説明

流体カートリッジ

【課題】流体カートリッジの部屋の容積を容易に変更可能な手段を提供することにある。
【解決手段】インクカートリッジ30は、インク部屋36にインクを貯留可能なフレーム31と、フレーム前壁40の下側に設けられており、インク室36から外部にインクを流出可能なインク供給部37と、インク室36をインク供給部37を含む第1部屋81とインク供給部37を含まない第2部屋82とに区分する第1壁43と、第2部屋82と第3部屋83とを区画する第2壁45と、第1部屋81、第2部屋82及び第3部屋83の側壁を構成しており、第1壁43及び第2壁45と固着されることによって各部屋をインクを貯留する部屋とすることが可能なフィルム38と、を具備する。フィルム38は、第1壁43の凹部44及び第2壁45の凹部46に対して固着されていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が貯留される流体カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクを用いて記録用紙(被記録媒体)に画像を記録するインクジェット記録装置が広く知られている。インクジェット記録装置は、インクジェット方式の記録ヘッドを備える。記録ヘッドは、インクカートリッジから供給されたインクを記録用紙へ向けてノズルから選択的に噴出する。インクカートリッジは、インクジェット記録装置に着脱可能に設けられる。
【0003】
上記インクカートリッジには、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのようないずれか一色を有するインクが貯留されている。インクジェット記録装置においては、各インク色の消費量が異なるので、例えば、ブラックのインクを貯留するインクカートリッジは、インクを貯留可能な容積を多くすることが考えられている。しかしながら、インクの容量に応じて、インクカートリッジの容積を変化させる必要があった。このような問題に対して、インク室内にブロック体を配置することによりインクカートリッジの容積を変化する構成が考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−67075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インクカートリッジの容積に対応させてブロック体を配置させる構成では、インクカートリッジの容積の種類に応じて部品点数が増加するという問題があった。また、インクカートリッジの容積に応じたブロック体を選択して組み付ける必要があるので、インクカートリッジの組み付け工程を自動化し難いという問題があった。
【0006】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、流体カートリッジの部屋の容積を容易に変更可能な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る流体カートリッジは、前面及び当該前面と対向する後面を有するフレーム内部に設けられた部屋に流体を貯留可能な本体と、上記前面の下側に設けられており、上記部屋から上記本体の外部に流体を流出可能な流体供給部と、上記部屋を上記流体供給部を含む第1部屋と上記流体供給部を含まない第2部屋とに区分する第1壁と、上記第2部屋を少なくとも2以上の部屋に区画する第2壁と、上記第1部屋及び上記第2部屋の少なくとも一部の壁を構成しており、上記第1壁及び上記第2壁と固着されることによって各部屋を流体を貯留する部屋とすることが可能な膜と、を具備する。上記膜は、上記第1壁及び上記第2壁に対して少なくとも一部が固着されていない。
【0008】
第2壁に対して膜の一部が固着されていないので、第2部屋の各部屋を流体が流通可能となり、第2部屋の各部屋を流体を貯留する部屋として用いることができる。一方、第2壁と膜とをすべて固着すると、第2部屋を流体が流通不能に区分できるので、第2部屋において流体を貯留可能な空間の容積を少なくできる。
【0009】
本発明は、前面及び当該前面と対向する後面を有するフレーム内部に設けられた部屋に流体を貯留可能な本体と、上記前面の下側に設けられており、上記部屋から上記本体の外部に流体を流出可能な流体供給部と、上記部屋を上記流体供給部を含む第1部屋と上記流体供給部を含まない第2部屋とに区分する第1壁と、上記第2部屋を少なくとも2以上の部屋に区画する第2壁と、上記第1部屋及び上記第2部屋の少なくとも一部の壁を構成しており、上記第1壁及び上記第2壁と固着されることによって各部屋を流体を貯留する部屋とすることが可能な膜と、を各々が具備する流体カートリッジセットであって、上記第2壁と上記膜とが固着されることにより上記第2部屋が流体が流通不能な2以上の部屋に区分された第1流体カートリッジと、上記膜が上記第2壁に対して少なくとも一部が固着されていないことにより上記第2部屋の各部屋を流体が流通可能な第2流体カートリッジと、を含む流体カートリッジセットとして捉えられてもよい。
