説明

流体の噴射装置

本発明は、弁(41)を形成する一端を、弁(41)が流体を排出するための開口(13)を塞ぐ閉止位置と、弁(41)が開口(13)から制御された距離に位置される所定の開口位置との間で、移動させることが可能な突き出しニードル(40)を有する流体の噴射装置(1)に関する。本発明は、閉止位置と開口位置との間の弁(41)の移動は、突き出しニードル(40)の固有の伸びによってもたらされることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の噴射装置に関する。
【0002】
本発明は、燃焼室の中への燃料の噴射に関する自動車の領域において特に有利に応用される。
【背景技術】
【0003】
引き込みニードル型と呼ばれる、第1のタイプの噴射装置が、従来技術において知られている。この従来の形態においては、軸方向に移動可能なニードルが各噴射器に設けられる。ニードルの運動は、ニードルの先端が流体を噴射するための開口を塞ぐ閉止位置と、ニードルの先端が開口から離されて位置する開口位置との間で行われる。
【0004】
また、開口は、ニードルの先端と密着するための弁座の下流に設けられた、単一の穴または複数の穴によって構成することができることに着目するべきである。後者の形態は、多数の穴の存在は液体の排出を乱す性質があり、その結果、液滴を増大させるので、液体の噴射に特に適合することは明らかである。
【0005】
いずれにしても、引き込みニードル型の噴射器は、準オール オア ナッシングの原理に従って動作するという問題がある。換言すれば、ニードルが圧力を受けた流体の最大量を通過させるにしても、開口から漏れることを妨げるにしても、引き込みニードル型の噴射器は、準オール オア ナッシングの原理に従って動作する。従って、このような装置の調整パラメータは、流体の圧力と開口の流通部によって、本質的に制限される。
【0006】
ところで実際には、また特に流体が液体である場合には、引き込みニードル型の噴射器は、ほとんど常に一定の圧力で動作する。また、液滴のサイズを調整するようになるのは、穴の直径である。しかし、問題の穴の寸法は製造時に決定されるので、液滴の大きさを僅かでも変更することは特に困難であることは明らかである。たとえニードルを極めて急速に開閉したとしても、そのときに生成される乱れは、拡散される僅かな小さい液滴を実際に生成するためにも極めて不十分である。
【0007】
従って、引き込みニードル型の噴射装置によって、噴射される流体の量を制御することは確かに可能であるが、液滴の大きさと拡散を精確に制御することは明らかに不可能である。周知のように、このことは効率の観点における重要な問題を構成する。
【0008】
制御するべき他の1つのパラメータは、噴射可能な最小量に関する。ところで、引き込みニードル型の噴射器の大部分において、流体の過大な圧力は、ニードルを閉止位置から開口位置へ動かす役割をする。従って、装置の応答時間は、問題の圧力の大きさに依存する。実際には、引き込みニードルの開口に要する時間を減少させることを希望するときには、流体の圧力を上昇させる必要があるが、そのとき噴射最小量が増加される。このことは、このタイプの装置に関する新たな問題を構成する。
【0009】
突き出しニードル型と呼ばれる、従来技術の第2のタイプの噴射装置は、上記の問題を解消することを可能にする。ここでは、各噴射器に、その先端が、流体を排出する開口を形成する弁座に密着して係合する弁を形成する軸から構成される、一種のバルブが設けられる。先の場合と同様に、このように構成された弁軸は、弁が開口を塞ぐ閉止位置と、弁が開口から離されて位置する開口位置との間を、軸方向に移動可能に設けられる。
【0010】
このような弁軸の運動は、一般に、ピエゾ−電気アクチュエータや、磁歪アクチュエータを使用することによって実現される。具体的には、これらは、噴射器の弁軸を、活性材料、すなわち、それぞれ電流や磁場を受けて変形、特に伸びることが可能な材料から有利に構成される付属部品と連動させることからなる。対応する物理的な原理と、このようなアクチュエータの応用形態は充分に知られているので、ここではこれ以上は説明しない。このような組立体は、一般に、それぞれ電気的または磁気的に活性な材料の励起が、付属部品の伸び、及びその結果として、組立体の中における弁軸の移動を引き起こすように構成されることのみを単に述べておく。組立体の中において弁軸の移動が引き起こされたときには、弁軸の先端は弁座と接触状態になく、その結果、圧力を受けている流体は開口から排出される。
