性ポリペプチドはインスリンまたはその活性断片もしくは誘導体である。別の態様では、活性ポリペプチドはヒト成長ホルモンまたはその活性断片もしくは誘導体である。さらに別の態様では、活性ポリペプチドはインターフェロンである。
【0013】
1つの態様では、多糖は不活性物質に連結されている。不活性物質の例には、生物学的プローブまたは画像化用の造影剤が含まれる。
【0014】
別の態様では、活性物質は、低分子薬物、例えば、治療用、診断用もしくは予防用に現在入手可能な低分子薬物、または開発中の薬物であってもよい。いくつかの態様では、活性物質は製剤中の1つまたは複数の多糖に連結される。例えば、低分子薬物および蛋白質ベースの薬物は、EDC、CNBH4/DMSO/酢酸等のような既知の化学薬品を介して、送達用の多糖に連結されても良い。
【0015】
別の局面では、本発明は治療用、診断用または予防用の物質の、好ましくは肺送達用の製剤に関する。製剤は、多糖、例えば、本明細書に記述される多糖、および活性物質、例えば、治療用、診断用または予防用の物質を含む。好ましい多糖は、例えば、ヘパリンまたは低分子ヘパリンのようなHLGAGである。好ましい態様では、多糖はLMWHであり、エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、およびパルナパリンからなる群より選択される。
【0016】
治療用および予防用の物質には、治療用または予防用のポリペプチド、核酸、低分子、脂質/糖脂質糖が含まれる。1つの態様では、活性物質は、インスリン、プロインスリン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、α-1プロテイナーゼ阻害剤、アルカリホスファターゼ、アンジオジェニン、嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ、フィブリノーゲン、グルコセレブロシダーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、ヒト血清アルブミン、ミエリン塩基性蛋白質、可溶性CD4、ラクトフェリン、ライソザイム、ラクトアルブミン、エリスロポエチン、組織プラスミノーゲン活性化因子、アンチトロンビンIII、プロラクチン、およびα1-アンチトリプシンからなる群より選択される治療用ポリペプチドである。別の態様では、活性物質は副甲状腺ホルモンならびにその誘導体および断片、エリスロポエチン、エポエチンβ、遺伝子活性化エリスロポエチン、エポエチンβ、第2世代EPO、エポエチンβ、新規赤血球形成刺激蛋白質、インスリンリスプロ、インスリン(ウシ)、インスリン、インスリンアスパルト、インスリンアナログ、カルシトニン、セラシン、ベカプレルミン(組換えヒト血小板由来成長因子-BB)、トラフェルミン、ヒト成長ホルモン放出因子、BMP-7、PEGアスパラギナーゼ、ドルナーゼα、アルグルセラーゼ、アガルシダーゼβ、ドルナーゼα、アガルシダーゼα、ストレプトキナーゼ、テネテプラーゼ、レテプラーゼ、アルテプラーゼ、パミテプラーゼ、Rh因子VIII、Rh FVIIa、因子IX(ヒト)、因子IX(複合体)、HGH、ソマトレム/ソマトロピン、抗CD33-カリケアマイシン結合体、エドレコロマブ、リタキスマブ、トラスツズマブ、ダクリズマブ、スレソマブ、アブシキシマブ、インフリキシマブ、ムロモナブ-CD3、パリビズマブ、アレムツズマブ、バシリキシマブ、オプレルベキン、ゲムツズマブオゾガミシン、イブリツモマブチウキセタン、スレソマブ、パリビズマブ、インターロイキン-2、セルモロイキン(rIL-2)、インターフェロンアルファコン-1、インターフェロンα、インターフェロンα+リバビリン、PEGインターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα3n、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ、インターフェロンβ1b、インターフェロンγ、インターフェロンγ-1b、フィルグラスチム、レノグラスチム、サルグラモスチム、モルグラモスチム、ミリモスチム、ナルトグラスチム、オプレルベキン、ペプチドチロシン-チロシン(PYY)、アポリポ蛋白質A-IV、レプチン、メラノコルチン、アミリン、オレキシン、アディポネクチン、ならびにグレリンのうちの1つまたは複数を含んでもよいが、これらに限定されない。「アディポカイン(adipokine)」と総称される他のペプチドは、満腹感の調節に関与しており、これにはペプチドチロシン-チロシン(PYY)、アポリポ蛋白質A-IV、レプチン、メラノコルチン、アミリン、オレキシン、アディポネクチンおよびグレリンが含まれる。治療用または予防用のポリペプチドは、そのようなポリペプチドの活性な誘導体または断片で良い。1つの態様では、活性物質は活性ポリペプチド、例えば、治療用または予防用のポリペプチドであり、ポリペプチドは150 kDa未満、より好ましくは100 kDa未満、およびより好ましくは50 kDa未満の分子量を有する。1つの態様では、活性化剤は活性ポリペプチド、例えば、治療用または予防用のポリペプチドであり、ポリペプチドは約500 Da〜5 kDa、約5 kDa〜10 kDa、約10 kDa〜30 kDa、約18 kDa〜35 kDa、約30 kDa〜50 kDa、約50 kDa〜100 kDa、約100 kDa〜150 kDaの分子量を有する。1つの態様では、活性ポリペプチドはインスリンまたはその活性断片もしくは誘導体である。別の態様では、活性ポリペプチドはヒト成長ホルモンまたはその活性断片もしくは誘導体である。さらに別の態様では、活性ポリペプチドはインターフェロンまたはその活性断片もしくは誘導体である。
【0017】
別の態様では、活性物質は低分子薬物、例えば、治療用、診断用もしくは予防用に現在入手可能な低分子薬物、または開発中の薬物であってもよい。いくつかの態様では、活性物質は多糖と混合される。混合物を、例えば、混合、多糖の共有結合、多糖のイオン結合、スプレー乾燥、および当技術分野で公知の他の技術により調製することができる。他の態様では、活性物質は製剤中の1つまたは複数の多糖に連結される。例えば、低分子薬物および蛋白質ベースの薬物は、EDC、CNBH4/DMSO/酢酸等のような既知の化学薬品を介して、送達用の多糖に連結されても良い。
【0018】
別の態様では、製剤は多糖、例えば、本明細書に記述される多糖、および不活性物質を含む。不活性物質の例には、生物学的プローブまたは画像化用の造影剤が含まれる。
【0019】
いくつかの態様では、製剤は乾燥製剤である。いくつかの態様では、乾燥製剤は、平均幾何直径1〜500ミクロンの多糖粒子、例えば、平均幾何直径が少なくとも2ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、25ミクロン、30ミクロン、35ミクロン、40ミクロン、45ミクロン、50ミクロン、または100ミクロンの粒子を含む。他の態様では、製剤は液体製剤(例えば、エアゾル、噴霧剤、または懸濁液)である。
【0020】
いくつかの態様では、製剤はさらに1つまたは複数の送達増強剤、例えば、1つまたは複数の界面活性剤、吸収増強剤、プロテアーゼ阻害剤等を含む。
【0021】
いくつかの態様では、製剤は、肺送達用の装置中、例えば、加圧もしくは非加圧式の容器もしくはディスペンサー、例えば、適当な噴射剤および/もしくは噴霧剤を含む加圧式の容器もしくはディスペンサーで提供されるか、または使用者において活性化される。1つの態様では、製剤は被検体に計量した用量の製剤を送達する、肺送達用の装置中で提供される。
【0022】
別の局面では、本発明は不均質な多糖集団を含む治療用または予防用の物質の肺送達のための製剤に関する。好ましい多糖には、ヘパリンまたは低分子ヘパリンのようなHLGSGが含まれる。1つの好ましい態様では多糖はLMWHであり、エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、およびパルナパリンからなる群より選択される。
【0023】
1つの態様では、多糖集団の全体または一部は、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20の二糖からなる。多糖が六糖またはそれ以上であることは特に好ましく、八糖またはそれ以上であることがさらに好ましい。
【0024】
1つの態様では、多糖集団は、標準品(例えば、市販の多糖集団または修飾多糖が由来した多糖集団)と比較して、多糖の全体または一部のサイズが低下するように修飾される。多糖の全体または一部のサイズを、例えば、標準品と比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%またはそれ以上低下させることができる。1つの態様では、提供される多糖集団の全体または一部のサイズを、例えば、少なくとも1つの物質(例えば、集団の1つまたは複数の多糖の化学的特徴に基づいて選択される物質)を用いて多糖を消化することによって、低下させることができる。例えば、物質は、酵素(例えば、化学的特徴に基づいて多糖の既知の位置において多糖を切断できる酵素)、または化学薬品(例えば、化学的特徴に基づいて多糖の既知の位置において多糖を切断できる化学薬品)、またはその組み合わせであってもよい。使用可能な酵素の例には、ヘパリン分解酵素、例えば、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼのようなヘパリンリアーゼ、ならびにそれらの機能的に活性な断片および変種が含まれ得る。使用可能な化学薬品の例には、H2O2またはCu+およびH2O2を用いた酸化的脱重合、硝酸イソアミルまたは亜硝酸による脱アミノ化切断、アルカリ処理またはヘパリナーゼによるヘパリンのベンジルエステルを用いたβ除去切断が含まれ得る。他の例には、選択的な官能基の変化のための化学薬品:NaOHのような塩基を用いた処理による2-O脱スルホンおよび凍結乾燥;ピリジンおよびDMSOを用いたN-脱スルホン;ピリジンおよびDMSO/ジオキサン/メタノールを用いたN+O脱スルホン;ピリジンおよびNMP/H2Oを用いた6-O脱スルホン;SO3/トリメチルアミン/H2Oを用いた3-O脱スルホン;ならびに当技術分野で公知の他の手法が含まれる。
【0025】
別の態様では、標準品(例えば、市販の多糖集団または修飾多糖が由来した多糖集団)と比較して、集団中の多糖の全体または一部の電荷が変化(例えば、増加または減少)するように、多糖集団は修飾される。多糖の電荷を減少させることは、本明細書では電荷を「中和する」とも呼ばれる。いくつかの態様では、多糖の電荷が中和されると、多糖の正味の負または正の電荷を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%低下させることができる。別の態様では、多糖の電荷が中和されると、正味の負または正の電荷が0となるように中和され得る。多糖集団は、例えば、少なくとも1つの物質(例えば、集団中の1つまたは複数の多糖の化学的特徴に基づいて選択された物質)を用いてポリペプチド集団を消化することによって、中和することができる。例えば、物質は、酵素(例えば、化学的特徴に基づいて多糖の既知の位置において多糖を切断できる酵素)、または化学薬品(例えば、化学的特徴に基づいて多糖の既知の位置において多糖を切断できる化学薬品、および/または選択的に官能基を修飾する化学薬品)、またはその組み合わせであってもよい。使用可能な酵素の例には、ヘパリン分解酵素、例えば、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼのようなヘパリンリアーゼ、ならびにそれらの機能的に活性な断片および変種が含まれ得る。使用可能な化学薬品の例には、H2O2またはCu+およびH2O2を用いた酸化的脱重合、硝酸イソアミルまたは亜硝酸による脱アミノ化切断、アルカリ処理またはヘパリナーゼによるヘパリンのベンジルエステルを用いたβ除去切断が含まれ得る。選択的な官能基の変化のための化学薬品の例には、NaOHのような塩基を用いた処理による2-O脱スルホンおよび凍結乾燥;ピリジンおよびDMSOを用いたN-脱スルホン;ピリジンおよびDMSO/ジオキサン/メタノールを用いたN+O脱スルホン;ピリジンおよびNMP/H2Oを用いた6-O脱スルホン;SO3/トリメチルアミン/H2Oを用いた3-O脱スルホン;ならびに当技術分野で公知の他の手法が含まれる。他の態様では、集団中の多糖の1つまたは複数の多糖の電荷が中和される場合には、多糖に電荷中和剤、例えば、一価または二価イオンのような対イオン(例えば、バリウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、マグネシウム、亜鉛)、遷移金属(例えば、鉄、ニッケル、および銅)、および/または他の中和化合物(例えば、有機低分子、スペルミン、スペルミジン、低分子プロタミン、塩基性ペプチド)を接触させることによって中和できる。
【0026】
別の態様では、例えば電荷密度を上昇させることによって、多糖の正味の電荷が増加する。電荷密度を、例えば、1つもしくは複数の硫酸基、および/またはリン酸、酢酸等のような他の荷電した種の付加によって、例えば1つまたは複数の低荷電ドメインを除去することによって上昇させることができる。いくつかの態様では、硫酸基および/または他の荷電した種を、1つまたは複数の酵素的、化学的、または物理的な手法で付加することができる。
【0027】
いくつかの態様では、多糖が由来する集団の1つまたは複数の多糖の化学的特徴が決定され、多糖はその化学的特徴に基づいて修飾される。多糖の化学的特徴を、例えば、多糖集団の1つまたは複数の治療活性を低下させるために多糖を修飾する、集団の1つまたは複数の多糖のサイズを修飾する、および/または集団の1つまたは複数の多糖の電荷を修飾するためなどに使用することができる。他の態様では、1つまたは複数の多糖の化学的特徴が決定できる。多糖の化学的特徴に関する情報を用いて、例えば、他の多糖がその多糖と類似した送達特性を持つ可能性が高いかどうかを決定する、または別の多糖がその多糖と類似した送達特性を持つ可能性が低いかを決定することができる。いくつかの態様では、集団の1つまたは複数の多糖の化学的特徴は、肺の活性、例えば、肺の正常な生理機能および/またはホメオスタシスに関与する多糖の化学的特徴と比較される。本発明は、本多糖と肺の活性に関与する多糖の化学的性質の類似性および/または相違に基づいて多糖を修飾する段階を含んでもよい。
【0028】
好ましい態様では、多糖集団の少なくとも1つの治療活性が、標準と比較して少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれ以上低下するように、集団は修飾される。いくつかの態様では、標準は市販の多糖集団の治療活性のレベル、または修飾前の多糖集団の治療活性のレベルである。
【0029】
いくつかの態様では、製剤は、例えば本明細書に記述される活性物質などの活性物質(例えば、本明細書に記述される治療用、診断用または予防用の物質)をさらに含む。治療用または予防用のポリペプチドは、そのようなポリペプチドの活性な誘導体または断片でもよい。1つの態様では、活性物質は活性ポリペプチド、例えば、治療用または予防用のポリペプチドであり、ポリペプチドは150 kDa未満、より好ましくは100 kDa未満、およびより好ましくは50 kDa未満の分子量を有する。1つの態様では、活性化剤は活性ポリペプチド、例えば、治療用または予防用のポリペプチドであり、ポリペプチドは約500 Da〜5 kDa、約5 kDa〜10 kDa、約10 kDa〜30 kDa、約18 kDa〜35 kDa、約30 kDa〜50 kDa、約50 kDa〜100 kDa、約100 kDa〜150 kDaの分子量を有する。1つの態様では、活性ポリペプチドはインスリンまたはその活性断片もしくは誘導体である。別の態様では、活性ポリペプチドはヒト成長ホルモンまたはその活性断片もしくは誘導体である。さらに別の態様では、活性ポリペプチドはインターフェロンまたはその活性断片もしくは誘導体である。別の態様では、本製剤は不活性物質、例えば、本明細書に記述される不活性物質をさらに含む。
【0030】
別の態様では、本製剤は活性物質をさらに含み、活性物質は低分子薬物、例えば、治療用、診断用もしくは予防用に現在入手可能な低分子薬物、および/または開発中の薬物であってもよい。いくつかの態様では、活性物質は多糖と混合される。混合物を、例えば、混合、多糖の共有結合、多糖のイオン結合、スプレー乾燥、および当技術分野で公知の他の技術により調製することができる。他の態様では、活性物質は製剤中の1つまたは複数の多糖に連結される。例えば、低分子薬物および蛋白質ベースの薬物は、EDC、CNBH4/DMSO/酢酸等のような既知の化学薬品を介して、送達用の多糖に連結されても良い。
【0031】
いくつかの態様では、製剤は乾燥製剤である。いくつかの態様では、乾燥製剤は、平均幾何直径1〜500ミクロンの多糖粒子、例えば、平均幾何直径が少なくとも2ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、25ミクロン、30ミクロン、35ミクロン、40ミクロン、45ミクロン、50ミクロン、または100ミクロンの粒子を含む。他の態様では、製剤は液体製剤、エアゾル、噴霧剤、または懸濁液である。
【0032】
いくつかの態様では、製剤はさらに1つまたは複数の送達増強剤、例えば、1つまたは複数の界面活性剤、吸収増強剤、プロテアーゼ阻害剤等を含む。
【0033】
いくつかの態様では、製剤は、肺送達用の装置中、例えば、加圧もしくは非加圧式の容器もしくはディスペンサー、例えば、適当な噴射剤および/もしくは噴霧剤を含む加圧式の容器もしくはディスペンサーで提供されるか、または使用者において活性化される。1つの態様では、製剤は被検体に計量した用量の製剤を送達する、肺送達用の装置中で提供される。
【0034】
1つの局面では、本発明は以下に記述する1つまたは複数の修飾を持つヘパリン、好ましくはLMWHに関する。好ましい態様では、多糖はLMWHであり、エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、およびパルナパリンからなる群より選択される。
【0035】
いくつかの態様では、ヘパリンは未分画または分画ヘパリン(LMWH)から修飾される。いくつかの態様では、ヘパリンはエノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、およびパルナパリンからなる群より選択される分画ヘパリンから修飾される。
【0036】
1つの態様では、ヘパリンは約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20の二糖からなる。多糖が六糖またはそれ以上であることは特に好ましく、八糖またはそれ以上であることがさらに好ましい。
【0037】
1つの態様では、ヘパリンは、標準品(例えば、市販のヘパリンまたは修飾ヘパリンが由来したヘパリン)と比較して、そのサイズが低下するように修飾される。ヘパリンのサイズを、例えば、標準品と比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%またはそれ以上低下させることができる。1つの態様では、提供されるヘパリンのサイズを、例えば、少なくとも1つの物質(例えば、ヘパリンの化学的特徴に基づいて選択される物質)を用いてヘパリンを消化することによって、低下させることができる。例えば、物質は、酵素(例えば、化学的特徴に基づいてヘパリンの既知の位置においてヘパリンを切断できる酵素)、または化学薬品(例えば、化学的特徴に基づいてヘパリンの既知の位置においてヘパリンを切断できる化学薬品)、またはその組み合わせであってもよい。使用可能な酵素の例には、ヘパリン分解酵素、例えば、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼのようなヘパリンリアーゼ、ならびにそれらの機能的に活性な断片および変種が含まれ得る。使用可能な化学薬品の例には、H2O2またはCu+およびH2O2を用いた酸化的脱重合、硝酸イソアミルまたは亜硝酸による脱アミノ化切断、アルカリ処理またはヘパリナーゼによるヘパリンのベンジルエステルを用いたβ除去切断が含まれ得る。他の例には選択的な官能基の変化のための化学薬品が含まれる:NaOHのような塩基を用いた処理による2-O脱スルホンおよび凍結乾燥;ピリジンおよびDMSOを用いたN-脱スルホン;ピリジンおよびDMSO/ジオキサン/メタノールを用いたN+O脱スルホン;ピリジンおよびNMP/H2Oを用いた6-O脱スルホン;SO3/トリメチルアミン/H2Oを用いた3-O脱スルホン;ならびに当技術分野で公知の他の手法が含まれる。
【0038】
別の態様では、標準品(例えば、市販のヘパリンまたは修飾ヘパリンが由来したヘパリン)と比較してヘパリンの電荷が変化(例えば、増加または減少)するように、ヘパリンは修飾される。ヘパリンの電荷を減少させることは、本明細書では電荷を「中和する」とも呼ばれる。いくつかの態様では、ヘパリンの電荷が中和されると、ヘパリンの正味の負または正の電荷を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%低下させることができる。別の態様では、ヘパリンの電荷が中和されると、正味の負または正の電荷が0となるように中和され得る。ヘパリンは、例えば、少なくとも1つの物質(例えば、ヘパリンの化学的特徴に基づいて選択された物質)を用いてポリペプチドを消化することによって、中和することができる。例えば、物質は、酵素(例えば、化学的特徴に基づいてヘパリンの既知の位置においてヘパリンを切断できる酵素)、または化学薬品(例えば、化学的特徴に基づいてヘパリンの既知の位置においてヘパリンを切断できる化学薬品、および/または選択的に官能基を修飾する化学薬品)、またはその組み合わせであってもよい。使用可能な酵素の例には、ヘパリン分解酵素、例えば、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼのようなヘパリンリアーゼ、ならびにそれらの機能的に活性な断片および変種が含まれ得る。使用可能な化学薬品の例には、H2O2またはCu+およびH2O2を用いた酸化的脱重合、硝酸イソアミルまたは亜硝酸による脱アミノ化切断、アルカリ処理またはヘパリナーゼによるヘパリンのベンジルエステルを用いたβ除去切断が含まれ得る。他の例には選択的な官能基の変化のための化学薬品が含まれる:NaOHのような塩基を用いた処理による2-O脱スルホンおよび凍結乾燥;ピリジンおよびDMSOを用いたN-脱スルホン;ピリジンおよびDMSO/ジオキサン/メタノールを用いたN+O脱スルホン;ピリジンおよびNMP/H2Oを用いた6-O脱スルホン;SO3/トリメチルアミン/H2Oを用いた3-O脱スルホン;ならびに当技術分野で公知の他の手法が含まれる。他の態様では、ヘパリンの電荷が中和される場合には、ヘパリンに電荷中和剤、例えば、一価または二価イオンのような対イオン(例えば、バリウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、マグネシウム、亜鉛)、遷移金属(例えば、鉄、ニッケル、および銅)、および/または他の中和化合物(例えば、有機低分子、スペルミン、スペルミジン、低分子プロタミン、塩基性ペプチド)を接触させることによって中和できる。
【0039】
