活性薬剤用のデリバリーシステム
本発明は、ゲル形成ポリマに収容する複数のナノカプセルを含むマイクロスフェアを提供するものであり、前記複数のナノカプセルは、非親水性活性薬剤を運ぶオイルコア(油芯)と重合性被覆の外殻を含んでいる。本発明は、また、治療薬、化粧品、および、診断薬におけるマイクロスフェアの使用と同様に、本発明のマイクロスフェアを調製する方法、同様なものを含む薬学的組成物をも提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性剤のための、好ましくは、経口摂取用の、デリバリーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
以下は、本発明の技術分野における技術状況の記載に関連すると思われる先行技術リストである。これらの文献の本明細書における確認は、下記のリストから括弧内の数字を示すことによりなされるであろう。
【0003】
【非特許文献1】ホルム R、ポータ CJH、 エドワード Ga、 ミュラーツ A、 Kクリステンセン HG 及びチャールマン WN. Examination of oral absorption and lymphatic transport of halofantrine in a triple−cannulated canine model after administration in self− microemulsifying drug delivery system (SMEDDS) containing structured triglycerides. Eur. J. Pharm.Sci. 20:91−97 (2003).
【非特許文献2】オー・ドリスコールCM、Lipid−based formu− lations for intestinal lymphatic deli−very. Eur J Pharm Sci.l5:405−15.(2002).
【非特許文献3】タムラ S、 オーイケ A、イブキ R、アミドン GL、ヤマシタ S. Tacrolimus is a class II low−solubility high−permeability drug: the effect of P−glycoprotein efflux on regional permeability of tacrolimus in rats. J Pharm Sci. 91:719−29. (2002).
【非特許文献4】ハウス DJ、 フォーガルSE、フィコリルリ JV、プライス CA、ロイ T、ジャヤラジ AA、ケイルン JJ. Lipid−based delivery systems for improving the bioavailability and lymphatic transport of a poorly water−soluble LTB4 inhibitor. J. Pharm. Sci. 87:164−9 (1998).
【特許文献1】欧州特許480,729、 ハイブング L.等、 Microen−capsulation for controlled oral drug de−livery system.
【特許文献2】米国特許第5,965,160号、 ベニタ S 等. Self−emulsifiable formulation producing an oil−in−water emulsion.
【非特許文献5】クックRO.等、Novel sustained release microspheres for pulmonary drag delivery. J Control Release.104:79−90.(2005).
【非特許文献6】クホー SM、等、Formulation design andbioavailability assessment of lipidic self−emulsifying formulations of halo−fantrine.Int.J.Pharm.167:155−164 (1998).
【非特許文献7】クリステンセン、KX.等。 Preparation of redisperible dry emulsions by spray drying.Intl.J. Pharm. 212:187−194 (2001).
【非特許文献8】ホンボ、T.、コバヤシ等。 The oral dosage form of FK−506. Transplant.Proc.19(Suppl6): 17−22 (1987).
【非特許文献9】シマダ T.等 Lowered blood concen− tration of tacrolimus and its recovery with changes in expression of CYP3A and P−glyco−protein after high−dose steroid therapy.Transplantation. 74:1419−24(2002).
【非特許文献10】ウノ T.等。Pharmacokinetic advan− tages of a newly developed tacrolimus oil−in−water−type emulsion via the enteralroute. Lipids. 34: 249−54 (1999).
【特許文献3】米国特許6,884,433、ヤマシタ K.等。Sustainedrelease formulation containing tacroli− mus.
【非特許文献10】マンジュナス等。 Pharmacokinetics, tissue distribution and bioavailabilityof clozapine solid lipid nanoparticles after intravenous and intraduodenal ad−ministration, Journal of Controlled Release 107 (2005)
【非特許文献11】ジュバルツ M.A.The physiology of the lymphatic system, Adv. Drug Deliv. Rev.50 (2001)3−20.
【非特許文献12】ジャニ、P.U.,等、 Uptake and trans−location of latex nanospheres and micro−spheres after oral administration to rats、 J. Pharm. Pharmacol. 41 (1989) 809−812.
【非特許文献13】フローレンス D.Evaluation of nano and microparticles uptake by the gastro−intestinal tract, Adv. Drug Deliv. Rev. 34 (1998) 221−233.
【非特許文献14】ニシオカ Y.等、 Lymphatic targeting with nano− particulate system, Adv. DrugDeliv. Rev. 47(2001)55−64.
【特許文献4】US2003/0147965、バセットM、等。Methods and products useful in the formation and isolation of microparticles.
【0004】
ドラッグデザインやデリバリの最近の進歩は、腸管内リンパ輸送のための基質となり得る脂溶性の高い薬剤分子の数の増加をもたらしている。しかしながら、これらの薬剤は、腸管で吸収される前に、低い溶解性、P-糖蛋白の流出、またはCYP3A4の代謝のいずれかの理由により経口的な生体への利用性が低い。
【0005】
このような薬剤の十分な薬学製的製剤は、また、十分に解決されていない課題が残っている。脂質が疎水性薬剤のリンパ輸送を増強し得ることはよく知られている。それにより、肝臓の初回通過代謝がもたらすドラッグクリアランス(薬剤除去)を減少させる。このことは、薬剤吸収、バイオアベイラビリティプロフィール、活性、およびより低い毒性を改善している。ネオラル(商標;Neoral、サイクロスポリンA)、ノルビール(商標;Norvir、リトナビール)、およびフォルトバーゼ(商標;Fortovase,サキナビール)のような、自己乳化薬剤ドラッグデリバリシステム(SEDDS製剤の商業上成功は、例えば、等であるが、脂溶性薬物の経口のバイオアベイラビリティを改良するために期待し得るエマルジョンをベースとしたデリバリーシステムに関心が寄せられている(1)。胃腸管(GI)内で微細油滴として広がるSEDDSは、脂溶性薬剤のリンパ性輸送を促進することによりバイオアベイラビリティを増強すると考えられている。事実、胸管を経由するリンパ性輸送の拡張が、トリグリセライド構造をもつSMEDDSを動物に投与したハロファントリン(halofantrine)の27.4%であったことが最近証明された。付け加えると、最近、ある環境下で、リンパ管は、薬物吸収の主要な経路を提供するものであり、全身血漿中よりもリンパ液中では5〜10000倍の薬物濃度をもたらしていると最近報告されている(2)。ドラッグデザインとドラッグデリバリの最近の進歩はまた、腸管リンパ輸送の基質となる高い脂溶性薬剤分子が数多く開発に至っている。薬物吸収、バイオアベラビリティプロフィール、活性と毒性を決定する上でリンパ管の役割に関心がたかまっている。例えば、ある種の脂質がプレシステミック薬物代謝と腸管壁による仲介(gp−仲介)薬物流出の両方を阻害することができることを示す一連の証拠が増えつつある。
【0006】
特許文献(1)EP480,729は、油滴中に拡散させた薬物の経口投与用のマイクロカプセル化を記載している。油滴は、金属キレート能と水溶性ポリマである多糖を用いてカプセル化されている。カプセル化は、薬物を胃内での放出から保護する、一方で小腸内で急速な放出をもたらす。油滴中の薬物は、優先的にリンパ吸収されるため、肝臓での初回通過代謝による分解から保護される。
【0007】
特許文献2(US5,965,160)は、疎水性薬物を含有することができ、油性成分と界面活性剤を含む自己乳化油状製剤(SEOF)を開示している。SEOFは、油性成分が油状キャリアとカリオン性脂質を含み、場合により、脂溶性高級アルコールを含むことが特徴である。水溶液でSEOFの混合物に対して形成される水中油(oil in water)エマルジョン乳剤は、正に荷電した油滴である。
【0008】
非特許文献5で、Cook,R.O.等は、肺ドラッグデリバリ用の持続放出粒子の製造法を記載している(6)。この方法によれば、親水性で、イオン化した薬剤テルブタリン硫酸塩のナノカプセルは、スプレイ−乾燥法を用いて疎水性マイクロスフェア内に取り込まれている。
【0009】
Khoo、SM等が、ハロファントリン(Halofantrine)のような脂溶性薬物の経口デリバリ用の分散した脂質ベースの製剤を開示している(非特許文献6)。脂質の自己乳化薬物デリバリシステム(SEDDS)と自己微細乳化ドラッグデリバリシステム(SMEDDS)の両方が記載されている。そのシステムは、トリグリセライド、モノ/ジグリセライド、非イオン性界面活性剤、親水性層および製剤原料の薬物を含む。最適化された製剤は、中程度の鎖のトリグリセライド(MCT)SEEDおよびSMEDDS、そして長鎖のトリグリセライド(LCT)SMEDDSである。
【0010】
Holm, R等は、中程度鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸の異なる組み合わせによるトリグリセライドを含むSMEDDSを記載しているが、この場合、クリセロール骨格上の異なる脂肪酸は、異なる代謝的運命を示す(1)。
【0011】
Christensen,K.L.等は、当初のO/W乳剤を水中で再構成してリフォームできる安定な乾燥エマルジョンの製剤を記載している(非特許文献7)。その乾燥乳剤は、ハイドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、または、ポビドン、および、固体担体として、分画したココナッツ油を含む。液体O/W乳剤は、実験室用スプレイドライヤでスプレイ乾燥した。再構成した乳剤の液滴サイズは、約1μmであった。タクロリムス(Tacrolimus、Prograf、商標)は、菌類ストレプトマイセス ツクバエンシスに由来するマクロライド系免疫抑制剤(MW.804)であり、組織不適合拒絶反応の予防に有効であり、急性およびステロイド、サイクロスポリン−耐性移植拒絶に処置において有効であることが示されている。タクロリムスは、免疫抑制剤サイクロスポリンの代替と考えられており、サイクロスポリンより10〜100倍強い効果を示している。タクロリムスは、1994年4月に肝臓移植拒絶の防止のためにFDAにより認可された。
【0012】
サイクロスポリンのように、タクロリムスの薬動力学的パラメータは、高い個人間変動と個人内変動を示し、そして両薬剤は、狭い治療係数をもち、最適治療のためには全血薬剤のモニタリングでの治療を必要とする。タクロリムスの吸収と経口バイオアベイラビリティ(10〜25%)は、貧弱であり、食べ物の存在下では、吸収の率と程度の減少を伴う。不完全であるにもかかわらず、急速に、腸管から吸収される。タクロリムスの全血中の最大濃度(Cmax)は、経口投与後、おおよそ1〜2時間で達成される。低い水溶性のために、経口または非経口治療に続く、タクロリムスの組織分布は、広範囲である(非特許文献8)。タクロリムスは、主としてアルブミンとα1−酸糖蛋白に結合する。赤血球はその薬物の75〜80%を結合し、血漿中濃度より10〜30倍高い全血中濃度をもたらす(非特許文献8)。タクロリムスは、排泄されるまでに殆ど完全に代謝される。代謝は肝臓中のチトクロームP450(CYP)3A4イソ酵素を経ており、また、それほどで多くはないが、CYP3A4イソ酵素と腸管内のP−糖蛋白を経ている。肝移植患者におけるタクロリムスの排泄半減期は、約12時間である。投与量の1%以下が尿中に未変化で排泄される。腸細胞からの腸管内腔へタクロリムスのP−糖蛋白による流出は、吸収前のCYP34代謝を許している。したがって、タクロリムスのバイオアベイラビリティは制限がされている(非特許文献9)。タクロリムスが、CYP3A4およびP−糖蛋白の両方の阻害剤(例えば、ジルルチアゼム、エリスロマイシンまたはケトコナゾール)と一緒に投与したときは、経口バイオアベイラビリティの増強がみられた。薬剤デリバリによるタクロリムスのバイオアベイラビリティを増強する必要性がある。
【0013】
Uno T.等ら(非特許文献10)は、オレイン酸をベースにした薬物タクロリムスの水中油(O/W)型乳剤を記載している。そのO/W乳剤滴の平均径は、0.47μmであった。開示された製剤は、標準的な市販製剤に比べたタクロリムスための腸内経路のキャリアとして乳剤のバイオアベイラビリティ、薬動力学上の利点、および潜在的有用性を示した。
【0014】
特許文献3(US6,884,433)は、他のマクロライド化合物と同様に、タクロリムスを含む徐放除製剤を記載している。そこで開示された徐放製剤は、タクロリムスの固体分散、またはその水和物を含んでいるが、それらは、水溶性ポリマ(例えば、ハイドロキシプロピルメチルセルロース)と水不溶性ポリマ(例えば、エチルセルロース)と賦形剤(例えば、乳糖)の混合物中に含まれている。分散中においては、粒子サイズは、250μmと同等かこれより小さい。
【0015】
初回通過代謝やこのような低い経口的なバイオアベイラビリティを克服するため、薬物の腸管リンパ輸送が、それ故に、有効に使うことができる。前述したように、高い脂溶性化合物は、リンパ管を経由して全身循環に到達する。14またはそれ以上の鎖長の脂肪酸の大部分が、胸部リンパにおいて回収されることを見いだした(非特許文献11)。
【0016】
付け加えると、サイズが、リンパ性の取り込みに最も重要な決定要因の1つである。リンパ性取り込みの至適サイズは、10〜100nmの間であることを見いだした(非特許文献12)。しかしながら、取り込みは、粒子サイズが増大するにつれてより選択的になり、かつ遅くなる。大きな粒子は、パイエル板の中で長期間維持され得るが、一方、小さな粒子は、胸管へ運ばれる(非特許文献13)。ポリマのナノ−およびマイクロ粒子の経口投与は、腸管のパイエル板のM細胞を通して取り込まれ、そのことは、文献において証明され、実証されている(非特許文献14)。疎水性ポリマで被覆されたナノ粒子は、生体でリンパ細胞に捕捉され易い傾向にある(非特許文献15)。
【0017】
マイクロ粒子への薬物のカプセル化の別の方法は、Bassett等により記載されている(特許文献4)。その方法は、薬物と第一のポリマを溶媒中に溶解し、このようにして造られた混合物に、ポリマに被覆されたマイクロまたはナノ粒子が自然に形成される非溶媒中に溶解した第二のポリマを添加することにより生じる位相反転に関する(特許文献4)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、生体中で明白に非親水性である種々の活性薬物のデリバリ用のシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、本発明の1つの観点においては、ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルを含むマイクロスフェアであって、前記ナノカプセルが、非親水性活性薬剤を運ぶオイルコア(油芯)および重合性被覆の外殻を具えるものである、前記マイクロスフェアが提供される。
【0020】
本発明は、また、ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセル、非親水性活性薬物を運ぶオイルコア(油芯)、および、重合性被覆された外殻、を具えるマイクロスフェアを調製する方法であって、その方法が:
(a)オイル、水混和性の有機溶媒、溶媒に溶解した非親水性活性薬物、および前記オイルコア(油芯)用のポリマまたはポリマの組み合わせ;
(b)前記有機層に水をゆっくり添加し、乳剤を得て;
(c)前記乳剤に水を連続的に添加して、前記乳剤の位相転移を導き、水中油(O/W)乳剤を得て;
(d)前記(O/W)乳剤をゲル形成ポリマまたはゲル形成ポリマの組み合わせと混合し;
(e)前記有機溶媒と水を除去し、前記マイクロスフェアを得る;
を具える方法である。
プセル
【0021】
本発明は、活性成分のマイクロスフェアとして薬学的組成物であって、そのマイクロスフェアが、ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセル、非水溶性活性薬剤を運ぶ油芯(オイルコア)を含むナノカプセル、および重合性被覆外殻(shell)を具える、活性成分マイクロスフェアとして具える、薬学的組成物を提供する。
【0022】
さらに、本発明は、ヒト被験者の体で活性薬剤のバイオアベイラビリティを増強する方法、その方法は、ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルを含むマイクロスフェアを含み、そのナノカプセルは、非親水性活性薬物を運ぶオイルコア(油芯)と重合性被覆の殻を具えることを特徴とする方法を提供する。
【0023】
さらに、その上、本発明は、前記治療に要する活性化薬剤の有効量を被験者の血中に必要とする病状をもつ患者を治療する方法を提供し、前記マイクロスフェアが、ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルを含み、前記ナノカプセルが、非親水性活性薬剤を運ぶオイルコア(油芯)と重合性被覆の外殻を具えるマイクロスフェアを投与することを含む方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、ポリマ混合物で被覆された複数の微小油滴、ゲル形成ポリマにさらに収容された複数のポリマで被覆された油滴を具えるマイクロスフェアの形成が、オイルコア(油芯)中に溶解している脂溶性薬物の血中レベルを有意に上昇させることを見いだしたことに基づいている。このような「二重に被覆された油滴」は、複数のナノカプセルに順応しているマイクロスフェアが、事実上非親水性である種々の活性薬剤用のデリバリビークル(運搬手段)として有用であると理解されるようになった。
【0025】
したがって、1つの態様では、ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルを含むマイクロスフェアであって、前記ナノカプセルが非親水性活性薬物を運ぶオイルコア(油芯)と重合性被覆の外殻を含むものである、前記マイクロスフェアを提供する。
【0026】
「マイクロパーティクル」と交互に用いられる「マイクロスフェア」の用語は、典型的には、固体または半固体の材料から構成され、薬剤または、ナノカプセル中に封入されたその他の薬剤の運搬および放出をすることができるミクロンまたはサブミクロンスケールの粒子と広く定義する。本発明のマイクロスフェアは、活性薬剤を取り込んでいる(例えば、包埋している、カプセル化している、封じ込まれている)ナノカプセルの凝集体を含み、程度の差はあるが球形構造である。典型的には、本発明のマイクロスフェアの平均粒子径は、レーザ回折により測定された重量平均径として理解されているものでは、おおよそ10μm〜おおよそ500μmの範囲である。より好ましくは、マイクロスフェアの平均径は、約10μ乃至約20μmである。
【0027】
本明細書において用いられる「ナノカプセル」の用語は、重合性被覆形成で被覆された油滴(微細油滴)を含むナノ−、または、ナノ以下のスケール構造を意味する。重合性被覆は、オイルコア(油芯)を包んだ硬質な外殻を形成する。そのナノカプセルは、約100nm乃至約1000nmの平均径をもち、好ましくは、約100nm〜約900nmであり、より好ましくは、約100〜300nm乃至300〜500nmである。さらに、マイクロスフェア中にあるナノカプセルのサイズは、基本的には99%が1ミクロン以下の径をもつ油滴であって均一である。本明細書で用いる「ナノカプセル」の用語は、ポリマで被覆された油滴またはポリマの被覆を有する油滴であれば、いかなるものでもよいと同意であると理解されるべきである。
【0028】
本明細書で用いる「複数のナノカプセル」は、ゲル形成ポリマに収容された2つ以上のナノカプセルを意味する。
【0029】
活性薬剤は、ナノカプセル内に封入されている。その結果、活性薬剤とマイクロスフェアを形成するゲル形成ポリマの間には直接の接触はない。事実、湿潤し、膨潤すると、そのマイクロカプセルは、腸管内に、露出した裸の活性薬剤ではなく、ナノ粒子自体を放出する、換言すれば、活性薬剤(例えば、薬剤)自身、または分子レベルでの薬剤の特別な形態(フォーム)である。
【0030】
本明細書で用いられるように、「非親水性活性薬剤」の用語は、少なくとも水に対してある程度の反発があるとみなされるあらゆる化合物を意味する。言い換えれば、低度の、中度の、または高度の脂溶性を示すあらゆる薬剤が非親水性薬剤とみなされるであろう。非親水性薬剤は、薬剤(溶質として)の2層間、例えば、有機層と水(もっとも一般的に用いられている系はオクタノール−水)の分配係数を特徴付けているパラメータにより定義され得る。典型的には、分配係数は、中性の化合物の疎水性を記載している、一方、分配係数(logD、pKaとlogPの組み合わせ)は、薬剤のpH依存性の疎水性の測定値である。本発明の非親水性薬剤は、logP値が1.5以上のあらゆる化合物をいう。
【0031】
ナノカプセルのオイルコア(油芯)は、単一オイル(油)タイプとオイル(油)の併用を含み、極性から非極性まで、幅広い範囲から選択され、水層と混合しない限り、総じて液体である。1つの態様によれば、前記油滴は、植物油、エステル油、高級液体アルコール、高級液体脂肪酸、天然油脂、および、シリコンオイルから選択されるオイル(油)を含む。好ましい態様によれば、オイルコア(油芯)は、例えば、コーン油、ピーナツ油、ココナツ油、ヒマシ油、ゴマ油、大豆油、エゴマ油、ひまわり油、アルガン油、および、くるみ油などの天然油を含むものである。
【0032】
油滴は、オイルコア(油芯)とオイルコア(油芯)を取り巻いている重合性の外殻を含むナノカプセルを形成するためにポリマ塗膜内に封入される。ポリマ塗膜は、オイルコア(油芯)を取巻く外殻構造を提供する。本発明との関連において用語「外殻」は、油滴を封入している固体または半固体重合性構造のいかなるものも意味する。外殻は、単一のポリマまたは2以上のポリマの併用または混合を含むが、それについてはさらに以下に述べる。ポリマ塗膜がポリマの混合を含む場合は、少なくとも1つのポリマが約pH5.0以上で溶解するか、または、少なくとも1つのポリマが水溶性(pH依存性)あることが好ましい。
【0033】
1つの態様では、少なくとも2つのポリマの併用であって、そのポリマー混合物が、水に溶解性であるか(pH依存性)またはpH約5.0以上で溶解する第一のポリマ(単数または複数(ポリマー群))と、水不溶性ポリマである第二のポリマ(単数または複数(第二ポリマー群))とを含むポリマのブレンドを含むものである。
【0034】
用語「水溶性ポリマ」は、250C、質量濃度1%で水層に持ち込まれたとき、肉眼的に均一でかつ透明な溶液を得ることができるあらゆるポリマを意味する、例えば、500nmと同等な波長で、0.1cmの厚さの試料を通したとき、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%以上の最小光線透過率をもつ液体である。
【0035】
用語「pH5.0以上で溶解するポリマ」は、pH5.0以下、250Cで、溶解により培地中へ乾燥重量で10%以上が失われないが、同じ温度でpH5.0以上の水系メディウムで、ハイドロゲルか、または、肉眼的に均一で透明溶液を形成する。あらゆるポリマーを意味する。このようなポリマは、時には、「腸溶性ポリマー」という用語で呼ばれる。
【0036】
多くの水溶性ポリマがこの分野では公知になっている。本発明に関連して適したポリマは、ポリオールおよび炭化水素重合体を含むが、これらの限定されるものではない。典型的な水溶性ポリマには、例えば、ハイドロキシプロピルメチルセルロースやハイドロキシメチルセルロースのような水酸化セルロースを含んでいる。他の適切な水溶性ポリマは、ポリエチレングリコールを含んでいる。2以上の水溶性ポリマーの併用は、また考えられる。
【0037】
また、pH5.0以上で溶解する多くのポリマがこの分野では知られている。本発明に関してあてはまる腸内ポリマの限定されない例としては、ハイドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP55)、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルセルロースフタレート、および他のあらゆるセルロースフタレート誘導体、シェラック( shellac)、オイドラギッドL100−55、および、ゼインを含む。
【0038】
好ましい腸溶性ポリマは、オイドラギットL100−55である。
【0039】
