説明

流体の較正ダウンホールスペクトル分析方法及び装置

【課題】広範なスペクトル光学分析装置及び方法を提供する。
【解決手段】ダウンホールで使用するための流体分析システムは、サンプルセル(184)に収容された流体サンプルに差し向けられる入力光信号を含む。入力光信号は、複数の光源(180)から生じる。次いで、サンプルセルからの出力光信号は、出力光信号の代表される波長の測定のために一つ又はそれ以上の分光計(186)に通される。次いで、分光計の出力は、ダウンホールで典型的に遭遇する炭化水素について既知の値と比較される。これは、サンプル流体の組成への洞察を提供する。更に、光源からの光を、高温及び騒音環境ダウンホールのシステムの較正に用いられるべく一つ又はそれ以上の分光計に直接通すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油井又はガス井のような、炭化水素生産井の探査及び開発の目的で地下層評価及び試験に分光計構造ダウンホールを用いる流体分析方法及び装置に関する。より具体的には、第1の分光計を有する流体分析モジュールがダウンホール流体の成分を決定するのに用いられ且つ第2の分光計が較正に用いられる。
【背景技術】
【0002】
坑井(ボーリング穴)を取り囲む地下層の特性を評価するために、坑井の複数の特定位置から地層流体のサンプルを取得して分析することがしばしば望ましい。長年にわたって、いろいろなツール及び手順がこの地層流体評価工程を容易にするために開発されている。係るツールの例は、シュルンベルジェテクノロジー株式会社(Schlumberger Technology Corporation(“シュルンベルジェ”))に譲渡された米国特許第6,476,384号(“’384特許”)に見出すことができる。この’384号特許の開示を、参考文献としてここに援用する。
【0003】
シュルンベルジェのリピートフォーメーションテスター(Repeat Formation Tester (RFT))及びモジュラーフォーメーションダイナミクステスター(Modular Formation Dynamics Tester (MDT))ツールは、’384号特許に記述されたサンプリングの特定の例である。特に、MDTツールは、ツールによりサンプリングされた流体を分析するための流体分析モジュールを含む。
【0004】
長年にわたって、サンプリングツールにより引き出された地層流体のサンプルを識別し且つ特徴付けるために、いろいろな流体分析モジュールが、MDTツールのような、サンプリングツールと関連して使用するために開発されている。例えば、シュルンベルジェの米国特許第4,994,671号(参考文献としてここに援用される)は、試験室と、光源と、スペクトル検出器と、データベースと、プロセッサと、を含む例示的流体分析モジュールを記述する。流体流入組立体によって層から試験室の中に引き込まれた流体は、流体に光を向け、透過及び又は後方散乱した光のスペクトルを検出し、層流体を特徴付けるために(異なるスペクトルに関するデータベースの情報に基づいて)情報を処理することによって分析される。また、シュルンベルジェの米国特許第5,167,149号及び米国特許第5,201,220号(両方をここに参考文献として援用する)は、流体流の中のガスの存在を決定するために、特定の角度で窓/流体流界面からの反射光を記述する。更に、米国特許第5,331,156号に記述されたように、ある所定のエネルギーで流体流の最適化密度(OD)測定を行うことによって、2相流体流の石油部分及び水部分が数量化される。地層流体を測定し且つ特徴付けるための技術が更に進歩したので、より正確で拡張可能な地層流体分析ツールの要望が増えてきた。
【0005】
従来の光学流体分析ツールは、典型的には、光を収集し且つ分析するためにサンプルセル及び単一分光計に向けられた単一光源を利用した。典型的な実施形態では、最大約20チャネルを提供するフィルタアレー(FA)分光計が用いられる。これらのツールは、分光計の信号対ノイズ比に影響を及ぼすことがある不利な条件のダウンホールで用いられる。また、規模制約ダウンホールは、しばしば制限され、使用されるツールは、かなり小さい空間に適合しなければならない。
【0006】
従来のアプローチは、かなり有効であるが、同時に一定の制限も示す。単一のフィルタアレー分光計からの測定は、有用であるが、流体を分析するために異なる種類の複数の分光計をダウンホールで同時に利用することができるシステムを有することが望ましい。これは、複数の別々のモジュールの必要性を緩和する。単一の光源は、情報を一群の異なる分光計に提供給し、利用可能なチャネルの数及びシステム全体の特異度を増す。