【0010】
本発明は、前面及び当該前面と対向する後面を有するフレーム内部に設けられた部屋に流体を貯留可能な本体に対して、上記部屋から上記本体の外部に流体を流出可能な流体供給部を含む第1部屋と上記流体供給部を含まない第2部屋に区分する第1壁、及び上記第2部屋を少なくとも2以上の部屋に区分する第2壁に、上記第1部屋及び上記第2部屋の少なくとも一部の壁を構成する膜を固着させて、各部屋を流体を貯留可能な空間とする流体カートリッジの製造方法であって、上記膜を上記第2壁に対して少なくとも一部を固着しない工程を選択的に行う流体カートリッジの製造方法として捉えられてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第2壁に対して膜が固着されるか否かにより、第2部屋において流体を貯留可能な空間の容積を変更できるので、部品点数を増やすことなく流体カートリッジにおいて流体を貯留可能な容積を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施形態としてのカートリッジ装着部110を備えたプリンタ10の内部構造を模式的に示す模式断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態のインクカートリッジ30の外観構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態のインクカートリッジ30の内部構成を示す分解斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態の大容量インクカートリッジ30の内部構成を示す縦断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態の中容量インクカートリッジ30の内部構成を示す縦断面図である。
【図6】図6(A)は、図4におけるA−A断面を示す拡大断面図である、図6(B)は、図5におけるB−B断面を示す拡大断面図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態としてのカートリッジ装着部110の構成を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態のインクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態を示すインクカートリッジ30及びカートリッジ装着部110の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0014】
[プリンタ10の概要]
図1に示されるように、プリンタ10は、インクジェット記録方式に基づいて、記録用紙に対してインク滴を選択的に吐出することにより画像を記録するものである。プリンタ10は、インク供給装置100を備えている。インク供給装置100には、カートリッジ装着部110が設けられている。カートリッジ装着部110には、インクカートリッジ30が装着され得る。カートリッジ装着部110には、その一面が外部に開放された開口112が設けられている。インクカートリッジ30は、開口112を介してカートリッジ装着部110に挿入され、或いはカートリッジ装着部110から抜き出される。インクカートリッジ30が印刷流体カートリッジに相当する。プリンタ10が記録装置に相当する。
【0015】
インクカートリッジ30には、プリンタ10で使用可能なインクが貯留されている。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態において、インクカートリッジ30と記録ヘッド21とがインクチューブ20で接続される。記録ヘッド21にはサブタンク28が設けられている。サブタンク28は、インクチューブ20を通じて供給されるインクを一時的に貯留する。記録ヘッド21は、インクジェット記録方式によって、サブタンク28から供給されたインクをノズル29から選択的に吐出する。
【0016】
給紙トレイ15から給紙ローラ23によって搬送路24へ送給された記録用紙は、搬送ローラ対25によってプラテン26上へ搬送される。記録ヘッド21は、プラテン26上を通過する記録用紙に対してインクを選択的に吐出する。これにより、画像が記録用紙に記録される。プラテン26を通過した記録用紙は、排出ローラ対22によって、搬送路24の最下流側に設けられた排紙トレイ16に排出される。
【0017】
なお、本実施形態に係るプリンタ10の概略構成は一例に過ぎず、例えば、記録用紙の給紙方式や搬送方式、搬送路の形状などは、公知のインクジェットプリンタにおける他の構成が採用されてもよいことは言うまでもない。