用語「水不溶性ポリマ」は、メディウムpHにかかわりなく乾燥重量で10%以上が溶解により水溶液中に失われないすべてのポリマを意味し、水不溶性の限定されない例としては、以下を含む;すなわち、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルローストリプロピオネート等の混合エステルを含むジ−、または、トリ−アシレートのようなセルロースエテル;エチルセルロースのようなセルロースエステル;ナイロン;ポリカーボネート;ポリ(ジアルキルシロキサン);ポリ(メタアクリル酸)エステル;ポリ(アクリル酸)エステル;ポリ(フェニレンオキシド);ポリ(ビニルアルコール);芳香性窒素含有ポリマ;重合性エポキシド;再生セルロース;逆浸透または透析への使用に適した膜−形成物質;酢酸アガ−;アミローストリアセテート;β−グルカンアセテート;アセトアルデヒドジメチルアセテート;セルロースアセテートメチルカルバメイト;セルロースアセテートサクシネート;セルロースアセテートジメチルアミノアセテート;セルロースアセテートエチルカルボメイト;セルロースアセテートクロロアセテート;セルロースアセテートエチルオキザレート;セルロースアセテートプロピオネート;ポリ(ビニルメチルエーテル)コポリマ;セルロースアセテートブチルスルフォネート;セルロースアセテートオクテート;セルロースアセテートラウレート;セルロースアセテートp−トルエンスルフォネート;ローカストビーンゴムのトリアセテート;水酸化エチレン−ビニルアセテート;セルロースアセテートブチレート;ワックスまたはワックス様物質;脂肪アルコール;水素添加した植物油;ポリ乳酸、PLAGAおよびそれらの等価物のようなポリエステル、ホモ、コポリマ、およびそれらの組み合わせ、である。
【0040】
本発明の水に不溶性ポリマは、オイドラギッド(Eudragit)RSまたはRLまたはそれらと同じもの組み合わせである。
【0041】
ナノカプセルが2つのポリマを含む場合は、最初のポリマは、水に不溶性であり、第二のポリマは、pH約5.0以上で水溶性である。
【0042】
好ましい態様では、最初のポリマ、すなわち、水に不溶性のポリマまたはポリマ群と第二のポリマ、すなわち、pH約5.0以上で水溶性のポリマまたはポリマ群の(重量/重量)比は、5:95乃至50:50の範囲である。
【0043】
理論にこだわることなく、水に不溶性ポリマとpH5.0以上で水溶性ポリマ(「非不溶性」ポリマ)の比率は、ナノカプセルからの活性薬剤の調節放出にとって臨界的であると考えられている。水に不溶性の第一のポリマと水溶性またはpH約5.0以上の水系のメディウムに可溶であることは、それに続きナノカプセルが水またはpH約5.0以上の水系メディウムに接すると、該ポリマのゆるやかな溶解をもたらす、一方、不溶性ポリマの通常の調製では、基本的には、通常どおりの配置が維持されている。言い換えれば、「非不溶性ポリマ」のゆるやかな溶解は、水に不溶性ポリマから形成されたポリマ骨格におけるチャンネル様経路の形成をもたらす、その経路を通して、活性薬剤がナノカプセルからもれ出すことができる。ナノカプセルからの活性薬剤の放出抑制(調節)を促進するために、第一のポリマである水不溶性ポリマと、いわゆる、「非不溶性」ポリマの適した比は、pH5.0以上で可溶性ポリマに適した比である(例えば、水不溶性ポリマに適した適した、75:25という重量:重量比である)。
【0044】
1つの態様によれば、ポリマの組み合わせは、オイドラギット(Eudragit)RL、オイドラギット(Eudragit)RS、または、それらの組み合わせ、から選択される第一のポリマまたはポリマ群(不溶性ポリマ)、および、オイドラギット (Eudragit)L100−55、または、ハイドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMPC)、または、それらの組み合わせから選択される第二のポリマまたはポリマ群との混合物である。
【0045】
複数のナノカプセルは、ゲル形成ポリマ内で収容されている。
【0046】
本明細書で用いる用語「ゲル形成ポリマ」は、湿潤したときに、膨潤するポリマネットワーク、または、ゲルを形成する親水性ポリマのあらゆるものを意味する。ゲル形成ポリマは、ときには、ハイドロゲル形成ポリマとも呼ぶことがある。ゲル形成ポリマは、天然蛋白質または合成ポリマであり得る。1つの好ましい態様によれば、ゲル形成ポリマは、湿ったときは、「粘着性」になる、つまり、その中に含まれる湿潤したマイクロスフェアやナノカプセルを腸管上皮への粘着を増強することができる。
【0047】
本明細書で用いる用語「収容された」は、封入、被覆、包埋、包囲、閉じ込め、取り込み、または、その他、二段階目の保護伴う活性薬剤を含む複数のナノカプセルの詰め込み配置を提供できるような、ゲル形成ポリマによるナノカプセルの取り込み、その他のあらゆる手段を意味する。
【0048】
天然のゲル形成ポリマの例は、これらに限定されないが、ゼラチン、コラーゲンのようなタンパク質、寒天、カラゲーナン、グルコマンナン、シゾフィラン、ジュランガム、アルギン酸、カードラン、ペクチン、ヒアルロン酸、またはグアーガムのような多糖をあげることができる。
【0049】
合成ゲル形成ポリマの例は、これらに限定されないが、ポリアクリル酸、変性セルロース、メチルセルロース、メチルプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化されたセルロース、ハイドロキシプロピルメチルセルロース、ハイドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、2−メチル−5−ビニルピリジン、カルボマおよびその同等物をあげることができる。
【0050】
本発明の1つの観点は、消化管をとおした、すなわち、経口投与のための、活性薬剤のデリバリーシステムとして、マイクロスフェアの使用に関するものである。
【0051】
別の方法では、そのマイクロスフェアは、注射による投与のためにデザインされることができる。
【0052】
用語「P-糖蛋白流出ポンプの基質」は、本明細書では、用語「P−gp基質」とも交互に用いられ、能動輸送、つまり、P-糖蛋白質膜結合トランスポータを介した細胞外への「流出」に支配されている活性物質(治療、化粧、または、診断目的のため)のあらゆるものを意味する。P-gpは、腸管の全長に沿って発現しており、また、肝臓、腎臓、脳血液関門および胎盤にも発現している。これとの関係で、本発明は、上皮細胞の頂端膜上に位置する腸管内P−gpによる能動輸送に従っている医学上の物質に関する。ATPの加水分解により生じるエネルギーを利用して、P−gpは、濃度勾配に逆らって、種々の物質の流失を推進させ、これにより、細胞内濃度を減少させ、そして活性物質の場合には、経口のバイオアベイラビリティを減少させる。
【0053】
このように、本発明の1つの好ましい態様では、活性物質は、医薬、化粧品、診断薬の、あらゆる物質であるが、経口投与に続く、血中のバイオアベイラビリティは、P−gpによる流失機構の結果として、減少するか、または、阻害される。P−gp基質は、それらの溶解性と代謝レベルにより分類され得る。この分類によるP−gp基質のリストは、限定されるものではないが、以下を含む:
【0054】
高い溶解性と広範囲の代謝:アミトリプチリン、コチシン、デキサメサゾン、ジルチアゼム、エチニルエストラジオール;
【0055】
低溶解性と広範囲の代謝: アトロバスタチン、アジスロマイシン、カルバマゼピン、サイクロスポリン、グリブライド、ハロペリドール、イトラコナゾール、タクロリムス、シロリムス、リトナビール、サンキナビール、ロバスタチン。
【0056】
高溶解性と少ない代謝: アミロイド、アモキシリン、クロロキン、シプロフロキサシン、ジクロキサシリン、エリスロマイシン、フェキソフェナジン、レボドーパ、ミダゾラム、モルヒネ、ニフェジピン、プリマキン、プロマジン、プロメタジン、キニジン、キニン;および、
【0057】
低溶解性と少ない代謝: シプロフロキサシンおよびタリノロール。
【0058】
本発明に関連して、非親水性活性薬剤は、脂溶性または、両親媒性の化合物または錯体またはこのような化合物を含む混合物である。非親水性活性薬剤は、修飾された親水性化合物を含み、例えば、薬剤の親油性を増大させるために親油性部分を付加である。このような修飾された化合物は、本明細書では、用語「プロドラッグ」と時々、呼ぶことがある。
【0059】
活性化薬剤は、遊離酸、遊離塩基、塩の形であることができ、そして活性剤の混合物が用いられることができる。
【0060】
ある態様によれば、活性薬剤は、脂溶性薬剤である。用語「脂溶性薬剤」は、本明細書では、logP値(オクタノール/水)が、2.0〜3.0より大であり、トリグリセライド(TG)の溶解度が、測定によれば、例えば、大豆油またはそれと同等物での溶解度が、10mg/ml以上である。この定義は、中程度の脂溶性薬物を含んでいる、つまり、3.0〜6の間のlogP値をもつ薬剤、および、6以上のlogP値をもつ高い脂溶性薬剤も同様に含んでいる。
【0061】
本発明のナノカプセルへの取り込みに適した中程度の脂溶性をもつ、治療に役立つ活性薬剤の例としては、以下のものをあげることができる:
【0062】
鎮痛薬及び抗炎症剤: アロキシプリン、アウラノフィン、アザプロパゾン、ベノリレート、ジフルニザール、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメサシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロセン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダック。
【0063】
駆虫剤: アルベンダゾール、ベフェニウム、ハイドロキシナフトエート、カンベンダゾール、ジクロロフェン、イバルメクチン、メベンダゾール、オキサムニキン、オキシフェンダゾール、オキサンテルエムボネート、プラジカンテル、ピランテルエムボネート、チアベンダゾール。
【0064】
不整脈治療剤: アミオダロン、ジソピラミド、酢酸フレカイニド、硫酸キニジン。
【0065】
抗菌剤: ベネタミンペニシリン、シノキサシン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クロファジミン、クロキサシリン、デメクロキサシリン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、エチオナミド、イミペナム、ナリジキシン酸、ニトロフラントイン、リファンピシン、スピラマイシン、スルファベンズアミド、スルファドキシン、スルファメラジン、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファフラゾール、スルファメトキサゾ−ル、スルファピリジン、テトラサイクリン、トリメトプリム。
【0066】
抗凝固剤: ジクマロール、ジピリダモール、ニクマロン、フェニンジオン。
【0067】
抗鬱剤: アモキサピン、マプロチリン、ミアンセリン、ノルトリプチリン、トラゾドン、マレイン酸トリミプラミン。
【0068】
抗糖尿病剤: アセトヘキサミド、クロルプロパミド、グリベンクライド(glibenclaraide)、グリクラジド、グリピジド、トラザミド、トルブタミド。
【0069】
抗てんかん剤: ベクラミド、カルバマゼピン、クロナゼパム、エトトイン、メトイン、メスクシミド、メチルフェノバルビトン、オクスカルバゼピン、パラメタジオン、フェナセミド、sファノバルビトン、フェニロイン、フェンスクシミド、プリミドン、スルチア
ム、バルプロ酸。
【0070】
抗黴剤: アンホテリシン、硝酸ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾー、硝酸塩、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナタマイシン、ナイスタチン、硝酸スルコナゾール、テルビナフィン、テルコナゾール、チオコナゾール、ウンデセン酸。
【0071】
抗痛風剤: アロプリノール、プロベネシド、スルフィンピラゾン。
【0072】
抗高血圧剤: アムロジピン、ベニジピン、ダロジピン、ジルチアゼム、ジアゾキシド、フェロジピン、グアナベンズアセタート、イスラジピン、ミノキシジル、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、フェノキシベンザミン、プラゾシン、レセルピン、テラゾシン。
【0073】
抗マラリア剤: アモジアキン、クロロキン、クロルプログアニル、ハロファントリン、メフロキン、プログアニル、ピリメタミン、硫酸キニーネ。
【0074】
抗片頭痛剤: ジヒドロエルゴタミンメシラート、酒石酸エルゴタミン、メチセルギドマレイン酸塩、マレイン酸ピゾチフェン、コハク酸スマトリプタン。
【0075】
抗ムスカリン剤: アトロピン、ベンズヘキソール、酒石酸エルゴタミン、メチセルギドマレイン酸、マレイン酸ピゾチフェン、コハク酸スマトリプタン。
【0076】
抗腫瘍剤および免疫抑制剤: アミノグルテチミド、アムサクリン、アザチオプリン、ブスルファン、クロラムブシル、シクロスポリン、ダカルバジン、エストラムスチン、
エトポシド、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキセート、マイトマイシン、ミトタン、塩酸ミトキサントロン、プロカルバジン、クエン酸タモキシフェン、テストラクトン。
【0077】
タクロリムス、シロリムス:
【0078】
抗原虫剤: ベンズニダゾール、クリキノール、デコキナート、ジヨードハイドロキシキノリン、ジロキサニドフロアート、ジニトルミド、フラゾリドン、メトロニタゾール、ニモラゾール、ニトロフラン、オルニタゾール、チニタゾール。
【0079】
抗甲状腺剤:カルビマゾール、プロピルチオウラシル。
【0080】
抗不安剤、鎮静剤、睡眠剤および神経遮断剤: アルプラゾラム、アミルバルビトン、バルビトン、ベンタゼパム、ブロマゼパム、ブロンペリドール、ブロチゾラム、ブトバルビトン、カルブロマール、クロルジアゼポキシド、クロルメチアゾール、クロルプロマジン、クロバザム、クロチアゼパム、クロザピン、ジアゼパム、ドロペリドール、エチナメート、フルナニゾン(flunanisone)、フルニトラゼパム、フルオプロマジン、フルペンチキソールデカノアート、フルフェナジンデカノアート、フルラゼパム、ハロペリドール、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メダゼパム、メプロバメート、メタクアロン、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、ペントバルビトン、ペルフェナジン ピモジド、プロクロルペラジン、スルピリド、テマゼパム、チオリダジン、トリアゾラム、ゾピクロン。
【0081】
β−ブロッカー: アセブトロール、アルプレノロール、アテノロール、ラベタロール、メトプロロール、ナドロール、オクスプレノロール、ピンドロール、プロプラノロール。
【0082】
強心剤: アムリノン、ジギトキシン、ジゴキシン、エノキシモン、ラナトシドC、メジゴキシン。
【0083】
コルチコステロイド剤: ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、酢酸コルチゾン、デスオキシメタソン、デキサメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルコルトロン、プロピオン酸フルチカゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン。
【0084】
利尿剤: アセタゾラミド、アミロリド、ベンドロフルアジド、ブメタニド、クロロチアジド、クロルタリドン、エタクリン酸、フルセミド、メトラゾン、スピロノラクトン、トリアムテレン。
【0085】
抗パーキンソン病剤: ブロモクリプチンメシラート、マレイン酸リスリド。
【0086】
胃腸薬: ビサコジル、シメチジン、シサプリド、ジフェノキシラート、ドンペリドン、ファモチジン、ロペラミド、メサラジン、ニザチジン、オメプラゾール、オンダンセトロン、ラニチジン、スルファサラジンン。
【0087】
ヒスタミンH受容体拮抗剤: アクリバスチン、アステミゾール、シンナリジン、シクリジン、シプロヘプタジン、ジメンヒドリナート、フルナリジン、ロラタジン、メクロジン、オキサトミド、テルフェナジン。
【0088】
脂質調節剤: ベザフィブラート、クロフィブラート、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、プロブコール。
【0089】
硝酸塩および他の狭心症剤: 硝酸アミル、ニトログリセリン、イソソルビドジニトラート、イソソルビドモノニトラート、四硝酸ペンタエリトリトール。
【0090】
栄養剤: β−カロテン、ビタミンA、ビタミンB(vitamin B.sub.2)、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK。
【0091】
HIVプロテアーゼ阻害剤: ネルフィナビル。
【0092】
オピオイド鎮痛薬: コデイン、デキストロプロポキシフェン、ジアモルフィン、ジヒドロコデイン、メプタジノール、メタドン、モルフィン、ナルブフィン、ペンタゾシン。
【0093】
性ホルモン: クエン酸クロミフェン、ダナゾール、エチニルエストラジオール、酢酸メドロキシプロゲステロン、メストラノール、メチルテストステロン、ノルエチステロン、ノルゲストレル、エストラジオール、抱合卵胞ホルモン(conjugated oestrogens)、プロゲステロン、スタノゾロール、スチルベストロール(stibestrol)、テストステロン、チボロン。
【0094】
覚醒剤: アンフェタミン、デキサンフェタミン、デクスフェンフルラミン、フェンフルラミン、マジンドール。
【0095】
そこに限定されなることなく、本発明において好ましい薬剤は、タクロリムス、シロリムス、ハロファントリン、リトナビール、ロプリナビール、アンプレナビール、サキナビール、カルシトロール、ドロナビノール、イソトレチノイン、トレチノイン、リスペリドン塩基、バルプロ酸が含まれるが、一方、好ましいプロドラッグには、デキサメサゾンパルミチン酸塩、パクリタキセルパルミチン酸塩、ドセタキセルパルミチン酸塩が含まれる。
【0096】
本発明のデリバリーシステムおよびその医薬への応用において取り込むことができる脂溶性薬剤のいくつかの例は、限定されるものではないが、ロバ−ト G.ストリッキ[Strickley R.G.Pharmaceutical Research,21(2):201−230;2004]により、および、Kopparam Manjunath等、[Manjunath K.等、Journal of Controlled Release 107:215−228;2005]により記載されている。
【0097】
別の態様においては、活性薬剤は、両親媒性である。用語「両親媒性薬剤」は、本明細書では、logPが1.5と2.5の間であるあらゆる化合物を意味し、測定したトグリセライド(TG)の溶解度は、例えば、大豆油またはそれと同様なものにより測定されたように、10mg/mlを超過するものである。
【0098】
本発明のシステムにより分配される両親媒性活性薬剤の例としては、これに限定されるものではないが、フィゾスチグミン、サリチレート、クロルプロマジン、フルフェナジン、トリフルペラジン、および、リドカイン、ブピバカイン、アンホテリシンB、エトポシド、テニポシド、および、抗黴剤エチノカンジンス、および、クロトリマゾール、およびイタコナゾール等のアゾール類を挙げることができる。
【0099】
本発明のナノカプセルに取り込みに適した治療上有効な非親水性活性剤は、これに限定されるものではないが、クロザピンを含む。クロザピンは、シゾフレニア耐性に適用される代表的ではない有効な抗精神薬である。クロザピンは、27%のバイオアベイラビリティをもち急速に経口吸収される。クロザピンは、肝臓のミクロソーム酵素(CYP1A2およびCYP3A4)により広範囲に代謝され、N−デメチルおよびN−オキサイド代謝物をつくる。したがって、クロザピンは、本発明のシステムによりデリバリされる好適な候補である。
【0100】
本発明はまた、本発明の複数のナノカプセルを収容しているマイクロスフェアの調製方法を提供するが、その方法は次を含む:
(a)オイル、水混和性有機溶媒、その溶媒に溶解した非親水性薬剤、およびオイルコア(油芯)被覆用のポリマまたはポリマの組み合わせ、を含む有機相を提供し;
(b)前記有機相に水をゆっくりと添加して、油中水乳剤を得て;
(c)油中水(W/O)乳剤中に水を連続的に添加し、好ましくは滴下して、乳剤の位相転移を起こして、油中乳剤(O/W)を得て;
(d)前記O/W乳剤をゲル形成ポリマまたはゲル形成ポリマの組み合わせと混合し;
(e)有機溶媒と水を除去し、複数のナノカプセルを収容しているマイクロスフェアを得る。
【0101】
ナノカプセルは、活性薬剤が溶解または分散しているオイルコア(油芯)を含み、そのオイルコア(油芯)は、重合性外殻で封入されていることに、注目することが必要である。オイルコア(油芯)を被覆している複数の外殻は、ゲル形成ポリマ中に収容されており、薬剤とゲル形成ポリマの間では直接の接触はない。
【0102】
本発明の方法で用いた有機溶媒は、水の沸点に近いか、または、それより低い沸点をもつ、水と混和性であるいかなる有機溶媒であってもよい。このような有機溶媒の例は、限定されるものではないが、エタノール、メタノール、アセトン、エチルアセテート、イソプロパノール(bp108℃、それにもかかわらず、本発明との関連では、揮発性とみなしている。)
【0103】
オイルと有機溶媒との組み合わせた使用は、本来、基本的に非親水性である種々の薬剤のナノカプセル内でカプセル化を可能としている。オイルコア(油芯)は、また、1またはそれ以上の非親水性賦形剤(例えば、脂溶性賦形剤)を含むことができる。この目的のために、本発明の方法は、有機溶媒中に1またはそれ以上の賦形剤の添加を含むことができる。賦形剤は、油相中で少なくとも1%の溶解度をもつものであれば、どのような賦形剤でも好ましい。1つの例によれば、賦形剤は、ラブラフィル(labrafil)M1944CS、ポリソルベ−ト80、ポリソルベ−ト20のような脂溶性界面活性剤である。
【0104】
オイルを含む有機相に、水を、ゆっくりと、基本的には滴下によって加える。最初は、水中油乳剤が形成される、すなわち、水滴が有機相に分散される。しかしながら、ゆっくりとした連続的なメディム中への水の添加は、最終的には、逆の現象をもたらす、つまり、連続的なおよび非連続的な添加は、ポリマで被覆された油滴が、水中へ分散するように切り替わる。
【0105】
用語「乳剤」は、少なくとも2つの液相をもつ系を意味し、その1つは、他の中に分散している。分散した相は、また、内相、不連続相、ちぐはぐな相(分散した滴)と呼ばれ、一方、外相は、コヒーレント相(同期相)または連続相と呼ばれる。乳剤は、2層以上を含む。例えば、それらは、3種の液相(例えば、トリプル乳剤)、または、2種の液相と固体相を含むことができる。外相が液状であることが、全ての乳剤に共通している。液相または固体相のような第三の相が存在するとすれば、これは、通常は、外相に分散している分散相中に分散される。乳化剤は、存在することもあり、存在しないこともある。
【0106】
異なるタイプの乳剤は分散相の液体形成のタイプに対する外相を形成する液のタイプを参照して、定義され得る。これとの関係で、油相が水相で分散した場合、乳剤は、用語「水中油(O/W)乳剤」または「正常乳剤」である。しかしながら、「逆の、または、油中水(W/O)乳剤」を形成することも、また、可能である。逆乳剤では、水滴がオイルの連続相中に分散する。
【0107】
ナノカプセルを形成する際に、最初油中水(W/O)乳剤が形成され、そして、この(W/O)乳剤は、(油/有機相)中へ水を添加することにより(O/W)乳剤へ転換する。理論にとらわれることなく、その系の中のポリマは、全ての内部の油滴を取り込んで、かつ、油水界面に堆積し、その結果、連続水相からそれらの単離していると考えられている。その結果得られた乳剤は、被覆ポリマで被覆された油滴を含み、次に、ゲル形成ポリマ溶液に混合される。一度、水中油乳剤が形成され、ゲル形成ポリマが添加され、溶媒(または溶媒の混合物)と水は基本的には分離される。
【0108】
溶媒(または溶媒の組み合わせ)を除去するために、加熱、溶媒の蒸発、揮発性溶媒の蒸発に続く凍結乾燥を含む当該分野で熟知された利用できるいくつかの技術がある。本発明によれば、活性薬剤が、熱に感受性(不安定)でない場合には、溶媒は好ましくは、スプレイ乾燥により除去される。活性薬剤が熱感受性である場合は、乳剤から溶媒を除去するためには、当該分野で熟知され評価されているような、他の方法が用いられる。
【0109】
スプレイ乾燥は、1930年第に開発されたマイクロカプセル化の機械的な方法である。したがって、乳剤は、スプレイ乾燥器の加熱された室の中へ回転するディスクを介して乳剤が滴のスプレイ中に、スラリーをくみ上げることにより、自動化される。そこでは、乳剤中の水分と同様に溶媒は蒸発して、乾燥マイクロスフェアが得られる。
【0110】
得られた乾燥マイクロスフェアは、処望のあらゆる利用に応じて、製剤化され得る。このようなマイクロカプセル化した材料にとって殆ど無限の用途がある。とりわけ、活性薬剤にもよるが、マイクロスフェアは、農業、医薬、食品、化粧品、芳香剤、織物、紙、塗料、被覆、および粘着剤、印刷アプリケーション、および多くの他の産業に応用することができる。
【0111】
好ましい態様によれば、前記マイクロスフェアは、医薬、化粧品または診断薬に使用される。
【0112】
より好ましくは、乾燥マイクロスフェアは、薬学的組成物として、好ましくは経口投与として製剤化される。この目的のために、乾燥マイクロスフェアは、腸内用カプセルのような、腸内用ビークルの中に含まれる。腸内用カプセルの例としては、限定されないが、技術分野で公知のように柔または剛の腸内用被覆カプセルを含んでいる。
【0113】
乾燥マイクロスフェアがこのような腸内用ビークルの使用により、胃液から保護される場合には、(ナノカプセル中の)油滴は、pH5.0以上で溶解するポリマで被覆されている必要はない。言い換えれば、水可溶性ポリマと水不溶性ポリマの組合わせが、利用できる。
【0114】
他方、pH5.0以上でのみ溶解するポリマを含むポリマのブレンドを用いることにより、小袋を形成するような、マイクロスフェアの他のデリバリの形態が可能である。
【0115】
製剤の特殊なタイプのものに応じて、薬剤師または他の調剤をするいかなる者が、本発明において使用されるポリマの組み合わせを決めることができる。
【0116】
経口デリバリー用の錠剤、丸剤、粉剤、薬用キャンデ、エリキシル剤、懸濁剤、エアロゾール(個体または液体メディウム中)および滅菌包装粉末が、他のデリバリー形式と同様に、用いることができる。
【0117】
本発明のマイクロスフェアは、市販製品または乳剤製剤(得られた区分では表示したオイル)に比較して、活性薬剤の血中レベルの上昇をもたらすことを示した。
【0118】