【0011】
引き込みニードル型の噴射器に対し、突き出しニードル型の噴射器は、弁の高さに、変化するリフトを設けることができるという利点を呈する。従がって、一定の圧力において、時間的に変化する流通部を有することができる。例えばピエゾ−電気アクチュエータの場合には、付属部品に加えられる電圧に応じて、活性材料は所定量伸びる。対応する付属部品の伸びは、付属部品の伸びに比例した弁軸の変位と、それに比例した弁のリフトをもたらす。
【0012】
しかしながら、突き出しニードル型の噴射装置は、特有の問題点を有する。
ピエゾ−電気材料から成る付属部品を用いると、千分の1のオーダの変形、すなわちピエゾ−電気材料の積層体10mmについて約10μmの変位を得ることができる。このことは、従来の弁の変位50μmを得ることを望むなら、付属部品は極めて長くなければならないことを意味する。従って、これは、例えば30mmの積層体に対して、3〜3.5μFの、極めて大きな容量を操作する必要があることを意味する。その結果、スイッチング時間の短縮を望むなら、高電圧のエレクトロニクスが必要になる。
【0013】
また、突き出しニードル型の噴射器を利用する場合には、付属部品の長さが大きいことが、重量の観点における問題を構成する。弁軸と、付属部品と、弾性戻し手段から構成される組立体は、従って、比較的大きな移動質量を構成する。その結果もたらされる大きな慣性は、ピエゾ−電気材料の反応をさらに遅らせるようになる。
【0014】
従って、主に、操作しなければならない大きな容量と、移動させる大きな重量のために、突き出しニードル型で、ピエゾ−電気アクチュエータ付きの噴射装置は、反応時間の点で本質的に制限されることは明らかである。
【0015】
磁歪材料から成る付属部品の場合には、本質的な問題は、主なハンデキャップを構成する、装置の慣性である。移動の際に駆動される移動質量は、多くの場合長い軸及び軸と一体化された弁とが組み合わされた質量に該当するので、従来技術の噴射装置に対して極めて大きいことを無視することはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の対象によって、解決するべき技術的課題は、弁を形成する一端を、上記弁が流体を排出するための開口を塞ぐ閉止位置と、上記弁が上記開口から、選定された距離に位置される所定の開口位置との間で、各瞬間に、制御された仕方で移動させることが可能な突き出しニードルを有する流体の噴射装置であって、特に著しく改良された反応時間、すなわち著しく減少された弁の開閉時間と、可変の開口容量を提供することによって従来技術の問題を回避することを可能にする流体の噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
提起された技術的課題を解決するための手段は、本発明によれば、閉止位置と開口位置との間の弁の移動は、突き出しニードルの固有の伸びによってもたらされる。
【0018】
従来技術の噴射装置とは異なって、突き出しニードルは、ここでは全体的に移動させるのではなく、結果的にその自由端、すなわち弁を有する端の移動をもたらすように、縦方向に変形させる。この組立体は、弁の移動が、先に定義した閉止位置と開口位置との間で行われるように構成され、この移動は各瞬間に制御される。
【発明の効果】
【0019】
上記のように定義された本発明の流体の噴射装置は、移動質量の著しい減少と、それに比例した装置の質量の減少を可能にするという利点を呈する。このタイプの噴射装置の反応時間は、その結果著しく改良される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、以下の説明によって明らかとなる特徴にも関する。これらの特徴は、個別に、またはそれらの技術的に可能なあらゆる組み合わせに従って考察されるべきである。
【0021】
非限定的な例として与えられ、添付図面を参照して行うこの説明によって、本発明がどのように実施されるかが理解されるであろう。これらの図において:
図1は、本発明の第1の実施の形態による流体の噴射装置を示し;
図2は、図1に示す第1の実施の形態の変形を構成し;
図3は、本発明の第2の実施の形態による流体の噴射装置を示す。
【0022】
明確にするために、同じ部品には同一の参照符号を指定した。同じく、本発明の理解に不可欠な部品のみを、縮尺に配慮することなく、模式図的に示した。