【0007】
また、不利な条件のダウンホールは、従来技術におけるような分光計システムを較正することを必要とする。これは、少なくとも二つの光、即ち、一つは基準信号、他の一つは測定信号を、分光計に差し向ける必要がある。これは、ダウンホール分光計についての実時間較正に関する米国特許出願第11/273893号に開示されたような、光チョッパーの使用を通して達成されうる光信号の分化を必要とする。しかしながら、光チョッパーは、ダウンホールツールの大きさをかなり増すモータを必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した背景、及びダウンホール流体分析の技術分野で知られる他の要因の結果として、出願人は、興味範囲で詳細なスペクトル分析を提供すると同時に広範なスペクトル光学分析のための装置及び方法の必要性を認識した。これにより、出願人は、ダウンホール環境における或る状況では、流体のスペクトル測定及び一つ又はそれ以上の測定分光計の較正について独立して構成される二つ又はそれ以上の分光計を別々に配置することが望ましいし及び又は必要であるということを認識した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一面は、一つ又はそれ以上の分光計を用いる流体分析ダウンホールのための方法及び装置を含む。本発明の一実施形態では、入力光を提供する一つ又はそれ以上の光源は、流体を収容するサンプルセルに差し向けられる。サンプルセルからの光出力は、流体分析のために第1の分光計によって測定される。更に、一つまたはそれ以上の光源からの入力光は、較正で用いられる基準測定を提供するために第2の分光計に直接通される。フィルタアレー及び回折格子分光計を含むが、限定されない、二つ又はそれ以上の異なる種類の分光計を用いてもよい。一実施形態では、第1及び第2の分光計は、一つよりも多い分光計を含んでもよいし分光計の数及び種類が同じであってもよい。
【0010】
本発明の更なる利点及び新規な特徴は、以下の記述に示されるか或いはこの素材を読むこと或いは本発明を実施することによって当業者によって学ばれてもよい。本発明の利点は、添付の特許請求の範囲に示された手段によって達成されるのがよい。
添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し且つ明細書の一部である。以下の説明と一緒に、図面は、本発明の原理を明示し且つ説明する。
図面全体を通して、同じ参照番号は、類似するが、しかし必ずしも同じである必要はない構成要素を示す。本発明は、いろいろな変更及び変形形式が可能であるが、特定の実施形態が図面に例として示され且つここで詳細に記述される。しかしながら、本発明は、開示された特定の形式に限定されることを意図しない。それよりも、本発明は、特許請求の範囲によって構成されるような本発明の範囲内に入る全ての変更、同等物及び変形を網羅する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の例示の実施形態及び面を以下に記述する。明瞭化のために、実際の実施形態の特徴の全てを明細書に記述していない。いかなる係る実際の実施形態の開発において、実施形態によって異なる、システム関連及びビジネス関連の制約の順守のような、開発者の特定の目標を達成するために多くの実施特定決定を行わなければならないということが勿論理解されるであろう。更に、係る開発努力は、複雑で且つ時間が掛かるが、それにも係わらず、ここの開示の利益を有する当業者が取り組む日常的作業(ルーチン)であるということが理解されるであろう。
【0012】
図1は、地層を検査し且つ地層からの流体の成分を分析するための例示的ダウンホールツール110の概略図である。ダウンホールツール110を、在来の方法で地表系118に連結されるケーブル115からボーリング穴112の中に吊らす。地表システム118は、ダウンホールツール110の制御及びダウンホールツールから受信した信号の分析に適当な電子機器及び処理システムを有する。
【0013】
