説明

活性物質発生方法

【課題】有機物を酸化分解できる活性物質を光触媒材料から空間中に放出する方法を提供することを目的としている。
【解決手段】ハロゲンが化学結合し、オキソ酸が含有された酸化チタン(IV)を用いる。光源によって前記酸化チタン(IV)に紫外線を照射することで、酸化チタン上で過酸化水素などの活性酸素種や、次亜塩素酸などのハロゲン酸化物が生成し、酸化チタンから拡散によって空間中に放出できる。空間中に浮遊する臭気物質や、固体表面に付着する細菌などの微生物と反応し、脱臭、あるいは除菌作用が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物を酸化する能力をもつ活性酸素種やハロゲン酸化物などの活性物質を発生させ、気相や液相などに拡散して放出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の有機物の酸化分解には、酸化チタンを用いた光触媒反応が知られている。酸化チタンは、光触媒作用があることが知られており、光(紫外線)を酸化チタンに照射することにより、脱臭あるいは抗菌作用を発現させることができる。酸化チタンに紫外線を照射することによって、酸化チタン上に酸化力の高い活性物質として知られるヒドロキシルラジカルが発生し、発生したヒドロキシルラジカルが、フィルタに吸着した臭気成分や微生物を酸化反応して分解するためである。そのため、光触媒をハニカム等のフィルタ形状に加工し、紫外線を照射しながら前記フィルタに通気することにより、空気の脱臭あるいは抗菌を行うことができる。例えば、従来この種の反応装置として、図3に示すように、吸着材101に光触媒102を練り込みハニカム状に形成したものが知られている。(例えば、特許文献1参照)。ハニカム孔103に臭気を含む空気を通風させるとともに、光触媒励起源としてのランプ104を点灯させ、光触媒102を励起させて臭気の分解脱臭を行うものである。
【0003】
また、活性物質の発生方法としては、放電を利用した技術が知られている。(例えば、特許文献2参照)。例えば、従来この種の活性物質の発生方法として、活性酸素種の一つである過酸化水素の発生装置には、図4に示されるものがある。水素および酸素を含む混合ガスを原料ガスとして放電により過酸化水素を発生させる。原料ガス105である、水素および酸素を爆発しないような濃度に調整しながら、第1放電部106に導入し、放電を行ったのち、さらに酸素補給口107から酸素を供給しながら第2放電部108に導入して放電を行い、過酸化水素および水素、酸素、あるいは水の混合物を得るというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2574840号公報
【特許文献2】特開平4−130002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の従来の脱臭装置は、光触媒102を練り込んだフィルタ形状の構造体であり、通気することによってフィルタに吸着した物質に対しては作用することができる。しかしながら、フィルタに吸着しないもの、あるいは物体の表面に吸着して空気中に飛散しないものに対しては効果が得られないという課題があった。これは、酸化チタン上に発生するヒドロキシルラジカルは不安定であり、寿命が極めて短いために、フィルタ上から殆ど放出されず、フィルタ近傍に効果が限定されるためである。
【0006】
また、特許文献2に記載の従来の活性物質の発生方法は、原料ガスである酸素と水素を供給する必要があり、ボンベなどのガス貯留手段が必要となる。このため、局所的に長期間連続使用する場合には、原料ガスの補充が常に必要となるため、原料ガスの補給無しに空気などから直接選択的にガスを発生させることが求められている。また、放電を利用しているため、放出した電子と反応して様々な反応物が生成し、量と種類を制御することが困難であるという課題がある。活性物質の中には、オゾンのような強い刺激臭をもつものがあり、このような成分を選択的に発生させないようにすることが求められている。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、安定で寿命が長く、酸化チタンから気相などに放出することができ、かつ刺激臭の少ない活性酸素種、あるいはハロゲン酸化物などの活性物質を選択的に発生する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の活性物質発生方法は、上記目的を達成するために、オキソ酸を含有する酸化チタン(IV)に紫外線を含む光を照射することを特徴としたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、オキソ酸を含有する酸化チタン(IV)に紫外線を含む光を照射するという構成にしたことにより、酸化チタン(IV)に含まれるオキソ酸が、酸化チタン(IV)の光触媒反応において、酸化チタンの表面に生成するヒドロキシルラジカルを、過酸化水素などの比較的寿命が長い活性酸素種に変換するという作用を有する。また、オキソ酸およびハロゲンを酸化チタン(IV)に含有するという構成にすることにより、光触媒反応によって、酸化チタン表面に生成するヒドロキシルラジカルを、過酸化水素などの活性酸素種や、次亜塩素酸などのハロゲン酸化物に変換するという作用を有する。そのため、過酸化水素や次亜塩素酸を酸化チタン(IV)表面から気相、または液相などに放出させることができ、分解する対象物となる有機物が、酸化チタン(IV)と接触しなくても、光触媒の表面より放出した活性酸素種やハロゲン酸化物などの活性物質が気相、または液相に拡散して有機物と接触、反応して酸化分解することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1の過酸化水素の測定結果を示す図