【0023】
図1は、自動車のエンジンの燃焼室の中へ、液体燃料を配分するための噴射装置1を示す。
【0024】
例としてのみ選ばれたこの実施の特有の形態において、この噴射装置1は、主として3部分から成る。図1において、最初に、その中に軸方向に第1の穴11が設けられた、第1の収納部10が存在する。次に、第2の穴21が設けられた、第2の収納部20が存在する。これらの2つの収納部、すなわち第1の収納部10と第2の収納部20は、その適用が可逆性の接合ナット30を介して、互いに封止状態に連結される。この組立体は、第1の穴11と第2の穴21が連通するように組み立てられる。このようにして、第1の収納部10と第2の収納部20の組立体が、噴射装置1のボディを形成する。最後に、第1の穴11と第2の穴21によって範囲を定められた連続空間の中に位置する、突き出しニードル40が存在する。
【0025】
図1に示すように、突き出しニードル40の先端は、第1の収納部10の下部に設けられ、液体を排出するための開口13の範囲を定める、横穴12と係合可能なように適合化されている。より詳細には、弁41を形成する突き出しニードル40の先端は、一方では、滑動して接触することによって横穴12の内側端に設けられた案内面14と、他方では、封止状態に接触することによって横穴12の外側端に設けられた弁座15と、係合することができる。いずれにしても、弁41は、弁41が開口13を塞ぐ閉止位置と、弁41が弁座15から離れて位置する開口位置との間を移動可能である。
【0026】
また図1に示すように、第2の穴21の上部は、圧力を受けた液体の再循環導管51が設けられたキャップ50と、胴着き嵌合によって係合する。
【0027】
さらに、高圧液体の導通系統60が存在する。導通系統60は、収納部20の側壁の厚みの中に縦方向に設けられ、第2の収納部20と第1の収納部10の境界面を噴射装置1の軸に直交して延びる中間導管62と連通する、主導管61を有する。中間導管62の環状の形状と配置は、圧力を受けた液体を、第1の収納部10の側壁の厚みの中に一様に配分され、環状の穴64へ通じる、複数の第2導管63a、63bの中へ配分することを可能にする。この環状の穴64は、従来から弁41と横穴12の間に設けられ、周知の形状、配置、及び機能を呈するので、ここではこれ以上説明しない。この組立体は、噴射装置1の内部の第1の収納部10と第2の収納部20の、第1の穴と第2の穴21の方向への、液体の連続した循環を、従来技術のように、生成及び調整することができるように適合化されることを、単に明確に述べておく。
【0028】
本発明の目的に従って、弁41の閉止位置と開口位置との間の移動は、突き出しニードル40に特有の伸びによってここでは有利に引き起こされる。
【0029】
本発明の特徴によれば、突き出しニードル40に特有の伸びは、弁41の直近、すなわち弁41に直近して位置する突き出しニードル40の部分の高さまで行われる。
【0030】
変形が弁にできるだけ近接した箇所で行われることは、理想的には弁41の質量に限定することが望ましい、移動させるべき可動質量を最小限にするために、特に有利である。このような形態においては、結果的に、弁の開閉時間の相当な部分が減らされる。
【0031】
本発明の他の1つの特徴によれば、突き出しニードル40は、中空の軸42を有する。中空の軸42には、弁41を形成する中実の先端43と、慣性質量を形成する後部部材46に連結された、活性部材45から構成された内部バー44が設けられる。また、この内部バー44は、活性部材45を介して中実の先端43に連結される方向へのみ、中空の軸42の内部を軸方向に可動に装着される。従って、活性部材45は軸方向の伸びについては可動であり、一方、後部部材46は軸方向の移動に関して可動である。活性部材45と後部部材46の連結領域は、境界47によって標示されている。
【0032】
本明細書の全体において、活性部材45は、特にピエゾ−電気部材または磁歪部材を意味する。しかしながら、物理的な量の変化の影響を受けて寸法を変更することが可能なあらゆる材料を適用できることは勿論である。
【0033】
特に有利に、中空の軸42は、縦方向の可逆的な変形を可能にするのに適した、機械的弾性を有する。