別の態様では、例えば電荷密度を上昇させることによって、多糖の正味の電荷が増加する。電荷密度を、例えば、1つもしくは複数の硫酸基、および/またはリン酸、酢酸等のような他の荷電した種の付加によって、例えば1つまたは複数の低荷電ドメインを除去することによって上昇させることができる。いくつかの態様では、硫酸基および/または他の荷電した種を、1つまたは複数の酵素的、化学的、または物理的な手法で付加することができる。
【0040】
いくつかの態様では、ヘパリンが由来するヘパリンの化学的特徴が決定され、ヘパリンはその化学的特徴に基づいて修飾される。ヘパリンの化学的特徴を用いて、例えば、ヘパリンの1つまたは複数の治療活性を低下させるためにヘパリンを修飾する、サイズを修飾する、および/またはヘパリンの電荷を修飾することができる。他の態様では、ヘパリンの化学的特徴が決定できる。ヘパリンの化学的特徴に関する情報を用いて、例えば、他の多糖がそのヘパリンと類似した送達特性を持つ可能性が高いかどうかを決定する、または別の多糖がそのヘパリンと類似した送達特性を持つ可能性が低いかを決定することができる。
【0041】
好ましい態様では、ヘパリン(例えば、LMWH)の抗Xa活性および/または抗IIa活性が、標準と比較して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれ以上低下するように、ヘパリンは修飾される。1つの態様では、抗Xa活性および/または抗IIa活性を、分子量(例えば、サイズ)を低下させる、および/または官能基修飾における変化によって、低下させることができる。いくつかの態様では、標準は市販のヘパリンの抗Xa活性および/または抗IIa活性のレベル、または修飾前のヘパリンの抗Xa活性および/または抗IIa活性のレベルである。
【0042】
別の局面では、本発明は治療用、診断用または予防用の物質の肺への送達のための製剤に関する。製剤は、ヘパリン、好ましくはLMWH、例えば本明細書に記述されるようなヘパリン、例えばLMWH、および活性物質、例えば治療用、診断用または予防用の物質を含む。好ましい態様では多糖はLMWHであり、エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、およびパルナパリンからなる群より選択される。
【0043】
治療用および予防用の物質は、治療用または予防用のポリペプチド、核酸、低分子、脂質/糖脂質等を含む。1つの態様では、活性物質は、インスリン、プロインスリン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、α-1プロテイナーゼ阻害剤、アルカリホスファターゼ、アンジオジェニン、嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ、フィブリノーゲン、グルコセレブロシダーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、ヒト血清アルブミン、ミエリン塩基性蛋白質、可溶性CD4、ラクトフェリン、ライソザイム、ラクトアルブミン、エリスロポエチン、組織プラスミノーゲン活性化因子、アンチトロンビンIII、プロラクチン、およびα1-アンチトリプシンからなる群より選択される治療用ポリペプチドである。治療または予防用のペプチドは、そのようなポリペプチドの活性誘導体または断片でも良い。活性物質は、副甲状腺ホルモンならびにその誘導体および断片、エリスロポエチン、エポエチンβ、遺伝子活性化エリスロポエチン、第2世代EPO、新規赤血球形成刺激蛋白質、インスリンリスプロ、インスリン(ウシ)、インスリン、インスリンアスパルト、インスリンアナログ、カルシトニン、セラシン、ベカプレルミン(組換えヒト血小板由来成長因子-BB)、トラフェルミン、ヒト成長ホルモン放出因子、BMP-7、PEGアスパラギナーゼ、ドルナーゼα、アルグルセラーゼ、アガルシダーゼβ、ドルナーゼα、アガルシダーゼα、ストレプトキナーゼ、テネテプラーゼ、レテプラーゼ、アルテプラーゼ、パミテプラーゼ、Rh因子VIII、Rh FVIIa、因子IX(ヒト)、因子IX(複合体)、HGH、ソマトレム/ソマトロピン、抗CD33-カリケアマイシン結合体、エドレコロマブ、リタキスマブ、ダクリズマブ、トラスツズマブ、スレソマブ、アブシキシマブ、インフリキシマブ、ムロモナブ-CD3、パリビズマブ、アレムツズマブ、バシリキシマブ、オプレルベキン、ゲムツズマブオゾガミシン、イブリツモマブチウキセタン、スレソマブ、パリビズマブ、インターロイキン-2、セルモロイキン(rIL-2)、インターフェロンアルファコン-1、インターフェロンα、インターフェロンα+リバビリン、ペグインターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα3n、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ、インターフェロンβ1b、インターフェロンγ、インターフェロンγ-1b、フィルグラスチム、サルグラモスチム、レノグラスチム、モルグラモスチム、ミリモスチム、ナルトグラスチム、オプレルベキン、ペプチドチロシン-チロシン(PYY)、アポリポ蛋白質A-IV、レプチン、メラノコルチン、アミリン、オレキシン、アディポネクチン、ならびにグレリンのうちの1つまたは複数であってもよいが、これらに限定されない。「アディポカイン」と総称される他のペプチドは、満腹感の調節に関与しており、これにはペプチドチロシン-チロシン(PYY)、アポリポ蛋白質A-IV、レプチン、メラノコルチン、アミリン、オレキシン、アディポネクチンおよびグレリンが含まれる。1つの態様では、活性物質は活性ポリペプチド、例えば、治療用または予防用のポリペプチドであり、ポリペプチドは150 kDa未満、より好ましくは100 kDa未満、およびより好ましくは50 kDa未満の分子量を有する。1つの態様では、活性化剤は活性ポリペプチド、例えば、治療用または予防用のポリペプチドであり、ポリペプチドは約500 Da〜5 kDa、約5 kDa〜10 kDa、約10 kDa〜30 kDa、約18 kDa〜35 kDa、約30 kDa〜50 kDa、約50 kDa〜100 kDa、約100 kDa〜150 kDaの分子量を有する。1つの態様では、活性ポリペプチドはインスリンまたはその活性断片もしくは誘導体である。別の態様では、活性ポリペプチドはヒト成長ホルモンまたはその活性断片もしくは誘導体である。さらに別の態様では、活性ポリペプチドはインターフェロンである。
【0044】
別の態様では、活性物質は低分子薬物、例えば、治療用、診断用もしくは予防用に現在入手可能な低分子薬物、または開発中の薬物であってもよい。いくつかの態様では、活性物質は多糖と混合される。混合物を、例えば、混合、多糖の共有結合、多糖のイオン結合、スプレー乾燥、および当技術分野で公知の他の技術により調製することができる。他の態様では、活性物質は製剤中の1つまたは複数の多糖に連結される。例えば、低分子薬物および蛋白質ベースの薬物は、EDC、CNBH4/DMSO/酢酸等のような既知の化学薬品を介して、送達用の多糖に連結されても良い。
【0045】
別の態様では、製剤はヘパリン、例えば、本明細書に記述されるヘパリン、および不活性物質を含む。不活性物質の例には、生物学的プローブまたは画像化用の造影剤が含まれる。
【0046】
いくつかの態様では、ヘパリンは、ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNS,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNAc,6SGHNS,3S、またはΔUHNS,6SGHNS,3Sという構造を含むヘパリンのオリゴ糖の1つまたは複数の化学的特徴が、ヘパリンの抗Xa活性を低下させるために修飾されたヘパリン、例えば、ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6S,またはΔUHNAc,6SGHNS,3Sを1つまたは複数含むヘパリンである。いくつかの態様では、ヘパリンはM118であり、これは5,000 Daの分子量、1.0の多分散性、および他のLMWHよりも高いピーク8の重量パーセントを持つ。M118は同一分子上にXAおよびIIA活性を持つLMWHであり、プロタミンによって完全に中和される。
【0047】
いくつかの態様では、ヘパリンの活性を修飾するために、1つもしくは複数の単糖もしくは二糖が、付加もしくは除去、ならびに/または1つもしくは複数のアセチル基および/もしくはスルホ基が、置換、除去もしくは付加される。
【0048】
いくつかの態様では、製剤は乾燥製剤である。いくつかの態様では、乾燥製剤は、平均幾何直径1〜500ミクロンのヘパリン粒子、例えば、平均幾何直径が少なくとも2ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、25ミクロン、30ミクロン、35ミクロン、40ミクロン、45ミクロン、50ミクロン、または100ミクロンの粒子を含む。他の態様では、製剤は液体製剤(例えば、エアゾル、噴霧剤、または懸濁液)である。
【0049】
いくつかの態様では、製剤はさらに1つまたは複数の送達増強剤、例えば、1つまたは複数の界面活性剤、吸収増強剤、プロテアーゼ阻害剤等を含む。
【0050】
いくつかの態様では、製剤は、肺送達用の装置中、例えば、加圧もしくは非加圧式の容器もしくはディスペンサー、例えば、適当な噴射剤および/もしくは噴霧剤を含む加圧式の容器もしくはディスペンサーで提供されるか、または使用者において活性化される。1つの態様では、製剤は被検体に計量した用量の製剤を送達する、肺送達用の装置中で提供される。
【0051】
別の態様では、本発明はヘパリン、好ましくはLMWHの不均質な集団を含む、治療用または予防用の物質の肺送達のための製剤に関するが、ここでヘパリン集団の抗Xa活性および/または抗IIa活性は、標準と比較して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれ以上低下するように、ヘパリン集団は修飾される。いくつかの態様では、標準は市販のヘパリン集団の治療活性のレベル、または修飾前のヘパリン集団の治療活性のレベルである。1つの態様では、不均質なヘパリン集団は本明細書に記述されるヘパリン集団である。
【0052】
1つの態様では、集団の全体または一部のヘパリンは、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20の二糖からなる。多糖が六糖またはそれ以上であることは特に好ましく、八糖またはそれ以上であることがさらに好ましい。
【0053】
1つの態様では、ヘパリン集団は、標準品(例えば、市販のヘパリン集団または修飾ヘパリンが由来したヘパリン集団)と比較して、ヘパリンの全体または一部のサイズが低下するように修飾される。ヘパリンの全体または一部のサイズを、例えば、標準品と比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%またはそれ以上低下させることができる。1つの態様では、提供されるヘパリン集団の全体または一部のサイズを、例えば、少なくとも1つの物質(例えば、集団の1つまたは複数のヘパリンの化学的特徴に基づいて選択される物質)を用いてヘパリンを消化することによって、低下させることができる。例えば、物質は、酵素(例えば、化学的特徴に基づいてヘパリンの既知の位置においてヘパリンを切断できる酵素)、または化学薬品(例えば、化学的特徴に基づいてヘパリンの既知の位置においてヘパリンを切断できる化学薬品)、またはその組み合わせであってもよい。使用可能な酵素の例には、ヘパリン分解酵素、例えば、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼのようなヘパリンリアーゼ、ならびにそれらの機能的に活性な断片および変種が含まれ得る。使用可能な化学薬品の例には、H2O2またはCu+およびH2O2を用いた酸化的脱重合、硝酸イソアミルまたは亜硝酸による脱アミノ化切断、アルカリ処理またはヘパリナーゼによるヘパリンのベンジルエステルを用いたβ除去切断が含まれ得る。他の例には、選択的な官能基の変化のための物質:NaOHのような塩基を用いた処理による2-O脱スルホンおよび凍結乾燥;ピリジンおよびDMSOを用いたN-脱スルホン;ピリジンおよびDMSO/ジオキサン/メタノールを用いたN+O脱スルホン;ピリジンおよびNMP/H2Oを用いた6-O脱スルホン;SO3/トリメチルアミン/H2Oを用いた3-O脱スルホン;ならびに当技術分野で公知の他の手法が含まれる。
【0054】
別の態様では、標準品(例えば、市販のヘパリン集団または修飾ヘパリンが由来したヘパリン集団)と比較して、ヘパリンの全体または一部の電荷が変化(例えば、増加または減少)するように、ヘパリン集団は修飾される。ヘパリンの電荷を減少させることは、本明細書では電荷を「中和する」とも呼ばれる。いくつかの態様では、ヘパリンの電荷が中和されると、ヘパリンの正味の負または正の電荷を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%低下させることができる。別の態様では、ヘパリンの電荷が中和されると、正味の負または正の電荷が0となるように中和され得る。ヘパリン集団の全体または一部は、例えば、少なくとも1つの物質(例えば、集団中の1つまたは複数のヘパリンの化学的特徴に基づいて選択された物質)を用いてヘパリン集団を消化することによって、中和することができる。例えば、物質は、酵素(例えば、化学的特徴に基づいてヘパリンの既知の位置においてヘパリンを切断できる酵素)、または化学薬品(例えば、化学的特徴に基づいてヘパリンの既知の位置においてヘパリンを切断できる化学薬品、および/または選択的に官能基を修飾する化学薬品)、またはその組み合わせであってもよい。使用可能な酵素の例には、ヘパリン分解酵素、例えば、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼのようなヘパリンリアーゼ、ならびにそれらの機能的に活性な断片および変種が含まれ得る。使用可能な化学薬品の例には、H2O2またはCu+およびH2O2を用いた酸化的脱重合、硝酸イソアミルまたは亜硝酸による脱アミノ化切断、アルカリ処理またはヘパリナーゼによるヘパリンのベンジルエステルを用いたβ除去切断が含まれ得る。他の例には選択的な官能基の変化のための化学薬品が含まれる:NaOHのような塩基を用いた処理による2-O脱スルホンおよび凍結乾燥;ピリジンおよびDMSOを用いたN-脱スルホン;ピリジンおよびDMSO/ジオキサン/メタノールを用いたN+O脱スルホン;ピリジンおよびNMP/H2Oを用いた6-O脱スルホン;SO3/トリメチルアミン/H2Oを用いた3-O脱スルホン;ならびに当技術分野で公知の他の手法が含まれる。他の態様では、集団の1つまたは複数のヘパリンの電荷が中和される場合には、ヘパリン集団に電荷中和剤、例えば、一価または二価イオンのような対イオン(例えば、バリウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、マグネシウム、亜鉛)、遷移金属(例えば、鉄、ニッケル、および銅)、および/または他の中和化合物(例えば、有機低分子、スペルミン、スペルミジン、低分子プロタミン、塩基性ペプチド)を接触させることによって中和できる。
【0055】
別の態様では、例えば電荷密度を上昇させることによって、ヘパリンの正味の電荷が増加する。電荷密度を、例えば、1つもしくは複数の硫酸基、および/またはリン酸、酢酸等のような他の荷電した種の付加によって、例えば1つまたは複数の低荷電ドメインを除去することによって上昇させることができる。いくつかの態様では、硫酸基および/または他の荷電した種を、1つまたは複数の酵素的、化学的、または物理的な手法で付加することができる。
【0056】
いくつかの態様では、ヘパリンが由来する集団の1つまたは複数のヘパリンの化学的特徴が決定され、ヘパリンはその化学的特徴に基づいて修飾される。ヘパリンの化学的特徴を用いて、例えば、ヘパリン集団の1つまたは複数の治療活性を低下させるためにヘパリンを修飾する、サイズを修飾する、および/または集団中の1つまたは複数のヘパリンの電荷を修飾することができる。他の態様では、1つまたは複数のヘパリンの化学的特徴が決定できる。ヘパリンの化学的特徴に関する情報を用いて、例えば、他の多糖がそのヘパリンと類似した送達特性を持つ可能性が高いかどうかを決定する、または別の多糖がそのヘパリンと類似した送達特性を持つ可能性が低いかを決定することができる。いくつかの態様では、ヘパリンの化学的特徴は、肺の活性、例えば、肺の正常な生理機能および/またはホメオスタシスに関与する多糖の化学的特徴と比較される。本発明は、本多糖と肺の活性に関与する多糖の化学的性質の類似性および/または相違に基づいてヘパリンを修飾する段階を含んでもよい。
【0057】
いくつかの態様では、製剤はさらに活性物質、例えば、治療、診断または予防用の物質を含む。治療用および予防用の物質には、治療または予防用のポリペプチド、核酸、低分子、脂質/糖脂質等が含まれる。1つの態様では、活性物質は、インスリン、プロインスリン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、α-1プロテイナーゼ阻害剤、アルカリホスファターゼ、アンジオジェニン、嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ、フィブリノーゲン、グルコセレブロシダーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、ヒト血清アルブミン、ミエリン塩基性蛋白質、可溶性CD4、ラクトフェリン、ライソザイム、ラクトアルブミン、エリスロポエチン、組織プラスミノーゲン活性化因子、アンチトロンビンIII、プロラクチン、およびα1-アンチトリプシンからなる群より選択される治療用ポリペプチドである。別の態様では、活性物質は副甲状腺ホルモンならびにその誘導体および断片、エリスロポエチン、エポエチンβ、遺伝子活性化エリスロポエチン、エポエチンβ、第2世代EPO、エポエチンβ、新規赤血球形成刺激蛋白質、インスリンリスプロ、インスリン(ウシ)、インスリン、インスリンアスパルト、インスリンアナログ、カルシトニン、セラシン、ベカプレルミン(組換えヒト血小板由来成長因子-BB)、トラフェルミン、ヒト成長ホルモン放出因子、BMP-7、PEGアスパラギナーゼ、ドルナーゼα、アルグルセラーゼ、アガルシダーゼβ、ドルナーゼα、アガルシダーゼα、ストレプトキナーゼ、テネテプラーゼ、レテプラーゼ、アルテプラーゼ、パミテプラーゼ、Rh因子VIII、Rh FVIIa、因子IX(ヒト)、因子IX(複合体)、HGH、ソマトレム/ソマトロピン、抗CD33-カリケアマイシン結合体、エドレコロマブ、リタキスマブ、トラスツズマブ、ダクリズマブ、スレソマブ、アブシキシマブ、インフリキシマブ、ムロモナブ-CD3、パリビズマブ、アレムツズマブ、バシリキシマブ、オプレルベキン、ゲムツズマブオゾガミシン、イブリツモマブチウキセタン、スレソマブ、パリビズマブ、インターロイキン-2、セルモロイキン(rIL-2)、インターフェロンアルファコン-1、インターフェロンα、インターフェロンα+リバビリン、PEGインターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα3n、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ、インターフェロンβ1b、インターフェロンγ、インターフェロンγ-1b、フィルグラスチム、レノグラスチム、サルグラモスチム、モルグラモスチム、ミリモスチム、サルグラモスチム、ナルトグラスチム、オプレルベキン、ペプチドチロシン-チロシン(PYY)、アポリポ蛋白質A-IV、レプチン、メラノコルチン、アミリン、オレキシン、アディポネクチン、ならびにグレリンのうちの1つまたは複数である可能性がある。「アディポカイン」と総称される他のペプチドは、満腹感の調節に関与しており、これにはペプチドチロシン-チロシン(PYY)、アポリポ蛋白質A-IV、レプチン、メラノコルチン、アミリン、オレキシン、アディポネクチンおよびグレリンが含まれる。治療用または予防用のポリペプチドは、そのようなポリペプチドの活性な誘導体または断片で良い。1つの態様では、活性物質は活性ポリペプチド、例えば、治療用または予防用のポリペプチドであり、ポリペプチドは150 kDa未満、より好ましくは100 kDa未満、およびより好ましくは50 kDa未満の分子量を有する。1つの態様では、活性化剤は活性ポリペプチド、例えば、治療用または予防用のポリペプチドであり、ポリペプチドは約500 Da〜5 kDa、約5 kDa〜10 kDa、約10 kDa〜30 kDa、約18 kDa〜35 kDa、約30 kDa〜50 kDa、約50 kDa〜100 kDa、約100 kDa〜150 kDaの分子量を有する。1つの態様では、活性ポリペプチドはインスリンまたはその活性断片もしくは誘導体である。別の態様では、活性ポリペプチドはヒト成長ホルモンまたはその活性断片もしくは誘導体である。さらに別の態様では、活性ポリペプチドはインターフェロンまたはその活性断片もしくは誘導体である。
【0058】
いくつかの態様では、活性物質は多糖と混合される。混合物を、例えば、混合、多糖の共有結合、多糖のイオン結合、スプレー乾燥、および当技術分野で公知の他の技術により調製することができる。他の態様では、活性物質は製剤中の1つまたは複数の多糖に連結される。例えば、低分子薬物および蛋白質ベースの薬物は、EDC、CNBH4/DMSO/酢酸等のような既知の化学薬品を介して、送達用の多糖に連結されても良い。
【0059】
別の態様では、製剤は不活性物質を含む。不活性物質の例には、生物学的プローブまたは画像化用の造影剤が含まれる。
【0060】
いくつかの態様では、製剤は乾燥製剤である。いくつかの態様では、乾燥製剤は、平均幾何直径1〜500ミクロンのヘパリン粒子、例えば、平均幾何直径が少なくとも2ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、25ミクロン、30ミクロン、35ミクロン、40ミクロン、45ミクロン、50ミクロン、または100ミクロンの粒子を含む。他の態様では、製剤は液体製剤、エアゾル、噴霧剤、または懸濁液である。
【0061】
いくつかの態様では、製剤はさらに1つまたは複数の送達増強剤、例えば、1つまたは複数の界面活性剤、吸収増強剤、プロテアーゼ阻害剤等を含む。
【0062】
いくつかの態様では、製剤は、肺送達用の装置中、例えば、加圧もしくは非加圧式の容器もしくはディスペンサー、例えば、適当な噴射剤および/もしくは噴霧剤を含む加圧式の容器もしくはディスペンサーで提供されるか、または使用者において活性化される。1つの態様では、製剤は被検体に計量した用量の製剤を送達する、肺送達用の装置中で提供される。
【0063】
いくつかの態様では、ヘパリンの全体または一部はΔUHNAc,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNS,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNAc,6SGHNS,3S、またはΔUHNS,6SGHNS,3Sという構造を含むヘパリンのオリゴ糖の1つまたは複数の化学的特徴が、ヘパリンの全体または一部の抗Xa活性を低下させるために修飾されたヘパリン、例えば、ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6SまたはΔUHNAc,6SGHNS,3Sの構造を少なくとも1つ含むヘパリンである。いくつかの態様では、ヘパリンはM118であり、これは5,000 Daの分子量、1.0の多分散性、および他のLMWHよりも高いピーク8の重量パーセントを持つ。