【図2】本発明の実施例1の次亜塩素酸の測定結果を示す図
【図3】従来の脱臭装置を示す斜視図
【図4】従来の過酸化水素発生装置を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の請求項1記載の発明は、オキソ酸を含有する酸化チタン(IV)に、紫外線を含む光を照射し、前記酸化チタン(IV)から活性物質を放出することを特徴としたものである。オキソ酸を含有することで、光照射反応によって酸化チタンの表面に生成するヒドロキシルラジカルを寿命の長い活性酸素種などの活性物質に変換することができ、活性物質を気相などの媒質中に放出することができる。
【0012】
本発明の請求項2記載の発明は、オキソ酸およびハロゲンを含有する酸化チタン(IV)に、紫外線を含む光を照射し、前記酸化チタン(IV)から活性物質を放出することを特徴としたものである。オキソ酸と、ハロゲンを含有することで、酸化チタンの活性を向上させ、活性物質の発生を増加させることができる。
【0013】
また、請求項3記載の発明は、ハロゲンの少なくとも一部が前記酸化チタン(IV)と化学結合していることを特徴としたものであり、化学結合がイオン結合である場合は、ハロゲンと酸化チタンとが強固に結合し、例えば、活性物質の発生量を向上できる。
【0014】
また、請求項4記載の発明は、ハロゲンが、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴としたものであり、前記ハロゲンは酸化チタン(IV)の化学結合が安定であるため、安定的に活性物質を発生することができる。
【0015】
また、請求項5記載の発明は、オキソ酸が、リン酸、硫酸、炭酸、硝酸、またはホウ酸を含む化合物から選択される少なくとも1つの化合物であることを特徴としたものであり、光触媒反応によって分解されずに安定であり、酸化チタンに含有させることが容易であるため、安定的に活性物質を発生することができる。
【0016】
また、請求項6記載の発明は、ハロゲンが、フッ素および/または塩素であることを特徴としたものであり、フッ素または塩素を含有させることによって活性物質を安定的に発生できるが、さらにフッ素と塩素を共存させることによって、塩素酸系活性物質のような抗菌性の高い活性物質を選択的に発生させることができる。
【0017】
また、請求項7記載の発明は、オキソ酸が、リン酸塩であることを特徴としたものであり、活性物質の中で、比較的寿命が長く、活性の高い過酸化水素を生成することができ、安定的に活性物質を発生させることができる。
【0018】
また、請求項8記載の発明は、フッ素の含有量が、酸化チタン(IV)に対して、1.25重量%以上4.0重量%未満であることを特徴としたものであり、活性物質を発生させるために必要十分なハロゲン量を確保し、活性物質を発生することができる。
【0019】
また、請求項9記載の発明は、光源を用いて、紫外線を含む光を酸化チタンに照射することを特徴としたものであり、酸化チタンに局所的に、また必要な時間に限定して光照射反応を起こすことで、必要な量の活性物質のみを発生することができる。
【0020】
また、請求項10記載の発明は、光源が、ブラックライトであることを特徴としたものであり、広い面積に効率的に紫外線を照射することができ、活性物質の発生量を増加させることができる。
【0021】
また、請求項11記載の発明は、光源が、発光ダイオードであることを特徴としたものであり、微小な領域に局所的に光を照射することができ、さらに全体を小型化させることができる。
【0022】
また、請求項12記載の発明は、酸化チタン(IV)を基材に固定化したことを特徴としたものであり、酸化チタン粉末の飛散を防止し、酸化チタンと活性物質の分離を容易に行なうことができ、さらに基材にあわせて自由な形状に成形することができるため、最適な形状によって、安定的に活性物質を発生させることができる。
【0023】
(実施の形態)
本発明の活性物質の発生方法によって発生する活性物質とは、有機物と反応して酸化させる作用、あるいは有機物の高次構造を変性させる作用をもつ酸化剤であり、例えば、活性酸素種やハロゲン酸化物などがある。
【0024】
活性酸素種には、ヒドロキシルラジカルや、スーパーオキシドラジカル、一重項酸素、過酸化水素、オゾンなどがある。これらは、有機物の基本骨格であるC−C結合(結合エネルギー約347kJ/mol)や、C−H結合(結合エネルギー約415kJ/mol)、あるいは、C=C結合のπ結合(結合エネルギー約285kJ/mol)などの結合を酸化反応によって切断することが知られている。
【0025】
この結合を切断するためには、結合エネルギーよりも高い解離エネルギーが必要となる。例えば、強い活性酸素種であるヒドロキシルラジカルの酸化電位はおよそ2.8Vであり、解離エネルギーは約504kJ/molであるため、C−C結合を切断して酸化分解することができる。このような酸化剤は、エネルギーが大きいため、反面、不安定で寿命が極めて短い(約1ミリ秒以下)という性質がある。
【0026】
