説明

流体ディスペンサヘッド

流体容器(1)に取り付けられてディスペンサを構成する流体ディスペンサヘッドであって、本体(21)と弁ロッド(22)とを有する流体ディスペンサ部材(2)と、弁ロッド(22)に回転可能に取り付けられたディスペンサ端部部材(6)と、ディスペンサ端部部材(6)および弁ロッド(22)を移動させる回転可能な押下部材(8)と、を有し、更に、ディスペンサ端部部材(6)と押下部材(8)との間に挿入され、軸方向移動時には押下部材に固定される伝達部品(7)と、伝達部品(7)を回転させることなく、ディスペンサ端部部材(6)および押下部材(8)を回転させる駆動手段(3,4,5)と、を有し、当該駆動手段は、伝達部品(7)を非動作保管位置と動作駆動位置との間で軸方向に移動させ、それにより、押下部材(8)を軸方向に移動させ、伝達部品(7)は、動作位置における押下部材(8)に加えられたスラスト力を、軸方向に直接ディスペンサ端部部材(6)に伝える、という流体ディスペンサヘッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体容器と組み合わされる、またはこれに設置される流体ディスペンサヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ここでの「ディスペンサヘッド」という用語は、容器に取り付けられることで流体ディスペンサを構成する部材全部を指す。ディスペンサヘッドを駆動すると、流体が容器から取り出され、ディスペンサ開口部から投与される。こうしたディスペンサヘッドは、香水、化粧品、更には医薬の分野においてしばしば用いられる。
従来の形では、ディスペンサヘッドは、ポンプや弁などの流体ディスペンサ部材から成る。全体的な構成として、ディスペンサ部材は、容器に対して動かない形で設置される本体と、本体に対して軸方向に上下移動が可能な弁ロッドと、を有する。ディスペンサヘッドは更に、軸方向に上下移動して弁ロッドを動かす押下部材を有する。また、流体を放出するために、ディスペンサヘッドは更に、弁ロッドに接続されたディスペンサ開口部を有する。こうした構成では、1本または複数本の指で押下部材を押えることで、弁ロッドがディスペンサ部材の本体内部に押し込まれ、その結果、流体が容器から投与される(定量的に投与される構成もあるが、必須ではない)。
【0003】
こうした従来のディスペンサヘッドでは、押下部材の唯一可能な運動は軸方向の上下移動であり、当該上下移動は、押下部材に形成されたスラスト面をユーザが1本または複数本の指で押さえることで実現される。押下部材は弁ロッド上で直接設置されているので、押下部材の移動が直接弁ロッドを移動させることになる。言い換えると、押下部材と弁ロッドとは、一体となって同時に移動させられる。
【0004】
また、従来技術のディスペンサヘッドとしては、軸を中心とした回転が可能な押下部材を備え、それによって押下部材に対するロック機能を実現する、というものが知られている。そうした構成では、回転によって押下部材の状態が、ロック状態と駆動可能状態とで切り替わる。ロック状態での押下部材は軸方向移動が不可能であるが、駆動可能状態では、ロックは解除されており、ユーザは押下部材を押えて上下移動させることで、流体を投与することができる。しかしながら、押下部材は常に弁ロッドに直接連結された状態であり、両者は一体となって同時に軸方向移動することを強いられる。
【0005】
従来技術では、仏国特許発明第2 904 294号公報も、流体ディスペンサヘッドを記載したものとして知られており、当該公報に記載された流体ディスペンサヘッドは、ポンプと、可撓性ホースによってポンプに接続されたディスペンサ開口部を備えた押下部材と、当該押下部材を回転および軸方向移動(軸方向に見た低位置と高位置との間)させることのできる駆動手段と、を有する。そして、内部カムシステムが、押下部材の回転運動を軸方向移動に変換する働きをする。ディスペンサ開口部が押下部材に設けられており、またポンプも移動しないことから、押下部材が軸方向移動すると、開口部をポンプに接続する可撓性ホースは必然的に塑性変形することになる。そうして、従来技術のディスペンサヘッドにおいて、ディスペンサ開口部は、ディスペンサヘッドが駆動される時だけではなく、押下部材が駆動手段によって回転させられる時にも、押下部材と共に軸方向移動する。