説明

流体ディスペンサー

流体フィルム形成性物質(12)の貯留部(11)、前記フィルム形成性物質(12)のための分配ノズル、前記貯留部(11)から前記分配ノズルを通って物質を送るポンプ(16)を有する、流体フィルム形成性物質を表面に、特には治療用フィルムをユーザーの皮膚に適用するための分配容器である。前記分配ノズルは細長いスロット形状の開口部(111)を有し、特にディスペンサーの側部から延在する支持部によって、物質を開口部から流しながら、スロットの長さ方向に対して横方向へノズルが表面に隣接して移動するように、前記分配容器が適合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にはユーザーの皮膚上にフィルム形成性物質を分配するための分配容器に関する。
【背景技術】
【0002】
治療において、材料のフィルムをユーザーの皮膚に施す場合がある。例えば、保護フィルムを適用して創傷または別の種類の皮膚の病気の部位を覆うことができる。経皮貼付剤の形態での医薬含有フィルムをユーザーの皮膚に適用して、ユーザーの皮膚から医薬を投与することもできる。例えば、禁煙療法のために、ニコチンまたはニコチン類似体を経皮的に投与する。
【0003】
フィルムをユーザーの皮膚に適用する一つの方法は、皮膚にフィルム形成性流体物質を塗り、その物質を例えばゼリー状フィルムのような固体または半固体とすることで行うものである。例えばそのような物質は、溶媒中にフィルム形成性成分を含む溶液または懸濁液からなり、その溶媒を蒸発させてフィルムを形成することができる。または環境と反応してフィルムを形成する成分を含むことができる。そのような物質は、適切な分配ノズルを有する適切なディスペンサーによって皮膚に適用することができる。
【0004】
流体材料用に多くの分配容器が、例えば化粧用または治療用のクリーム、石鹸、粘着剤、練り歯磨き剤などに関して知られている。例えば練り歯磨き剤および液体石鹸用に知られているある種類のそのような分配容器は、その材料用の分配ノズルと連通している材料用貯留部、ならびに材料を分配ノズルにポンプ送りするための手動往復ポンプを有する。この種類の代表的な分配容器は現在公知となっており、GB804095に示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在もなお、フィルム形成性流体物質を皮膚に適用する上で最適化された分配容器を提供することに関して問題がある。とりわけ問題は、最適な面積および厚さのフィルム、特に一定の規定された面積および厚さのフィルムを適用する、安価で、簡単な、ユーザーの使いやすい、医学的に許容される分配容器を提供することである。これは、フィルムが医薬を含み、適用されたフィルムが規定用量の医薬を含む必要がある状況において特に重要である。
【0006】
そこで本発明の目的は、この問題に取り組むものである。本発明の他の利点および本発明が扱う問題については、下記の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
流体フィルム形成性物質の貯留部と、
前記フィルム形成性物質のための分配ノズルと、
前記貯留部から前記分配ノズルを通して前記物質を送る手段と、
を有する流体フィルム形成性物質を表面に適用するための分配容器が提供され、
前記分配ノズルが細長いスロット形状の開口部を有し、前記物質を開口部から流しながら、前記スロットの長さ方向に対して横方向に前記ノズルが前記表面と隣接して移動可能であるように前記分配容器が適合されている。
【0008】
代表的には、前記表面はユーザーの皮膚であり、分配容器はユーザーの皮膚にフィルムを適用するのに使用する上で適切な形態で提供される。
【0009】
フィルム形成性物質は、粘性の液体または流体ゲルであることができ、それは、開口部を通って流れた後に硬化して、ユーザーの皮膚に付着するゲル様フィルムなどの固体または半固体を形成する。その物質は、硬化した時に保護フィルムを形成することができるか、および/またはフィルムから経皮投与するためのニコチンまたはニコチン類似体などの医薬を含有することができる。
【0010】
貯留部は例えば、絞ることで、貯留部から分配ノズルを通って物質を送るための手段としての、分配ノズルに流体連通する導管を介して物質を押し出すことができる折り畳み式壁の容器を含むことができる。
【0011】
好ましくは、貯留部は物質用の容器を有し、また貯留部から分配ノズルを通って物質を送るための手段は、容器と分配ノズルとの間に位置するポンプを含み、そのポンプは容器と連通する吸入口およびノズルと連通する排出口を有する。
【0012】
貯留部は、交換式貯留部、例えば分配ノズルに交換可能に連結されていることで、貯留部の内容物が空になった時に、新しい充填された貯留部をノズルに連結することができるような貯留部であることができる。しかしながら、本発明によって提供される分配容器は、交換式貯留部を有するほどの経済的な価値がないようなシンプルかつ安価な構造のものとすることができることから、分配容器は、貯留部が空になった場合には使い捨てにすることができる。