一方、過酸化水素の場合、酸化電位は1.77Vであり、解離エネルギーは319kJ/molである。この場合、C−C結合を切断するエネルギーよりも低いため切断できないが、C=C二重結合のπ結合を切断することができる。また、たんぱく質や酵素などの比較的分子量の大きい有機物の場合、元来の機能を果たすためには立体的な高次構造が重要であるが、過酸化水素などの活性物質は強い酸化力によってそれらの高次構造を変性させ、元来の機能を失わせることができ、除菌作用や抗ウイルス作用を得ることができる。そして、過酸化水素は酸化電位が低い分、ヒドロキシルラジカルに比べて安定性が増すため、寿命が長くなる(約1時間以上)という性質がある。気相や液相などの離れた位置に活性物質を作用させる場合には、このような物質が適している。
【0027】
また、ハロゲン酸化物には、塩素酸化物(例えば、次亜塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸、二酸化塩素など)、臭素酸化物(例えば、臭素酸、次亜臭素酸、過臭素酸など)、あるいは/およびヨウ素酸化物(例えば、ヨウ素酸、過ヨウ素酸など)などが使用できる。これらは酸化力を有しており、例えば、次亜塩素酸の酸化電位は1.5Vであり、解離エネルギーは約268kJ/molである。C−C結合の切断エネルギーよりも低いが、水素結合やファンデルワールス結合を切断し、たんぱく質や酵素などの比較的分子量の大きい有機物の高次構造を変性させ、元来の機能を失わせることができ、除菌作用や抗カビ作用や抗ウイルス作用を得ることができる。また、染料などの光吸収構造に影響を与え、脱色作用を得ることができる。
【0028】
これらの活性物質は、臭気物質やVOCなどの環境化学物質や、細菌、真菌、あるいは原生動物などの微生物、染料などの着色物質と反応し、これらの全部、または一部を酸化することによって、脱臭、抗カビ、抗ウイルス、脱色あるいは抗菌などの作用を発現する。
【0029】
本発明において「抗菌」とは、気相の菌を殺菌及び/又は分解することをいい、好適には気相の菌濃度の低減及び/又は菌の増殖を抑制することをいう。具体的には、活性物質と菌が24時間以上接触した場合に、接触した菌濃度を初期濃度よりも2桁以上減少できることをいう。本発明において、抗菌活性の対象は特に制限されず、例えば、細菌、カビ、ウイルス等が挙げられ、抗菌活性の点からは、細菌が好ましい。細菌としては、例えば、大腸菌、黄色ぶどう球菌、緑膿菌、MRSA、セレウス菌、肺炎桿菌が挙げられる。
【0030】
本発明において、「オキソ酸」とは、ヒドロキシル基(OH)および、オキソ基(C=O)を有する化合物であり、例えば、リン酸、亜リン酸、硫酸、亜硫酸、炭酸、硝酸、亜硝酸、ホウ酸、ケイ酸、ヒ酸、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、クロム酸、二クロム酸、過マンガン酸や、ハロゲンオキソ酸である次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、過臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸などが挙げられる。一方、光触媒により酸化分解されないものが好ましく、リン酸、硫酸、炭酸、硝酸、あるいはホウ酸、あるいはこれらの少なくとも一つ以上の化合物が挙げられる。
【0031】
オキソ酸として、例えばリン酸を使用する場合、リン酸塩、リン酸水素塩を用いて、適当な濃度の水溶液として用いることができる。また、ポリリン酸やメタリン酸などのリン酸化合物も同様に使用できる。いずれも、その構造中に複数のオキソ基を有している。
【0032】
オキソ酸によってラジカル状態の物質が安定な化合物に変換されるメカニズムについては明らかではないが、オキソ酸のように酸素を多く含む構造が、ラジカルに配位して、より安定した活性物質へと変換されるものであると考えられる。
【0033】
本発明においては、発生する活性物質の種類は、含有するオキソ酸およびハロゲンの種類と量によって選択的に発生させることができる。例えば、オキソ酸としてリン酸塩を使用した場合、活性物質として過酸化水素を発生させることを確認している。また、ハロゲンとして、フッ素および塩素を使用した場合、次亜塩素酸を発生させることを確認している。なお、ハロゲンの含有状態は一様ではなく、ハロゲンが酸化チタン(IV)と化学結合していると活性酸素の活性物質の発生量を向上させることができ、結合していないハロゲンの一部は、塩素酸系活性物質のような抗菌性の高い活性物質に変化して放出されるものと思われる。ハロゲンの含有状態や比率は、発生させたい目的物質によって制御すればよい。尚、オキソ酸を含有させず、ハロゲンから生じるハロゲンオキソ酸にて同様の効果を得ることは、ハロゲンオキソ酸の発生量が少ないため好ましくない。
【0034】
本発明において「ハロゲンの少なくとも一部が酸化チタン(IV)と化学結合している」とは、酸化チタン(IV)とハロゲンの少なくとも一部とが化学的に結合していることをいう。好適には担持や混合ではなく酸化チタンとハロゲンとが原子レベルで結びついている状態のことをいい、より好適には酸化チタンとハロゲンとがイオン結合していることをいう。本発明において「化学結合しているハロゲン」とは、例えば、ハロゲン含有酸化チタンに含まれるハロゲンのうち、水に溶出しにくいハロゲンのことをいう。尚、二種類以上のハロゲンを含有させる場合には、そのうちの1種類以上が化学的に結合している状態であれば効果が得られる。
【0035】
