説明

流体を基層上に吐出する装置

【課題】スリット長さを、したがって塗工幅を変化させた後でも、直ちに最適なコーティング結果が得られる、流体を基層上に吐出する装置を提供すること。
【解決手段】本発明の、流体を基層上に吐出する装置は、基体(2)と、流体源と連結でき流体を供給する流体供給路(8)と、流体供給路(8)と連通する分配路(38)を備えるとともに、流体を吐出するための少なくとも1つの流出口(22)を有し、分配路(38)と連通する、実質的に細長いスリット(20)を備えるノズル機構(4)とを具備し、分配路(38)の、流体を充填できる有効長さを、分配路(38)中で可動な閉塞体(54)によって変化させることができる。本発明によれば、調整路(32)は、分配路(38)と流体連通しており、調整路(32)の、流体を収容する容積が変更可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を基層上に吐出する装置に関し、この装置は、基体と、流体源と連結でき流体を供給する流体供給路と、流体供給路と連通する分配路を備えるとともに、流体を吐出するための少なくとも1つの流出口を有し、分配路と連通する、実質的に細長いスリットを備えるノズル機構とを具備し、分配路の、流体を充填できる有効長さを、分配路中で可動な閉塞体によって変化させることができる。
【背景技術】
【0002】
このような流体を吐出する装置は、塗工ヘッドとも呼ばれ、接着剤、封止材または他の液体を、様々な基層、例えばフィルム、包装材、機械部品、または他の加工品上に面状に塗工するために、様々な工業分野において使用される。こうした装置は、本の背に糊を付けるためにも使用される。こうした装置は、枠組みなどに組み付けられ、流体が吐出されているときにコーティングすべき基層がその近傍を通過する。こうして流体が基層上に塗工される。このとき、流体はスリット状の細長い流出口から流出し、基層、例えば本の背の表面上に到る。スリットノズル機構の細長いスリットの流出口は、流体の1つの連続した条片を塗工するために連続状であっても、多くの隣接した条片または細い糸もしくは紐を吐出し塗工するように分断されていてもよい。
【0003】
ノズル機構の実質的にスリット状の流出口の有効長さを変化させるために、横方向分配路の流体を充填できる有効長さを変化させることができる。この目的のために、分配路の少なくとも一方側に、ピストン状の閉塞体を分配路の内部で可動に配置する。この閉塞体は、分配路の有効長さが、したがってスリットの、つまりスリット状の流出口の有効長さが変更可能なように、分配路を様々な位置で側方で画定するように、分配路の内部に封止して配置される。閉塞体は、例えば、手動で、または原動機で、またはねじ付きスピンドル機構を用いて往復動できる棒と結合することができる。このようにして、異なる幅の流体条片を吐出し、基層上に塗工することができる。こうして、例えば本の背の糊づけにおいて、塗工幅を本の寸法に適合させることができる。このような装置は、例えば、特許文献1により知られている。スリットノズル機構のいくつかの実施形態において、閉塞体は、スリット中で流出口の方向に突出した、しばしば翼体(Fahne)と呼ばれる、拡張部と結合されており、したがって細長いスリットも側方を流出口の領域まで限定される。これにより、吐出される流体条片の、したがって基層上に塗工される条片が側方で鋭く限定されることになる。
【0004】
閉塞体の移動により分配路の長さを変動させるとき、分配路の容積が変化し、また閉塞体がスリット中に流出口の領域まで突出した翼体と結合されているときは、分配路およびスリットの容積が変化する。こうした、長さが変化した場合の容積の変化は、不都合を招くことがある。分配路を短くして塗工幅を縮小する間に、接着剤がスリット状の流出口から押し出され、その結果、接着剤が望ましくない形で基層または周囲に達する可能性がある。分配路および場合によってはスリットの容積を増大する場合は、分配路の容積が増大する間に、周囲の空気がスリットおよび分配路中に流入することがある。この空気の吸込みは、塗工操作の再開時に、塗工弁を開いた直後には接着剤が流出口から出て来ず、したがって基層に接着剤が全くまたは不十分にしか付かないようになる可能性がある。そのため、例えば本の背に十分な糊が付かず、したがって続いて後の加工ができなくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第00/67914号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の目的は、流体を基層上に吐出する装置であって、スリットの有効長さを変化させても、上述した不都合をもたらさない装置を提供することにある。特に、スリット長さを、したがって塗工幅を変更した後でも、直ちに最適なコーティング結果が得られる、流体を基層上に吐出する装置を提供すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、この目的を、冒頭に述べた種類の装置において、流体を収容する容積が変更可能である調整路を分配路と流体連通することによって達成する。