【0013】
好適には、そのような容器は、一方の円筒末端にポンプ吸入口を有し、他方の開放端を有し、また物質が貯留部から分配ノズルを通って徐々にポンプ送りされるにつれて円筒容器に沿って一方向運動を行う公知のタイプのいわゆる浮動ピストンを有する円筒容器であることができる。好ましくは、貯留部とノズルの間に、付勢されていることで貯留部からノズルの方向への物質の流動を可能とする一方向弁がある。そのような一方向弁は、貯留部とポンプの間にあることができるが、好ましくはポンプとノズルの間にある。そのような弁は、ノズルから貯留部方向での物質の吸い戻しを防止することができ、および/またはノズルを介しての貯留部への物質の環境汚染を防止することができる。多くの種類の一方向弁が知られており、好適である。
【0014】
ポンプは好ましくは、手動ポンプである。好ましい種類のポンプは、往復ポンプ、すなわちピストンおよびシリンダーまたは2個の往復はめ込み式シリンダーなどの往復で相対的に移動可能な部品を有するポンプであり、それらの部品は良好に往復すると、吸入行程でそれらが有する容量を良好に増加させることで、入っている物質をポンプ中に吸引させ、次に排出行程で、それらが有する体積を減らすことで、入っている物質をポンプからポンプ送りする。多くの種類の往復ポンプが知られている。
【0015】
ピストンおよびシリンダー、またはシリンダーは、好ましくは吸入動作の動きに偏っていることで、ユーザーは排出動作のみを行えばよく、その付勢によって吸入動作が行われるという利点が提供される。そのような付勢は、例えばポンプピストンとポンプシリンダーの間で動作するか、またはテレスコープ形シリンダー間で動作する付勢バネによって提供することができる。代表的にはバネは金属製であり、金属バネが物質と接触しないようにして、物質とバネの間の相互作用の危険性を回避するようにポンプを構築することが望ましい。
【0016】
往復ポンプの利点は、分配ノズルを往復部品(例:シリンダーまたはピストン)の一方、またはテレスコープ形シリンダーの一方に連結(例えば一体形成)することができ、排出動作時の往復部品およびノズルの往復運動によって、物質が付与される表面に沿った直線方向にノズルをガイドしながら、排出動作時に開口部から物質を流し出すことが可能であるという点である。貯留部が細長いもの、例えば円柱形貯留部である場合、好ましくはポンプは、貯留部の長い(例えば円柱形)軸に平行な方向に往復する。
【0017】
貯留部および往復ポンプの特定の配置には、貯留部と一体形成され、ピストンを通り貯留部と連通しているポンプ吸入口導管を有するポンプピストンがあり、そのポンプピストンはポンプシリンダー内に配置されており、ピストンおよび貯留部に対して往復でスライド式に移動可能であり、分配ノズルと一体形成されていてそれに連通しており、シリンダーとノズルの間にはノズルの方向に物質を流せるように付勢された一方向弁がある。
【0018】
そのようなポンプを動作させるには、排出動作でユーザーが、シリンダー、従ってノズルを、付勢に逆らってピストンの上をスライド式に移動させ、好適な量の物質が付与されるまでノズルから物質を放出させる。好ましくは、ポンプの駆出動作は、往復ポンプ部品の相対的運動の限界での末端停止部当接によって制限される。付勢により、吸入動作で反対方向にシリンダーを動かすことができる。
【0019】
相対往復運動の振幅、従って排出動作時に放出される物質の量は、例えば末端停止部当接によって制限することができ、結果的に計量することができる。例えば、ポンプに可変停止部を設けることで、前記振幅を設定して、放出される容量および/またはポンプ排出動作時にノズルが動く長さを変動させることができるようにすることが可能である。排出口ノズルが往復移動部品と一体形成されている場合、この振幅限界によって、ノズルが移動する距離を制限し、それによって形成されるフィルムの面積を制限および制御することができる。医薬含有フィルム形成性材料のパッチ付与に好適な排出動作の長さは3〜4cmである。
【0020】
分配ノズルの細長いスロット形状の開口部は、開口部から物質を流しながらノズルがスロットの長さ方向に対して横方向に移動する時に、開口部長さと実質的に同じ幅を有する帯片の形態でユーザーの皮膚上に物質を付与するのに役立つものである。細長いスロットの寸法は、例えば物質の粘度およびユーザー皮膚などの表面に塗布したい物質量に基づいて実験的に測定することができる。代表的には、細長い長さ方向を横切るスロットの幅は0.1〜1mmであることができ、長手方向に沿ったスロットの長さは1〜2cmであることができる。
【0021】
