説明

活性酸素貯蔵物質および燃焼触媒並びにこれらを用いた燃料添加剤、複合燃料、燃焼促進膜形成用塗料、燃焼促進膜、燃焼装置、抗菌剤、部材および紫外線吸収剤

【課題】燃料を完全燃焼させるかまたは燃料の燃焼効率を向上させて、燃料の燃焼に伴って発生する一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)などの発生を抑制することが可能な活性酸素貯蔵物質および燃焼触媒並びにこれらを用いた燃料添加剤、複合燃料、燃焼促進膜形成用塗料、燃焼促進膜、燃焼装置、抗菌剤、部材および紫外線吸収剤を提供する。
【解決手段】本発明の活性酸素貯蔵物質は、還元雰囲気下では酸素イオンを放出し、かつ、酸化雰囲気下では酸素イオンを取り込み、活性酸素を貯蔵するマイエナイト型化合物からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性酸素貯蔵物質および燃焼触媒並びにこれらを用いた燃料添加剤、複合燃料、燃焼促進膜形成用塗料、燃焼促進膜、燃焼装置、抗菌剤、部材および紫外線吸収剤に関し、さらに詳しくは、燃焼場に、活性酸素あるいは酸素を多量に包含または貯蔵する活性酸素貯蔵物質を共存させるかあるいはこの物質で燃焼装置の一部を置き換えることにより、燃料を完全燃焼させるかまたは燃料の燃焼効率を向上させて、燃料の燃焼に伴って発生する一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)などの発生を抑制することが可能な活性酸素貯蔵物質および燃焼触媒並びにこれらを用いた燃料添加剤、複合燃料、燃焼促進膜形成用塗料、燃焼促進膜、燃焼装置、抗菌剤、部材および紫外線吸収剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンは、燃料から動力へのエネルギー変換効率の高い燃焼方式であるが、ディーゼルエンジンから排出される排ガスは、酸素濃度が高く、触媒による窒素酸化物(NOx)の連続浄化が難しく、炭素系微粒子などの粒子状物質(PM)が多く含まれているため、これらを同時に除去することが強く望まれている。
従来、窒素酸化物(NOx)などの有害物質は、金属三元触媒などの活性触媒により還元分解し、粒子状物質(PM)などの化学的に分解することが難しい固体物質は、後付け装置に設けたフィルターにより物理的に除去している。
【0003】
しかしながら、フィルターなどを使用する場合、その定期的な交換や洗浄が必要となり、そのための燃料を余分に消費するという問題がある。また、フィルターの目詰まりに起因する排気圧の変動および上昇に伴う燃費の低下と、定期的なメンテナンスの手間が問題になっている。
また、地球環境保全の観点からも、資源の枯化および温室ガスの排出削減が求められており、自動車ばかりでなくその他の燃焼系においても、燃料の燃焼効率を高めることにより、燃料使用量および二酸化炭素ガス排出量の低減と燃料から最大仕事関数を得ることの両立が求められている。すなわち、燃料の燃焼効率を高めることにより、資源消費の抑制および環境負荷の低減が求められている。
【0004】
そこで、セリアに代表される自動車排ガス浄化用途の三元触媒用の酸素貯蔵物質が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
また、自動車排ガス浄化用途の三元触媒用の酸素貯蔵物質としては、活性酸素を包含した無機化合物が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。この物質は、セリア系の酸素貯蔵物質を凌ぐ効果が、低コストな手段で得られることが報告されている。
【非特許文献1】セラミックス基盤工学研究センター年報(2002).Vol.2、1−8、「セリアと自動車触媒」小澤正邦
【特許文献1】特開2004−99430号公報
【特許文献2】特開2007−83126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セリア系の酸素貯蔵物質は、その酸素貯蔵能が必ずしも満足の得られるものではなく、したがって、ウインドウ幅を十分に拡大することができない。よって、空燃比=14.7の高度な維持制御と、それによる優れた排ガス浄化作用を実現することができ、より高い酸素貯蔵能を有する物質の開発が世界的に求められている。さらに、セリア系あるいはその代替物質として提案されているいずれの物質も、資源的に豊富なものではないため、低コスト化には難点がある。
