説明

流れを補償するポンプと注入器の同期のための装置、システム、および方法

保持時間および再現性に関してクロマトグラフの性能を向上させるため、高圧のHPLC流体流52に低圧の分析物サンプルが注入されることに関係する圧力の乱れを軽減するためのシステム、装置、および方法。好ましい実施形態は、低圧のループが接続されるときに通例である圧力低下を事実上取り除くために、注入の実行を、2成分溶媒送出システム30の能動的な圧力制御に協調させている。再現性を向上させるさらなる利点が、注入の実行、送出ポンプピストンの機械的な位置、ならびに開始およびその後の勾配送出の間に一貫したタイミング関係を強いることによって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本発明は、2004年8月24日に提出された米国特許仮出願第60/604,373号の優先権を主張する。この出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、高速液体クロマトグラフィ(「HPLC」)に関し、さらに詳しくは、分析物(analyte)サンプルをHPLC流体流に注入する複数のポンプを、それらのポンプサイクルおよび注入の切換え時間を同期させることによって制御するための装置、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
科学の研究機関においては、一般に、化合物の分子量、大きさ、電荷、または溶解度などのような基準に基づいて、化合物を分離することが必要とされている。化合物の分離は、しばしば、化合物の特定、精製、および定量化の第1の段階である。クロマトグラフィ、さらに具体的には高速液体クロマトグラフィ(「HPLC」)が、生物工学、生物医学、および生化学の研究のようなさまざまな用途、ならびに製薬、化粧、エネルギー、食品、および環境のような産業において、好ましい分析ツールとなってきている。
【0004】
技術の進歩が明らかになるにつれ、HPLC器具の製造者らは、迅速に製品系列の性能の改善している。実際、或る技術領域またはサブシステムにおける改善が、相互に関連する領域またはサブシステムの進歩を誘発する。例えば、本明細書での参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、Staalへの米国特許第6,147,595号は、新たな技術に基づいて進化するアプローチに関して、いくつかの利点および欠点を検討している。
【0005】
現時点において、サブシステムとしてHPLC器具とともに広く使用されているポンプには、いくつかの種類が存在する。例えば、HPLC器具は、往復ポンプ、シリンジポンプ、および定圧ポンプを取り入れることができ、これらは全て当業者によく知られている。
【0006】
大部分の往復ポンプは、液体チャンバの容積を変化させるために、チャンバ内で素早く往復運動するモータ駆動の小型のプランジャを含む。後方へのストローク時、プランジャが、溶媒を引き込む負圧を生み出し、前方へのストローク時に、往復ポンプのプランジャが、溶媒をカラムへと押し出す。カラムへの一定流量を達成するために、複数のプランジャが使用される。複数のプランジャを、所望の送出流および圧力を達成するために、直列または並列に使用することができる。
【0007】
しかしながら、ポンプのチャンバにて溶媒が圧縮される間に、エネルギーが局所的に吸収され、溶媒の温度が上昇する。この局所的な熱の影響は、溶媒の圧縮性、比熱、例えば器具の所望の動作圧力などのような目標圧力、および溶媒が圧縮される速度に比例する。先端技術のHPLC器具の多くにおいては、圧力が高く、かつ溶媒の圧縮のための時間が限られているため、ポンプチャンバおよび他の場所における局所的な熱の不都合な影響が、さらに生じる。例えば、圧縮によって生み出されて溶媒へと加えられる熱は、通常は、例えばポンプヘッドの周囲温度などのような周囲へと、圧縮された溶媒および周囲の相対的な質量および熱伝導度に応じて決まる速度で放散される。
【0008】
多くの用途および平方インチ当たり数千ポンド(数千「psi」)までの圧力においては、圧縮熱の影響を無視することができる。しかしながら、より高い圧力においては、熱の影響(特には、局所的な熱の影響)が、より知覚できるものになる。さらには、圧縮時の溶媒の温度が、器具での分析の間の送出温度に比べて高くなるため、これらの熱の影響によって、圧縮された溶媒の圧力に誤差が生じる。換言すると、溶媒が目標圧力まで圧縮されると、溶媒の温度が器具の温度との平衡に向かって変化するにつれて、圧力が減少する。結果として、典型的には、圧縮された溶媒が、目標の動作圧力を下回る圧力へと落ち着き、送出される流れに不足が生じる。
【0009】
従来技術のポンプ制御システムは、高圧での溶媒の圧縮の局所的な熱の影響に対処するという必要な能力を欠いている。したがって、技術水準の進歩にもかかわらず、HPLC器具が、安定性および性能を欠いている。結果として、不正確な結果が依然として一般的である。
【0010】
従来技術の欠点を認識し、2004年7月13日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる、「高圧ポンプコントローラ」についての米国特許仮出願第60/587,381号に、高圧直列ポンプが開示されている。クロマトグラフィ用途において使用するための高圧ポンプは、通常は、対応するチャンバで動作する2つのピストンを含む往復型の構成を使用している。流体構成に応じて、並列または直列という2つの主要な構成の種類が存在する。並列構成において、2つのピストンが交互に動作し、一方のピストンが流れを送出し、他方のピストンが溶媒源から新たな溶媒を吸い込み、さらにはその反対である。対照的に、直列構成において、典型的には1つのピストン、すなわちプライマリピストンが、溶媒源から溶媒を吸い込んで、他方のピストンへと溶媒を送出する。他方のピストン、すなわちアキュムレータピストンが、システムへの溶媒の送出の大部分を実行する。要約すると、アキュムレータピストンが、当然ながら新たな溶媒の吸い込みを必要とするときに、プライマリピストンが、高圧でアキュムレータピストンを速やかに再充填する。
【0011】
図1を参照し、当技術分野において広く知られている形式の直列式の往復ポンプを説明する。プライマリポンプアクチュエータ12が、往復するプライマリピストン12bを有するプライマリチャンバ12aを備える。ここで、これらの用語は、特にそのようでないと示さない限りは、本明細書においては、相互に交換可能に使用する。同様に、アキュムレータポンプアクチュエータ14が、往復するアキュムレータピストン14bを有するアキュムレータチャンバ14aを備えるが、やはりこれらの用語は、特にそのようでないと示さない限りは、本明細書において相互に交換可能に使用される。
【0012】
プライマリピストン12bが、例えば負圧を生成することによって溶媒源18から溶媒を吸い込み、溶媒を、アキュムレータポンプアクチュエータ14のアキュムレータチャンバ14aおよびシステム15の両者へと送出する。溶媒が、プライマリポンプアクチュエータ12からアキュムレータポンプアクチュエータ14へと送出された後、往復するアキュムレータピストン14bは、後方へのストロークの終わり、または後方へのストロークの付近にある。往復するアキュムレータピストン14bが、前方へのストロークを開始するとき、往復するアキュムレータピストン14bによって、溶媒がシステム15へと導入される。逆止弁11および13が、流体すなわち溶媒の通過を、一方向についてのみ可能にしている。結果として、プライマリチャンバ12a内の溶媒を、溶媒源18へと引き戻すことはできず、アキュムレータチャンバ14a内の溶媒を、プライマリチャンバ12aへと引き戻すことはできない。それぞれの圧力変換器17および19が、それぞれ各チャンバ12aおよび14aの出口における圧力を測定する。
【0013】
典型的には、アキュムレータピストン14bが、高圧でシステム15へと流れを送出する一方で、プライマリピストン12bが、溶媒源18から新たな溶媒を吸い込み、前方へのストロークを開始する前に、アキュムレータチャンバ14aを再充填するときまで待機する。アキュムレータチャンバ14aが再充填を必要とする時点の直前に、プライマリピストン12bは、溶媒を圧縮するために前方へのストロークを開始する。好ましくは、プライマリピストン12bが、アキュムレータ変換器19によって測定される溶媒圧力、すなわちシステムの圧力と同じ、または実質的に同じ圧力まで溶媒を圧縮し、溶媒をアキュムレータチャンバ14aへと送出するために準備される。このようにして、アキュムレータピストン14bが送出移動(またはストローク)の終わりに近付いたとき、ポンプコントローラ(図示せず)が、溶媒を送出するようプライマリピストン12bに合図し、溶媒を吸い込むようにアキュムレータチャンバ14aに合図する。「移送」として知られるこの動作は、高い圧力および大きな流量で迅速に実行され、プライマリピストン12bが、圧縮した溶媒をアキュムレータチャンバ14aおよびシステム15へと完全に送出する一方で、アキュムレータピストン14bが溶媒で再充填され、通常の送出を再開する準備ができるまで続けられる。
【0014】