ダウンホールツール110は、細長い本体119を含み、細長い本体119は、ツール制御システム116のダウンホール部分を封入する。また、細長い本体119は、選択的に伸長可能な流体受け入れ/取り出し組立体120と選択的に伸長可能な固定部材121とを担持する。流体受け入れ/取り出し組立体の例は、例えば、米国特許第3,780,575号、米国特許第3,859,851号、米国特許第4,860,581号に示され且つ説明される。これらの特許の各々の開示は、参考文献としてここに援用される。流体受け入れ/取り出し組立体120及び固定部材121は、細長い本体119の両側にそれぞれ配置される。ボーリング穴112の部分を選択的に密封するための或いは隔離するための流体流入/流出組立体120が装備され、隣接する地層との圧力或いは流体連絡を選択的に確立することができる。また、流体分析モジュール125が細長い本体119内に含まれ、分析されるべき地層流体が解析モジュールに通される。次いで、サンプルされた流体は、ポート(図示せず)からボーリング穴112に放出され、或いは地表での回収のために一つ又はそれ以上のサンプル室122,123に送られる。流体流入/流出組立体120、流体分析モジュール125、及びサンプル室122、123への流路、の制御は、電気制御システム116,118によって維持される。
【0014】
図2は、ツール110の中に含まれるスペクトル分析モジュール134の一実施形態の全体構造を示す。地層流体132は、システムのエンドユーザにとって興味があるサンプルである。この流体は、限定されないが、ガス、石油、及び水を含むどんな数の成分を含有してもよい。上記したように、どんな流体がどんな相対量で存在するのかを知ることは、大変望ましい。これを達成するために、光源130が光を二つの光学窓136の一つに差し向けるように配置される。一実施形態では、この光は、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、レーザ、或いはダウンホールに導びことができる他のどんな光源であってもよい。これらの光源は、波長が広いスペクトル範囲ほぼ500乃至2000nmにわたる光を出す。光源130によって生じた光は、第1の光学窓236を通して、サンプル流体132に伝達され、第2の光学窓136から出る。この光は、収集され且つ光信号の特定の方向及び経路を見込む光ファイバ束を用いて伝達される。特に興味がある光は、反射され、伝送され及び又は放射されのもの、即ち、サンプル流体からの出力光である。この出力光信号は、スペクトル分析モジュールの分光計部分138に(再び、通常は光ファイバを用いて)差し向けられる。従来のシステムでは、分光計部分は、典型的には最大20チャネルを有する単一のフィルタアレー分光計を収容していた。本発明は、分光計部分138に含まれるべき複数の分光計を提供する。これは、利用可能なチャネルの数を増し、また、出力光信号の検出及び分析に含まれるべき、回折格子分光計のような、異なる種類の分光計を見込む。分光計部分の出力は、サンプル流体132の特性を決定するのに用いられる。更に、光源からの光は、少なくとも一つの基準分光計に直接送られる。そこで、光源からの光は、較正目的で一つ又はそれ以上の基準分光計に導入される。
【0015】
図3は、従来のシステムで典型的に用いられ且つ本発明の分光計の一つとして用いてもよいフィルタアレー分光計のチャネルの一つの概略図である。光が光ファイバ束を経て140で入力され、光ファイバ束により、光を、142で示された複数の経路を通してフィルタアレー分光計のチャネルの各々に送らせる。これらの経路の一つは、光信号を入力ファイバ束144に送出する。次いでこの光は、第1のレンズ146をかつフィルタ148を横切る。フィルタ148は、典型的には帯域通過フィルタである。この帯域通過フィルタにより、或る範囲の波長の光だけを通過させる。全分光計は、複数のこれらのフィルタ素子を有し、フィルタ素子の各々は、異なる波長帯域に対応するのがよい。フィルタ148を進んだ後、信号は、第2のレンズ146によって出力光検出器150に向かって再び焦点合わせされる。この光検出器は、入射光に基づいて電流を発生し、電流は、入射光の量に比例する。次いで、この電流は、I/V変換器152によって電圧に変換され且つ電圧信号は、更なる処理のために進む。理解できるように、電圧は、各検査波長について異なり且つ異なる波長の相対的寄与率の指示を与える。制御データに基づいて、これは、サンプル流体の組成に洞察を与える。
【0016】