【0006】
また、活性酸素を包含した無機化合物は、エンジンから排出される排ガスを浄化し、低公害化を図ることはできるものの、燃料の燃焼において仕事関数を上げることができない上に、燃料使用量および二酸化炭素ガス排出量の低減にも寄与することができない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、燃料を完全燃焼させるかまたは燃料の燃焼効率を向上させて、燃料の燃焼に伴って発生する一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)などの発生を抑制することが可能な活性酸素貯蔵物質および燃焼触媒並びにこれらを用いた燃料添加剤、複合燃料、燃焼促進膜形成用塗料、燃焼促進膜、燃焼装置、抗菌剤、部材および紫外線吸収剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、燃焼場に、活性酸素あるいは酸素を多量に包含または貯蔵する活性酸素貯蔵物質を共存させるかあるいはこの物質で燃焼装置の一部を置き換えることにより、燃料を完全燃焼させるかまたは燃料の燃焼効率を向上させて、燃料の燃焼に伴って発生する一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)などの発生を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の活性酸素貯蔵物質は、還元雰囲気下では酸素イオンを放出し、かつ、酸化雰囲気下では酸素イオンを取り込み、活性酸素を貯蔵するマイエナイト型化合物からなることを特徴とする。
【0010】
前記マイエナイト型化合物の平均一次粒子径は0.03μm以上かつ10μm以下であることが好ましい。
前記マイエナイト型化合物の平均二次粒子径は0.1μm以上かつ100μm以下であることが好ましい。
前記マイエナイト型化合物の平均二次粒子径は10μm以上かつ5000μm以下であることが好ましい。
【0011】
前記マイエナイト型化合物の比表面積は20m/g以上かつ2000m/g以下であることが好ましい。
前記マイエナイト型化合物の圧縮強度は0.5g/mm以上かつ1000g/mm以下であることが好ましい。
前記マイエナイト型化合物は気孔径が0.4nm以上かつ3μm以下のミクロおよびメソ孔と、マクロ孔とを有することが好ましい。
【0012】
前記マイエナイト型化合物の形状は球形状または異方形状であることが好ましい。
前記マイエナイト型化合物の酸素貯蔵量は30μmol/g以上かつ2000μmol/g以下であることが好ましい。
前記マイエナイト型化合物はアルミン酸カルシウム化合物であることが好ましい。
前記アルミン酸カルシウム化合物のカルシウムが銀、亜鉛および銅から選択されるいずれか1種または2種以上の金属で置換され、前記カルシウムに対する前記金属のモル比は0.01以上かつ0.1以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の燃焼触媒は、本発明の活性酸素貯蔵物質からなることを特徴とする。
本発明の燃料添加剤は、本発明の燃焼触媒からなることを特徴とする。
本発明の燃料添加剤は、本発明の燃焼触媒を有機溶剤または水に分散してなることを特徴とする。
【0014】
本発明の複合燃料は、本発明の燃料添加剤を燃料に添加してなり、活性酸素貯蔵物質の含有量が10ppm以上かつ3000ppm以下であることを特徴とする。
本発明の燃焼促進膜形成用塗料は、本発明の燃焼触媒を含有してなることを特徴とする。
本発明の燃焼促進膜は、本発明の燃焼促進膜形成用塗料を用いて形成してなることを特徴とする。
【0015】
本発明の燃焼装置は、本発明の燃焼触媒または本発明の燃焼促進膜を配設してなることを特徴とする。
本発明の燃焼装置は、本発明の燃焼触媒または本発明の燃焼促進膜が配設された雰囲気を空気または空気と流体燃料との混合物が通過した後、燃焼室に供給されるようにしたことを特徴とする。
本発明の燃焼装置は、流体燃料を燃焼させるための芯材を備え、該芯材は本発明の燃焼触媒を含むか、あるいは、前記芯材の表面に本発明の燃焼促進膜が設けられたことを特徴とする。
【0016】
本発明の抗菌剤は、本発明の活性酸素貯蔵物質を含有してなることを特徴とする。
本発明の部材は、本発明の活性酸素貯蔵物質を用いて調湿能を付与したことを特徴とする。
本発明の部材は、本発明の活性酸素貯蔵物質を用いて消臭能を付与したことを特徴とする。