【0008】
分配路と流体連通しており、その流体を収容するために用意されたその内部容積が変更可能である、本発明の調整路により、とりわけ閉塞体の内側への移動により分配路の長さを短縮する際には、同時に本発明の調整路の容積が増大し、また閉塞体の対応する移動により分配路が増大する際には、調整路の容積が縮小するようにして、容積調整または容積補償が有利に実現できる。これにより、閉塞体を移動させて分配路の長さを、したがってスリットの長さを変化させる際に、長さの変更中に流体が流出口から押し出されないことも、長さを増大させる際に、気体がスリットおよび分配路中に吸い込まれないことも達成できる。この調整路により、分配路および場合によってはスリットの内部容積の変化が補償できる。これにより、スリットの長さが、したがって塗工幅が変化する際に、スリットノズル機構の外側表面または装置の周囲に望ましくない汚れも、塗工過程をあらたに開始する際の不良なコーティング結果も生じなくなる。したがって、本発明によれば、スリット長さの変更のために格外品を生じないことが達成できる。この目的のために、調整路の容積は変更可能である。
【0009】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、分配路の有効長さを調節する際に、分配路、調整路、およびスリットの流体で充填された総容積が実質的に一定に保たれるように、調整路の容積を、分配路の流体で充填されるそのときどきの有効容積の大きさに応じて変更可能にすることが提案される。このようにして、ノズル機構の実質的な内部流路容積が、実質的に一定に保たれ、その結果、長さを増大させる際に内部流路に空気が侵入せず、スリットの長さを縮小する際に接着剤の流出口からの望ましくない押出しまたは流出が生じない。換言すれば、本発明により、分配路の容積および流出口までのスリットの容積が、調整路の容積が変化するのと同じだけ変化することが達成される。このようにして、非常に正確に本発明による容積補償が行われ、従来技術に存在する不都合が回避される。
【0010】
好ましい一実施形態によれば、排除体を調整路の内部に可動に配置することにより、調整路の容積を変更可能にすることが、さらに提案される。調整路の内部で可動な排除体により、調整路の容積を、構造的に比較的簡単で同時に精密に変更することができ、したがって上記の容積補償が非常に正確に実施できる。
【0011】
特に好ましくは、排除体は、封止されて調整路の内部に可動に配置されたピストンである。そうしたピストンは、金属で耐密に調整路内部に配置することも、場合により、例えばピストンリングなど少なくとも1個の追加の封止要素によって封止することもできる。また、そうしたピストンは比較的簡単かつ正確に製作できる。さらに、そうしたピストンは、特に金属製であり調整路も金属部品中に形成されている場合は、特に耐熱性である。
【0012】
特に好ましくは、調整路は、実質的に円筒形、部分円筒形または実質的に多角形の形状を有し、実質的に円筒形、部分円筒形または多角形のピストンによって封止される。これにより、製作技術上および機能上の利点が得られる。
【0013】
さらに、所望の容積補償が精密に達成でき、正確に見積もることができる。
【0014】
好ましい代替の実施形態によれば、分配路中を可動な閉塞体が、分配路の側方を封止し、それにより分配路の有効長さを限定する、ピストンであるようになされている。調整路の排除体に関連して上で記述した利点は、有効長さを変更するための、分配路中を可動な閉塞体が、ピストンである場合も得られる。
【0015】
好ましい一発展形態によれば、分配路と調整路を互いに実質的に平行に配置することが提案される。実質的に細長く直線的に延びる分配路と、実質的に細長く直線的に延びる調整路の平行配置により、さらなる製作技術上の利点が得られる。さらに、コンパクトな構造および有利な流体流れが達成できる。
【0016】
