説明

流体アクチュエータ

【課題】ピストンの位置を正確に検出することができるようにする。
【解決手段】プローブ11bのフランジ32と縮径部21との間に設けられた板ばね51によって、フランジ32がロッドエンド5bに押し付けられているので、プローブ11bのロッドエンド5b側(右側)への移動が抑制されるとともに、プローブ11bの左側への移動が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機等に用いられる流体アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機等に用いられる流体アクチュエータにおいては、シリンダ内を摺動するピストンの位置を検出する差動トランス(LVDT:Linear Voltage Differential Transformer)が多用されている。差動トランスは、ピストンの位置の変位を電気信号で出力する。
【0003】
特許文献1には、ピストンロッドの内部に挿入されたバランス部材に対して固定されるボビン(コイル部)と、ピストンロッドの操舵翼側フック部材(ロッドエンド)に螺合されることで、ピストンロッドに対して固定されるコアロッド(プローブ)とを有する差動トランス型位置検出器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−184822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プローブをロッドエンドに螺合させる構成では、螺合が緩みやすく、螺合量が変化すると、プローブのコイル部への挿入量が変化して、ピストンの位置を正確に検出することができなくなるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、ピストンの位置を正確に検出することが可能な流体アクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の流体アクチュエータは、シリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に収納されたピストンと、前記ピストンと一体に形成され、前記ピストンの摺動方向に沿って、前記シリンダの内部から外部にかけて設けられたピストンロッドと、前記ピストンの位置を検出する検出手段と、を有し、前記ピストンロッドは、他の部分よりも縮径された縮径部を有する中空のロッド部と、前記ロッド部の一端部に固定されて前記ロッド部を閉塞するロッドエンドと、を有しており、前記検出手段は、前記ロッド部の他端側に位置するように配置された中空円筒状のコイル部と、前記縮径部に挿入されており、前記コイル部側から前記ロッドエンドに当接するフランジを備え、前記ピストンの摺動に伴って前記コイル部内を進退可能な棒状のプローブと、を有しており、前記フランジと前記縮径部との間に設けられ、前記フランジを前記ロッドエンドに押し付けることで、前記プローブが前記ピストンの摺動方向に移動するのを抑制する付勢手段を有することを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、付勢手段によって、プローブのフランジがロッドエンドに押し付けられているので、プローブのロッドエンド側への移動が抑制されるとともに、プローブのコイル部側への移動が抑制される。よって、プローブの位置がピストンの摺動方向にずれることがないので、検出手段によりピストンの位置を正確に検出することができる。
【0009】
また、本発明の流体アクチュエータにおいて、前記プローブは、前記ロッド部内の前記縮径部よりも前記コイル部側の空間に充満された流体の圧力で前記ロッドエンド側に付勢されていてよい。上記の構成によれば、プローブがロッドエンド側に付勢されているので、プローブのコイル部側への移動がさらに抑制される。また、仮に付勢手段が破損して、プローブをロッドエンドに押し付ける付勢力がなくなったとしても、流体の圧力によりプローブのコイル部側への移動を抑制することができる。
【0010】
また、本発明の流体アクチュエータにおいては、前記プローブと前記ロッドエンドとが螺合されており、前記プローブと前記ロッドエンドとの螺合部に設けられ、前記プローブが前記ピストンの摺動方向に移動するのを抑制する固定手段を更に有していてよい。上記の構成によれば、プローブとロッドエンドとの螺合部に設けられた固定手段により、ピストンの摺動方向に沿ったプローブの移動をさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の流体アクチュエータによると、付勢手段によって、プローブのロッドエンド側への移動が抑制されるとともに、プローブのコイル部側への移動が抑制される。よって、プローブの位置がピストンの摺動方向にずれることがないので、検出手段によりピストンの位置を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の流体アクチュエータを有する航空機の概略図である。
【図2】本実施形態による流体アクチュエータを示す概略断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
(航空機の構成)
本実施形態による流体アクチュエータ1は、図1に示すように、航空機41に設けられている。
【0015】