本発明の紫外線吸収剤は、本発明の活性酸素貯蔵物質を含有してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来の燃焼装置の排ガス浄化が三元触媒の性能向上を主な検討事項としていることに対し、燃焼室に酸素貯蔵物質が存在することで、活性酸素の働きおよび酸素ストレージ能による燃焼条件の制御が図ることにより、結果として燃焼効率を最大限に引き出すことでの排ガス中のCO・NOx・PMを削減することで、排ガス浄化を行うことができる。あわせてこの酸素貯蔵物質を使用した三元触媒フィルターを併設することも効果的である。さらに、燃焼効率を最大限に引き出すことで、燃料削減(燃費向上)も図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の活性酸素貯蔵物質および燃焼触媒並びにこれらを用いた燃料添加剤、複合燃料、燃焼促進膜形成用塗料、燃焼促進膜、燃焼装置、抗菌剤、部材および紫外線吸収剤最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0019】
「活性酸素貯蔵物質」
本発明の活性酸素貯蔵物質は、還元雰囲気下では酸素イオンを放出し、かつ、酸化雰囲気下では酸素イオンを取り込み、活性酸素を貯蔵するマイエナイト型化合物からなることを特徴とする。
マイエナイト型化合物とは、下記の一般式(1)で表される化合物である。
(Ca12−y)(Al14−xSi)O33+0.5x(但し、MはFe、Ni、Co、Cr、Cuの群から選択された1種または2種以上、0≦x≦4、0≦y≦0) (1)
【0020】
マイエナイト型化合物の平均一次粒子径は0.03μm以上かつ10μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上かつ3.0μm以下である。
マイエナイト型化合物の平均一次粒子径は0.03μm以上かつ10μm以下であることが好ましい理由は、平均一次粒子径が0.03μm未満では、結晶化度が低下しマイエナイト構造を形成できなくなるからであり、一方、平均一次粒子径が10μmを超えると、比表面積が小さくなり活性能力を有効に発揮できなくなるからである。
【0021】
マイエナイト型化合物の平均二次粒子径は0.1μm以上かつ100μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以上かつ30μm以下である。
マイエナイト型化合物の平均二次粒子径は0.1μm以上かつ100μm以下であることが好ましい理由は、平均二次粒子径が0.1μm未満では、本発明の活性酸素貯蔵物質を燃料添加剤として内燃機関に適用する場合、フィルターでの捕捉が難しくなるとともに、捕捉された粒子によりフィルターにおけるガス透過抵抗が大きくなるからであり、一方、平均二次粒子径が100μmを超えると、本発明の活性酸素貯蔵物質を燃料添加剤として内燃機関に適用する場合、燃料への分散安定性が低く、沈降分離が起こりやすくなるからである。
【0022】
また、流動層燃焼方式の固体燃料燃焼炉に、本発明の活性酸素貯蔵物質を燃焼触媒として適用する場合、マイエナイト型化合物の平均二次粒子径は10μm以上かつ5000μm以下であることが好ましく、より好ましくは40μm以上かつ200μm以下である。
マイエナイト型化合物の平均二次粒子径は10μm以上かつ5000μm以下であることが好ましい理由は、平均二次粒子径が10μm未満では、燃焼空気流速を遅く設定しないと、本発明の活性酸素貯蔵物質からなる燃焼触媒粒子が燃焼系外に飛ばされてしまうばかりでなく、流動層の流動化を維持できなくなるからであり、一方、平均二次粒子径が5000μmを超えると、平均粒子径が50μm以上かつ100μm以下の燃料粉体と均一に流動化することができなくなるばかりでなく、燃料粉体との接触頻度も小さくなり触媒効果が得にくくなるからである。
【0023】
マイエナイト型化合物の比表面積は20m/g以上かつ2000m/g以下であることが好ましく、より好ましくは50m/g以上かつ1500m/g以下である。
マイエナイト型化合物の比表面積は20m/g以上かつ2000m/g以下であることが好ましい理由は、比表面積が20m/g未満では、取り込める活性酸素量が少なくなり触媒効果が発揮できないからであり、一方、比表面積は2000m/gを超えると、粒子の機械強度が低下して粒子形状を維持できなくなるからである。
【0024】