分配路と調整路が、結合路によって相互に連通していることが妥当である。このとき、調整路を、供給路および分配路に対して、操作中に流体が供給路から調整路中に流れ、調整路を貫流し、次いで調整路と分配路(38)の間の結合路を貫流し、それから分配路およびスリットを貫流するように配置することが特に好ましい、なぜなら、このようにして、流体が流出口に到るまでのすべての中空スペースを貫流するので、流体に対する塗工幅の全調節範囲にわたって、例えば接着剤が交換されないデッドスペースを十分に回避することができるからである。したがって、好ましくない流体の分解または硬化および空気の包含が十分に回避できる。
【0017】
特に好ましいさらなる実施形態においては、装置が、スリットの長手方向に互いに相対的に可動な2つのノズル部品を有し、スリットが側方をこの2つのノズル部品によって画定され、スリットの有効長さが、両方のノズル部品同士の相対的移動によって変更されるようになされている。互いに相対的に可動な2つのノズル部品が設けられ、ノズル部品同士の対応する相対移動によってスリットの長さが変化することにより、コンパクトな構造が達成できる。また、これにより可動部品の数が減少する。
【0018】
一発展形態によれば、前記分配路および/または調整路および/または結合路を、実質的に両方のノズル部品の一方の凹部、または両方のノズル部品における凹部として形成することが提案される。これにより、流れに好都合な過程および製作技術上の利点が実現できる。すなわち、例えば流路をノズル部品中の切削部として作り込むことができる。
【0019】
さらなる好ましい一実施形態においては、分配路を画定するためのピストンおよび/または調整路の容積を変更するためのピストンが、可動ノズル部品と機械的に、特に結合棒によって、結合されるようになされている。分配路中のピストンおよび/または調整路中のピストンと、可動ノズル部品との結合により、簡単な自動的容積補償が実現できる。スリットの長さを変更するためにノズル部品を動かすと、調整路の容積が自動的に調整される。このために、特に、単純な結合棒またはピストン棒が使用される。例えば、可動ノズル部品が、スリット長さを縮小するように動かされると、ピストンの対応した移動により調整路の容積が同時に増大する。両方のノズル部品の相互の相対運動は、機械的機構または原動機機構により、特にねじ付きスピンドルにより、または原動機、特に電動機を用いて、行うことができる。
【0020】
さらなる代替の実施形態によれば、調整路の容積を変えるためのピストンが、前記流体が貫流できる少なくとも1つの貫通孔を有することが提案される。ピストンに貫通孔が存在すると、流体は簡単に供給路から、ピストン中の1個または数個の貫通孔を通って、調整路中に導入できる。このピストンは、特に管として形成され、この管は外側で実質的に金属で封止されて、対応する形状の調整路の内部に可動に配置された外径を有し、したがって、流体が同時に管の内側を通って供給路から調整路中に流れることができ、そこからさらに、特に結合路を通って分配路中に導入される。
【0021】
このような、調整路中に排除体を構成する管状のピストンは、容易に製作でき流体を有利な形で供給できる。
【0022】
代替の一実施形態においては、ピストンが複数本の貫流路を有し、これらを通して流体が調整路から分配路中に流入できるようにさらになされている。このとき、前記ピストンは、外側が封止されて、調整路の内部で可動である。調整路の一側は供給路と流体連通している。ピストンが移動すると、同時に調整路の容積が増大し、分配路の容積とその長さが縮小する。調整路と分配路はこのとき特に面一かつ同軸に相互に隣接して配置されている。ピストンが、調整路と分配路を相互に分離し、ピストンを移動すると、調整路と分配路の容積が同時に変化する。
【0023】
代替の一実施形態によれば、ピストンが、管として形成された第1の部分を有し、これを通して流体が流体供給路から貫流でき、また封止されて調整路中に配置された耐密部分を有し、これが管の一端を画定し、また管が複数本の貫通孔を有し、これらを通して流体が管から調整路中に、またそこから結合路を通って分配路中に流入できることが提案される。
【0024】
本発明を、いくつかの好ましい例示的実施形態を用いて、添付図面を参照しながら以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の例示的実施形態における流体を基層上に吐出する装置の斜視図である。
【図2】図1の装置の平面図である。
【図3】図1の装置の左方から見た図である。
【図4】図1の装置の右方から見た図である。
【図5】図1の装置の背面斜視図である。
【図6】a)は、図1の装置の、スリット長さが長い調節状態における、部分断面図である。b)は、図1の装置の、スリット長さが中程度の調節状態における、部分断面図である。c)は、図1の装置の、スリット長さが短い調節状態における、部分断面図である。