本発明において、ハロゲンとしては、フッ素、ヨウ素、臭素及び塩素が挙げられ、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択される少なくとも一つ以上である。例えば、ハロゲンとして、フッ素を使用する場合、フッ素の含有量は、活性物質の発生量及び光照射時の抗菌性能の増強の点から、1.25重量%〜4.0重量%であることが好ましい。フッ素含有酸化チタン(IV)におけるフッ素の含有量は、吸光光度分析法(JISK0102)により求めることができる。
【0036】
酸化チタン(IV)と化学結合しているハロゲンの量は、酸化チタン光触媒を水中に分散させ、pH調整剤(例えば、塩酸、アンモニア水)でpH=3以下又はpH=10以上に保持し、水中へのハロゲンの溶出量を比色滴定等により測定し、ハロゲン含有酸化チタンに含まれるハロゲンの総量から上記溶出量を差し引くことにより算出できる。
【0037】
化学結合は、イオン結合であることが好ましい。化学結合がイオン結合である場合は、ハロゲンと酸化チタンとが強固に結合し、例えば、抗菌活性や光触媒反応の促進作用を向上できる、酸化チタンとハロゲンとのイオン結合は、光電子分光装置により分析できる。例えば、ハロゲンがフッ素である場合、ハロゲン含有酸化チタンを光電子分光分析装置で分析した際に、フッ素の1s軌道(F1s)のピークトップが683eV〜686eVの範囲となるスペクトルを示す場合をいう。これは、フッ素とチタンとがイオン結合したフッ化チタンのピークトップの値が上記範囲内であることに由来する。
【0038】
酸化チタン(IV)としては、例えば、アナタース型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンが挙げられ、高い光触媒活性が得られることから、アナタース型酸化チタンが好ましい。本発明において「アナタース型酸化チタン」とは、粉末X線回折スペクトル測定において(使用電極:銅電極)、回折角度2θ=25.5度付近に回折ピークが現れる酸化チタンのことをいう。
【0039】
酸化チタンとしては、二酸化チタンのほか、含水酸化チタン、水和酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸、水酸化チタン、酸素欠損型酸化チタン、窒素置換型酸化チタン、硫黄置換型酸化チタンなどが挙げられる。光触媒活性を有していれば結晶形については特に制限はなく、無定形、アナタース形、ルチル形、ブルッカイト形のいずれでもよい。ルチル型とアナターゼ型酸化チタンの組み合せなど、結晶形の違う成分を複合してもなんら問題はない。
【0040】
酸化チタンは粉末状であることが多いが、チタン板などの金属表面を酸化して、酸化チタン薄膜を形成してもよい。また、チタンアルコキシドなどをコーティングして、加熱処理することによってチタン薄膜を形成してもよい。チタン粉末を金属表面などに溶射して、酸化チタン膜を形成してもよい。
【0041】
また、酸化チタンの表面にPt、Pd、Rh、Ru、Au、Ag、Cu、Fe、Ni等の金属を被覆して用いることも何ら限定するものではない。また、表面にCrやVなどの不純物金属を含有させて光の吸収波長を拡大させた光触媒を用いることもなんら限定するものではない。
【0042】
酸化チタンは、比表面積が200〜350m2/gの範囲が好ましく、より好ましくは250〜350m2/gの範囲である。ここで、本発明において比表面積とは、BET法(窒素の吸着・脱離方式)により測定した、酸化チタンの粉末1g当たりの表面積値である。比表面積が200m2/g以上の場合、分解する対象物との接触面積を大きくすることができる。
【0043】
[オキソ酸およびハロゲン含有酸化チタンの製造方法]
本発明の、オキソ酸およびハロゲン含有酸化チタンは、酸化チタンとハロゲンが化学結合し、オキソ酸と、前記ハロゲンとは異なるハロゲンが添着していればよく、例えば、第一の工程でハロゲン含有酸化チタンを作製し、第二の工程で更にオキソ酸およびその他のハロゲンを添着して製造することができる。ハロゲンが化学結合した酸化チタンを使用しない場合には、第二の工程のみで実施できる。
【0044】
第一の工程である、ハロゲン含有酸化チタンは、例えば、n−ブチルアミンの吸着量が8μmol/g以下である酸化チタンの水分散液とハロゲン化合物とを混合し、さらに、前記混合液のpHが3を超える場合は酸を用いてpHを3以下に調整することによって、前記混合液中で前記酸化チタンと前記ハロゲン化合物とを反応させる工程と、前記反応させて得られた反応物を洗浄することによって、ハロゲンの少なくとも一部が酸化チタンと化学結合しているハロゲン含有酸化チタンを得る工程とを含む製造方法により製造することができる。n−ブチルアミンの吸着量が8μmol/g以下であるアナタース型酸化チタンとしては、例えば、堺化学工業株式会社製SSP−25等が使用でき、その水分散液としては、例えば、堺化学工業株式会社製CSB−M等が使用できる。
【0045】
ハロゲン化合物としては、特に限定されないが、一般的なハロゲン化合物を使用できる。ハロゲン化合物が、フッ素化合物である場合、例えば、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素酸が挙げられ、これらの中でも、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム及びフッ化水素酸が好ましい。ハロゲン化合物がヨウ素化合物である場合、ヨウ化水素、過ヨウ素酸、ヨウ化アンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化合物が臭素化合物である場合、臭化水素酸、臭化アンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化合物が塩素化合物である場合、塩酸、塩化ナトリウム、次亜塩素酸が挙げられる。