光学吸収は、波長依存であり、サンプル流体組成によって決定される。図4は、ダウンホールで遭遇しそうであるいくつかの炭化水素及び他の流体の吸収特性を示す。軸162は、伝達された光の波長であり、軸160は、対応する光学密度(OD)である。水を線164で示し、要素166は、軽油に対応し、要素168は、凝縮液に対応し、要素170は、石油ベース泥濾過液、要素172は、原油Aに対応し、要素174は、原油Bに対応する。いくつかのスペクトル領域を識別することができ且つこれらの領域は、流体全体の組成に洞察を与える。水は、多数の炭化水素がピークになるような高い関心領域のちょっと前の約1450nm(ナノメートル)でピークになることがここに示される。1.6μm(マイクロメートル)と1.8μmとの間の、176で示した領域で、炭化水素は、強い吸収を有し且つ検出されなければならない多くのスペクトル依存特徴を示す。しかしながら、フィルタアレー分光計の限られた数のチャネルにより、全てのスペクトル詳細を捕らえることは、可能ではない。フィルタアレー分光計は、可視から遠赤外線(IR)までの範囲を網羅し、本発明は、特定のスペクトル領域に更に多くのチャネル密度を追加するためにハイブリッド分光計アーキテクチャを見込む。
【0017】
今、図5を参照すると、本発明では、二つ又はそれ以上の分光計をダウンホールに導入する。一実施形態では、分光計の一つは、フィルタアレー分光計であるのがよいし、一つは、回折格子分光計であるのがよい。回折格子分光計は、限られた波長範囲で非常に高いチャネル密度を提供するために用いられるのがよい。回折格子分光計は、176で示した重要な1.6μm乃至1.8μmの範囲でスペクトル詳細を測定する上で有用である。例えば、回折格子分光計は、約16チャネルを提供するように構成されるのがよい;これらのチャネルは、10乃至20のチャネルに加えて、フィルタアレー分光計によって提供され且つ更に小さいスペクトル範囲に関する更に特定の情報を提供する。例えば、フィルタアレー分光計は、1450nmにピークがある水のような、流体の存在を決定するために可視及び赤外スペクトルで測定するように構成されてもよいし、基準線補正については、回折格子分光計は、上述した炭化水素範囲を監視するように構成されるのがよい。広範囲の波長がダウンホール流体のスペクトル分析について利用可能であるような分光計の他の組合せが本発明によって考えられる。可視範囲のスペクトル特徴は、限定されており、その結果、回折格子分光計の高いチャネル密度は、必然的なことではない。
【0018】
本発明の一実施形態の概略を図5に示す。入力光は、光源180によって提供される。図示したように、光源で生じた複数の異なる種類の光があってもよい。これらの光源は、限定されないが、ハロゲン電球(広帯域光源)、発光ダイオード(LED)、レーザである。この入力光は、光処理装置188の一つによって処理されるのがよい。これらの光処理装置は、他の光処理装置の中で、偏光板、振幅及び周波数変調器のような、光の特性を変えるためのどんな装置を含んでもよい。一実施形態では、次いで、光は、集光器182に導びかれるのがよいが、この素子は、動作中の光源及び分光計の数に応じて、任意である。集光器は、異なる波長の光を異なる場所又は異なる時間に送るように構成される。これは、異なる光の種類の影響を独立に決定することが望ましいときに有用である。次いで入力光は、サンプルセル184の一つ又はそれ以上の入力窓に進む。このサンプルセル184は、検査されるべきサンプル流体である流れラインの中を流れる流体を収容する。光は、流体の中を流れ且つ流体との相互作用を通して、光の波長及び流体の組成に応じて変化を受けて出力光を出す。例えば、入力光は、反射及び又は受け及び又は入力光と流れラインのサンプルとの間の相互作用の結果として光が放射される。これでは、本発明は、流体のスペクトル分析の様々な既知の方法を考慮する。
【0019】
この出力光は、サンプルセル184の出力窓を通り抜けて任意の集光器及びルーター182に至る。次いで、光は、少なくとも一つの測定分光計186に通される。これにより、一つ以上の測定分光計186が、図5に概略的に示すように設けられるのがよい。上述したように、本発明の一実施形態では、複数の測定分光計186の少なくとも一つは、フィルタアレー分光計であるのがよく且つ複数の測定分光計186の少なくとも他の一つは、回折格子分光計であるのがよい。これらの分光計の出力は、上述したように、一組の波長範囲の光の量を示す。
【0020】