可撓性ホースが必ずしも望み通りの形で変形するわけではないことは、経験上分かっている。すなわち、可撓性ホースは、折れ曲がったり捩れたりする形で変形する場合があり、そうなると、流体がホースを通って流れることはできない。可撓性ホースは柔軟性がかなり不足している。そうした柔軟性に関する問題を緩和する、許容可能な解決策として、可撓性ホースを成型によって作るというものがある。しかしながら、成型には特別な型が必要であり、ディスペンサヘッドの原価が大きく上がってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】仏国特許発明第2 904 294号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、回転および軸方向移動の両方の形で動かされる押下部材を有するディスペンサヘッドにおける、主に可撓性ホースに関連する問題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、軸方向移動および回転の形で動く押下部材を有したディスペンサヘッドについて、全体的な設計を変えずに可撓性ホースを除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明が提案するのは、流体容器に取り付けられてディスペンサを構成する流体ディスペンサヘッドであって、流体容器に対して移動しない形で設置される本体と軸方向に上下移動可能な弁ロッドとを有する、ポンプなどの流体ディスペンサ部材と、ディスペンサ開口部を有し、弁ロッドに回転可能に取り付けられたディスペンサ端部部材と、手動で軸方向に上下移動させることが可能であり、当該上下移動によってディスペンサ端部部材および弁ロッドを移動させて流体を投与する、という回転可能な押下部材と、を有し、更に、ディスペンサ端部部材と押下部材との間に挿入され、軸方向移動時には押下部材に固定される伝達部品と、伝達部品を回転させることなく、ディスペンサ端部部材と押下部材とを回転させる駆動手段と、を有し、当該駆動手段は、伝達部品を非動作保管位置と動作駆動位置との間で軸方向に移動させ、それにより、押下部材を低い非動作位置と高い動作位置との間で軸方向に移動させ、伝達部品は、動作位置における押下部材に加えられたスラスト力を、軸方向に直接ディスペンサ端部部材に伝えること、を特徴とする流体ディスペンサヘッド、である。
【発明の効果】
【0009】

本発明のディスペンサヘッドは、ディスペンサ開口部をポンプに接続する可撓性ホースを有していないという点で、上記の従来技術文書におけるディスペンサヘッドと異なる。本発明の押下部材は、従来技術文書のものと違い、ディスペンサ開口部を有するディスペンサ端部部材とは別個の構成部となっている。そうして、効果的な構成として、伝達部品が、いわゆる動作位置において、押下部材とディスペンサ端部部材との間に、選択的に挿入されて動作する。本発明の駆動手段はディスペンサ端部部材および押下部材を回転させるが、伝達部品については動かない状態に保たれるため、伝達部品と押下部材との間には相対的な回転運動が生じる。この相対的な回転運動の結果として、伝達部品は、動作位置において押下部材とディスペンサ端部部材との間に挿入される。本発明のディスペンサヘッドの全体的な形状については、従来技術文書である仏国特許発明第2 904 294号明細書に記載のものにほぼ類似した形状に保たれている。しかし、押下部材はディスペンサ端部部材とは別個の構成部となっており、ディスペンサ開口部が押下部材と共に軸方向移動することはない。
【0010】