移送の動作の間に、アキュムレータピストン14bが、プライマリポンプアクチュエータ12から溶媒を吸い込む間、アキュムレータピストン14bは、当然ながら、溶媒をシステム15へと送出することはできない。結果として、システム15へ送出される流れの中断を避けるために、プライマリピストン12bが、アキュムレータチャンバ14aの再充填に加え、システム15への溶媒の送出を担当することとなる。この作業を達成するため、必然的に、アキュムレータチャンバ14aに圧縮された溶媒を完全に送出するほかに、溶媒の一部がシステム15に送出されるよう、移送が、プライマリピストン12bによって、より速いプランジャ速度で実行される。アキュムレータチャンバ14aおよびシステム15の両方に作用するのに必要な圧力をもたらすため、プライマリピストン12aのプランジャ速度は、アキュムレータピストンの通常の送出速度よりも速くなければならない。これが、より速いプランジャ速度と通常の送出速度との間の差である「超過送出」と称される。
【0015】
移送の動作が完了すると、ポンプコントローラが、通常の流れの送出を再開するようにアキュムレータピストン14bに合図し、新たな溶媒を吸い込むようにプライマリピストン12bに合図する。「ポンプサイクル」として知られるこのサイクルが、アキュムレータピストン14bによって溶媒をシステム15に送出する間、連続的に繰り返される。ポンプサイクルの継続時間は、主としてプライマリピストン12bのストローク容積および送出される流量によって決まる。
【0016】
逆止弁11および13の役割は、容易に理解可能である。プライマリ逆止弁11は、プライマリピストン12bが、溶媒源18から大気圧で溶媒を吸い込むことができるようにするとともに、圧縮および送出の間に、溶媒が溶媒源18へと流れ戻ることを妨げている。同様に、アキュムレータ逆止弁13は、プライマリピストン12bが、溶媒をアキュムレータチャンバ14aと送出できるようにするとともに、アキュムレータピストン14bが、高圧でシステム15へと溶媒を送出するとき、および/またはプライマリピストン12bが、大気圧の新たな溶媒を吸い込むときに、圧縮された溶媒が、プライマリチャンバ12aへと流れ戻ることを妨げる。
【0017】
アキュムレータ圧力変換器19が、システムの圧力を測定し、圧力制御アルゴリズム(図示せず)への圧力入力を提供する。さらにアキュムレータ圧力変換器19は、プライマリピストン12bが、新たな溶媒の圧縮、すなわち前方へのストロークを開始するときに、プライマリピストン12bのための目標動作圧力を提供する。プライマリ圧力変換器17は、圧力が目標動作圧力に達したときに、プライマリピストン12bのストロークを停止させるため、プライマリチャンバ12a内の圧力を測定する。
【0018】
一般に、HPLCにおいては、非加圧または比較的低い加圧のサンプルループを接続することで、システム15に大きな圧力低下が生じる。圧力低下は、分析物サンプルが、サンプルの分散を軽減するために空隙を有するサンプルループの流体流へと吸引されるとき、さらに悪化する。
【0019】
実際、プライマリピストン12bの内部の溶媒が圧縮されるとき、その温度が上昇する。この温度上昇は「断熱昇温」と称され、最終的には、圧縮された溶媒とその周囲との相対的な質量および熱伝導度に応じる速度で、溶媒の周囲およびシステム15へと(プライマリピストン12bが、アキュムレータチャンバ14aおよび/またはシステム15への送出を開始するときに)失われる。しかしながら、この温度の損失は、圧縮された溶媒の圧力に誤差を生む。なぜならば、圧縮時の溶媒の温度および圧力が、溶媒が最終的に有する温度および圧力、すなわちシステム15の動作温度および動作圧力よりも、高いためである。
【0020】
したがって、溶媒が目標圧力、すなわちシステムの動作圧力まで圧縮された後、上昇した溶媒の温度が、システムの動作温度と平衡するよう低下を始めるにつれて、圧力が低下し始める。圧縮された溶媒の圧力が、最終的には意図するシステムの動作圧力を下回る値に落ち着き、プライマリピストン12bが送出、すなわちシステム15への「超過送出」を開始するとき、送出される流れに不足が生じる。この熱の影響は、溶媒の圧縮性、溶媒の比熱、圧縮圧力、および溶媒の圧縮の速度に比例する。
【0021】
すでに述べたように、数千psiまでの圧力においては、この熱の影響を通常は無視することができる。しかしながら、より高い圧力においては、熱の影響がさらに大きくなり得る。さらには、往復ポンプの動作に関係して必要とされる正確なタイミングゆえ、溶媒を大気圧からシステムの動作圧力まで圧縮するための時間が、通常は限られている。したがって、この熱の影響が、大きな流れ送出誤差を生み、2つ以上のポンプの溶媒が、溶媒勾配を形成するために高い圧力で組み合わせられるときに、溶媒組成の誤差を呈する。
【0022】
さらには、異なる溶媒を送出している2つ以上の並列ポンプの出口が、共通の流体ノードへとまとめて接続される場合、ポンプの制御期間、すなわち移送動作の期間が重なり合い、すなわち「衝突」するときに、制御ループが相互作用または振動しないようにすることが必要になる。
【0023】
制御ループを外部の流体の条件から分離するため、分離リストリクタが提案されている。しかしながら、この分離は、両方のポンプの制御ループ間に残る小さな相互作用が、溶媒組成の誤差すなわち「衝突」を生じる高精度の溶媒勾配にとっては、充分でない。
【0024】
これらの誤差を取り除き、衝突を回避するため、2つのポンプが、それらの制御期間の重なり合いを防止するために、2つのポンプそれぞれのポンプサイクルにおける位置についての情報を交換することができる装置、システム、および方法を提供することが望ましい。これにより、制御期間の「衝突」が予想されるときに、より長いポンプサイクルを有するポンプが、他方のポンプの制御期間との重なり合いを回避するためにちょうど充分なだけ、その制御期間を前進させる。この技術は、溶媒勾配に残る組成の誤差を効果的に取り除き、「衝突」を回避する。
【0025】
さらには、より低い圧力の分析物サンプルを高圧のHPLC流体流へと注入することに関係する圧力の乱れを軽減するための制御装置、制御システム、および制御方法を提供することが望ましい。また、保持時間および面積の再現性に関してクロマトグラフィの性能を向上させるための制御装置、制御システム、および制御方法を提供することが望ましい。さらに、分析物サンプルの注入事象、ポンプのプランジャの機械的な位置、ならびに分析物サンプルの送出の開始およびその後の溶媒勾配の間に一貫したタイミング関係を強いることによって、結果の再現性を向上させるための制御装置、制御システム、および方法を提供することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
広い意味では、本発明は、高圧のHPLC流体流に大気圧または大気圧付近の分析物サンプルが注入されることに関係する圧力の乱れを軽減し、保持時間および(溶出ピークの)面積の再現性に関してクロマトグラフの性能を向上させるためのシステム、装置、および方法を提供する。好ましい実施形態は、分析物サンプルを含む低圧のループが接続されるときに、通例である圧力低下を事実上取り除くために、注入の事象を、2成分溶媒送出システムの能動的な圧力制御に協調させている。再現性を向上させるさらなる利益が、注入の事象、送出ポンプピストンの機械的な位置、ならびにその後の勾配送出の開始の間に一貫したタイミング関係を強いることによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0027】
第1の実施形態において、本発明は、第1の圧力の分析物サンプルをより高い第2の圧力の流体流に導入することを制御するための装置を提供し、流体流が、分析物サンプルを分析するためのシステムの流体流であり、導入は、分析物サンプルが前記流体流に導入されるときに生じる予想される圧力低下を最小限にするために、1つの主流ポンプアクチュエータおよび少なくとも1つの非主流ポンプアクチュエータを有する複数のポンプアクチュエータが関係する、強制移送動作の間に生じる。好ましくは、装置が、複数のポンプアクチュエータに第1の信号を供給するための第1の信号発信手段と、所定の注入器の注入前時間遅延および所定のポンプ時間遅延を保存するためのメモリと、第1の信号後の第1の時間量および第1の信号後の第2の時間量を測定するための時間測定手段と、第1の時間量をメモリに保存された所定の注入器の注入前時間遅延と比較し、かつ第2の時間量をメモリに保存された所定のポンプ時間遅延と比較するための比較器と、第2の時間量が所定のポンプ時間遅延に等しいときに、複数のポンプアクチュエータのうちの主流ポンプアクチュエータに第2の信号を供給するための第2の信号発信手段と、第1の時間量が所定の注入器の注入前時間遅延に等しいときに、分析物サンプルを通過させてシステムの流体流へと導入する注入器弁に、第3の信号を供給するための第3の信号発信手段とを備える。さらに好ましくは、第1の信号が、主流ポンプアクチュエータおよび非主流ポンプアクチュエータに同時に第1の強制移送動作を実行させる。またさらに好ましくは、第2の信号が、主流ポンプアクチュエータのみに第2の強制移送動作を実行させる。
【0028】
第1の実施形態の一態様において、装置が、複数の注入動作の間の保持時間の再現性を向上させるため、各ポンプアクチュエータの機械的な位相を、注入シーケンスおよび勾配動作の開始の少なくとも一方に同期させるための手段をさらに備える。
【0029】
第1の実施形態の他の態様において、第2の強制移送動作が、分析物サンプルがシステムの流体流へと導入されるときに生じる注入事象に重なる。さらに好ましくは、装置が、分析物サンプルの導入の間の流体流の乱れを最小限にするため、各強制移送動作の間に能動的な圧力制御を提供するように構成および配置されている。