1つの態様では、本発明のマイクロカプセルは、活性薬剤の調節放出を提供する。本明細書で用いる「調節放出」は、即時放出ではないあらゆるタイプの放出を意味する。例えば、調節放出は、修飾、拡張、維持、遅延、延長、または一定(すなわち、ゼロ次)放出としてデザインされ得る。理論上は、最も有用な放出プロフィールの1つは、所与の期間にわたる一定の放出である。薬剤の放出は、液滴に適用された被覆をしたことにより得られる、しかも、活性薬剤の放出プロフィールは、外殻を形成するポリマの組成の変動に影響されることが考えられる。速度調節されているポリマの被覆は、公知の技術でコア(芯)となる液滴上にポリマ混合物で複数の被覆を適用することにより、組立てることができる。
【0119】
本発明の方法により、マイクロスフェアは、活性薬剤とゲル形成ポリマの間で直接接触のないように構築される(ゲル形成ポリマの混合物とすることができる)。さらに、本発明の方法は、ゲル形成ポリマとブレンドする外殻形成ポリマの過剰量を許容することに注目される、すなわち、ナノカプセルの上のマイクロスフェア被覆を形成した部分である。
このように、最終産物の水系の環境への接触に対して、ゲル形成ポリマは、ゼリー状になり膨潤する、一方、ゲル形成ポリマと混合される水可溶性ポリマまたはpH5.0以上での可溶性ポリマは溶解する。理論にしばられることなく、マイクロスフェア構造中で、ゲル形成ポリマと過剰量の他のポリマ(ナノカプセルの壁の形成に用いられる)との組み合わせにより、活性薬剤を含む完全なナノカプセルがマイクロスフェア(たぶん、可溶性ポリマの溶解の結果としてマイクロスフェア中に形成されたギャップを通してであろう。)から放出されると考えられ、遊離体の薬剤が放出されるのではないと考えられる。再度、理論にしばられることなく、ゲルからのナノカプセルの放出は、遊離体での薬剤ではなく、P−gp流失からの薬剤の回避と、そこでのリンパ管によるそれらの取り込みを許容している。
【0120】
本発明は、また、ヒト被験者の生体で活性薬剤のバイオアベイラビリティを増強させる方法を提供し、その方法は、前記被験者に本発明のマイクロスフェアを提供することを含んでいる。ここに提示した結果は、本発明のマイクロスフェアの使用により試験した活性薬剤の血中でのバイオアベイラビリティは、対照薬剤に比較して、少なくとも1.3倍増強し、好ましくは2倍、より好ましくは3倍増強することができる(実施例、図12参照)。
【0121】
本発明は、被験者の血液系内で活性薬剤の有効量で治療を必要とする病的状態の被験者を治療する方法を提供し、その方法は、前記被験者に本発明のマイクロスフェアと提供することを含んでいる。
【0122】
本明細書で用いる用語「病的状態」は、被験者の健康を改善するために、本明細書の上記に挙げたような、薬剤またはプロドラッグ、または、診断薬である活性薬剤のデリバリを必要とするあらゆる状態を意味する。活性化剤が非親水性の実体であるとき、例えば、以下に限定されるものではないが、脂溶性薬剤、両親媒性薬剤、または活性薬剤の脂溶性/両親媒性の誘導体であるときは、本発明の活性薬剤デリバリは、好ましくは、リンパ管輸送を介している。限定されるものではないが、前記病的状態は、とりわけ、炎症と自己免疫疾患、寄生虫感染(例えば、マラリア)、細菌感染、ウイルス感染、かび感染、心臓疾患(例えば、不整脈)、血液凝固障害、鬱病、糖尿病、てんかん、片頭痛、癌、免疫疾患、ホルモン異常、精神医学的症状、消化器系障害、栄養障害、およびその他当該分野で公知の多くの疾患、を含んでいる。
【0123】
薬学的組成物中の活性薬剤の有効量および単位あたりのその用量は、特定の適用、様式または導入、特定の活性薬剤の力価、ナノカプセルへの薬剤の荷重、および所望の濃度に応じて、広く変動し、または、調整され得る。有効量は、典型的には、適切に計画された臨床試験(投与用量の研究)で決定され、そして、この分野で熟知した者が有効量を決定するためのこのような試験を適切に実施する方法を知っている。通常知られているように、有効量は、活性薬剤の疎水性や、関連する場合は、脂溶性/両親媒性、ナノカプセル(油滴被覆)を形成するポリマの選択、および/または、外皮を形成する外郭用ゲル、ナノカプセルから放出された後の生体内での活性薬剤の分布プロフィール、生体内での半減期のような薬学的な種々のパラメータ、好ましくない副作用、もしあるとすれば、年齢、性別等、を含む種々の要因に依存している、
【0124】
用語「単位用量製剤」は、ヒト被験者および他のほ乳類に対する単位用量として適切な身体的に別々の単位であって、各単位は、薬学的に適切な賦形剤を伴う所望の治療効果をもたらすように計算された活性薬剤の所定量を含んでいる。治療上活性ある薬剤の濃度は変動する。
【0125】
本発明の組成物は、毎日単回投与の長期投与、一日数回投与、および数日に1回投与等により投与することができる。治療期間は、一般的には疾病の経過の長さ、特定のマイクロスフェアの有効性(例えば、リンパ系を解する有効なデリバリや薬剤の有効性)および治療を受ける対象の種に比例するであろう。
【0126】
評価されているように、マイクロスフェア、それらの調製方法に関して以下に詳細に説明されているが、本発明は、それらの含有する薬学的組成物、その同一物を使用した治療方法、およびマイクロスフェアの他のあらゆる使用を包含すると理解されるべきである。
【0127】
本明細書および特許請求の範囲で用いた形式「1つの」、「その」、「前記」は、その文脈が明記しない限り、単数の言及であると同様に複数であることも含んでいる。例えば、用語「ポリマ」は、1またはそれ以上のポリマを含んでおり、用語「オイル」は、1またはそれ以上のオイルを含んでいる。
【0128】
さらに、本明細書で用いられているように、用語「含む」または「具える」は、マイクロスフェアが、列挙した要素を含む、または、具える他、その他を排除しないことを意味する。用語「基本的に、からなる」は、被験者の体内で脂溶性薬剤のバイオアベイラビリティに関する基本的に重要な事項である他の要素を排除することを意味する。例えば、水溶性ポリマ(pH依存性)により被覆された油滴を基本的に含むマイクロスフェアは、何も含まないか、または、腸内用ポリマのような溶解性に関してpH依存性がないポリマの単に有意でない量(マイクロスフェアから非親水性薬剤の放出について有意でない効果をもたらす量)を含む。「からなる」は、他の要素の僅かな要素以上のものを排除することを意味する。これらの変化する用語の各々により定義された態様は、本発明の範囲内である。
【0129】
さらに、全ての数値、例えば、マイクロスフェアを構成する要素の量または範囲を参照する場合、(+)または(−)に最大20%以内で、また、あるときは、表示値から最大10%以内で、変化する概算である。当然のことながら、すべての数字の表示がその前に「約」が付されていることを、必ずしも明白に説明していない場合もある。
【実施例】
【0130】
実施例1:マイクロスフェア収容されたナノカプセル
材料と方法
[材料]
ポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート、トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライド)1:2:0.2(オイドラギット、Eudragit RL)、ポリ(エチル アクリレート、メチルメタクリレート、トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライド)1:2:0.1(オイドラギット、Eudragit RS PO)、およびポリ(メタクリル酸、エチルアクリレート)1:1(オイドラギット、Eudragit L100−55)は、ローム(Rohm)社(Dramstadt、 GmbH,ドイツ)から購入し、ハイドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMPC)は、イーストマン社(Eastman、Rochester、米国)から購入した。ハイドロキシプロピルメチルセルロース(Methocel E4M Prenium)は、ダウケミカル社(Dow Chemical Company、Midland、MI、米国)から得た。メチルセルロース(Metolose 90SH 100,000)は、信越(東京、日本)から得た。アルガンオイルは、アルバン−ミューラ社(Alban−Muller、Vincenny、フランス)カラ購入した。ポリオキシエチル化したオレイングリセライド(Labrafil M 1944CS)は、ガッテフォセ(Gattefosse、St.Priest、フランス)から親切にも寄贈された。デキサメサゾンパルミテート(DXPL)は、2.1に記載したように合成した。タクロリムス(1水和物として)は、コンコード バイオテック社(Concord Biotech Limited、Ahmedabad、インド)から購入し、アンフォテリシンBは、アルファルマ社(Alpharma、LotN:A1960561)から購入した。他の試薬や溶媒は、分析用試薬等級のものであり、この研究とおして再蒸留水を用いた。
【0131】
[方法]
ナノカプセルの調製
種々の予備的な製剤が表1および2に記載のように調製された。
【0132】
本研究におけるナノカプセルの調製には、2つの異なる溶媒添加のアプローチがとられた。第一のアプローチは、フェッシ等によるよく確立されている方法に基づいている(Fessi H.等、Nanocapusule formation by inter−facial polymer deposition following sol−vent displacement.Int.J.Pharm.1989 55:R1−R4、1989)。そのアプローチは、被覆ポリマの界面堆積につづき、オイル/有機相からの水に混和性の半極性共溶媒系(アセトン:エタノール;19:1)への置換を用いている。オイル相、脂溶性界面活性剤、被覆ポリマ(ナノカプセル外郭形成ポリマ)および各々の薬剤を含むアセトン溶液が、最終的に乳化安定剤を含む水溶液中に注がれる。水相は、ナノカプセル形成の結果として、直ちに青みがかったオパール色をもつ乳白色に変わる(表1)。一方、表2に示したナノカプセル形成においては、水相が、ゆっくりと、アセトン:エタノール/有機相に添加され、最初W/O型マイクロエマルジョンの形成に導き、ついで、連続的な水の添加により逆のO/W型エマルジョンを得て、双極性溶媒の置換により、ナノカプセル形成をもたらす。
【0133】
タクロリムスは、大変高価で、しかも注意深く取り扱う必要がある有毒な薬であることを強調しなければならない。それゆえ、インビトロの放出速度試験で特にモデル薬物として役に立った脂溶性薬物、デキサメサゾンパルミテートを用いて予備試験を行うことにした。
【0134】
デキサメサゾンパルミテートの合成
デキサメサゾン(1当量)を新たに乾燥させたピリジン(デキサメサゾン各1グラム当たり、2.5mlのピリジン)中に溶解した。得られた溶液は、1から5にジクロロメタンで希釈し、氷浴で4℃に冷却した(溶液A)。塩化パルミトイル(1.2当量、Aldrich)をジクロロメタン(1グラムの塩化パルミトイルに15mlのジクロロメタン)に溶解し、0℃に冷却した(溶液B)。均圧漏斗に移し、激しく攪拌され冷却した溶液Aに滴下で加えた。添加が終了した後(5グラムのデキサメサゾンについて30分間)、反応混液に窒素を流し、蓋をして、氷冷浴で1晩攪拌しつつ放置した。翌朝、反応進行を評価するためサンプルを取り出し、薄層クロマトグラフィにより、酢酸エチル:ヘキサン(3:1容量)で溶出した。通常、3つの主たるピークが得られた:第一は、デキサメサゾンであり、第2は、塩化パルミトイルであり、第3は、生産物のデキサメサゾンパルミテートを示した。反応が不完全な場合は、反応混液は、追加して12時間攪拌しつつ放置した。この期間の終了のとき、有機溶媒を減圧下で除いた(600C以上に加熱しない。)。残渣に100mlの酢酸エチル:ヘキサン(2:1)混液を加える。得られる懸濁液は激しく攪拌し、ブフナー漏斗で濾過した。半固体は、酢酸エチルで洗浄し、得られたろ液は分離した。有機層は、100mlの5%冷水酸化ナトリウムで2度、水で2度、飽和塩化ナトリウム溶液で1度洗浄した。有機層は、無水硫酸ナトリウムで濾過し、次いで蒸発乾燥させた。残渣は、最小容量のクロロフォルムに溶解し、シリカカラム(40cm長)でフラッシュ・クロマトグラフィーにかけた。カラムは、クロロフォルム:ヘキサン(1:1)混液で溶出し、デキサメサゾンパルミテートを多く含む画分を併せて、蒸発乾燥し、HPLCにより生産物の純度を確認した。収率は、実際のところ60%である。
【0135】
タクロリムス ナノカプセルの調製
オイドラギット(Eudragit)RS、オイドラギット(Eudragit)L100、ラブラフィル1944CS、アルガンオイル(油)、およびタクロリムスが表3に示す濃度で100mlのアセトン:エタノール混液(90:10)(油相)に溶解させた。75mlの水が、油相に(2分以内で)添加されて、分散液を形成させた。その分散液に0.5%のメチルセルロース溶液200mlを、スプレイ乾燥する前に添加した。メチルセルロースと最後の水溶液部分は、ナノカプセル形成させた後に、添加した。断らなければ、メチルセルロースは、メトセル(Methocel)E4Mを意味する。
【0136】
3つの製剤が本明細書で例示されている:その内容が表3および4に記載されている製剤第29、および第30である。これらの製剤は、ポリマの比率により異なっている: すなわち、オイドラギット(Eudragit)RS、オイドラギット(Eudragit)L100−55は、25:75または75:25の各々である。さらなる製剤は、製剤第29と内容物が似ている製剤第32であるが、しかし、オイドラギット(Eudragit)RS、オイドラギット(Eudragit)L100−55を含んでいない。
【0137】
アンホテリシンBナノカプセルノ調製
オイドラギット(Eudragit)RS、オイドラギット(Eudragit)L100−55、ラブラフィル1944CS、アルガンオイル、および、表3に示す濃度で酢酸に溶解したアンホテリシンが、アセトン:エタノール(90:10)溶液100ml(有機層)に溶解した。75mlの水を(2分間以内)で、前記有機層に加えて、分散の形成を得た。この分散液に0.5%のハイドロキシプロピルメチルセルロース溶液200mlを、スプレイ乾燥させる前に添加した。ハイドロキシプロピルメチルセルロースと最後の水溶液部分を添加し、ナノカプセルが形成された後に添加した。ハイドロキシプロピルメチルセルロースは、メトセル(Methocel)E4Mを参照されたい。ナノカプセルの製剤(処方)は、表5に示した。
【0138】
スプレイ乾燥法によるタクロリムスまたはアンホテリシンBナノカプセルのマイクロカプセル化
前記懸濁液は、ブッチミニ スプレイ乾燥器(Buch mini spray− drier B−190)装置(Flawil、スイス国)を用いて、次の条件でスプレイ乾燥した:すなわち、吸気口温度113℃;吸引50%;懸濁液の供給量は2.5ml/分で、粉末はサイクロン集塵器で集め、出口での収率を計算した。
【0139】
タクロリムス ナノカプセルおよびそれに続くマイクロカプセルの物理化学的特徴
薬剤内容物
粉末中のタクロリムスの総量は、5mlPBS中にサンプルを溶解させることにより分析した。ポリマを溶解した後、1mlのアセトニトリル(ACN)を加え、混合物を1時間攪拌した(100rpm)。その後、3mlの酢酸エチルを加え、混合物を激しく攪拌し、4000rpmで5分間遠心した。
【0140】
酢酸エチルによるタクロリムスの抽出は、混合液からの全ての薬剤の分離を確保するため3度繰り返した。異なる酢酸エチルの層(上層)を新しいチューブに移した、そして空気存在下で蒸発乾固させた。併せた残渣を1mlのACNに溶解し、その50μlを次の条件でHPLCに注入した:すなわち、移動層−アセトニトリル100%、流速−0.5ml/分、波長−213nm、カラム−LiChrosher(商標)100RP−18(5μm)、4/120mm、である。検量線は、5〜250μg/mlのタクロリムス濃度の間で直線関係が得られた。タクロリムスの検出限界は、3.9μg/mlであった。
【0141】
タクロリムスの取り込み率は、次式より計算した:
【0142】
粉末中のアンホテリシンBの総量は、5mlのジメチルスルフォキシド(DMSO)中にサンプルを溶解することにより分析した。ポリマを溶解した後、1時間攪拌した(100rpm)。その後、アンホテリシンBの濃度は、波長407nmで分光光度計により測定した。検量線は、アンホテリシンBの0.781〜100μg/mlの濃度範囲で直線関係が得られた(R2=0.999)。アンホテリシンBのスプレイ乾燥した粉末は、0.85%(w/w)であることがわかった。
【0143】
DXPL内容物
粉末中の薬剤の総量を5mlのPBSにサンプルを溶かして分析した。ポリマを溶解した後、5mlのメタノールを添加し、混合液は1時間攪拌した(100rpm)。ジクロロメタン3mlを添加し、その混合液を激しく攪拌した後、4000rpmで5分間遠心した。ジクロロメタンによるDXPLの抽出は、混合液からの薬剤の総量の分離を確保するため3度繰り替えした。異なるジクロロメタン層(低濃度層)は、新しいチューブに移し、空気存在下で蒸発乾固した。併せた残渣は、200μlのメタノールに溶かし、50μlを次の条件のHPLCに注入した:すなわち、移動層−メタノール100%、流速−0.7ml/分、波長−242nm、カラム−LiChrosher(商標)100RP−18(5μm)、4/120mm、である。検量線は、0.01〜5μg/mlのDXPL濃度の間で直線関係が得られた。タクロリムスの検出限界は、9.8ng/mlであった。
DXPLの取り込み率は、次の式から計算した:
【0144】
マイクロパーティクルからのDXPLのインビトロ放出速度の測定
吸引の状態が行き渡ったら、インビトロ速度試験を何らの加圧をすることなく、限外濾過法によりDXPLについて行った[マーゲンヒイエム(Magenhiem)B.等 「A new in vitro technique for the evaluation of drug release profile from colloidal carriers- ultrafiltration technique at low pressure.」 Int J Pharm 94:115-123、1993]。
【0145】
限外濾過セル装置アミコン(Amicon Corp.、Danver、Mass、米国)を用いた。フィルターは、ISOPORETM8.0μmTEPT(ミリポア、Bed− ford、MA.米国)を用いた。この研究では、吸引状態、放出は、一致した。マイクロパーティクルサンプル(5mg)が、100mlの放出メディウム(ナノカプセルの物理的安定性が変化しない、リン酸緩衝液pH7.4中10%アセトニトリル)中に入れた。所与の間隔で放出メディウムの0.5mlサンプルを、ナノカプセルがこのようなフィルタを介して拡散し得るような8.0μmフィルタを通して採取した。次に、0.5mlメタノールを加え、ナノカプセルを溶かすためにボルテックス(渦巻き)した。その後3mlのジクロロメタンを加え、混液を激しくボルテックスし、続いて4000rpmで5分間遠心した、遠心後、ジクロロメタン層(低層)は新しいチューブに移し、空気存在下で蒸発乾固した。残渣は200mlのメタノールに溶解し、その50μlを前述の条件でHPLCに注入した。
【0146】
第一のナノカプセルと第2のマイクロスフェアの粒子サイズの決定
ナノカプセルのサイズ測定は、粒子測定機(ALV Non−Invasive Back Scattering High Performance Parti−cle Sizer、ALV−NIBSHPPS、ドイツ)を用いて25℃で、溶媒として水を用いて行った。632nm波長のレーザビームを用いた。感度領域は、0.5nm〜5μmであった。スプレイ乾燥したマイクロパーティクルは、走査型電子顕微鏡で定性的に評価した。
【0147】
ナノカプセルとマイクロスフェアの形態学的評価
ナノカプセルとスプレイ乾燥したマイクロスフェアの形態学的評価は、走査型電子顕微鏡(モデル:Quanta200、FEL、ドイツ)を用いて行った。サンプルは、両面性の粘着テープを用いて試料固定台(SEM−stub)上に固定し、金を散りばめるスパッタ法(pilaron E5100)で被覆する標準的な被覆に従い、真空下で伝導性を付与した。
【0148】
透過型電子顕微鏡(TEM)
ナノカプセルの形態学的評価をTEM(透過型電子顕微鏡)分析を用いて行った。サンプルは、コロジオン被覆し、カーボン−安定化させた銅性のグリッド上に置き、1%リンタングステン酸(PTA)で1分間染色した。そのサンプルを乾燥させた後、TEM(フィリップス、CM―12;フィリップス、Eindhoven,オランダ)。
【0149】
ラットでの吸収試験
研究は、実験動物の世話と使用に関する規則とガイドラインMD104.01−3に従い、実験動物の世話飼育の地域倫理委員会により承認を受けた。SDラット(Sprague−Dawley)の体重300〜325gをこの研究に用いた。動物は、SPF状態で飼育し、実験24時間前から絶食させた。つぎの朝、動物は絶食時で、経口強制投与で0.2mgのタクロリムスを、プログラフ(商標)カプセル内容物(lot−5C5129B exp.−06/2007,Fujisawa Ltd.UK)(CAPS)、水中油剤(OIL)、または新規なDDS(製剤第29および第30)または製剤第32の中のいずれかにより投与した。
【0150】
血液サンプルは、ラットの尾から、薬剤投与した、直後(0分)、30分、1、2、3、4、6および24時間後に採取した。血液サンプルは、ヘパリン入りチューブに採取した。サンプルは、−20℃で、直後に凍結させ、タクロリムス濃度の測定を、PRO−TracTM II エライザキット(DiaSorin、米国)を用い、続いて同社のプロトコルに従って行った。このエライザ法は、臨床上のプラクティスでよく受け入れられており、タクロリムスの血中濃度を0.3〜30ng/mlまでは正確に検出することができる。
【0151】
各ラットは、当初のプログラフ(登録商標)の静脈内投与用アンプル5mg/ml濃度を用いて静脈内投与ボラス(大量1回)により、160μg/kgで投与した(lot:5A3098H exp:11/06,Fujisawa Ltd.UK)。血液サンプル(100〜150μl)は、動物の尾から5、30分、1、2、3、4、6および24時間後に採取した。サンプルは、前記のように処理し分析した。異なる製剤の薬動力学的パラメータは、WinNonlinソフトウエア(4.0.1バージョン)を用いて、AUCの計算には台形公式を用いて、計算した。
【0152】
経口的の異なる製剤の絶対的なバイオアベイラビリティが標準的な市販製剤に比較して下記の式から計算された:
【0153】
標準市販製剤(CAP)に比較したあらゆる経口製剤の相対的なバイオアベイラビリティは、次式を用いて計算した:
【0154】
異なる試験条件でのオイルコア(油芯)の安定性試験
異なる試験条件でのタクロリムスのアルガン油/ラブラフィル中での37℃で長期間の化学安定性が、5mgタクロリムスを300μlのアルガン油/ラブラフィル5:1溶液(ALSOL.)中に溶解して試験をした。種々の抗酸化賦形剤をまた、表6に示すように、オイル製剤中に溶解した。よく密封されたガラスバイアル中で保存された製剤のあるものは、不活性な大気条件を確保するために窒素を流した。
【0155】
ミニブタによる吸収試験
18〜21kgのミニブタをこの試験に用いた。吸収試験は、各動物には、市販製品であるPrograf(商標)ゼラチンカプセル(市販)および、異なるオイドラギット混合物(Nov.DDS=製剤第29)を用いた新規なDDSゼラチンカプセル、のいずれかを1mgのタクロリムスの経口投与することにより行った。
【0156】
外科的方法: 全ての外科的および実験的手法は、Hebew大学(MD117.04―3)の動物の取扱いおよび使用に関する委員会により、再検討され、承認された。体重18〜21gの小さいブタを全ての試験に用いた。動物は、一晩絶食させた;試験中を通じて飲料水は自由に飲める状態にした。翌朝、動物はイソフルラン(マスク)による短期間(10分間)麻酔をかけた。この期間動物は:
(1) プログラフ(商標)市販品カプセル、およびNov.DDSとして製剤されたタクロリムスを動物あたり1mg、絶食状態で経口により投与;
(2) 採血のために、カテーテルを頸部静脈へ挿入し、ブタの背部を固定した。血液サンプル(1ml)は、0、15、30分、1、1.5、2、3、4、8、12および24時間時に、ヘパリン入りチューブ(試験中動物には意識があった。)に採取した。
【0157】
サンプルは、直ちに、−20℃で凍結させ、PRO−TracTM IIエライザキット(DiaSorin、米国)を用いてタクロリムス濃度を測定した。
[結果と考察]
【0158】
形態学的な分析
驚くべきことに、水相をゆっくりと有機相に加えるとき(表2);第一に、水が油相に分散し、そして、水を添加した後、容積は、アセトン溶液100ml中に15mlの水と推定される。
分散したメディウムは、オパール色の急速な形成により証明されるように、O/W型乳剤が形成された。この段階で、内側のアセトン/エタノール相が外側の水相へと急速に拡散し、その結果、O/W界面で疎水性ポリマの堆積をもたらし、図1で示したように、オイドラギットポリマ混合物により被覆されたオイルコア(油芯)からなるナノカプセルの形成をもたらす;ここで、水に対するアセトン溶液の最終比は、100:75である(v/v)。強調すべきことは、オイドラギット混合物の同一濃度で、オイルを欠く条件では、オイドラギット相分離現象と、アセトン溶液からポリマの分離を反映するオパール色は、45mlおよび35mlの水を製剤第29および第30に添加後に、各々生じることである。この違いは、製剤第29と第30間のオイドラギットRSとオイドラギットL100−55の比率の違いによるものである。明らかに、水が、ゆっくりと、4という低いHLB値をもつラブラフィル界面活性剤を含むアセトン:エタノール/オイル相に加えるときは、透明なW/O型マイクロエマルジョン(微細乳剤)が形成され、相分離は認められない。進行しつつある、継続的な水添加に対して、親水性:脂溶性堆積のある比において、逆のO/W型乳剤が自然に形成され、外側の水相へ向かってアセトン:エタノールの置換(拡散)が直ちに起こり、油滴のO/W型界面で疎水性オイドラギットポリマ混合物の堆積に導き、薬剤と界面活性剤が溶解しているアルガン油を取り囲むようにナノカプセル封入体が形成される。単に75mlの水が加えられたこの段階で、ナノカプセルを取り囲むオイドラギット混合膜は、部分的に依然として水和し、図1Aと1Bから分かるように、薄い。200mlの0.5%メチルセルロース溶液の更なる添加に対して、ナノカプセルからのアセトンとエタノールによる完全な抽出がなされ、図2Aと2Bに提示されたデータから推測されるようにより強固なオイドラギット膜が形成される。大きなナノカプセル凝集体が形成されるのは、メチルセルロースが存在することと、分散液中にナノカプセルが高濃度のためである。
【0159】