用いられる機械的弾性は、中空の軸42を構成する材料に固有の弾性的な性質と、例えば透かし細工のような中空の軸42の特殊な構造との、少なくとも一方によってもたらすことができる。この特性は、中空の軸42に、活性部材45が励起を受けなくなる直後に、閉止過程中の初期状態への復帰を助長する一方で、弁41の開口過程中の変形に対する最小の抵抗を付与することを可能にする。変形の際に蓄えられた弾性エネルギが復帰の際に放出されることによって、従来技術の噴射装置の場合におけるような、特有の戻し手段を省略することが有利に可能になる。
【0034】
本発明の他の1つの特徴によれば、後部部材46は、突き出しニードル40を構成する他の部材の密度及び剛性よりも著しく高い、密度及び剛性を有する。
このことは、それぞれ、一方では文字通りの慣性質量を構成することを可能にするために、他方では活性部材45の伸びの作用で変形することがないようにするために、後部部材46が特に高密度で硬い材料から作られることを意味する。
【0035】
図1に示すように、噴射装置1に、さらに、内部バー44を、中空の軸42の中実の先端43へ常時押し付けることができる、プレストレス手段70が設けられる。
勿論この目的は、活性部材45の、特に伸びと反応性の能力を最適化するために、活性部材45を間接的に圧縮することにある。活性部材45がピエゾ−電気部材から構成されても、磁歪部材から構成されても、効率的に利用することを可能にするためには、このような活性部材45に強制的にプレストレスを与えるべきであることが知られている。実際、このような種類の材料は、圧縮よりも伸びに耐えることのほうが難しく、従って、いかなる瞬間においても伸びの状態にあることを回避するために、活性部材45が伸び過程にあるときにも、圧縮力を活性部材45へ常に加えることが可能な手段を設けることが不可欠である。この特徴は、圧縮率に対して概ね2分の1の、比較的小さい伸び率の材料を保護することも可能にする。
【0036】
図1の例においては、プレストレス手段70は、内部バー44の上断面48に対して軸方向に作用する圧縮バネ71を有する。
【0037】
本発明の他の1つの特徴によれば、噴射装置1に、2つの機能を有する連結手段80が設けられる。第1の機能は、突き出しニードル40が所定の閾値よりも低い力を受けたときに、突き出しニードル40を噴射装置1のボディに対して固定することを可能にする。この第1の機能は、例えば振動のような、小さい力と一時的な力の少なくとも一方を無効にすることを有利に可能にする。
【0038】
連結手段80の第2の機能は、しかしながら、加えられる力の強さが、先に言及した閾値を越えると、直ちに突き出しニードル40の噴射装置1のボディに対して相対的な移動を可能にする。この第2の機能は、例えば噴射装置1の内部の構成要素、特に突き出しニードル40の、熱膨張に起因する力のような、より強い力と連続する力を吸収することを可能にする。
【0039】
図1に示す特有の実施の形態において、連結手段80は、まず第1に、管状部材81の表面に互いに平行に設けられた、ほぞ穴を形成する3つの外側の溝82を有する。この管状部材81自身は、突き出しニードル40の周りに剛に、しかし可逆的な組み立て手段によって取り外し可能に連結される。この場合、可逆的な組み立て手段は、相補的な2つのネジ切りの間の古典的な係合によって構成される。また、各外側の溝82は、突き出しニードル40の軸に直交する面内を伸びる。連結手段80に、更に、噴射装置1のボディの内部に作られた螺旋溝83が設けられる。最後に、連結手段80の各外側の溝82ごとにボール84が配置される。また、この組立体は、一方では各ボール84の概ね半分が対応する外側の溝82との、他方では概ね半分が螺旋溝83との、部分的な嵌め込みによって係合することができるように組み立てられる。具体的には、ボール84は、螺旋溝83と外側の溝82とが交わる箇所に配置される。
【0040】
特に有利には、3つのボール84は、互いに120°離れて等間隔に配置される。3つのボール84は、管状部材81のための、従って突き出しニードル40のための、中心決め手段の役割を完全に果たす。
【0041】
この特有の実施の形態の特徴によれば、各外側の溝82の深さは、対応するボール84の半径よりも著しく大きく、一方、螺旋溝83の深さはボール84の半径に概ね相当する。また、各外側の溝82に、対応するボール84を螺旋溝83の底へ押すことに適した圧縮手段85が設けられる。
【0042】
このようにして、各ボール84は、一方では半分が螺旋溝83の中に、他方では半分が対応する外側の溝82の中に、位置付けられる。この特徴は、ボール84−外側の溝82−螺旋溝83からなる組立体によって実現される各連結点の高さにおける、機械的な応力を平均して配分することを可能にする。