【0018】
[インク供給装置100]
図1に示されるように、インク供給装置100は、プリンタ10に設けられている。インク供給装置100は、プリンタ10が備える記録ヘッド21へインクを供給するものである。インク供給装置100は、インクカートリッジ30を装着可能なカートリッジ装着部110を備えている。なお、図1においては、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着された状態が示されている。
【0019】
[インクカートリッジ30]
図2〜4に示されるように、インクカートリッジ30はインクが貯留される容器である。インクカートリッジ30の内部に形成されている空間がインクを貯留するインク室36である。なお、インク室36に貯留されているインクのインク室36の容積に対する割合は、大きい方が好ましい。具体的には、インク室36に貯留され、インク室36において高さ方向52の下側を占めるインクと、インク室36において高さ方向52の上側を占める空気との界面が、後述する残量検知部33よりも上側となることが好ましい。インク室36が部屋に相当する。
【0020】
インクカートリッジ30は、図2に示された起立状態、つまり、同図の下側の面を底面とし、同図の上側の面を上面として、カートリッジ装着部110に対して矢印50(図8参照)で示される方向(以下「挿入及び取出方向50」と称する。)に沿って挿抜される。すなわち、インクカートリッジ30は、挿入向き56(図8参照)に沿ってカートリッジ装着部110に挿入され、また、取出向き55(図8参照)に沿ってカートリッジ装着部110から抜き出される。インクカートリッジ30は、起立状態のままカートリッジ装着部110に挿抜される。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される向きが挿入向き56であり、抜き出される向きが取出向き55である。起立状態における高さ方向52が、重力方向に相当する。
【0021】
インク室36を区画するフレーム31は、カバー32により覆われている。カバー32は、インクカートリッジ30の外形を構成している。後述される残量検知部33及びインク供給部37は、カバー32から露出されている。フレーム31及びカバー32によりインクカートリッジ30の本体が構成されている。
【0022】
図3,4に示されるように、カバー32の内部には、略直方体形状のフレーム31が設けられている。フレーム31は、幅方向(左右方向)51に細く、高さ方向(上下方向)52と奥行き方向(前後方向)53が幅方向51よりも大きい扁平形状である。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ装着されるときに前方側となるフレーム31の壁がフレーム前壁40であり、後方側となるフレーム31の壁がフレーム後壁42である。フレーム前壁40とフレーム後壁42とは、奥行き方向53において対向している。フレーム前壁40及びフレーム後壁42は、フレーム前壁40及びフレーム後壁42とを接続し、かつフレーム前壁40の上端からフレーム後壁42の上端に向けて延びるフレーム上壁39、及びフレーム前壁40の下端からフレーム後壁42の下端に向けて延びるフレーム下壁41、の4つの壁によりそれぞれ区画されている。フレーム上壁39、フレーム前壁40、フレーム下壁41及びフレーム後壁42の幅(幅方向51の寸法)は、一定である。なお、挿入及び取出方向50は奥行き方向53と平行である。フレーム前壁40は前面に相当し、フレーム後壁42は後面に相当する。フレーム上壁39、フレーム前壁40、フレーム下壁41及びフレーム後壁42がフレームの外壁に相当する。
【0023】
フレーム31は、その内部にインク室36を有する。インク室36は、インク室36は、フレーム31及びフィルム38により区画される空間である。インク室36を区画する各部材の内面は、その殆どの部分において平面または曲面で構成されており、凹凸は殆ど設けられていない。
【0024】
フレーム31において、奥行き方向53のほぼ中央には、高さ方向52へ延出されてフレーム上壁39とフレーム下壁41とを接続する第1壁43が設けられている。第1壁43は、第1壁43は、フレーム上壁39とフレーム下壁41とに渡ってフレーム31の内部空間を分断するように設けられており、インク室36を、後述されるインク供給部37と連続するフレーム前壁40側の第1部屋81と、インク供給部37を含まないフレーム後壁42側の第2部屋82とに区分する。
【0025】
図3,4に示されるように、第1壁43は、幅方向51においてフレーム前壁40等の外壁と同じ幅であるが、高さ方向52の下側であってフレーム下壁41付近に、幅方向52へ窪む凹部44が形成されている。同図には現れてないが、凹部44は、第1壁43において幅方向52に対向するように、第1壁43の両側に一対が設けられている。この凹部44に対応する箇所の第1壁43の幅は、フレーム前壁40等の他の外壁の幅より狭い。凹部44における幅方向51の端面は、第1壁43の幅方向51の端面と連続する曲面である。