図1に示すように、航空機41には、その飛行姿勢や飛行方向を変化させたり、その受ける揚力を変化させたりするための複数の可動部が翼に設けられている。例えば、主翼46には離着陸時に高揚力を発生させるためのフラップ43や、機体のローリングのためのエルロン42が設けられている。また、水平尾翼47には、機首の上げ下げのためのエレベータ44が設けられている。さらに、垂直尾翼48には機体のヨーイングのためのラダー45が設けられている。これらの可動部は、翼に対する取り付け角が変化したり翼に対して並進移動したりするように変位可能に取り付けられており、このように変位させることで航空機41の飛行姿勢や飛行方向を変化させたり高揚力を発生させたりする。
【0016】
これらの可動部にはそれぞれ油圧式の流体アクチュエータ1が設けられている。流体アクチュエータ1は、これら可動部の翼への取り付け角度を変化させたり、翼に対して可動部を並進移動させたりするためのアクチュエータであり、圧油(流体)が給排されることで動作する。なお、流体アクチュエータ1を動作させる流体として圧油を用いて説明するが、流体は燃料や大気であってもよい。
【0017】
(流体アクチュエータの構成)
流体アクチュエータ1は、図2に示すように、シリンダ3と、シリンダ3内に摺動可能に収納されたピストン4と、ピストン4と一体に形成されたピストンロッド5と、を有している。シリンダ3とピストン4とはシールされている。
【0018】
ピストンロッド5は、ピストン4の摺動方向に沿って、シリンダ3の内部から外部にかけて設けられている。ピストンロッド5は、シリンダ3の右側を貫通する中空のロッド部5aと、シリンダ3の外部に位置し、ロッド部5aの右端部に螺合により固定されてロッド部5aを閉塞するロッドエンド5bと、を有している。ロッド部5aの図中左端には、ピストン4が一体に形成されている。ロッドエンド5bには、航空機41の可動部(図示せず)が連結されている。なお、ピストンロッド5とシリンダ3とはシールされている。
【0019】
また、シリンダ3内には、ピストン4の摺動方向に沿って、中空円筒状の位置制御部材6が設けられている。位置制御部材6は、ピストン4の中心を貫通しており、ピストン4が摺動方向に沿って摺動するのをガイドしている。
【0020】
シリンダ3内は、ピストン4により、左側のシリンダ室3aと右側のシリンダ室3bとに分割されている。シリンダ室3a,3bには、図示しない流入出通路がそれぞれ連通している。この流入出通路を介してシリンダ室3a内に高圧の圧油が流入された場合には、ピストン4は図中右側に移動する。これにより、ピストンロッド5はシリンダ3から突出する方向(図の右方向)に向かって移動するとともに、シリンダ室3b内の低圧の圧油が流入出通路から排出される。一方、流入出通路を介してシリンダ室3b内に高圧の圧油が流入された場合には、ピストン4は図中左側に移動する。これにより、ピストンロッド5はシリンダ3内に引っ込む方向(図の左方向)に向かって移動するとともに、シリンダ室3a内の低圧の圧油が流入出通路から排出される。
【0021】
ここで、ピストン4と位置制御部材6とは、シールされていない。そのため、ロッド部5aの内部は、シリンダ室3aから流入した圧油で満たされている。
【0022】
ピストンロッド5内及び位置制御部材6内には、ピストン4の位置を検出する差動トランス(LVDT(Linear Variable Differential Transformer))(検出手段)11が設けられている。この差動トランス11は、ロッド部5aの左端側に位置するように位置制御部材6の内部に設けられた中空円筒状のコイル部11aと、右端部がロッド部5aに固定され、ピストン4の摺動に伴ってコイル部11aの内部を進退可能な棒状のプローブ11bと、を有している。コイル部11aの内部には、一次側コイルおよび二次側コイルが巻き付けられている。プローブ11bの左端部には、コイル部11aの内部に挿入された図示しないコアが設けられている。
【0023】
コイル部11aの一次側コイルおよび二次側コイルには、信号線(図示せず)が接続されている。この信号線は、航空機の操縦室まで導かれている。そして、信号線を通じて、一次側コイルには一定電圧の交流が入力されるとともに、二次側コイルからはコイル部11aに対するプローブ11bの挿入量、即ちピストン4の位置に応じた検出信号(交流電圧)が出力される。
【0024】
図2のA部の部分拡大図である図3に示すように、ピストンロッド5の中空のロッド部5aは、他の部分よりも縮径された縮径部21を有している。この縮径部21には、ロッドエンド5b側(右側)から挿入されたプローブ11bの基部33が位置している。また、ロッド部5aの右端部には、ロッドエンド5bが螺合されている。プローブ11bには、ロッドエンド5bに設けられた凹部5cに嵌る凸部31と、コイル部11a側(左側)からロッドエンド5bに当接するフランジ32と、が設けられている。
【0025】
プローブ11bの基部33には、プローブ11bと縮径部21との隙間をシールするOリング等のシール材52が設けられている。これにより、ロッド部5a内の空間24に充満した圧油は、ロッドエンド5bと基部33との間の空間23内の大気から隔離されている。
【0026】
また、縮径部21とフランジ32との間には、フランジ32をロッドエンド5bに押し付ける板ばね(付勢手段)51が設けられている。板ばね51の付勢力により、プローブ11bがピストン4の摺動方向に移動するのが抑制されている。
【0027】