【図7】別の例示的実施形態における流体を吐出する装置の模式図である。
【図8】図7の装置の部分断面図である。
【図9】別の例示的実施形態における流体を吐出する装置の模式図である。
【図10】図9の装置の部分断面図である。
【図11】別の例示的実施形態における流体を吐出する装置の模式図である。
【図12】図11の装置の部分断面図である。
【図13】別の例示的実施形態における流体を吐出する装置の模式図である。
【図14】側面図の部分断面図である。
【図15】別の例示的実施形態における流体を吐出する装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
これらの図に示される例示的諸実施形態は、流体を、基層上に、特に装置に対して相対的に可動な基層上に吐出する装置1に関する。この装置は、接着剤、熱溶着接着剤のような様々な流体を吐出し、本、本の背、フィルムなど様々な基層上に塗工することができる。特に、この装置は、接着剤で様々な基層に面状のコーティングを行うのに使用できる。もちろん、別の流体を、別の基層上に、面状または条片状にまたは細い糸状に塗工することもできる。
【0027】
特に図1に示されるように、装置1は単に模式的に示された基体2を有する。基体2により、装置1は、図示されていない枠組みに所望の組込み姿勢で設置され、例えば本のような基層が装置1の横を通り抜けることができ、その結果、吐出された流体が基層上に塗工される。基体2の中または上に、既知のようにして、供給された流体を通しまたは遮断する弁機構、制御装置、加熱装置、空気圧弁の場合は圧力空気結合具および流路、また電気式弁駆動装置の場合は電気結合具および支持装置を設けることができる。流体を供給するために、流体供給路を基体2中に設けることもできる。
【0028】
装置1は、さらに、基体2に脱着可能に固定されたノズル機構4を有する。このノズル機構4は、基体2にねじ留めされた第1のノズル部品6を有する。基体2およびノズル部品6の機能は、1つの部品にまとめることもできる。図5の背面図が示すように、ノズル部品6は流体供給路8を有し、これは流体源(図示せず)と連通している流体供給路と連通するが、後者は基体2中に形成されている。流体供給路8を通って流体はノズル機構4に導入される。供給路は貫通孔として形成され、図6の部分断面図においても認めることができる。
【0029】
ノズル機構4は、さらに、第1のノズル部品6に対して相対的に可動な、別のノズル部品10を有し、これは固定具12により、静止したノズル部品6に、装置1への組込み姿勢に関係なく、矢印14の方向(図2)に往復動可能で、かつ脱落することがないように固定される。図1が示すように、固定具12は数個のねじ16でノズル部品6に固定される。固定具12は、断面が実質的に長方形で、1つの角部に切欠き16(図3)を備え、多くの平面によって限定されている。固定具12は、突出部18として形成された面で、可動ノズル部品10と接触する。
【0030】
ノズル機構4は、流体を供給でき、流体を吐出する流出口22を有する、細長いスリット20(図2)を有する。スリット20の長さ、すなわち両方向矢印14の方向の拡がりは、可変である。図1には、装置1、特にスリット20の流出口22に対する、基層の相対的運動方向が示されている。この例示的実施形態では、流出口22と基層の運動方向(両方向矢印23)は、実質的に相互に直交している。スリットの幅は、スリット20領域におけるノズル部品6と可動ノズル部品10の間隔によって規定される。この例示的実施形態において、スリット20は、ノズル部品6、10の間に対応する形状の凹部24,26を、特にノズル部品6、10の対向する表面に切削部を形成することによって形成される。可動のノズル部品10中の凹部24およびスリット20は、図6a、b、c中の図面でも見て取れる。例えば図2中に見て取れるように、静止したノズル部品6にも凹部26が形成されている。側方では、スリット20は、凹部24,26の側部境界によって画定され、これは図2において参照符号28、30で表され、図6にも示されている。スリット20の長手方向に、したがって両方向矢印14の方向においても、側面28、30の間隔によりスリットの長さL、および流出口22の長さが決定される。
【0031】
可動ノズル部品10の、静止ノズル部品6に対する相対運動および移動により、特に図6a乃至cに明示されるように、長さが変化する。ノズル部品10の相対運動のために、本例示的実施形態においては、その詳細は示していないがスピンドル機構が設けられる。このスピンドル機構は、基体2の一部分の孔中に回転可能に支承されたねじ付きスピンドル、およびノズル部品10に設けられた内ねじ13を有し、これとねじ付きスピンドルの外ねじが噛み合い、ねじ付きスピンドルを回転することにより、ノズル部品10が軸方向、両方向矢印14の方向に往復運動できる。ねじ付きスピンドルを回転することにより、ノズル部品10は、図6a乃至cに例示的に示される様々な位置に移動して、スリット20の長さを無段変更できる。