なお、特定の実施の形態では、駆動手段は、ユーザが掴んで回転させることができ、回転時に軸方向移動しない、という回転制御部材と、伝達部品を回転させることなく、回転制御部材の回転を軸方向運動に変換するカム手段と、を有すること、とする。また、前記カム手段は、ディスペンサ部材に対して静止した形で取り付けられ、螺旋形のカム経路が少なくとも1つ形成された案内リングと、案内リングのいずれか1つのカム経路に嵌まるカムピンを少なくとも1つ有するカムシリンダと、を有し、当該カムシリンダは、回転制御部材によって回転させられることにより、前記回転制御部材内を軸方向にスライドすること、とするのが効果的である。また、ディスペンサ端部部材は、カムシリンダ内を軸方向にスライドしている間、前記カムシリンダと共に回転させられること、とするのが好ましい。また、カムシリンダは、ディスペンサ端部部材を収容して軸方向のスライド時に案内する軸方向の案内スロットを有すること、とするのが好ましい。また、効果的な構成として、伝達部品は、案内リング上で回転できない状態とされており、その一方で、案内リングに対して伝達部品は軸方向に移動可能となっていること、とする。また、伝達部品は、カムシリンダ内部において、ディスペンサ端部部材を囲む形で延びていること、とするのも効果的である。また、伝達部品はタブを有し、当該タブは、対応する形で案内リングに形成された軸方向溝内でスライドすること、とするのが好ましい。また、効果的な構成として、カムシリンダと押下部材とは相互に固定されて、両者でハウジングを形成しており、当該ハウジングには伝達部品が、自由に回転できる形で収容されること、とする。また、本発明の別の様態として、回転制御部材は案内リングに回転可能な形で取り付けられること、とする。そして、本発明の別の特徴として、案内リングは流体容器にディスペンサ部材をロックすること、とする。
【0011】
以上をまとめると、回転制御部材はそれ自身の軸を中心にして、カムシリンダおよび押下部材を軸方向に移動させるように拘束する案内リング上で回転し、その際、伝達部品が共に移動させられるが、案内リングと共に移動するように拘束されることがない伝達部品は、カムシリンダおよび押下部材と共に移動され、ディスペンサ端部部材は、軸方向に移動させられることなく、回転制御部材によって回転させられる。こうした構成要素の相対的な運動の結果として、押下部材は、回転制御部材に取り付けられたディスペンサ開口部と共に、回転制御部材に対して軸方向に移動することになる。
【0012】
本発明はまた、流体容器と上述した流体ディスペンサヘッドとを有することを特徴とする流体ディスペンサを定義する。
【図面の簡単な説明】
【0013】

【図1】本発明の非限定的な実施の形態における流体ディスペンサヘッドを示す分解斜視図である。
【図2】図1のディスペンサを組立後の非動作状態において示す縦断面図である。
【図3】図2の断面線AAにおける横断面図である。
【図4】図1、2のディスペンサを動作状態において示す縦断面図である。
【図5】図4の断面線BBにおける横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について、非限定的な例として挙げる本発明の実施の形態を示す添付図面を参照しながら、より詳しく説明する。
先ず、図1を参照して、本発明のディスペンサヘッドの各種構成要素の構造を詳細に説明する。
ディスペンサヘッドは、本体10とネック部11とが形成された流体容器1と組み合わせて用いられる。本体10の動作容積(working volume)が流体容器の容積となる。ネック部11には、本体10の内部を外部と連通させる開口が形成されている。ネック部11については、突出外側周縁部が形成されており、当該突出外側周縁部には下向きの肩部13が形成されている、とするのが効果的である。肩部13は、ディスペンサヘッドを容器に固定する働きをする。ここに示す本発明の特定の実施の形態における流体容器は、本体10における断面が多角形、効果的なのは四角形となっている。
【0015】
この特定の実施の形態におけるディスペンサヘッドは、7つの異なる構成要素から成る:すなわち、ディスペンサ部材2;案内リング3;回転制御部材4;カムシリンダ5;ディスペンサ端部部材6;伝達部品7;押下部材8。これら構成要素は全て、適当なプラスチック材の射出成形によって製造することができる。ただし、回転制御部材4、さらに押下部材8のような一部の構成要素は、金属で製造することもできる。
【0016】