【0064】
いくつかの態様では、ヘパリンの活性を修飾するために、1つもしくは複数の単糖もしくは二糖が、付加もしくは除去、ならびに/または1つもしくは複数のアセチル基および/もしくはスルホ基が、置換、除去もしくは付加される。
【0065】
別の局面では、本発明は、例えば治療用または予防用の物質のような活性物質を肺へ送達するための、多糖、例えばHLGAG、例えば本明細書に記述されるようなヘパリンまたはLMWHを生産する方法に関する。本方法には、多糖(例えば、ヘパリンまたはLMWH)を提供する段階、およびそれを本明細書に記述される1つまたは複数の方法で修飾する段階が含まれる。
【0066】
好ましい態様では、多糖はLMWHであり、エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、およびパルナパリンからなる群より選択される。
【0067】
いくつかの態様では、本方法は、ヘパリン(例えば、LMWH)の抗Xa活性を低下させるために、ヘパリンの以下の構造の1つまたは複数を修飾する段階を含む:ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNS,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNAc,6SGHNS,3S、またはΔUHNS,6SGHNS,3S。いくつかの態様では、ヘパリンは、ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6SまたはΔUHNAc,6SGHNS,3Sの構造を少なくとも1つ含む。いくつかの態様ではヘパリンはM118であり、これは5,000 Daの分子量、1.0の多分散性、および他のLMWHよりも高いピーク8の重量パーセントを持つ。
【0068】
いくつかの態様では、ヘパリンの活性を修飾するために、1つもしくは複数の単糖もしくは二糖が、付加もしくは除去、ならびに/または1つもしくは複数のアセチル基および/もしくはスルホ基が、置換、除去もしくは付加される。
【0069】
いくつかの態様では、ヘパリン(例えば、LMWH)は未分画または分画ヘパリンから修飾される。いくつかの態様では、ヘパリンはエノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、およびパルナパリンからなる群より選択される分画ヘパリンから修飾される。いくつかの態様では、ヘパリンはヘパリンと肺の活性に関与する多糖との化学的特徴の類似性および/または差異に基づいて修飾される。
【0070】
1つの態様では、修飾ヘパリン(例えば、LMWH)は約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20の二糖からなる。多糖が六糖またはそれ以上であることは特に好ましく、八糖またはそれ以上であることがさらに好ましい。
【0071】
1つの態様では、ヘパリン(例えば、LMWH)は、標準品(例えば、市販のヘパリンまたは修飾ヘパリン(例えば、LMWH)が由来したヘパリン)と比較して、ヘパリン(例えば、LMWH)のサイズが低下するように修飾される。ヘパリン(例えば、LMWH)のサイズを、例えば、標準品と比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%またはそれ以上低下させることができる。別の態様では、標準品(例えば、市販のヘパリンまたは修飾ヘパリン(例えば、LMWH)、が由来したヘパリン)と比較して、ヘパリン(例えば、LMWH)の電荷が変化(例えば、増加または減少)するように、ヘパリンは修飾される。ヘパリン(例えば、LMWH)の電荷を減少させることは、本明細書では電荷を「中和する」とも呼ばれる。いくつかの態様では、ヘパリンの電荷が中和されると、ヘパリンの正味の負または正の電荷を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%低下させることができる。別の態様では、ヘパリンの電荷が中和されると、正味の負または正の電荷が0となるように中和され得る。
【0072】
別の態様では、本方法は、標準品と比較してサイズが低下するようにヘパリンのサイズを修飾する段階も含む。1つの態様では、提供されるヘパリンのサイズを、例えば、本明細書に記述される方法によって、低下させることができる。
【0073】
別の態様では、本方法は、標準品(例えば、市販のヘパリンまたは修飾ヘパリンが由来したヘパリン)と比較して、ヘパリンの電荷が修飾(例えば、増加または減少)するように、ヘパリンの電荷を修飾する段階を含む。1つの態様では、ヘパリンの電荷は、例えば、本明細書に記述される方法によって、減少または中和できる。他の態様では、多糖の正味の電荷は、例えば本明細書に記述される方法によって、増加される。
【0074】
いくつかの態様では、本発明はさらにヘパリンが由来するヘパリンの化学的特徴を決定する段階、およびその化学的特徴に基づいてヘパリンを修飾する段階を含む。ヘパリンの化学的特徴を用いて、例えば、ヘパリンの1つまたは複数の治療活性を低下させるためにヘパリンを修飾する、サイズを修飾する、および/またはヘパリンの電荷を修飾することができる。他の態様では、本発明はさらに、例えば、他の多糖がそのヘパリンと類似した送達特性を持つ可能性が高いかどうかを決定するか、または別の多糖がそのヘパリンと類似した送達特性を持つ可能性が低いかを決定するために、ヘパリンの化学的特徴を決定する段階、および化学的特徴を用いる段階を含む。いくつかの態様では、ヘパリンの化学的特徴は、肺の活性、例えば、肺の正常な生理機能および/またはホメオスタシスに関与する多糖の化学的特徴と比較される。本発明は、本多糖と肺の活性に関与する多糖の化学的性質の類似性および/または相違に基づいてヘパリンを修飾する段階を含んでもよい。
【0075】
好ましい態様では、多糖の抗Xa活性および/または抗IIa活性が、標準と比較して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれ以上低下するように、多糖は修飾され、それによりヘパリンが提供される。いくつかの態様では、標準は市販のヘパリンの抗Xa活性および/または抗IIa活性のレベル、または修飾前のヘパリンの抗Xa活性および/または抗IIa活性のレベルである。
【0076】
1つの態様では、本方法はさらに、ヘパリンを活性物質、例えば、治療用または予防用の物質と組み合わせる段階を含む。ヘパリンは、例えば、ポリペプチド、核酸、低分子、脂質、および糖脂質からなる群より選択される治療用または予防用の物質と組み合わせることができる。
【0077】
1つの態様では、ヘパリンは、インスリン、プロインスリン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、α-1プロテイナーゼ阻害剤、アルカリホスファターゼ、アンジオジェニン、嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ、フィブリノーゲン、グルコセレブロシダーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、ヒト血清アルブミン、ミエリン塩基性蛋白質、可溶性CD4、ラクトフェリン、ライソザイム、ラクトアルブミン、エリスロポエチン、組織プラスミノーゲン活性化因子、アンチトロンビンIII、プロラクチン、およびα1-アンチトリプシンからなる群より選択される治療用または予防用のポリペプチドと組み合わされる。別の態様では、活性物質は、副甲状腺ホルモンならびにその誘導体および断片、エリスロポエチン、エポエチンβ、遺伝子活性化エリスロポエチン、エポエチンβ、第2世代EPO、エポエチンβ、新規赤血球形成刺激蛋白質、インスリンリスプロ、インスリン(ウシ)、インスリン、インスリンアスパルト、インスリンアナログ、カルシトニン、セラシン、ベカプレルミン(組換えヒト血小板由来成長因子-BB)、トラフェルミン、ヒト成長ホルモン放出因子、BMP-7、PEGアスパラギナーゼ、ドルナーゼα、アルグルセラーゼ、アガルシダーゼβ、ドルナーゼα、アガルシダーゼα、ストレプトキナーゼ、テネテプラーゼ、レテプラーゼ、アルテプラーゼ、パミテプラーゼ、Rh因子VIII、Rh FVIIa、因子IX(ヒト)、因子IX(複合体)、HGH、ソマトレム/ソマトロピン、抗CD33-カリケアマイシン結合体、エドレコロマブ、リタキスマブ、ダクリズマブ、トラスツズマブ、スレソマブ、アブシキシマブ、インフリキシマブ、ムロモナブ-CD3、パリビズマブ、アレムツズマブ、バシリキシマブ、オプレルベキン、ゲムツズマブオゾガミシン、イブリツモマブチウキセタン、スレソマブ、パリビズマブ、インターロイキン-2、セルモロイキン(rIL-2)、インターフェロンアルファコン-1、インターフェロンα、インターフェロンα+リバビリン、ペグインターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα3n、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ、インターフェロンβ1b、インターフェロンγ、インターフェロンγ-1b、フィルグラスチム、レノグラスチム、サルグラモスチム、モルグラモスチム、ミリモスチム、サルグラモスチム、ナルトグラスチム、オプレルベキン、ペプチドチロシン-チロシン(PYY)、アポリポ蛋白質A-IV、レプチン、メラノコルチン、アミリン、オレキシン、アディポネクチン、ならびにグレリンからなる群より選択される治療用または予防用の物質と組み合わされる。「アディポカイン」と総称される他のペプチドは、満腹感の調節に関与しており、これにはペプチドチロシン-チロシン(PYY)、アポリポ蛋白質A-IV、レプチン、メラノコルチン、アミリン、オレキシン、アディポネクチンおよびグレリンが含まれる。治療用または予防用のポリペプチドは、そのようなポリペプチドの活性な誘導体または断片で良い。1つの態様では、活性物質は活性ポリペプチド、例えば、治療用または予防用のポリペプチドであり、ポリペプチドは150 kDa未満、より好ましくは100 kDa未満、およびより好ましくは50 kDa未満の分子量を有する。1つの態様では、活性化剤は活性ポリペプチド、例えば、治療用または予防用のポリペプチドであり、ポリペプチドは約500 Da〜5 kDa、約5 kDa〜10 kDa、約10 kDa〜30 kDa、約18 kDa〜35 kDa、約30 kDa〜50 kDa、約50 kDa〜100 kDa、約100 kDa〜150 kDaの分子量を有する。1つの態様では、活性ポリペプチドはインスリンまたはその活性断片もしくは誘導体である。別の態様では、活性ポリペプチドはヒト成長ホルモンまたはその活性断片もしくは誘導体である。さらに別の態様では、活性ポリペプチドはインターフェロンまたはその活性断片もしくは誘導体である。
【0078】
1つの態様では、ヘパリンは、ヘパリンと治療用または予防用の物質とを混合することによって、治療用または予防用の物質と組み合わされる。混合物を、例えば、混合、多糖の共有結合、多糖のイオン結合、スプレー乾燥、および当技術分野で公知の他の技術により調製することができる。他の態様では、ヘパリンはヘパリンと治療用または予防用の物質とを連結することによって、治療用または予防用の物質と組み合わされる。例えば、低分子薬物および蛋白質ベースの薬物は、EDC、CNBH4/DMSO/酢酸等のような既知の化学薬品を介して、送達用の多糖に連結できる。
【0079】
いくつかの態様では、製剤は、肺送達用の装置中、例えば、加圧もしくは非加圧式の容器もしくはディスペンサー、例えば、適当な噴射剤および/もしくは噴霧剤を含む加圧式の容器もしくはディスペンサーで提供されるか、または使用者において活性化される。1つの態様では、製剤は被検体に計量した用量の製剤を送達する、肺送達用の装置中で提供される。
【0080】
別の局面では、本発明は、活性物質(例えば、治療用または予防用の物質)を肺へ送達するための製剤の製造方法に関する。本方法は、活性物質、例えば、本明細書に記述される活性物質と、多糖、例えば、HLGAG、例えば、ヘパリン、例えば、本明細書に記述されるようなLMWHとを組み合わせて、治療用または予防用の物質を肺へ送達するための製剤を製造する段階を含む。1つの好ましい態様では、多糖はLMWHであり、エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、およびパルナパリンからなる群より選択される。
【0081】
いくつかの態様では、ヘパリンは未分画または分画ヘパリン(LMWH)から修飾される。いくつかの態様では、ヘパリンはエノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、およびパルナパリンからなる群より選択される分画ヘパリンから修飾される。いくつかの態様では、ヘパリンは本明細書に記述されるヘパリンである。
【0082】
いくつかの態様では、ヘパリンは分子の不均質な集団中にあり、例えば、集団中のすべてまたは一部の分子がヘパリン、例えば、本明細書に記述されるヘパリンである。
【0083】
いくつかの態様では、本方法はヘパリン、例えば、本明細書に記述されるヘパリンを、治療用または予防用のポリペプチド、核酸、低分子、脂質/糖脂質等からなる群より選択される、治療用または予防用の物質と組み合わせる段階を含む。1つの態様では、ヘパリン、例えば、本明細書に記述されるヘパリンは、インスリン、プロインスリン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、α-1プロテイナーゼ阻害剤、アルカリホスファターゼ、アンジオジェニン、嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ、フィブリノーゲン、グルコセレブロシダーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、ヒト血清アルブミン、ミエリン塩基性蛋白質、可溶性CD4、ラクトフェリン、ライソザイム、ラクトアルブミン、エリスロポエチン、組織プラスミノーゲン活性化因子、アンチトロンビンIII、プロラクチン、およびα1-アンチトリプシンからなる群より選択される治療用ポリペプチドと組み合わされる。別の態様では、本方法は、ヘパリン、例えば、本明細書に記述されるヘパリンと、副甲状腺ホルモンならびにその誘導体および断片、エリスロポエチン、エポエチンβ、遺伝子活性化エリスロポエチン、エポエチンβ、第2世代EPO、エポエチンβ、新規赤血球形成刺激蛋白質、インスリンリスプロ、インスリン(ウシ)、インスリン、インスリンアスパルト、インスリンアナログ、カルシトニン、セラシン、ベカプレルミン(組換えヒト血小板由来成長因子-BB)、トラフェルミン、ヒト成長ホルモン放出因子、BMP-7、PEGアスパラギナーゼ、ドルナーゼα、アルグルセラーゼ、アガルシダーゼβ、ドルナーゼα、アガルシダーゼα、ストレプトキナーゼ、テネテプラーゼ、レテプラーゼ、アルテプラーゼ、パミテプラーゼ、Rh因子VIII、Rh FVIIa、因子IX(ヒト)、因子IX(複合体)、HGH、ソマトレム/ソマトロピン、抗CD33-カリケアマイシン結合体、エドレコロマブ、リタキスマブ、トラスツズマブ、ダクリズマブ、スレソマブ、アブシキシマブ、インフリキシマブ、ムロモナブ-CD3、パリビズマブ、アレムツズマブ、バシリキシマブ、オプレルベキン、ゲムツズマブオゾガミシン、イブリツモマブチウキセタン、スレソマブ、パリビズマブ、インターロイキン-2、セルモロイキン(rIL-2)、インターフェロンアルファコン-1、インターフェロンα、インターフェロンα+リバビリン、PEGインターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα3n、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ、インターフェロンβ1b、インターフェロンγ、インターフェロンγ-1b、フィルグラスチム、レノグラスチム、サルグラモスチム、モルグラモスチム、ミリモスチム、サルグラモスチム、ナルトグラスチム、オプレルベキン、ペプチドチロシン-チロシン(PYY)、アポリポ蛋白質A-IV、レプチン、メラノコルチン、アミリン、オレキシン、アディポネクチン、ならびにグレリンからなる群より選択される1つまたは複数の活性物質を組み合わせる段階を含む。「アディポカイン」と総称される他のペプチドは、満腹感の調節に関与しており、これにはペプチドチロシン-チロシン(PYY)、アポリポ蛋白質A-IV、レプチン、メラノコルチン、アミリン、オレキシン、アディポネクチンおよびグレリンが含まれる。治療用または予防用のポリペプチドは、そのようなポリペプチドの活性な誘導体または断片で良い。1つの態様では、活性物質は活性ポリペプチド、例えば、治療用または予防用のポリペプチドであり、ポリペプチドは150 kDa未満、より好ましくは100 kDa未満、およびより好ましくは50 kDa未満の分子量を有する。1つの態様では、活性化剤は活性ポリペプチド、例えば、治療用または予防用のポリペプチドであり、ポリペプチドは約500 Da〜5 kDa、約5 kDa〜10 kDa、約10 kDa〜30 kDa、約18 kDa〜35 kDa、約30 kDa〜50 kDa、約50 kDa〜100 kDa、約100 kDa〜150 kDaの分子量を有する。1つの態様では、活性ポリペプチドはインスリンまたはその活性断片もしくは誘導体である。別の態様では、活性ポリペプチドはヒト成長ホルモンまたはその活性断片もしくは誘導体である。さらに別の態様では、活性ポリペプチドはインターフェロンまたはその活性断片もしくは誘導体である。
【0084】
いくつかの態様では、活性物質は、活性物質とヘパリンとを混合することによって、組み合わされる。混合物を、例えば、混合、多糖の共有結合、多糖のイオン結合、スプレー乾燥、および当技術分野で公知の他の技術により調製することができる。他の態様では、活性物質は、活性物質と1つまたは複数のヘパリンとを製剤中で連結することによってヘパリンと組み合わされる。例えば、低分子薬物および蛋白質ベースの薬物は、EDC、CNBH4/DMSO/酢酸等のような既知の化学薬品を介して、送達用の多糖に連結できる。
【0085】
いくつかの態様では、製剤は乾燥製剤である。いくつかの態様では、乾燥製剤は、平均幾何直径1〜500ミクロンのヘパリン粒子、例えば、平均幾何直径が少なくとも2ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、25ミクロン、30ミクロン、35ミクロン、40ミクロン、45ミクロン、50ミクロン、または100ミクロンの粒子を含む。他の態様では、製剤は液体製剤、エアゾル、噴霧剤、または懸濁液である。
【0086】
いくつかの態様では、本方法はさらに1つまたは複数の送達増強剤、例えば、1つまたは複数の界面活性剤、吸収増強剤、プロテアーゼ阻害剤等を製剤に添加する段階を含む。
【0087】
いくつかの態様では、本方法はさらに、肺送達用の装置中、例えば、加圧もしくは非加圧式の容器もしくはディスペンサー、例えば、適当な噴射剤および/もしくは噴霧剤を含む加圧式の容器もしくはディスペンサーで製剤を提供または包装する段階、または使用者において活性化される段階を含む。1つの態様では、製剤は被検体に計量した用量の製剤を送達する、肺送達用の装置中で提供される。
【0088】
別の局面では、本発明は被検体に治療用または予防用の物質を送達する方法に関する。本方法は、有効量の治療用または予防用の物質および本明細書に記述されるような多糖を含む組成物を、被検者の肺組織に投与する段階を含む。
【0089】
好ましい態様では多糖はLMWHであり、エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、およびパルナパリンからなる群より選択される。
【0090】
いくつかの態様では、ヘパリンは未分画または分画ヘパリン(LMWH)から修飾される。いくつかの態様では、ヘパリンはエノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、およびパルナパリンからなる群より選択される分画ヘパリンから修飾される。
【0091】
1つの態様では、ヘパリンは約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20の二糖からなる。多糖が六糖またはそれ以上であることは特に好ましく、八糖またはそれ以上であることがさらに好ましい。
【0092】
1つの態様では、ヘパリンは、標準品(例えば、市販のヘパリンまたは修飾ヘパリンが由来したヘパリン)と比較して、そのサイズが低下するように修飾される。ヘパリンのサイズを、例えば、標準品と比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%またはそれ以上低下させることができる。1つの態様では、提供されるヘパリンのサイズを、例えば、本明細書に記述される方法によって、低下させることができる。
【0093】
別の態様では、標準品(例えば、市販のヘパリンまたは修飾ヘパリンが由来したヘパリン)と比較して、ヘパリンの電荷が変化(例えば、増加または減少)するように、ヘパリンは修飾される。ヘパリンの電荷を減少させることは、本明細書では電荷を「中和する」とも呼ばれる。いくつかの態様では、ヘパリンの電荷が中和されると、ヘパリンの正味の負または正の電荷を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%低下させることができる。別の態様では、ヘパリンの電荷が中和されると、正味の負または正の電荷が0となるように中和され得る。ヘパリンは、例えば、本明細書に記述される方法によって、中和することができる。他の態様では、多糖の正味の電荷が、例えば、本明細書に記述される方法によって、増加される。
【0094】
好ましい態様では、抗Xa活性および/または抗IIa活性が、標準と比較して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれ以上低下するように、多糖は修飾され、それにより治療用または予防用の物質が被検体に送達される。1つの態様では、標準は市販のヘパリンの抗Xa活性および/または抗IIa活性のレベル、または修飾前のヘパリンの抗Xa活性および/または抗IIa活性のレベルである。他の態様では、ヘパリンはその化学的特徴と、肺の活性、例えば、正常な生理機能および/またはホメオスタシスに関与する1つまたは複数の多糖の化学的特徴の類似性に基づいて、選択される。
【0095】