好適には、ノズルの形状および配列は、ノズルが皮膚表面と隣接して移動する方向に対して横方向(好ましくは垂直)で、スロット形状の開口部の長さ方向に対して横方向(好ましくは垂直)に物質の流れを向けるようなものである。好適にはスロット形状の開口部は、多岐管の排出開口を有しており、その開口に物質が貯留部から送られ、例えば物質がポンプによって吸入開口を通って多岐管中にポンプ送りされ、排出開口には一方向弁を配置することができる。好ましくは、皮膚に均一な厚さのフィルムを付与するため、スロット形状の開口部の長さ全体にわたって物質の均一な流れが得られるように多岐管を構築する。それは、いわゆる「中央供給コートハンガー形多岐管」(技術用語)を用いることで行うことができる。内部においてそのような多岐管は、ノズルが皮膚表面と隣接して移動する方向に対して垂直な方向、例えばスロットの長さ方向に対して平行な方向で切断した場合に、全体がほぼ三角形(辺が曲がっていても良い)の断面、好ましくは正三角形または二等辺三角形である空洞部を有しており、空洞部の下側底辺に沿ってスロット形状の開口部があり、三角形の反対の上側頂点付近、例えば三角形状の上半分に多岐管への吸入開口がある。そのような多岐管は好ましくは、公知の方法で構築して、その中央供給点からのダイ膨張硬化を低下させることで、そのスロット形状の開口の幅を横切る均一な深さのフィルムを放出するようにする。ノズルが皮膚表面と隣接して移動する方向に対して平行な方向で、例えばスロットの長さ方向に対して垂直な方向で、そのような多岐管は代表的には内部が平らであり、例えばこの方向で0.05〜0.2の範囲のスロット長さである寸法を有する。
【0022】
本発明の分配容器は、多様な形態でスロットの長さ方向に対して横方向に、皮膚表面に対して隣接してノズルが動けるように適合させることができる。
【0023】
一つの好ましい方法では、分配容器に、ノズルが排出動作中に移動しながら分配容器をユーザーの皮膚に対して保持できる支持部を設ける。そのような支持部は、ユーザーの皮膚表面から好適な距離でノズルを隔てる上で役立ち得るものであり、分配容器を好適な使用位置に維持する上で役立ち得るものであり、ユーザーの皮膚に沿って動くようノズルをガイドする上で役立ち得るものである。例えば、上記の貯留部および往復ポンプシステムを有する分配容器では、そのような支持部は、ユーザーの皮膚などの表面と支持部が接触している時には、ノズルをその表面と接触した状態で、あるいはその表面のすぐ近くに隣接した状態に保持し、ポンプが往復する方向が表面に対して実質的に平行となるような寸法のものとすることができる。そのような分配容器では、使用時に皮膚に最も近いか皮膚と接触している支持部およびノズルの部分間に形成される直線は、ポンプが往復するこの方向に対して実質的に平行である。支持部は例えば、分配容器の外側表面からの1以上の突出部、例えばそこから延在している1本または好ましくは2本の足を有することができる。例えば前記支持部は、ノズルが表面と隣接して移動する方向に対して横方向(例:垂直方向)に延在していることができる。例えば、往復ポンプを組み込んだ分配容器では、支持部は、ポンプの往復方向に対して横方向(例:垂直方向)に延在していることができる。そのような分配容器は、ユーザーが、支持部を皮膚表面に当て、ノズルを皮膚表面に隣接させて、例えば代表的には皮膚表面から1mm以下の距離に保持することができ、スロットの長さ方向に対して横方向に皮膚表面と隣接しかつ皮膚表面と平行にノズルを移動させ、開口部から物質をポンプ送りすることができる。
【0024】
別の方法では、分配容器、例えば容器は、ノズルに対する外側プロファイルの形状および位置が、使用時にこの外側プロファイルをユーザーの皮膚などの表面に対して配置した場合に、ノズルが表面から適切な距離で、例えば表面と隣接または接触して位置するようなものとすることができる。例えば、上記の貯留部および往復ポンプシステムを有する分配容器では、分配容器は、プロファイルがユーザーの皮膚などの表面と接触している時には、ノズルがその表面と接触しているか、その表面のすぐ近くに隣接しており、ポンプが往復する方向が表面に対して実質的に平行となるようなものとすることができる。そのようなプロファイルは、ポンプが往復する方向に対し平行な方向で実質的に平面状であることができ、ノズルは好ましくは、この平面状表面の面内にある。そのような分配容器は、外側プロファイルが皮膚表面に当たり、ノズルが皮膚表面と隣接、例えば典型的には皮膚表面から1mm以下となるように、ユーザーによって皮膚表面と隣接させて保持することができ、スロットの長さ方向に対して横方向に、ノズルを皮膚表面と隣接させかつ平行に移動させ、開口部から物質をポンプ送りすることができる。
【0025】