【0030】
第2の実施形態におい、本発明は、第1の圧力の分析物サンプルをより高い第2の圧力の流体流に導入することを制御するためのソフトウェアを提供し、流体流が、分析物サンプルが流体流に導入されるときに生じる予想される圧力低下を最小限にするために、1つの主流ポンプアクチュエータおよび少なくとも1つの非主流ポンプアクチュエータを有する複数のポンプアクチュエータが関係する強制移送動作の間の、分析物サンプルを分析するためのシステムの流体流である。好ましくは、ソフトウェアが、アルゴリズムを有し、このアルゴリズムが、複数のポンプに第1の信号を供給することと、所定の注入器の注入前時間遅延および所定のポンプ時間遅延をメモリに保存することと、第1の信号後の第1の時間量および第1の信号後の第2の時間量を測定することと、第1の時間量をメモリに保存された所定の注入器の注入前時間遅延と比較し、かつ第2の時間量をメモリに保存された所定のポンプ時間遅延と比較することと、第2の時間量が所定のポンプ時間遅延に等しいときに、複数のポンプアクチュエータのうちの主流ポンプアクチュエータに第2の信号を供給することと、第1の時間量が所定の注入器の注入前時間遅延に等しいときに、分析物サンプルを通過させて分析物サンプルを分析するためのシステムの流体流へと導入する注入器弁に、第3の信号を供給することとを含む。
【0031】
好ましくは、アルゴリズムは、第2の強制移送動作が、分析物サンプルがシステムの流体流へと導入されるときに生じる注入事象に重なることを確実にする。さらに好ましくは、アルゴリズムが、注入事象の間の流体流の乱れを最小限にするため、少なくとも1つの強制移送動作の間に能動的な圧力制御を提供する。またさらに好ましくは、ソフトウェアアルゴリズムが、複数の注入動作の間の保持時間の再現性を向上させるため、各ポンプアクチュエータの機械的な位相を、注入シーケンスおよび勾配動作の開始の少なくとも一方に同期させることをさらに含む。
【0032】
第3の実施形態において、本発明は、分析物サンプルが前記分析物サンプルを分析するためのシステムの流体流に導入されるときに生じる予想される圧力低下を最小限にするために、主流ポンプアクチュエータの能動的な圧力制御の間に、第1の圧力の分析物サンプルの導入を制御するためのシステムを提供する。好ましくは、制御システムが、圧力の測定値を受け取りかつ能動的な圧力制御のための信号を供給するための制御装置と、分析物サンプルを分析するためのシステムの流体流に複数の溶媒の勾配の高圧混合をもたらすための複数のポンプアクチュエータとを備え、複数のポンプアクチュエータそれぞれが、流れ結合装置と流体連通し、主流ポンプアクチュエータが、第1の溶媒源とさらに流体連通し、1つ以上の非主流ポンプアクチュエータが、1つ以上の溶媒源とさらに流体連通し、制御システムがさらに、制御装置に信号を供給するように構成されて注入器に配置された自動サンプラーを備える。
【0033】
好ましくは、主流ポンプアクチュエータおよび1つ以上の非主流ポンプアクチュエータが、チャンバおよびピストンを有し、かつ溶媒源の下流側に配置されて溶媒源と流体連通しているプライマリポンプアクチュエータと、チャンバおよびピストンを有し、かつプライマリポンプアクチュエータの下流側かつ注入器の上流側に、プライマリポンプアクチュエータと直列に配置されたアキュムレータポンプアクチュエータとを含む。
【0034】
第3の実施形態の一態様において、システムが、プライマリポンプアクチュエータと溶媒源との間に配置された逆止弁をさらに含み、逆止弁が、開放位置において、ピストンが、溶媒源から溶媒を吸い込んで前記溶媒をチャンバに保存できるよう、プライマリポンプアクチュエータと溶媒源との間に流体連通を与え、逆止弁が、閉鎖位置において、前記プライマリポンプアクチュエータのピストンが、前記チャンバ内の前記溶媒を圧縮するとき、またはアキュムレータポンプアクチュエータのチャンバに前記溶媒を送出するときに、前記チャンバ内の溶媒が前記溶媒源へと流れ戻ることがないよう、プライマリポンプアクチュエータを溶媒源から分離する。好ましくは、システムが、プライマリポンプアクチュエータとアキュムレータポンプアクチュエータとの間に配置された逆止弁をさらに含み、逆止弁が、開放位置において、プライマリポンプアクチュエータのピストンが、前記アキュムレータポンプアクチュエータの前記チャンバに溶媒を送出できるよう、プライマリポンプアクチュエータのチャンバとアキュムレータポンプアクチュエータのチャンバとの間に流体連通を与え、逆止弁が、閉鎖位置において、前記アキュムレータポンプアクチュエータのピストンが、前記アキュムレータチャンバ内の溶媒を圧縮するとき、または前記溶媒をシステムへと送出するときに、前記アキュムレータポンプアクチュエータの前記チャンバ内の溶媒が、前記プライマリポンプアクチュエータのチャンバへと流れ戻ることがないよう、アキュムレータポンプアクチュエータのチャンバをプライマリポンプアクチュエータから分離する。
【0035】
本発明の他の態様において、システムが、第1の強制移送動作の間に、主流ポンプアクチュエータおよび非主流ポンプアクチュエータのプライマリピストンが、吸引した溶媒を圧縮し、結合されるアキュムレータチャンバを再充填し、さらに圧縮した溶媒を注入器に送出するように構成および配置される。さらに好ましくは、システムが、第2の強制移送動作の間に、主流ポンプアクチュエータのプライマリピストンが、吸引した溶媒を圧縮し、結合されるアキュムレータチャンバを再充填し、さらに圧縮した溶媒を注入器に送出するように構成および配置される。
【0036】
第3の実施形態の他の態様において、能動的な圧力制御が、第2の強制移送動作の間に、主流ポンプアクチュエータの制御期間と非主流ポンプの制御期間との間に重なりが存在しないことを確実にするように、システムが、構成および配置される。好ましくは、第2の強制移送動作の後、動作の間に、主流ポンプアクチュエータの制御期間と非主流ポンプアクチュエータの制御期間との間の重なりが、前記ポンプアクチュエータのうちで他のポンプアクチュエータよりも長いポンプサイクルを有する、前記ポンプアクチュエータの1つのポンプアクチュエータの制御期間を前進させることによって回避される。さらに好ましくは、能動的な圧力制御の間に、主流ポンプアクチュエータが、システム動作の開始状態においてより大きな割り当ての溶媒を供給する。またさらに好ましくは、主流ポンプアクチュエータが、水性溶媒(逆相クロマトグラフィ)、または非主流ポンプアクチュエータによって供給される溶媒よりも薄い溶媒を供給する。
【0037】
第3の実施形態のさらに他の態様において、自動サンプラーが、第1の強制移送動作を開始させるために制御装置に第1の信号を供給する。好ましくは、自動サンプラーが、ポンプの同期を可能にするため、注入器の動作に或る所定の固定の時間期間だけ先立って、制御装置に第1の信号を供給する。さらに好ましくは、自動サンプラーが、第2の強制移送動作を開始させるために制御装置に第2の信号を供給する。またさらに好ましくは、自動サンプラーが、ポンプの同期を可能にするため、注入器の動作に或る所定の固定の時間期間だけ先立って、制御装置に第2の信号を供給する。
【0038】
第4の実施形態において、本発明は、より低い圧力の分析物サンプルが、前記分析物サンプルを分析するためのシステムに導入されるときに生じる予想される圧力低下を最小限にするために、第1の圧力の分析物サンプルを、複数のポンプアクチュエータのうちの1つからのより高い圧力の溶媒流体流へ導入することを制御するためのシステムに、能動的な圧力制御を提供する方法を提供する。好ましくは、本方法は、流体流への導入のために分析物サンプルを準備する工程と、複数のポンプアクチュエータの間の複数のアキュムレータアクチュエータピストンの送出ストロークを同期させることと、続く動作の間に複数のアキュムレータアクチュエータピストンの機械的な位相を同期させることとの少なくとも一方を含む、第1の強制移送動作を開始させる工程と、非主流プライマリポンプアクチュエータが静止状態にある間に、主流ポンプアクチュエータのみへと適用される第2の強制移送動作を開始させる工程と、前記分析物サンプルをシステムの流体流へと導入するために、注入器弁を動作させる工程とを含む。
【0039】
好ましくは、第1の強制移送動作が、注入器弁の動作に第1の所定の固定の時間遅延だけ先立って開始される。さらに好ましくは、第1の強制移送動作が、主流ポンプアクチュエータを非主流ポンプアクチュエータに同期させるため、注入事象に先立って開始される。さらにより好ましくは、第2の強制移送動作を開始させる工程が、システムの流体流に分析物サンプルを導入するために注入器弁を動作させる工程と重なる。
【0040】
第5の実施形態において、本発明は、第1の圧力の分析物サンプルをより高い第2の圧力の流体流に導入することを制御するための装置を提供し、流体流は、分析物サンプルがシステムの流体流へ導入されるときに生じる予想される圧力低下を最小限にするために、1つの主流ポンプアクチュエータおよび少なくとも1つの非主流ポンプアクチュエータを有する複数のポンプアクチュエータが関係する強制移送動作の間の、分析物サンプルを分析するためのシステムの流体流である。好ましくは、装置は、所定の注入器の注入前時間遅延および所定のポンプ時間遅延を保存するためのメモリと、第1の信号の後の第1の時間量および第1の信号の後の第2の時間量を測定するための時間測定手段と、第1の時間量をメモリに保存された所定の注入器の注入前時間遅延と比較し、かつ第2の時間量をメモリに保存された所定のポンプ時間遅延と比較するための比較器と、コントローラとを備える。