【0043】
いずれにせよ、充分の強さの外力が突き出しニードル40に加えられたときには、その結果もたらされる変位は、比較的制限されたままになる。実際、一方では許容される唯一の運動は回転と軸方向の移動の組み合わせであるので、また他方では螺旋溝83のピッチは比較的小さいので、小さくて長時間一定の外力に対してのみ反応することが可能である。この有利な特徴は、後に説明する引っ張り手段90に対して、その役割を完全に果たし、熱膨張に起因する長さの変化を補償することを特に可能にする。
【0044】
図1に示すように、この実施の形態においては、管状部材81の上部に、プレストレス手段70の圧縮バネ71のための止め金具87を有利に構成する円板87が取り付けられる。
【0045】
本発明の他の1つの特徴によれば、噴射装置1は、突き出しニードル40の弁41を、弁座15に対向して支持される状態に維持することを可能にする、引っ張り手段90を有する。この実施の形態においては、引っ張り手段90に、突き出しニードル40の周りに軸方向に配置された、圧縮バネ91が設けられる。このように配置された圧縮バネ91は、一方では管状部材81の肩を形成する部分86と接して係合し、他方では噴射装置のボディの、止め金具を形成する部分22と接して係合することができる。
【0046】
図2は、使用されるプレストレス手段70の性質のみが異なる、上述の第1の実施の形態の変形を示す。ここでは、プレストレス手段70は、内部バー44の上断面48に軸方向に作用する圧力液体72と、圧力液体72の内部圧力を所定の値に制限することを可能にする調整弁73を使用する。
【0047】
この特有の実施の形態においては、調整弁73は、従来の仕方で、圧縮バネ75の作用を、介在座金76を介して受けて、排出導管78の範囲を限定する弁座77に支持されるボール74から構成される。なお、介在座金76と調整弁73のボディとの間の境界面には弾性環79が存在している。
【0048】
このような装置の作用は周知であるので、ここでは、これ以上は説明しない。調整弁73は、噴射装置の中に存在する液体の超過圧力を制御するためのもの、より詳細には、液体の圧力を、活性部材45に加えることを希望するプレストレスのレベルに相当する値に固定するためのものであることを、ただ単に述べておく。
【0049】
なお、噴射装置1の内部の圧力液体72は、ここでは内部の構成要素を冷却するために循環される液体を利用するものである。しかしながら、独立した高圧の液体装置をこの代わりに使用することができることは勿論である。
【0050】
図1、2に示した第1の実施の形態においては、突き出しニードル40は、電場の効果で長さを変えることができる、ピエゾ−電気活性部材45を内部に含んでいる。他の仕方では、ピエゾ−電気活性部材45の伸びは、ピエゾ−電気の活性部材45が周りを取り囲む、突き出しニードル40の外側の部分を、縦方向に変形させることもできる。
【0051】
しかしながら、図3に示す第2の実施の形態においては、噴射装置100に、今度は磁場の効果で長さを変えることができる、磁歪活性部材145を内部に含む突き出しニードル140が設けられる。この組立体も、磁歪活性部材145の伸びが、該磁歪活性部材145を取り囲む突き出しニードル140の外側の部分を変形できるように組み立てられる。
【0052】
実際には、図3に示すように、噴射装置100の内部に軸方向に配置されたソレノイド200と、磁性材料からなる管201を、従来から行われているように設ける必要がある。具体的には、磁性材料からなる管201は、ソレノイド200の周りに同心に配置され、ソレノイド200自身は、磁歪活性部材145の周りに同心に配置される。
【0053】
第2の実施の形態の特徴によれば、活性部材145が磁歪型である場合には、後部部材146は、非磁性のものにするのが有利である。なお、突き出しニードル140は、それぞれ一方は後部部材146と活性部材145の間に配置され、他方は該活性部材145と中空の軸142の中実の先端143の間に配置された、2つの挿入部材147、148を有する。また、各挿入部材147、148は、活性部材145を励起するために用いられる磁束線を閉じ込めることが可能な磁性材料から作られる。
【0054】