このことは、製剤第30がメチルセルロース溶液を含まないで75mlの水で希釈したとき(すなわち、容積比100:75)に、さらに確認された。オイドラギット混合物の界面でのより顕著な堆積が起こり、図3Aと3Bに示すようにその厚さが30nmであると定性的に見積もられる強固なオイドラギット膜が形成される。事実、特定の混合物の溶解度は、製剤第29中のオイドラギット混合物の溶解度より小さく、その特定の混合物は、製剤第30に対する35mlの添加の代わりに、少なくとも45mlの水を添加下後に分離される。表2に記載したように、この手法を用いて油相や油滴は検出されなかった。選択されたナノカプセル分散製剤第29の粒子サイズは、狭い範囲であり、平均径479nmを示した(図4)。
【0160】
SEM分析は、前述のTEMの結果を確認し、そして、製剤第29に水75mlを添加して形成される個々のナノカプセルを示している(図5Aおよび5B)。しかしながら、メチルセルロース溶液の添加とそれに続くスプレイ乾燥を行うと、小さい凝集(10〜30μmのサイズの定性的な範囲)を形成する球形のマイクロスフェア(2〜5μmの定性的な範囲)が検出された(図6Aおよび6B)。さらに、pH7.4の放出用メディウムへスプレイ乾燥した凝集体を3時間浸すことから生じる何らかの規則的な構造上の形態を区別することは不可能であった(図7AおよびB)。事実、製剤第29におけるオイドラギット形成膜混合物は、オイドラギットL100−55:オイドラギットRSを75:25の比率で含んでいた。オイドラギットL100−55は、pH5.5以上で容易に溶解する、一方、オイドラギットRSは、pHにかかわらず不溶性である。このように、第一のメチルセルロース被覆と第二のナノカプセルオイドラギット混合物被覆は、急速に溶解する、このため、一定の構造が確認できなかった。しかしながら、製剤第30は、スプレイ乾燥に続き、凝集体が少なく、真空の結果しぼんだ球形構造の多いことがSEM分析から観察できる(図8A〜8D)。さらに、図9Aおよび9Bにおいて、放出メディウムに3時間以上浸した後、中空のコアのマイクロスフェア中に無数のナノカプセルが検出されており、このことは、オイドラギットRS:オイドラギットL100−55が75:25を含むナノカプセルを被覆しているオイドラギット混合物が、水放出メディウムにより抵抗性があり、長時間にわたりカプセル化した薬剤の放出を調節できることの発見を証明している。
【0161】
インビトロ放出速度試験
マイクロスフェアからの薬剤の放出が、油滴の周りに適用されたポリマ被覆における変動により調節され得ることをインビトロ放出の成績は示唆している。図10からわかるように、DXPLの放出プロフィールは、オイドラギットL:RS(75:25)は、RS:L(75:25)よりも速い、このことは、オイドラギットLは、より速やかな浸透性があり、オイドラギットRSよりも急速な放出を引きだすことを示している。
【0162】
図11は、DXPLの1ミクロン以下のオイドラギットで被覆していない乳剤が製剤第29と同じ条件でスプレイ乾燥された結果を示している。両タイプのマイクロスフェアは、よく似た放出プロフィールを引き出している。溶解したDXPLおよびDXPL充填ナノカプセルを放出する代わりに、DXPLを溶解させて、DXPLを充填した微小油滴を放出して、両試験に対して同じ総放出量を反映させた。このような発見は、放出速度試験では、溶解したDXPLと油滴またはナノカプセルに取り込まれたDXPLを区別できないことを示唆している。
【0163】
異なる試験条件下でナノカプセルのオイルコア(油芯)に溶解したタクロリムスの安定性試験
表7に示したデータからタクロリムスは、オイル製剤中では、窒素雰囲気中であっても、種々の抗酸化剤の存在下であっても、BHT、没食子酸プロピルエステルで製剤化し、窒素雰囲気中を併用した場合を除いて、37℃で1ヶ月保存後は、安定ではない。ことが推測される。
【0164】
マイクロカプセル化したタクロリムスナノカプセルの室温での安定性評価
マイクロカプセル化したタクロリムスのナノカプセルの最終乾燥製剤は、室温でよく密封されたプラスチック容器中に保存された。製剤第29は、3ヶ月および4ヶ月後に測定し、HPLCを用いて測定したタクロリムス含量は、各々当初の99%および95%含量であった。室温で目的生産物の安定性が、連続的な監視下におかれている。最終的に選択された目的製剤は、加速安定性試験にかけられるであろう。
【0165】
ラットでの吸収試験
前述したように、タクロリムスは、経口投与すると、バイオアベイラビリティや薬物動態の変動を伴うものである。タクロリムスの空腸固有の透過性は、きわめて高いことが示唆された。タクロリムスの局所的な依存性が、また試験され、その研究は、タクロリムスの透過性は、回腸および大腸では劇的に空腸に比べて減少した。そのような場合、タクロリムスの変動の多くは、観察された局所依存性に起因し得るとされるP−糖蛋白(P−gp)またはCYP3A代謝効果のような他の要因からの結果であるように思われる(特許文献1)。事実、腸内吸収と経口バイオアベイラビリティに対するCYP3AとP−gpの組み合わせ効果が、タクロリムスの経口薬剤分布への主たる障害であると報告されている[Kagayama等、Oral Absorption of FK506 in rat.Pharm Res.10:1446−50(1993)]。O/W型オレイン酸乳剤の手法により、薬剤のリンパ系への選択的移行によりタクロリムスの吸収を改善する試みがなれてきた(非特許文献12)。本発明者らは、タクロリムス乳剤をラットに2および1mg/kg経口投与し、それを市販製品に比較した。2mg/kgから1mg/kgへ投与量を減少させたことは、血中Cmaxを36.3±18.3から8.5±4.8へ、また、32.1±9.6から6.9±2.2へ、各々、市販製品および乳剤投与剤形では、有意に減少した。同様な結果が、表8に示すように、1、3.2、および10mg/kgの量を(fed)ラットに分散投与剤形でしたタクロリムスの経口投与により、8.8±4.9、11.6±5.3、40.2±19.4mg/kgのCmaxが報告されている。
【0166】
最近の結果は、0.7mg/kgの市販製品(CAPS)の量での経口投与は、Cmax 1.1±0.8mg/kgをもたらした、この値は、報告された値に十分に低いものであり、Cmaxに対して投与した用量の有意な影響を明白に示している。さらに、表8に示したように、前記乳剤はCmax2.2±0.46ng/mlを引き出したが、一方で、製剤第29はCmax11.1±2.7ng/mlを引き出した。
【0167】
付け加えると、製剤第29によりもたらされた吸収プロフィールは、前記乳剤や市販製品により得られたプロフィールよりも有意に優れていた(図12)。しかしながら、製剤第30は、製剤第29に比べて、放出プロフィールの増強は引き出せなかった(図13)。
【0168】
付け加えて、0.7mg/kgのタクロリムスを種々の製剤でラット(平均値±SD、n=3〜6、p>0.005)に経口吸収後の血中レベルを測定した(図14)。ラット吸収試験は、タクロリムスの0.7mg/kg(0.2mg/ラット)を強制経口投与により、プログラフカプセル(商標)市販製品の懸濁液(市販品、Comm.Prod.)、乳剤(乳剤、Emuls.)、オイドラギットを含まず、メチルセルロースを含むマイクロスフェアに包埋された乳剤(乾燥乳剤;Dry Emuls.)、または、メチルセルロース不含、オイドラギット含有ナノカプセルと乳糖を含むスプレイ乾燥剤(メトセル無し)のいずれかの製剤で行った。
【0169】
製剤第30の低い性能を考慮して、製剤29で得られたナノカプセルに詰め込まれマイクロカプセル化されたタクロリムスの生産プロセスの再現性を評価することにした。製剤第29と同一である製剤第31から引き出された吸収プロフィールは、製剤第29でもたらされたプロフィールに近いものであることを図15に示すデータから推測され得る。
【0170】
タクロリムス吸収の高い変動性を考慮すると、このような発見は、プロセスパラメータがよく管理されており、再現性が良いことを示唆している。
【0171】
製剤第29は、タクロリムスの肝臓バイパスに貢献しており、タクロリムスのリンパ吸収を促進し、その結果、市販製品に比べて、バイオアベイラビリティを増強されたことを図16に示すデータから推測することができる。
【0172】
経口製剤の絶対的なバイオアベイラビリティを計算するために、静脈内投与の薬物動態解析を行った、そのデータは図17に示した。経口製剤の絶対的なバイオアベイラビリティは、タクロリムスのバイオアベイラビリティに関して既に報告されているデータを確認すると、12%以下であった(表8)。しかしながら、製剤第29により達成された結果は、表8に示す市販カプセル製剤に比較すると、バイオアベイラビリティが490%に増加し、表8には、全ての製剤でのAUC0〜24と、Cmaxが表されている。乳剤製剤は、市販製品に比較して210%の相対的なバイオアベイラビリティを示したが、しかし、表8に示す各々のAUC0〜24から反映されているように、製剤第29のバイオアベイラビリティに、たった42.8%を引き出したにすぎなかった。実際のマイクロカプセル化したナノカプセル(本発明のマイクロスフェア)によるタクロリムスの改善された経口吸収は、腸管内のリンパ性の取り込みによって仲介され得る。腸管内上皮細胞によるマイクロ−および−ナノカプセルの取り込みは、現在では広く受け入れられている現象であり、マイクロ粒子キャリアを用いた不安定な分子のデリバリ経路に焦点を向けるように研究者を駆り立てている(特許文献4)。
【0173】
表8に表した結果は、ナノカプセルの製剤がデリバリシステムの性能にとって重要であることを示している。単純な乳剤は、オイルコア(油芯)内にタクロリムスを保持できず、その結果、製剤第29と同一内容物であるが、ナノカプセル被覆している壁の形成をするオイドラギット混合物をもたない製剤第32により引き起こされた結果から明らかに反映しているように、タクロリムスの顕著なプレ全身代謝分解をもたらした。
【0174】
付け加えて、病理組織学的標本がラット十二指腸から、製剤第29強制経口投与30分後に取り出された。標本は、蛍光顕微鏡で検査され、ナノカプセルが容易に組織の色々な領域から検出された。これらの発見は、粒子がまた、正常な腸管細胞内へ、飲食細胞運動が行われていることを示唆している。
【0175】
他方、明白なナノ粒子の凝集がパイエル氏板領域でみつかった(図18)。パイエル氏板内の非常に多数のナノカプセルの存在は、P−gp流出を逃れた可能性を示唆し、リンパ管への取り込みは、肝初回通過効果をさけるバイパスをとおって、全身血液循環中でカプセル内容物の放出を許容している。
【0176】
付け加えると、続いて起こる異なる写真が撮られている(図19A〜19D):
【0177】
− ナノカプセル被覆およびメチルセルロースマトリックス被覆により調製した乾燥マイクロカプセル化した空のナノカプセル(図19A);
【0178】
− オイドラギットL:RS(75:25)ナノカプセル被覆およびハイドロキシプロピルメチルセルロースマトリックス被覆により調製し、リン酸緩衝液(pH7.4)でインキュべーション3分後の、含浸し、マイクロカプセル化した空のナノカプセル;
【0179】
− オイドラギットL:RS(75:25)ナノカプセル被覆およびハイドロキシプロピルメチルセルロースマトリックス被覆により調製し、リン酸緩衝液(pH4.8)でインキュべーション5分後の含浸した、マイクロカプセル化した空のナノカプセル(図19Cおよび19D、ZU 19Dは、図19Cの断面の拡大である)。
【0180】
顕微鏡写真像で描かれた結果は、マイクロスフェアマトリックスは、メチルセルロースのみが含まれているのではなく、ナノカプセル被覆に参画していない過剰のオイドラギットRSとLが含まれていることの示唆を導いた。したがって、5より小さいpHでは、急速なゲル化やマトリックスの膨潤は観察されなかった、しかし、pH7.4では、オイドラギットLは、急速に溶解し、急速なゲル化とマトリックスの膨潤とマイクロカプセルからのナノカプセルの放出に寄与した。
【0181】
理論に縛られることなく、マイクロカプセル化したナノカプセルによる活性薬剤の改良された経口吸収は、腸管内リンパ粒子取り込みにより介在されているという仮説を立てた。
【0182】
このことは、製剤第29の内容で、オイドラギットポリマを含まないナノカプセル被覆のときは、図17(乳剤、および、乾燥乳剤)および上記表8に示すように、増強されたバイオアベイラビリティは引き出せなかったという結果から、明らかに分かる。
【0183】
さらに、理論に拘泥されることなく、本発明のデリバリシステムは、リンパ性の取り込みを促進するだけでなく、プレ代謝による分解やP−gp流出を回避することができる。通常の乳剤は、市販製品に比べて、バイオアベイラビリティが改善されているのであるが、製剤第29と同程度ではない、おそらく、腸管細胞への取り込まれる前のGI(胃腸間内)液におけるタクロリムスの分配の結果であろう。
【0184】
したがって、本発明のデリバリ−システムは、薬剤のデリバリが働くか、または、P−gp流出が考えられる種々の活性薬剤のデリバリに好ましくは適用できる。
【0185】
さらに、上記の発見は、乾燥乳剤、製剤第29に似ているが、オイドラギットナノカプセル被覆をもたないものは、GI液中でオイルコア(油芯)中にタクロリムスを保持できず、その結果、市販製品に比べて、貧弱なバイオアベイラビリティをもたらしている。
【0186】
さらに、メトセル(Methocel)を含まないオイドラギットナノカプセルは、実際のナノカプセル被覆が現在の試験条件下でタクロリムスの保持が不可能であるような著しい血中の濃度を引き出さず、タクロリムスの流出を防ぐことに寄与できなかった。
【0187】
このような発見は、4のミニブタクロスオーバ動物実験により確認された。図19および表9に示した結果は、本発明のデリバリシステムが、市販薬剤(プログラフ(商標))に比べて、2.4倍の高い薬剤レベルを引き出した製剤第29が例示したように、タクロリムの肝バイパスに貢献しており、その結果バイオアベイラビリティを増強している。
【0188】
ミニブタでの吸収試験の結果から、本発明のドラックデリバリーシステムによってもたらされた相対的なバイオアベイラビリティは、試験した製剤より2.4倍優れていた。
【0189】
本発明においては、もっともらしい作用機作上の説明が提示された全体的な結果の見地からは、新規な薬剤デリバリシステムが薬剤の経口吸収をいかにして有意に増強したかは、理論に拘泥されることなく、次のことが関与している:
(a)腸管内の腸細胞の飲食作用による吸収により飲食性の粒子の取り込み(粒子サイズ<500nm);
(b)パイエル氏板のM細胞により吸収された粒子のリンパ性の取り込み(粒子サイズ、<5μm);および、
(c)十分な生体接着性をもつハイドロキシプロピルメチルセルロースの被覆により引き起こされた腸管上皮細胞へマイクロスフェアとナノカプセルの増強された接着性、これらは、その結果、多剤耐性薬剤蛋白から回避する能力のために、腸管細胞への全体的には吸収の著しい改善がもたらされた。
【図面の簡単な説明】
【0190】
発明を理解し、実際に発明をどのように実施することができるかを理解するために、好ましい態様を、限定されない実施例において、図面を参照しつつ、以下に記載する。
【0191】
【図1】図1は、ハイドロキシプロピルセルロースを添加前のナノカプセル製剤第29の透過型電子顕微鏡(TEM)写真による画像を示す図である。アセトン溶液の水溶液に対する容積比率は、100:75である。バーは、100nmのサイズを示す。図1Bは、図1Aの拡大である。
【図2】図2Aおよび2Bは、ハイドロキシプロピルメチルセロロースを添加後のナノカプセル製剤第29のTEM写真による画像の図である。水溶液に対するアセトン溶液の容積比は、100:275である。バーは、1000nm(図2Aで)および100nm(図2Bで)を表す。
【図3】図3Aおよび3Bは、ハイドロキシプロピルメチルセルロース溶液を添加しないナノカプセル製剤第30のTEM写真の画像図である。水溶液に対するアセトン溶液の容積比は、100:75である。バーは、1000nmを示し、図3Bは、図3Aの拡大図である。
【図4】図4は、製剤第29のスプレイ乾燥前の粒子分布を示す図である。
【図5】図5A−5B: 図5Aと5Bは、ハイドロキシプロピルメチルセルロース溶液を添加前のナノカプセル製剤第29のSEM写真画像である(バーは、図5Aでは10.μmを、図5Bでは2.0μmを示す。
【図6】図6Aと6Bは、ハイドロキシプロピルメチルセルロース添加したナノカプセル製剤第29をスプレイ乾燥したSEM微細画像である(バーは、図6Aでは20.0μmを、図Bでは10.0μmを表す)。
【図7】図7Aと7Bは、ナノカプセル製剤第29のSEMマイクログラフであって、ハイドロキシプロピルメチルセルロース溶液を添加し、溶解3時間後の画像(バーは、図7Aでは20.0μm、図7Bでは10.0μmである)を示す図である。
【図8】図8A〜8Dは、ナノカプセル製剤第30のSEM画像であって、ハイドロキシプロピルメチルセルロース溶液の添加に続いて、スプレイ乾燥した後(バーは、図8Aは50.0μm、図8Bは20μm、図8Cは10.0μm、図8Dは5.0μm)画像を示す図である。
【図9】図9Aと9Bは、ナノカプセル第30のSEMマイクログラフであって、ハイドロキシプロピルメチルセルロース溶液の添加に続いて、スプレイ乾燥し、溶解して3時間後の画像を表す図である(バーは、図9Aでは10.0μm、図9Bでは5.0μm)。
【図10】図10は、異なるオイドラギット混合物で被覆されたナノカプセルを含むメチルセルロースマイクロスフェアからのDXPLの放出プロフィールを示すグラフである。
【図11】図11は、マイクロカプセル化されオイドラギットがナノカプセルに装着されたナノカプセルにDXPLがマイクロカプセル化されたDXPL、および、マイクロカプセル化された水中油(O/W)型乳剤に装着され、マイクロカプセル化されたDXPLの放出プロフィールを示す図である。
【図12】図12は、異なる製剤のラットへの経口投与後のタクロリムスの全身血中濃度を示すグラフである(平均値±SD、n=6)。
【図13】図13は、異なる製剤のラットへの経口投与後のタクロリムスの全身血中濃度を示す図である(平均値±SD、n=6)。
【図14】図14は、タクロリムスの0.7mg/kg用量の経口吸収を、種々の製剤(プログラフカプセル(商標)市販製品の懸濁液(市販品、Comm.Prod.)、乳剤(Emuls.)、オイドラギットを含まずハイドロキシメチルセルロースを含むマイクロスフェアに包埋された乳剤(乾燥乳剤;Dry Emuls.)、または、ハイドキシメチルセルロースを含まないが、オイドラギットとスプレイ乾燥剤として乳糖を含む(メトセル無し)製剤、のいずれかで行った、タクロリムスの血中レベルを示すグラフである。
【図15】図15は、製剤第29の2つの同一のバッチの経口投与後のタクロリムスの全身血中濃度を示す図であり(平均値±SD、n=6)、バッチ再現性評価を示す図である。
【図16】図16は、市販のプログラフ(商標)をラットに点滴アンプル用の濃度、160μg/kg用量で静脈内投与後の血中タクロリムスレベルを示すグラフである(平均値±SD、n=5)。
【図17】図17は、0.7mg/kgを種々の製剤でのラットにおける経口吸収後の血タクロリムの中レベルを示す図である(平均値±SD、n=3〜6、p>0.05)。
【図18】図18は、製剤第29にマーカとしてクマリン−6を付した強制経口投与30分後のラット十二指腸組織切片蛍光顕微鏡像である。
【図19A】図19Aは、オイドラギットL:RS(75:25)ナノカプセル被覆およびハイドロキシプロピルメチルセルロースマトリックス被覆により調製し、乾燥させた空のナノカプセルの光学顕微鏡写真像の図である。
【図19B】図19Bは、オイドラギットL:RS(75:25)ナノカプセル被覆およびハイドロキシプロピルメチルセルロースマトリックス被覆により調製し、含浸させた空のナノカプセルの光学顕微鏡写真像の図である。
【図19C】図19Cは、オイドラギットL:RS(75:25)ナノカプセル被覆およびハイドロキシプロピルメチルセルロースマトリックス被覆により調製し、含浸させた空のナノカプセルの光学顕微鏡写真像の図である。
【図19D】図19Dは、オイドラギットL:RS(75:25)ナノカプセル被覆およびハイドロキシプロピルメチルセルロースマトリックス被覆により調製し、含浸させた空のナノカプセルの光学顕微鏡写真像の図である。
【図20】図20は、市販製剤(プログラフ(商標))または製剤第29の1mgタクロリムスをミニブタクに経口投与後のタクロリムスの血中レベルを示すグラフである(平均値±SD、n=4)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性剤のための、好ましくは、経口摂取用の、デリバリーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
以下は、本発明の技術分野における技術状況の記載に関連すると思われる先行技術リストである。これらの文献の本明細書における確認は、下記のリストから括弧内の数字を示すことによりなされるであろう。
【0003】
【非特許文献1】ホルム R、ポータ CJH、 エドワード Ga、 ミュラーツ A、 Kクリステンセン HG 及びチャールマン WN. Examination of oral absorption and lymphatic transport of halofantrine in a triple−cannulated canine model after administration in self− microemulsifying drug delivery system (SMEDDS) containing structured triglycerides. Eur. J. Pharm.Sci. 20:91−97 (2003).
【非特許文献2】オー・ドリスコールCM、Lipid−based formu− lations for intestinal lymphatic deli−very. Eur J Pharm Sci.l5:405−15.(2002).
【非特許文献3】タムラ S、 オーイケ A、イブキ R、アミドン GL、ヤマシタ S. Tacrolimus is a class II low−solubility high−permeability drug: the effect of P−glycoprotein efflux on regional permeability of tacrolimus in rats. J Pharm Sci. 91:719−29. (2002).
【非特許文献4】ハウス DJ、 フォーガルSE、フィコリルリ JV、プライス CA、ロイ T、ジャヤラジ AA、ケイルン JJ. Lipid−based delivery systems for improving the bioavailability and lymphatic transport of a poorly water−soluble LTB4 inhibitor. J. Pharm. Sci. 87:164−9 (1998).
【特許文献1】欧州特許480,729、 ハイブング L.等、 Microen−capsulation for controlled oral drug de−livery system.
【特許文献2】米国特許第5,965,160号、 ベニタ S 等. Self−emulsifiable formulation producing an oil−in−water emulsion.
【非特許文献5】クックRO.等、Novel sustained release microspheres for pulmonary drag delivery. J Control Release.104:79−90.(2005).
【非特許文献6】クホー SM、等、Formulation design andbioavailability assessment of lipidic self−emulsifying formulations of halo−fantrine.Int.J.Pharm.167:155−164 (1998).
【非特許文献7】クリステンセン、KX.等。 Preparation of redisperible dry emulsions by spray drying.Intl.J. Pharm. 212:187−194 (2001).
【非特許文献8】ホンボ、T.、コバヤシ等。 The oral dosage form of FK−506. Transplant.Proc.19(Suppl6): 17−22 (1987).
【非特許文献9】シマダ T.等 Lowered blood concen− tration of tacrolimus and its recovery with changes in expression of CYP3A and P−glyco−protein after high−dose steroid therapy.Transplantation. 74:1419−24(2002).
【非特許文献10】ウノ T.等。Pharmacokinetic advan− tages of a newly developed tacrolimus oil−in−water−type emulsion via the enteralroute. Lipids. 34: 249−54 (1999).
【特許文献3】米国特許6,884,433、ヤマシタ K.等。Sustainedrelease formulation containing tacroli− mus.
【非特許文献10】マンジュナス等。 Pharmacokinetics, tissue distribution and bioavailabilityof clozapine solid lipid nanoparticles after intravenous and intraduodenal ad−ministration, Journal of Controlled Release 107 (2005)
【非特許文献11】ジュバルツ M.A.The physiology of the lymphatic system, Adv. Drug Deliv. Rev.50 (2001)3−20.
【非特許文献12】ジャニ、P.U.,等、 Uptake and trans−location of latex nanospheres and micro−spheres after oral administration to rats、 J. Pharm. Pharmacol. 41 (1989) 809−812.
【非特許文献13】フローレンス D.Evaluation of nano and microparticles uptake by the gastro−intestinal tract, Adv. Drug Deliv. Rev. 34 (1998) 221−233.
【非特許文献14】ニシオカ Y.等、 Lymphatic targeting with nano− particulate system, Adv. DrugDeliv. Rev. 47(2001)55−64.
【特許文献4】US2003/0147965、バセットM、等。Methods and products useful in the formation and isolation of microparticles.