【0041】
さらに好ましくは、コントローラが、第1の信号を複数のポンプに供給し、第2の時間量が所定のポンプ時間遅延に等しいときに、複数のポンプのうちの主流ポンプに第2の信号を供給し、第1の時間量が所定の注入器の注入前時間遅延に等しいときに、分析物サンプルを通過させてシステムの流体流へと導入する注入器弁に第3の信号を供給する。
【0042】
第5の実施形態の一態様において、好ましくは、第1の信号が、主流ポンプアクチュエータおよび非主流ポンプアクチュエータに同時に第1の強制移送動作を実行させる。さらに好ましくは、第2の信号が、主流ポンプアクチュエータのみに第2の強制移送動作を実行させる。またさらに好ましくは、装置が、複数の注入動作の間の保持時間の再現性を向上させるため、各ポンプアクチュエータの機械的な位相を、注入シーケンスおよび勾配動作の開始の少なくとも一方に同期させるための手段をさらに備える。
【0043】
第5の実施形態の他の態様において、第2の強制移送動作が、分析物サンプルがシステムの流体流へと導入されるときに生じる注入事象に重なる。好ましくは、装置は、流体流への分析物サンプルの導入の間の流体流の乱れを最小限にするため、各強制移送動作の間に能動的な圧力制御をもたらすように構成および配置されている。
【0044】
本発明を、以下のさらに詳細な説明および添付の図面を参照することによって、さらに理解できるであろう。添付の図面において、同様の部分は同様の参照符号によって参照されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
図2は、HPLCの実施形態、すなわち本発明による2成分溶媒送出システム(「SDS」)30を示している。さらに図5は、自動サンプル注入器37、システムカラム70、および分析物サンプルを分析するためのシステム58に組み合わせられて動作するSDS30の実施形態を示している。
【0046】
名前が示唆しているとおり、SDS30は、例えば第1の溶媒および第2の溶媒である2つ以上の溶媒の高圧混合をもたらして、これらの溶媒を同じ割合でSDS30の流体流52へと導入する複数のポンプアクチュエータ、例えばポンプ32および34を備える。好ましくは、ポンプ32および34のそれぞれの出口が、例えばTセクションである流体結合装置33を介して、同じまたは実質的に同じ機械的位置で接続されている。さらに好ましくは、ポンプ32および34のそれぞれの出口が、システムの遅延容積を最小にするため、自動サンプル注入器37の近傍にある。他の実施形態においては、流体流52への導入に先立ってこの割合の溶媒の混合を増すため、ポンプ32および34を、Tセクション33の代わりにミキサ(図示せず)を介して、SDS30の流体流52へと接続してもよい。
【0047】
SDS30は、複数の高圧溶媒の混合物を自動サンプル注入器37に供給する。自動サンプル注入器37は、その動作状態に応じて、溶媒の混合物をカラム70へと直接伝え、あるいは分析物サンプルを溶媒混合物に導入した後に、溶媒と分析物サンプルとのこの混合物をカラム70に導入する。好ましくは、典型的には大気圧または大気圧付近にある分析物サンプルが、複数の溶媒に組み合わせられる。さらに好ましくは、溶媒および分析物サンプルの圧力が、カラム70のシステム動作圧力に適合するように高められる。次に、図6を参照し、自動サンプル注入器(「注入器」)37、ならびにSDS30とカラム70および検出器58を備えるシステムの残りの部分との動作上の関係について、好ましい実施形態を説明する。
【0048】
好ましくは、注入器37は、当業者にとってよく知られた形式の複数ポート複数位置の回転弁60を備える。さらに好ましくは、注入器37が、6ポート2位置の回転弁60である。ポート62aから62fのそれぞれが、回転弁60、SDS30の流体流52、カラム70、低圧吸い込みシリンジ(または「ピストン」)64、および注入器ニードル66の1つの間の内部および外部の流体連通を提供している。
【0049】
例えば、図6に示されているように、SDS30の流体流52を、ポート62aに流体連通させることができ、吸い込みシリンジ64を、ポート62cに流体連通させることができ、注入器ニードル66を、ポート62dに流体連通させることができ、カラム70を、ポート62fに流体連通させることができ、ポート62bおよび62eを、「サンプルループ」65を提供するために互いに流体連通させることができる。隣接するポート62間の流体連通(「サンプルループ」65のポート62bおよび62eを除く)は、注入器37の動作状態に応じる。
【0050】
自動サンプル注入器37は、2つの状態、すなわち装填状態および注入状態のうちの一方で動作する。装填状態の間、あるいは装填状態の一部として、回転弁60は、ポート62aとポート62fとの間、ポート62bとポート62cとの間、およびポート62dとポート62eとの間に、直接の流体連通を確立するように構成される。これらの接続が、図6に実線63として示されている。したがって、装填状態の間、あるいは装填状態の一部として、SDS30からの高圧の流体流52は、回転弁60、すなわちポート62aおよび62fの間を通って、カラム70へと直接流れることができる。
【0051】
さらに、装填状態の間、あるいは装填状態の一部として、吸い込みシリンジ64および分析物サンプル源68が、サンプルループ65および注入器ニードル66を介して流体連通している。したがって、吸い込みシリンジ64は、サンプル源68、すなわちサンプル薬瓶から、所望の体積の分析物サンプルを吸引することができ、所望の体積の分析物サンプルをサンプルループ65に引き込むことができ、サンプルループ65で、分析物サンプルを、カラム70への送出のためにSDS30の流体流52へと注入するときまで、静止状態および大気圧に保つことができる。注入器ニードル66と回転弁60との間のニードル搬送配管ならびに流体ライン63および67での分析物サンプルの損失を軽減するため、吸引の間に、サンプルループ65に空隙(図示せず)を導入することも可能である。
【0052】
第2の注入状態の間には、回転弁60が、ポート62aとポート62bとの間、ポート62cとポート62dとの間、およびポート62eとポート62fとの間に、直接の流体連通を確立する。これらの接続が、図6に点線または破線67として示されている。したがって、注入状態の間、あるいは注入状態の一部として、加圧されていないサンプルループ65内の静止状態の分析物サンプルが、SDS30の高圧の流体流52および分離カラム70との直接の流体連通に置かれる。吸い込みシリンジ64および注入器ニードル66は、もはやサンプルループ65と連通しておらず、すなわちサンプルループ65から分離されている。
【0053】
大気圧、または大気圧付近でサンプルループ65内に位置している分析物サンプルが、回転弁60内の高圧の流体流52へと速やかに導入される注入段階の間、流体流52の圧力が急激に低下する。結果として、カラム70を通過する駆動流が中断され、勾配の開始におけるクロマトグラフィの性能に大いに悪影響を及ぼす。したがって、圧力の低下を補償し、流れの損失を最小限にするために、サンプルループ65内の流体(および、空隙)が、カラム70の圧力、すなわちシステムの動作圧力に速やかに一致するように好都合に圧縮される。
【0054】
したがって、注入の事象が、低圧のループが接続されたときの通例の圧力低下を事実上取り除くため、例えばSDS30の能動的な圧力制御を使用して、好都合に協調させられる。具体的には、好ましい実施形態においては、これが、注入事象、圧力制御が作用している間の強制的な移送動作、送出ポンプのピストンの機械的な位置、ならびに開始およびその後の勾配送出の間に一貫したタイミング関係を強いることによって、達成される。これが、保持時間および面積の再現性に関してクロマトグラフィの性能を向上させる。
【0055】
SDS30と注入器弁37との間の動作上の関係および相互作用を説明したので、次にSDS30の各要素を説明する。それぞれのポンプ32および34が、直列に構成および配置された、プライマリポンプアクチュエータ12およびアキュムレータポンプアクチュエータ14を備える。プライマリポンプアクチュエータ12は、プライマリチャンバ12aおよび往復するプライマリピストン12bを含む。アキュムレータポンプアクチュエータ14も、アキュムレータチャンバ14aおよび往復するアキュムレータピストン14bを含む。
【0056】
好ましい実施形態においては、それぞれのプライマリポンプアクチュエータ12が、アキュムレータポンプアクチュエータ14の上流側に、溶媒源31に流体連通して配置されている。好ましくは、プライマリチャンバ12aの出口が、アキュムレータチャンバ14aに流体連通している。さらに好ましくは、各アキュムレータポンプアクチュエータ14が、例えばTセクションである流体結合装置33および注入器37を介して、SDS30の流体流と流体連通するように構成および配置されている。
【0057】
プライマリピストン12bが、全ての熱力学的な流体の仕事を実行する。さらに具体的には、各プライマリピストン12bが、溶媒源31から溶媒を吸引し、溶媒を所望の圧力、例えばシステムの動作圧力へと圧縮し、圧縮した溶媒を関係するアキュムレータチャンバ14bへと送出する。プライマリチャンバ12aが、吸入およびオフラインでの圧縮の間に溶媒を保持するための別個の容積を提供している。同様に、アキュムレータチャンバ14aが、プライマリアクチュエータが次のサイクルのための吸入および圧縮を行っているときに、システム(注入器37)への流れの送出の間に圧縮された溶媒を保持するための別個の容積を提供している。