このように、板ばね51によって、プローブ11bのフランジ32がロッドエンド5bに押し付けられているので、プローブ11bのロッドエンド5b側(右側)への移動が抑制されるとともに、プローブ11bのコイル部11a側(左側)への移動が抑制される。よって、プローブ11bの位置がピストン4の摺動方向にずれることがないので、差動トランス11によりピストン4の位置を正確に検出することができる。
【0028】
また、プローブ11bは、ロッド部5a内の縮径部21よりもコイル部11a側の空間24に充満された圧油(流体)の圧力で、ロッドエンド5b側に付勢されている。これにより、プローブ11bのコイル部11a側への移動がさらに抑制される。また、仮に板ばね51が破損して、プローブ11bをロッドエンド5bに押し付ける付勢力がなくなったとしても、圧油の圧力によりプローブ11bのコイル部11a側への移動を抑制することができる。
【0029】
なお、コイル部11aに対するコアの相対位置を微調整する場合には、ロッド部5aに対するロッドエンド5bの螺合量を変化させることで、ピストン4の摺動方向にプローブ11bを微動させればよい。
【0030】
(本実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0031】
例えば、本実施形態では、ロッドエンド5bに設けられた凹部5cにプローブ11bの凸部31が嵌っているだけであるが、凹部5cと凸部31とが螺合されていてもよい。
【0032】
また、本実施形態において、ロッドエンド5bに設けられた凹部5cとプローブ11bの凸部31とが螺合され、さらに、凹部5cと凸部31との螺合部に、インサートやペレットといった固定手段が設けられていてよい。インサートは、例えば(株)ツガミ製E−サート(登録商標)のように、断面が菱形の線がコイル状に巻かれたものであって、1本1本が雌雄のネジの隙間に噛み込むことで、凹部5cと凸部31との螺合が緩むのを防止する。ペレットは、塑性変形して雌雄のネジの隙間に充填されることで、凹部5cと凸部31との螺合が緩むのを防止する。これにより、ピストン4の摺動方向に沿ったプローブ11bの移動をさらに抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態において、プローブ11bの基部33と縮径部21とが螺合されていてもよい。さらに、これらの螺合部にインサートやペレットといった固定手段が設けられていてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、ピストン4の位置を検出する検出手段として、差動トランス(LVDT)11を用いて説明しているが、これに限定されず、検出手段は、計量部の回転に伴い誘導電圧が生成され、回転変位に比例した周波数を出力する変位センサであるRVDT(Rotary Variable Differential Transformer)等の各種ポテンショメータであってよい。
【0035】
また、本実施形態では、差動トランス11のプローブ11bがピストンロッド5の縮径部21に固定されているが、プローブ11bと縮径部21との間に、中継ロッドを有していてもよい。この場合、プローブ11bは、中継ロッドを介して縮径部21に固定されることになり、中継ロッドに基部33、凸部31、および、フランジ32が設けられることになる。
【符号の説明】
【0036】
1 流体アクチュエータ
3 シリンダ
4 ピストン
5 ピストンロッド
5a ロッド部
5b ロッドエンド
6 位置制御部材
11 差動トランス(検出手段)
11a コイル部
11b プローブ
21 縮径部
32 フランジ
52 シール材(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に収納されたピストンと、
前記ピストンと一体に形成され、前記ピストンの摺動方向に沿って、前記シリンダの内部から外部にかけて設けられたピストンロッドと、
前記ピストンの位置を検出する検出手段と、
を有し、
前記ピストンロッドは、
他の部分よりも縮径された縮径部を有する中空のロッド部と、
前記ロッド部の一端部に固定されて前記ロッド部を閉塞するロッドエンドと、
を有しており、
前記検出手段は、
前記ロッド部の他端側に位置するように配置された中空円筒状のコイル部と、
前記縮径部に挿入されており、前記コイル部側から前記ロッドエンドに当接するフランジを備え、前記ピストンの摺動に伴って前記コイル部内を進退可能な棒状のプローブと、
を有しており、
前記フランジと前記縮径部との間に設けられ、前記フランジを前記ロッドエンドに押し付けることで、前記プローブが前記ピストンの摺動方向に移動するのを抑制する付勢手段を有することを特徴とする流体アクチュエータ。
【請求項2】
前記プローブは、前記ロッド部内の前記縮径部よりも前記コイル部側の空間に充満された流体の圧力で前記ロッドエンド側に付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の流体アクチュエータ。
【請求項3】
前記プローブと前記ロッドエンドとが螺合されており、
前記プローブと前記ロッドエンドとの螺合部に設けられ、前記プローブが前記ピストンの摺動方向に移動するのを抑制する固定手段を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の流体アクチュエータ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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