【0046】
酸化チタン1g当たりのn−ブチルアミンの吸着量の測定方法は以下の通りである。つまり、130℃で2時間乾燥した酸化チタンのサンプル1gを、50mLの共栓付き三角フラスコにて精秤し、これにメタノールで希釈した0.003規定濃度のn−ブチルアミン溶液を30mL加える。次いで、これを1時間超音波分散させた後、10時間静置し、その上澄み液を10mL採取する。そして、採取した上澄み液を、メタノールで希釈した0.003規定濃度の過塩素酸溶液を用いて電位差滴定し、そのときの中和点における滴定量からn−ブチルアミンの吸着量を求めることができる。
【0047】
また、酸化チタン(IV)は、基材に担持することで、光の照射や、光触媒の飛散防止を効果的に行うことができる。基材に担持する場合には、先にハロゲン含有酸化チタンを作製し、基材に担持したのち、オキソ酸および追加のハロゲンを添着させて作製する。基材としては、特に限定されないが、一般的なフィルタ基材を使用でき、金属、プラスチック、合成樹脂繊維、天然繊維、木材、紙、ガラス、セラミックなどが挙げられ、金属やセラミックやガラスなどが適している。プラスチックや紙を基材として用いる場合は、基材表面にシリコーンやフッ素樹脂、シリカなどを被覆して酸化チタンを担持してもよい。
【0048】
基材の形状は特に限定されないが、板状、網状、ハニカム状、繊維状、ビーズ状、スリット状、発泡体形状など、フィルタ状にすると光の照射と空気の接触を効率的に行なうことができる。板状のフィルタであれば、板に孔を空けたパンチング形状、繊維を編みこんだ編物形状、繊維を接着した不織布形状など、開口を備えたものが好適である。板状であれば、板をプリーツ状に折ってフィルタの表面積を広げることによって圧力損失を低減させてもよい。
【0049】
基材にガラス繊維織物を用いると、光や放射線に対する耐久性が強く、有機合成繊維や紙よりも酸性のバインダーによる化学的腐食を受けにくく好適である。また、ガラス繊維は光透過性および光散乱性を有するため、ハロゲン含有酸化チタンに光を照射する場合には、効率的に光を照射することができる。ガラス繊維の材質としては、石英ガラス、Eガラス、Cガラス、Sガラス、Aガラスなどが挙げられる。繊維形状は特に限定されないが、単繊維よりも、4〜9μmの径を有する短繊維ガラスを複数束ねた繊維束によって形成することが好ましい。繊維束は50本〜6400本程度の任意の本数を束ねて利用することができる。複数の短繊維ガラスを束ねた繊維束に酸化チタンを担持すると、繊維間に酸化チタン粒子が入りこみあるいは付着して固定化される。太い単繊維の表面に酸化チタンを担持する場合に比べて、繊維間に酸化チタンを保持することができるため、担持量を増やすことができる。また、繊維間に入り込んだ酸化チタン粒子は繊維にはさまることによって強固に固定化されるとともに、外部から衝撃が加わった場合にも繊維を介して衝撃が伝わるので脱落しにくいという作用を得ることができる。
【0050】
バインダーを使用する場合、Na2O、K2O、LiO2などのケイ酸塩からなるアルカリシリケート、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾルなどの無機コロイド、シリカ、ケイ素、チタンなどのアルコキシド類とその加水分解物などが挙げられる。なお、Naなどのアルカリ成分は酸化チタン(IV)の結晶性を低下させ、性能を低下させることがあるため、バインダーとしては、主成分がSiO2であることがのぞましく、シリカゾルまたはシリカアルコキシド類の加水分解物などが好適である。
【0051】
ケイ素のアルコキシド類としては、テトラエトキシシランおよびその重合体であるメトキシポリシロキサン、エトキシポリシロキサン、ブトキシポリシロキサン、リチウムシリケートなどが挙げられ、チタンのアルコキシド類としては、テトラプロポキシチタンおよびその重合体などが挙げられる。これらの金属アルコキシド類は、水と酸によって加水分解され、バインダーとして用いることができる。チタンアルコキシドの場合、加熱処理することによって、それ自身に光触媒作用を持たせることができる。
【0052】
バインダーは酸性であることが好ましく、ケイ素、チタンなどを酸で加水分解した物や酸性のシリカゾル、アルミナゾルなどが挙げられる。ケイ素、チタンなどを酸で加水分解する場合には、塩酸、硫酸などを用いてpHを1〜5に調整するとよい。シリカゾルを用いる場合には、pH2〜4、粒子径10〜50nm程度のものが好適である。pHが中性あるいはアルカリ性のシリカゾルを用いると、ハロゲンを含有する酸化チタンを添加した際にゲル化をおこし、基材に均一に担持することが困難になることが多い。
【0053】
Na、K、NH4などの陽イオン成分がバインダーに含まれていると、ハロゲンとの反応の進行および酸化チタン(IV)表面への吸着により、抗菌性能の低下が発生することがあり、上記陽イオン成分は極力少ないほうがよい。例えば、バインダー溶液にNaが含まれている場合には、Na濃度がNa2Oとして0wt%より大きく0.05wt%以下であることが好ましい。
【0054】