【0058】
好ましくは、当技術分野においてよく知られている形式の受動式の逆止弁11が、プライマリチャンバ12aと溶媒源31との間に配置されている。閉鎖位置において、プライマリ逆止弁11が、プライマリチャンバ12aを溶媒源31から分離し、溶剤が、チャンバ12aにおいて圧縮されプライマリピストン12bによって送出されるときに、溶媒が溶媒源31へと流れ戻ることがないようにする。開放位置においては、プライマリ逆止弁11は、プライマリチャンバ12bの取り込み容積を再充填する目的のため、溶媒源31とプライマリチャンバ12aとの間に流体接続を提供する。
【0059】
さらに好ましくは、当技術分野においてよく知られている形式の圧力変換器17が、プライマリチャンバ12aの出口または出口付近に配置されている。圧力変換器17は、プライマリチャンバ12a内に収容されて圧縮された溶媒の圧力を測定し、この圧力測定値を信号の形態で制御装置(図示せず)へと伝達する。
【0060】
同様に、好ましい実施形態においては、受動式の逆止弁13が、アキュムレータチャンバ14aの入口に配置されている。閉鎖位置において、アキュムレータ逆止弁13は、アキュムレータチャンバ14aをプライマリチャンバ12aから分離し、溶媒が、アキュムレータピストン14bによってSDS30の流体流へと送出されるときに、アキュムレータチャンバ14a内の圧縮された溶媒が、プライマリチャンバ12aへと流れ戻ることがないようにしている。開放位置において、アキュムレータ逆止弁13は、アキュムレータチャンバ14bの取り込み容積の再充填およびカラム70への溶媒の「超過送出」の目的のため、プライマリチャンバ12a、アキュムレータチャンバ14a、およびカラム70の間の流体接続を提供する。
【0061】
圧力変換器19が、アキュムレータチャンバ14aの出口に配置されている。圧力変換器19は、アキュムレータチャンバ14a内の送出溶媒の圧力を測定し、この圧力をコントローラ(図示せず)へと伝達する。好ましくは、圧力変換器19によって測定された圧力が、SDS30の動作圧力を表している。
【0062】
次に、ポンプ32および34のタイミングおよび動作を制御するための手段を説明する。各ポンプ32および34のプライマリピストン12bおよびアキュムレータピストン14bが、例えばプロセッサ、マイクロプロセッサ(図示せず)、などのような制御装置または「コントローラ」によって、独立に制御される。好ましくは、ピストン12bおよび14bの制御が、圧力変換器17および19から制御装置が受け取った圧力測定値、ならびにこの目的のために用意された制御アルゴリズム(図示せず)を使用して実行される。
【0063】
ポンプ32および34についてのさらなる記載、ならびにポンプの構成要素がどのように相互関係するのかについての説明を、以下のタイミング図の各段階についての検討において提示する。さらに、SDS30の流体流へと導入される溶媒について能動的な圧力制御をもたらし、アキュムレータピストン14bを同期させかつポンプ32および34を同期させ、圧縮された溶媒の「強制移送」を提供し、さらには分析物サンプルをSDS30の流体流へと導入、すなわち注入する好ましい方法についても、以下で説明する。
【0064】
本発明によって対処されるいくつかの課題として、典型的には移送の動作の間に生じる温度の上昇(断熱昇温として知られている)、および結果として生じるの圧力の低下(「カスピング(cusping)」と称される)が挙げられる。さらに具体的には、温度の上昇が、圧縮された溶媒の圧力に誤差を生む。なぜならば、圧縮時に溶媒の温度が、溶媒が最終的に有する送出温度、すなわちシステム15の動作温度よりも、高いためである。さらに、プライマリピストン12bの圧力の増加に起因して得られた温度は、その後にプライマリピストン12bが溶媒の送出を開始すると、溶媒の周囲およびSDS30へと損失される。この損失の速度は、特に、圧縮された溶媒および周囲の相対質量および熱伝導度に応じて決まる。
【0065】
さらに、溶媒が所望の送出圧力、すなわちシステムの動作圧力まで圧縮された後、圧縮に起因して高くなった温度が、システムの動作温度との平衡を開始するため、移送の動作に先立って、得られた圧力が低下を始める。圧縮された溶媒の圧力が、最終的には、意図するシステムの動作圧力を下回る値へと落ち着き、これが、プライマリピストン12bが、SDS30の流体流への送出を開始するときに、送出される流れに不足を生じさせる。好ましくは、このカスピング効果を修正するため、移送の動作の間の能動的な圧力制御が提供される。さらに好ましくは、能動的な圧力制御が、移送の動作に先立ついくらかの時間の重なり合いを伴い、移送の動作の後の短い期間にわたって提供される。これは、注入事象、送出ポンプのピストンの機械的な位置、すなわち強制的な移送の動作、ならびに開始およびその後の勾配送出の間に、一貫したタイミング関係を強いることによって、達成される。
【0066】
次に、図3を参照して、2つ以上のポンプ32および34からのSDS30の流体流へのサンプルの注入に関して、ポンプの移送を強制することによって能動的な圧力制御を提供するための種々の段階を説明する。図3は、ポンプ32および34ならびに注入器37の同期についてのタイミング図を示している。さらに具体的には、この図は、「主流」ポンプおよび「非主流」ポンプについてのタイミング関係を示しており、各ポンプ32および34、または複数のポンプが、どちらかの役割を果たすことができる。
【0067】
本明細書の目的において、「主流ポンプ」とは、勾配法の開始状態において溶媒のより大きな割合の割り当てを送出するポンプを指す。通例では、「主流ポンプ」が、より薄い溶媒または水性溶媒を供給する。対照的に、「非主流ポンプ」とは、勾配法の開始状態においてより濃い溶媒のより少ない割合の割り当てを送出するポンプを指す。好ましくは、「主流ポンプ」のみが、分析物サンプルの注入事象の間の強制移送に能動的に参加する。
【0068】
各注入の動作の開始において、SDS30が、サンプル−動作勾配法の初期条件によって指示される流量および溶媒組成に設定される。システムコントローラが、両方のポンプ32および34の初期の流量を検査し、どちらのポンプが「主流ポンプ」としての役割を果たすかを選択する。
【0069】
この理由は、高圧混合の性質、および能動的な圧力制御の間に溶媒の「超過送出」に伴って生じる注入圧力の乱れの補正ゆえである。しかしながら、1つのポンプの「超過送出」は、分析物サンプルの注入の間に分析物サンプルの出発組成を乱すために、繰り返し可能なHPLCの性能に有害な影響を有する可能性がある。本発明の発明者らは、ポンプのうちの一方、すなわち「主流ポンプ」のみが、注入事象の間に能動的な圧力制御を提供する場合に、より少ない組成の乱れが確実にされることを見い出した。これは、両方のポンプ32および34への移送を注入の事象の前に強制し、注入の事象の間に移送を「主流ポンプ」のみに強制することによって、2つの圧力コントローラの間に生じ得る相互作用を回避する。
【0070】
或る点Aにおいて、注入器37の自動サンプラーが、分析物サンプルをSDS30の流体流への導入、すなわち注入のために準備し、サンプルループが装填されて分析物サンプルの注入が切迫している段階に達している。自動サンプラーがこの段階に達したとき、自動サンプラーは、「開始実行」信号をSDS制御装置へと自動的に送信する。この信号が、制御装置に、両方のポンプ32および34における一連の強制移送を実行させる。好ましくは、ポンプの同期を可能にするために、自動サンプラーが、或る所定の固定の時間期間(すなわち、「注入器の注入前時間遅延」)だけ、注入器弁37の動作(点F)に先立って、「開始実行」信号を送信する。さらに好ましくは、注入器の注入前時間遅延が、SDS30が適切なポンプ32または34(すなわち、好ましくは「主流」ポンプ)を、段階7における注入の時点において能動的な圧力制御とするための一連の動作(さらに詳しく後述される段階2から段階7)を実行できるよう、充分に大きい。
【0071】
SDS30の制御装置は、自動サンプラーから「開始実行」信号を受信したとき、「主流」ポンプおよび「非主流」ポンプの両方に、初期の(すなわち第1の)強制移送動作を開始するように合図する。好ましくは、この工程が、両方のポンプ32および34を一貫した、すなわち一様な状態にし、さらには分析物サンプル注入事象の間の両方のポンプ32および34の機械的位相を同期させるという、本発明の主たる目的の1つを達成する。
【0072】
具体的には、強制移送の始めにおいて、「主流」および「非主流」のポンプに関し、段階2において、プライマリピストン12bが、現在のポンプサイクルの吸入段階が完了するとすぐに、圧縮または前方へのストロークの段階を実行する。圧縮によって逆止弁11の閉鎖が生じ、プライマリチャンバ12aが溶媒源31から分離される。プライマリ逆止弁11が閉じた状態で、制御装置は、各ポンプ32または34のプライマリピストン12bに、プライマリチャンバ12aに収容(静止状態)された溶媒の圧縮を実行させる。
【0073】