マイエナイト型化合物の圧縮強度は0.5g/mm以上かつ1000g/mm以下であることが好ましく、より好ましくは1g/mm以上かつ50g/mm以下である。
マイエナイト型化合物の圧縮強度は0.5g/mm以上かつ1000g/mm以下であることが好ましい理由は、圧縮強度が0.5g/mm未満では、弱い摩擦でも粒子が崩壊するため、本発明の活性酸素貯蔵物質を燃料添加剤として内燃機関に適用する場合、フィルターでの捕捉率が低下するとともに、捕捉された粒子によりフィルターにおけるガス透過抵抗が大きくなるからであり、一方、圧縮強度を1000g/mmよりも大きくするには、粒子を緻密化する必要があり、比表面積が小さくなり、触媒効果が得にくくなるからである。
【0025】
また、マイエナイト型化合物は、気孔径が0.4nm以上かつ3μm以下のミクロおよびメソ孔と、マクロ孔とを有することが好ましい。マイエナイト型化合物の気孔径がこの範囲内であれば、本発明の活性酸素貯蔵物質は、空気中の酸素を取り入れ易く、かつ、活性酸素を放出し易くなるとともに、ガス化した燃料との接触頻度が向上する。
【0026】
マイエナイト型化合物の形状は球形状または異方形状であることが好ましい。マイエナイト型化合物の形状が球形状であれば、流動性に優れ、粒子間ボイドを形成するので、燃料添加剤として好適である。また、マイエナイト型化合物の形状が異方形状であれば、本発明の活性酸素貯蔵物質からなる膜が可撓性に優れたものとなる。
【0027】
マイエナイト型化合物の酸素貯蔵量は30μmol/g以上かつ2000μmol/g以下であることが好ましい。
マイエナイト型化合物の酸素貯蔵量は30μmol/g以上かつ2000μmol/g以下であることが好ましい理由は、酸素貯蔵量が30μmol/g未満では、本発明の活性酸素貯蔵物質を燃料に添加する場合、その添加量が必要以上に多くなり、メンテナンス回数が増えるなど経済的でないからであり、一方、マイエナイト構造のカゴを活性酸素が飽和する量が2000μmol/gであるから構造上、酸素貯蔵量が2000μmol/gを超えることは困難だからである。
【0028】
マイエナイト型化合物はアルミン酸カルシウム化合物、すなわち、アルミン酸カルシウムまたはその誘導体であることが好ましい。
アルミン酸カルシウム化合物は、セリア化合物と比較しても安全性が高く、低コストである。セリア化合物は、日本では大気汚染対象物質に指定されており、むやみに大気中へ排出することができない。また、セリア−ジルコニア系三元触媒は、白金が存在しないと触媒効果が低い。一方、アルミン酸カルシウム化合物は、アルミナセメントの主原料であり資源が豊富な上に安全性も高く、活性酸素を内包することにより、白金を担持させなくても触媒効果が得られる。
【0029】
また、アルミン酸カルシウム化合物のカルシウムは、銀、亜鉛および銅から選択されるいずれか1種または2種以上の金属で置換され、かつ、カルシウムに対するこれらの金属のモル比は0.01以上かつ0.1以下であることが好ましい。
上述のように、アルミン酸カルシウム化合物は、アルミナセメントの主原料であり資源が豊富な上に安全性も高く、活性酸素を内包することにより、白金を担持させなくても触媒効果が得られるが、アルミン酸カルシウム化合物のカルシウムを、銀、亜鉛および銅から選択されるいずれか1種または2種以上の金属で置換することにより、本発明の活性酸素貯蔵物質は、より活性酸素貯蔵性が向上する上に、抗菌性も付与することができる。
【0030】
ここで、このような活性酸素貯蔵物質の製造を説明する。
カルシア源として消石灰、アルミナ源としてアルミナゾル、シリカ源として非晶質シリカ液を混合した後、乾燥することにより、活性酸素貯蔵物質の前駆体を作製し、この前駆体を焼成することにより、活性酸素貯蔵物質が得られる。
【0031】
「燃焼触媒、燃料添加剤」
本発明の活性酸素貯蔵物質は、燃焼触媒として用いることができる。
また、この燃焼触媒を燃料添加剤としても用いることができる。
本発明の活性酸素貯蔵物質からなる燃焼触媒を、燃料に直接添加し、燃料添加剤として用いることにより、燃料の燃焼時に活性酸素貯蔵物質から放出される活性酸素を使用することによって燃上効率を上げることができるとともに、粒子状物質(PM)および一酸化炭素(CO)の発生量を低減することができる。また、活性酸素を利用できるので、燃料に対する空気の比率を小さくしても燃焼効率を上げることができるから、窒素酸化物(NOx)も低減することができる。
【0032】
また、本発明の燃料添加剤は、本発明の燃焼触媒を有機溶剤または水に分散してなるものとすることもできる。