サンプルセルに入射する光のほかに、また、一つ又はそれ以上の光源180から少なくとも一つの基準分光計187に直接光を通すことが有利である。しかしながら、図5に概略的に示すように、複数の基準分光計187が設けられてもよい。在来の流体分析モジュールに採用された光源、光検出器、処理電子機器は、典型的には、ダウンホールで経験される極端な温度及び振動によって悪影響を及ぼされる。例えば、光源の光パワーは、高温で作動するときに減少し或いはドリフトする傾向がある。同様に、多くの光検出器の光学利得は、これらの高い作動温度を受けたときかなりの量ドリフトする。これらのシフトは、不適当な結果をもたらすが、このドリフトを補償するために、検査している間に、即ち実時間で、較正を達成することができる。この較正は、光を光源180から一つ又はそれ以上の基準分光計187に連続的に差し向けることによって達成される。これを達成するために、一つ又はそれ以上の光源180からの光を、光ファイバ束を介し、任意の集光器183を通して一つ又はそれ以上の基準分光計187に通す。この光信号は、基準光信号と呼ばれ、サンプルセル184を通して差し向けられた光は、測定光信号と呼ばれる。一つ又はそれ以上の第2の分光計187は、基準分光計と呼ばれる。本発明の一面では、第2の分光計は、一つ又はそれ以上の第1の分光計186と数及び種類が同じであり、第1の分光計186は、測定分光計と呼ばれる。これは、各分光計が状況及び対応するダウンホールに基づいて較正されることを見込む。
【0021】
次いで、基準信号を較正に用いると同時に測定信号をサンプルセル184の流体の組成を決定するために用いる。米国特許出願第11/273893号(その全体が参考文献としてここに援用される)は、ダウンホール分光計の実時間較正を開示する。
【0022】
図6は、先の図面に示したサンプルセルの一例の断面図である。本発明の図示した実施形態は、複数の他の構成で実現されてもよい。サンプル流体は、流路234の中を流れる。対向する開口部236及び240は、フローラインに設けられ、その各々は、入力又は出力窓及びフランジ組立体とそれぞれ連結する。構造的に、セルの入力及び出力側は、同じなので、入力側だけを詳述する。流路234は、開口部236と240との間に配置され且つ窓位置決め座を構成する。窓242は、流路234の各々の側面に位置決めされる。一実施形態では、窓は、サファイアで作られるのがよい。窓242は、フランジ230によって適所に固定され、フランジ230は、窓242の外面をファイバ束232及び244に連結するために光コネクタを備えている。フランジ230は、互いにねじで固定されて窓を座に密封する。密封は、補助リング及びO−リング238の使用によって補助される。窓242の内面及び外面は、光学的品質について研磨され、側面は、密封を補助するために研磨される。
【0023】
これは、一組の窓を有する一つサンプルセルである。異なる種類の光を全てサンプル流体を横断する異なる位置に差し向ける追加の窓及びファイバ束があってもよく。ファイバ束232を通して入力された光は、サンプル流体と相互作用し、出力光は、ファイバ束244によって収集される。次いで、この受光信号は、分析のために一つ又はそれ以上の測定分光計に転送される。
【0024】
図7は、本発明によるスペクトル分析システムの一実施形態の概略図である。シャーシ264は、坑井型ツールのワイヤーライン又は掘削しながら検層を行う方法(LWD)又は掘削しながら計測を行う方法(MWD)又は生産ロ検層又は常設監視のいずれかでダウンホールに導入されるデバイスの大部分を収容する。更に、本発明は、二酸化炭素隔離及び貯水池管理のようなエリアでの適用性を想定する。この点において、ここに開示されたシステム及び方法は、ダウンホールアプリケーションについて在来のスペクトル分析システムを採用するいろいろなダウンホール流体分析作業における広範囲の応用を有することが想定される。
【0025】
フローライン266は、図1に示した取入口通気立て坑を経てサンプル流体で充たされる。光源250は、光をシステムに導びく。この光源は、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、レーザ、或いはいかなる他の適当な光源であってもよい。一つの光源だけが示されているが、広域スペクトルにわたって光を出すためにいろいろな種類の複数の光源が存在してもよい。入力光は、二つのチャネルに分けられる。チャネル252は、基準チャネルであり、そこでの光信号は、光源250から出力されたような光である。次いで、この光は、分光計254に導びかれる。フィルタアレー分光計が示されているが、これは、いかなる種類の分光計であってもよいし且つ二つ又はそれ以上の異なる分光計を含んでもよい。従って、これらの分光計は、既知の入力光を測定し且つ測定分光計の出力を較正する。基準分光計の出力は、電子機器262によって監視される。チャネル258は、測定チャネルである。このチャネルは、サンプルセル256の入力窓を通して光を送る。光は、サンプルを通って横切り且つサンプル流体と相互作用する。出力光は、測定分光計260に差し向けられる。再び、二つ又はそれ以上の分光計がここで用いられてもよいし且つ分光計の出力は、電子機器262を監視することによって監視される。フィルタアレー分光計だけが示されているが、これは、いかなる種類の適格な分光計であってもよいし、本発明の一実施形態では、少なくとも一つのフィルタアレー分光計と少なくと一つの回折格子分光計が存在してもよい。