【0026】
フレーム31において、第1壁43よりフレーム後壁42側には、高さ方向52へ延出されてフレーム上壁39とフレーム下壁41とを接続する第2壁45が設けられている。第2壁45は、フレーム上壁39とフレーム下壁41とに渡ってフレーム31の内部空間を分断するように設けられており、第2部屋82を、フレーム前壁40側の第2部屋82と、フレーム後壁42側の第3部屋83とに区分する。
【0027】
図4に示されるように、第2壁45は、幅方向51においてフレーム前壁40等の外壁と同じ幅であるが、高さ方向52の下側であってフレーム下壁41付近に、幅方向52へ窪む凹部46が形成されている。同図には現れてないが、凹部46は、第2壁45において幅方向52に対向するように、第2壁45の両側に一対が設けられている。この凹部46に対応する箇所の第2壁45の幅は、フレーム前壁40等の他の外壁の幅より狭い。凹部46における幅方向51の端面は、第2壁45の幅方向51の端面と連続する曲面である。
【0028】
図2〜4に示されるように、フレーム31のフレーム前壁40における高さ方向52の中央付近には、残量検知部33が設けられている。残量検知部33は、幅方向51に細く、高さ方向52と奥行き方向53が幅方向51よりも大きい扁平形状である。残量検知部33は中空であり、第1部屋81とインクが流通可能に通じている。つまり、残量検知部33と第1部屋81との間には隔壁が存在しない。残量検知部33が突出部に相当する。
【0029】
残量検知部33の中空部分にはセンサーアーム60のインジケータ部62が挿入されている。センサーアーム60は、板状のアーム本体61の両端に、インジケータ部62及びフロート部63とがそれぞれ設けられたものである。センサアーム60は、第1部屋81において、幅方向51に沿って延びる支軸64により回動可能に支持されている。センサーアーム60は、第1部屋81に存在するインク量に対応して、インジケータ部62が残量検知部33の高さ方向52下側に位置する下位姿勢と、インジケータ部62が残量検知部33の高さ方向52上側に位置する上位姿勢に姿勢変化可能である。なお、図4では、インジケータ部62が下位姿勢であり、第1部屋81内にインクが所定量存在する状態が示されている。
【0030】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態において、カートリッジ装着部110に設けられた光センサ114に対して、残量検知部33は、赤外光を所定量以上透過させる状態と、残量検知部33が赤外光を所定量未満に遮光又は減衰させる状態とに変化する。インジケータ部62が上位姿勢であれば残量検知部33は赤外光を透過させ、インジケータ部62が下位姿勢であれば、残量検知部33は赤外光を遮光又は減衰させる。この残量検知部33の透光状態に応じて、第1部屋81内のインク残量が所定量未満になったことが判定される。
【0031】
図2〜4に示されるように、フレーム31のフレーム前壁40における高さ方向52の中央より下側に、インク供給部37が設けられている。インク供給部37は、円筒形状の外形をなしており、フレーム前壁40から挿入及び取出方向50に沿って外側へ突出している。インク供給部37の突出端にはインク供給口71が形成されている。このインク供給口71からインク供給部37の内部空間を通じて、挿入及び取出方向50に延びて第1部屋81へ通ずるインク流路72が形成されている。インク供給口71は、インク供給バルブ70によって開閉可能に構成されている。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、カートリッジ装着部110に設けられたインクニードル122(図7参照)が、インク供給口71に挿入されてインク供給バルブ70を開く。これにより、インク流路72を通って第1部屋81から、カートリッジ装着部110に設けられたインクニードル122へインクが流出される。インク供給部37が流体供給部に相当する。
【0032】
なお、インク供給口71は、必ずしもインク供給バルブ70によって開閉可能な構成に限定されず、例えば、インク供給口71がフィルムやゴム栓などで閉塞されており、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、インクニードル122がフィルムを突き破ることによりインク供給口71が開かれる構成であってもよい。
【0033】