本発明の活性酸素貯蔵物質からなる燃焼触媒を、燃焼触媒を有機溶剤または水に分散した分散液を燃料添加剤として用いることにより、燃料に直接添加する場合よりも、燃料に対して燃焼触媒をより均一に分散させることができるので、燃料の燃焼時に活性酸素貯蔵物質から放出される活性酸素を使用することによって燃上効率を上げることができるとともに、粒子状物質(PM)および一酸化炭素(CO)の発生量を低減することができる。また、活性酸素を利用できるので、燃料に対する空気の比率を小さくしても燃焼効率を上げることができるから、窒素酸化物(NOx)も低減することができる。
【0033】
「複合燃料」
本発明の複合燃料は、本発明の燃料添加剤を燃料に添加してなり、活性酸素貯蔵物質の含有量が10ppm以上かつ3000ppm以下である燃料である。
燃料としては、ガソリン、軽油、石炭などが挙げられる。
活性酸素貯蔵物質の含有量が10ppm以上かつ3000ppm以下であることが好ましい理由は、活性酸素貯蔵物質の含有量が10ppm未満では、燃料の燃焼時に活性酸素貯蔵物質から放出される活性酸素量が少なく、燃上効率を上げる効果も、粒子状物質(PM)および一酸化炭素(CO)の発生量を低減する効果も得られないばかりでなく、燃料に対する空気の比率を小さくすると燃焼効率を上げることができなくなるから、窒素酸化物(NOx)を低減する効果が得られないからであり、一方、活性酸素貯蔵物質の含有量が3000ppmを超えても、燃焼効率が上がらないばかりでなく、フィルターにおける粒子状物質を捕捉するための空隙が目詰まりするまでの時間が短くなり、メンテナンス回数が増えるからである。
【0034】
「燃焼促進膜形成用塗料、燃焼促進膜」
本発明の燃焼促進膜形成用塗料は、本発明の燃焼触媒を含有してなる塗料である。
この燃焼促進膜形成用塗料を用いて、燃焼装置の燃焼室の内壁などに、燃焼促進膜を形成することができる。本発明の燃焼促進膜形成用塗料を用いて、例えば、燃焼装置の燃焼室の内壁に、燃焼促進膜を形成する場合、その燃焼促進膜の厚みは0.1μm以上かつ100μm以下であることが好ましい。
このように燃焼装置の燃焼室の内壁に燃焼促進膜を設けることにより、燃料の燃焼時に燃焼用に取り込まれた空気中の酸素が燃焼促進膜と作用し、酸素の一部が活性酸素に置き換わるので、燃上効率が向上するとともに、粒子状物質(PM)および一酸化炭素(CO)の発生量を低減することができる。また、活性酸素を利用できるので、燃料に対する空気の比率を小さくしても燃焼効率を上げることができるから、窒素酸化物(NOx)も低減することができる。
【0035】
「燃焼装置」
本発明の燃焼装置は、燃焼装置の燃焼室内に、本発明の燃焼触媒または本発明の燃焼促進膜を配設してなる装置である。
燃焼装置としては、バーナー、ランプ、火炉、内燃機関、ジェットエンジン、ガスタービンなどが挙げられる。
このように燃焼装置の燃焼室内に燃焼触媒または燃焼促進膜を設けることにより、燃料の燃焼時に燃焼用に取り込まれた空気中の酸素が燃焼促進膜と作用し、酸素の一部が活性酸素に置き換わるので、燃上効率が向上するとともに、粒子状物質(PM)および一酸化炭素(CO)の発生量を低減することができる。また、活性酸素を利用できるので、燃料に対する空気の比率を小さくしても燃焼効率を上げることができるから、窒素酸化物(NOx)も低減することができる。
【0036】
燃焼装置に燃焼促進膜を形成するには、燃焼装置の燃焼室の内壁などに燃焼促進膜形成用塗料を塗布した後、焼成するか、あるいは、燃焼装置の燃焼室の内壁などに上記の活性酸素貯蔵物質の前駆体を含む塗布液を塗布した後、焼成する。これにより、燃焼促進膜が形成される。
また、燃焼装置に燃焼触媒を設けるには、所定の支持部材に、上記の活性酸素貯蔵物質の前駆体を含む塗布液を塗布するか、あるいは、活性酸素貯蔵物質の前駆体を混合し、焼成して、活性酸素貯蔵物質が複合化された支持部材を得る。得られた支持部材を燃焼装置の所定部分に配置することにより、燃焼装置に燃焼触媒が設けられる。
【0037】
また、本発明の燃焼装置は、本発明の燃焼触媒または本発明の燃焼促進膜が配設された雰囲気を空気または空気と流体燃料との混合物が通過した後、燃焼室に供給されるような構造とすることもできる。