【0026】
次いで、一つ又はそれ以上の測定分光計の出力は、流体サンプルの分析に用いられる。分光計の電気出力は、分光計に入射する所与の波長範囲の光に比例する。本発明は、全てがダウンホールで達さられる広範囲の波長を網羅する多数のチャネルを提供する。
【0027】
ここに開示したシステム及び方法では、一つ又はそれ以上の光源180がサンプルセル184に差し向けられる。この光は、サンプル流体と相互作用し、ファイバ束に収集され且つ一つ又はそれ以上の測定分光計186に通される。例えば、フィルタアレー分光計は、広いスペクトル範囲にわたって情報を提供するように構成されてもよいし、回折格子分光計は、所望の炭化水素の存在を決定することに特に関心がある小さな範囲の波長のより緻密な分析を提供するように構成されてもよい。
【0028】
また、サンプル流体からの出力光の測定の一つの役割に加えて、光は、光源から、例えば、数及び種類が測定分光計に等しい、一つ又はそれ以上の基準分光計に直接通されてもよい。この基準信号は、それらの性能が高温及びノイズ環境ダウンホールで変化するかもしれないので分光計及び関連電子機器の較正に用いられる。この構造は、同じ情報を供給するための他の試みと比較したときにシステム全体の大きさを減じる。
【0029】
上述した説明は、本発明及びその実施のいくつかの例を説明し且つ記述するためにだけ提示された。排他的であること或いは本発明を開示されたいかなる正確な形に限定することを意図しない。多くの変更及び変形が上記教示に照らし合わせて可能である。
【0030】
本発明及びその実用的応用の原理を最もよく説明するために好適な面が選択され且つ記述された。上述した説明は、当業者がいろいろな実施形態及び面で本発明を最もよく利用でき且ついろいろな変更が想定した特定の使用に適することを意図する。本発明の範囲が特許請求の範囲によって構成されることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明が用いられる一例示的状況の概略図である。
【図2】図2は、本発明による流体分析モジュールの一例示的構成の概略部分断面図である。
【図3】図3は、大きなフィルタアレー型分光計の一つのフィルタチャネルの概略断面図である。
【図4】図4は、ダウンホールで遭遇する多くの炭化水素の吸収スペクトルの説明図である。
【図5】図5は、複数の源からの光を二組の分光計に通す本発明による方法及び装置の一例示的構成の概略図である。
【図6】図6は、本発明によるスペクトル分析システムの一ダウンホール実施の例示的サンプルセルの概略断面図である。
【図7】図7は、測定及び基準のための二つの個別の分光計を示す本発明の一実施例の詳細概略図である。
【符号の説明】
【0032】
180 光源
182、183 集光器
184 サンプルセル
186 測定分光計
187 基準分光計
188 光処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層を横切る坑井のダウンホールで作動するように構成された流体分析システムであって、
入力光を発生する少なくとも一つの光源と、
サンプル流体を受け入れる、少なくとも一つの光源に作動可能に連結されたサンプルセルと、
を含み、
サンプルセルは、
出力光を生じさせるために、入力光をサンプルセルの中へ且つサンプル流体に通す少なくとも一つの入力窓と、
出力光をサンプルセルの外に通す少なくとも一つの出力窓と、
サンプルセルの出力に作動可能に連結され、出力光を測定し且つ複数の測定信号を発生するように構成された少なくとも第1の分光計と、
第1の分光計の出力に作動可能に連結され、複数の測定信号を受け入れ且つサンプル流体の特性を決定するように構成された分析デバイスと、
少なくとも一つの光源に作動可能に連結され、入力光を測定し且つ複数の基準信号を発生するように構成された少なくとも第2の分光計と、
第2の分光計の出力に作動可能に連結され、複数の基準信号を受け入れ且つ第1の分光計及び他の電子機器を較正するように構成された較正デバイスと、
を含むことを特徴とする上記流体分析システム。