フィルム38は、矩形の膜であり、外形がフレーム31の外形と同等である。フィルム38は、フレーム31の幅方向51の両側に配置されて、インク室36としての第1部屋81、第2部屋82及び第3部屋83の両側壁を構成する。フィルム38は、フレーム31の幅方向51の端面、第1壁43の幅方向51の端面、及び第2壁45の幅方向51の端面に熱圧着されることにより、フレーム31の固着される。フィルム38の固着により、第1部屋81、第2部屋82及び第3部屋83がインクを貯留可能な空間となり得る。
【0034】
図4に示されるように、第1部屋81、第2部屋82及び第3部屋83の各部屋にインクを貯留する態様のインクカートリッジ30、つまり大容量のインクカートリッジ30を構成するときには、図6(A)に示されるように、フィルム38は、第1壁43の凹部44及び第2壁45の凹部46に対しては固着されない。したがって、凹部44,46とフィルム38との間にインクが流通可能な隙間が形成される。これら隙間を通じて、第1部屋81、第2部屋82及び第3部屋83をインクが相互に流通可能となる。凹部44,46は、フレーム下壁41付近に設けられているので、装着姿勢においてインクが消費されると、第1部屋81、第2部屋82及び第3部屋83のインクの界面は、同様に下側へ降下する。凹部44,46が、第1壁43及び第2壁45に対してフィルム38の一部が固着されていない部分に相当する。
【0035】
図5に示されるように、第1部屋81及び第2部屋82にインクが貯留され、第3部屋83にはインクが貯留されない態様のインクカートリッジ30、つまり中容量のインクカートリッジ30を構成するときには、図6(A)と同様に、フィルム38は、第1壁43の凹部44に対しては固着されないが、図6(B)に示されるように、第2壁45の凹部46に対しては固着される。したがって、凹部44とフィルム38との間にインクが流通可能な隙間が形成されるが、凹部46とフィルム38とは液密に密着されるので、この間をインクは流通不能である。したがって、インクは、第1部屋81及び第2部屋82を相互に流通可能となるが、第3部屋83にはインクが流通することはない。装着姿勢においてインクが消費されると、第1部屋81及び第2部屋82のインクの界面は、同様に下側へ降下する。
【0036】
なお、図には示されていないが、第1部屋81のみにインクが貯留され、第2部屋82及び第3部屋83にはインクが貯留されない態様のインクカートリッジ30、つまり小容量のインクカートリッジ30を構成するときには、第1壁43の凹部44及び第2壁45の凹部46に対してフィルム38が固着される。したがって、凹部44,46とフィルム38とは液密に密着されるので、この間をインクは流通不能である。したがって、インクは、第1部屋81のみに貯留される。
【0037】
前述されたようなインクの容量が異なる3態様のインクカートリッジ30は、フィルム38を第1壁43の凹部44及び第2壁45の凹部46に対して熱圧着する工程を選択的に行うことにより製造される。また、フィルム38を第1壁43の凹部44又は第2壁45の凹部46に対して固着しないときのフィルム38をフレーム31、第1壁43及び第2壁45に熱圧着するときの第1圧力P1は、フィルム38を第1壁43の凹部44又は第2壁45の凹部46に対して固着するときのフィルム38をフレーム31、第1壁43及び第2壁45に熱圧着するときの第2圧力P2より低い(第1圧力P1<第2圧力P2)。なお、フィルム38を凹部44,46に熱圧着させるときには、凹部44,46の形状に合致する押さえ部材を有する熱圧着装置を用いればよい。また、フィルム38をフレーム31、第1壁43及び第2壁45に熱圧着する工程と、凹部44,46に熱圧着する工程とは、必ずしも同時に行われる必要はない。
【0038】
[カートリッジ装着部110]
図7に示されるように、カートリッジ装着部110の筐体としてのケース101は、プリンタ10の正面側に開口112を有する箱形状である。開口112を通じてケース101へインクカートリッジ30が挿入又は取り出される。ケース101には、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色に対応する4つのインクカートリッジ30が収容可能である。各実施形態で示される各図においては、1つのインクカートリッジ30に相当するケース101のみが例示されている。
【0039】
ケース101は、挿入及び取出方向50において開口112とは対向位置にあり、ケース101の内部空間に面している終面102を有する。図7に示されるように、接続部103は、ケース101の終面102の下部に設けられている。接続部103は、終面102において、ケース101に装着された各インクカートリッジ30のインク供給部37に対応する位置にそれぞれ配置されている。
【0040】
接続部103は、インクニードル122と、保持部121とを有する。同図には示されていないが、インクニードル122は、ケース101の終面と表裏をなすケース101の外面側で、インクチューブ20に接続されている。各インクニードル122と接続された各インクチューブ20は、プリンタ10の記録ヘッド21へインクを流通可能に接続されている。