このように燃焼触媒または燃焼促進膜が配設された雰囲気を空気または空気と流体燃料との混合物が通過した後、燃焼室に供給されるような構造とすることにより、燃料の燃焼時に燃焼用に取り込まれた空気中の酸素が燃焼促進膜と作用し、酸素の一部が活性酸素に置き換わるので、燃上効率が向上するとともに、粒子状物質(PM)および一酸化炭素(CO)の発生量を低減することができる。また、活性酸素を利用できるので、燃料に対する空気の比率を小さくしても燃焼効率を上げることができるから、窒素酸化物(NOx)も低減することができる。
【0038】
本発明の燃焼装置は、流体燃料を燃焼させるための芯材を備え、この芯材は本発明の燃焼触媒を含むか、あるいは、この芯材の表面に本発明の燃焼促進膜が設けられた装置である。
このように流体燃料を燃焼させるための芯材を備え、この芯材に燃焼触媒を含有させるか、あるいは、この芯材の表面に燃焼促進膜を設けることにより、燃料の燃焼時に燃焼用に取り込まれた空気中の酸素が燃焼促進膜と作用し、酸素の一部が活性酸素に置き換わるので、燃上効率が向上するとともに、粒子状物質(PM)および一酸化炭素(CO)の発生量を低減することができる。また、活性酸素を利用できるので、燃料に対する空気の比率を小さくしても燃焼効率を上げることができるから、窒素酸化物(NOx)も低減することができる。
【0039】
また、本発明の燃焼装置では、排ガス経路に、本発明の燃焼触媒または本発明の燃焼促進膜を配設して、三元触媒として使用することもできる。

酸化雰囲気では活性酸素を取り込めるため、排ガス経路にこの材料を配置することでNOxから酸素を引き剥くために更に環境にやさしい排ガス処理を施せる。
【0040】
本発明の抗菌剤は、本発明の活性酸素貯蔵物質を含有してなる抗菌剤である。
この抗菌剤は、活性酸素貯蔵物質から放出される活性酸素の強い酸化力と金属イオンにより、強い抗菌性を発揮する。
【0041】
本発明の部材は、本発明の活性酸素貯蔵物質を用いて調湿能を付与した部材である。
この部材は、活性酸素貯蔵物質が有する気孔径が0.4nm以上かつ3μm以下からなる多数の気孔に空気中の水分を吸着し、また、放出することにより、調湿材として機能する。
【0042】
本発明の部材は、本発明の活性酸素貯蔵物質を用いて消臭能を付与した部材である。
この抗菌剤は、活性酸素貯蔵物質から放出される活性酸素の強い酸化力により、空気中の臭い成分を分解するとともに、活性酸素貯蔵物質が有する多数の気孔に空気中の臭い成分を吸着することにより、消臭材として機能する。
【0043】
本発明の紫外線吸収剤は、本発明の活性酸素貯蔵物質を含有してなる紫外線吸収剤である。
この紫外線吸収剤は、活性酸素貯蔵物質が紫外線を吸収するので、紫外線吸収性を発揮する。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
「実施例1」
カルシア源として水酸化カルシウム10gと、アルミナ源として水酸化アルミニウム(アルミナ含有量:20質量%)28.7gと、シリカ源としてコロイダルシリカ(固形分:40質量%)6.7gとを配合し、これらを200mlの水に添加して、室温にて1時間、攪拌、混合した後、凍結乾燥した。
次いで、この混合物を、大気雰囲気中、電気炉により、600℃にて4時間加熱し、平均一次粒子径30nmのCa12Al10Si35の粒子を得た。
得られたCa12Al10Si35の粒子について、分光反射率計により分光反射率を測定した結果、このCa12Al10Si35の粒子は480nm以下の光に対して吸収能があることが確認された。
【0046】
「実施例2」
カルシア源として水酸化カルシウム10gと、アルミナ源として水酸化アルミニウム(アルミナ含有量:20質量%)28.7gと、シリカ源としてコロイダルシリカ(固形分:40質量%)6.7gとを配合し、これらを200mlの水に添加して、室温にて1時間、攪拌、混合した後、凍結乾燥した。
次いで、この混合物をメタノールに分散させたスラリーを調製した。
次いで、このスラリーをスプレードライヤーで顆粒化したものを、大気雰囲気中、電気炉により、600℃にて4時間加熱し、平均二次粒子径5μmのCa12Al10Si35の粒子を得た。
【0047】
「実施例3」
カルシア源として水酸化カルシウム10gと、アルミナ源として水酸化アルミニウム(アルミナ含有量:20質量%)28.7gと、シリカ源としてコロイダルシリカ(固形分:40質量%)6.7gとを配合し、これらを200mlの水に添加して、室温にて1時間、攪拌、混合した後、この混合物に適量の界面活性剤とトルエン400mlを加えて、O/W型エマルジョンを形成し、2時間環流した後、乾燥した。
次いで、この混合物を、大気雰囲気中、電気炉により、600℃にて4時間加熱し、平均一次粒子径3μmのCa12Al10Si35の粒子を得た。