点Bに位置する段階2の完了において、プライマリピストン12bは、圧縮ストロークを完了しており、プライマリチャンバ12aの溶媒を圧縮している。各ポンプ32および34のプライマリチャンバ12aの溶媒が、段階2の終わりにおいて指定または所望の圧縮のレベルに達すると、溶媒の圧力およびプライマリピストン12bの追加の力が、アクチュエータ逆止弁13を開放させ、アキュムレータチャンバ14aとプライマリチャンバ12aとの間の流体連通を確立する。結果として、段階3すなわち移送動作において、各ポンプ32および34のプライマリピストン12bが、アキュムレータチャンバ14aを再充填するために圧縮された溶媒を移送または送出し、アキュムレータピストン14bが圧縮された溶媒を吸い込む。
【0074】
段階3での前方へのストロークの間、プライマリピストン12bは、実際には、アキュムレータピストン14bが吸い込みを行っている間に、SDS30の流体流52への定常的な流れの送出を維持するため、アキュムレータチャンバ14aへと圧縮された溶媒を「超過送出」する。強制移送は、典型的には、アキュムレータチャンバ14aの中身が完全に空になるよりも前に生じるため、段階3においては、アキュムレータピストン14bが、それらの通常のストローク容量を一杯にするために必要な量の圧縮された溶媒のみを吸入するように、正味のプライマリ送出変位に対して調節が行われる。
【0075】
点Cでの段階3の終わりで、移送が完了し、すなわちプライマリピストン12bが、送出またはアキュムレータチャンバ14aの再充填を完了している。同時または実質的に同時に、プライマリピストン12bが移送動作を完了したときに、アキュムレータピストン14bが、次のポンプサイクルについて設定された流量で、アキュムレータチャンバ14aからSDS30の流体流52への圧縮された溶媒の送出を開始する。
【0076】
次いで、点Cにおいて、制御装置は、段階4のプライマリの吸入を開始する。プライマリピストン12bが溶媒源31からの吸入を開始すると、プライマリチャンバ12aに捕らえられている残余の圧縮された溶媒が、プライマリピストン12bが徐々に引き戻されるにつれて減圧され始める。この初期の減圧によって、アキュムレータ逆止弁13が自動的に閉じ、ふたたびアキュムレータチャンバ14aをプライマリチャンバ12aから分離する。プライマリチャンバ12a内の減圧圧力が大気圧に達するとき、プライマリ逆止弁11が自動的に開き、プライマリチャンバ12aと溶媒源31との間の流体連通を確立する。このように、点Cの直後に段階4において、プライマリピストン12bが、ポンプ32および34のプライマリチャンバ12aへの新たな溶剤の吸引または吸入を開始する。
【0077】
段階4は、プライマリピストン12bが、吸入ストロークを完了したときに完了する。これが、両方のポンプ32および34を、それらのポンプサイクルの次の圧縮および移送段階を待つ段階5へと移行させる。
【0078】
この段階において、SDSコントローラは、「主流」ポンプのみについて第2の強制移送動作を開始させる。具体的には、「実行開始」信号の開始および受信の後に、あらかじめ指定された時間遅延、すなわち図3の「ポンプ時間遅延」が経過したとき、コントローラは、時刻Dにおいて「主流」ポンプへの第2の強制移送を開始させる。自動サンプラー37ならびにポンプ32および34の2つの時間遅延の間の時間関係は、「主流」ポンプの第2の強制移送(段階7)が、注入器スケジュールの注入事象Fに確実に重なるように固定される。結果として、「主流」ポンプのみが、能動的な圧力制御が組み合わせられた第2の強制移送の動作を通じて、注入器圧力の乱れを打ち消し、あるいは注入器圧力の乱れに対抗するために、必要な補正の流れを供給する。
【0079】
第2の強制移送動作の段階6、段階7、および段階8は、協働して「能動圧力制御」段階を定めているが、それぞれ第1の強制移送動作の段階2、段階3、および段階4と事実上同一である。しかしながら、段階6、段階7、および段階8は、能動的な圧力制御が「主流」ポンプにのみ適用されている点で、段階2、段階3、および段階4と相違している。さらに、SDSコントローラが、第2の強制移送の能動圧力制御の時間間隔を、注入動作Fの適切な包含、すなわち重なり合いを確実にするために延長する。実際、図3に示されているように、「非主流」ポンプ(図の下方)は、注入事象Fを遙かに超えるまで移送を必要としない。結果として、「非主流」ポンプに関連する移送およびポンプの同期は、分析物サンプルの注入手順よりも前に完了しており、勾配組成の乱れを防止している。
【0080】
能動的な圧力制御段階の間の或る点Fにおいて、自動サンプラーは、注入器弁37に、サンプルループ65からの分析物サンプルをSDS30の流体流へと導入、すなわち注入するように合図する。好ましくは、能動的な圧力制御の段階の継続時間が、注入の事象に重なり合う。このやり方で、第2の強制移送動作の或る部分が、注入器弁37の切り替わりと一致する一方で、サンプルループ65内の圧縮されていない分析物サンプルが、SDS30の流体流52へと導入されることによって生じる圧力低下の乱れの間に、圧力制御が有効である。したがって、能動的な圧力制御が、「主流」ポンプのみによって提供され、流体流52に組成の乱れが最小限にされる。
【0081】
図4Aおよび図4Bを参照し、能動的な圧力制御を提供する方法、およびSDSの流体流に複数の溶媒の複数の強制移送を提供する方法を、次に説明する。手順は、サンプル注入器または自動サンプラーが、SDSの流体流への導入、すなわち注入のための分析物サンプルを用意するときに始まる(ステップ1)。この時点で、SDSが、溶媒の流れおよび動作方法において指定された初期の開始条件で組成物を送出することによって動作するための準備ができている。
【0082】
好ましい実施形態においては、自動サンプラーの分析物サンプルが、SDSの流体流への導入準備の状態に達し、そのような導入が切迫している。この時点で、注入器弁は装填状態にある。より好ましくは、分析物サンプルが流体流への速やかな注入のために準備された状態で、自動サンプラーが、次の動作手順を開始するように制御装置に通知する(ステップ2)。
【0083】
本発明の一態様においては、自動サンプラーが、分析物サンプルをSDSの流体流へと導入する注入器弁の動作に第1の所望の固定の時間遅延だけ先立って起動信号を送信する。さらに好ましくは、自動サンプラーが、SDSがSDSの適切なポンプを注入の時点、すなわち注入の瞬間に能動的な圧力制御とするための一連の動作を実行するため、時間について充分に先立って起動信号を送信する。注入器弁を動作させる前に起動信号を送信することで、ポンプの同期が可能になる。
【0084】
これに応じて、制御装置が、「主流」ポンプおよび「非主流」ポンプに、第1の強制移送動作を開始するように合図する(ステップ3)。好ましい実施形態においては、両方のポンプが、両方のポンプによる溶媒の流れの送出を同期させるための一貫した状態に達する。具体的には、各ポンプのプライマリピストンが、まずは対応するピストンチャンバに収容されている溶媒を圧縮し(ステップ3A)、次いでプライマリポンプが、圧縮された溶媒を対応するアキュムレータチャンバに送出し(ステップ3B)、さらには圧縮された溶媒をシステムに送出する(ステップ3C)。
【0085】
ひとたびそれぞれのアキュムレータピストンの容量に達すると、アキュムレータピストンが、圧縮された溶媒をアキュムレータチャンバから注入器へと送出する(ステップ4A)。同時に、プライマリピストンは、対応するアキュムレータチャンバおよび注入器への溶媒の送出を止め、溶媒源からのさらなる溶媒の吸入を開始する(ステップ4B)。ひとたびプライマリチャンバまたはプライマリポンプの容量に達すると、プライマリピストンは、静止状態となり(ステップ5)、すなわちプライマリピストンは、吸入も、圧縮された溶媒の送出も行わない。
【0086】
好ましくは、所定の期間、すなわち「ポンプ時間遅延」の後、制御装置は、「主流」ポンプに第2の強制移送動作、すなわち「能動的な圧力制御」を開始するように合図し(ステップ6)、ポンプ32および34が、動作勾配を開始する(ステップ6A)。具体的には、「主流」ポンプのプライマリピストンが、プライマリチャンバ内の溶媒を圧縮し(ステップ6B)、圧縮した溶媒を同時に「主流」ポンプのアキュムレータチャンバおよびシステムに送出する(ステップ6Cおよび6D)。
【0087】
ひとたび「主流」ポンプのアキュムレータチャンバの容量に達すると、「主流」ポンプのアキュムレータピストンが、圧縮された溶媒を注入器に送出する(ステップ7A)。同時に、「主流」ポンプのプライマリピストンは、アキュムレータチャンバおよび注入器への溶媒の送出を止め、溶媒源からのさらなる溶媒の吸入を開始する(ステップ7B)。
【0088】
ひとたび「主流」ポンプのプライマリピストンの容量に達すると、プライマリピストンは、再び静止状態へと戻り(ステップ8)、すなわちプライマリピストンは、吸入も、溶媒の送出も行わない。この第2の強制移送動作の全体を通じて、「非主流ポンプ」のプライマリアクチュエータは、静止状態のままである。
【0089】
第2の強制移送動作の間の或る時点において、すなわちさらに詳しくは、「実行開始」信号から所定の期間(すなわち、「注入器注入前時間遅延」)の後に、制御装置が、注入器弁を動作させ、サンプルループ内に捕らえられている分析物サンプルを、SDSの流体流へと導入する(ステップ9)。好ましくは、2つの固定の時間遅延のタイミングは、第2の強制移送動作の圧力制御窓が、分析物サンプルの注入事象に重なるようにされている。さらの好ましくは、SDSが、「主流」ポンプに対し、圧力制御窓を、サンプル導入の注入の乱れを適切に包含するために必要な最小限の継続時間について延長するように指令する。結果として、「非主流」ポンプが、注入窓の前に移送動作および圧力制御を実行し、これによって溶媒勾配組成の乱れが防止される。好ましくは、注入ステップは、続くステップ6Bからステップ8の能動圧力制御のプロセスのサイクルの完了に先立って行われる。注入器が動作(ステップ9)させられた後、「主流」ポンプのプライマリチャンバは、ステップ7Bの再充填を必要とし、その後に通常のポンプサイクルが再開される。