ガラス繊維織物の目付け量としては10〜900g/m2のものが好ましく、製造を容易にするためには100〜400g/m2のものを選択するとよい。また、織物の織り方は、平織、綾織、朱子織、からみ織り、模紗織など、どのような織り方でもかまわないが、形状安定性の観点から模紗織が好ましい。糸の密度としてはタテ・ヨコの繊維束が20〜40本/25mm、厚さは0.1〜2mm、引張り強度100N/25mm以上が好ましい。
【0055】
基材にハロゲン含有酸化チタンを担持する方法としては、ディップコート、スプレーなどが挙げられるが、基材にハロゲン含有酸化チタンが固定化できればいかなる手段でもよい。1回の処理で担持量が十分でなければ、複数回の処理工程を繰り返してもよい。また、担持後に、乾燥機で50〜700℃程度の温度で0.01〜5時間程度加熱することによりバインダーを収縮させて基材に強固に固定化してもよく、90〜150℃で0.1時間の加熱がさらに好適である。このような加熱乾燥処理を行う場合には、基材の主成分をガラス、セラミックスで構成することが望ましい。
【0056】
ハロゲン含有酸化チタンの粒子径は、繊維の直径よりも小さいほうが好ましい。ハロゲン含有酸化チタンが繊維の直径よりも小さいため、ハロゲン含有酸化チタンが繊維間の編目や重なり部分に入り込みやすく、強固に固定化されるという効果を得ることができる。その結果、ハロゲン含有酸化チタンの担持量を増加させることができる。ハロゲン含有酸化チタンの粒子径は、一次粒子径として6〜100nm程度であるが、実際は一次粒子が凝集して0.1〜100μm程度の二次粒子になっていることが多い。ここでいうハロゲン含有酸化チタンの粒子径は二次粒子の状態を示し、ハロゲン含有酸化チタンを編物に分散させる際に繊維の編目や重なり部分に入り込みやすいことが必要である。
【0057】
ハロゲン含有酸化チタンに、オキソ酸および追加のハロゲンを添着するときは、第一の工程で作製したハロゲン含有酸化チタンに、オキソ酸や、前記ハロゲンとは異なる種類のハロゲンを含む水溶液に接触させて作製することができる。
【0058】
オキソ酸としては、特に限定されないが、一般的なオキソ酸化合物を使用することができる。オキソ酸が、リン酸、硫酸、炭酸、硝酸、またはホウ酸を含む化合物から選択される少なくとも1つ以上の化合物である。
【0059】
例えば、オキソ酸がリン酸化合物である場合、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸銀(I)、リン酸クロム(III)、リン酸コバルト、リン酸第二鉄、リン酸チタン、リン酸鉄(III)、リン酸銅(II)、リン酸鉛(II)、リン酸マグネシウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素リチウム、リン酸三アンモニウム、リン酸三カリウム、リン酸三カルシウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三リチウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、ポリリン酸、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸、メタリン酸アルミニウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、アデノシン三リン酸、アデノシン二リン酸、核酸化合物等が挙げられる。
【0060】
また、オキソ酸が炭酸化合物である場合、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸鉛、炭酸バリウム、炭酸マンガン、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸セシウム、炭酸セリウム、炭酸鉄、炭酸銅などが挙げられる。
【0061】
また、オキソ酸が硫酸化合物である場合、硫酸、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸水素アンモニウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸すず(II)、硫酸ストロンチウム、硫酸セシウム、硫酸第一鉄、硫酸第一マンガン、硫酸第二クロム、硫酸第二鉄、硫酸チタン、硫酸銅(II)、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸リチウムなどが挙げられる。
【0062】
また、オキソ酸が硝酸化合物である場合、硝酸、硝酸亜鉛、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸クロム(III)、硝酸コバルト(II)、硝酸セシウム、硝酸鉄(II)、硝酸銅(II)、硝酸ニッケル、硝酸バリウム、硝酸マグネシウム、硝酸マンガン、硝酸リチウムなどが挙げられる。
【0063】
また、オキソ酸がホウ酸化合物である場合、ホウ酸、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸マンガン(II)などが挙げられる。
【0064】
オキソ酸は、適当な溶媒に溶解可能な濃度を混合して添着に使用する。例えば、精製水などに0.01重量%から10重量%程度の濃度になるように溶解して使用する。
【0065】