【0004】
ドラッグデザインやデリバリの最近の進歩は、腸管内リンパ輸送のための基質となり得る脂溶性の高い薬剤分子の数の増加をもたらしている。しかしながら、これらの薬剤は、腸管で吸収される前に、低い溶解性、P-糖蛋白の流出、またはCYP3A4の代謝のいずれかの理由により経口的な生体への利用性が低い。
【0005】
このような薬剤の十分な薬学製的製剤は、また、十分に解決されていない課題が残っている。脂質が疎水性薬剤のリンパ輸送を増強し得ることはよく知られている。それにより、肝臓の初回通過代謝がもたらすドラッグクリアランス(薬剤除去)を減少させる。このことは、薬剤吸収、バイオアベイラビリティプロフィール、活性、およびより低い毒性を改善している。ネオラル(商標;Neoral、サイクロスポリンA)、ノルビール(商標;Norvir、リトナビール)、およびフォルトバーゼ(商標;Fortovase,サキナビール)のような、自己乳化薬剤ドラッグデリバリシステム(SEDDS製剤の商業上成功は、例えば、等であるが、脂溶性薬物の経口のバイオアベイラビリティを改良するために期待し得るエマルジョンをベースとしたデリバリーシステムに関心が寄せられている(1)。胃腸管(GI)内で微細油滴として広がるSEDDSは、脂溶性薬剤のリンパ性輸送を促進することによりバイオアベイラビリティを増強すると考えられている。事実、胸管を経由するリンパ性輸送の拡張が、トリグリセライド構造をもつSMEDDSを動物に投与したハロファントリン(halofantrine)の27.4%であったことが最近証明された。付け加えると、最近、ある環境下で、リンパ管は、薬物吸収の主要な経路を提供するものであり、全身血漿中よりもリンパ液中では5〜10000倍の薬物濃度をもたらしていると最近報告されている(2)。ドラッグデザインとドラッグデリバリの最近の進歩はまた、腸管リンパ輸送の基質となる高い脂溶性薬剤分子が数多く開発に至っている。薬物吸収、バイオアベラビリティプロフィール、活性と毒性を決定する上でリンパ管の役割に関心がたかまっている。例えば、ある種の脂質がプレシステミック薬物代謝と腸管壁による仲介(gp−仲介)薬物流出の両方を阻害することができることを示す一連の証拠が増えつつある。
【0006】
特許文献(1)EP480,729は、油滴中に拡散させた薬物の経口投与用のマイクロカプセル化を記載している。油滴は、金属キレート能と水溶性ポリマである多糖を用いてカプセル化されている。カプセル化は、薬物を胃内での放出から保護する、一方で小腸内で急速な放出をもたらす。油滴中の薬物は、優先的にリンパ吸収されるため、肝臓での初回通過代謝による分解から保護される。
【0007】
特許文献2(US5,965,160)は、疎水性薬物を含有することができ、油性成分と界面活性剤を含む自己乳化油状製剤(SEOF)を開示している。SEOFは、油性成分が油状キャリアとカリオン性脂質を含み、場合により、脂溶性高級アルコールを含むことが特徴である。水溶液でSEOFの混合物に対して形成される水中油(oil in water)エマルジョン乳剤は、正に荷電した油滴である。
【0008】
非特許文献5で、Cook,R.O.等は、肺ドラッグデリバリ用の持続放出粒子の製造法を記載している(6)。この方法によれば、親水性で、イオン化した薬剤テルブタリン硫酸塩のナノカプセルは、スプレイ−乾燥法を用いて疎水性マイクロスフェア内に取り込まれている。
【0009】
Khoo、SM等が、ハロファントリン(Halofantrine)のような脂溶性薬物の経口デリバリ用の分散した脂質ベースの製剤を開示している(非特許文献6)。脂質の自己乳化薬物デリバリシステム(SEDDS)と自己微細乳化ドラッグデリバリシステム(SMEDDS)の両方が記載されている。そのシステムは、トリグリセライド、モノ/ジグリセライド、非イオン性界面活性剤、親水性層および製剤原料の薬物を含む。最適化された製剤は、中程度の鎖のトリグリセライド(MCT)SEEDおよびSMEDDS、そして長鎖のトリグリセライド(LCT)SMEDDSである。
【0010】
Holm, R等は、中程度鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸の異なる組み合わせによるトリグリセライドを含むSMEDDSを記載しているが、この場合、クリセロール骨格上の異なる脂肪酸は、異なる代謝的運命を示す(1)。
【0011】
Christensen,K.L.等は、当初のO/W乳剤を水中で再構成してリフォームできる安定な乾燥エマルジョンの製剤を記載している(非特許文献7)。その乾燥乳剤は、ハイドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、または、ポビドン、および、固体担体として、分画したココナッツ油を含む。液体O/W乳剤は、実験室用スプレイドライヤでスプレイ乾燥した。再構成した乳剤の液滴サイズは、約1μmであった。タクロリムス(Tacrolimus、Prograf、商標)は、菌類ストレプトマイセス ツクバエンシスに由来するマクロライド系免疫抑制剤(MW.804)であり、組織不適合拒絶反応の予防に有効であり、急性およびステロイド、サイクロスポリン−耐性移植拒絶に処置において有効であることが示されている。タクロリムスは、免疫抑制剤サイクロスポリンの代替と考えられており、サイクロスポリンより10〜100倍強い効果を示している。タクロリムスは、1994年4月に肝臓移植拒絶の防止のためにFDAにより認可された。
【0012】
サイクロスポリンのように、タクロリムスの薬動力学的パラメータは、高い個人間変動と個人内変動を示し、そして両薬剤は、狭い治療係数をもち、最適治療のためには全血薬剤のモニタリングでの治療を必要とする。タクロリムスの吸収と経口バイオアベイラビリティ(10〜25%)は、貧弱であり、食べ物の存在下では、吸収の率と程度の減少を伴う。不完全であるにもかかわらず、急速に、腸管から吸収される。タクロリムスの全血中の最大濃度(Cmax)は、経口投与後、おおよそ1〜2時間で達成される。低い水溶性のために、経口または非経口治療に続く、タクロリムスの組織分布は、広範囲である(非特許文献8)。タクロリムスは、主としてアルブミンとα1−酸糖蛋白に結合する。赤血球はその薬物の75〜80%を結合し、血漿中濃度より10〜30倍高い全血中濃度をもたらす(非特許文献8)。タクロリムスは、排泄されるまでに殆ど完全に代謝される。代謝は肝臓中のチトクロームP450(CYP)3A4イソ酵素を経ており、また、それほどで多くはないが、CYP3A4イソ酵素と腸管内のP−糖蛋白を経ている。肝移植患者におけるタクロリムスの排泄半減期は、約12時間である。投与量の1%以下が尿中に未変化で排泄される。腸細胞からの腸管内腔へタクロリムスのP−糖蛋白による流出は、吸収前のCYP34代謝を許している。したがって、タクロリムスのバイオアベイラビリティは制限がされている(非特許文献9)。タクロリムスが、CYP3A4およびP−糖蛋白の両方の阻害剤(例えば、ジルルチアゼム、エリスロマイシンまたはケトコナゾール)と一緒に投与したときは、経口バイオアベイラビリティの増強がみられた。薬剤デリバリによるタクロリムスのバイオアベイラビリティを増強する必要性がある。
【0013】
Uno T.等ら(非特許文献10)は、オレイン酸をベースにした薬物タクロリムスの水中油(O/W)型乳剤を記載している。そのO/W乳剤滴の平均径は、0.47μmであった。開示された製剤は、標準的な市販製剤に比べたタクロリムスための腸内経路のキャリアとして乳剤のバイオアベイラビリティ、薬動力学上の利点、および潜在的有用性を示した。
【0014】
特許文献3(US6,884,433)は、他のマクロライド化合物と同様に、タクロリムスを含む徐放除製剤を記載している。そこで開示された徐放製剤は、タクロリムスの固体分散、またはその水和物を含んでいるが、それらは、水溶性ポリマ(例えば、ハイドロキシプロピルメチルセルロース)と水不溶性ポリマ(例えば、エチルセルロース)と賦形剤(例えば、乳糖)の混合物中に含まれている。分散中においては、粒子サイズは、250μmと同等かこれより小さい。
【0015】
初回通過代謝やこのような低い経口的なバイオアベイラビリティを克服するため、薬物の腸管リンパ輸送が、それ故に、有効に使うことができる。前述したように、高い脂溶性化合物は、リンパ管を経由して全身循環に到達する。14またはそれ以上の鎖長の脂肪酸の大部分が、胸部リンパにおいて回収されることを見いだした(非特許文献11)。
【0016】
付け加えると、サイズが、リンパ性の取り込みに最も重要な決定要因の1つである。リンパ性取り込みの至適サイズは、10〜100nmの間であることを見いだした(非特許文献12)。しかしながら、取り込みは、粒子サイズが増大するにつれてより選択的になり、かつ遅くなる。大きな粒子は、パイエル板の中で長期間維持され得るが、一方、小さな粒子は、胸管へ運ばれる(非特許文献13)。ポリマのナノ−およびマイクロ粒子の経口投与は、腸管のパイエル板のM細胞を通して取り込まれ、そのことは、文献において証明され、実証されている(非特許文献14)。疎水性ポリマで被覆されたナノ粒子は、生体でリンパ細胞に捕捉され易い傾向にある(非特許文献15)。
【0017】
マイクロ粒子への薬物のカプセル化の別の方法は、Bassett等により記載されている(特許文献4)。その方法は、薬物と第一のポリマを溶媒中に溶解し、このようにして造られた混合物に、ポリマに被覆されたマイクロまたはナノ粒子が自然に形成される非溶媒中に溶解した第二のポリマを添加することにより生じる位相反転に関する(特許文献4)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、生体中で明白に非親水性である種々の活性薬物のデリバリ用のシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、本発明の1つの観点においては、ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルを含むマイクロスフェアであって、前記ナノカプセルが、非親水性活性薬剤を運ぶオイルコア(油芯)および重合性被覆の外殻を具えるものである、前記マイクロスフェアが提供される。
【0020】
本発明は、また、ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセル、非親水性活性薬物を運ぶオイルコア(油芯)、および、重合性被覆された外殻、を具えるマイクロスフェアを調製する方法であって、その方法が:
(a)オイル、水混和性の有機溶媒、溶媒に溶解した非親水性活性薬物、および前記オイルコア(油芯)用のポリマまたはポリマの組み合わせ;
(b)前記有機層に水をゆっくり添加し、乳剤を得て;
(c)前記乳剤に水を連続的に添加して、前記乳剤の位相転移を導き、水中油(O/W)乳剤を得て;
(d)前記(O/W)乳剤をゲル形成ポリマまたはゲル形成ポリマの組み合わせと混合し;
(e)前記有機溶媒と水を除去し、前記マイクロスフェアを得る;
を具える方法である。
プセル
【0021】
本発明は、活性成分のマイクロスフェアとして薬学的組成物であって、そのマイクロスフェアが、ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセル、非水溶性活性薬剤を運ぶ油芯(オイルコア)を含むナノカプセル、および重合性被覆外殻(shell)を具える、活性成分マイクロスフェアとして具える、薬学的組成物を提供する。
【0022】
さらに、本発明は、ヒト被験者の体で活性薬剤のバイオアベイラビリティを増強する方法、その方法は、ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルを含むマイクロスフェアを含み、そのナノカプセルは、非親水性活性薬物を運ぶオイルコア(油芯)と重合性被覆の殻を具えることを特徴とする方法を提供する。
【0023】
さらに、その上、本発明は、前記治療に要する活性化薬剤の有効量を被験者の血中に必要とする病状をもつ患者を治療する方法を提供し、前記マイクロスフェアが、ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルを含み、前記ナノカプセルが、非親水性活性薬剤を運ぶオイルコア(油芯)と重合性被覆の外殻を具えるマイクロスフェアを投与することを含む方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、ポリマ混合物で被覆された複数の微小油滴、ゲル形成ポリマにさらに収容された複数のポリマで被覆された油滴を具えるマイクロスフェアの形成が、オイルコア(油芯)中に溶解している脂溶性薬物の血中レベルを有意に上昇させることを見いだしたことに基づいている。このような「二重に被覆された油滴」は、複数のナノカプセルに順応しているマイクロスフェアが、事実上非親水性である種々の活性薬剤用のデリバリビークル(運搬手段)として有用であると理解されるようになった。
【0025】
したがって、1つの態様では、ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルを含むマイクロスフェアであって、前記ナノカプセルが非親水性活性薬物を運ぶオイルコア(油芯)と重合性被覆の外殻を含むものである、前記マイクロスフェアを提供する。
【0026】
「マイクロパーティクル」と交互に用いられる「マイクロスフェア」の用語は、典型的には、固体または半固体の材料から構成され、薬剤または、ナノカプセル中に封入されたその他の薬剤の運搬および放出をすることができるミクロンまたはサブミクロンスケールの粒子と広く定義する。本発明のマイクロスフェアは、活性薬剤を取り込んでいる(例えば、包埋している、カプセル化している、封じ込まれている)ナノカプセルの凝集体を含み、程度の差はあるが球形構造である。典型的には、本発明のマイクロスフェアの平均粒子径は、レーザ回折により測定された重量平均径として理解されているものでは、おおよそ10μm〜おおよそ500μmの範囲である。より好ましくは、マイクロスフェアの平均径は、約10μ乃至約20μmである。
【0027】
本明細書において用いられる「ナノカプセル」の用語は、重合性被覆形成で被覆された油滴(微細油滴)を含むナノ−、または、ナノ以下のスケール構造を意味する。重合性被覆は、オイルコア(油芯)を包んだ硬質な外殻を形成する。そのナノカプセルは、約100nm乃至約1000nmの平均径をもち、好ましくは、約100nm〜約900nmであり、より好ましくは、約100〜300nm乃至300〜500nmである。さらに、マイクロスフェア中にあるナノカプセルのサイズは、基本的には99%が1ミクロン以下の径をもつ油滴であって均一である。本明細書で用いる「ナノカプセル」の用語は、ポリマで被覆された油滴またはポリマの被覆を有する油滴であれば、いかなるものでもよいと同意であると理解されるべきである。
【0028】
本明細書で用いる「複数のナノカプセル」は、ゲル形成ポリマに収容された2つ以上のナノカプセルを意味する。
【0029】
活性薬剤は、ナノカプセル内に封入されている。その結果、活性薬剤とマイクロスフェアを形成するゲル形成ポリマの間には直接の接触はない。事実、湿潤し、膨潤すると、そのマイクロカプセルは、腸管内に、露出した裸の活性薬剤ではなく、ナノ粒子自体を放出する、換言すれば、活性薬剤(例えば、薬剤)自身、または分子レベルでの薬剤の特別な形態(フォーム)である。
【0030】
本明細書で用いられるように、「非親水性活性薬剤」の用語は、少なくとも水に対してある程度の反発があるとみなされるあらゆる化合物を意味する。言い換えれば、低度の、中度の、または高度の脂溶性を示すあらゆる薬剤が非親水性薬剤とみなされるであろう。非親水性薬剤は、薬剤(溶質として)の2層間、例えば、有機層と水(もっとも一般的に用いられている系はオクタノール−水)の分配係数を特徴付けているパラメータにより定義され得る。典型的には、分配係数は、中性の化合物の疎水性を記載している、一方、分配係数(logD、pKaとlogPの組み合わせ)は、薬剤のpH依存性の疎水性の測定値である。本発明の非親水性薬剤は、logP値が1.5以上のあらゆる化合物をいう。
【0031】
ナノカプセルのオイルコア(油芯)は、単一オイル(油)タイプとオイル(油)の併用を含み、極性から非極性まで、幅広い範囲から選択され、水層と混合しない限り、総じて液体である。1つの態様によれば、前記油滴は、植物油、エステル油、高級液体アルコール、高級液体脂肪酸、天然油脂、および、シリコンオイルから選択されるオイル(油)を含む。好ましい態様によれば、オイルコア(油芯)は、例えば、コーン油、ピーナツ油、ココナツ油、ヒマシ油、ゴマ油、大豆油、エゴマ油、ひまわり油、アルガン油、および、くるみ油などの天然油を含むものである。
【0032】
油滴は、オイルコア(油芯)とオイルコア(油芯)を取り巻いている重合性の外殻を含むナノカプセルを形成するためにポリマ塗膜内に封入される。ポリマ塗膜は、オイルコア(油芯)を取巻く外殻構造を提供する。本発明との関連において用語「外殻」は、油滴を封入している固体または半固体重合性構造のいかなるものも意味する。外殻は、単一のポリマまたは2以上のポリマの併用または混合を含むが、それについてはさらに以下に述べる。ポリマ塗膜がポリマの混合を含む場合は、少なくとも1つのポリマが約pH5.0以上で溶解するか、または、少なくとも1つのポリマが水溶性(pH依存性)あることが好ましい。
【0033】
1つの態様では、少なくとも2つのポリマの併用であって、そのポリマー混合物が、水に溶解性であるか(pH依存性)またはpH約5.0以上で溶解する第一のポリマ(単数または複数(ポリマー群))と、水不溶性ポリマである第二のポリマ(単数または複数(第二ポリマー群))とを含むポリマのブレンドを含むものである。
【0034】
用語「水溶性ポリマ」は、250C、質量濃度1%で水層に持ち込まれたとき、肉眼的に均一でかつ透明な溶液を得ることができるあらゆるポリマを意味する、例えば、500nmと同等な波長で、0.1cmの厚さの試料を通したとき、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%以上の最小光線透過率をもつ液体である。
【0035】
用語「pH5.0以上で溶解するポリマ」は、pH5.0以下、250Cで、溶解により培地中へ乾燥重量で10%以上が失われないが、同じ温度でpH5.0以上の水系メディウムで、ハイドロゲルか、または、肉眼的に均一で透明溶液を形成する。あらゆるポリマーを意味する。このようなポリマは、時には、「腸溶性ポリマー」という用語で呼ばれる。
【0036】
多くの水溶性ポリマがこの分野では公知になっている。本発明に関連して適したポリマは、ポリオールおよび炭化水素重合体を含むが、これらの限定されるものではない。典型的な水溶性ポリマには、例えば、ハイドロキシプロピルメチルセルロースやハイドロキシメチルセルロースのような水酸化セルロースを含んでいる。他の適切な水溶性ポリマは、ポリエチレングリコールを含んでいる。2以上の水溶性ポリマーの併用は、また考えられる。
【0037】
また、pH5.0以上で溶解する多くのポリマがこの分野では知られている。本発明に関してあてはまる腸内ポリマの限定されない例としては、ハイドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP55)、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルセルロースフタレート、および他のあらゆるセルロースフタレート誘導体、シェラック( shellac)、オイドラギッドL100−55、および、ゼインを含む。
【0038】
好ましい腸溶性ポリマは、オイドラギットL100−55である。
【0039】
用語「水不溶性ポリマ」は、メディウムpHにかかわりなく乾燥重量で10%以上が溶解により水溶液中に失われないすべてのポリマを意味し、水不溶性の限定されない例としては、以下を含む;すなわち、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルローストリプロピオネート等の混合エステルを含むジ−、または、トリ−アシレートのようなセルロースエテル;エチルセルロースのようなセルロースエステル;ナイロン;ポリカーボネート;ポリ(ジアルキルシロキサン);ポリ(メタアクリル酸)エステル;ポリ(アクリル酸)エステル;ポリ(フェニレンオキシド);ポリ(ビニルアルコール);芳香性窒素含有ポリマ;重合性エポキシド;再生セルロース;逆浸透または透析への使用に適した膜−形成物質;酢酸アガ−;アミローストリアセテート;β−グルカンアセテート;アセトアルデヒドジメチルアセテート;セルロースアセテートメチルカルバメイト;セルロースアセテートサクシネート;セルロースアセテートジメチルアミノアセテート;セルロースアセテートエチルカルボメイト;セルロースアセテートクロロアセテート;セルロースアセテートエチルオキザレート;セルロースアセテートプロピオネート;ポリ(ビニルメチルエーテル)コポリマ;セルロースアセテートブチルスルフォネート;セルロースアセテートオクテート;セルロースアセテートラウレート;セルロースアセテートp−トルエンスルフォネート;ローカストビーンゴムのトリアセテート;水酸化エチレン−ビニルアセテート;セルロースアセテートブチレート;ワックスまたはワックス様物質;脂肪アルコール;水素添加した植物油;ポリ乳酸、PLAGAおよびそれらの等価物のようなポリエステル、ホモ、コポリマ、およびそれらの組み合わせ、である。
【0040】
本発明の水に不溶性ポリマは、オイドラギッド(Eudragit)RSまたはRLまたはそれらと同じもの組み合わせである。
【0041】
ナノカプセルが2つのポリマを含む場合は、最初のポリマは、水に不溶性であり、第二のポリマは、pH約5.0以上で水溶性である。
【0042】
好ましい態様では、最初のポリマ、すなわち、水に不溶性のポリマまたはポリマ群と第二のポリマ、すなわち、pH約5.0以上で水溶性のポリマまたはポリマ群の(重量/重量)比は、5:95乃至50:50の範囲である。
【0043】
理論にこだわることなく、水に不溶性ポリマとpH5.0以上で水溶性ポリマ(「非不溶性」ポリマ)の比率は、ナノカプセルからの活性薬剤の調節放出にとって臨界的であると考えられている。水に不溶性の第一のポリマと水溶性またはpH約5.0以上の水系のメディウムに可溶であることは、それに続きナノカプセルが水またはpH約5.0以上の水系メディウムに接すると、該ポリマのゆるやかな溶解をもたらす、一方、不溶性ポリマの通常の調製では、基本的には、通常どおりの配置が維持されている。言い換えれば、「非不溶性ポリマ」のゆるやかな溶解は、水に不溶性ポリマから形成されたポリマ骨格におけるチャンネル様経路の形成をもたらす、その経路を通して、活性薬剤がナノカプセルからもれ出すことができる。ナノカプセルからの活性薬剤の放出抑制(調節)を促進するために、第一のポリマである水不溶性ポリマと、いわゆる、「非不溶性」ポリマの適した比は、pH5.0以上で可溶性ポリマに適した比である(例えば、水不溶性ポリマに適した適した、75:25という重量:重量比である)。
【0044】
1つの態様によれば、ポリマの組み合わせは、オイドラギット(Eudragit)RL、オイドラギット(Eudragit)RS、または、それらの組み合わせ、から選択される第一のポリマまたはポリマ群(不溶性ポリマ)、および、オイドラギット (Eudragit)L100−55、または、ハイドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMPC)、または、それらの組み合わせから選択される第二のポリマまたはポリマ群との混合物である。
【0045】
複数のナノカプセルは、ゲル形成ポリマ内で収容されている。
【0046】
本明細書で用いる用語「ゲル形成ポリマ」は、湿潤したときに、膨潤するポリマネットワーク、または、ゲルを形成する親水性ポリマのあらゆるものを意味する。ゲル形成ポリマは、ときには、ハイドロゲル形成ポリマとも呼ぶことがある。ゲル形成ポリマは、天然蛋白質または合成ポリマであり得る。1つの好ましい態様によれば、ゲル形成ポリマは、湿ったときは、「粘着性」になる、つまり、その中に含まれる湿潤したマイクロスフェアやナノカプセルを腸管上皮への粘着を増強することができる。
【0047】
本明細書で用いる用語「収容された」は、封入、被覆、包埋、包囲、閉じ込め、取り込み、または、その他、二段階目の保護伴う活性薬剤を含む複数のナノカプセルの詰め込み配置を提供できるような、ゲル形成ポリマによるナノカプセルの取り込み、その他のあらゆる手段を意味する。
【0048】
天然のゲル形成ポリマの例は、これらに限定されないが、ゼラチン、コラーゲンのようなタンパク質、寒天、カラゲーナン、グルコマンナン、シゾフィラン、ジュランガム、アルギン酸、カードラン、ペクチン、ヒアルロン酸、またはグアーガムのような多糖をあげることができる。
【0049】
合成ゲル形成ポリマの例は、これらに限定されないが、ポリアクリル酸、変性セルロース、メチルセルロース、メチルプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化されたセルロース、ハイドロキシプロピルメチルセルロース、ハイドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、2−メチル−5−ビニルピリジン、カルボマおよびその同等物をあげることができる。
【0050】
本発明の1つの観点は、消化管をとおした、すなわち、経口投与のための、活性薬剤のデリバリーシステムとして、マイクロスフェアの使用に関するものである。
【0051】
別の方法では、そのマイクロスフェアは、注射による投与のためにデザインされることができる。
【0052】
用語「P-糖蛋白流出ポンプの基質」は、本明細書では、用語「P−gp基質」とも交互に用いられ、能動輸送、つまり、P-糖蛋白質膜結合トランスポータを介した細胞外への「流出」に支配されている活性物質(治療、化粧、または、診断目的のため)のあらゆるものを意味する。P-gpは、腸管の全長に沿って発現しており、また、肝臓、腎臓、脳血液関門および胎盤にも発現している。これとの関係で、本発明は、上皮細胞の頂端膜上に位置する腸管内P−gpによる能動輸送に従っている医学上の物質に関する。ATPの加水分解により生じるエネルギーを利用して、P−gpは、濃度勾配に逆らって、種々の物質の流失を推進させ、これにより、細胞内濃度を減少させ、そして活性物質の場合には、経口のバイオアベイラビリティを減少させる。
【0053】
このように、本発明の1つの好ましい態様では、活性物質は、医薬、化粧品、診断薬の、あらゆる物質であるが、経口投与に続く、血中のバイオアベイラビリティは、P−gpによる流失機構の結果として、減少するか、または、阻害される。P−gp基質は、それらの溶解性と代謝レベルにより分類され得る。この分類によるP−gp基質のリストは、限定されるものではないが、以下を含む:
【0054】
高い溶解性と広範囲の代謝:アミトリプチリン、コチシン、デキサメサゾン、ジルチアゼム、エチニルエストラジオール;
【0055】
低溶解性と広範囲の代謝: アトロバスタチン、アジスロマイシン、カルバマゼピン、サイクロスポリン、グリブライド、ハロペリドール、イトラコナゾール、タクロリムス、シロリムス、リトナビール、サンキナビール、ロバスタチン。
【0056】
高溶解性と少ない代謝: アミロイド、アモキシリン、クロロキン、シプロフロキサシン、ジクロキサシリン、エリスロマイシン、フェキソフェナジン、レボドーパ、ミダゾラム、モルヒネ、ニフェジピン、プリマキン、プロマジン、プロメタジン、キニジン、キニン;および、
【0057】
低溶解性と少ない代謝: シプロフロキサシンおよびタリノロール。
【0058】
本発明に関連して、非親水性活性薬剤は、脂溶性または、両親媒性の化合物または錯体またはこのような化合物を含む混合物である。非親水性活性薬剤は、修飾された親水性化合物を含み、例えば、薬剤の親油性を増大させるために親油性部分を付加である。このような修飾された化合物は、本明細書では、用語「プロドラッグ」と時々、呼ぶことがある。
【0059】
活性化薬剤は、遊離酸、遊離塩基、塩の形であることができ、そして活性剤の混合物が用いられることができる。
【0060】
ある態様によれば、活性薬剤は、脂溶性薬剤である。用語「脂溶性薬剤」は、本明細書では、logP値(オクタノール/水)が、2.0〜3.0より大であり、トリグリセライド(TG)の溶解度が、測定によれば、例えば、大豆油またはそれと同等物での溶解度が、10mg/ml以上である。この定義は、中程度の脂溶性薬物を含んでいる、つまり、3.0〜6の間のlogP値をもつ薬剤、および、6以上のlogP値をもつ高い脂溶性薬剤も同様に含んでいる。
【0061】
本発明のナノカプセルへの取り込みに適した中程度の脂溶性をもつ、治療に役立つ活性薬剤の例としては、以下のものをあげることができる:
【0062】
鎮痛薬及び抗炎症剤: アロキシプリン、アウラノフィン、アザプロパゾン、ベノリレート、ジフルニザール、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメサシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロセン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダック。
【0063】
駆虫剤: アルベンダゾール、ベフェニウム、ハイドロキシナフトエート、カンベンダゾール、ジクロロフェン、イバルメクチン、メベンダゾール、オキサムニキン、オキシフェンダゾール、オキサンテルエムボネート、プラジカンテル、ピランテルエムボネート、チアベンダゾール。
【0064】
不整脈治療剤: アミオダロン、ジソピラミド、酢酸フレカイニド、硫酸キニジン。
【0065】
抗菌剤: ベネタミンペニシリン、シノキサシン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クロファジミン、クロキサシリン、デメクロキサシリン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、エチオナミド、イミペナム、ナリジキシン酸、ニトロフラントイン、リファンピシン、スピラマイシン、スルファベンズアミド、スルファドキシン、スルファメラジン、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファフラゾール、スルファメトキサゾ−ル、スルファピリジン、テトラサイクリン、トリメトプリム。
【0066】
抗凝固剤: ジクマロール、ジピリダモール、ニクマロン、フェニンジオン。
【0067】
抗鬱剤: アモキサピン、マプロチリン、ミアンセリン、ノルトリプチリン、トラゾドン、マレイン酸トリミプラミン。
【0068】
抗糖尿病剤: アセトヘキサミド、クロルプロパミド、グリベンクライド(glibenclaraide)、グリクラジド、グリピジド、トラザミド、トルブタミド。
【0069】