【0090】
あくまで説明を目的として、注入ステップ(ステップ9)を、一般的にはステップ6Bおよびステップ8の間、すなわち2つの強制移送動作に続く「能動圧力制御」ステップのサイクルにおいて生じるものとして示した。しかしながら、本発明を、これらのステップの或る特定の位置においてのみ生じるステップ9の注入ステップに限定して理解または解釈してはならない。要件は、「能動圧力制御」が、注入事象の間に生じることである。
【0091】
本発明を、好ましい実施形態に関して説明したが、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本発明に対して種々の変更および/または変形が可能であることを、当業者であれば容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】従来技術による高圧直列ポンプの代表的な実施形態である。
【図2】本発明による2成分溶媒送出システム(「SDS」)の実例となる実施形態である。
【図3】本発明によるポンプ−注入器の同期タイミング図の実例となる実施形態である。
【図4A】第1の圧力の分析物サンプルのより高い圧力の溶媒流体流への導入を制御するためのシステムに、能動的な圧力制御を提供する方法の実例となる実施形態を示すフロー図である。
【図4B】第1の圧力の分析物サンプルのより高い圧力の溶媒流体流への導入を制御するためのシステムに、能動的な圧力制御を提供する方法の実例となる実施形態を示すフロー図である。
【図5】本発明によるSDSおよび自動サンプラー注入器の実例となる実施形態である。
【図6】本発明による自動サンプラー注入器の実例となる実施形態である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の圧力の分析物サンプルをより高い第2の圧力の流体流に導入することを制御するための装置であって、流体流が、分析物サンプルを分析するためのシステムの流体流であり、導入は、分析物サンプルが前記流体流へ導入されるときに生じる予想される圧力低下を最小限にするために、1つの主流ポンプアクチュエータおよび少なくとも1つの非主流ポンプアクチュエータを有する複数のポンプアクチュエータが関係する、強制移送動作の間に生じ、前記装置が、
複数のポンプアクチュエータに第1の信号を供給するための第1の信号発信手段と、
所定の注入器の注入前時間遅延および所定のポンプ時間遅延を保存するためのメモリと、
第1の信号後の第1の時間量および第1の信号後の第2の時間量を測定するための時間測定手段と、
第1の時間量をメモリに保存された所定の注入器の注入前時間遅延と比較し、かつ第2の時間量をメモリに保存された所定のポンプ時間遅延と比較するための比較器と、
第2の時間量が所定のポンプ時間遅延に等しいときに、複数のポンプアクチュエータのうちの主流ポンプアクチュエータに第2の信号を供給するための第2の信号発信手段と、
第1の時間量が所定の注入器の注入前時間遅延に等しいときに、分析物サンプルを通過させてシステムの流体流へと導入する注入器弁に、第3の信号を供給するための第3の信号発信手段とを備え、
第1の信号が、主流ポンプアクチュエータおよび非主流ポンプアクチュエータに同時に第1の強制移送動作を実行させ、第2の信号が、主流ポンプアクチュエータのみに第2の強制移送動作を実行させる、装置。
【請求項2】
装置が、プロセッサ、マイクロプロセッサ、あるいはプロセッサ上またはマイクロプロセッサ上で実行できるソフトウェアアルゴリズムである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
複数の注入動作の間の保持時間の再現性を向上させるため、各ポンプアクチュエータの機械的な位相を、注入シーケンスおよび勾配動作の開始の少なくとも一方に同期させるための手段をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
第2の強制移送動作が、分析物サンプルが分析物サンプルを分析するためのシステムの流体流に導入されるときに生じる注入事象に重なる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
装置が、分析物サンプルの導入の間の流体流の乱れを最小限にするため、各強制移送動作の間に能動的な圧力制御を提供するように構成および配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
第1の圧力の分析物サンプルをより高い第2の圧力の流体流に導入することを制御するためのソフトウェアであって、流体流が、分析物サンプルが流体流に導入されるときに生じる予想される圧力低下を最小限にするために、1つの主流ポンプアクチュエータおよび少なくとも1つの非主流ポンプアクチュエータを有する複数のポンプアクチュエータが関係する強制移送動作の間の、分析物サンプルを分析するためのシステムの流体流であり、ソフトウェアが、アルゴリズムを有し、該アルゴリズムが、
複数のポンプに第1の信号を供給することと、
所定の注入器の注入前時間遅延および所定のポンプ時間遅延をメモリに保存することと、
第1の信号の後の第1の時間量および第1の信号の後の第2の時間量を測定することと、
第1の時間量をメモリに保存された所定の注入器の注入前時間遅延と比較し、かつ第2の時間量をメモリに保存された所定のポンプ時間遅延と比較することと、
第2の時間量が所定のポンプ時間遅延に等しいときに、複数のポンプアクチュエータのうちの主流ポンプアクチュエータに第2の信号を供給することと、
第1の時間量が所定の注入器の注入前時間遅延に等しいときに、分析物サンプルを通過させてシステムの流体流へと導入する注入器弁に、第3の信号を供給することとを含む、ソフトウェア。
【請求項7】
アルゴリズムが、第2の強制移送動作が、分析物サンプルがシステムの流体流に導入されるときに生じる注入事象に重なることを確実にする、請求項6に記載のソフトウェア。
【請求項8】
アルゴリズムが、注入事象の間の流体流の乱れを最小限にするため、少なくとも1つの強制移送動作の間に能動的な圧力制御を提供する、請求項6に記載のソフトウェア。
【請求項9】
ソフトウェアアルゴリズムが、複数の注入動作の間の保持時間の再現性を向上させるため、各ポンプアクチュエータの機械的な位相を、注入シーケンスおよび勾配動作の開始の少なくとも一方に同期させることをさらに含む、請求項6に記載のソフトウェア。
【請求項10】
分析物サンプルが前記分析物サンプルを分析するためのシステムの第2のより高い圧力の流体流に導入されるときに生じる予想される圧力低下を最小限にするために、主流ポンプアクチュエータの能動的な圧力制御の間に、第1の圧力の分析物サンプルの導入を制御するための制御システムであって、前記制御システムが、
圧力の測定値を受け取りかつ能動的な圧力制御のための信号を供給するための制御装置と、
システムの流体流に複数の溶媒の勾配の高圧混合をもたらすための複数のポンプアクチュエータとを備え、複数のポンプアクチュエータそれぞれが、流れ結合装置と流体連通し、主流ポンプアクチュエータが、第1の溶媒源とさらに流体連通し、1つ以上の非主流ポンプアクチュエータが、1つ以上の溶媒源とさらに流体連通し、前記制御システムがさらに、
制御装置に信号を供給するように構成されて注入器に配置された自動サンプラーを備える、制御システム。
【請求項11】
主流ポンプアクチュエータおよび1つ以上の非主流ポンプアクチュエータのそれぞれが、
チャンバおよびピストンを有し、かつ溶媒源の下流側に配置されて溶媒源と流体連通しているプライマリポンプアクチュエータと、
チャンバおよびピストンを有し、かつプライマリポンプアクチュエータの下流側および注入器の上流側に、プライマリポンプアクチュエータと直列に配置されたアキュムレータポンプアクチュエータとを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
システムが、プライマリポンプアクチュエータと溶媒源との間に配置された逆止弁をさらに含み、
逆止弁が、開放位置において、ピストンが、溶媒源から溶媒を吸い込んで前記溶媒をチャンバに保存できるよう、プライマリポンプアクチュエータと溶媒源との間に流体連通を与え、
逆止弁が、閉鎖位置において、前記プライマリポンプアクチュエータのピストンが、前記チャンバ内の前記溶媒を圧縮するとき、またはアキュムレータポンプアクチュエータのチャンバへと前記溶媒を送出するときに、前記チャンバ内の溶媒が前記溶媒源へと流れ戻ることがないよう、プライマリポンプアクチュエータを溶媒源から分離する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
システムが、プライマリポンプアクチュエータとアキュムレータポンプアクチュエータとの間に配置された逆止弁をさらに含み、
逆止弁が、開放位置において、プライマリポンプアクチュエータのピストンが、前記アキュムレータポンプアクチュエータのチャンバに溶媒を送出できるよう、プライマリポンプアクチュエータのチャンバとアキュムレータポンプアクチュエータのチャンバとの間に流体連通を与え、