いくつかの態様では、活性物質、例えば、治療用または予防用の物質は、治療用または予防用のポリペプチド、核酸、低分子、脂質/糖脂質等である。1つの態様では、活性物質は、インスリン、プロインスリン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、α-1プロテイナーゼ阻害剤、アルカリホスファターゼ、アンジオジェニン、嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ、フィブリノーゲン、グルコセレブロシダーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、ヒト血清アルブミン、ミエリン塩基性蛋白質、可溶性CD4、ラクトフェリン、ライソザイム、ラクトアルブミン、エリスロポエチン、組織プラスミノーゲン活性化因子、アンチトロンビンIII、プロラクチン、およびα1-アンチトリプシンからなる群より選択される治療用ポリペプチドである。治療または予防用のペプチドは、そのようなポリペプチドの活性誘導体または断片でも良い。活性物質は、副甲状腺ホルモンならびにその誘導体および断片、エリスロポエチン、エポエチンβ、遺伝子活性化エリスロポエチン、第2世代EPO、新規赤血球形成刺激蛋白質、インスリンリスプロ、インスリン(ウシ)、インスリン、インスリンアスパルト、インスリンアナログ、カルシトニン、セラシン、ベカプレルミン(組換えヒト血小板由来成長因子-BB)、トラフェルミン、ヒト成長ホルモン放出因子、BMP-7、PEGアスパラギナーゼ、ドルナーゼα、アルグルセラーゼ、アガルシダーゼβ、ドルナーゼα、アガルシダーゼα、ストレプトキナーゼ、テネテプラーゼ、レテプラーゼ、アルテプラーゼ、パミテプラーゼ、Rh因子VIII、Rh FVIIa、因子IX(ヒト)、因子IX(複合体)、HGH、ソマトレム/ソマトロピン、抗CD33-カリケアマイシン結合体、エドレコロマブ、リタキスマブ、ダクリズマブ、トラスツズマブ、スレソマブ、アブシキシマブ、インフリキシマブ、ムロモナブ-CD3、パリビズマブ、アレムツズマブ、バシリキシマブ、オプレルベキン、ゲムツズマブオゾガミシン、イブリツモマブチウキセタン、スレソマブ、パリビズマブ、インターロイキン-2、セルモロイキン(rIL-2)、インターフェロンアルファコン-1、インターフェロンα、インターフェロンα+リバビリン、ペグインターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα3n、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ、インターフェロンβ1b、インターフェロンγ、インターフェロンγ-1b、フィルグラスチム、サルグラモスチム、レノグラスチム、モルグラモスチム、ミリモスチム、ナルトグラスチム、オプレルベキン、ペプチドチロシン-チロシン(PYY)、アポリポ蛋白質A-IV、レプチン、メラノコルチン、アミリン、オレキシン、アディポネクチン、ならびにグレリンのうちの1つまたは複数であってもよいが、これらに限定されない。「アディポカイン」と総称される他のペプチドは、満腹感の調節に関与しており、これにはペプチドチロシン-チロシン(PYY)、アポリポ蛋白質A-IV、レプチン、メラノコルチン、アミリン、オレキシン、アディポネクチンおよびグレリンが含まれる。1つの態様では、活性物質は活性ポリペプチド、例えば、治療用または予防用のポリペプチドであり、ポリペプチドは150 kDa未満、より好ましくは100 kDa未満、およびより好ましくは50 kDa未満の分子量を有する。1つの態様では、活性化剤は活性ポリペプチド、例えば、治療用または予防用のポリペプチドであり、ポリペプチドは約500 Da〜5 kDa、約5 kDa〜10 kDa、約10 kDa〜30 kDa、約18 kDa〜35 kDa、約30 kDa〜50 kDa、約50 kDa〜100 kDa、約100 kDa〜150 kDaの分子量を有する。1つの態様では、活性ポリペプチドはインスリンまたはその活性断片もしくは誘導体である。別の態様では、活性ポリペプチドはヒト成長ホルモンまたはその活性断片もしくは誘導体である。さらに別の態様では、活性ポリペプチドはインターフェロンである。
【0096】
別の態様では、活性物質は低分子薬物、例えば、治療用、診断用もしくは予防用に現在入手可能な低分子薬物、または開発中の薬物であってもよい。いくつかの態様では、活性物質は多糖と混合される。混合物を、例えば、混合、多糖の共有結合、多糖のイオン結合、スプレー乾燥、および当技術分野で公知の他の技術により調製することができる。他の態様では、活性物質は製剤中の1つまたは複数の多糖に連結される。例えば、低分子薬物および蛋白質ベースの薬物は、EDC、CNBH4/DMSO/酢酸等のような既知の化学薬品を介して、送達用の多糖に連結されても良い。
【0097】
他の態様では、組成物はヘパリン、例えば、本明細書に記述されるヘパリン、および不活性物質を含む。不活性物質の例には、生物学的プローブまたは画像化用の造影剤が含まれる。
【0098】
いくつかの態様では、ヘパリンは、ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNS,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNAc,6SGHNS,3S、またはΔUHNS,6SGHNS,3Sという構造を含むヘパリンのオリゴ糖の1つまたは複数の化学的特徴が、ヘパリンの抗Xa活性を低下させるために修飾されたヘパリン、例えば、少なくとも1つのΔUHNAc,6SGHNS,3S,6S,またはΔUHNAc,6SGHNS,3Sの構造を含むヘパリンである。いくつかの態様では、ヘパリンはM118であり、これは5,000 Daの分子量、1.0の多分散性、および他のLMWHよりも高いピーク8の重量パーセントを持つ。いくつかの態様では、ヘパリンの活性を修飾するために、1つもしくは複数の単糖もしくは二糖が、付加もしくは除去、ならびに/または1つもしくは複数のアセチル基および/もしくはスルホ基が、置換、除去もしくは付加される。
【0099】
いくつかの態様では、組成物は乾燥製剤として投与される。いくつかの態様では、乾燥製剤は、平均幾何直径1〜500ミクロンのヘパリン粒子、例えば、平均幾何直径が少なくとも2ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、25ミクロン、30ミクロン、35ミクロン、40ミクロン、45ミクロン、50ミクロン、または100ミクロンの粒子を含む。他の態様では、組成物は液体製剤(例えば、エアゾル、噴霧剤、または懸濁液)として投与される。
【0100】
いくつかの態様では、組成物はさらに1つまたは複数の送達増強剤、例えば、1つまたは複数の界面活性剤、吸収増強剤、プロテアーゼ阻害剤等を含む。
【0101】
いくつかの態様では、組成物は、肺送達用の装置から、例えば、加圧もしくは非加圧式の容器もしくはディスペンサー、例えば、適当な噴射剤および/もしくは噴霧剤を含む加圧式の容器もしくはディスペンサーから投与されるか、または使用者において活性化される。1つの態様では、組成物は被検体に計量した用量の製剤を送達する、肺送達用の装置から投与される。
【0102】
いくつかの態様では、治療用または予防用の物質の少なくとも一部、例えば、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上は、上肺に送達される。
【0103】
いくつかの態様では、治療用または予防用の物質のバイオアベイラビリティは、ヘパリンがない場合の治療用または予防用の物質のバイオアベイラビリティよりも、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上高い。
【0104】
別の局面では、本方法は治療に有効量のインスリンを被検体に送達する方法に関する。本方法は、有効量のインスリンおよび多糖、例えば、本明細書に記述されるような多糖を含む組成物を被検体の肺組織に投与し、それによりインスリンを被検体に送達する段階を含む。
【0105】
好ましい態様では、多糖はLMWHであり、エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、およびパルナパリンからなる群より選択される。
【0106】
いくつかの態様では、ヘパリンは未分画または分画ヘパリン(LMWH)から修飾される。いくつかの態様では、ヘパリンはエノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、およびパルナパリンからなる群より選択される分画ヘパリンから修飾される。
【0107】
1つの態様では、ヘパリンは約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20の二糖からなる。多糖が六糖またはそれ以上であることは特に好ましく、八糖またはそれ以上であることがさらに好ましい。
【0108】
1つの態様では、ヘパリンは、標準品(例えば、市販のヘパリンまたは修飾ヘパリンが由来したヘパリン)と比較して、そのサイズが低下するように修飾される。ヘパリンのサイズを、例えば、標準品と比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%またはそれ以上低下させることができる。1つの態様では、提供されるヘパリンのサイズを、例えば、本明細書に記述される方法によって、低下させることができる。
【0109】
別の態様では、標準品(例えば、市販のヘパリンまたは修飾ヘパリンが由来したヘパリン)と比較して、ヘパリンの電荷が変化(例えば、増加または減少)するように、ヘパリンは修飾される。ヘパリンの電荷を減少させることは、本明細書では電荷を「中和する」とも呼ばれる。いくつかの態様では、ヘパリンの電荷が中和されると、ヘパリンの正味の負または正の電荷を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%低下させることができる。別の態様では、ヘパリンの電荷が中和されると、正味の負または正の電荷が0となるように中和され得る。ヘパリンは、例えば、本明細書に記述される方法によって、中和することができる。他の態様では、多糖の正味の電荷が、例えば、本明細書に記述される方法によって、増加される。
【0110】
好ましい態様では、多糖の抗Xa活性および/または抗IIa活性が、標準と比較して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれ以上低下するように、多糖は修飾され、それにより治療用または予防用の物質が被検体に送達される。1つの態様では、標準は市販のヘパリンの抗Xa活性および/または抗IIa活性のレベル、または修飾前のヘパリンの抗Xa活性および/または抗IIa活性のレベルである。他の態様では、ヘパリンはその化学的特徴と、肺の活性、例えば、正常な生理機能および/またはホメオスタシスに関与する1つまたは複数の多糖の化学的特徴の類似性に基づいて、選択される。
【0111】
いくつかの態様では、インスリンは、インスリンリスプロ、インスリン(ウシ)、インスリン、インスリンアスパルト、およびインスリンアナログのうちの1つまたは複数であってもよい。
【0112】
いくつかの態様では、インスリンはヘパリンと混合される。混合物を、例えば、混合、多糖の共有結合、多糖のイオン結合、スプレー乾燥、および当技術分野で公知の他の技術により調製することができる。他の態様では、インスリンは製剤中の1つまたは複数のヘパリンに連結している。例えば、インスリンは、EDC、CNBH4/DMSO/酢酸等のような既知の化学薬品を介して、送達用のヘパリンに連結されても良い。
【0113】
いくつかの態様では、ヘパリンは、ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNS,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNAc,6SGHNS,3S、またはΔUHNS,6SGHNS,3Sという構造を含むヘパリンのオリゴ糖の1つまたは複数の化学的特徴が、ヘパリンの抗Xa活性を低下させるために修飾されたヘパリンである。いくつかの態様では、ヘパリンは、ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6SまたはΔUHNAc,6SGHNS,3Sのうちの少なくとも1つの構造を含む。いくつかの態様では、ヘパリンはM118であり、これは5,000 Daの分子量、1.0の多分散性、および他のLMWHよりも高いピーク8の重量パーセントを持つ。いくつかの態様では、ヘパリンの活性を修飾するために、1つもしくは複数の単糖もしくは二糖が、付加もしくは除去、ならびに/または1つもしくは複数のアセチル基および/もしくはスルホ基が、置換、除去もしくは付加される。
【0114】
いくつかの態様では、組成物は乾燥製剤として投与される。いくつかの態様では、乾燥製剤は、平均幾何直径1〜500ミクロンのヘパリン粒子、例えば、平均幾何直径が少なくとも2ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、25ミクロン、30ミクロン、35ミクロン、40ミクロン、45ミクロン、50ミクロン、または100ミクロンの粒子を含む。他の態様では、組成物は液体製剤(例えば、エアゾル、噴霧剤、または懸濁液)として投与される。
【0115】
いくつかの態様では、組成物はさらに1つまたは複数の送達増強剤、例えば、1つまたは複数の界面活性剤、吸収増強剤、プロテアーゼ阻害剤等を含む。
【0116】
いくつかの態様では、組成物は、肺送達用の装置から、例えば、加圧もしくは非加圧式の容器もしくはディスペンサー、例えば、適当な噴射剤および/もしくは噴霧剤を含む加圧式の容器もしくはディスペンサーから投与されるか、または使用者において活性化される。1つの態様では、組成物は被検体に計量した用量の製剤を送達する、肺送達用の装置から投与される。
【0117】
いくつかの態様では、インスリンの少なくとも一部、例えば、インスリンの少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上は、上肺に送達される。
【0118】
いくつかの態様では、インスリンのバイオアベイラビリティは、ヘパリンなしで肺の経路で送達されるインスリンのバイオアベイラビリティよりも、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上高い。
【0119】
1つの態様では、被検体は糖尿病に罹患し、組成物中のインスリンは約0.5〜300ユニット/kg/日、好ましくは1〜250ユニット/kg/日、5〜200ユニット/kg/日、10〜150ユニット/kg/日、25〜100ユニット/kg/日およびその間の整数の用量で投与される。組成物を、例えば、1日に1回、2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上の回数で投与することができる。1つの態様では、組成物は、食事および血糖測定のうちの1つまたは複数に対応して投与される。
【0120】
1つの態様では、組成物は、送達後5分〜最高5時間以内までにインスリンレベルのピークに達するように送達される。例えば、インスリンレベルのピークは、10分〜4時間以内、30分〜3時間以内、または1時間〜2時間以内に到達できる。1つの態様では、インスリンレベルのピークは、送達後1時間以内に到達する。インスリンレベルは、例えば、血中インスリンレベルおよび/または血糖値をモニターすることによって測定できる。
【0121】
1つの態様では、組成物は計量済み用量、例えば、少なくとも0.5 IU/kg、1 IU/kg、5 IU/kg、10 IU/kg、15 IU/kg、20 IU/kg、25 IU/kg、50 IU/kg、100 IU/kg、150 IU/kg、200 IU/kg、220 IU/kg、250 IU/kg、およびその間の整数で送達され、インスリンのバイオアベイラビリティは、送達の約5分〜5時間、10分〜4時間、30分〜3時間、または1時間〜2時間の間に、少なくとも約10μIU/ml、約100μIU/ml、約1000μIU/ml、約10000μIU/ml、約100000μIU/mlである。
【0122】
別の局面では、本方法は治療に有効量のヒト成長ホルモンを被検体に送達する方法に関する。本方法は、有効量のヒト成長ホルモンおよび多糖、例えば、本明細書に記述されるような多糖を含む組成物を被検体の肺組織に投与し、それによりヒト成長ホルモンを被検体に送達する段階を含む。
【0123】
好ましい態様では、多糖はLMWHであり、エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、およびパルナパリンからなる群より選択される。
【0124】
1つの態様では、被検体は成長ホルモン欠乏症(GHD)、GHDに伴う心血管リスク、ターナー症候群、多発性硬化症、慢性腎不全、プラダー・ウィリ症候群、または小児におけるGHDによる成長遅延のうちの1つまたは複数に罹患する。1つの態様では、標準は市販のヘパリンの抗Xa活性および/または抗IIa活性のレベル、または修飾前のヘパリンの抗Xa活性および/または抗IIa活性のレベルである。他の態様では、ヘパリンはその化学的特徴と、肺の活性、例えば、正常な生理機能および/またはホメオスタシスに関与する1つまたは複数の多糖の化学的特徴の類似性に基づいて、選択される。
【0125】
いくつかの態様では、ヘパリンは未分画または分画ヘパリン(LMWH)から修飾される。いくつかの態様では、ヘパリンはエノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、およびパルナパリンからなる群より選択される分画ヘパリンから修飾される。
【0126】
1つの態様では、ヘパリンは約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20の二糖からなる。多糖が六糖またはそれ以上であることは特に好ましく、八糖またはそれ以上であることがさらに好ましい。
【0127】
1つの態様では、ヘパリンは、標準品(例えば、市販のヘパリンまたは修飾ヘパリンが由来したヘパリン)と比較して、そのサイズが低下するように修飾される。ヘパリンのサイズを、例えば、標準品と比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%またはそれ以上低下させることができる。1つの態様では、提供されるヘパリンのサイズを、例えば、本明細書に記述される方法によって、低下させることができる。
【0128】
別の態様では、標準品(例えば、市販のヘパリンまたは修飾ヘパリンが由来したヘパリン)と比較して、ヘパリンの電荷が変化(例えば、増加または減少)するように、ヘパリンは修飾される。ヘパリンの電荷を減少させることは、本明細書では電荷を「中和する」とも呼ばれる。いくつかの態様では、ヘパリンの電荷が中和されると、ヘパリンの正味の負または正の電荷を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%低下させることができる。別の態様では、ヘパリンの電荷が中和されると、正味の負または正の電荷が0となるように中和され得る。ヘパリンは、例えば、本明細書に記述される方法によって、中和することができる。他の態様では、多糖の正味の電荷が、例えば、本明細書に記述される方法によって、増加される。
【0129】
好ましい態様では、多糖の抗Xa活性および/または抗IIa活性が、標準と比較して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれ以上低下するように、多糖は修飾され、それにより治療用または予防用の物質が被検体に送達される。1つの態様では、標準は市販のヘパリンの抗Xa活性および/または抗IIa活性のレベル、または修飾前のヘパリンの抗Xa活性および/または抗IIa活性のレベルである。他の態様では、ヘパリンはその化学的特徴と、肺の活性、例えば、正常な生理機能および/またはホメオスタシスに関与する1つまたは複数の多糖の化学的特徴の類似性に基づいて、選択される。
【0130】
いくつかの態様では、ヒト成長ホルモンはヘパリンと混合される。混合物を、例えば、混合、多糖の共有結合、多糖のイオン結合、スプレー乾燥、および当技術分野で公知の他の技術により調製することができる。他の態様では、ヒト成長ホルモンは製剤中の1つまたは複数のヘパリンに連結している。例えば、ヒト成長ホルモンは、EDC、CNBH4/DMSO/酢酸等のような既知の化学薬品を介して、送達用のヘパリンに連結されても良い。
【0131】
いくつかの態様では、ヘパリンは、ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNS,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNAc,6SGHNS,3S、またはΔUHNS,6SGHNS,3Sという構造を含むヘパリンのオリゴ糖の1つまたは複数の化学的特徴が、ヘパリンの抗Xa活性を低下させるために修飾されたヘパリンである。いくつかの態様では、ヘパリンは、ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6SまたはΔUHNAc,6SGHNS,3Sのうちの少なくとも1つの構造を含む。いくつかの態様では、ヘパリンはM118であり、これは5,000 Daの分子量、1.0の多分散性、および他のLMWHよりも高いピーク8の重量パーセントを持つ。いくつかの態様では、ヘパリンの活性を修飾するために、1つもしくは複数の単糖もしくは二糖が、付加もしくは除去、ならびに/または1つもしくは複数のアセチル基および/もしくはスルホ基が、置換、除去もしくは付加される。
【0132】
いくつかの態様では、組成物は乾燥製剤として投与される。いくつかの態様では、乾燥製剤は、平均幾何直径1〜500ミクロンのヘパリン粒子、例えば、平均幾何直径が少なくとも2ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、25ミクロン、30ミクロン、35ミクロン、40ミクロン、45ミクロン、50ミクロン、または100ミクロンの粒子を含む。他の態様では、組成物は液体製剤(例えば、エアゾル、噴霧剤、または懸濁液)として投与される。
【0133】
いくつかの態様では、組成物は、1つまたは複数の送達増強剤、例えば、1つまたは複数の界面活性剤、吸収増強剤、プロテアーゼ阻害剤等をさらに含む。
【0134】
いくつかの態様では、組成物は、肺送達用の装置から、例えば、加圧もしくは非加圧式の容器もしくはディスペンサー、例えば、適当な噴射剤および/もしくは噴霧剤を含む加圧式の容器もしくはディスペンサーから投与されるか、または使用者において活性化される。1つの態様では、組成物は被検体に計量した用量の製剤を送達する、肺送達用の装置から投与される。
【0135】
いくつかの態様では、ヒト成長ホルモンの少なくとも一部、例えば、ヒト成長ホルモンの少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上は、上肺に送達される。
【0136】
いくつかの態様では、ヒト成長ホルモンのバイオアベイラビリティは、ヘパリンなしで肺の経路で送達されるヒト成長ホルモンのバイオアベイラビリティよりも、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上高い。
【0137】
1つの態様では、組成物は1日当たり約0.01mg〜15mg、好ましくは0.05〜10mg/日、0.1〜5mg/日、0.5〜2mg/日、およびその間の整数の用量で投与される。組成物を、例えば、1日に1回、2回、3回、4回またはそれ以上の回数で投与することができる。1つの態様では、被検体はGHDの成人であり、組成物は1日あたり約0.01mg〜15mg、好ましくは0.05〜10mg/日、0.1〜5mg/日、0.5〜2mg/日、およびその間の整数の用量で投与される。1つの態様では、被検体は、例えばGHDの小児であり、組成物中のヒト成長ホルモンは1日あたり約0.01mg〜約1mg、0.05〜約0.5mg、およびその間の整数が送達される用量で投与される。別の態様では、被検体はターナー症候群に罹患し、組成物中のヒト成長ホルモンは約0.01mg/kg/日、約0.05mg/kg/日、約0.1mg/kg/日、約0.5mg/kg/日、約1mg/kg/日、または約2mg/kg/日の用量で被検体に投与される。さらに別の態様では、被検体は慢性腎不全、SGAまたは子宮内発育遅延、およびプラダー・ウィリ症候群のうちの1つまたは複数に罹患し、組成物中のヒト成長ホルモンは、約0.05mg/kg/日、約0.1mg/kg/日、約0.5mg/kg/日、約1mg/kg/日、約1.5mg/kg/日、または約2mg/kg/日の用量で被検体に投与される。