また、溶液には、化学結合させるハロゲンと同じあるいは異なる種類のハロゲン化合物を混合して、同時に添着させることができる。このときのハロゲンは、例えば、塩素化合物においては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムなどの塩化物が挙げられる。また、ヨウ素化合物においては、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムなどが挙げられる。また、臭素化合物においては、臭化カリウム、臭化カルシウム、臭化アンモニウム、臭化ナトリウムなどの臭化物が挙げられる。これらも、オキソ酸の溶液に溶解可能な量を混合し、溶解させて使用する。例えば、0.01重量%から10重量%程度の濃度になるように溶解し、使用することができる。
【0066】
酸化チタンまたはハロゲン含有酸化チタンに、オキソ酸を含有させる方法としては、ディップコート、スプレーなどが挙げられるが、酸化チタンに含有できればいかなる手段でもよい。酸化チタンをオキソ酸溶液に接触させた後、粉末であれば遠心分離やろ過を行い、乾燥させればよい。また、酸化チタンを基材に固定化した状態であれば、酸化チタンをオキソ酸溶液に接触させ引き上げたのち、100℃以下の低温で乾燥させて液体の残留を無くせばよい。このようにして添着されたオキソ酸およびハロゲンは、酸化チタンの細孔や、表面にランダムに吸着あるいは化学結合している状態にあると推測される。
【0067】
酸化チタンに照射する光源は、酸化チタンを活性化できる波長の光をもつものであれば特に限定されないが、波長350nmから450nmの波長範囲に強い発光ピークを持つものであるほど、投入電力に対して効率的に酸化チタンの励起を行うことができる。例えば、直管型の蛍光灯型ブラックライトを使用すると、380nm付近の波長を多く含み、効率的に広い範囲に強い光を照射できるため、基材の面積が広い場合に好適に使用できる。また、ハロゲンランプ、キセノンランプ、水銀ランプなどの光源を、紫外線の吸収が少ないミラーやレンズなどによって広い面積が照射できるように配置することでも実施できる。
【0068】
また、前記波長に強い発光ピークをもつ光源として、半導体素子を使用したものがある。例えば、発光ダイオード、半導体レーザーなどが使用できる。これらは、照射面積が小さく、光源の大きさも小さいため、小さな部分に局所的に照射するのに適している。
【0069】
このようにして作製されたオキソ酸およびハロゲン含有酸化チタンと、紫外線光源を用いて、活性物質を発生し、空間中に拡散、放出することができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明するが、本発明は、以下の記載に何ら限定して解釈されるものではない。
【0071】
(実施例1)
<1>.オキソ酸およびハロゲン含有酸化チタンの調製
酸化チタン(商品名:SSP−25、堺化学工業株式会社製、アナタース型、粒径:5〜10nm、比表面積:270m2/g以上)の濃度が150g/Lとなるように酸化チタンに純水を加え、これを撹拌して、酸化チタン分散液を調製した。この酸化チタン分散液に、酸化チタンに対してフッ素(元素)に換算して3重量%に相当するフッ化水素酸(和光純薬社製、特級)を添加し、pH3に保持しながら25℃で60分間反応させた。得られた反応物を水洗した。水洗は、反応物を濾過して回収される濾液の電気伝導度が1mS/cm以下となるまで行った。そして、これを空気中において130℃で5時間乾燥させてフッ素含有酸化チタンを調製した。
【0072】
<2>.ハロゲン含有酸化チタンを担持したフィルタの作製
得られたハロゲン含有酸化チタンとシリカ系のバインダー(Na成分がNa2O濃度として0.05wt%以下、pH=3、SiO2濃度20wt%のシリカゾル)と精製水を混合し、ボールミルで24時間分散混合してスラリーを作成した。出来上がったスラリーに、基材として開口率15%のガラス繊維織物をディップしてハロゲン含有酸化チタンを含浸させ、エアブローして余剰液を排除した後、120℃の乾燥機で30分乾燥させ、ハロゲン含有酸化チタンを含むフィルタを作成した。同様のディップ作業を繰り返し、ハロゲン含有酸化チタンとバインダーを合わせた担持量を500g/m2にした。フィルタの基材となるガラス繊維織物は、目付け量354g/m2、糸の密度11×3本/25mm(タテ・ヨコ同じ)の模紗織、厚さは0.42mmのものを用いた。作成したフィルタの開口率は約15%であった。
【0073】
<3>.オキソ酸およびハロゲン含有酸化チタンフィルタの作製
得られたハロゲン含有酸化チタンフィルタを、オキソ酸およびハロゲンの供給源である50mMリン酸緩衝生理食塩水に含浸したのち、引き上げ、50℃の乾燥炉にて2時間静置して乾燥させ、オキソ酸およびハロゲン含有酸化チタンフィルタとした。
【0074】
<4>.活性物質の発生量の測定
作製した酸化チタンフィルタを、長さ30cm、幅1cmの短冊状に裁断し、直径3cmの石英製のガラス管に挿入した。ガラス管の両端は、ガスの漏洩のないように密閉しながら配管を配置し、上流側より空気(温度約25℃、相対湿度約50℃)を500ml/minの流量で送気した。下流側には、ガラス製のガス採取管(インピンジャー)を接続し、内部に捕集液である蒸留水を20ml入れた。石英管を挟むようにブラックライトを5mW/cm2となるように照射し、24時間ガスを流通させて、フィルタから発生する活性物質を蒸留水に捕集した。
【0075】