逆止弁が、閉鎖位置において、前記アキュムレータポンプアクチュエータのピストンが前記溶媒をシステムへと送出するときに、前記アキュムレータポンプアクチュエータの前記チャンバ内の溶媒が、前記プライマリポンプアクチュエータのチャンバへと流れ戻ることがないよう、アキュムレータポンプアクチュエータのチャンバをプライマリポンプアクチュエータから分離する、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
1つ以上のチャンバが、圧力測定値を装置コントローラに提供するために、チャンバの出口に配置された圧力変換器を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
流れ結合装置が、Tセクションである、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
流れ結合装置が、2つ以上の溶媒を流体流への導入に先立って混合できるミキサである、請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
第1の強制移送動作の間に、主流ポンプアクチュエータおよび非主流ポンプアクチュエータのプライマリピストンが、吸引した溶媒を圧縮し、結合されるアキュムレータチャンバを再充填し、さらに圧縮した溶媒を注入器に送出するように、システムが、構成および配置される、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
第2の強制移送動作の間に、主流ポンプアクチュエータのプライマリピストンが、吸引した溶媒を圧縮し、結合されるアキュムレータチャンバを再充填し、さらに圧縮した溶媒を注入器に送出するように、システムが、構成および配置される、請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
能動的な圧力制御が、第2の強制移送動作の間に、主流ポンプアクチュエータの制御期間と非主流ポンプの制御期間との間に重なりが存在しないことを確実にするように、システムが、構成および配置される、請求項11に記載のシステム。
【請求項20】
主流ポンプアクチュエータの制御期間と非主流ポンプアクチュエータの制御期間との間の重なりが、前記ポンプアクチュエータのうちで他のポンプアクチュエータよりも長いポンプサイクルを有する、前記ポンプアクチュエータの1つのポンプアクチュエータの制御期間を前進させることによって回避される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
能動的な圧力制御の間に、主流ポンプアクチュエータが、システム動作の開始状態においてより大きな割り当ての溶媒を供給する、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
主流ポンプアクチュエータが、水性溶媒、または非主流ポンプアクチュエータによって供給される溶媒よりも薄い溶媒を供給する、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
自動サンプラーが、第1の強制移送動作を開始させるために制御装置に第1の信号を供給する、請求項17に記載のシステム。
【請求項24】
自動サンプラーが、ポンプの同期を可能にするため、注入器の動作に或る所定の固定の時間期間だけ先立って、制御装置に第1の信号を供給する、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
所定の固定の時間期間が、主流ポンプアクチュエータおよび非主流ポンプアクチュエータの一方に、流体流への分析物サンプルの導入と同時の能動的な圧力制御をもたらすのに充分に長い、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
自動サンプラーが、第2の強制移送動作を開始させるために制御装置に第2の信号を供給する、請求項18に記載のシステム。
【請求項27】
自動サンプラーが、ポンプの同期を可能にするため、注入器の動作に或る所定の固定の時間期間だけ先立って、制御装置に第2の信号を供給する、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
所定の固定の時間期間が、主流ポンプアクチュエータに、流体流への分析物サンプルの導入と同時の能動的な圧力制御をもたらすのに充分に長い、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記分析物サンプルを分析するためのシステムが、高速液体クロマトグラフィ装置である、請求項18に記載のシステム。
【請求項30】
より低い圧力の分析物サンプルが、前記分析物サンプルを分析するためのシステムに導入されるときに生じる予想される圧力低下を最小限にするために、第1の圧力の分析物サンプルを、複数のポンプアクチュエータのうちの1つからの第2のより高い圧力の溶媒流体流に導入することを制御するためのシステムに、能動的な圧力制御を提供する方法であって、前記方法が、
流体流への導入のために分析物サンプルを準備する工程と、
複数のポンプアクチュエータの間の複数のアキュムレータアクチュエータピストンの送出ストロークを同期させることと、複数のアキュムレータアクチュエータピストンの機械的な位相を同期させることとのうちの少なくとも一方を含む、第1の強制移送動作を開始させる工程と、
非主流プライマリポンプアクチュエータが静止状態にある間に、主流ポンプアクチュエータのみへと適用される第2の強制移送動作を開始させる工程と、
前記分析物サンプルをシステムの流体流へと導入するために、注入器弁を動作させる工程とを含む、方法。
【請求項31】
第1の強制移送動作が、注入器弁の動作に第1の所定の固定の時間遅延だけ先立って開始される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
第1の強制移送動作が、主流ポンプアクチュエータを非主流ポンプアクチュエータと同期させるため、注入工程に先立って開始される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
第2の強制移送動作を開始させる工程が、システムの流体流に分析物サンプルを導入するために注入器弁を動作させる工程と重なる、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
第1の圧力の分析物サンプルをより高い第2の圧力の流体流に導入することを制御するための装置であって、流体流が、分析物サンプルがシステムの流体流に導入されるときに生じる予想される圧力低下を最小限にするために、1つの主流ポンプアクチュエータおよび少なくとも1つの非主流ポンプアクチュエータを有する複数のポンプアクチュエータが関係する強制移送動作の間の、分析物サンプルを分析するためのシステムの流体流であり、前記装置が、
所定の注入器の注入前時間遅延および所定のポンプ時間遅延を保存するためのメモリと、
第1の信号の後の第1の時間量および第1の信号の後の第2の時間量を測定するための時間測定手段と、
第1の時間量をメモリに保存された所定の注入器の注入前時間遅延と比較し、かつ第2の時間量をメモリに保存された所定のポンプ時間遅延と比較するための比較器と、
コントローラとを備え、該コントローラが、第1の信号を複数のポンプに供給し、第2の時間量が所定のポンプ時間遅延に等しいときに、複数のポンプのうちの主流ポンプに第2の信号を供給し、かつ第1の時間量が所定の注入器の注入前時間遅延に等しいときに、分析物サンプルを通過させてシステムの流体流へと導入する注入器弁に第3の信号を供給する、装置。
【請求項35】
第1の信号が、主流ポンプアクチュエータおよび非主流ポンプアクチュエータに同時に第1の強制移送動作を実行させ、第2の信号が、主流ポンプアクチュエータのみに第2の強制移送動作を実行させる、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
装置が、複数の注入動作の間の保持時間の再現性を向上させるため、各ポンプアクチュエータの機械的な位相を、注入シーケンスおよび勾配動作の開始の少なくとも一方に同期させるための手段をさらに備える、請求項34に記載の装置。
【請求項37】
第2の強制移送動作が、分析物サンプルがシステムの流体流へと導入されるときに生じる注入事象に重なる、請求項34に記載の装置。
【請求項38】
前記流体流への分析物サンプルの導入の間の流体流の乱れを最小限にするため、各強制移送動作の間に能動的な圧力制御をもたらすように、装置が構成および配置される、請求項34に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−511002(P2008−511002A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530003(P2007−530003)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/029734
【国際公開番号】WO2006/023828
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(504438255)ウオーターズ・インベストメンツ・リミテツド (80)
【Fターム(参考)】