ディスペンサ部材2は、ポンプまたは弁とすることができ、底部取込口が形成された本体21を有し、必須ではないが、底部取込口には浸漬管(dip tube)を設けることもできる。ポンプまたは弁は更に、本体内部で軸方向に上下移動可能な駆動ロッド22を有する。従来の構成では、弁ロッド22の内部には、流体用の流路(flow duct)が形成されており、当該流路は、出口弁によって、選択的に本体20の内部に連通している。ポンプまたは弁には、更に、固定用リング25を装着することもできる。固定用リング25は固定用タブ26を備えており、当該固定用タブ26は、ネック部11の肩部13の下側に嵌まる。本実施の形態における固定用リング25は、ディスペンサ部材の構成要素として示されている。しかし、固定用リングをディスペンサ部材とは別個の要素としたうえで、ディスペンサ部材に固定される構成とすることもできる。ただし、本実施の形態における固定用リングについては、ディスペンサ部材と一体化された部品を形成するものとして考える。こうした設計は、香水、化粧品、更には医薬の分野におけるポンプまたは弁に関しては、全く従来通りのものである。弁ロッド22を押えることで出口弁(図示せず)が開き、本体20内部に格納されている流体はロッド22を通って出て行く。
【0017】
案内リング3は、静止した状態で、そして、好ましい構成として固定状態で、ディスペンサ部材2に設置されている。それにより、案内リング3は軸方向移動および回転のいずれの形でも、容器1に対して移動しない。案内リング3は複数の異なる技術的機能を果たす(ディスペンサヘッドの他の構成要素について述べた後で説明する)。ここでは、固定用のリング3としての構造について述べる。リングを下側から見ていくと、先ず、下側部分31を有することが分かる。当該下側部分は全体的には円筒形状であるが、途中に環状溝32が形成されている。ここに示す実施の形態における案内リング3は、更に上側部分33を有し、当該上側部分の外径は、下側部分31の外径よりもわずかに小さくなっている。上側部分33は2本のカム経路34を有する。そのうち1つは図1に見られるが、もう1つのカム経路は、上側部分33の反対側に、径方向に見て対向する状態で配置されている。2本のカム経路34は実質的に螺旋形であり、その一方の端の先には軸方向の縦溝35が続いている。上側部分33は、さらに2本の軸方向溝37を有し、これら軸方向溝37は、本実施の形態においては、径方向に見て対向する形に配置されている。軸方向溝37は、上側部分33の環状の上端部において、上方に開口している。軸方向溝37は下方にも延びており、その下端は螺旋形のカム経路34よりも上方に位置している。案内リング3は中空であり、下側部分31における内径は、ディスペンサ部材2の固定用リング25を囲んで径方向に締め付けるようなサイズとなっている。案内リング3は固定用リング25に圧力嵌めされ、最終的には下側部分31の下端が容器に接する状態となる。下側部分31は、固定用リング25を囲むことで、固定用タブ26が容器の肩部13の下側から外れることをブロックする。従って、案内リング3は、容器のネック部11へ固定用リング25をロックすることができるブロック機能を果たしている、と言うことができる。環状溝32、カム経路34、縦軸方向の縦溝35、そして軸方向溝37の機能については後述する。
【0018】
回転制御部材4は、ほぼ平行六面体の外部形状を有し、その断面は流体容器1と同じように四角形となっている。回転制御部材4は、ディスペンサの構成要素のうち見えるようにできた部分であり、全体的な外観を魅力的にするのに役立つ。このような外観のためだけでなく、実用的な目的のために、流体容器1と回転制御部材4とは、断面が実質的に同じになっており、その結果として、回転制御部材は流体容器と整合状態で上方向に延びている。回転制御部材は実質的に寸法の等しい4つの面を有し、そのうち1つの面は、縦方向の軸を有する縦長の窓46を備えている。ここで、図2、4を参照すると、回転制御部材4は、実際に断面が四角形の外側ケース41を有すること、当該外側ケースは、外観を良くするためのものであること、さらに縦長の窓46が形成されていることがわかる。回転制御部材4は更に、円形の断面を有する同軸内部ブッシング42を有し、当該同軸内部ブッシングと外側ケース41とは両者の端部において接続している。同軸内部ブッシング42は、連続または断続的な環状の内側突起部43を有する。内側突起部43は、案内リング3の環状溝32内に収容されるように設計されている。これにより、回転制御部材4は、自身の軸を中心に回転しても軸方向に移動しない状態に、案内リング3に固定される。内部ブッシング42の上端には、案内リング3の下側部分31の上端に接する状態になる内向き周縁部45が形成されている。