【0138】
1つの態様では、組成物は、送達後5分〜最高5時間以内までにヒト成長ホルモンレベルのピークに達するように送達される。例えば、ヒト成長ホルモンレベルのピークは、10分〜4時間以内、30分〜3時間以内、または1時間〜2時間以内に到達できる。1つの態様では、ヒト成長ホルモンレベルのピークは、送達後1時間以内に到達する。ヒト成長ホルモンレベルは、例えば、血中ヒト成長ホルモンレベルをモニターすることによって測定できる。いくつかの態様では、ヒト成長ホルモン活性は、例えば、血清IGF-Iレベルおよび/または体組成の変化によって、測定できる。
【0139】
1つの態様では、組成物は計量済み用量、例えば、少なくとも0.5 IU/kg、1 IU/kg、5 IU/kg、10 IU/kg、15 IU/kg、20 IU/kg、25 IU/kg、50 IU/kg、100 IU/kg、150 IU/kg、200 IU/kg、220 IU/kg、250 IU/kg、およびその間の整数で送達され、ヒト成長ホルモンのバイオアベイラビリティは、送達の約5分〜5時間、約10分〜4時間、約30分〜3時間、または約1時間〜2時間の間に、少なくとも約5 ng/ml、約10 ng/ml、約15 ng/ml、約20 ng/ml、約25 ng/ml、約30 ng/ml、約40 ng/ml、約50 ng/ml、またはそれ以上である。
【0140】
別の局面では、本方法は治療に有効量のインターフェロン(例えば、インターフェロンαおよび/またはインターフェロンβ)を被検体に送達する方法に関する。本方法は、有効量のインターフェロンおよび多糖、例えば、本明細書に記述されるような多糖を含む組成物を被検体の肺組織に投与し、それによりインターフェロンを被検体に送達する段階を含む。
【0141】
好ましい態様では、多糖はLMWHであり、エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、およびパルナパリンからなる群より選択される。
【0142】
1つの態様では、被検体は、癌(例えば、腎臓の癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、類癌腫、リンパ腫、および白血病)、肝炎(例えば、B型肝炎およびC型肝炎)、ならびに多発性硬化症のうちの1つまたは複数に罹患する。1つの態様では、標準は市販のヘパリンの抗Xa活性および/または抗IIa活性のレベル、または修飾前のヘパリンの抗Xa活性および/または抗IIa活性のレベルである。他の態様では、ヘパリンはその化学的特徴と、肺の活性、例えば、正常な生理機能および/またはホメオスタシスに関与する1つまたは複数の多糖の化学的特徴の類似性に基づいて、選択される。
【0143】
いくつかの態様では、ヘパリンは未分画または分画ヘパリン(LMWH)から修飾される。いくつかの態様では、ヘパリンはエノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン、チンザパリン、ナドロパリン、セルトパリン、アルデパリン、およびパルナパリンからなる群より選択される分画ヘパリンから修飾される。
【0144】
1つの態様では、ヘパリンは約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20の二糖からなる。多糖が六糖またはそれ以上であることは特に好ましく、八糖またはそれ以上であることがさらに好ましい。
【0145】
1つの態様では、ヘパリンは、標準品(例えば、市販のヘパリンまたは修飾ヘパリンが由来したヘパリン)と比較して、そのサイズが低下するように修飾される。ヘパリンのサイズを、例えば、標準品と比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%またはそれ以上低下させることができる。1つの態様では、提供されるヘパリンのサイズを、例えば、本明細書に記述される方法によって、低下させることができる。
【0146】
別の態様では、標準品(例えば、市販のヘパリンまたは修飾ヘパリンが由来したヘパリン)と比較して、ヘパリンの電荷が変化(例えば、増加または減少)するように、ヘパリンは修飾される。ヘパリンの電荷を減少させることは、本明細書では電荷を「中和する」とも呼ばれる。いくつかの態様では、ヘパリンの電荷が中和されると、ヘパリンの正味の負または正の電荷を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%低下させることができる。別の態様では、ヘパリンの電荷が中和されると、正味の負または正の電荷が0となるように中和され得る。ヘパリンは、例えば、本明細書に記述される方法によって、中和することができる。他の態様では、多糖の正味の電荷が、例えば、本明細書に記述される方法によって、増加される。
【0147】
好ましい態様では、多糖の抗Xa活性および/または抗IIa活性が、標準と比較して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれ以上低下するように、多糖は修飾され、それにより治療用または予防用の物質が被検体に送達される。1つの態様では、標準は市販のヘパリンの抗Xa活性および/または抗IIa活性のレベル、または修飾前のヘパリンの抗Xa活性および/または抗IIa活性のレベルである。他の態様では、ヘパリンはその化学的特徴と、肺の活性、例えば、正常な生理機能および/またはホメオスタシスに関与する1つまたは複数の多糖の化学的特徴の類似性に基づいて、選択される。
【0148】
いくつかの態様では、インスリンは、インスリンリスプロ、インスリン(ウシ)、インスリン、インスリンアスパルト、およびインスリンアナログのうちの1つまたは複数であってもよい。
【0149】
いくつかの態様では、インターフェロンはヘパリンと混合される。混合物を、例えば、混合、多糖の共有結合、多糖のイオン結合、スプレー乾燥、および当技術分野で公知の他の技術により調製することができる。他の態様では、インターフェロンは製剤中の1つまたは複数のヘパリンに連結している。例えば、インターフェロンは、EDC、CNBH4/DMSO/酢酸等のような既知の化学薬品を介して、送達用のヘパリンに連結されても良い。
【0150】
いくつかの態様では、ヘパリンは、ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNS,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNAc,6SGHNS,3S、またはΔUHNS,6SGHNS,3Sという構造を含むヘパリンのオリゴ糖の1つまたは複数の化学的特徴が、ヘパリンの抗Xa活性を低下させるために修飾されたヘパリンである。いくつかの態様では、ヘパリンは、ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6SまたはΔUHNAc,6SGHNS,3Sのうちの少なくとも1つの構造を含む。いくつかの態様では、ヘパリンはM118であり、これは5,000 Daの分子量、1.0の多分散性、および他のLMWHよりも高いピーク8の重量パーセントを持つ。いくつかの態様では、ヘパリンの活性を修飾するために、1つもしくは複数の単糖もしくは二糖が、付加もしくは除去、ならびに/または1つもしくは複数のアセチル基および/もしくはスルホ基が、置換、除去もしくは付加される。
【0151】
いくつかの態様では、組成物は乾燥製剤として投与される。いくつかの態様では、乾燥製剤は、平均幾何直径1〜500ミクロンのヘパリン粒子、例えば、平均幾何直径が少なくとも2ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、25ミクロン、30ミクロン、35ミクロン、40ミクロン、45ミクロン、50ミクロン、または100ミクロンの粒子を含む。他の態様では、組成物は液体製剤(例えば、エアゾル、噴霧剤、または懸濁液)として投与される。
【0152】
いくつかの態様では、組成物はさらに1つまたは複数の送達増強剤、例えば、1つまたは複数の界面活性剤、吸収増強剤、プロテアーゼ阻害剤等を含む。
【0153】
いくつかの態様では、組成物は、肺送達用の装置から、例えば、加圧もしくは非加圧式の容器もしくはディスペンサー、例えば、適当な噴射剤および/もしくは噴霧剤を含む加圧式の容器もしくはディスペンサーから投与されるか、または使用者において活性化される。1つの態様では、組成物は被検体に計量した用量の製剤を送達する、肺送達用の装置から投与される。
【0154】
いくつかの態様では、インターフェロンの少なくとも一部、例えば、インターフェロンの少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上は、上肺に送達される。
【0155】
いくつかの態様では、インターフェロンのバイオアベイラビリティは、ヘパリンなしで肺の経路で送達されるインターフェロンのバイオアベイラビリティよりも、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上高い。
【0156】
1つの態様では、組成物は、送達後5分〜最高15時間以内までにインターフェロンレベルのピークに達するように送達される。例えば、インターフェロンレベルのピークは、10分〜10時間以内、30分〜7時間以内、または1時間〜5時間以内に到達できる。1つの態様では、インターフェロンレベルは、例えば、血中インターフェロンレベルをモニターすることによって測定できる。
【0157】
1つの態様では、組成物は計量済み用量、例えば、インターフェロンのバイオアベイラビリティが、投与後約10分〜10時間、約30分〜7時間、または約1時間〜5時間に、少なくとも約3 IU/ml、約5 IU/ml、約7 IU/ml、約10 IU/ml、約15 IU/ml、または約20 IU/mlになる用量で、送達される。
【0158】
発明の詳細な説明
ヘパリンおよび低分子ヘパリン(LMWH)のような多糖が、生物学的製剤のサイズに無関係に、治療および予防に有効なレベルで、生物学的製剤を肺組織を介して全身循環に送達することが発見された。さらに、例えば多糖の化学的特徴を同定することにより多糖の活性を低下させると、多糖は、多糖由来の副作用を低下させた肺送達のための活性物質の増強製剤を提供することが分かった。
【0159】
本明細書に記述される方法は、過去には限定的な成功しか見られなかった投与経路により、高いバイオアベイラビリティレベルで、生物学的製剤を送達するために使用できる。図面に示されるように、肺送達プロファイルが増強された、LMWHおよび生物学的製剤、すなわちインスリンまたはヒト成長ホルモンを含む組成物が生産された。
【0160】
本明細書で使用する「多糖」とは、互いに連結した単糖を含むポリマーである。多くの多糖では、多糖の基本構成要素は、実際には二糖ユニットであり、これは反復する場合も反復しない場合もある。したがって、多糖に関して使用されるユニットは、多糖の基本構成要素を指し、単量体の構成要素(単糖)または2量体の構成要素(二糖)を含んでもよい。多糖には、ヘパリン様グリコサミノグリカンおよびその誘導体およびアナログ、コンドロイチン硫酸およびその誘導体およびアナログ、ヒアルロン酸およびその誘導体またはアナログ、デルマタン硫酸およびその誘導体またはアナログ、ケラタン硫酸およびその誘導体またはアナログ、キチン誘導体およびそのアナログ、例えば、6-0硫酸化カルボキシメチルキチン、キトサンおよびその誘導体またはアナログ、フェリナス・リンテウス(phellinus linteus)から単離された免疫原性多糖PI-88(酵母であるピキア・ホルスティ(pichia holstii)の発酵により生産される高分子量コアから精製されるホスホマンナンの硫酸化に由来する高度に硫酸化されたオリゴ糖混合物)およびその誘導体およびアナログ、ワクチン用多糖抗原、ならびにカルシウムスピルラン (Ca-SP、藍藻類であるスピルリナ・プラテンシス(spirulina platensis)から単離された) およびその誘導体およびアナログが含まれるが、これらに限定されない。
【0161】
1つの好ましい多糖はHLGAGである。したがっていくつかの態様では、多糖は活性を低下させたヘパリン様グリコサミノグリカン(HLGAG)である。本明細書に開示する方法は、HLGAGに関して記述される場合があるが、本明細書に開示される性質は他の多糖にも拡張でき、請求項中にそうではないという記載がない限り、請求の範囲は任意の多糖を含む。本明細書で使用される「HLGAG」および「グリコサミノグリカン」という用語は、互換的に使用され、ヘパリン様構造および性質を持つ分子ファミリーをさす。これらの分子には、低分子ヘパリン(LMWH)、ヘパリン、生物工学的ヘパリン、化学修飾されたヘパリン、合成ヘパリン、ヘパリン模倣物、およびヘパラン硫酸が含まれるが、これらに限定されない。「生物工学的ヘパリン」という用語は、化学修飾された多糖の天然供給源から調製され、Razi et al., Bioche. J. 1995 Jul 15;309 (Pt 2): 465-72に記述されるヘパリンを含む。化学修飾されたヘパリンは、Yates et al., Carbohydrate Res (1996) Nov 20;294:15-27に記述されており、当技術分野で公知である。合成ヘパリンは当技術分野で周知である。ヘパラン硫酸はヘパリンと類似した二糖反復ユニットを含むが、Nアセチル基がより多く、NおよびO硫酸基がより少ないグリコサミノグリカンを指す。ヘパリン模倣物は、ヘパリンの少なくとも1つの生物学的活性(すなわち、抗凝固、癌阻害、肺疾患治療等)を持つ、またはヘパリンと構造的に類似した特性を持つ、単糖(例えば、スクラルファート)、オリゴ糖、または多糖をさす。好ましくは、これらの分子は高度に硫酸化されている。ヘパリン模倣物は、天然型、合成型、または化学修飾されている。(Barchi, J.J., Curr. Pharm. Des., 2000, Mar, 6(4):485-501)。「HLGAG」という用語は、上記のHLGAG分子の機能的変種も含む。これらの機能的変種は類似した構造を有するが、構造にわずかな修飾を含む。
【0162】
本明細書で使用される「LMWH」とは、平均分子量が8000 Da未満であり、LMWH調製物のオリゴ糖鎖の少なくとも約60%が8000 Da未満の分子量を有する、硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)を指す。いくつかのLMWH調製物が市販されているが、LMWHは例えばHLGAG分解酵素を用いて、ヘパリンから調製することもできる。HLGAG分解酵素には、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼ、D-グルクロニダーゼ、およびL-イズロニダーゼが含まれるが、これらに限定されない。フラボバクテリウム・ヘパリナム(Flavobacterium heparinum)から得られる3つのヘパリナーゼは、LMWH (5,000〜8,000 Da)および超低分子ヘパリン(〜3,000 Da)の作製に使用されてきた、道具となる酵素である。市販のLMWHには、エノキサパリン(ブランド名Lovenox、Aventis Pharmaceuticals; 他のエノキサパリンには、Opocrin, Gland, Enorinにより製造されるもの含まれる)、ダルテパリン(Fragmin、Pharmacia and Upjohn)、セルトパリン(Sandobarin, Novartis)、アルデパリン(Normiflo, Wyeth Lederle)、ナドロパリン(Fraxiparine, Sanofi-Winthrop)、パルナパリン(Fluxum, Wassermann)、レビパリン(Clivarin, Knoll AG)、およびチンザパリン(Innohep, Leo Laboratories, Logiparin, Novo Nordisk)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「合成ヘパリン」または「合成HLGAG」は、合成化合物であって、ヘパリンの切断によるものではないHLGAGを指す。合成ヘパリンの調製方法は、例えば、その内容が参照により本明細書に組み入れられるPetitou et al. (1999) Nature 398:417に提供されている。合成ヘパリンという用語は、それらの誘導体も含む。
【0163】
多糖の生物活性を低下させる方法
本発明の多糖は、多糖の1つまたは複数の治療活性を低下させるために修飾することができる。例えばヘパリンは、血液凝固の第Xa因子および第IIa因子に対抗する1つまたは複数の活性が低下するように修飾することができる。
【0164】
多糖は例えば、多糖の正味の電荷、質量、および/またはサイズを低下させることによって、多糖の治療活性が低下するように修飾できる。これらの修飾は、例えば本明細書に記述されるように、酵素的または化学的のいずれかによってできる。得られた活性は、標準的な発色測定法を用いて決定できる。
【0165】
ヘパリンのXaについては、活性はその構造内にあるピーク8または四糖を含むオリゴ糖配列に基づく可能性がある。ヘパリンの抗Xa活性を低下させるためには、いくつかの方法がある。例えば、ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNS,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNAc,6SGHNS,3S、またはΔUHNS,6SGHNS,3Sという構造を含むヘパリンに対して、以下の1つまたは複数を行なうことができる:硫酸化を低下させる、非硫酸で官能基を修飾する、および鎖のサイズをオリゴ糖以下に低下させる。具体的には、2-O、3-O、6-O、および/またはN硫酸の除去の種々の組み合わせを、ヘパリンの抗Xa活性を完全または部分的に低下させるために使用することができる。
【0166】
ヘパリンのIIaについては、活性はやはりピーク8を含む18糖に基づく可能性がある。したがって、抗Xa活性の低下に記述されたのと同一の手法で、抗IIa活性を低下させることができる。手法は、分子量/鎖のサイズの低下を含む。
【0167】
多糖の活性を調節するために使用可能な方法および修飾多糖の活性を測定するために使用可能な方法を以下に説明する。
【0168】
多糖の化学的特徴を決定する方法、ならびに多糖の活性、電荷および/またはサイズを調節する方法
多糖の治療活性を低下させるために多糖を修飾することに加えて、多糖はその正味の電荷、質量、および/またはサイズを変化させるためにも修飾できる。本明細書に記述される肺送達プロファイルは、例えば、多糖を中和させる、多糖に荷電要素を付加する、ならびに/または多糖の質量および/もしくは構造の質量を低下させることによって、さらに増強できる。例えば、多糖の化学的特徴を使用して、電荷を修飾、例えば、中和または増大、および/または多糖のサイズを低下させることができる。
【0169】
本明細書で使用される「中和された製剤」は、正味の負または正の電荷が少なくとも10%低下または遮蔽された製剤である。別の態様では、中和された製剤は、正味の負または正の電荷が、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは100%またはその間の任意の整数低下した製剤である。「完全に中性の」製剤は、正味の負および正の電荷が0であるものである。
【0170】
多糖の特異的な治療活性を低下させる、および/または肺経路により1つまたは複数の活性物質の送達を増強するために、多糖の特異的な化学的特徴を同定および操作することができる。多糖の生物活性を低下させる、および/または多糖に伴う活性物質(例えば、治療用、予防用または診断用物質)の送達を増強するために、多糖の化学的特徴をさまざまな技術によって変化させることができる。多糖の化学的特徴を決定する方法は開発されてきた。本明細書では化学的特徴とは、例えば多糖の構成要素である単糖および二糖の識別および数に関する情報、総電荷(「正味の電荷」とも呼ぶ)、電荷密度、分子サイズ、電荷対質量の比、およびイズロン酸および/またはグルクロン酸含量のような物理化学的特性、ならびに単糖および二糖構成要素の間の関係、ならびにこれらの構成要素に伴う活性部位に関する情報を指す。本明細書で記述されるように、特定の化学的特徴を用いて、1つもしくは複数の治療活性が低下した、および/または肺送達特性が増強した多糖を調合することが可能である。化学的特徴は、以下から選択される1つまたは複数の主要アウトプットを決定することによって提供できる:1つまたは複数の成分の糖または二糖の存在または量;1つまたは複数の構成要素の存在または量であって、ここで構成要素は複数の糖または多糖から構成される; 1つまたは複数の糖代表物の存在または量であって、ここで糖代表物は検出性を増強するために修飾された糖である;3次元構造の指標または3次元構造に関連するパラメータの存在または量、例えば活性、例えば多糖の架橋によって生成する構造の存在または量、例えば直鎖状の配列では隣接していない特定の糖の架橋;または1つまたは複数の修飾糖の存在または量であって、ここで修飾糖は調製物を作製するために使用した開始材料に存在するが、調製物の生産において変化したもの、例えば、切断によって修飾された糖である。化学的特徴は、副次的アウトプットを決定することによっても提供でき、これには以下の1つまたは複数が含まれる:総電荷;電荷密度。
【0171】
ヘパリンに関しては、「1」または「ピーク1」はΔU2SHNS,6Sをさす;「2」または「ピーク2」はΔU2SHNSをさす;「3」または「ピーク3」はΔUHNS,6Sをさす;「4」または「ピーク4」はΔU2SHNAc,6Sをさす;「5」または「ピーク5」はΔUHNSをさす;「6」または「ピーク6」はΔU2SHNAcをさす;「7」または「ピーク7」はΔUHNAc,6Sをさす;「8」または「ピーク8」はΔUHNAc,6SGHNS,3S,6S;ΔUHNS,6SGHNS,3S,6S;ΔUHNAc,6SGHNS,3S;またはΔUHNS,6SGHNS,3Sを集合的にさす。「ΔU」という名称は、ヘパリナーゼのリアーゼ活性の結果として4-5の位置に導入された二重結合を持つ不飽和ウロン酸(イズロン酸(I)またはグルクロン酸(G)をさす。二重結合が導入されると、立体異性体IとUの区別が消失するため、ΔUという表示が使われる:Δは二重結合、UはIまたはUのいずれにも由来することを示す。したがって、本明細書で使用される「ΔU」はIとGの両方を表すので、ΔU2SHNS,6SはΔI2SHNS,6SおよびΔG2SHNS,6Sの両方を含み、ΔU2SHNSはΔI2SHNSおよびΔG2SHNSの両方を含む、以下同様。
【0172】
多糖の化学的性質または特性を同定し、さらにこの情報を使って1つまたは複数の治療活性が低下したおよび/またはインビボ送達能力が増強した多糖を作製する過程は、本明細書では多糖の化学的調合過程と呼ばれる。例えば、この情報を使って、抗Xa活性、抗IIa活性、またはヘパリンの他の活性に関与するヘパリン内の構造についての情報を生成したり、この情報を用いてヘパリンのこれらの活性の1つまたは複数を低下させたりすることができる。