【0048】
「実施例4」
カルシア源として水酸化カルシウム10gと、アルミナ源として水酸化アルミニウム(アルミナ含有量:20質量%)28.7gと、シリカ源としてコロイダルシリカ(固形分:40質量%)6.7gとを配合し、これらを200mlの水に添加して、室温にて1時間、攪拌、混合した後、この混合物に適量の界面活性剤とトルエン400mlを加えて、ラメラ層を形成し、2時間環流した後、乾燥した。
次いで、この混合物を、大気雰囲気中、電気炉により、600℃にて4時間加熱し、平均一次粒子厚み0.1μmのCa12Al10Si35の粒子を得た。
【0049】
「実施例5」
カルシア源として水酸化カルシウム9.0gと、アルミナ源として水酸化アルミニウム(アルミナ含有量:20質量%)28.7gと、シリカ源としてコロイダルシリカ(固形分:40質量%)6.7gと、銀源として金属コロイド(銀含有量:5質量%)とを配合し、これらを200mlの水に添加して、室温にて1時間、攪拌、混合した後、凍結乾燥した。
次いで、この混合物を、大気雰囲気中、電気炉により、600℃にて4時間加熱し、平均一次粒子径30nmのAgCa11Al10Si35の粒子を得た。
得られたAgCa11Al10Si35の粒子を、MIC法で抗菌性評価を実施した結果、最小阻止濃度は60ppmであった。
また、このAgCa11Al10Si35の粒子について、分光反射率計により分光反射率を測定した結果、このAgCa11Al10Si35の粒子は480nm以下の光に対して吸収能があることが確認された。
【0050】
「実施例6」
排気量2L(リットル)、車両総重量1.8tのディーゼルエンジン自動車について、何も添加していない市販の軽油A、実施例3で作製したCa12Al10Si35の粒子を10ppm添加した軽油B、実施例3で作製したCa12Al10Si35の粒子を200ppm添加した軽油Cを用いて、排ガス試験、燃料消費試験、排気煙濃度試験を実施した。
排ガス試験は、13モードにて行った。13モードの排ガス試験では、粒子状物質(PM)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)および燃費について測定した。
この排ガス試験において、粒子状物質(PM)の排出量は、軽油Aでは0.014g/kWh、軽油Bでは0.011g/kWh、軽油Cでは0.010g/kWhであった。
一酸化炭素(CO)の排出量は、軽油Aでは0.60g/kWh、軽油Bでは0.51g/kWh、軽油Cでは0.48g/kWhであった。
窒素酸化物(NOx)の排出量は、軽油Aでは0.24g/kWh、軽油Bでは0.21g/kWh、軽油Cでは0.19g/kWhであった。
燃費は、軽油Aでは9.3km/L、軽油Bでは10.7km/L、軽油Cでは10.8km/Lであった。
【0051】
「実施例7」
石油ファンヒーターについて、何も添加していない市販の灯油α、実施例3で作製したCa12Al10Si35の粒子を10ppm添加した灯油β、実施例3で作製したCa12Al10Si35の粒子を200ppm添加した灯油γを用いて、燃焼試験を実施した。
温度制御プログラムおよびマイクロプロセッサを備える石油ファンヒーターの温度制御システムに記憶されて、温度制御の目標温度となり、単位時間に燃焼させる燃料の量を制御して、室温温度をその設定温度近傍に安定化させた。
暖房を開始する前の室内温度は10℃であり、設定温度を18℃とした。
室内温度が18℃になるまでの時間は、灯油αでは12分、灯油βでは10分、灯油γでは9分であった。
また、このときの温風温度は、灯油αで70.4℃、灯油βで73.2℃、灯油γで73.6℃であった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元雰囲気下では酸素イオンを放出し、かつ、酸化雰囲気下では酸素イオンを取り込み、活性酸素を貯蔵するマイエナイト型化合物からなることを特徴とする活性酸素貯蔵物質。
【請求項2】
前記マイエナイト型化合物の平均一次粒子径は0.03μm以上かつ10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の活性酸素貯蔵物質。
【請求項3】
前記マイエナイト型化合物の平均二次粒子径は0.1μm以上かつ100μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の活性酸素貯蔵物質。
【請求項4】