挿入部材147、148と同様に、磁性材料からなる管201も、活性部材145の伸びを制御するために発生される磁束線を閉じ込める機能を有する。
【0055】
第2の実施の形態のプレストレス手段170は、図1の枠内で説明された、第1の実施の形態のものと同じである。しかしながら、圧力液体を使用する第1の実施の形態の変形も、第2の実施の形態の噴射装置100に、勿論容易に適用できる。
【0056】
本発明が、上述したような少なくとも1つの噴射装置が設けられた自動車にも関することは勿論である。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁(41、141)を形成する一端を、上記弁(41、141)が流体を排出するための開口(13、113)を塞ぐ閉止位置と、上記弁(41、141)が上記開口(13、113)から制御された距離に位置される所定の開口位置との間で、移動させることが可能な突き出しニードル(40、140)を有する流体の噴射装置(1、100)において、上記閉止位置と上記開口位置との間の上記弁(41、141)の移動は、上記突き出しニードル(40、140)の各瞬間に制御される固有の伸びによってもたらされることを特徴とする、流体の噴射装置(1、100)。
【請求項2】
上記突き出しニードル(40、140)の固有の伸びは、上記弁(41、141)の直近まで達することを特徴とする、請求項1に記載の流体の噴射装置(1、100)。
【請求項3】
上記突き出しニードル(40)は、その長さが電場の影響を受けて増加することが可能なピエゾ−電気活性部材(45)を有し、上記ピエゾ−電気活性部材(45)の伸びが、上記ピエゾ−電気活性部材(45)を包含する上記突き出しニードル(40)を縦方向に変形させることが可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の流体の噴射装置(1)。
【請求項4】
上記突き出しニードル(140)は、その長さが磁場の影響を受けて増加することが可能な磁歪活性部材(145)を有し、上記磁歪活性部材(145)の伸びが、上記磁歪活性部材(145)を含有する上記突き出しニードル(140)を縦方向に変形させることが可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の流体の噴射装置(100)。
【請求項5】
上記突き出しニードル(40、140)は、上記弁(41、141)を形成する中実の先端(43、143)が設けられた中空の軸(42、142)と、慣性質量を形成する後部部材(46、146)に連結された活性部材(45、145)から構成された内部バー(44、144)とを有し、上記内部バー(44、144)は、一方では、上記中空の軸(42、142)の内部に軸方向に可動に装着され、他方では、上記活性部材(45、145)を介して上記中空の軸(42、142)の中実の先端(43、143)に連結されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の流体の噴射装置(1、100)。
【請求項6】
上記中空の軸(42、142)は、その可逆的な縦方向の変形を可能にする機械的弾性を有することを特徴とする、請求項5に記載の流体の噴射装置(1、100)。
【請求項7】
上記後部部材(46、146)は、上記突き出しニードル(40、140)を構成する他の部材の密度及び剛性よりも著しく高い密度及び剛性を有することを特徴とする、請求項5または6に記載の流体の噴射装置(1、100)。
【請求項8】
上記活性部材(145)は磁歪材料からなり、上記後部部材(146)は非磁性材料からなり、上記突き出しニードル(140)はさらに、それぞれ一方は上記後部部材(146)と上記活性部材(145)の間に配置され、他方は該活性部材(145)と上記中空の軸(142)の中実の先端(143)の間に配置された、2つの挿入部材(147、148)を有し、各上記挿入部材(147、148)は、上記活性部材(145)を励起するために用いられる磁束線を閉じ込めることが可能な磁性材料から作られることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の流体の噴射装置(100)。
【請求項9】
内部バー(44、144)を、上記中空の軸(42、142)の中実の先端(43、143)へ常時押し付けることができる、プレストレス手段(70、170)を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1つに記載の流体の噴射装置(1、100)。