【0173】
化学的調合では、例えば、特定の多糖に伴う治療活性を低下させつつ、活性物質の送達のための適当なバランスを獲得するために、化学的要素を用いて組成物を調製する。化学的調合では、種々の技術を用いて多糖の構造解析または配列決定を行い、その後、調合、例えば、1つもしくは複数の単糖の修飾および/または構造に基づいて電荷を遮蔽もしくは付加するなどの、その単糖の結合もしくは成分の修飾を行なう。これは多糖の物理的調合とは異なり、物理的調合はすべて粒子の物理的正常である粒子サイズ、タップ密度等のような粒子の物理的属性に基づいて、当技術分野で公知の方法によって粒子の加工を行なうことを指す。本発明の組成物および方法は、多糖の副作用を低下させながら活性物質の効率的な肺への送達を行なうための、多糖の化学的調合を最低限伴う。化学的調合に加え、例えば特定の粒子サイズ、タップ密度等を達成するために、多糖の物理的な調合も行なってもよい。そのような化学的調合は、物理的調合がなくても、活性物質の肺への送達を増強する可能性があることが分かった。分析できる特定の化学的性質の1つは電荷である。多糖の電荷を中和すると、例えば、多糖が脂質膜を透過するまたは上皮バリアを透過する能力が増強する可能性がある。本明細書で使用される「中和」、「中和する」および「中和させる」という用語は、材料の正味の負または正の電荷が少なくとも10%、およびいくつかの態様では少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは100%またはその間の任意の整数低下または遮蔽された、多糖を作製する過程をさす。ヘパリンのような多糖の正味または全体の電荷は、ヘパリンの質量を二糖の平均分子量(500)で割り、その数に二糖当たりの平均電荷(例えば、2.3)を掛けることにより、計算できる。二糖当たりの平均電荷は、多糖ごとに異なる可能性がある。平均電荷は、多分散組成物中に存在する多糖の平均電荷である。組成物中の各多糖の正味の電荷は、さまざまである可能性がある。二糖当たりの電荷を含む、多糖の電荷を決定する方法は、例えば、Venkataraman, G. et al. Science, 286, 537-542 (1999)に記述されている。電荷の中和は、さまざまな方法で実行できる。好ましくは、多糖の電荷を決定する。その決定に基づいて、電荷中和のための適当な戦略、例えば、多糖の送達特性を維持または増強する戦略を、選択することができる。一般に、より高い電荷の多糖は、電荷を遮蔽するために、より高い濃度の中和剤を使用するとより効果的に中和できる。例えば、あるヘパリンオリゴ糖の化学的分析では、この分子が合計17の負の電荷、主にO-硫酸を含むことが分かった。このヘパリン分子の電荷の中和および粉末形成は、200 mM塩化ナトリウムpH 4.5の溶液を用いて、多糖を沈殿させることによって実施された。同様に、低分子ヘパリンのような不均質なヘパリン集団が化学的に分析され、24〜32の負の電荷の平均電荷分散を持つことが分かった。この材料の電荷の中和および最適粉末形成を、効果的に電荷を遮蔽するために、より高濃度の塩、対イオン、および/または異なるpHを用いて実施した。
【0174】
中和は電荷中和剤を用いて達成できる。本明細書で使用される「電荷中和剤」は、反対に荷電した分子と相互作用し、それにより電荷を中和する能力のある、正または負に荷電した化合物である。電荷中和剤には、バリウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、マグネシウム、および亜鉛を含むがこれらに限定されない1価および2価のイオンのような対イオン、ならびに鉄、ニッケル、および銅のような遷移金属、ならびに有機低分子、スペルミン、スペルミジン、低分子プロタミン、または塩基性ペプチドのような他の中和化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0175】
多糖が負に荷電している場合、多糖を中和するために正に荷電した化合物を使用することができる。同様に、多糖が正に荷電している場合、負に荷電した化合物を使用することができる。例えば、化学分析によって、多糖の電荷のタイプおよび量が決定された場合、適当な量の中和化合物を選択することができる。電荷のタイプと量は試料ごとに異なる可能性があるので、中和化合物の正確な量は、特定の試料に依存する。一般に、荷電した部分を数少なくしか持たない多糖の電荷を低下させるためには低濃度の中和剤で十分であるが、より高度に荷電した分子のためには中和剤の濃度を上げることが望ましい。
【0176】
検討できる多糖の他の化学的性質は、多糖中に存在する2-O硫酸化イズロン酸部分の量である。2-O硫酸化イズロン酸部分は、多糖の他の成分とは明確に異なる様式で金属をキレート化する。したがって中和に有用な対イオンの性質および量は、多糖中の2-O硫酸化イズロン酸の数および位置によってある程度決定される。例えば、2-O硫酸化イズロン酸の程度が高い(〜80%)ヘパリンは、ナトリウム塩ではなくカルシウムまたはバリウム塩を用いて効率良く沈殿したが、2-O硫酸化イズロン酸の程度が低いヘパラン硫酸は、これと同じ条件を用いては適切に沈殿しなかった。一般に、多糖の2-O硫酸化イズロン酸の程度がより高いと、より高い濃度の中和剤とより効率的に調合される。
【0177】
さらに、多糖の長さも調合に影響する。多糖の長さに基づいて、異なるタイプおよび濃度の、有機溶媒のような有機修飾剤は、多糖の調合特性に異なる効果を示す。例えば、異なるサイズのヘパリンオリゴ糖は、有機溶媒のさまざまな濃度で、最適な粉末を形成した。一般に、オリゴ糖の鎖が長く電荷の数が高いほど、非水性溶液中での多糖の溶解度は低下する。したがって、化学的特徴としてのサイズおよび電荷密度に基づいて、有機修飾剤のさまざまな容積当量を添加して、粉末を形成できる。一般に、特定の多糖クラス(すなわちHLGAG)の中ではオリゴヌクレオチドが長ければ長いほど、より低い濃度の有機修飾剤で増強された結果を生じると考えられる。
【0178】
本明細書で使用される有機修飾剤は、例えば、アルコールのような有機溶媒、およびアセトニトリル、アセトン、またはジメチルスルフォキシドのような極性有機溶媒、ならびにそれらの混合物である。
【0179】
多糖の活性、サイズ、および/または電荷を、少なくとも1つの物質で多糖を消化することにより低下させることができる。物質は、例えば、多糖の化学的特徴に関して得られた情報に基づいて選択できる。例えば、多糖を選択的に切断する酵素および/または化学薬品を使用することができる。したがって、例えば生物活性に関与および/または影響するポリペプチドの領域が切断でき、生物活性に関与および/または影響しないポリペプチドの領域が無傷で残るようにした多糖を作製できる。本明細書で使用される「無傷で」という用語は、非切断型であり完全であることを意味する。
【0180】
例えば、少なくとも1つの活性、例えば、抗Xa活性および/または抗IIa活性が低下したLMWHが作製できる。ヘパリンが仲介する活性の例には、抗Xa活性、抗IIa活性、プロタミン中和、抗凝固/抗血栓形成、細胞増殖、例えば、望まない細胞の増殖、例えば、望まない悪性または非悪性細胞の増殖;血管形成;炎症過程;細胞移動;細胞活性化;細胞接着が含まれる。そのような活性を測定するための標準的な方法は公知である。例えば、抗Xa活性は、Teien et al., Thrombo. Res. 10:399-410 (1977)によって記述された発色基質上のアミド分解法によって、LMWHの最初の国際標準である標準を用いて測定できる。抗IIa活性を測定する方法は、例えば、Anderson et al., Thrombo. Res. 15:531-541 (1979)によって記述されており、LMWHの最初の国際標準である標準を用いる。
【0181】
HLGAG断片は、例えば、ヘパリンリアーゼ酵素(ヘパリナーゼ)のような酵素または亜硝酸を用いて分解できる。硫酸基を特定の位置に転位させる、または硫酸基をそれらの位置から除去する種々の酵素を用いても修飾できる。修飾酵素は、外分解性(exolytic)および非前進型であり、これは酵素が非還元末端に1度のみ作用し、鎖の残りを順次修飾することなく、ヘパリン鎖を放すことを意味する。二糖ユニットの修飾可能な各位置につき、1つの修飾酵素が存在する。硫酸基を付加する酵素は、スルフォトランスフェラーゼと呼ばれ、硫酸基を除去する酵素はスルファターゼと呼ばれる。修飾酵素には、2-Oスルファターゼ/スルフォトランスフェラーゼ、3-Oスルファターゼ/スルフォトランスフェラーゼ、6-Oスルファターゼ/スルフォトランスフェラーゼ、およびN-デアセチラーゼ-N-スルフォトランスフェラーゼが含まれる。これらの酵素の機能は、その名前から明らかであり、例えば、2-Oスルフォトランスフェラーゼは硫酸基をイズロン酸の2-Oの位置に転位させ(2-O硫酸化グルクロン酸はHLGAG鎖にはまれにしか存在しない)、2-Oスルファターゼはイズロン酸の2-Oの位置から硫酸基を除去する。
【0182】
HLGAG分解酵素には、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIII、ヘパリナーゼIV、ヘパラナーゼ、D-グルクロニダーゼ、およびL-イズロニダーゼ、修飾されたヘパリナーゼ、これらの変種および機能活性のある断片が含まれるが、これらに限定されない。フラボバクテリウム・ヘパリナムから得られる3つのヘパリナーゼは、LMWH (5,000〜8,000 Da)および超低分子ヘパリン(≦3,000 Da)の作製に使用されてきた、道具となる酵素である。ヘパリナーゼIはHLGAGの高度に硫酸化された領域を2-O硫酸化ウロン酸の位置で切断するが、ヘパリナーゼIIはこれより広い基質特異性を持ち、2-O硫酸化および非硫酸化ウロン酸を含むグリコシド結合を切断する(Ernst, S., Langer, R., Cooney, C.L. & Sasisekliaran, R. (1995) Crit Rev Biochem Mol Biol 30, 387-444)。ヘパリナーゼIIIはヘパリナーゼIとは反対に、主にHLGAGの硫酸化の少ない領域、すなわち、非硫酸化ウロン酸を含むグリコシド結合を切断する(Ernst, S., Langer, R., Cooney, C.L. & Sasiseldiaran, R. (1995) Crit Rev Biochem Mol Biol 30, 387-444)。いくつかの特許および特許出願が、ヘパリナーゼの有用な修飾ならびに変種および断片を記述しており、これには米国特許第6,217,863号ならびに係属出願中の第09/384,959号および第09/802,285号が含まれる。他の修飾および変種も有用である。
【0183】
グルクロニダーゼおよびイズロニダーゼは、その名前のとおり、それぞれグルクロン酸およびイズロン酸の後のグリコシド結合を切断する。亜硝酸はN-硫酸化ヘキソサミンの後のグリコシド結合を無作為に切断し、ヘキソサミンの6員環を無水マンニトールの5員環に変換する。
【0184】
HLGAGのような多糖の消化に有用な化学薬品には、H2O2またはCu+およびH2O2を用いた酸化的脱重合、硝酸イソアミルまたは亜硝酸による脱アミノ化切断、アルカリ処理またはヘパリナーゼによるヘパリンのベンジルエステルを用いたβ除去切断からなる群より選択される化学薬品が含まれる。
【0185】
多糖の電荷および他の性質を同定する方法は、Venkataraman, G., et al., Science, 286, 537-542 (1999)、およびともに2000年4月24日に出願され、参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第09/557,997号および第09/558,137号に記載されている。
【0186】
調合された多糖組成物
本発明の多糖を、送達を増強または放出を遅くするさらなる物質なしで活性物質を送達するために使用しても、治療に有効なレベルの活性物質が肺の経路から送達できることが分かった。
【0187】
本組成物は、固体または液体の形態でも作製できる。固体の一例は、乾燥粒子、例えば、参照として内容が本明細書に組み入れられるPCT出願番号02/32406に記述されたような肺送達のための乾燥粒子である。
【0188】
本発明の多糖は、任意で薬学的に許容される担体と調合されていてもよい。そのような調製物は、塩、緩衝剤、保存剤、適合担体、アジュバント、および任意で他の治療用成分を、薬学的に許容できる濃度で日常的に含んでもよい。組成物はさらに、特定の送達装置中に調合しても良い。以下に記述するように、多糖は意図した送達経路に基づいて、調合することもできる。
【0189】
本発明の組成物は、それ自体で(neat)、または薬学的に許容される塩の形態において投与できる。薬品中に使用する場合には、塩は薬学的に許容される必要があるが、薬学的に許容されない塩は、それを用いてその薬学的に許容される塩を都合良く調製することもできるので、本発明の範囲から除外されない。そのような薬理学的および薬学的に許容される塩には、以下の酸から調製されるものが含まれるがこれらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、蟻酸、マロン酸、コハク酸、シュウ酸、ナフタレン-2-スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。また、薬学的に許容される塩は、カルボン酸群のナトリウム、カリウム、またはカルシウム塩のようにアルカリ性金属またはアルカリ土類塩として調製しても良い。
【0190】
適当な緩衝剤には:酢酸および塩(1〜2モル%W/V);クエン酸および塩(1〜3モル%W/V);ホウ酸および塩(0.5〜2.5モル%W/V);ならびにリン酸および塩(0.8〜2モル%W/V)が含まれる。適当な保存剤には、塩化ベンザルコニウム(0.003〜0.03モル%W/V);クロロブタノール(0.3〜0.9モル%W/V);パラベン(0.01〜0.25モル%W/V)ならびにチメロサール(0.004〜0.02モル%W/V)が含まれる。
【0191】
本発明は医療用に、多糖調製物と、1つまたは複数の治療用または予防用の物質、ならびに任意で、薬学的に許容される担体および/または他の治療用成分を含む、薬学的組成物を提供する。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、ヒトまたは他の動物への投与に適した、1つまたは複数の適合する固体または液体の増量剤、希釈剤、または被包剤を意味する。薬学的組成物の成分は、製剤中の治療用および予防用の物質の所望の薬学的効率を実質的に損なうような相互作用なくして、本発明の組成物の製剤および互いに混合する能力も持つ。
【0192】
活性物質の徐放も、生体適合性および生分解性の適当な賦形剤を用いて実現できる。活性物質の徐放を実現するこれらのポリマー材料は、粒子を生成するための任意の適当なポリマー材料であり、非生体腐食性/非生分解性、および生体腐食性/生分解性ポリマーを含むが、これらに限定されない。そのようなポリマーは、先行技術において詳細に記述されている。これには、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、酸化ポリアルキレン、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハロゲン化物、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそのコポリマー、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリルおよびメタクリルエステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ-プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシルエチルセルロース、3酢酸セルロース、セルロースサルフェートナトリウム塩、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレンポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリビニルクロライドポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸、ならびにコンドロイチン硫酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0193】
好ましい非生分解性ポリマーの例には、エチレン酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、それらのコポリマーおよび混合物が含まれる。
【0194】
好ましい生分解性ポリマーの例には、乳酸およびグリコール酸、ポリ無水物、ポリ(オルソ)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)およびポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)のような合成ポリマー、ならびにアルギネートおよびデキストランを含む他の多糖のような天然のポリマー、ならびにセルロース、コラーゲン、それらの化学的誘導体(例えばアルキル、アルキレンのような化学基の置換、付加、水酸化、酸化、および当技術分野で日常的に行われる他の修飾)、アルブミン、および他の親水性蛋白質、ならびに他のプロアミンおよび疎水性蛋白質、コポリマーおよびそれらの混合物が含まれる。一般にこれらの材料は、インビボでの酵素による加水分解または水への暴露、表面またはバルク腐食のいずれかによって分解する。上記の材料は単独、物理的混和物(混合物)、またはコポリマーとして使用できる。最も好ましいポリマーは、ポリエステル、ポリ無水物、ポリスチレン、およびその混合物である。
【0195】
本発明の多糖は、送達される物質のサイズには無関係に、有効量の活性物質を送達できることが分かった。したがって、粒子(例えば、多糖および活性物質を含む粒子)は、5ミクロン、10ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、25ミクロン、30ミクロンよりも大きくても、特定の投与経路(例えば、肺への送達)によって、治療に有効な量がインビボで投与され得る。
【0196】
肺への投与
多糖を、例えばその化学的特徴に基づいて、多糖の1つまたは複数の活性を低下させるように修飾し、活性物質(例えば、治療用または予防用の物質)を肺の経路によって、例えば、口または鼻を通した吸入によって、送達するための増強された製剤を作製するために使用できることが分かった。また、多糖の修飾、例えば、HLGAGのような多糖の正味の電荷を中和または増強することによって、活性物質が脂質膜(例えば、肺の肺胞膜および/または上皮バリア)を透過する能力を増強できる。本明細書で使用する「肺組織」という用語は、気道の任意の組織を指し、特に断りのない限り、上気道および下気道の両方を含む。
【0197】
肺送達経路は、被検体による自己投与の容易さを含め、いくつかの恩典を持つ、例えば、多糖/活性物質組成物は活性物質の単位剤形であり得る。本明細書において単位剤形という用語は、治療される被検体のための単位投与量として適した物理的に分離した単位をさす;各単位は所望の治療効果を生じるように計算された、予め決められた量の活性物質を含む。自己投与に使用できる組成物の例には、肺の送達のために吸入器から投与される組成物の計量済み量が含まれる。例えば、多糖/インスリン組成物の計量済みの量は、糖尿病の被検体に治療に有効量のインスリンを提供できる。好ましい態様では、多糖は、抗Xa活性および/または抗IIa活性が低下するように修飾されたヘパリン、例えばLMWH、例えばアルデパリンまたはエノキサパリンである。組成物は、容器、パック、またはディスペンサー、および投与のための説明書を含んでもよい。これらの方法および肺への送達に使用する他の方法を、医療従事者が被検体に多糖/活性物質組成物を投与するために使用してもよい。
【0198】
特定の投与経路および用量レベルは、使用される特定の物質の活性、年齢、体重、全身健康状態、性別、および被検体の食事、投与時間、所望の吸収率、バイオアベイラビリティ、排泄率、任意の薬物の組み合わせ、ならびに所望の治療効果の部位、例えば局所または全身効果を含む、さまざまな要素に依存することが理解されている。局所治療効果とは、活性物質が送達された組織で得られる生物学的効果をさす。例えば、活性物質が肺の局所反応を治療または予防するために使用される場合には、例えば、呼吸器疾患または肺疾患の治療のための局所効果が得られるように、活性物質を投与することが望ましい可能性がある。全身効果とは、活性物質が送達される呼吸器系の外で得られる生物学的効果であり、例えば、血液への送達の後に生物学的効果が見られる。
【0199】
吸入による投与では、多糖/活性物質組成物を、適当な噴射剤もしくは噴霧剤を含む加圧容器もしくはディスペンサーからエアゾルスプレーの形態で送達することができる。多糖/活性物質組成物は、乾燥粒子または液体の形態でもよい。好ましくは、多糖/活性物質組成物は、乾燥粒子として肺組織に送達される。
【0200】
多糖/活性物質組成物を、適当な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジエリロロテトラフルオロクトリアン、二酸化炭素、または他の適当な気体を用いて、加圧パックまたはネブライザーからエアゾルスプレーの形態で都合よく送達することができる。加圧エアゾルの場合には、用量単位は活性物質の計量した量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。他の装置には、患者の吸引によって作動するものが含まれてもよい。吸入器または注入器に使用するカプセルおよびカートリッジは、粒子が調合された粒子である場合には、多糖、活性物質、およびラクトースまたはデンプンのような適当な粉末基剤の混合粉末を含むように調合されてもよい。また、多糖/活性物質組成物は、100%DPPCまたは他の界面活性剤のような他の材料と共に投与して、活性帷幄剤の送達および分散を促進することもできる。乾燥多糖粒子を調製する方法は、例えば、国際公開公報第02/32406号に記述されている。
【0201】
多糖/活性物質組成物が肺経路で投与された場合に、活性物質は迅速に吸収され、それにより迅速な局所または全身の治療結果を得ることができる。多糖は、送達される活性物質のピーク活性が、送達の3時間〜4時間以内、および好ましくは2時間以内に得られるように、活性物質を送達することができることが分かった。いくつかの態様では、活性物質のピーク活性は、さらに迅速に、例えば、30分以内または10分以内でも到達され得る。いくつかの態様では、多糖/活性物質組成物を活性物質の生物学的半減期がより長くなるように調合することができる。
【0202】