【0032】
図6で明らかなように、供給路8は、調整路32と連通し、したがって供給路8からの流体が、調整路32中に導入できる。調整路32は、ノズル機構4の内部に形成されている。調整路32は、本例示的実施形態においては、実質的に円筒形に形成され、静止ノズル部品6において、断面が半円形の凹部34が切削され、可動ノズル部品10に断面が同じく半円形の凹部36が形成されており、その結果、全体として断面が実質的に半円形または部分円筒形の調整路32が形成される。
【0033】
図4および図6で明らかなように、ノズル機構4はさらに横方向分配路38を有し、これは実質的に部分円形の流路として形成されており、両方向矢印14の方向に、したがってスリット20の長手方向に延びる。分配路38は、スリット20と連通し、その結果、流体がスリット20の流出口22から均一に流出できる。分配路38側も調整路32と、したがって供給路8と、つまり流体源と流体連通している。分配路38と調整路32間の流体連通は、本例示的実施形態においては、結合路40によって実現され(図6参照)、これは一方では調整路32の一部と、他方では分配路38の一部と連通している。結合路40は、可動ノズル部品10における凹部の形で形成されている。これは、しかし静止ノズル部品6、または静止ノズル部品6および可動ノズル部品10における凹部として形成されてもよい。
【0034】
調整路32中の流体を収容する容積は変更可能である。この目的のために、ピストン44の形態の排除体42が、調整路32内部に可動に配置される。ピストン44の端部領域に、例えばOリング・パッキン46(図6)として形成された、パッキンを設けることができる。ピストン44の形態の排除体42が動くことにより、供給路8からの流体が充填できる調整路32の有効容積が変更される。図6で、ピストン44が、左に動くと、調整路32の流体が充填できる容積が増大する。ピストン44が、右に動くと、調整路32の容積は縮小する。
【0035】
ピストン44として形成された排除体42は、本例示的実施形態において、調整路42の外部にある部分、とりわけ図5に示されるその端部で、孔50に通されたねじ48により、ねじ48を受けるためのねじ穴が設けられている可動ノズル部品10と結合される。排除体42を可動ノズル部品10と結合することにより、ノズル部品10が動かされると、排除体42は、調整路32の内部を動き、したがってその流体を収容する容積が変化する。
【0036】
分配路38中に閉塞体54がピストン56の形態に形成され、その端部にもOリング58の形態の封止要素が配置され、その結果、ピストン56が横方向分配路38の内部で封止されて配置される。可動でかつ同時に封止されたこの配置により、分配路38の流体で充填できる有効長さが変更可能である。これにより、スリット20の有効長さも同時に変更可能となる。上述の通り、様々な長さを、すでに、図6a乃至cに示した。
【0037】
とりわけ図5に明示されるように、ピストン56のある部分、特に端部60(図5の左方参照)は、可動ノズル部品10と結合されている。このために、外ねじの付いたねじ62が、ピストン56の貫通孔64に通され、ノズル部品10に切られた内ねじにねじ込まれる。これにより、可動ノズル部品10が動くと、常に、分配路38の流体で充填できる有効長さが変更されることになる。
【0038】
同時に、可動ノズル部品10が、スリット20の長さを変更するために動かされると、必ず一方では、分配路38の有効長さおよび容積が変化し、調整路32の流体で充填できる有効長さおよび容積が変化する。分配路38および調整路32の寸法設定、およびスリット20の寸法設定により、可動ノズル部品10が動くことによって分配路38の長さが変化する際に、分配路38、スリット20および調整路32の総容積が実質的に一定に保たれる。その結果、ノズル部品10を移動したとき、分配路38の有効長さが、したがってスリット20の長さが増大するかまたは縮小するかに応じて、流体が流出口22から押し出されることも、空気がスリット20中に侵入することもない。
【0039】
図示されていないが、調整路32の形状および/または分配路38の形状はまた半円形でなく、例えば長方形、正方形、多角形、楕円形、円形のような多角形であってもよい。その形状に応じて、排除体42あるいはピストン44の形状、および閉塞体54およびピストン56の形状が適合されることになる。