【0041】
保持部121は、例えば、ケース101の終面102に形成され、終面102の一部を円筒状に窪ませて形成されている。インクニードル122は、保持部121の中心に挿入及び取出方向50に配置されている。図8に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、円筒状のインク供給部37が円筒状の保持部121に挿入される。このとき、インク供給部37の外周面が保持部121を画定している面に接触、例えば、密着する。インク供給部37が保持部121へ挿入されると、インクニードル122がインク供給部37のインク供給口71に挿入され、インクニードル122がインク供給バルブ70を移動させる。これにより、閉位置のインク供給バルブ70が、コイルバネ73の付勢に抗して開位置へ移動されて、インク室36に貯留されているインクが外部へ流出可能となる。インク室36から流出されたインクは、水頭差等により、インクニードル122内へ流入し、インクチューブ20を通じて記録ヘッド21へ流れる。
【0042】
図7に示されるように、ケース101の終面102において、接続部103より高さ方向52の上側に光センサ114が設けられている。光センサ114は、LEDなどの発光素子と、フォトトランジスタなどの受光素子とをそれぞれ有する。発光素子及び受光素子は、それぞれが筐体に囲まれている。光センサ114は、この筐体により形成される外形が馬蹄形である。発光素子は、筐体から一方向へ光を照射可能である。受光素子は、筐体に対して一方向から照射された光を受光可能である。このような発光素子と受光素子とが、馬蹄形の筐体において所定の間隔を空けて対向配置されている。発光素子と受光素子との間の空間には、インクカートリッジ30の残量検知部33が進入可能である。光センサ114の光路に残量検知部33が進入すると、光センサ114は、残量検知部33による透光状態の変化を検知し得る。
【0043】
図8に示される装着位置において、残量検知部33は、光センサ114により検知可能な位置へ到達され、残量検知部33内におけるセンサーアーム60のインジケータ部62の位置が検知されることに基づいて、インク室36のインク残量が判定される。前述されたような3態様、つまりインク容量が異なるインクカートリッジ30それぞれにおいて、第1部屋81以外の第2部屋82及び第3部屋83にインクを貯留可能とするか否かが選択されることによって、インク室36の容積が変更可能である。したがって、インク容量が異なっても、初期状態において、インク室36におけるインクの界面を残量検知部33より上側として、残量検知部33の内部をインクで満たすことができる。
【0044】
[実施形態の効果]
本実施形態によれば、第1壁43の凹部44及び第2壁45の凹部46に対してフィルム38が固着されるか否かにより、第2部屋82及び第3部屋83にインクを貯留するか否かを選択できるので、部品点数を増やすことなくインクカートリッジ30においてインク室36の容積を変更することができる。これにより、初期状態のインク量を少なくしても、第1部屋81におけるインクの界面を残量検知部33より上側として残量検知部33内をインクで満たすことができるので、残量検知部33内において気泡の発生を抑制できる。また、初期状態のインク室36において空気が存在する容積を小さくできるので、インクに溶解する空気を少なくすることができる。
【0045】
[変形例]
なお、本実施形態では、インク室36が3つの部屋、すなわち第1部屋81、第2部屋82及び第3部屋83に区画された態様が示されているが、更に多くの部屋にインク室36が区画されてもよい。
【0046】
また、インク室36の各部屋を区画する第1壁43及び第2壁45は、高さ方向52に沿って延出されているが、第1壁43及び第2壁45は、高さ方向52に対して傾斜されていてもよいし、屈曲されていてもよい。さらには、第1壁43と第2壁45とは平行である必要はない。
【0047】
また、第1壁43及び第2壁45には、それぞれ凹部44,46が設けられているが、凹部44,46は必ずしも設けられる必要はない。例えば、第1壁43又は第2壁45の幅方向の端面の一部がフィルム38と固着されないことにより、第1壁43又は第2壁45の幅方向の端面とフィルム38との間をインクが流通可能としてもよい。
【0048】
また、第1部屋81には、必ずしもセンサーアーム60が設けられていなくてもよい。例えば、インクによる光の減衰やプリズムによる反射の有無など、残量検知部33内にインクが満たされているか否かによって残量検知部33の透光状態が変化すれば、前述された実施形態と同様の作用効果が奏される。
【符号の説明】
【0049】