抗てんかん剤: ベクラミド、カルバマゼピン、クロナゼパム、エトトイン、メトイン、メスクシミド、メチルフェノバルビトン、オクスカルバゼピン、パラメタジオン、フェナセミド、sファノバルビトン、フェニロイン、フェンスクシミド、プリミドン、スルチア
ム、バルプロ酸。
【0070】
抗黴剤: アンホテリシン、硝酸ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾー、硝酸塩、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナタマイシン、ナイスタチン、硝酸スルコナゾール、テルビナフィン、テルコナゾール、チオコナゾール、ウンデセン酸。
【0071】
抗痛風剤: アロプリノール、プロベネシド、スルフィンピラゾン。
【0072】
抗高血圧剤: アムロジピン、ベニジピン、ダロジピン、ジルチアゼム、ジアゾキシド、フェロジピン、グアナベンズアセタート、イスラジピン、ミノキシジル、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、フェノキシベンザミン、プラゾシン、レセルピン、テラゾシン。
【0073】
抗マラリア剤: アモジアキン、クロロキン、クロルプログアニル、ハロファントリン、メフロキン、プログアニル、ピリメタミン、硫酸キニーネ。
【0074】
抗片頭痛剤: ジヒドロエルゴタミンメシラート、酒石酸エルゴタミン、メチセルギドマレイン酸塩、マレイン酸ピゾチフェン、コハク酸スマトリプタン。
【0075】
抗ムスカリン剤: アトロピン、ベンズヘキソール、酒石酸エルゴタミン、メチセルギドマレイン酸、マレイン酸ピゾチフェン、コハク酸スマトリプタン。
【0076】
抗腫瘍剤および免疫抑制剤: アミノグルテチミド、アムサクリン、アザチオプリン、ブスルファン、クロラムブシル、シクロスポリン、ダカルバジン、エストラムスチン、
エトポシド、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキセート、マイトマイシン、ミトタン、塩酸ミトキサントロン、プロカルバジン、クエン酸タモキシフェン、テストラクトン。
【0077】
タクロリムス、シロリムス:
【0078】
抗原虫剤: ベンズニダゾール、クリキノール、デコキナート、ジヨードハイドロキシキノリン、ジロキサニドフロアート、ジニトルミド、フラゾリドン、メトロニタゾール、ニモラゾール、ニトロフラン、オルニタゾール、チニタゾール。
【0079】
抗甲状腺剤:カルビマゾール、プロピルチオウラシル。
【0080】
抗不安剤、鎮静剤、睡眠剤および神経遮断剤: アルプラゾラム、アミルバルビトン、バルビトン、ベンタゼパム、ブロマゼパム、ブロンペリドール、ブロチゾラム、ブトバルビトン、カルブロマール、クロルジアゼポキシド、クロルメチアゾール、クロルプロマジン、クロバザム、クロチアゼパム、クロザピン、ジアゼパム、ドロペリドール、エチナメート、フルナニゾン(flunanisone)、フルニトラゼパム、フルオプロマジン、フルペンチキソールデカノアート、フルフェナジンデカノアート、フルラゼパム、ハロペリドール、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メダゼパム、メプロバメート、メタクアロン、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、ペントバルビトン、ペルフェナジン ピモジド、プロクロルペラジン、スルピリド、テマゼパム、チオリダジン、トリアゾラム、ゾピクロン。
【0081】
β−ブロッカー: アセブトロール、アルプレノロール、アテノロール、ラベタロール、メトプロロール、ナドロール、オクスプレノロール、ピンドロール、プロプラノロール。
【0082】
強心剤: アムリノン、ジギトキシン、ジゴキシン、エノキシモン、ラナトシドC、メジゴキシン。
【0083】
コルチコステロイド剤: ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、酢酸コルチゾン、デスオキシメタソン、デキサメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルコルトロン、プロピオン酸フルチカゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン。
【0084】
利尿剤: アセタゾラミド、アミロリド、ベンドロフルアジド、ブメタニド、クロロチアジド、クロルタリドン、エタクリン酸、フルセミド、メトラゾン、スピロノラクトン、トリアムテレン。
【0085】
抗パーキンソン病剤: ブロモクリプチンメシラート、マレイン酸リスリド。
【0086】
胃腸薬: ビサコジル、シメチジン、シサプリド、ジフェノキシラート、ドンペリドン、ファモチジン、ロペラミド、メサラジン、ニザチジン、オメプラゾール、オンダンセトロン、ラニチジン、スルファサラジンン。
【0087】
ヒスタミンH受容体拮抗剤: アクリバスチン、アステミゾール、シンナリジン、シクリジン、シプロヘプタジン、ジメンヒドリナート、フルナリジン、ロラタジン、メクロジン、オキサトミド、テルフェナジン。
【0088】
脂質調節剤: ベザフィブラート、クロフィブラート、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、プロブコール。
【0089】
硝酸塩および他の狭心症剤: 硝酸アミル、ニトログリセリン、イソソルビドジニトラート、イソソルビドモノニトラート、四硝酸ペンタエリトリトール。
【0090】
栄養剤: β−カロテン、ビタミンA、ビタミンB(vitamin B.sub.2)、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK。
【0091】
HIVプロテアーゼ阻害剤: ネルフィナビル。
【0092】
オピオイド鎮痛薬: コデイン、デキストロプロポキシフェン、ジアモルフィン、ジヒドロコデイン、メプタジノール、メタドン、モルフィン、ナルブフィン、ペンタゾシン。
【0093】
性ホルモン: クエン酸クロミフェン、ダナゾール、エチニルエストラジオール、酢酸メドロキシプロゲステロン、メストラノール、メチルテストステロン、ノルエチステロン、ノルゲストレル、エストラジオール、抱合卵胞ホルモン(conjugated oestrogens)、プロゲステロン、スタノゾロール、スチルベストロール(stibestrol)、テストステロン、チボロン。
【0094】
覚醒剤: アンフェタミン、デキサンフェタミン、デクスフェンフルラミン、フェンフルラミン、マジンドール。
【0095】
そこに限定されなることなく、本発明において好ましい薬剤は、タクロリムス、シロリムス、ハロファントリン、リトナビール、ロプリナビール、アンプレナビール、サキナビール、カルシトロール、ドロナビノール、イソトレチノイン、トレチノイン、リスペリドン塩基、バルプロ酸が含まれるが、一方、好ましいプロドラッグには、デキサメサゾンパルミチン酸塩、パクリタキセルパルミチン酸塩、ドセタキセルパルミチン酸塩が含まれる。
【0096】
本発明のデリバリーシステムおよびその医薬への応用において取り込むことができる脂溶性薬剤のいくつかの例は、限定されるものではないが、ロバ−ト G.ストリッキ[Strickley R.G.Pharmaceutical Research,21(2):201−230;2004]により、および、Kopparam Manjunath等、[Manjunath K.等、Journal of Controlled Release 107:215−228;2005]により記載されている。
【0097】
別の態様においては、活性薬剤は、両親媒性である。用語「両親媒性薬剤」は、本明細書では、logPが1.5と2.5の間であるあらゆる化合物を意味し、測定したトグリセライド(TG)の溶解度は、例えば、大豆油またはそれと同様なものにより測定されたように、10mg/mlを超過するものである。
【0098】
本発明のシステムにより分配される両親媒性活性薬剤の例としては、これに限定されるものではないが、フィゾスチグミン、サリチレート、クロルプロマジン、フルフェナジン、トリフルペラジン、および、リドカイン、ブピバカイン、アンホテリシンB、エトポシド、テニポシド、および、抗黴剤エチノカンジンス、および、クロトリマゾール、およびイタコナゾール等のアゾール類を挙げることができる。
【0099】
本発明のナノカプセルに取り込みに適した治療上有効な非親水性活性剤は、これに限定されるものではないが、クロザピンを含む。クロザピンは、シゾフレニア耐性に適用される代表的ではない有効な抗精神薬である。クロザピンは、27%のバイオアベイラビリティをもち急速に経口吸収される。クロザピンは、肝臓のミクロソーム酵素(CYP1A2およびCYP3A4)により広範囲に代謝され、N−デメチルおよびN−オキサイド代謝物をつくる。したがって、クロザピンは、本発明のシステムによりデリバリされる好適な候補である。
【0100】
本発明はまた、本発明の複数のナノカプセルを収容しているマイクロスフェアの調製方法を提供するが、その方法は次を含む:
(a)オイル、水混和性有機溶媒、その溶媒に溶解した非親水性薬剤、およびオイルコア(油芯)被覆用のポリマまたはポリマの組み合わせ、を含む有機相を提供し;
(b)前記有機相に水をゆっくりと添加して、油中水乳剤を得て;
(c)油中水(W/O)乳剤中に水を連続的に添加し、好ましくは滴下して、乳剤の位相転移を起こして、油中乳剤(O/W)を得て;
(d)前記O/W乳剤をゲル形成ポリマまたはゲル形成ポリマの組み合わせと混合し;
(e)有機溶媒と水を除去し、複数のナノカプセルを収容しているマイクロスフェアを得る。
【0101】
ナノカプセルは、活性薬剤が溶解または分散しているオイルコア(油芯)を含み、そのオイルコア(油芯)は、重合性外殻で封入されていることに、注目することが必要である。オイルコア(油芯)を被覆している複数の外殻は、ゲル形成ポリマ中に収容されており、薬剤とゲル形成ポリマの間では直接の接触はない。
【0102】
本発明の方法で用いた有機溶媒は、水の沸点に近いか、または、それより低い沸点をもつ、水と混和性であるいかなる有機溶媒であってもよい。このような有機溶媒の例は、限定されるものではないが、エタノール、メタノール、アセトン、エチルアセテート、イソプロパノール(bp108℃、それにもかかわらず、本発明との関連では、揮発性とみなしている。)
【0103】
オイルと有機溶媒との組み合わせた使用は、本来、基本的に非親水性である種々の薬剤のナノカプセル内でカプセル化を可能としている。オイルコア(油芯)は、また、1またはそれ以上の非親水性賦形剤(例えば、脂溶性賦形剤)を含むことができる。この目的のために、本発明の方法は、有機溶媒中に1またはそれ以上の賦形剤の添加を含むことができる。賦形剤は、油相中で少なくとも1%の溶解度をもつものであれば、どのような賦形剤でも好ましい。1つの例によれば、賦形剤は、ラブラフィル(labrafil)M1944CS、ポリソルベ−ト80、ポリソルベ−ト20のような脂溶性界面活性剤である。
【0104】
オイルを含む有機相に、水を、ゆっくりと、基本的には滴下によって加える。最初は、水中油乳剤が形成される、すなわち、水滴が有機相に分散される。しかしながら、ゆっくりとした連続的なメディム中への水の添加は、最終的には、逆の現象をもたらす、つまり、連続的なおよび非連続的な添加は、ポリマで被覆された油滴が、水中へ分散するように切り替わる。
【0105】
用語「乳剤」は、少なくとも2つの液相をもつ系を意味し、その1つは、他の中に分散している。分散した相は、また、内相、不連続相、ちぐはぐな相(分散した滴)と呼ばれ、一方、外相は、コヒーレント相(同期相)または連続相と呼ばれる。乳剤は、2層以上を含む。例えば、それらは、3種の液相(例えば、トリプル乳剤)、または、2種の液相と固体相を含むことができる。外相が液状であることが、全ての乳剤に共通している。液相または固体相のような第三の相が存在するとすれば、これは、通常は、外相に分散している分散相中に分散される。乳化剤は、存在することもあり、存在しないこともある。
【0106】
異なるタイプの乳剤は分散相の液体形成のタイプに対する外相を形成する液のタイプを参照して、定義され得る。これとの関係で、油相が水相で分散した場合、乳剤は、用語「水中油(O/W)乳剤」または「正常乳剤」である。しかしながら、「逆の、または、油中水(W/O)乳剤」を形成することも、また、可能である。逆乳剤では、水滴がオイルの連続相中に分散する。
【0107】
ナノカプセルを形成する際に、最初油中水(W/O)乳剤が形成され、そして、この(W/O)乳剤は、(油/有機相)中へ水を添加することにより(O/W)乳剤へ転換する。理論にとらわれることなく、その系の中のポリマは、全ての内部の油滴を取り込んで、かつ、油水界面に堆積し、その結果、連続水相からそれらの単離していると考えられている。その結果得られた乳剤は、被覆ポリマで被覆された油滴を含み、次に、ゲル形成ポリマ溶液に混合される。一度、水中油乳剤が形成され、ゲル形成ポリマが添加され、溶媒(または溶媒の混合物)と水は基本的には分離される。
【0108】
溶媒(または溶媒の組み合わせ)を除去するために、加熱、溶媒の蒸発、揮発性溶媒の蒸発に続く凍結乾燥を含む当該分野で熟知された利用できるいくつかの技術がある。本発明によれば、活性薬剤が、熱に感受性(不安定)でない場合には、溶媒は好ましくは、スプレイ乾燥により除去される。活性薬剤が熱感受性である場合は、乳剤から溶媒を除去するためには、当該分野で熟知され評価されているような、他の方法が用いられる。
【0109】
スプレイ乾燥は、1930年第に開発されたマイクロカプセル化の機械的な方法である。したがって、乳剤は、スプレイ乾燥器の加熱された室の中へ回転するディスクを介して乳剤が滴のスプレイ中に、スラリーをくみ上げることにより、自動化される。そこでは、乳剤中の水分と同様に溶媒は蒸発して、乾燥マイクロスフェアが得られる。
【0110】
得られた乾燥マイクロスフェアは、処望のあらゆる利用に応じて、製剤化され得る。このようなマイクロカプセル化した材料にとって殆ど無限の用途がある。とりわけ、活性薬剤にもよるが、マイクロスフェアは、農業、医薬、食品、化粧品、芳香剤、織物、紙、塗料、被覆、および粘着剤、印刷アプリケーション、および多くの他の産業に応用することができる。
【0111】
好ましい態様によれば、前記マイクロスフェアは、医薬、化粧品または診断薬に使用される。
【0112】
より好ましくは、乾燥マイクロスフェアは、薬学的組成物として、好ましくは経口投与として製剤化される。この目的のために、乾燥マイクロスフェアは、腸内用カプセルのような、腸内用ビークルの中に含まれる。腸内用カプセルの例としては、限定されないが、技術分野で公知のように柔または剛の腸内用被覆カプセルを含んでいる。
【0113】
乾燥マイクロスフェアがこのような腸内用ビークルの使用により、胃液から保護される場合には、(ナノカプセル中の)油滴は、pH5.0以上で溶解するポリマで被覆されている必要はない。言い換えれば、水可溶性ポリマと水不溶性ポリマの組合わせが、利用できる。
【0114】
他方、pH5.0以上でのみ溶解するポリマを含むポリマのブレンドを用いることにより、小袋を形成するような、マイクロスフェアの他のデリバリの形態が可能である。
【0115】
製剤の特殊なタイプのものに応じて、薬剤師または他の調剤をするいかなる者が、本発明において使用されるポリマの組み合わせを決めることができる。
【0116】
経口デリバリー用の錠剤、丸剤、粉剤、薬用キャンデ、エリキシル剤、懸濁剤、エアロゾール(個体または液体メディウム中)および滅菌包装粉末が、他のデリバリー形式と同様に、用いることができる。
【0117】
本発明のマイクロスフェアは、市販製品または乳剤製剤(得られた区分では表示したオイル)に比較して、活性薬剤の血中レベルの上昇をもたらすことを示した。
【0118】
1つの態様では、本発明のマイクロカプセルは、活性薬剤の調節放出を提供する。本明細書で用いる「調節放出」は、即時放出ではないあらゆるタイプの放出を意味する。例えば、調節放出は、修飾、拡張、維持、遅延、延長、または一定(すなわち、ゼロ次)放出としてデザインされ得る。理論上は、最も有用な放出プロフィールの1つは、所与の期間にわたる一定の放出である。薬剤の放出は、液滴に適用された被覆をしたことにより得られる、しかも、活性薬剤の放出プロフィールは、外殻を形成するポリマの組成の変動に影響されることが考えられる。速度調節されているポリマの被覆は、公知の技術でコア(芯)となる液滴上にポリマ混合物で複数の被覆を適用することにより、組立てることができる。
【0119】
本発明の方法により、マイクロスフェアは、活性薬剤とゲル形成ポリマの間で直接接触のないように構築される(ゲル形成ポリマの混合物とすることができる)。さらに、本発明の方法は、ゲル形成ポリマとブレンドする外殻形成ポリマの過剰量を許容することに注目される、すなわち、ナノカプセルの上のマイクロスフェア被覆を形成した部分である。
このように、最終産物の水系の環境への接触に対して、ゲル形成ポリマは、ゼリー状になり膨潤する、一方、ゲル形成ポリマと混合される水可溶性ポリマまたはpH5.0以上での可溶性ポリマは溶解する。理論にしばられることなく、マイクロスフェア構造中で、ゲル形成ポリマと過剰量の他のポリマ(ナノカプセルの壁の形成に用いられる)との組み合わせにより、活性薬剤を含む完全なナノカプセルがマイクロスフェア(たぶん、可溶性ポリマの溶解の結果としてマイクロスフェア中に形成されたギャップを通してであろう。)から放出されると考えられ、遊離体の薬剤が放出されるのではないと考えられる。再度、理論にしばられることなく、ゲルからのナノカプセルの放出は、遊離体での薬剤ではなく、P−gp流失からの薬剤の回避と、そこでのリンパ管によるそれらの取り込みを許容している。
【0120】
本発明は、また、ヒト被験者の生体で活性薬剤のバイオアベイラビリティを増強させる方法を提供し、その方法は、前記被験者に本発明のマイクロスフェアを提供することを含んでいる。ここに提示した結果は、本発明のマイクロスフェアの使用により試験した活性薬剤の血中でのバイオアベイラビリティは、対照薬剤に比較して、少なくとも1.3倍増強し、好ましくは2倍、より好ましくは3倍増強することができる(実施例、図12参照)。
【0121】
本発明は、被験者の血液系内で活性薬剤の有効量で治療を必要とする病的状態の被験者を治療する方法を提供し、その方法は、前記被験者に本発明のマイクロスフェアと提供することを含んでいる。
【0122】
本明細書で用いる用語「病的状態」は、被験者の健康を改善するために、本明細書の上記に挙げたような、薬剤またはプロドラッグ、または、診断薬である活性薬剤のデリバリを必要とするあらゆる状態を意味する。活性化剤が非親水性の実体であるとき、例えば、以下に限定されるものではないが、脂溶性薬剤、両親媒性薬剤、または活性薬剤の脂溶性/両親媒性の誘導体であるときは、本発明の活性薬剤デリバリは、好ましくは、リンパ管輸送を介している。限定されるものではないが、前記病的状態は、とりわけ、炎症と自己免疫疾患、寄生虫感染(例えば、マラリア)、細菌感染、ウイルス感染、かび感染、心臓疾患(例えば、不整脈)、血液凝固障害、鬱病、糖尿病、てんかん、片頭痛、癌、免疫疾患、ホルモン異常、精神医学的症状、消化器系障害、栄養障害、およびその他当該分野で公知の多くの疾患、を含んでいる。
【0123】
薬学的組成物中の活性薬剤の有効量および単位あたりのその用量は、特定の適用、様式または導入、特定の活性薬剤の力価、ナノカプセルへの薬剤の荷重、および所望の濃度に応じて、広く変動し、または、調整され得る。有効量は、典型的には、適切に計画された臨床試験(投与用量の研究)で決定され、そして、この分野で熟知した者が有効量を決定するためのこのような試験を適切に実施する方法を知っている。通常知られているように、有効量は、活性薬剤の疎水性や、関連する場合は、脂溶性/両親媒性、ナノカプセル(油滴被覆)を形成するポリマの選択、および/または、外皮を形成する外郭用ゲル、ナノカプセルから放出された後の生体内での活性薬剤の分布プロフィール、生体内での半減期のような薬学的な種々のパラメータ、好ましくない副作用、もしあるとすれば、年齢、性別等、を含む種々の要因に依存している、
【0124】
用語「単位用量製剤」は、ヒト被験者および他のほ乳類に対する単位用量として適切な身体的に別々の単位であって、各単位は、薬学的に適切な賦形剤を伴う所望の治療効果をもたらすように計算された活性薬剤の所定量を含んでいる。治療上活性ある薬剤の濃度は変動する。
【0125】
本発明の組成物は、毎日単回投与の長期投与、一日数回投与、および数日に1回投与等により投与することができる。治療期間は、一般的には疾病の経過の長さ、特定のマイクロスフェアの有効性(例えば、リンパ系を解する有効なデリバリや薬剤の有効性)および治療を受ける対象の種に比例するであろう。
【0126】
評価されているように、マイクロスフェア、それらの調製方法に関して以下に詳細に説明されているが、本発明は、それらの含有する薬学的組成物、その同一物を使用した治療方法、およびマイクロスフェアの他のあらゆる使用を包含すると理解されるべきである。
【0127】
本明細書および特許請求の範囲で用いた形式「1つの」、「その」、「前記」は、その文脈が明記しない限り、単数の言及であると同様に複数であることも含んでいる。例えば、用語「ポリマ」は、1またはそれ以上のポリマを含んでおり、用語「オイル」は、1またはそれ以上のオイルを含んでいる。
【0128】
さらに、本明細書で用いられているように、用語「含む」または「具える」は、マイクロスフェアが、列挙した要素を含む、または、具える他、その他を排除しないことを意味する。用語「基本的に、からなる」は、被験者の体内で脂溶性薬剤のバイオアベイラビリティに関する基本的に重要な事項である他の要素を排除することを意味する。例えば、水溶性ポリマ(pH依存性)により被覆された油滴を基本的に含むマイクロスフェアは、何も含まないか、または、腸内用ポリマのような溶解性に関してpH依存性がないポリマの単に有意でない量(マイクロスフェアから非親水性薬剤の放出について有意でない効果をもたらす量)を含む。「からなる」は、他の要素の僅かな要素以上のものを排除することを意味する。これらの変化する用語の各々により定義された態様は、本発明の範囲内である。
【0129】
さらに、全ての数値、例えば、マイクロスフェアを構成する要素の量または範囲を参照する場合、(+)または(−)に最大20%以内で、また、あるときは、表示値から最大10%以内で、変化する概算である。当然のことながら、すべての数字の表示がその前に「約」が付されていることを、必ずしも明白に説明していない場合もある。
【実施例】
【0130】
実施例1:マイクロスフェア収容されたナノカプセル
材料と方法
[材料]
ポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート、トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライド)1:2:0.2(オイドラギット、Eudragit RL)、ポリ(エチル アクリレート、メチルメタクリレート、トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライド)1:2:0.1(オイドラギット、Eudragit RS PO)、およびポリ(メタクリル酸、エチルアクリレート)1:1(オイドラギット、Eudragit L100−55)は、ローム(Rohm)社(Dramstadt、 GmbH,ドイツ)から購入し、ハイドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMPC)は、イーストマン社(Eastman、Rochester、米国)から購入した。ハイドロキシプロピルメチルセルロース(Methocel E4M Prenium)は、ダウケミカル社(Dow Chemical Company、Midland、MI、米国)から得た。メチルセルロース(Metolose 90SH 100,000)は、信越(東京、日本)から得た。アルガンオイルは、アルバン−ミューラ社(Alban−Muller、Vincenny、フランス)カラ購入した。ポリオキシエチル化したオレイングリセライド(Labrafil M 1944CS)は、ガッテフォセ(Gattefosse、St.Priest、フランス)から親切にも寄贈された。デキサメサゾンパルミテート(DXPL)は、2.1に記載したように合成した。タクロリムス(1水和物として)は、コンコード バイオテック社(Concord Biotech Limited、Ahmedabad、インド)から購入し、アンフォテリシンBは、アルファルマ社(Alpharma、LotN:A1960561)から購入した。他の試薬や溶媒は、分析用試薬等級のものであり、この研究とおして再蒸留水を用いた。
【0131】
[方法]
ナノカプセルの調製
種々の予備的な製剤が表1および2に記載のように調製された。
【0132】
本研究におけるナノカプセルの調製には、2つの異なる溶媒添加のアプローチがとられた。第一のアプローチは、フェッシ等によるよく確立されている方法に基づいている(Fessi H.等、Nanocapusule formation by inter−facial polymer deposition following sol−vent displacement.Int.J.Pharm.1989 55:R1−R4、1989)。そのアプローチは、被覆ポリマの界面堆積につづき、オイル/有機相からの水に混和性の半極性共溶媒系(アセトン:エタノール;19:1)への置換を用いている。オイル相、脂溶性界面活性剤、被覆ポリマ(ナノカプセル外郭形成ポリマ)および各々の薬剤を含むアセトン溶液が、最終的に乳化安定剤を含む水溶液中に注がれる。水相は、ナノカプセル形成の結果として、直ちに青みがかったオパール色をもつ乳白色に変わる(表1)。一方、表2に示したナノカプセル形成においては、水相が、ゆっくりと、アセトン:エタノール/有機相に添加され、最初W/O型マイクロエマルジョンの形成に導き、ついで、連続的な水の添加により逆のO/W型エマルジョンを得て、双極性溶媒の置換により、ナノカプセル形成をもたらす。
【0133】
タクロリムスは、大変高価で、しかも注意深く取り扱う必要がある有毒な薬であることを強調しなければならない。それゆえ、インビトロの放出速度試験で特にモデル薬物として役に立った脂溶性薬物、デキサメサゾンパルミテートを用いて予備試験を行うことにした。
【0134】
デキサメサゾンパルミテートの合成
デキサメサゾン(1当量)を新たに乾燥させたピリジン(デキサメサゾン各1グラム当たり、2.5mlのピリジン)中に溶解した。得られた溶液は、1から5にジクロロメタンで希釈し、氷浴で4℃に冷却した(溶液A)。塩化パルミトイル(1.2当量、Aldrich)をジクロロメタン(1グラムの塩化パルミトイルに15mlのジクロロメタン)に溶解し、0℃に冷却した(溶液B)。均圧漏斗に移し、激しく攪拌され冷却した溶液Aに滴下で加えた。添加が終了した後(5グラムのデキサメサゾンについて30分間)、反応混液に窒素を流し、蓋をして、氷冷浴で1晩攪拌しつつ放置した。翌朝、反応進行を評価するためサンプルを取り出し、薄層クロマトグラフィにより、酢酸エチル:ヘキサン(3:1容量)で溶出した。通常、3つの主たるピークが得られた:第一は、デキサメサゾンであり、第2は、塩化パルミトイルであり、第3は、生産物のデキサメサゾンパルミテートを示した。反応が不完全な場合は、反応混液は、追加して12時間攪拌しつつ放置した。この期間の終了のとき、有機溶媒を減圧下で除いた(600C以上に加熱しない。)。残渣に100mlの酢酸エチル:ヘキサン(2:1)混液を加える。得られる懸濁液は激しく攪拌し、ブフナー漏斗で濾過した。半固体は、酢酸エチルで洗浄し、得られたろ液は分離した。有機層は、100mlの5%冷水酸化ナトリウムで2度、水で2度、飽和塩化ナトリウム溶液で1度洗浄した。有機層は、無水硫酸ナトリウムで濾過し、次いで蒸発乾燥させた。残渣は、最小容量のクロロフォルムに溶解し、シリカカラム(40cm長)でフラッシュ・クロマトグラフィーにかけた。カラムは、クロロフォルム:ヘキサン(1:1)混液で溶出し、デキサメサゾンパルミテートを多く含む画分を併せて、蒸発乾燥し、HPLCにより生産物の純度を確認した。収率は、実際のところ60%である。
【0135】
タクロリムス ナノカプセルの調製
オイドラギット(Eudragit)RS、オイドラギット(Eudragit)L100、ラブラフィル1944CS、アルガンオイル(油)、およびタクロリムスが表3に示す濃度で100mlのアセトン:エタノール混液(90:10)(油相)に溶解させた。75mlの水が、油相に(2分以内で)添加されて、分散液を形成させた。その分散液に0.5%のメチルセルロース溶液200mlを、スプレイ乾燥する前に添加した。メチルセルロースと最後の水溶液部分は、ナノカプセル形成させた後に、添加した。断らなければ、メチルセルロースは、メトセル(Methocel)E4Mを意味する。
【0136】
3つの製剤が本明細書で例示されている:その内容が表3および4に記載されている製剤第29、および第30である。これらの製剤は、ポリマの比率により異なっている: すなわち、オイドラギット(Eudragit)RS、オイドラギット(Eudragit)L100−55は、25:75または75:25の各々である。さらなる製剤は、製剤第29と内容物が似ている製剤第32であるが、しかし、オイドラギット(Eudragit)RS、オイドラギット(Eudragit)L100−55を含んでいない。
【0137】
アンホテリシンBナノカプセルノ調製
オイドラギット(Eudragit)RS、オイドラギット(Eudragit)L100−55、ラブラフィル1944CS、アルガンオイル、および、表3に示す濃度で酢酸に溶解したアンホテリシンが、アセトン:エタノール(90:10)溶液100ml(有機層)に溶解した。75mlの水を(2分間以内)で、前記有機層に加えて、分散の形成を得た。この分散液に0.5%のハイドロキシプロピルメチルセルロース溶液200mlを、スプレイ乾燥させる前に添加した。ハイドロキシプロピルメチルセルロースと最後の水溶液部分を添加し、ナノカプセルが形成された後に添加した。ハイドロキシプロピルメチルセルロースは、メトセル(Methocel)E4Mを参照されたい。ナノカプセルの製剤(処方)は、表5に示した。
【0138】
スプレイ乾燥法によるタクロリムスまたはアンホテリシンBナノカプセルのマイクロカプセル化
前記懸濁液は、ブッチミニ スプレイ乾燥器(Buch mini spray− drier B−190)装置(Flawil、スイス国)を用いて、次の条件でスプレイ乾燥した:すなわち、吸気口温度113℃;吸引50%;懸濁液の供給量は2.5ml/分で、粉末はサイクロン集塵器で集め、出口での収率を計算した。
【0139】
タクロリムス ナノカプセルおよびそれに続くマイクロカプセルの物理化学的特徴
薬剤内容物