前記マイエナイト型化合物の平均二次粒子径は10μm以上かつ5000μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の活性酸素貯蔵物質。
【請求項5】
前記マイエナイト型化合物の比表面積は20m/g以上かつ2000m/g以下であることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の活性酸素貯蔵物質。
【請求項6】
前記マイエナイト型化合物の圧縮強度は0.5g/mm以上かつ1000g/mm以下であることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の活性酸素貯蔵物質。
【請求項7】
前記マイエナイト型化合物は気孔径が0.4nm以上かつ3μm以下のミクロおよびメソ孔と、マクロ孔とを有することを特徴とする請求項3ないし6のいずれか1項に記載の活性酸素貯蔵物質。
【請求項8】
前記マイエナイト型化合物の形状は球形状または異方形状であることを特徴とする請求項3ないし6のいずれか1項に記載の活性酸素貯蔵物質。
【請求項9】
前記マイエナイト型化合物の酸素貯蔵量は30μmol/g以上かつ2000μmol/g以下であることを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1項に記載の活性酸素貯蔵物質。
【請求項10】
前記マイエナイト型化合物はアルミン酸カルシウム化合物であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の活性酸素貯蔵物質。
【請求項11】
前記アルミン酸カルシウム化合物のカルシウムが銀、亜鉛および銅から選択されるいずれか1種または2種以上の金属で置換され、前記カルシウムに対する前記金属のモル比は0.01以上かつ0.1以下であることを特徴とする請求項10に記載の活性酸素貯蔵物質。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の活性酸素貯蔵物質からなることを特徴とする燃焼触媒。
【請求項13】
請求項12に記載の燃焼触媒からなることを特徴とする燃料添加剤。
【請求項14】
請求項12に記載の燃焼触媒を有機溶剤または水に分散してなることを特徴とする燃料添加剤。
【請求項15】
請求項13または14に記載の燃料添加剤を燃料に添加してなり、活性酸素貯蔵物質の含有量が10ppm以上かつ3000ppm以下であることを特徴とする複合燃料。
【請求項16】
請求項12に記載の燃焼触媒を含有してなることを特徴とする燃焼促進膜形成用塗料。
【請求項17】
請求項16に記載の燃焼促進膜形成用塗料を用いて形成してなることを特徴とする燃焼促進膜。
【請求項18】
請求項12に記載の燃焼触媒または請求項17に記載の燃焼促進膜を配設してなることを特徴とする燃焼装置。
【請求項19】
請求項12に記載の燃焼触媒または請求項17に記載の燃焼促進膜が配設された雰囲気を空気または空気と流体燃料との混合物が通過した後、燃焼室に供給されるようにしたことを特徴とする燃焼装置。
【請求項20】
流体燃料を燃焼させるための芯材を備え、該芯材は請求項12項に記載の燃焼触媒を含むか、あるいは、前記芯材の表面に請求項17に記載の燃焼促進膜が設けられたことを特徴とする燃焼装置。
【請求項21】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の活性酸素貯蔵物質を含有してなることを特徴とする抗菌剤。
【請求項22】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の活性酸素貯蔵物質を用いて調湿能を付与したことを特徴とする部材。
【請求項23】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の活性酸素貯蔵物質を用いて消臭能を付与したことを特徴とする部材。
【請求項24】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の活性酸素貯蔵物質を含有してなることを特徴とする紫外線吸収剤。



【公開番号】特開2009−208987(P2009−208987A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52444(P2008−52444)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】