【0019】
カムシリンダ5は複雑な形状を有する部品であり、ほぼ四角形の断面を有する外側ケース51と、ほぼ円筒形の内部ブッシング53とを有する。外側ケース51と内部ブッシング53とは、それぞれの上端で接続されて一体化している。内部ブッシング53は、このように、ほぼ円筒形の中空内部52を有し、そこに2本のカムピン54が設けられている。これらカムピンは、案内リング3のカム経路34および縦溝35の中に収容される。それにより、カムシリンダ5は、所定の角度(約90度)にわたって案内リング3に対して回転でき、しかも、所定の距離にわたって軸方向に移動することができる。カムピン54は、縦溝35の位置まで螺旋形のカム経路34に沿って進むことを強いられるが、縦溝の位置に達すると、回転運動することなく、軸に沿って縦方向に移動することができる。言い換えると、案内リング3はシリンダ5用の案内部材として働く。なお、カムシリンダ5の外側ケース51の寸法は、カムシリンダ5が過度の摩擦なしに回転制御部材4の内部に嵌まるように決められている。このような構成であるため、回転制御部材4を案内リング3上で回転させると、カムシリンダ5も回転することになるが、それと共に、カム経路34に嵌まったカムピン54の作用により、カムシリンダ5は案内リング3および回転制御部材4に対して軸方向に移動する。回転制御部材4とカムシリンダ5との関係についてのみ考えれば、回転制御部材4が案内リング3上で回転した時に、当該回転制御部材の内部でカムシリンダ5が軸方向に移動する、と言うことができる。なお、シリンダ5には更に、外側ケース51および内部ブッシング53の両方を貫通する形で延びる軸方向案内スロット56が形成されている。言い換えると、軸方向案内スロット56により、シリンダ5の内部52が外部と横方向に連通している。カムシリンダ5は、軸方向案内スロット56が縦長の窓46と整列状態になるように、回転制御部材4に嵌め込まれる。このことにより、回転制御部材4の内部でカムシリンダ5が軸方向にスライドする時も、カムシリンダ5の内部52は、整列状態の窓46および軸方向案内スロット56を通して、外部に直接連通している。
【0020】
ディスペンサ端部部材6は、ディスペンサ部材2の駆動ロッド22の自由端に装着される接続スリーブ61を有する。ディスペンサ端部部材6は更に、ノズル63を収容するためのハウジング62を有し、当該ノズルには、スプレーの形での流体投与を可能にするディスペンサ開口部64が形成されている。図には示していないが、接続スリーブ61は、内部の流体供給流路によってノズル63に連通している。加えて、ディスペンサ端部部材6の上端位置には、複数の突出部67が形成されている。本発明の説明に用いる実施の形態では、3つの突出部67が均一な角度の間隔で分散配置されている。図2、4から見て取れるように、ディスペンサ端部部材6はカムシリンダ5の内部に配置され、ノズルは軸方向案内スロット56および窓46の中に配置される。ディスペンサ端部部材6は、ディスペンサ部材2の駆動ロッド22を、ディスペンサ端部部材と共に移動させるように、軸方向案内スロット56および窓46の中を軸方向に移動できる。これによりディスペンサ部材2が駆動される。しかしながら、カムシリンダ5が回転制御部材4の内部で軸方向に移動する時は、ディスペンサ端部部材6は軸方向には静止したままである。ただし、スロット56にノズル63が係合していることの結果として、ディスペンサ端部部材6は回転させられることになる。言い換えると、回転制御部材4が、流体容器に対して静止した形で設置された案内リング3の上で、軸方向に移動することなく、自身の軸を中心に回転させられて、回転制御部材4の内部でカムシリンダ5が軸方向に移動する時、ディスペンサ端部部材6は、軸方向に移動することなく、自身の軸を中心に回転する。
【0021】