粉末中のタクロリムスの総量は、5mlPBS中にサンプルを溶解させることにより分析した。ポリマを溶解した後、1mlのアセトニトリル(ACN)を加え、混合物を1時間攪拌した(100rpm)。その後、3mlの酢酸エチルを加え、混合物を激しく攪拌し、4000rpmで5分間遠心した。
【0140】
酢酸エチルによるタクロリムスの抽出は、混合液からの全ての薬剤の分離を確保するため3度繰り返した。異なる酢酸エチルの層(上層)を新しいチューブに移した、そして空気存在下で蒸発乾固させた。併せた残渣を1mlのACNに溶解し、その50μlを次の条件でHPLCに注入した:すなわち、移動層−アセトニトリル100%、流速−0.5ml/分、波長−213nm、カラム−LiChrosher(商標)100RP−18(5μm)、4/120mm、である。検量線は、5〜250μg/mlのタクロリムス濃度の間で直線関係が得られた。タクロリムスの検出限界は、3.9μg/mlであった。
【0141】
タクロリムスの取り込み率は、次式より計算した:
【0142】
粉末中のアンホテリシンBの総量は、5mlのジメチルスルフォキシド(DMSO)中にサンプルを溶解することにより分析した。ポリマを溶解した後、1時間攪拌した(100rpm)。その後、アンホテリシンBの濃度は、波長407nmで分光光度計により測定した。検量線は、アンホテリシンBの0.781〜100μg/mlの濃度範囲で直線関係が得られた(R2=0.999)。アンホテリシンBのスプレイ乾燥した粉末は、0.85%(w/w)であることがわかった。
【0143】
DXPL内容物
粉末中の薬剤の総量を5mlのPBSにサンプルを溶かして分析した。ポリマを溶解した後、5mlのメタノールを添加し、混合液は1時間攪拌した(100rpm)。ジクロロメタン3mlを添加し、その混合液を激しく攪拌した後、4000rpmで5分間遠心した。ジクロロメタンによるDXPLの抽出は、混合液からの薬剤の総量の分離を確保するため3度繰り替えした。異なるジクロロメタン層(低濃度層)は、新しいチューブに移し、空気存在下で蒸発乾固した。併せた残渣は、200μlのメタノールに溶かし、50μlを次の条件のHPLCに注入した:すなわち、移動層−メタノール100%、流速−0.7ml/分、波長−242nm、カラム−LiChrosher(商標)100RP−18(5μm)、4/120mm、である。検量線は、0.01〜5μg/mlのDXPL濃度の間で直線関係が得られた。タクロリムスの検出限界は、9.8ng/mlであった。
DXPLの取り込み率は、次の式から計算した:
【0144】
マイクロパーティクルからのDXPLのインビトロ放出速度の測定
吸引の状態が行き渡ったら、インビトロ速度試験を何らの加圧をすることなく、限外濾過法によりDXPLについて行った[マーゲンヒイエム(Magenhiem)B.等 「A new in vitro technique for the evaluation of drug release profile from colloidal carriers- ultrafiltration technique at low pressure.」 Int J Pharm 94:115-123、1993]。
【0145】
限外濾過セル装置アミコン(Amicon Corp.、Danver、Mass、米国)を用いた。フィルターは、ISOPORETM8.0μmTEPT(ミリポア、Bed− ford、MA.米国)を用いた。この研究では、吸引状態、放出は、一致した。マイクロパーティクルサンプル(5mg)が、100mlの放出メディウム(ナノカプセルの物理的安定性が変化しない、リン酸緩衝液pH7.4中10%アセトニトリル)中に入れた。所与の間隔で放出メディウムの0.5mlサンプルを、ナノカプセルがこのようなフィルタを介して拡散し得るような8.0μmフィルタを通して採取した。次に、0.5mlメタノールを加え、ナノカプセルを溶かすためにボルテックス(渦巻き)した。その後3mlのジクロロメタンを加え、混液を激しくボルテックスし、続いて4000rpmで5分間遠心した、遠心後、ジクロロメタン層(低層)は新しいチューブに移し、空気存在下で蒸発乾固した。残渣は200mlのメタノールに溶解し、その50μlを前述の条件でHPLCに注入した。
【0146】
第一のナノカプセルと第2のマイクロスフェアの粒子サイズの決定
ナノカプセルのサイズ測定は、粒子測定機(ALV Non−Invasive Back Scattering High Performance Parti−cle Sizer、ALV−NIBSHPPS、ドイツ)を用いて25℃で、溶媒として水を用いて行った。632nm波長のレーザビームを用いた。感度領域は、0.5nm〜5μmであった。スプレイ乾燥したマイクロパーティクルは、走査型電子顕微鏡で定性的に評価した。
【0147】
ナノカプセルとマイクロスフェアの形態学的評価
ナノカプセルとスプレイ乾燥したマイクロスフェアの形態学的評価は、走査型電子顕微鏡(モデル:Quanta200、FEL、ドイツ)を用いて行った。サンプルは、両面性の粘着テープを用いて試料固定台(SEM−stub)上に固定し、金を散りばめるスパッタ法(pilaron E5100)で被覆する標準的な被覆に従い、真空下で伝導性を付与した。
【0148】
透過型電子顕微鏡(TEM)
ナノカプセルの形態学的評価をTEM(透過型電子顕微鏡)分析を用いて行った。サンプルは、コロジオン被覆し、カーボン−安定化させた銅性のグリッド上に置き、1%リンタングステン酸(PTA)で1分間染色した。そのサンプルを乾燥させた後、TEM(フィリップス、CM―12;フィリップス、Eindhoven,オランダ)。
【0149】
ラットでの吸収試験
研究は、実験動物の世話と使用に関する規則とガイドラインMD104.01−3に従い、実験動物の世話飼育の地域倫理委員会により承認を受けた。SDラット(Sprague−Dawley)の体重300〜325gをこの研究に用いた。動物は、SPF状態で飼育し、実験24時間前から絶食させた。つぎの朝、動物は絶食時で、経口強制投与で0.2mgのタクロリムスを、プログラフ(商標)カプセル内容物(lot−5C5129B exp.−06/2007,Fujisawa Ltd.UK)(CAPS)、水中油剤(OIL)、または新規なDDS(製剤第29および第30)または製剤第32の中のいずれかにより投与した。
【0150】
血液サンプルは、ラットの尾から、薬剤投与した、直後(0分)、30分、1、2、3、4、6および24時間後に採取した。血液サンプルは、ヘパリン入りチューブに採取した。サンプルは、−20℃で、直後に凍結させ、タクロリムス濃度の測定を、PRO−TracTM II エライザキット(DiaSorin、米国)を用い、続いて同社のプロトコルに従って行った。このエライザ法は、臨床上のプラクティスでよく受け入れられており、タクロリムスの血中濃度を0.3〜30ng/mlまでは正確に検出することができる。
【0151】
各ラットは、当初のプログラフ(登録商標)の静脈内投与用アンプル5mg/ml濃度を用いて静脈内投与ボラス(大量1回)により、160μg/kgで投与した(lot:5A3098H exp:11/06,Fujisawa Ltd.UK)。血液サンプル(100〜150μl)は、動物の尾から5、30分、1、2、3、4、6および24時間後に採取した。サンプルは、前記のように処理し分析した。異なる製剤の薬動力学的パラメータは、WinNonlinソフトウエア(4.0.1バージョン)を用いて、AUCの計算には台形公式を用いて、計算した。
【0152】
経口的の異なる製剤の絶対的なバイオアベイラビリティが標準的な市販製剤に比較して下記の式から計算された:
【0153】
標準市販製剤(CAP)に比較したあらゆる経口製剤の相対的なバイオアベイラビリティは、次式を用いて計算した:
【0154】
異なる試験条件でのオイルコア(油芯)の安定性試験
異なる試験条件でのタクロリムスのアルガン油/ラブラフィル中での37℃で長期間の化学安定性が、5mgタクロリムスを300μlのアルガン油/ラブラフィル5:1溶液(ALSOL.)中に溶解して試験をした。種々の抗酸化賦形剤をまた、表6に示すように、オイル製剤中に溶解した。よく密封されたガラスバイアル中で保存された製剤のあるものは、不活性な大気条件を確保するために窒素を流した。
【0155】
ミニブタによる吸収試験
18〜21kgのミニブタをこの試験に用いた。吸収試験は、各動物には、市販製品であるPrograf(商標)ゼラチンカプセル(市販)および、異なるオイドラギット混合物(Nov.DDS=製剤第29)を用いた新規なDDSゼラチンカプセル、のいずれかを1mgのタクロリムスの経口投与することにより行った。
【0156】
外科的方法: 全ての外科的および実験的手法は、Hebew大学(MD117.04―3)の動物の取扱いおよび使用に関する委員会により、再検討され、承認された。体重18〜21gの小さいブタを全ての試験に用いた。動物は、一晩絶食させた;試験中を通じて飲料水は自由に飲める状態にした。翌朝、動物はイソフルラン(マスク)による短期間(10分間)麻酔をかけた。この期間動物は:
(1) プログラフ(商標)市販品カプセル、およびNov.DDSとして製剤されたタクロリムスを動物あたり1mg、絶食状態で経口により投与;
(2) 採血のために、カテーテルを頸部静脈へ挿入し、ブタの背部を固定した。血液サンプル(1ml)は、0、15、30分、1、1.5、2、3、4、8、12および24時間時に、ヘパリン入りチューブ(試験中動物には意識があった。)に採取した。
【0157】
サンプルは、直ちに、−20℃で凍結させ、PRO−TracTM IIエライザキット(DiaSorin、米国)を用いてタクロリムス濃度を測定した。
[結果と考察]
【0158】
形態学的な分析
驚くべきことに、水相をゆっくりと有機相に加えるとき(表2);第一に、水が油相に分散し、そして、水を添加した後、容積は、アセトン溶液100ml中に15mlの水と推定される。
分散したメディウムは、オパール色の急速な形成により証明されるように、O/W型乳剤が形成された。この段階で、内側のアセトン/エタノール相が外側の水相へと急速に拡散し、その結果、O/W界面で疎水性ポリマの堆積をもたらし、図1で示したように、オイドラギットポリマ混合物により被覆されたオイルコア(油芯)からなるナノカプセルの形成をもたらす;ここで、水に対するアセトン溶液の最終比は、100:75である(v/v)。強調すべきことは、オイドラギット混合物の同一濃度で、オイルを欠く条件では、オイドラギット相分離現象と、アセトン溶液からポリマの分離を反映するオパール色は、45mlおよび35mlの水を製剤第29および第30に添加後に、各々生じることである。この違いは、製剤第29と第30間のオイドラギットRSとオイドラギットL100−55の比率の違いによるものである。明らかに、水が、ゆっくりと、4という低いHLB値をもつラブラフィル界面活性剤を含むアセトン:エタノール/オイル相に加えるときは、透明なW/O型マイクロエマルジョン(微細乳剤)が形成され、相分離は認められない。進行しつつある、継続的な水添加に対して、親水性:脂溶性堆積のある比において、逆のO/W型乳剤が自然に形成され、外側の水相へ向かってアセトン:エタノールの置換(拡散)が直ちに起こり、油滴のO/W型界面で疎水性オイドラギットポリマ混合物の堆積に導き、薬剤と界面活性剤が溶解しているアルガン油を取り囲むようにナノカプセル封入体が形成される。単に75mlの水が加えられたこの段階で、ナノカプセルを取り囲むオイドラギット混合膜は、部分的に依然として水和し、図1Aと1Bから分かるように、薄い。200mlの0.5%メチルセルロース溶液の更なる添加に対して、ナノカプセルからのアセトンとエタノールによる完全な抽出がなされ、図2Aと2Bに提示されたデータから推測されるようにより強固なオイドラギット膜が形成される。大きなナノカプセル凝集体が形成されるのは、メチルセルロースが存在することと、分散液中にナノカプセルが高濃度のためである。
【0159】
このことは、製剤第30がメチルセルロース溶液を含まないで75mlの水で希釈したとき(すなわち、容積比100:75)に、さらに確認された。オイドラギット混合物の界面でのより顕著な堆積が起こり、図3Aと3Bに示すようにその厚さが30nmであると定性的に見積もられる強固なオイドラギット膜が形成される。事実、特定の混合物の溶解度は、製剤第29中のオイドラギット混合物の溶解度より小さく、その特定の混合物は、製剤第30に対する35mlの添加の代わりに、少なくとも45mlの水を添加下後に分離される。表2に記載したように、この手法を用いて油相や油滴は検出されなかった。選択されたナノカプセル分散製剤第29の粒子サイズは、狭い範囲であり、平均径479nmを示した(図4)。
【0160】
SEM分析は、前述のTEMの結果を確認し、そして、製剤第29に水75mlを添加して形成される個々のナノカプセルを示している(図5Aおよび5B)。しかしながら、メチルセルロース溶液の添加とそれに続くスプレイ乾燥を行うと、小さい凝集(10〜30μmのサイズの定性的な範囲)を形成する球形のマイクロスフェア(2〜5μmの定性的な範囲)が検出された(図6Aおよび6B)。さらに、pH7.4の放出用メディウムへスプレイ乾燥した凝集体を3時間浸すことから生じる何らかの規則的な構造上の形態を区別することは不可能であった(図7AおよびB)。事実、製剤第29におけるオイドラギット形成膜混合物は、オイドラギットL100−55:オイドラギットRSを75:25の比率で含んでいた。オイドラギットL100−55は、pH5.5以上で容易に溶解する、一方、オイドラギットRSは、pHにかかわらず不溶性である。このように、第一のメチルセルロース被覆と第二のナノカプセルオイドラギット混合物被覆は、急速に溶解する、このため、一定の構造が確認できなかった。しかしながら、製剤第30は、スプレイ乾燥に続き、凝集体が少なく、真空の結果しぼんだ球形構造の多いことがSEM分析から観察できる(図8A〜8D)。さらに、図9Aおよび9Bにおいて、放出メディウムに3時間以上浸した後、中空のコアのマイクロスフェア中に無数のナノカプセルが検出されており、このことは、オイドラギットRS:オイドラギットL100−55が75:25を含むナノカプセルを被覆しているオイドラギット混合物が、水放出メディウムにより抵抗性があり、長時間にわたりカプセル化した薬剤の放出を調節できることの発見を証明している。
【0161】
インビトロ放出速度試験
マイクロスフェアからの薬剤の放出が、油滴の周りに適用されたポリマ被覆における変動により調節され得ることをインビトロ放出の成績は示唆している。図10からわかるように、DXPLの放出プロフィールは、オイドラギットL:RS(75:25)は、RS:L(75:25)よりも速い、このことは、オイドラギットLは、より速やかな浸透性があり、オイドラギットRSよりも急速な放出を引きだすことを示している。
【0162】
図11は、DXPLの1ミクロン以下のオイドラギットで被覆していない乳剤が製剤第29と同じ条件でスプレイ乾燥された結果を示している。両タイプのマイクロスフェアは、よく似た放出プロフィールを引き出している。溶解したDXPLおよびDXPL充填ナノカプセルを放出する代わりに、DXPLを溶解させて、DXPLを充填した微小油滴を放出して、両試験に対して同じ総放出量を反映させた。このような発見は、放出速度試験では、溶解したDXPLと油滴またはナノカプセルに取り込まれたDXPLを区別できないことを示唆している。
【0163】
異なる試験条件下でナノカプセルのオイルコア(油芯)に溶解したタクロリムスの安定性試験
表7に示したデータからタクロリムスは、オイル製剤中では、窒素雰囲気中であっても、種々の抗酸化剤の存在下であっても、BHT、没食子酸プロピルエステルで製剤化し、窒素雰囲気中を併用した場合を除いて、37℃で1ヶ月保存後は、安定ではない。ことが推測される。
【0164】
マイクロカプセル化したタクロリムスナノカプセルの室温での安定性評価
マイクロカプセル化したタクロリムスのナノカプセルの最終乾燥製剤は、室温でよく密封されたプラスチック容器中に保存された。製剤第29は、3ヶ月および4ヶ月後に測定し、HPLCを用いて測定したタクロリムス含量は、各々当初の99%および95%含量であった。室温で目的生産物の安定性が、連続的な監視下におかれている。最終的に選択された目的製剤は、加速安定性試験にかけられるであろう。
【0165】
ラットでの吸収試験
前述したように、タクロリムスは、経口投与すると、バイオアベイラビリティや薬物動態の変動を伴うものである。タクロリムスの空腸固有の透過性は、きわめて高いことが示唆された。タクロリムスの局所的な依存性が、また試験され、その研究は、タクロリムスの透過性は、回腸および大腸では劇的に空腸に比べて減少した。そのような場合、タクロリムスの変動の多くは、観察された局所依存性に起因し得るとされるP−糖蛋白(P−gp)またはCYP3A代謝効果のような他の要因からの結果であるように思われる(特許文献1)。事実、腸内吸収と経口バイオアベイラビリティに対するCYP3AとP−gpの組み合わせ効果が、タクロリムスの経口薬剤分布への主たる障害であると報告されている[Kagayama等、Oral Absorption of FK506 in rat.Pharm Res.10:1446−50(1993)]。O/W型オレイン酸乳剤の手法により、薬剤のリンパ系への選択的移行によりタクロリムスの吸収を改善する試みがなれてきた(非特許文献12)。本発明者らは、タクロリムス乳剤をラットに2および1mg/kg経口投与し、それを市販製品に比較した。2mg/kgから1mg/kgへ投与量を減少させたことは、血中Cmaxを36.3±18.3から8.5±4.8へ、また、32.1±9.6から6.9±2.2へ、各々、市販製品および乳剤投与剤形では、有意に減少した。同様な結果が、表8に示すように、1、3.2、および10mg/kgの量を(fed)ラットに分散投与剤形でしたタクロリムスの経口投与により、8.8±4.9、11.6±5.3、40.2±19.4mg/kgのCmaxが報告されている。
【0166】
最近の結果は、0.7mg/kgの市販製品(CAPS)の量での経口投与は、Cmax 1.1±0.8mg/kgをもたらした、この値は、報告された値に十分に低いものであり、Cmaxに対して投与した用量の有意な影響を明白に示している。さらに、表8に示したように、前記乳剤はCmax2.2±0.46ng/mlを引き出したが、一方で、製剤第29はCmax11.1±2.7ng/mlを引き出した。
【0167】
付け加えると、製剤第29によりもたらされた吸収プロフィールは、前記乳剤や市販製品により得られたプロフィールよりも有意に優れていた(図12)。しかしながら、製剤第30は、製剤第29に比べて、放出プロフィールの増強は引き出せなかった(図13)。
【0168】
付け加えて、0.7mg/kgのタクロリムスを種々の製剤でラット(平均値±SD、n=3〜6、p>0.005)に経口吸収後の血中レベルを測定した(図14)。ラット吸収試験は、タクロリムスの0.7mg/kg(0.2mg/ラット)を強制経口投与により、プログラフカプセル(商標)市販製品の懸濁液(市販品、Comm.Prod.)、乳剤(乳剤、Emuls.)、オイドラギットを含まず、メチルセルロースを含むマイクロスフェアに包埋された乳剤(乾燥乳剤;Dry Emuls.)、または、メチルセルロース不含、オイドラギット含有ナノカプセルと乳糖を含むスプレイ乾燥剤(メトセル無し)のいずれかの製剤で行った。
【0169】
製剤第30の低い性能を考慮して、製剤29で得られたナノカプセルに詰め込まれマイクロカプセル化されたタクロリムスの生産プロセスの再現性を評価することにした。製剤第29と同一である製剤第31から引き出された吸収プロフィールは、製剤第29でもたらされたプロフィールに近いものであることを図15に示すデータから推測され得る。
【0170】
タクロリムス吸収の高い変動性を考慮すると、このような発見は、プロセスパラメータがよく管理されており、再現性が良いことを示唆している。
【0171】
製剤第29は、タクロリムスの肝臓バイパスに貢献しており、タクロリムスのリンパ吸収を促進し、その結果、市販製品に比べて、バイオアベイラビリティを増強されたことを図16に示すデータから推測することができる。
【0172】
経口製剤の絶対的なバイオアベイラビリティを計算するために、静脈内投与の薬物動態解析を行った、そのデータは図17に示した。経口製剤の絶対的なバイオアベイラビリティは、タクロリムスのバイオアベイラビリティに関して既に報告されているデータを確認すると、12%以下であった(表8)。しかしながら、製剤第29により達成された結果は、表8に示す市販カプセル製剤に比較すると、バイオアベイラビリティが490%に増加し、表8には、全ての製剤でのAUC0〜24と、Cmaxが表されている。乳剤製剤は、市販製品に比較して210%の相対的なバイオアベイラビリティを示したが、しかし、表8に示す各々のAUC0〜24から反映されているように、製剤第29のバイオアベイラビリティに、たった42.8%を引き出したにすぎなかった。実際のマイクロカプセル化したナノカプセル(本発明のマイクロスフェア)によるタクロリムスの改善された経口吸収は、腸管内のリンパ性の取り込みによって仲介され得る。腸管内上皮細胞によるマイクロ−および−ナノカプセルの取り込みは、現在では広く受け入れられている現象であり、マイクロ粒子キャリアを用いた不安定な分子のデリバリ経路に焦点を向けるように研究者を駆り立てている(特許文献4)。
【0173】
表8に表した結果は、ナノカプセルの製剤がデリバリシステムの性能にとって重要であることを示している。単純な乳剤は、オイルコア(油芯)内にタクロリムスを保持できず、その結果、製剤第29と同一内容物であるが、ナノカプセル被覆している壁の形成をするオイドラギット混合物をもたない製剤第32により引き起こされた結果から明らかに反映しているように、タクロリムスの顕著なプレ全身代謝分解をもたらした。
【0174】
付け加えて、病理組織学的標本がラット十二指腸から、製剤第29強制経口投与30分後に取り出された。標本は、蛍光顕微鏡で検査され、ナノカプセルが容易に組織の色々な領域から検出された。これらの発見は、粒子がまた、正常な腸管細胞内へ、飲食細胞運動が行われていることを示唆している。
【0175】
他方、明白なナノ粒子の凝集がパイエル氏板領域でみつかった(図18)。パイエル氏板内の非常に多数のナノカプセルの存在は、P−gp流出を逃れた可能性を示唆し、リンパ管への取り込みは、肝初回通過効果をさけるバイパスをとおって、全身血液循環中でカプセル内容物の放出を許容している。
【0176】
付け加えると、続いて起こる異なる写真が撮られている(図19A〜19D):
【0177】
− ナノカプセル被覆およびメチルセルロースマトリックス被覆により調製した乾燥マイクロカプセル化した空のナノカプセル(図19A);
【0178】
− オイドラギットL:RS(75:25)ナノカプセル被覆およびハイドロキシプロピルメチルセルロースマトリックス被覆により調製し、リン酸緩衝液(pH7.4)でインキュべーション3分後の、含浸し、マイクロカプセル化した空のナノカプセル;
【0179】
− オイドラギットL:RS(75:25)ナノカプセル被覆およびハイドロキシプロピルメチルセルロースマトリックス被覆により調製し、リン酸緩衝液(pH4.8)でインキュべーション5分後の含浸した、マイクロカプセル化した空のナノカプセル(図19Cおよび19D、ZU 19Dは、図19Cの断面の拡大である)。
【0180】
顕微鏡写真像で描かれた結果は、マイクロスフェアマトリックスは、メチルセルロースのみが含まれているのではなく、ナノカプセル被覆に参画していない過剰のオイドラギットRSとLが含まれていることの示唆を導いた。したがって、5より小さいpHでは、急速なゲル化やマトリックスの膨潤は観察されなかった、しかし、pH7.4では、オイドラギットLは、急速に溶解し、急速なゲル化とマトリックスの膨潤とマイクロカプセルからのナノカプセルの放出に寄与した。
【0181】
理論に縛られることなく、マイクロカプセル化したナノカプセルによる活性薬剤の改良された経口吸収は、腸管内リンパ粒子取り込みにより介在されているという仮説を立てた。
【0182】
このことは、製剤第29の内容で、オイドラギットポリマを含まないナノカプセル被覆のときは、図17(乳剤、および、乾燥乳剤)および上記表8に示すように、増強されたバイオアベイラビリティは引き出せなかったという結果から、明らかに分かる。
【0183】
さらに、理論に拘泥されることなく、本発明のデリバリシステムは、リンパ性の取り込みを促進するだけでなく、プレ代謝による分解やP−gp流出を回避することができる。通常の乳剤は、市販製品に比べて、バイオアベイラビリティが改善されているのであるが、製剤第29と同程度ではない、おそらく、腸管細胞への取り込まれる前のGI(胃腸間内)液におけるタクロリムスの分配の結果であろう。
【0184】
したがって、本発明のデリバリ−システムは、薬剤のデリバリが働くか、または、P−gp流出が考えられる種々の活性薬剤のデリバリに好ましくは適用できる。
【0185】
さらに、上記の発見は、乾燥乳剤、製剤第29に似ているが、オイドラギットナノカプセル被覆をもたないものは、GI液中でオイルコア(油芯)中にタクロリムスを保持できず、その結果、市販製品に比べて、貧弱なバイオアベイラビリティをもたらしている。
【0186】
さらに、メトセル(Methocel)を含まないオイドラギットナノカプセルは、実際のナノカプセル被覆が現在の試験条件下でタクロリムスの保持が不可能であるような著しい血中の濃度を引き出さず、タクロリムスの流出を防ぐことに寄与できなかった。
【0187】
このような発見は、4のミニブタクロスオーバ動物実験により確認された。図19および表9に示した結果は、本発明のデリバリシステムが、市販薬剤(プログラフ(商標))に比べて、2.4倍の高い薬剤レベルを引き出した製剤第29が例示したように、タクロリムの肝バイパスに貢献しており、その結果バイオアベイラビリティを増強している。
【0188】
ミニブタでの吸収試験の結果から、本発明のドラックデリバリーシステムによってもたらされた相対的なバイオアベイラビリティは、試験した製剤より2.4倍優れていた。
【0189】
本発明においては、もっともらしい作用機作上の説明が提示された全体的な結果の見地からは、新規な薬剤デリバリシステムが薬剤の経口吸収をいかにして有意に増強したかは、理論に拘泥されることなく、次のことが関与している:
(a)腸管内の腸細胞の飲食作用による吸収により飲食性の粒子の取り込み(粒子サイズ<500nm);
(b)パイエル氏板のM細胞により吸収された粒子のリンパ性の取り込み(粒子サイズ、<5μm);および、
(c)十分な生体接着性をもつハイドロキシプロピルメチルセルロースの被覆により引き起こされた腸管上皮細胞へマイクロスフェアとナノカプセルの増強された接着性、これらは、その結果、多剤耐性薬剤蛋白から回避する能力のために、腸管細胞への全体的には吸収の著しい改善がもたらされた。
【図面の簡単な説明】
【0190】
発明を理解し、実際に発明をどのように実施することができるかを理解するために、好ましい態様を、限定されない実施例において、図面を参照しつつ、以下に記載する。
【0191】
【図1】図1は、ハイドロキシプロピルセルロースを添加前のナノカプセル製剤第29の透過型電子顕微鏡(TEM)写真による画像を示す図である。アセトン溶液の水溶液に対する容積比率は、100:75である。バーは、100nmのサイズを示す。図1Bは、図1Aの拡大である。
【図2】図2Aおよび2Bは、ハイドロキシプロピルメチルセロロースを添加後のナノカプセル製剤第29のTEM写真による画像の図である。水溶液に対するアセトン溶液の容積比は、100:275である。バーは、1000nm(図2Aで)および100nm(図2Bで)を表す。
【図3】図3Aおよび3Bは、ハイドロキシプロピルメチルセルロース溶液を添加しないナノカプセル製剤第30のTEM写真の画像図である。水溶液に対するアセトン溶液の容積比は、100:75である。バーは、1000nmを示し、図3Bは、図3Aの拡大図である。
【図4】図4は、製剤第29のスプレイ乾燥前の粒子分布を示す図である。
【図5】図5A−5B: 図5Aと5Bは、ハイドロキシプロピルメチルセルロース溶液を添加前のナノカプセル製剤第29のSEM写真画像である(バーは、図5Aでは10.μmを、図5Bでは2.0μmを示す。
【図6】図6Aと6Bは、ハイドロキシプロピルメチルセルロース添加したナノカプセル製剤第29をスプレイ乾燥したSEM微細画像である(バーは、図6Aでは20.0μmを、図Bでは10.0μmを表す)。
【図7】図7Aと7Bは、ナノカプセル製剤第29のSEMマイクログラフであって、ハイドロキシプロピルメチルセルロース溶液を添加し、溶解3時間後の画像(バーは、図7Aでは20.0μm、図7Bでは10.0μmである)を示す図である。
【図8】図8A〜8Dは、ナノカプセル製剤第30のSEM画像であって、ハイドロキシプロピルメチルセルロース溶液の添加に続いて、スプレイ乾燥した後(バーは、図8Aは50.0μm、図8Bは20μm、図8Cは10.0μm、図8Dは5.0μm)画像を示す図である。
【図9】図9Aと9Bは、ナノカプセル第30のSEMマイクログラフであって、ハイドロキシプロピルメチルセルロース溶液の添加に続いて、スプレイ乾燥し、溶解して3時間後の画像を表す図である(バーは、図9Aでは10.0μm、図9Bでは5.0μm)。
【図10】図10は、異なるオイドラギット混合物で被覆されたナノカプセルを含むメチルセルロースマイクロスフェアからのDXPLの放出プロフィールを示すグラフである。
【図11】図11は、マイクロカプセル化されオイドラギットがナノカプセルに装着されたナノカプセルにDXPLがマイクロカプセル化されたDXPL、および、マイクロカプセル化された水中油(O/W)型乳剤に装着され、マイクロカプセル化されたDXPLの放出プロフィールを示す図である。
【図12】図12は、異なる製剤のラットへの経口投与後のタクロリムスの全身血中濃度を示すグラフである(平均値±SD、n=6)。
【図13】図13は、異なる製剤のラットへの経口投与後のタクロリムスの全身血中濃度を示す図である(平均値±SD、n=6)。
【図14】図14は、タクロリムスの0.7mg/kg用量の経口吸収を、種々の製剤(プログラフカプセル(商標)市販製品の懸濁液(市販品、Comm.Prod.)、乳剤(Emuls.)、オイドラギットを含まずハイドロキシメチルセルロースを含むマイクロスフェアに包埋された乳剤(乾燥乳剤;Dry Emuls.)、または、ハイドキシメチルセルロースを含まないが、オイドラギットとスプレイ乾燥剤として乳糖を含む(メトセル無し)製剤、のいずれかで行った、タクロリムスの血中レベルを示すグラフである。
【図15】図15は、製剤第29の2つの同一のバッチの経口投与後のタクロリムスの全身血中濃度を示す図であり(平均値±SD、n=6)、バッチ再現性評価を示す図である。
【図16】図16は、市販のプログラフ(商標)をラットに点滴アンプル用の濃度、160μg/kg用量で静脈内投与後の血中タクロリムスレベルを示すグラフである(平均値±SD、n=5)。