【請求項10】
上記プレストレス手段(70、170)は、上記内部バー(44、144)の上断面(48、148)に対して軸方向に作用する圧縮バネ(71、171)を有することを特徴とする、請求項9に記載の流体の噴射装置(1、100)。
【請求項11】
上記プレストレス手段(70)は、一方では、上記内部バー(44)の上断面(48)に対して軸方向に作用する圧力流体(72)を有し、他方では、上記圧力流体の内部圧力を所定の値に制限することが可能な調整弁を有することを特徴とする、請求項9に記載の流体の噴射装置(1)。
【請求項12】
一方では、上記突き出しニードル(40、140)が所定の閾値よりも低い強さの力を受けたときには、上記突き出しニードル(40、140)の、上記噴射装置(1、100)のボディに対する固定を可能にし、他方では、上記突き出しニードル(40、140)が所定の閾値を超える強さの力を受けたときには、直ちに上記突き出しニードル(40、140)の、上記噴射装置(1、100)のボディに相対的な移動を可能にする、連結手段(80、180)を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1つに記載の流体の噴射装置(1、100)。
【請求項13】
上記連結手段(80、180)は:
−管状部材(81、181)の表面に互いに平行に設けられた、ほぞ穴を形成する外側の溝(82、182)であって、上記管状部材自身は、上記突き出しニードル(40、140)の周りに剛に、しかし取り外し可能に連結され、各上記外側の溝(82、182)は、上記突き出しニードル(40、140)の軸に直交する面内を伸びる、少なくとも3つの外側の溝(82、182)と、
−上記噴射装置(1、100)のボディの内部に作られた螺旋溝(83、183)と、
−各上記外側の溝(82、182)ごとのボール(84、184)であって、各上記ボール(84、184)は、一方では上記ボール(84、184)の概ね半分が対応する上記外側の溝(82、182)との、他方では概ね半分が上記螺旋溝(83、183)との、部分的な嵌め込みによって係合することができる、ボール(84、184)と、
を有することを特徴とする、請求項12に記載の流体の噴射装置(1、100)。
【請求項14】
各上記外側の溝(82、182)の深さは、対応する上記ボール(84、184)の半径よりも著しく大きく、上記螺旋溝(83、183)の深さは上記ボール(84、184)の半径に概ね相当し、各上記外側の溝(82、182)は、対応する上記ボール(84、184)を上記螺旋溝(83、183)の底へ押すことに適した圧縮手段(85、185)を有することを特徴とする、請求項13に記載の流体の噴射装置(1、100)。
【請求項15】
上記突き出しニードル(40、140)の上記弁(41、141)を、弁座(15、115)に対向して支持される状態に維持することを可能にする、引っ張り手段(90、190)を有することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1つに記載の流体の噴射装置(1、100)。
【請求項16】
上記引っ張り手段(90、190)は、上記突き出しニードル(40、140)の周りに軸方向に配置され、一方では上記管状部材(81、181)の肩を形成する部分(86、186)と接して係合し、他方では上記噴射装置(1、100)のボディの止め金具を形成する部分(22、122)と接して係合することができる、圧縮バネ(91、191)を有することを特徴とする、請求項15に記載の流体の噴射装置(1、100)。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1つに記載の、少なくとも1つの流体の噴射装置(1、100)を有することを特徴とする自動車。

【公表番号】特表2006−528747(P2006−528747A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530336(P2006−530336)
【出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001118
【国際公開番号】WO2004/101985
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】