30・・・インクカートリッジ(流体カートリッジ)
31・・・フレーム
33・・・残量検知部(突出部)
36・・・インク室(部屋)
37・・・インク供給部(流体供給部)
38・・・フィルム(膜)
40・・・フレーム前壁(前面)
42・・・フレーム後壁(後面)
43・・・第1壁
44,46・・・凹部
45・・・第2壁
60・・・センサーアーム
61・・・アーム本体
62・・・インジケータ部
63・・・フロート部
64・・・支軸
81・・・第1部屋
82・・・第2部屋
83・・・第3部屋
110・・・カートリッジ装着部
114・・・光センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面及び当該前面と対向する後面を有するフレーム内部に設けられた部屋に流体を貯留可能な本体と、
上記前面の下側に設けられており、上記部屋から上記本体の外部に流体を流出可能な流体供給部と、
上記部屋を上記流体供給部を含む第1部屋と上記流体供給部を含まない第2部屋とに区分する第1壁と、
上記第2部屋を少なくとも2以上の部屋に区画する第2壁と、
上記第1部屋及び上記第2部屋の少なくとも一部の壁を構成しており、上記第1壁及び上記第2壁と固着されることによって各部屋を流体を貯留する部屋とすることが可能な膜と、を具備し、
上記膜は、上記第1壁及び上記第2壁に対して少なくとも一部が固着されていない流体カートリッジ。
【請求項2】
上記第2壁は、上記フレームの対向する壁に渡って設けられたものである請求項1に記載の流体カートリッジ。
【請求項3】
上記フレームは、上記前面及び上記後面を構成する一定幅の外壁を有するものであり、
上記第1壁及び上記第2壁は、少なくとも一部において上記外壁より幅狭な凹部を有する請求項1又は2に記載の流体カートリッジ。
【請求項4】
上記流体カートリッジは、光センサを備えた記録装置に装着可能なものであって、
上記前面における上記流体供給部の上側において上記第1部屋から離れる向きへ突出する突出部を更に備えており、
上記突出部の少なくとも一部は、上記光センサから投光される光を透過させるものである請求項1から3のいずれかに記載の流体カートリッジ。
【請求項5】
上記第1部屋に貯留された流体量に応じて移動可能なフロートを一端に備え、当該一端とは反対側の他端が上記突出部内を移動可能なアームを更に備えた請求項4に記載の流体カートリッジ。
【請求項6】
上記アームは、一端と他端との間に設けられた回動支点を中心として回動可能なものである請求項5に記載の流体カートリッジ。
【請求項7】
前面及び当該前面と対向する後面を有するフレーム内部に設けられた部屋に流体を貯留可能な本体と、上記前面の下側に設けられており、上記部屋から上記本体の外部に流体を流出可能な流体供給部と、上記部屋を上記流体供給部を含む第1部屋と上記流体供給部を含まない第2部屋とに区分する第1壁と、上記第2部屋を少なくとも2以上の部屋に区画する第2壁と、上記第1部屋及び上記第2部屋の少なくとも一部の壁を構成しており、上記第1壁及び上記第2壁と固着されることによって各部屋を流体を貯留する部屋とすることが可能な膜と、を各々が具備する流体カートリッジセットであって、
上記第2壁と上記膜とが固着されることにより上記第2部屋が流体が流通不能な2以上の部屋に区分された第1流体カートリッジと、上記膜が上記第2壁に対して少なくとも一部が固着されていないことにより上記第2部屋の各部屋を流体が流通可能な第2流体カートリッジと、を含む流体カートリッジセット。
【請求項8】
前面及び当該前面と対向する後面を有するフレーム内部に設けられた部屋に流体を貯留可能な本体に対して、上記部屋から上記本体の外部に流体を流出可能な流体供給部を含む第1部屋と上記流体供給部を含まない第2部屋に区分する第1壁、及び上記第2部屋を少なくとも2以上の部屋に区分する第2壁に、上記第1部屋及び上記第2部屋の少なくとも一部の壁を構成する膜を固着させて、各部屋を流体を貯留可能な空間とする流体カートリッジの製造方法であって、
上記膜を上記第2壁に対して少なくとも一部を固着しない工程を選択的に行う流体カートリッジの製造方法。
【請求項9】
上記膜を上記第2壁に対して少なくとも一部を固着しない工程における上記膜と上記第2壁とを熱圧着するときの第1圧力が、上記第2部屋の各部屋間を流体が流通不能とすべく上記膜と上記第2壁とを熱圧着するときの第2圧力より低い請求項8に流体カートリッジの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−206370(P2012−206370A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73610(P2011−73610)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】