【図17】図17は、0.7mg/kgを種々の製剤でのラットにおける経口吸収後の血タクロリムの中レベルを示す図である(平均値±SD、n=3〜6、p>0.05)。
【図18】図18は、製剤第29にマーカとしてクマリン−6を付した強制経口投与30分後のラット十二指腸組織切片蛍光顕微鏡像である。
【図19A】図19Aは、オイドラギットL:RS(75:25)ナノカプセル被覆およびハイドロキシプロピルメチルセルロースマトリックス被覆により調製し、乾燥させた空のナノカプセルの光学顕微鏡写真像の図である。
【図19B】図19Bは、オイドラギットL:RS(75:25)ナノカプセル被覆およびハイドロキシプロピルメチルセルロースマトリックス被覆により調製し、含浸させた空のナノカプセルの光学顕微鏡写真像の図である。
【図19C】図19Cは、オイドラギットL:RS(75:25)ナノカプセル被覆およびハイドロキシプロピルメチルセルロースマトリックス被覆により調製し、含浸させた空のナノカプセルの光学顕微鏡写真像の図である。
【図19D】図19Dは、オイドラギットL:RS(75:25)ナノカプセル被覆およびハイドロキシプロピルメチルセルロースマトリックス被覆により調製し、含浸させた空のナノカプセルの光学顕微鏡写真像の図である。
【図20】図20は、市販製剤(プログラフ(商標))または製剤第29の1mgタクロリムスをミニブタクに経口投与後のタクロリムスの血中レベルを示すグラフである(平均値±SD、n=4)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルを含むマイクロスフェアであって、前記複数のナノカプセルが、非親水性活性剤を運ぶオイルコア(油芯)、および、重合性被覆がされている外殻を具える、ことを特徴とする、マイクロスフェア。
【請求項2】
前記重合性被覆が、水に不溶性、pHが約5.0以上で可溶性であるか、または、その同一物の組み合わせである、少なくとも1つのポリマを含む請求項1のマイクロスフェア。
【請求項3】
前記重合性被覆が、少なくとも2つのポリマの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項2のマイクロスフェア。
【請求項4】
少なくとも2つのポリマの前記組み合わせが、pH約5.0以上で水に可能である少なくとも1つのポリマと水不溶性である少なくとも1つのポリマを含むものである、ことを特徴とする請求項3のマイクロスフェア。
【請求項5】
約pH5.0以上で水に可溶である前記ポリマが、ハイドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMPC)、セルロースアセテートフタレート、カルボキシ−メチルセルロールフタレート、シェラック(shellac)、EudragitL100−55,およびゼイン(zein)から選択されるものである、請求項2〜4のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項6】
水に水溶性である前記ポリマが、エチルセルロース、オイドラギットRS、オイドラギットRS、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、PLAのコポリマおよびPLAとPGAのコポリマ(PLAGA)から選択されることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項7】
ポリマの組み合わせが少なくとも2つのポリマを含むものであって、第一のポリマが水不溶性であり、第二のポリマがpH5.0以上で可溶性であり、水不溶性ポリマとpH5.0以上で可溶性ポリマの比が、5:95〜70:30の間であることを特徴とする、請求項3〜6のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項8】
少なくとも2つのポリマの前記組み合わせが、オイドラギットRL、または、オイドラギットRSから選択された第一のポリマと、オイドラギットL100−55およびハイドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMPC)から選択された第二のポリマの混合物を含むことを特徴とする、請求項3〜7のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項9】
前記ナノカプセルが、約100nmと900nmの間に平均径をもつことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項10】
前記ゲル形成ポリマが次の:水溶性ポリマ、または、水の存在下で膨潤するポリマ、の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項11】
ゲル形成ポリマが修飾されたセルロースであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項12】
前記修飾されたセルロースが、ハイドロキシエチルセルロース、ハイドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ハイドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ハイドロキシプロピルメチルセルロースフタレートまたはアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート、メチルセルロースフタレート、および、微結晶セルロースから選択される、請求項11のマイクロスフェア。
【請求項13】
前記水溶性ポリマが、ハイドロキシプロピルメチルセルロース、低分子量のメチルセルロース、分子量5000以上のポリエチレングリコールから選択される請求項10のマイクロスフェア。
【請求項14】
前記マイクロスフェアが、約5μm〜約500μmの間の平均径をもつことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項15】
前記活性薬剤が、P−gp流出ポンプの基質であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項16】
前記活性薬剤が、脂溶性活性薬剤または両親媒性活性薬剤であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項17】
前記脂溶性活性薬剤が、タクロリムス、シロリムス、ハロファントリン、リトナビール、ロプリナビール、アンプレナビール、サキナビール、カルシトール、ドロナビノール、イソトレチノイン、リスペリドン塩基、バルプロン酸、から選択される薬剤である請求項16のマイクロスフェア。
【請求項18】
前記脂溶性活性薬剤が、デキサメタゾンパルミチン酸エステル、パクリタキセルパルミチン酸エステル、ドセタキセルパルミチン酸エステルから選択されるプロドラッグであることを特徴とする請求項17のマイクロスフェア。
【請求項19】
ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルを含むことを特徴とするマイクロスフェアの調製方法であって、前記複数のナノカプセルが、非親水性活性薬剤を運ぶオイルコア(油芯)と重合性被覆の外殻を含むマイクロスフェアを含み、その方法が、下記:
(a)オイル、水混和性の有機溶媒、溶媒に溶解した非親水性活性薬剤、および前記オイルコア(油芯)を被覆するためのポリマまたはポリマの組み合わせ、を含む有機相を提供し;
(b)前記有機相にゆっくり水を加え、油中水(W/O)型乳剤を得て;
(c)前記油中水(W/O)型乳剤に連続的に水を加えて、その乳剤の相逆転を誘導し、水中油(O/W)型乳剤を得て;
(d)ゲル形成ポリマ、または、ゲル形成ポリマの組み合わせに、前記水中油(O/W)型乳剤を混合し;および、
(e)前記有機相とその水を分離し、マイクロスフェアを得る、
を含む方法。
【請求項20】
前記有機相が、エタノール、メタノール、アセトン、エチルアセテート、イソプロパノールから選択されることを特徴とする請求項19の方法。
【請求項21】
前記重合性被覆が、水不溶性、または、pH約5.0以上で可溶性である少なくとも1つのポリマを含むことを特徴とする請求項19または20の方法。
【請求項22】
前記重合性被覆が、少なくとも2つのポリマの組み合わせを含むことを特徴とする請求項21の方法。
【請求項23】
少なくとも2つのポリマの前記の組み合わせが、約5.0以上のpHで可溶性である少なくとも1つのポリマと水に不溶性である少なくとも1つのポリマを含むことを特徴とする請求項22の方法。
【請求項24】
pH約5.0以上で可溶性である前記ポリマが、ハイドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP55)、セルロースアセテートフタレート、カルボキシ−メチルセルロースフタレート、シェラック、オイドラギットL100、および、ゼインから選択されることを特徴とする請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
水に不溶性である前記ポリマが、エチルセルロース、オイドラギットRS、オイドラギットRL、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、およびPLAとPGAのコポリマ(PLAPGA)から選択されることを特徴とする請求項21〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリマの組み合わせが、2つのポリマを含み、第一のポリマが水に不溶性であり、第二のポリマがpHが約5.0以上で可溶性であり、水に不溶性ポリマとpH約5.0以上で可溶性であるポリマの間の比が5:95〜70:30であることを特徴とする請求項19〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリマの組み合わせが、オイドラギットRLおよびオイドラギットRSから選択された第一のポリマと、オイドラギットL100−55およびハイドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMPC)から選択された第二のポリマの混合物を含むことを特徴とする請求項26の方法。
【請求項28】
前記ポリマの組み合わせが、オイドラギットRSとオイドキットL100−55を約25:75の比率で含むことを特徴とする請求項27の方法。
【請求項29】
前記有機相が、脂溶性賦形剤を含むことを特徴とする請求項19〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記有機相が、脂溶性界面活性剤を含むことを特徴とする請求項19〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記ゲル形成ポリマが、下記、水可溶性ポリマ、または、水の存在下で膨潤するポリマ、の中の少なくとも1つであることを特徴とする、請求項19〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記ゲル形成ポリマが、修飾されたセルロースであることを特徴とする、請求項19〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記修飾されたセルロースが、ハイドロキシエチルセルロース、ハイドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、および、微結晶セルロースから選択されることを特徴とする、請求項26の方法。
【請求項34】
前記活性薬剤が、P−gp流出ポンプの基質であることを特徴とする請求項19〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記活性薬剤が、脂溶性または両親媒性活性薬剤であることを特徴とする請求項19〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記脂溶性活性薬剤が、タクロリムス、シロリムス、ハロファントリン、プロブコール、リトナビール、ロプリナビール、アンプレナビール、サキナビール、カルシトール、ドロナビノール、イソトレチノイン、トレチノイン、リスペリドン塩基、および、バルプロ酸、から選択される薬剤である請求項29の方法。
【請求項37】
前記脂溶性活性薬剤が、デキサメサゾンパルミテート、パクリタキセルパルミテート、およびドセタキセルパルミテートから選択されることを特徴とする請求項29の方法。
【請求項38】
前記有機溶媒と水の分離が、スプレイ乾燥により達成できることを特徴とする請求項19〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルと、非親水性活性薬剤と運ぶオイルコア(油芯)と請求項1〜18のいずれか1項で請求しているような重合性被覆の外殻を含む、マイクロスフェアを含む薬学的組成物。
【請求項40】
ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルと、非親水性活性薬剤を運ぶオイルコア(油芯)と請求項19〜34のいずれか1項に記載の方法で得られた重合性被覆の外殻を含む、マイクロスフェアを含む薬学的組成物。
【請求項41】
経口投与用の剤形である、請求項40の薬学的組成物。
【請求項42】
乾燥された薬学的組成物である、請求項34または35の薬学的組成物。
【請求項43】
前記マイクロスフェアが、水溶性であるゲル形成ポリマを含み、また、そのマイクロスフェアが、腸溶性の被覆キャリアで封入されたことを特徴とする、請求項34〜36のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項44】
前記腸溶性被覆キャリアが腸溶性被覆カプセルであることを特徴とする請求項37の薬学的組成物。
【請求項45】
前記マイクロスフェアから活性薬剤の調節された放出のための請求項34〜38のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項46】
ヒト被験者の体において、脂溶性薬剤のバイオアベイラビリティを増加する方法であって、前記方法が、ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルを含むマイクロスフェアを前記被験者に投与し、そのナノカプセルが脂溶性薬剤を運ぶオイルコア(油芯)と重合性被覆された外殻を含むものである、前記方法。
【請求項47】
活性薬剤の有効な血中レベルの前記処理を必要とする病態状態の被験者を治療する方法であって、マイクロスフェアがゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルを含み、前記ナノカプセルが脂溶性薬剤を運ぶオイルコア(油芯)と重合性被覆された外殻を含む、ことを特徴とする、前記マイクロスフェアを前記被験者に投与することを含む方法。
【請求項48】
マイクロスフェアが請求項1〜18のいずれか1項で定義され、または、前記マイクロスフェアが、請求項20〜22のいずれか1項の方法により入手可能であって、前記マイクロスフェアを前記被験者に経口にて提供することを含む方法である、ことを特徴とする請求項40または41の方法。
【請求項1】
ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルを含むマイクロスフェアであって、前記複数のナノカプセルが、非親水性活性剤を運ぶオイルコア(油芯)、および、重合性被覆がされている外殻を具える、ことを特徴とする、マイクロスフェア。
【請求項2】
前記重合性被覆が、水に不溶性、pHが約5.0以上で可溶性であるか、または、その同一物の組み合わせである、少なくとも1つのポリマを含む請求項1のマイクロスフェア。
【請求項3】
前記重合性被覆が、少なくとも2つのポリマの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項2のマイクロスフェア。
【請求項4】
少なくとも2つのポリマの前記組み合わせが、pH約5.0以上で水に可能である少なくとも1つのポリマと水不溶性である少なくとも1つのポリマを含むものである、ことを特徴とする請求項3のマイクロスフェア。
【請求項5】
約pH5.0以上で水に可溶である前記ポリマが、ハイドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMPC)、セルロースアセテートフタレート、カルボキシ−メチルセルロールフタレート、シェラック(shellac)、EudragitL100−55,およびゼイン(zein)から選択されるものである、請求項2〜4のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項6】
水に水溶性である前記ポリマが、エチルセルロース、オイドラギットRS、オイドラギットRS、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、PLAのコポリマおよびPLAとPGAのコポリマ(PLAGA)から選択されることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項7】
ポリマの組み合わせが少なくとも2つのポリマを含むものであって、第一のポリマが水不溶性であり、第二のポリマがpH5.0以上で可溶性であり、水不溶性ポリマとpH5.0以上で可溶性ポリマの比が、5:95〜70:30の間であることを特徴とする、請求項3〜6のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項8】
少なくとも2つのポリマの前記組み合わせが、オイドラギットRL、または、オイドラギットRSから選択された第一のポリマと、オイドラギットL100−55およびハイドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMPC)から選択された第二のポリマの混合物を含むことを特徴とする、請求項3〜7のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項9】
前記ナノカプセルが、約100nmと900nmの間に平均径をもつことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項10】
前記ゲル形成ポリマが次の:水溶性ポリマ、または、水の存在下で膨潤するポリマ、の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項11】
ゲル形成ポリマが修飾されたセルロースであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項12】
前記修飾されたセルロースが、ハイドロキシエチルセルロース、ハイドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ハイドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ハイドロキシプロピルメチルセルロースフタレートまたはアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート、メチルセルロースフタレート、および、微結晶セルロースから選択される、請求項11のマイクロスフェア。
【請求項13】
前記水溶性ポリマが、ハイドロキシプロピルメチルセルロース、低分子量のメチルセルロース、分子量5000以上のポリエチレングリコールから選択される請求項10のマイクロスフェア。
【請求項14】
前記マイクロスフェアが、約5μm〜約500μmの間の平均径をもつことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項15】
前記活性薬剤が、P−gp流出ポンプの基質であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項16】
前記活性薬剤が、脂溶性活性薬剤または両親媒性活性薬剤であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
【請求項17】
前記脂溶性活性薬剤が、タクロリムス、シロリムス、ハロファントリン、リトナビール、ロプリナビール、アンプレナビール、サキナビール、カルシトール、ドロナビノール、イソトレチノイン、リスペリドン塩基、バルプロン酸、から選択される薬剤である請求項16のマイクロスフェア。
【請求項18】
前記脂溶性活性薬剤が、デキサメタゾンパルミチン酸エステル、パクリタキセルパルミチン酸エステル、ドセタキセルパルミチン酸エステルから選択されるプロドラッグであることを特徴とする請求項17のマイクロスフェア。
【請求項19】
ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルを含むことを特徴とするマイクロスフェアの調製方法であって、前記複数のナノカプセルが、非親水性活性薬剤を運ぶオイルコア(油芯)と重合性被覆の外殻を含むマイクロスフェアを含み、その方法が、下記:
(a)オイル、水混和性の有機溶媒、溶媒に溶解した非親水性活性薬剤、および前記オイルコア(油芯)を被覆するためのポリマまたはポリマの組み合わせ、を含む有機相を提供し;
(b)前記有機相にゆっくり水を加え、油中水(W/O)型乳剤を得て;
(c)前記油中水(W/O)型乳剤に連続的に水を加えて、その乳剤の相逆転を誘導し、水中油(O/W)型乳剤を得て;
(d)ゲル形成ポリマ、または、ゲル形成ポリマの組み合わせに、前記水中油(O/W)型乳剤を混合し;および、
(e)前記有機相とその水を分離し、マイクロスフェアを得る、
を含む方法。
【請求項20】
前記有機相が、エタノール、メタノール、アセトン、エチルアセテート、イソプロパノールから選択されることを特徴とする請求項19の方法。
【請求項21】
前記重合性被覆が、水不溶性、または、pH約5.0以上で可溶性である少なくとも1つのポリマを含むことを特徴とする請求項19または20の方法。
【請求項22】
前記重合性被覆が、少なくとも2つのポリマの組み合わせを含むことを特徴とする請求項21の方法。
【請求項23】
少なくとも2つのポリマの前記の組み合わせが、約5.0以上のpHで可溶性である少なくとも1つのポリマと水に不溶性である少なくとも1つのポリマを含むことを特徴とする請求項22の方法。
【請求項24】
pH約5.0以上で可溶性である前記ポリマが、ハイドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP55)、セルロースアセテートフタレート、カルボキシ−メチルセルロースフタレート、シェラック、オイドラギットL100、および、ゼインから選択されることを特徴とする請求項21〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
水に不溶性である前記ポリマが、エチルセルロース、オイドラギットRS、オイドラギットRL、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、およびPLAとPGAのコポリマ(PLAPGA)から選択されることを特徴とする請求項21〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリマの組み合わせが、2つのポリマを含み、第一のポリマが水に不溶性であり、第二のポリマがpHが約5.0以上で可溶性であり、水に不溶性ポリマとpH約5.0以上で可溶性であるポリマの間の比が5:95〜70:30であることを特徴とする請求項19〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリマの組み合わせが、オイドラギットRLおよびオイドラギットRSから選択された第一のポリマと、オイドラギットL100−55およびハイドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMPC)から選択された第二のポリマの混合物を含むことを特徴とする請求項26の方法。
【請求項28】
前記ポリマの組み合わせが、オイドラギットRSとオイドキットL100−55を約25:75の比率で含むことを特徴とする請求項27の方法。
【請求項29】
前記有機相が、脂溶性賦形剤を含むことを特徴とする請求項19〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記有機相が、脂溶性界面活性剤を含むことを特徴とする請求項19〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記ゲル形成ポリマが、下記、水可溶性ポリマ、または、水の存在下で膨潤するポリマ、の中の少なくとも1つであることを特徴とする、請求項19〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記ゲル形成ポリマが、修飾されたセルロースであることを特徴とする、請求項19〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記修飾されたセルロースが、ハイドロキシエチルセルロース、ハイドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、および、微結晶セルロースから選択されることを特徴とする、請求項26の方法。
【請求項34】
前記活性薬剤が、P−gp流出ポンプの基質であることを特徴とする請求項19〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記活性薬剤が、脂溶性または両親媒性活性薬剤であることを特徴とする請求項19〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記脂溶性活性薬剤が、タクロリムス、シロリムス、ハロファントリン、プロブコール、リトナビール、ロプリナビール、アンプレナビール、サキナビール、カルシトール、ドロナビノール、イソトレチノイン、トレチノイン、リスペリドン塩基、および、バルプロ酸、から選択される薬剤である請求項29の方法。
【請求項37】
前記脂溶性活性薬剤が、デキサメサゾンパルミテート、パクリタキセルパルミテート、およびドセタキセルパルミテートから選択されることを特徴とする請求項29の方法。
【請求項38】
前記有機溶媒と水の分離が、スプレイ乾燥により達成できることを特徴とする請求項19〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルと、非親水性活性薬剤と運ぶオイルコア(油芯)と請求項1〜18のいずれか1項で請求しているような重合性被覆の外殻を含む、マイクロスフェアを含む薬学的組成物。
【請求項40】
ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルと、非親水性活性薬剤を運ぶオイルコア(油芯)と請求項19〜34のいずれか1項に記載の方法で得られた重合性被覆の外殻を含む、マイクロスフェアを含む薬学的組成物。
【請求項41】
経口投与用の剤形である、請求項40の薬学的組成物。
【請求項42】
乾燥された薬学的組成物である、請求項34または35の薬学的組成物。
【請求項43】
前記マイクロスフェアが、水溶性であるゲル形成ポリマを含み、また、そのマイクロスフェアが、腸溶性の被覆キャリアで封入されたことを特徴とする、請求項34〜36のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項44】
前記腸溶性被覆キャリアが腸溶性被覆カプセルであることを特徴とする請求項37の薬学的組成物。
【請求項45】
前記マイクロスフェアから活性薬剤の調節された放出のための請求項34〜38のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項46】
ヒト被験者の体において、脂溶性薬剤のバイオアベイラビリティを増加する方法であって、前記方法が、ゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルを含むマイクロスフェアを前記被験者に投与し、そのナノカプセルが脂溶性薬剤を運ぶオイルコア(油芯)と重合性被覆された外殻を含むものである、前記方法。
【請求項47】
活性薬剤の有効な血中レベルの前記処理を必要とする病態状態の被験者を治療する方法であって、マイクロスフェアがゲル形成ポリマに収容された複数のナノカプセルを含み、前記ナノカプセルが脂溶性薬剤を運ぶオイルコア(油芯)と重合性被覆された外殻を含む、ことを特徴とする、前記マイクロスフェアを前記被験者に投与することを含む方法。
【請求項48】
マイクロスフェアが請求項1〜18のいずれか1項で定義され、または、前記マイクロスフェアが、請求項20〜22のいずれか1項の方法により入手可能であって、前記マイクロスフェアを前記被験者に経口にて提供することを含む方法である、ことを特徴とする請求項40または41の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図15】
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【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20】
【公表番号】特表2009−523843(P2009−523843A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551954(P2008−551954)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【国際出願番号】PCT/IL2007/000084
【国際公開番号】WO2007/083316
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(508132609)イッサム リサーチ ディベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブライ ユニバーシティー オブ エルサレム (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【国際出願番号】PCT/IL2007/000084
【国際公開番号】WO2007/083316
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(508132609)イッサム リサーチ ディベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブライ ユニバーシティー オブ エルサレム (3)
【Fターム(参考)】
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