24時間後、ガス捕集管の内部に残存していた蒸留水を回収し、残量を計量するとともに、活性物質である過酸化水素および次亜塩素酸の定量を行った。過酸化水素の測定は、過酸化水素定量用発色基質(商品名:H22 DetectionKit Colorimetric、AssayDesigns社製)を使用し、582nmの発色を紫外可視吸光度計にて測定した。その結果を図1に示す。
【0076】
また、次亜塩素酸の測定は、DPD法による遊離塩素測定試薬(HACH社製)を使用し、直読水質分析計で遊離塩素濃度を測定した。その結果を図2に示す。
【0077】
(比較例1)
比較例1として、ハロゲン含有酸化チタンに替えて、ハロゲンを含まず光触媒活性を有するアナタース型酸化チタン(商品名:SSP−25、堺化学工業株式会社製)を使用してフィルタを作成した以外は、実施例1と同様にして活性物質の発生量の測定を行った。その結果を図1に示す。
【0078】
(比較例2)
比較例2として、オキソ酸ハロゲン含有酸化チタンに替えて、オキソ酸を含まないハロゲン含有酸化チタンを使用したフィルタを用いた以外は、実施例1と同様にして活性物質の発生量の測定を行った。その結果を図1に示す。
【0079】
(比較例3)
比較例3として、実施例1と同様の方法において、紫外線の照射を行わずに暗所にて活性物質の発生量の測定を行った。その結果を図1に示す。
【0080】
また、実施例1および比較例1から3の条件について一覧を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
図1に示すように、実施例1のフィルタは、24時間後に約153nmol/m3の過酸化水素が検出された。一方、比較例1のフィルタは、0.14nmol/m3、比較例2のフィルタは検出下限以下(0.1nmol/m3未満)、比較例3のフィルタは検出下限以下(0.1nmol/m3未満)であった。オキソ酸を含有し、光照射をすることによって、活性物質である過酸化水素がフィルタ上から放出されていることが確認された。また、ハロゲン含有酸化チタンを用いることにより、その発生量は1000倍以上に増大することが確認された。
【0083】
一方、残留塩素は、実施例1のフィルタより23.6μg/m3(濃度1.7mg/L)検出された。また、比較例1では1.3μg/m3(濃度0.09mg/L)検出された。また、比較例2、比較例3では検出下限以下(0.1μg/m3以下)であった。過酸化水素と同様に、オキソ酸を含有し、光照射によって、次亜塩素酸が放出されていることが確認された。また、ハロゲン含有酸化チタンを用いることにより、約20倍発生量が増加することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0084】
光触媒と接触させずに臭気成分や微生物を酸化分解する方法を提供することができ、空気清浄装置、エアコンなどの用途にも適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキソ酸を含有する酸化チタン(IV)に紫外線を含む光を照射し、前記酸化チタン(IV)から活性物質を放出することを特徴とする活性物質発生方法。
【請求項2】
オキソ酸およびハロゲンを含有する酸化チタン(IV)に紫外線を含む光を照射し、前記酸化チタン(IV)から活性物質を放出することを特徴とする活性物質発生方法。
【請求項3】
ハロゲンの少なくとも一部が前記酸化チタン(IV)と化学結合していることを特徴とする請求項2に記載の活性物質発生方法。
【請求項4】
ハロゲンが、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項2または3に記載の活性物質発生方法。
【請求項5】
オキソ酸が、リン酸、硫酸、炭酸、硝酸、またはホウ酸を含む化合物から選択される少なくとも1つの化合物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の活性物質発生方法。
【請求項6】
ハロゲンが、フッ素および/または塩素であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の活性物質発生方法。
【請求項7】
オキソ酸が、リン酸であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の活性物質発生方法。
【請求項8】
フッ素の含有量が、酸化チタン(IV)に対して、1.25重量%以上4.0重量%未満である請求項6に記載の活性物質発生方法。
【請求項9】
光源を用いて、紫外線を含む光を酸化チタンに照射することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の活性物質発生方法。
【請求項10】
光源が、ブラックライトであることを特徴とする請求項9に記載の活性物質発生方法。
【請求項11】
光源が、発光ダイオードであることを特徴とする請求項9に記載の活性物質発生方法。
【請求項12】
酸化チタン(IV)を基材に固定化したことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の活性物質発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−32141(P2011−32141A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182160(P2009−182160)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】