伝達部品7は円形ディスク78を有し、当該円形ディスクは伝達部品の頂上部分を形成している。当該円形ディスクからは複数の要素が下向きに延びており、これらはカムシリンダ5とディスペンサ端部部材6との間に位置にある。特に、伝達部品7には、下向きの自由端部を有する2つの軸方向タブ73が形成されている。軸方向タブ73は、カムシリンダ5とディスペンサ端部部材6との間を延びて、対応する形で案内リング3に形成された軸方向溝37に嵌まっている。従って、軸方向タブ73は、軸方向溝の中を軸方向にスライドすることができる。その結果、伝達部品7は、軸方向には自由に移動できる一方で、案内リング3に対して回転することはできない。図4を参照すると、伝達部品7が更に複数(本実施の形態では3つ)のフランジ76を有し、当該フランジは、均一な角度の間隔で分散配置されていると共に、円形ディスク78の下側に、縦方向及び径方向に配置されていること、が見て取れる。フランジ76は、図4に見られるように、ディスペンサ端部部材6の3つの突出部67に対して支持された状態となるものであるが、この点については後述する。ディスペンサ端部部材6が自身の軸を中心に回転すると、伝達部品7が静止状態を保つので、フランジ76および突出部67は、特定の「動作」位置において整列状態となる。これ以外にフランジと突出部とが整列状態となることはない。しかし、逆に、図3に見られるように、相互に横並びの状態となる。
【0022】
押下部材8はまた、実質的に矩形のブロックの形状を有する。その水平方向の断面は四角形であり、摩擦を生じない形で回転制御部材4に嵌め込めるように作られている。押下部材8は頂上受け面81を有し、これをユーザが指(通常は人差し指)で押えることで、押下部材8は軸方向に移動させられる。押下部材8は更に、4つの面を有した側面スカートを有し、そのうち1つの面82には下向きに開口する切り欠き83が形成されている。切り欠きは、縦長の窓46およびスロット56と同じ側に配置されている。ディスペンサ端部部材6のノズル63は切り欠き83を通過している。図2、4に見られるように、押下部材8の側面スカートは回転制御部材4の内側かつカムシリンダ5の外側に嵌められる。
【0023】
以下、図2、4を参照しながら、本発明のディスペンサヘッドの各種構成要素間の協働の内容、そして、相対的な移動に関して詳細に説明する。先ず図2を参照する。同図に見られるディスペンサヘッドは、非動作状態(保管状態)にあって、使用することはできず、押下部材は低位置にあってブロックされている。この状態において、カムシリンダ5の内部ブッシング53は、回転制御部材4の内向き周縁部45に当接している。これは、カムシリンダ5が最も低い位置にあることを意味する。カムピン54はカム経路34の最も低い位置にある。当然のことながら、ノズル63はスロット56および窓46を通過する位置に配置されている。ディスペンサヘッドの主要部を構成する伝達部品7は、そのディスク78において、ディスペンサ端部部材6の突出部67に直接、支持されている。同図において注目すべき点は、円形ディスク78の外側周縁部が、押下部材8とカムシリンダ5との間に形成されたハウジング58内に係合していることである。円形ディスク78は、ハウジング58の内部で自由に回転することは可能でも、軸方向移動、回転のいずれの形でも、一緒に動くように拘束されている押下部材8およびカムシリンダ5と共に軸方向に移動することはできない状態になっている。ただし、押下部材8は、伝達部品7に対する軸方向移動に関しては固定されているが、図2における非動作状態の保管位置では、押下部材8を駆動することは不可能である。カムシリンダ5には、下端によって回転制御部材4に支持されたハウジング58が形成されているからである。言い換えると、回転制御部材4に対して軸方向に移動しないように支持されたカムシリンダ5に対して、押下部材8が直接支持されている。その結果、押下部材8は、この低位置、すなわち非動作状態の保管位置においては、駆動することができない。
【0024】
図3を参照すると、ディスペンサ端部部材6の突出部67が伝達部品7のフランジ76と同じ面内に位置していることが容易に分かる。