1つの態様では、多糖は多糖/活性物質組成物の少なくとも5%、10%、15%、20%またはそれ以上が上肺に送達されるような量で送達される。他の態様では、多糖/活性物質組成物の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%が上肺に送達される。1つの態様では、多糖/活性物質組成物は、例えば、吸入器またはネブライザーを用いて、計量された量が送達される。好ましくは、活性物質は1パフ(puff)で活性物質が少なくとも約0.5mg、1パフで活性物質が1mg、1パフで活性物質が2mg、1パフで活性物質が5mg、1パフで活性物質が10mg、1パフで活性物質が15mg、1パフで活性物質が20mg、1パフで活性物質が25mg、1パフで活性物質が30mg、1パフで活性物質が35mg、1パフで活性物質が40mg、1パフで活性物質が45mg、1パフで活性物質が50mg、1パフで活性物質が55mg、1パフで活性物質が60mg、1パフで活性物質が70mg、1パフで活性物質が80mg、1パフで活性物質が90mg、1パフで活性物質が100mg、またはそれ以上の用量単位で送達される。
【0203】
パーセントバイオアベイラビリティは、以下のようにして計算できる:
パーセントバイオアベイラビリティ=(AUC非侵襲/AUCi.v.またはs.c.)×(用量i.v.またはs.c./用量非侵襲)×100。
【0204】
所望の送達レベルを達成するために必ずしも必要ではないが、界面活性剤のような送達増強剤を用いて肺への送達を増強することもできる。本明細書で使用する「界面活性剤」は、親水性および親油性の部分を持つ化合物で、2つの不混和相の間の界面と相互作用することにより、薬物の吸収を促進するものである。界面活性剤は、例えば、粒子の凝集低下、マクロファージの貪食の低下等、いくつかの理由で乾燥粒子に有用である。界面活性剤は当技術分野で周知であり、ホスホグリセリド、例えば、ホスファチジルコリン、L-α-ホスファチジルコリンジパルミトイル(DPPC)およびジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサデカノール;脂肪酸;ポリエチレングリコール(PEG);ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル;パルミチン酸;オレイン酸;トリオレイン酸ソルビタン(Span 85);グリココーレート;サーファクチン;ポロクソマー;ソルビタン脂肪酸エステル;トリオレイン酸ソルビタン;チロキサポール;リン脂質を含むが、これらに限定されない。
【0205】
肺への送達のモニタリング方法
送達される多糖/活性物質組成物の量は、通常の方法を用いて決定できる。例えば、吸入による送達を決定するためには、試験系において、吸入後に指定の時間間隔に行なう動物の肺の洗浄を用いて、呼吸器系に送達された多糖/活性物質の量を決定できる。これらのデータは、治療するヒトまたは動物での量に相関させることができる。または、放射性または蛍光標識のような標識を多糖(または活性物質)に結合して、送達された多糖/活性物質組成物の分布を決定するために使用することもできる。所望の組織に送達された多糖/活性物質組成物の量は、生物活性が得られる組織または領域、例えば、血液における活性物質の存在から得られる治療効果の量、または活性物質の血漿濃度としても決定できる。送達の効果を評価するために使用するパラメータのタイプは、被検体のタイプ、使用可能な機器のタイプ、および治療または予防する疾患を含むさまざまな要素によって様々であると思われる。活性物質のピーク血漿濃度は、血中に存在する活性物質のレベルを時間を追って測定し、濃度のピークレベルにいつ到達するかを決定することによって、決定できる。治療効果またはピーク血漿活性の量は、通常の測定法を用いて決定できる。これらの効果のタイプは、評価する治療パラメータに依存する。例えば、多糖/活性物質組成物を、インスリンレベルを上昇させるために投与する場合には、血中のグルコースおよび/またはインスリンの量を評価できる。他の測定法は、種々の活性物質について当業者に周知である。
【0206】
キット
多糖の使用方法についての説明書と共に、本明細書に記述される多糖を含むキットも、本発明の範囲内である。いくつかの態様では、説明書は、本発明の多糖を活性物質と調合する方法も含む。他の態様では、キットは多糖および活性物質(例えば、本明細書に記述されるような)を含む製剤を含み、説明書は本明細書に記述される疾患を治療、予防、または検出するための製剤の使用方法についての情報を含む。いくつかの態様では、キットは以下のうちの1つまたは複数の他の要素を含む場合がある:使用説明書、他の試薬、例えば、標識、治療薬;投与用の製剤の調製のための装置または他の材料;薬学的に許容される;被検体への投与のための装置または他の材料;および活性物質をモニターするための装置または他の材料。説明書は、例えば本明細書に記述される疾患、例えば糖尿病、例えばI型またはII型糖尿病に罹患した患者に対して、推奨用量および/または投与様式を含む治療用の用途のための説明を含むことができる。他の説明書は、多糖の活性物質への結合に関する説明を含んでもよい。上述のように、キットは、活性物質、例えば治療用または予防用の物質、例えば本明細書に記述された任意の活性物質を含んでもよい。
【0207】
治療のための使用
本発明の組成物および製剤は、被検体に投与できる。本明細書で使用される被検体は、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、または齧歯類のような脊椎動物である。被検体は、例えば、実験動物、家畜、またはヒト被検体であってもよい。
【0208】
本発明の薬学的組成物は、「治療に有効な量」または「予防に有効な量」の活性物質を含んでもよい。「治療に有効な量」というのは、望ましい治療結果を得るために必要な用量および期間において、有効な量をさす。治療に有効な量の活性物質は、個体の疾病の状態、年齢、性別、および体重のような要素、ならびに活性物質が個体内で所望の反応を引き出す能力によって様々であり得る。また、治療に有効な量は、治療に有益な効果が活性物質の任意の有毒または有害な効果にまさる量である。「治療に有効な用量」は、好ましくは治療されない被検体と比べて、測定可能なパラメータを阻害するものである。化合物が測定可能なパラメータを阻害する能力は、ヒトにおける有効性を予測する動物モデル系で評価できる。または、組成物のこの特性は、活性物質がインビトロで阻害する能力を当業者に公知の測定法によって試験することにより評価できる。
【0209】
「予防に有効な量」とは、望ましい予防結果を達成するために必要な用量および期間において有効な量をさす。通常、予防用の用量は疾病の前または初期段階で使用されるため、予防用に有効な量は治療用に有効な量よりも少ないと考えられる。
【0210】
多糖/活性物質は、少なくとも1つの低下した活性を持つ多糖以外の活性物質を含む。これらには、例えば、蛋白質、核酸、低分子、または無機分子のような活性物質であって、放出特性を遅らせないもの、保存剤等が含まれるが、これらに限定されない。低分子の例には、ペプチド、ペプチド模倣物(例えば、ペプトイド)、アミノ酸、アミノ酸アナログ、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドアナログ、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、1モルあたり分子量が約5,000グラム未満の有機および無機化合物(ヘテロ有機化合物および有機金属化合物を含む)、1モルあたり分子量が約2,000グラム未満の有機および無機化合物、1モルあたり分子量が約1,000グラム未満の有機および無機化合物、1モルあたり分子量が約500グラム未満の有機および無機化合物、ならびにそれらの化合物の塩、エステルおよび他の薬学的に許容される形態が含まれるが、これらに限定されない。したがって、本方法は活性物質の肺への投与に関する。本明細書で使用される活性物質は、生物体において診断、予防、または治療効果を持つ任意の化合物である。活性物質は、蛋白質、ペプチド、抗体、多糖、核酸(例えば、RNA、DNA、PNA、それらの複合型(例えば、3つ組))、糖、糖蛋白質、アミノ酸、ウイルス、高分子の不均質な混合物(例えば、天然産物抽出物)、およびハイブリッド高分子(例えば、蛋白質/核酸ハイブリッド、アルブミン結合蛋白質、無機分子、有機分子、脂質、糖脂質、またはその組み合せのリンカーを持つ薬物でもよい。
【0211】
生物活性物質は、生物体中で予防または治療効果を持つ任意の化合物である。いくつかの態様では、生物活性物質は、上述の任意の薬物または以下の1つまたは複数の物質である:アドレナリン作動薬;副腎皮質ステロイド;副腎皮質抑制剤;認知治療の物質、抗血小板、アルドステロン拮抗剤;アミノ酸;同化剤;興奮薬;鎮痛剤;麻酔剤;食欲抑制薬;抗ニキビ薬;抗アドレナリン作動薬;抗アレルギー薬;抗アルツハイマー薬;抗アメーバ薬;抗貧血薬;抗狭心症薬;抗関節症薬;抗喘息薬;抗アテローム性動脈硬化薬;抗菌剤;抗コリン作動薬;抗凝固薬;抗痙攣薬;抗うつ薬;抗糖尿病薬;抗下痢薬;抗利尿薬;制吐剤;抗てんかん薬;抗線維素溶解剤;抗真菌剤;抗出血薬;抗ヒスタミン剤;抗高脂血症薬;降圧剤;昇圧剤;抗感染症薬;抗炎症剤;抗微生物薬;抗偏頭痛薬;有糸分裂阻害剤;抗真菌剤;制吐剤;抗新生物薬;抗好中球減少症薬;抗寄生虫薬;抗増殖薬;抗精神病薬;抗リウマチ薬;抗脂漏薬;抗分泌薬;鎮痙薬;抗血栓薬;抗潰瘍薬;抗ウイルス薬;抗不安薬;食欲抑制薬;血糖値調節剤;骨吸収阻害薬;気管支拡張薬;心血管薬;コリン作動薬;COX1阻害薬、COX2阻害薬、直接トロンビン阻害剤、抑制薬;診断薬;利尿薬;ドーパミン作動薬;エストロゲン受容体作動薬;フィブリン溶解剤;蛍光剤;酸素フリーラジカルスカベンジャー;胃腸運動エフェクター;グルココルチコイド;GPIIbIIIaアンタゴニスト、発毛剤;止血剤;ヒスタミンH2受容体アンタゴニスト;ホルモン;ヒト成長ホルモン、コレステロール低下剤;血糖降下薬;脂質低下薬;睡眠薬、降圧剤;造影剤;免疫薬、免疫修飾薬、免疫調節剤、免疫刺激薬および免疫抑制薬のような、免疫学的物質;サイトカイン、例えばインターフェロン;インスリン;角質溶解薬;LHRHアゴニスト;気分調節薬;粘液溶解薬;散瞳薬;抗鼻閉薬;神経筋遮断薬;神経保護薬;NMDAアンタゴニスト;非ホルモン性ステロール誘導体;プラスミノーゲン活性化因子;血小板活性化因子アンタゴニスト;血小板凝集阻害剤;プロトンポンプ阻害剤、向精神薬;放射性物質;殺疥癬虫薬;硬化剤;鎮静剤;鎮静睡眠剤;選択的アデノシンA1アンタゴニスト;セロトニンアンタゴニスト;セロトニン阻害薬;セロトニン受容体アンタゴニスト;スタチン、ステロイド;甲状腺ホルモン;甲状腺阻害薬;甲状腺模倣薬;精神安定剤;筋萎縮性側索硬化症薬;脳虚血薬;ページェット病薬;不安定狭心症薬;血管収縮薬;血管拡張薬;創傷治癒薬;キサンチンオキシダーゼ阻害剤。好ましい態様では、活性物質は、約5 kD〜10 kD、約20 kD〜40 kD、約60 kD〜80 kD、約100 kD〜150 kD、またはそれ以上の分子量を有するポリペプチドである。
【0212】
いくつかの態様では、治療用または予防用の物質の少なくとも1部は上肺に送達される、例えば、治療用または予防用の物質の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上は、上肺に送達される。
【0213】
いくつかの態様では、治療用または予防用の物質のバイオアベイラビリティは、多糖がない場合の治療用または予防用の物質のバイオアベイラビリティよりも、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%高い。
【0214】
製剤および組成物は、さらに活性物質としてインターフェロンを含んでもよい。インターフェロン治療の適応症には、再発性の多発性硬化症が含まれ得る。他の適応症には、癌(例えば、腎癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、類癌腫、リンパ腫、および白血病)、または肝炎(例えば、B型肝炎およびC型肝炎)が含まれる。
【0215】
いくつかの態様では、活性物質はインスリンであり、治療される疾患は糖尿病である。「糖尿病」または「真性糖尿病」という用語は、医学的な意味を持ち、すなわち、インスリン分泌、インスリン活性、または両方の欠陥で生じる、炭水化物、脂肪、および蛋白質の代謝の障害を伴う慢性高血糖という特徴を持つ、複数の病因を持つ代謝性疾患を意味する。I型糖尿病の症状には、多尿、多渇症、かすみ目、説明できない体重減少が含まれる。II型糖尿病の症状には、高血糖、高インスリン血症、および肥満が含まれる。糖尿病の診断は、これらの検査のうち任意の3つのものが陽性で、別の日の2回目の検査で陽性の場合にしばしば行われる:
・空腹時血糖が126 mg/dlまたはそれ以上で、糖尿病の症状がある。
・随時血糖値(1日の任意の時間に測定)が200 mg/dlまたはそれ以上で、糖尿病の症状がある。
・2時間間隔で測定された経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の値が200 mg/dlまたはそれ以上。OGTTは3時間にわたって行われる。
【0216】
真性糖尿病の影響には、さまざまな臓器の長期の障害、機能不全、および不全が含まれる。最も重症の場合には、ケトアシドーシスまたは非ケトーシス性高浸透圧状態が生じ、昏睡、昏睡状態、および有効な治療がない場合には、死亡に至る可能性がある。症状はしばしば重症ではないか全くない場合があり、その結果、診断が行われるよりかなり以前から、病理的および機能的変化を生じるのに十分な高血糖が存在する可能性がある。真性糖尿病の長期的影響には、盲目の可能性のある網膜症、腎不全に至る可能性のある腎症、および/または足の潰瘍、切断、シャルコー関節のリスクのある腎症という特異的な合併症の進行、ならびに性機能不全を含む自律神経機能不全という特徴が含まれる。糖尿病患者は、心血管、末梢血管、および脳血管疾患のリスクが高まっている。
【0217】
糖尿病の発生にはいくつかの病原性過程が関与している。炭水化物、脂質、および蛋白質代謝の異常は、インスリンの非感受性または欠如による標的組織に対するインスリンの作用の欠乏のためである。I型糖尿病の病理学的指標は、膵島β細胞の数および/またはサイズの低下、ならびに膵島の中および周囲に高度のリンパ浸潤が見られることである。これらのためにインスリン欠乏および耐糖能障害が生じる。II型糖尿病の病理所見には、膵島の中の線維性および/もしくはアミリン沈着、ならびに/または膵島β細胞の数もしくはサイズの低下が含まれる。
【0218】
本発明の方法は、送達後、約5分〜5時間の間、好ましくは1〜2時間未満の間にわたって、インスリンのバイオアベイラビリティが、少なくとも約10〜100,000μIU/mlとなるように、肺への送達により、ヘパリンおよびインスリンを含む製剤を糖尿病の被検体に投与する段階が含まれる。そのような方法には、例えば、各用量が0.5 IU/kgインスリン、1 IU/kgインスリン、5 IU/kgインスリン、10 IU/kgインスリン、20 IU/kgインスリン、30 IU/kgインスリン、50 IU/kgインスリン、75 IU/kgインスリン、100 IU/kgインスリン、150 IU/kgインスリン、200 IU/kgインスリン、250 IU/kgインスリン、300 IU/kgインスリン、およびその間の整数を含むように、製剤の計量された用量を送達する段階が含まれ得る。
【0219】
いくつかの態様では、活性物質はヒト成長ホルモンである(すなわち、ソマトトロピン)。成長ホルモン治療には、いくつかの適応症があり、これにはGHD、GHDに伴う心血管リスク、小児成長不全およびターナー症候群、および下垂体疾患のための成人HGH欠損、視床下部疾患、手術、外傷、放射線治療、慢性腎機能不全、プラダー・ウィリ症候群、またはGHDの小児における成長遅延が含まれる。別の態様では、患者には小児として成長ホルモンが不十分で、その後、成長ホルモン欠乏症と診断された成人が含まれる。別の態様では、患者にはAIDSによる羸痩および/または化学療法の患者が含まれる。多糖/ヒト成長ホルモン製剤で治療または予防できる他の疾患には、下垂体疾患(例えば、下垂体腫瘍、下垂体の手術による損傷、視床下部疾患、下垂体への照射または外傷);疲労症候群;線維筋痛;および肥満が含まれる。下垂体視床下部疾患には、シーハン症候群、自己免疫性下垂体炎、またはサルコイドーシスのような炎症性状態に伴う下垂体炎の患者が含まれる。
【0220】
GHDの患者は、ヒト成長ホルモンおよびIGF-Iのレベルが低下しているか欠如している。成長ホルモン欠乏症の成人では、成長ホルモンの欠如した状態での脂肪組織の影響は、体脂肪の増加である。体脂肪の増加およびIGF-Iの欠如で、インスリン抵抗性が生じる可能性がある。筋肉および骨において成長ホルモンおよびIGF-Iが欠如していると、やはり筋肉量および骨密度の低下が生じる可能性がある。成長ホルモンおよびIGF-Iの欠如は、心血管疾患のリスクを高め、時には死に至る場合もある。インスリン耐性試験、ならびにアルギニンおよび成長ホルモンのための視床下部の放出ホルモン、すなわちGHRHを利用した試験を含め、GHDの診断にはさまざまな試験がある。そのような試験は、「American Association of Clinical Endocrinologists Medical Guidelines for Clinical Practice for Growth Hormone Use in Adults and Children - 2003 Update」、Endocrinology Practice 9(1):64-76に記述されている。GHD治療は、以下の1つまたは複数によりモニターできる:ヒト成長ホルモンレベルの上昇;IGH-Iレベルの上昇;骨密度の上昇;除脂肪組織の増加;脂肪組織の減少;心収縮性の増加;および運動能力の強化。
【0221】
本明細書に記述される多糖/ヒト成長ホルモン製剤は、ターナー症候群の治療にも使用できる。ターナー症候群はX染色体の異常または欠如に起因する女児の疾患である。しばしば低身長を伴う。他の症状には、短頚、翼状頚、外反肘、第4または第5中手骨または中足骨の短縮、楯状の胸、および原発性性機能低下が含まれる。
【0222】
いくつかの態様では、活性物質はEPOである。EPOの適応症には、例えば、それ自体での疾患または他の疾患の症状でありえる貧血が含まれる。
【0223】
他の態様では、多糖のない場合の肺への送達と比べて、物質の全身への送達を低下させるための肺への送達のために、多糖を選択することができる。そのような製剤は、例えば活性物質の局所送達、例えば治療用または予防用の物質の肺組織への送達に使用できる。これらの製剤は、例えば、嚢胞性線維症、喘息、アレルギー、肺気腫、成人呼吸促進症候群(ARDS)、肺再灌流障害、特発性肺線維症、およびアスベスト関連線維症(例えば、黒色肺または褐色肺)のような呼吸器疾患の治療に役立てることができる。
【0224】
嚢胞性線維症は、呼吸器系に影響を与える慢性の進行性疾患である。嚢胞性線維症の1つの重篤な結果は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の肺感染であり、これのみで嚢胞性線維症の病的状態および死亡率のほぼ90%の原因となる。嚢胞性線維症の治療薬には、病原菌感染の治療のための抗微生物薬が含まれる。本明細書に記述される製剤を、嚢胞性線維症の被検体の肺に、嚢胞性線維症の治療に有用な抗微生物薬または他の物質を送達するために使用することができる。
【0225】
喘息は、呼吸困難で特徴づけられる慢性の肺の状態である。一般に、喘息の被検体は特に感受性が高いまたは反応亢進した気道を持つ。気道は刺激された時に狭窄または閉塞によって反応し、それによって空気の肺への出入りの運動が困難になる。この狭窄または閉塞は、気道炎症(すなわち肺の気道が赤く、腫脹し、狭くなる)および気管支収縮(軌道を囲む筋肉が締まるまたは痙攣をおこす)のうちの1つまたは複数によって生じる。喘息には以下の症状が伴う:喘鳴、咳嗽、息切れ、および胸の締めつけ。本明細書に記述される製剤を、喘息の被検体の肺に、喘息治療に有用な治療薬を送達するためにすることが使用できる。
【0226】
肺癌は、小細胞癌または非小細胞癌に大きく分類される。非小細胞癌はさらに腺癌、気管支肺胞癌、肺胞癌、扁平上皮癌、および大細胞癌に分類される。ほぼ75〜85%の肺癌が非小細胞癌であり、15〜25%の肺癌が小細胞癌である。肺癌の約80%は喫煙による。肺癌が広がったことを示す症状には、声がれ(癌が声帯をコントロールする神経に広がるため)、嚥下困難、ならびに顔、腕、および首の腫脹が含まれる。肺および胸部の外への癌の転移は、どのタイプの肺癌でも起こるが、小細胞癌および腺癌で最も多く起こる。頭痛、衰弱、しびれ、麻痺は、癌が脳または脊髄に広がったことを示す可能性がある。骨痛または腹痛は、癌がこれらの部分に広がった徴候である場合がある。本明細書に記述される製剤を、肺癌の被検体の肺に肺癌治療に有用な治療薬を送達するために使用することができる。
【0227】
肺感染には、結核、肺炎、気管支炎、炭疽菌感染、緑膿菌等を含むさまざまな疾患が含まれる。本明細書に記述する製剤を、肺感染に罹患した被検体の肺に、肺感染に有用な治療薬(例えば、1つまたは複数の抗生物質)を送達するために使用することができる。
【0228】
本発明のいくつかの態様が記述されてきた。しかし、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更が可能なことが理解されると考えられる。したがって、他の態様は特許請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0229】
【図1】多糖を介したインスリンの送達: インスリンは投与用に75μm未満の粒子サイズにするために、アルデパリンと調合した。ラット(スプラーグドーリーラット、250〜350g)に麻酔をし、採血用に頚動静脈カテーテルを挿入し、多糖/インスリン材料を含む注入器を肺への送達のために気管内に挿入した。種々の時点で採血が行なわれ、3.8%クエン酸ナトリウム中に採血され、血漿の分離のために遠心した。血漿インスリンレベルはELISAキットを使用して検出した。
【図2】A〜C:インスリン用量反応: (A) ラットは図1に記述するように処理した。インスリンとアルデパリンの比は、インスリン用量を増加させ、多糖の量を一定に保つことにより、各条件で変化させた。(B) ラットは図1に記述するように処理した。インスリンと多糖の比は、インスリン用量を増加させ、多糖の量を一定に保つことにより、各条件で変化させた。(C) インスリン投与実験のデータは、各々の条件の曲線下面積を計算することにより解析し、用量の関数として図示されている。
【図3】肺のインスリンの薬力学: ラットは図1に記述するように処理した。インスリンの用量は、図2に記述するように変化させ、生理的範囲に収まるようにした。市販の血糖値測定装置を用いて、種々の時点で血液試料のグルコース含量を分析した。
【図4】上気道への送達: アルデパリンはクリスタルバイオレット色素と調合し、投与用に粒子サイズを75μm未満にした。ラットは、頚動静脈にカテーテルを挿入せず、色素/多糖材料が気管内に投与されたこと以外は、図1に記述するように処理した。動物は直ちに屠殺し、肺を切除および解剖し、薬物の位置を可視化した。
【図5】AおよびB:上気道への送達: アルデパリンはFITC-インスリンと調合し、投与用に粒子サイズを75μm未満にした。ラットは、頚動静脈にカテーテルを挿入せず、色素/多糖材料が気管内に投与されたこと以外は、図1に記述するように処理した。動物は10分後に屠殺し、肺に亜鉛-ホルマリンを灌流し、パラフィン処理をおこなった。共焦点顕微鏡を使用して、上気道(A)および肺深部(B)でFITC-インスリンを可視化した。