【0040】
明らかに認められるように、調整路32と分配路38は、本例示的実施形態において、実質的に互いに平行に配置されている。原理的には、その代りに非平行な配置にすることも考えられる。
【0041】
操作中に前記流体は、以下のように装置1を流れる。供給路8を通って、流体は、ノズル機構4内に導入され、調整路32に流入する。調整路32から出て、流体は結合路40(図6)を貫流する。結合路40から出て流体は横方向分配路38に達し、そこからスリット20を通って流れ、流出口22を通って装置1から吐出され、基層上に塗工される。
【0042】
特に図6が示すように、調整路32ならびに横方向分配路38の、貫流される有効長さは変更可能である。この有効長さは、分配路38における閉塞体54のそのときどきの位置、または調整路32における排除体42の位置によって決定される。図6aにおいては、調整路32の長さは比較的短く、分配路38の長さおよびスリット20の長さは長い。図6bにおいては、調整路32および分配路38の中間的長さが示されている。図6cにおいては、調整路32の長さは比較的長く、分配路38の長さおよびスリット20の長さは、比較的短い。これは、可動ノズル部品10のそのときどきの位置の結果である。
【0043】
図1および図3が示すように、ノズル機構4は、剥離縁70を有し、これは可動ノズル部品10の凹部72によって形成される。剥離縁70において、図3の左から右に動く、流体で塗工された基層が、ノズル機構、特にノズル部品10の表面と接触しなくなる。これにより流体がうまく剥ぎ取られ、基層に残留する。
【0044】
一方では調整路32の容積、他方では分配路38およびスリット20の容積を、同時に変化させるための、ピストン44、56の機械的結合の代りに、機械的結合手段以外の結合手段を設けてもよい。例えば原動機で駆動される駆動機構を設けて、スリット20の長さを変化させたとき、分配路38ならびにスリット20および調整路32の容積の合計が実質的に一定に保たれるように、制御装置により、ピストン44または56を制御してもよい。
【0045】
以下すべての例示的実施形態において共通なのは、容積補償が行われることである。すなわち、長さが可変なスリット20の流出口22の有効長さを変更させる際に、調整容積または調整路32により、スリット20、これと連通する横方向分配路38、および分配路38および/またはスリット20と連通する調整路32の総容積を、長さの変動の場合に実質的に一定に保つことができる。どの場合にも、すべての例示的実施形態は、調整容積を有し、または流体で充填できるその容積が変更可能であり、分配路38と連通する、調整路32を有する。
【0046】
図7および図8に示される流体を吐出する装置1の代替の例示的実施形態は、上述した例示的実施形態と類似の構成部品および機能を有する。その限りで同じ参照符号が使用され、上記の記載がそのまま参照される。以下に、実質的に代替の例示的実施形態の相違点を記載する。
【0047】
基体2中に、供給路8が形成され、これは流体源と連通している。前記流体供給路8は、一方では調整路32と、他方では基体中に形成され横方向分配路38と流体連通している結合路40と、連通している。分配路38は、スリット状で流体が吐出できる流出口22を有するスリット20と連通している。
【0048】
分配路38およびスリット20の流体で充填できる有効長さは、閉塞体56を形成する、その長手軸方向に可動な封止されたピストン58が可動に配置されることで、変更することができる。ピストン58の端部に、スリット20の側方を画定する翼体57が形成される。ピストン58が往復動して、スリット20の長さを変更できる。
【0049】
調整路32の容積も同様に変更することができる。このために、分配路32中には、ピストン44の形態の排除体42が、封止されて可動に配置される。このために、ピストン44は、矢印14の方向に、したがってその長手軸の方向に往復動できる。
【0050】
代替策として、図7および8に示された装置は、調整路を形成する、容積が変更可能な環状空間32’を貫流する流体供給路8’が基体2中に形成されるように形成することができる。容積を変更するために、ピストン44の形態の排除体42が、調整路32’内部に、その容積が変更できるように可動に設けられる。環状の調整路32’は、結合路40と連通し、後者は既述したようにやはり分配路38と流体連通している。
【0051】