【請求項2】
第1の分光計は、第1の組の二つ又はそれ以上の分光計を含み、第2の分光計は、第2の組の二つ又はそれ以上の分光計を含み、第2の組の分光計は、第1の組の分光計と分光計の数及び種類が同じであることを特徴とする請求項1に記載のダウンホールで作動するように構成された流体分析システム。
【請求項3】
複数の光源を更に含み、複数の光源は、広いスペクトル範囲に亘る光を発生することを特徴とする、請求項1に記載のダウンホールで作動するように構成された流体分析システム。
【請求項4】
少なくとも一つの光源とサンプルセルとの間に配置された第1の集光器、
サンプルセルと第1の分光計との間に配置された第2の集光器、
少なくとも一つの光源と第2の分光計との間に配置された第3の集光器、
の少なくとも一つを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のダウンホールで作動するように構成された流体分析システム。
【請求項5】
第1、第2、第3の集光器は、光を、特定の時間に、特定入力窓、特定分光計、の少なくとも一つに選択的に通すように構成されたルータを更に含む、ことを特徴とする請求項4に記載のダウンホールで作動するように構成された流体分析システム。
【請求項6】
第1の分光計は、フィルタアレー分光計からなる、ことを特徴とする請求項1に記載のダウンホールで作動するように構成された流体分析システム。
【請求項7】
第1の分光計は、回折格子分光計からなる、ことを特徴とする請求項1に記載のダウンホールで作動するように構成された流体分析システム。
【請求項8】
第1の分光計は、少なくとも一つのフィルタアレー分光計と少なくとも一つの回折格子分光計とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のダウンホールで作動するように構成された流体分析システム。
【請求項9】
第2の分光計は、一つ又はそれ以上の分光計を含み且つ分光計の数及び種類が第1の分光計と同じである、ことを特徴とする請求項1に記載のダウンホールで作動するように構成された流体分析システム。
【請求項10】
少なくとも一つの光源は、ハロゲンランプからなる、ことを特徴とする請求項1に記載のダウンホールで作動するように構成された流体分析システム。
【請求項11】
少なくとも一つの光源は、発光ダイオード(LED)からなる、ことを特徴とする請求項1に記載のダウンホールで作動するように構成された流体分析システム。
【請求項12】
少なくとも一つの光源は、レーザからなる、ことを特徴とする請求項1に記載のダウンホールで作動するように構成された流体分析システム。
【請求項13】
ダウンホール流体分析のための方法であって、
少なくとも一つ光源を用いて入力光を提供し、
サンプル流体をサンプルセルに挿入し、
入力光をサンプルセルの入力窓に導びき、光は、サンプル流体を横断し且つサンプルセルの出力窓を横断する出力光を生じ、
第1の分光計で出力光を受け、
出力光に基づいて第1の分光計によって複数の測定信号を発生し、
複数の測定信号を分析してサンプル流体の特性を決定し、
入力信号を第2の分光計で受け、
複数の基準信号を第2の分光計によって発生し、
複数の基準信号を用いて第1の分光計及び他の電子機器を較正する
段階からなる、上記方法。
【請求項14】
複数の光源からの入力光を複数の測定分光計及び複数の基準分光計に提供することを更に含み、複数の光源は、広いスペクトル範囲に亘る光を発生することを特徴とする、請求項13に記載のダウンホール流体分析のための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−524813(P2009−524813A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551899(P2008−551899)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【国際出願番号】PCT/IB2007/000153
【国際公開番号】WO2007/085935
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(500177204)シュルンベルジェ ホールディングス リミテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】Schlnmberger Holdings Limited
【Fターム(参考)】