ここで図4を参照すると、ディスペンサヘッドが動作状態の駆動位置にあることが見て取れる。当該状態において、ディスペンサ端部部材6および駆動ロッド22が移動するように、押下部材8は軸方向に上下移動させることが可能である。注目すべき点は、ここでは、押下部材8が、回転制御部材4の上端より上に突出していることである。こうした上方向の移動は、回転制御部材4の回転時にカム経路34に沿って進むように拘束されたカムシリンダ5の軸方向移動によって生じている。移動の結果、押下部材は完全にその動作位置にある。また、カムシリンダ5の下端が、ここではもはや回転制御部材4に対して支持されていない、という点にも注目すべきである。カムピン54はカム経路34に沿って進み、軸方向の縦溝35に達している。ディスペンサ端部部材6は、同じ軸方向位置にあるが、90度回転している。特に注目すべきは、伝達部品7のフランジ76の位置が、ここでは突出部67よりも上になっている、ということである。これは、図5でより明らかに見て取れる。こうした状態であるため、押下部材8を押えれば、スラスト力がフランジ76および突出部67を介してディスペンサ端部部材6に伝えられ、ディスペンサ端部部材は駆動ロッド22と共に軸方向に移動する。言い換えると、押下部材からディスペンサ端部部材6へのスラスト力の伝達が可能になったのは、突出部67と円形ディスク78との間にフランジ76が挿入された形となったからである。これが可能なのは、伝達部品7が軸方向にしか移動しないのに対し、ディスペンサ端部部材6および押下部材は回転運動をするからである。
【0025】
本ディスペンサヘッドの各種構成要素の動的な動きを更に理解できるように、各構成要素に許された動きを、以下に一覧の形で示す:
・ディスペンサ部材2:流体容器に対し軸方向移動、回転のいずれの形でも動かない;
・案内リング3:流体容器に対し軸方向移動、回転のいずれの形でも動かない;
・回転制御部材4:流体容器に対し軸方向移動はしないが、回転することは可能;
・カムシリンダ5:流体容器1に対し軸方向移動および回転の形で動くことが可能;
・ディスペンサ端部部材6:流体容器に対し、軸方向に移動することなく回転することが可能である(駆動中は除く);
・伝達部品7:流体容器に対し、回転することなく軸方向移動が可能である;
・押下部材8:流体容器1に対し軸方向移動および回転が可能。
【0026】
言い換えると、ディスペンサ部材2と案内リング3とは相互に完全に固定されており;カムシリンダ5と押下部材8とは相互に完全に固定されており;回転制御部材4はカムシリンダ5および押下部材8を回転させ;カムシリンダ5および押下部材8は回転制御部材4の内部で軸方向に移動し;伝達部品7はカムシリンダ5および押下部材8によって軸方向に移動させられ;伝達部品7の回転は案内リング3によって妨げられ;ディスペンサ端部部材6は軸方向に移動はせず押下部材8およびカムシリンダ5と共に回転する(駆動中は除く)。
【0027】
本発明のディスペンサヘッドによれば、可撓性ホースを用いてディスペンサ開口部64を駆動ロッド22に接続しなくとも、押下部材を低位置すなわち非動作位置(保管時位置)と高位置すなわち動作位置(駆動時位置)との間で移動させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体容器(1)に取り付けられてディスペンサを構成する流体ディスペンサヘッドであって、
流体容器(1)に対して移動しない形で設置される本体(21)と軸方向に上下移動可能な弁ロッド(22)とを有する、ポンプなどの流体ディスペンサ部材(2)と、
ディスペンサ開口部(64)を有し、弁ロッド(22)に回転可能に取り付けられたディスペンサ端部部材(6)と、
手動で軸方向に上下移動させることが可能であり、当該上下移動によってディスペンサ端部部材(6)および弁ロッド(22)を移動させて流体を投与する、という回転可能な押下部材(8)と、を有し、
更に、ディスペンサ端部部材(6)と押下部材(8)との間に挿入され、軸方向移動時には押下部材に固定される伝達部品(7)と、
伝達部品(7)を回転させることなく、ディスペンサ端部部材(6)と押下部材(8)とを回転させる駆動手段(3,4,5)と、を有し、
当該駆動手段は、伝達部品(7)を非動作保管位置と動作駆動位置との間で軸方向に移動させ、それにより、押下部材(8)を低い非動作位置と高い動作位置との間で軸方向に移動させ、
伝達部品(7)は、動作位置における押下部材(8)に加えられたスラスト力を、軸方向に直接ディスペンサ端部部材(6)に伝えること、
を特徴とする流体ディスペンサヘッド。
【請求項2】
駆動手段は、
ユーザが掴んで回転させることができ、回転時に軸方向移動しない、という回転制御部材(4)と、