図9および図10に示された代替の例示的実施形態は、基体2中に形成された調整路32中に、排除体42またはピストン44が管として形成され、両方向矢印14の方向に長手方向に可動に配置され、その結果、調整路32の容積が変更できるという点で、上述の例示的実施形態と、実質的に相違している。流体源からの流体の供給は、上端が例えばチューブと結合できる、管状ピストン44の内部の中空空間43を通して行われる。流体は、調整路32をさらに図9の下方に流れ、結合路40を貫流し、続いて横方向分配路38に流入でき、これはスリット20に連通している。この分配路38もまた、特に、図7の例示的実施形態に関してすでに既述したように、スリット20の長さを変更可能にするために、その有効長さが変更可能である。
【0052】
図11および図12に示された代替の例示的実施形態についても、上述の記載内容が、そのまま参照される。流体を吐出する装置1は同様に基体2を有する。基体2中に環状路として形成された調整路32を通って、流体が供給路から導入できる。この場合も、管状の排除体が調整路32の内部に可動に配置される。管状の排除体42の下端に、封止されたピストン44が設けられ、これは管の内部中空空間43を閉鎖する。さらに、管状の排除体42の外周上に分配して複数本の貫流路82が形成され、これらを通して流体が内部空間43から調整路32に流入することができる。この流体はさらに、上部で調整路32と連通する結合路40を通って、調整路32から横方向分配路38中に流れ、そこから既述のようにしてスリット20中に流れる。
【0053】
図13および図14に示された例示的実施形態において、流体は、装置1の供給路から環状の調整路32を通って供給される。実質的に円筒形のピストン44は、封止されており、調整路32の内部で両方向矢印14の方向に動くように可動である。ピストン44中には好ましくは複数本の貫流路82が形成されていて、これらを通って流体が調整路32から、やはり環状流路として形成されていて流出口22を有するスリット20と連通している、分配路38中に流入できる。ピストン棒47は、基体の部分49を封止されて貫通し、ピストン44を支承する働きをする。
【0054】
最後に、図15は、さらなる代替の例示的実施形態を示す。この場合、流体は上から環状の調整路32に流入する。実質的に円筒形のピストン44が、封止されて調整路32の内部で両方向矢印14の方向に動くように配置される。ピストン中には、ピストンの長手軸に対して斜めに延びる複数本の貫流路82が形成され、これらを通って流体が調整路32から内部中空空間43中に流入できる。調整路32は、管状部分に形成されている。中空空間43は、横方向分配路38に開口し、後者は閉塞体42の管状部分によって画定され、流出口22を有するスリット20に開口している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を基層上に吐出する装置であって、
基体(2)と、
流体源と連結でき流体を供給する流体供給路(8)と、
前記流体供給路(8)と連通する分配路(38)を備えるとともに、流体を吐出するための少なくとも1つの流出口(22)を有し、前記分配路(38)と連通する、実質的に細長いスリット(20)を備える、ノズル機構(4)とを具備し、
前記分配路(38)の、流体を充填できる有効長さを、前記分配路(38)中で可動な閉塞体(54)によって変化させることができる装置において、
調整路(32)が、前記分配路(38)と流体連通しており、前記調整路(32)の、流体を収容する容積が変更可能であることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記分配路(38)の有効長さを調節したとき、前記分配路(38)と、前記調整路(32)と、前記スリット(20)との、流体で充たされた総容積が、実質的に一定であるように、前記調整路(32)の容積を、前記分配路(38)の流体で充たされたそのときどきに有効な容積の大きさに応じて変更可能であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
排除体(42)が、前記調整路(32)の内部に可動に配置されていることによって、前記調整路(32)の容積が変更可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記排除体(42)が、前記調整路(32)の内部に、封止されて可動に配置されたピストン(44)であることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記調整路(32)が、実質的に円筒形、部分円筒形、または実質的に多角形の形状であり、実質的に円筒形、部分円筒形、または多角形のピストン(44)によって封止されていることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