【図6】多糖を介したヒト成長ホルモンの送達: アルデパリンをhGHと調合し、ラットに経気管的に送達し、血漿試料のhGHレベルを分析した。実験は図1に記述されるようにして行われた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LMWHおよび治療用、予防用または診断用の物質を含む、治療用、予防用または診断用の物質の肺への送達のための製剤。
【請求項2】
LMWHが、エノキサパリン、ダルテパリン、レビパリン(reviparin)、チンザパリン(tinzaparin)、ナドロパリン、セルトパリン(certoparin)、アルデパリン(ardeparin)、およびパルナパリン(parnaparin)からなる群より選択される、請求項1記載の製剤。
【請求項3】
LMWHが六糖またはそれより大きな多糖を含む、請求項1記載の製剤。
【請求項4】
LMWHが八糖またはそれより大きな多糖を含む、請求項1記載の製剤。
【請求項5】
治療用、予防用または診断用の物質が、ポリペプチド、核酸、低分子、脂質、および糖脂質からなる群より選択される、請求項1記載の製剤。
【請求項6】
物質が、インスリン、プロインスリン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、α-1プロテイナーゼ阻害剤、アルカリホスファターゼ、アンジオジェニン、嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ、フィブリノーゲン、グルコセレブロシダーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、ヒト血清アルブミン、ミエリン塩基性蛋白質、可溶性CD4、ラクトフェリン、ラクトグロブリン、ライソザイム、ラクトアルブミン、エリスロポエチン、組織プラスミノーゲン活性化因子、アンチトロンビンIII、プロラクチン、およびα1-アンチトリプシンからなる群より選択されるポリペプチドである、請求項1記載の製剤。
【請求項7】
物質が、副甲状腺ホルモンならびにその誘導体および断片、エリスロポエチン、エポエチンβ、遺伝子活性化エリスロポエチン、エポエチンβ、第2世代EPO、エポエチンβ、新規赤血球形成刺激蛋白質、インスリンリスプロ、インスリン(ウシ)、インスリン、インスリンアスパルト、インスリンアナログ、カルシトニン、セラシン(theraccine)、ベカプレルミン(becaplermin)(組換えヒト血小板由来成長因子-BB)、トラフェルミン(trafermin)、ヒト成長ホルモン放出因子、BMP-7、PEGアスパラギナーゼ、ドルナーゼα、アルグルセラーゼ(alglucerase)、アガルシダーゼβ、ドルナーゼα、アガルシダーゼα、ストレプトキナーゼ、テネテプラーゼ(teneteplase)、レテプラーゼ(reteplase)、アルテプラーゼ、パミテプラーゼ(pamiteplase)、Rh因子VIII、Rh FVIIa、因子IX(ヒト)、因子IX(複合体)、HGH、ソマトレム/ソマトロピン、抗CD33-カリケアマイシン(calicheamicin)結合体、エドレコロマブ(edrecolomab)、リタキスマブ(rituxumab)、ダクリズマブ、トラスツズマブ、スレソマブ(sulesomab)、アブシキシマブ、インフリキシマブ、ムロモナブ-CD3、パリビズマブ(palivizumab)、アレムツズマブ、バシリキシマブ、オプレルベキン(oprelvekin)、ゲムツズマブオゾガミシン、イブリツモマブチウキセタン、スレソマブ、パリビズマブ、インターロイキン-2、セルモロイキン(celmoleukin)(rIL-2)、インターフェロンアルファコン-1(interferon alphacon-1)、インターフェロンα、インターフェロンα+リバビリン、ペグインターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα3n、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ、インターフェロンβ1b、インターフェロンγ、インターフェロンγ-1b、フィルグラスチム、レノグラスチム、サルグラモスチム(sargramostim)、モルグラモスチム(molgramostim)、ミリモスチム(mirimostim)、サルグラモスチム、ナルトグラスチム、オプレルベキン、ペプチドチロシン-チロシン(PYY)、アポリポ蛋白質A-IV、レプチン、メラノコルチン、アミリン、オレキシン、アディポネクチン、ならびにグレリンからなる群より選択される、請求項1記載の製剤。
【請求項8】
治療用または予防用のポリペプチドが、約500 Da〜5 kDa、約5 kDa〜10 kDa、約10 kDa〜20 kDa、約20 kDa〜40 kDa、約50 kDa〜100 kDa、または約100 kDa〜150 kDaの分子量を有する、請求項1記載の製剤。
【請求項9】
ポリペプチドが、150 kD未満、100 kDa未満、または50 kDa未満の分子量を有する、請求項8記載の製剤。
【請求項10】
ポリペプチドが、0.5 kDa〜35 kDaの分子量を有する、請求項8記載の製剤。
【請求項11】
送達増強剤をさらに含む、請求項1記載の製剤。
【請求項12】
製剤が肺送達のための装置中で提供される、請求項1記載の製剤。
【請求項13】
製剤が加圧式の容器またはディスペンサー中で提供される、請求項1記載の製剤。
【請求項14】
LMWHが修飾され、電荷、サイズまたは治療活性のうちの1つまたは複数が変更されている、請求項1記載の製剤。
【請求項15】
集団中の多糖の全体または一部が、約2〜約20の二糖からなる、請求項1記載の製剤。
【請求項16】
LMWH中の多糖の1つまたは複数の化学的特徴が決定され、その化学的特徴に基づいて1つまたは複数の多糖が修飾される、請求項1記載の製剤。
【請求項17】
LMWH中の多糖の1つまたは複数の化学的特徴が決定されている、請求項1記載の製剤。
【請求項18】
LMWHが、ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNS,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNAc,6SGHNS,3S、およびΔUHNS,6SGHNS,3Sからなる群より選択される構造を有する多糖の1つまたは複数の化学的特徴を含む、請求項1記載の製剤。
【請求項19】
治療用または予防用の物質が、ポリペプチド、核酸、低分子、脂質、および糖脂質からなる群より選択される、請求項1記載の製剤。
【請求項20】
LMWHが治療用または予防用の物質と混合される、請求項1記載の製剤。
【請求項21】
LMWHが治療用または予防用の物質と連結される、請求項1記載の製剤。
【請求項22】
治療用または予防用の物質が、1つまたは複数のEDCまたはCNBH4/DMSO/酢酸によって多糖に連結される、請求項21記載の製剤。
【請求項23】
乾燥製剤である、請求項1記載の製剤。
【請求項24】
乾燥製剤が、1〜500ミクロンの平均幾何直径を有するLMWH粒子を含む、請求項323記載の製剤。
【請求項25】
LMWH粒子が、少なくとも2〜100ミクロンの平均幾何直径を有する、請求項24記載の製剤。
【請求項26】
製剤が、液体製剤、エアゾル、噴霧剤、または懸濁液である、請求項1記載の製剤。
【請求項27】
ヘパリンの抗Xa活性および/または抗IIa活性が、標準品と比較して少なくとも50%またはそれ以上低下するように修飾されたヘパリン。
【請求項28】
LMWHが六糖またはそれより大きな多糖を含む、請求項27記載の製剤。
【請求項29】
LMWHが八糖またはそれより大きな多糖を含む、請求項27記載の製剤。
【請求項30】
LMWHを提供する段階;および
抗Xa活性および/または抗IIa活性が、標準品と比較して少なくとも50%またはそれ以上低下するようにLMWHを修飾し、それによりLMWHが提供される段階
を含む、治療用、予防用または診断用の物質の肺送達のためのLMWHを製造する方法。
【請求項31】
活性物質とLMWHを組み合わせ、それにより活性物質を肺へ送達するための製剤が製造される段階
を含む、活性物質を肺送達するための製剤を製造する方法。
【請求項32】
LMWHが、標準品と比較して少なくとも50%またはそれ以上低下している抗Xa活性および/または抗IIa活性を有し、該標準品が、市販のヘパリンの抗Xa活性および/もしくは抗IIa活性のレベル、または修飾前のヘパリンの抗Xa活性および/もしくは抗IIa活性のレベルである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
LMWHが、標準品と比較して少なくとも10%またはそれ以上低下しているPF4結合および/またはFGF-2結合をさらに有する、請求項31記載の方法。
【請求項34】
LMWHが約2〜約20の二糖からなる、請求項31記載の方法。
【請求項35】
LMWHが、標準品と比較して低下しているサイズをさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項36】
LMWHが、標準品と比較して変更された電荷をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項37】
LMWHが、ポリペプチド、核酸、低分子、脂質、および糖脂質からなる群より選択される治療用または予防用の物質と組み合わされる、請求項31記載の方法。
【請求項38】
LMWHが、インスリン、プロインスリン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、α-1プロテイナーゼ阻害剤、アルカリホスファターゼ、アンジオジェニン、嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ、フィブリノーゲン、グルコセレブロシダーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、ヒト血清アルブミン、ミエリン塩基性蛋白質、可溶性CD4、ラクトフェリン、ラクトグロブリン、ライソザイム、ラクトアルブミン、エリスロポエチン、組織プラスミノーゲン活性化因子、アンチトロンビンIII、プロラクチン、およびα1-アンチトリプシンからなる群より選択される治療用または予防用のポリペプチドと組み合わされる、請求項31記載の方法。
【請求項39】
LMWHが、副甲状腺ホルモンならびにその誘導体および断片、エリスロポエチン、エポエチンβ、遺伝子活性化エリスロポエチン、エポエチンβ、第2世代EPO、エポエチンβ、新規赤血球形成刺激蛋白質、インスリンリスプロ、インスリン(ウシ)、インスリン、インスリンアスパルト、インスリンアナログ、カルシトニン、セラシン、ベカプレルミン(組換えヒト血小板由来成長因子-BB)、トラフェルミン、ヒト成長ホルモン放出因子、BMP-7、PEGアスパラギナーゼ、ドルナーゼα、アルグルセラーゼ、アガルシダーゼβ、ドルナーゼα、アガルシダーゼα、ストレプトキナーゼ、テネテプラーゼ、レテプラーゼ、アルテプラーゼ、パミテプラーゼ、Rh因子VIII、Rh FVIIa、因子IX(ヒト)、因子IX(複合体)、HGH、ソマトレム/ソマトロピン、抗CD33-カリケアマイシン結合体、エドレコロマブ、リタキスマブ、ダクリズマブ、トラスツズマブ、スレソマブ、アブシキシマブ、インフリキシマブ、ムロモナブ-CD3、パリビズマブ、アレムツズマブ、バシリキシマブ、オプレルベキン、ゲムツズマブオゾガミシン、イブリツモマブチウキセタン、スレソマブ、パリビズマブ、インターロイキン-2、セルモロイキン(rIL-2)、インターフェロンアルファコン-1、インターフェロンα、インターフェロンα+リバビリン、ペグインターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα3n、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ、インターフェロンβ1b、インターフェロンγ、インターフェロンγ-1b、フィルグラスチム、レノグラスチム、サルグラモスチム、モルグラモスチム、ミリモスチム、サルグラモスチム、ナルトグラスチム、オプレルベキン、ペプチドチロシン-チロシン(PYY)、アポリポ蛋白質A-IV、レプチン、メラノコルチン、アミリン、オレキシン、アディポネクチン、ならびにグレリンからなる群より選択される治療用または予防用の物質と組み合わされる、請求項31記載の方法。
【請求項40】
LMWHが、約500 Da〜5 kDa、約5 kDa〜10 kDa、約10 kDa〜20 kDa、約20 kDa〜40 kDa、約50 kDa〜100 kDa、または約100 kDa〜150 kDaの分子量を有する治療用または予防用のポリペプチドと組み合わされる、請求項31記載の方法。
【請求項41】
ポリペプチドが、150 kD未満、100 kDa未満、または50 kDa未満の分子量を有する、請求項40記載の方法。
【請求項42】
ポリペプチドが、0.5 kDa〜35 kDaの分子量を有する、請求項40記載の方法。
【請求項43】
製剤を1つまたは複数の送達増強剤と組み合わせる段階をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項44】
製剤を肺送達のための装置中で提供する段階をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項45】
肺送達のための装置が加圧式の容器またはディスペンサーである、請求項44記載の方法。
【請求項46】
ヘパリンの抗Xa活性を低下させるために、LMWHが、ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNS,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNAc,6SGHNS,3S、またはΔUHNS,6SGHNS,3Sの構造を含むヘパリンの多糖の1つまたは複数の化学的特徴で修飾されている、請求項30記載の方法。
【請求項47】
ヘパリンの抗Xa活性を低下させるために、LMWHが、ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6S, およびΔUHNAc,6SGHNS,3Sの構造を含むヘパリンの多糖の1つまたは複数の化学的特徴で修飾されている、請求項31記載の方法。
【請求項48】
LMWHがM118を含む、請求項31記載の方法。
【請求項49】
LMWHが、構造から付加もしくは除去された1つもしくは複数の単糖もしくは二糖を含み、または構造から1つもしくは複数のアセチル基および/もしくはスルホ基が置換、付加もしくは除去されている、請求項46記載の方法。
【請求項50】
活性物質が、DNA、RNA、脂質、糖脂質、診断薬、プローブ、および造影剤からなる群より選択される、請求項31記載の方法。
【請求項51】
LMWHと治療用または予防用の物質とを混合することによって、LMWHが治療用または予防用の物質と組み合わされる、請求項31記載の方法。
【請求項52】
LMWHと治療用または予防用の物質とを連結することによって、LMWHが治療用または予防用の物質と組み合わされる、請求項31記載の方法。
【請求項53】
治療用または予防用の物質が、1つまたは複数のEDCまたはCNBH4/DMSO/酢酸によってLMWHに連結される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
LMWHが六糖またはそれより大きな多糖を含む、請求項31記載の方法。
【請求項55】
LMWHが八糖またはそれより大きな多糖を含む、請求項31記載の方法。
【請求項56】
被検体の肺組織に治療量の請求項1記載の製剤を投与し、それにより被検体に活性物質が送達される段階
を含む、被検体に活性物質を送達する方法。
【請求項57】
製剤のLMWHが約2〜約20の二糖からなる、請求項56記載の方法。
【請求項58】
ヘパリンのサイズが標準品と比較して低下するように製剤のLMWHが修飾されている、請求項56記載の方法。
【請求項59】
ヘパリンの電荷が標準品と比較して修飾されるように製剤のLMWHが修飾されている、請求項56記載の方法。
【請求項60】
標準品と比較して少なくとも60%またはそれ以上低下する抗Xa活性および/もしくは抗IIa活性を有するように、製剤のLMWHが修飾されている、請求項56記載の方法。
【請求項61】
治療用または予防用の物質が、ポリペプチド、核酸、低分子、脂質、および糖脂質からなる群より選択される、請求項56記載の方法。
【請求項62】
治療用または予防用の物質が、インスリン、プロインスリン、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、α-1プロテイナーゼ阻害剤、アルカリホスファターゼ、アンジオジェニン、嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ、フィブリノーゲン、グルコセレブロシダーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、ヒト血清アルブミン、ミエリン塩基性蛋白質、可溶性CD4、ラクトフェリン、ラクトグロブリン、ライソザイム、ラクトアルブミン、エリスロポエチン、組織プラスミノーゲン活性化因子、アンチトロンビンIII、プロラクチン、およびα1-アンチトリプシンからなる群より選択されるポリペプチドである、請求項56記載の方法。
【請求項63】
治療用または予防用の物質が、副甲状腺ホルモンならびにその誘導体および断片、エリスロポエチン、エポエチンβ、遺伝子活性化エリスロポエチン、エポエチンβ、第2世代EPO、エポエチンβ、新規赤血球形成刺激蛋白質、インスリンリスプロ、インスリン(ウシ)、インスリン、インスリンアスパルト、インスリンアナログ、カルシトニン、セラシン、ベカプレルミン(組換えヒト血小板由来成長因子-BB)、トラフェルミン、ヒト成長ホルモン放出因子、BMP-7、PEGアスパラギナーゼ、ドルナーゼα、アルグルセラーゼ、アガルシダーゼβ、ドルナーゼα、アガルシダーゼα、ストレプトキナーゼ、テネテプラーゼ、レテプラーゼ、アルテプラーゼ、パミテプラーゼ、Rh因子VIII、Rh FVIIa、因子IX(ヒト)、因子IX(複合体)、HGH、ソマトレム/ソマトロピン、抗CD33-カリケアマイシン結合体、エドレコロマブ、リタキスマブ、ダクリズマブ、トラスツズマブ、スレソマブ、アブシキシマブ、インフリキシマブ、ムロモナブ-CD3、パリビズマブ、アレムツズマブ、バシリキシマブ、オプレルベキン、ゲムツズマブオゾガミシン、イブリツモマブチウキセタン、スレソマブ、パリビズマブ、インターロイキン-2、セルモロイキン(rIL-2)、インターフェロンアルファコン-1、インターフェロンα、インターフェロンα+リバビリン、ペグインターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b、インターフェロンα3n、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ、インターフェロンβ1b、インターフェロンγ、インターフェロンγ-1b、フィルグラスチム、レノグラスチム、サルグラモスチム、モルグラモスチム、ミリモスチム、サルグラモスチム、ナルトグラスチム、オプレルベキン、ペプチドチロシン-チロシン(PYY)、アポリポ蛋白質A-IV、レプチン、メラノコルチン、アミリン、オレキシン、アディポネクチン、ならびにグレリンからなる群より選択される、請求項56記載の方法。
【請求項64】
治療用または予防用のポリペプチドが、約500 Da〜5 kDa、約5 kDa〜10 kDa、約10 kDa〜20 kDa、約20 kDa〜40 kDa、約50 kDa〜100 kDa、または約100 kDa〜150 kDaの分子量を有する、請求項56記載の方法。
【請求項65】
ポリペプチドが、150 kD未満、100 kDa未満、または50 kDa未満の分子量を有する、請求項56記載の方法。
【請求項66】
ポリペプチドが、0.5 kDa〜35 kDaの分子量を有する、請求項56記載の方法。
【請求項67】
組成物が送達増強剤をさらに含む、請求項56記載の方法。
【請求項68】
組成物が肺送達のための装置によって投与される、請求項56記載の方法。
【請求項69】
装置が加圧式の容器またはディスペンサーである、請求項56記載の方法。
【請求項70】
ヘパリンの抗Xa活性を低下させるために、製剤のLMWHが、ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNS,6SGHNS,3S,6S、ΔUHNAc,6SGHNS,3S、またはΔUHNS,6SGHNS,3Sの構造を含むヘパリンの多糖の1つまたは複数の化学的特徴で修飾されている、請求項56記載の方法。
【請求項71】
ヘパリンの抗Xa活性を低下させるために、製剤のLMWHが、ΔUHNAc,6SGHNS,3S,6S, またはΔUHNAc,6SGHNS,3Sの構造を含むヘパリンの多糖の1つまたは複数の化学的特徴で修飾されている、請求項56記載の方法。
【請求項72】
LMWHがM118を含む、請求項56記載の方法。
【請求項73】
製剤のLMWHが、構造から付加もしくは除去された1つもしくは複数の単糖もしくは二糖を含み、または構造から1つもしくは複数のアセチル基および/もしくはスルホ基が置換、付加もしくは除去されている、請求項56記載の方法。
【請求項74】
活性物質が、DNA、RNA、脂質、糖脂質、診断薬、プローブ、および造影剤からなる群より選択される、請求項56記載の方法。
【請求項75】
物質の少なくとも一部が上肺に送達される、請求項56記載の方法。
【請求項76】
物質の少なくとも10%またはそれ以上が上肺に送達される、請求項56記載の方法。
【請求項77】
物質のバイオアベイラビリティが、ヘパリン非存在下の治療用または予防用の物質のバイオアベイラビリティよりも少なくとも10%高い、請求項56記載の方法。
【請求項78】
LMWHが六糖またはそれより大きな多糖を含む、請求項56記載の方法。
【請求項79】
LMWHが八糖またはそれより大きな多糖を含む、請求項56記載の方法。
【請求項80】
被検体の肺組織に治療量の請求項1記載の製剤を投与し、ここで治療用または予防用の物質がインスリンを含む段階であって、それにより被検体にインスリンが送達される段階
を含む、被検体にインスリンを送達する方法。
【請求項81】
被検体の肺組織に治療量の請求項1記載の製剤を投与し、ここで治療用または予防用の物質がヒト成長ホルモンを含む段階であって、それにより被検体にヒト成長ホルモンが送達される段階
を含む、被検体にヒト成長ホルモンを送達する方法。
【請求項82】
被検体の肺組織に治療量の請求項1記載の製剤を投与し、ここで治療用または予防用の物質がインターフェロンを含む段階であって、それにより被検体にインターフェロンが送達される段階
を含む、被検体にインターフェロンを送達する方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−517771(P2007−517771A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534220(P2006−534220)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/032613
【国際公開番号】WO2005/032483
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(504346293)モメンタ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】