伝達部品(7)を回転させることなく、回転制御部材(4)の回転を軸方向運動に変換するカム手段(3,5)と、を有すること、
を特徴とする請求項1に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項3】
前記カム手段は、
ディスペンサ部材(2)に対して静止した形で取り付けられ、螺旋形のカム経路(34)が少なくとも1つ形成された案内リング(3)と、
案内リング(3)のカム経路(34)に嵌まるカムピン(54)を少なくとも1つ有するカムシリンダ(5)と、を有し、当該カムシリンダ(5)は、回転制御部材(4)によって回転させられることにより、前記回転制御部材(4)内を軸方向にスライドすること、
を特徴とする請求項2に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項4】
ディスペンサ端部部材(6)は、カムシリンダ(5)内を軸方向にスライドしている間、前記カムシリンダ(5)と共に回転させられること、
を特徴とする請求項3に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項5】
カムシリンダ(5)は、ディスペンサ端部部材(6)を収容して軸方向のスライド時に案内する軸方向の案内スロット(56)を有すること、
を特徴とする請求項4に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項6】
伝達部品(7)は、案内リング(3)上で回転できない状態とされており、その一方で、案内リングに対して伝達部品(7)は軸方向に移動可能となっていること、
を特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項7】
伝達部品(7)は、カムシリンダ(5)内部において、ディスペンサ端部部材(6)を囲む形で延びていること、
を特徴とする請求項6に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項8】
伝達部品(7)はタブ(73)を有し、当該タブは、対応する形で案内リング(3)に形成された軸方向溝(37)内でスライドすること、
を特徴とする請求項6又は7に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項9】
カムシリンダ(5)と押下部材(8)とは相互に固定されて、両者でハウジング(58)を形成しており、当該ハウジングには伝達部品(7)が、自由に回転できる形で収容されること、
を特徴とする請求項3に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項10】
回転制御部材(4)は案内リング(3)に回転可能な形で取り付けられること、
を特徴とする請求項3乃至9のいずれか1項に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項11】
案内リング(3)は流体容器(1)にディスペンサ部材(2)をロックすること、
を特徴とする請求項3乃至10のいずれか1項に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項12】
流体容器(1)と、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の流体ディスペンサヘッドと、を有することを特徴とする流体ディスペンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2012−520212(P2012−520212A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553492(P2011−553492)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050399
【国際公開番号】WO2010/103227
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(502343252)バルワー エス.アー.エス. (144)
【Fターム(参考)】