記分配路(38)中で可動な前記閉塞体がピストン(56)であり、前記分配路(38)を側方で封止し、それにより前記分配路(38)の有効長さを限定することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記分配路(38)と前記調整路(32)が、互いに実質的に平行に配置されていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記分配路(38)と前記調整路(32)が、結合路(40)によって相互に流体連通していることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
操作中に流体が、前記供給路(8)から前記調整路(32)中に流入し、前記調整路(32)を貫流し、次いで前記調整路(32)と前記分配路(38)の間の前記結合路(40)を貫流し、さらに前記分配路(38)および前記スリット(20)を貫流するように、前記調整路(32)が前記供給路(8)および前記分配路(38)に対して配置されていることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記スリットの長手方向に相対的に可動な2つのノズル部品(6、10)を有し、前記スリット(20)が、前記2つのノズル部品によって画定され、前記スリットの有効長さが、前記両方のノズル部品(6、10)を相対的に移動させることによって変更されることを特徴とする、 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記分配路(38)および/または調整路(32)および/または結合路(40)が、実質的にノズル部品(6、10)の一方における凹部として、またはノズル部品(6、20)の両方における凹部(24、26)として形成されていることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記分配路(38)を画定するための前記ピストン(56)、および/または、前記調整路(32)の容積を変化させるための前記ピストン(44)が、機械的に前記可動ノズル部品(10)と、特に連結棒により結合されていることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記2つのノズル部品(6、10)の一方が、駆動機構、特にねじ付きスピンドルによって移動可能であることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の装置において、
前記調整路(32)の容積を変化させるための前記ピストン(44)、および/または前記分配路(38)の長さを調節するための前記ピストン(56)が、原動機、特に電動機によって移動可能であることを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記調整路(32)の容積を変化させるための前記ピストン(44)が、少なくとも1つの貫通孔(64)を有し、前記貫通孔(64)を前記流体が貫流できることを特徴とする、請求項5乃至14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記ピストン(44)が、複数本の貫流路(82)を有し、前記貫流路(82)を通って前記調整路(32)からの流体が前記分配路(38)中に流入できることを特徴とする、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記ピストンが、管として形成された第1の部分を有し、前記第1の部分を通って前記流体供給路からの流体が貫流でき、また、前記調整路中に封止されて配置された耐密部分を有し、前記耐密部分が前記管の一方の端部を画定し、前記管が複数の貫通孔を有し、前記貫通孔を通って前記管からの流体が前記調整路に流入でき、そこから結合路を通って分配路に流入できることを特徴とする、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−218350(P2011−218350A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89164(P2011−89164)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(391019120)ノードソン コーポレーション (150)
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
【Fターム(参考)】