従って、本発明の分配容器の好ましい構成は、物質のための細長い容器ならびに容器の長軸に対して平行な方向に沿って往復し、容器の一端と分配ノズルとの間に配置された手動往復ポンプを有し、そのポンプは容器と連通する吸入口およびノズルと連通する排出口を有し、そのポンプは吸入動作の動きへ偏っており、ポンプとノズルの間の一方向弁によって物質の流れがシリンダーからノズル方向へ付勢されており、貯留部には支持部が設けられ、その支持部により、ポンプの排出動作時にノズルを移動させながら、前記貯留部をユーザーの皮膚に対して保持することができ、前記ノズルは、貯留部から物質がポンプ送りされる多岐管を有し、ノズルが皮膚表面と隣接して移動する方向に対し垂直な方向で、かつスロット形状の開口部の長さ方向に対して横方向に物質の流れを向けるような形状および配置にされたスロット形状の開口部を有する。
【0026】
本発明の分配容器の貯留部、ピストン、ポンプピストンおよび多岐管は、ポリプロピレンなどの従来のプラスチック材料製とすることができ、弁は、医薬物質用の分配容器に通常使用されるような弾性材料から構成することができる。
【0027】
本発明は、本明細書に記載の分配容器を用いて、表面に、典型的にはユーザーの皮膚に流体フィルム形成性物質を適用する方法をも提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、ほんの一例として添付の図面を参照しながら、本発明を説明する。
【0029】
図1〜4について説明すると、分配容器10全体を図1の側断面図および図2の断面平面図に示してある。これは、流体フィルム形成性物質12を含む貯留部11を有する。貯留部は、開放端13を有する物質12のための円柱形容器を有し、図示のように左から右に円柱形容器に沿って一方向運動をする公知のタイプのいわゆる浮動ピストン14を有する。円柱形容器11の反対側の端には、ポンプ吸入口15および貯留部11と一体形成されたピストン16があり、ポンプ吸入口15は円柱形の貯留部11と同軸のピストン16を通って、貯留部11との連通を提供している。
【0030】
ピストン16は、往復ポンプの一部よりなり、往復ポンプはポンプシリンダー17を有し、ポンプシリンダー17の内部にピストン16が取り付けられている。ピストン16は、貯留部11から離れたピストン16の端部でシリンダー17の内側表面とスライディングシールを形成しており、シリンダー17はピストン16および貯留部11に対してスライド式に移動可能になっている。シリンダー17はさらに、外側シリンダー18の内部にスライド可能に配置されており、バネ19がこの外側シリンダー18内に配置されて、シリンダー11から離れた位置に向かってシリンダーを付勢している。
【0031】
ポンプシリンダー17は、分配ノズル111を組み込んだ多岐管110と一体形成され、それと連通している。多岐管110は、スナップ留めまたは他の形態で互いに連結された2つの部品で構成されている。ノズル111は、容器11およびピストン16の円柱軸に対して垂直な方向に向いた、すなわち図面の平面に対して垂直な長さ方向を有する細長いスロット形状の開口部の形態である。スロット形状の開口部は、多岐管110の排出開口を有し、貯留部11からポンプ16、17によって吸入開口112を介して多岐管110中に物質がポンプ送りされる。ポンプ16、17と多岐管110との間に一方向弁113があり、ノズル111の方に物質の流れを向かわせるよう付勢されている。多岐管110は、いわゆる中央供給コートハンガー形多岐管(技術用語)である。
【0032】
図1のA−A線で切断した多岐管110の断面を示す図5でわかるように、内部において多岐管110は、全体がほぼ二等辺三角形断面の空洞部を有しており、スロット形状の開口部111が空洞部の下側(図でわかるように)の縁部に沿ってあり、弁113を有する多岐管110の吸入開口112が三角形状の上側(図でわかるように)の頂点付近にある。多岐管110内の空洞部は、多岐管110中に未使用の物質が蓄積されるのを回避するために、できるだけ内部空間が小さくなるような寸法となっている。
【0033】
容器11、ピストン16、シリンダー17および多岐管110は、PP4018ポリプロピレン(BP Amoco)の射出成形によって作られ、これが好適なポリプロピレンである。
【0034】
ユーザーの皮膚表面20上に分配容器10を適切に配置可能とするため、分配容器には、長手円柱軸に対して垂直な方向に外側シリンダー18から延在する2本の足からなる支持部114を設ける。
【0035】
分配容器は次のように動作する。分配容器は最初に図1に示した構成となっており、貯留部11、ポンプシリンダー17およびピストン16が物質で満たされており、シリンダー17は図1に示した位置、すなわち円柱軸に沿って貯留部11からより離れた位置にある。分配容器はユーザーの皮膚表面20と隣接して配置されており、支持部114は皮膚表面20に置かれ、スロット開口部111は皮膚表面20から約1mm離れている。次に、ユーザーが多岐管110に指で圧力を加え、バネ19の付勢に対抗して貯留部11の方へ、シリンダー11および17の軸に平行な矢印の方向に、ピストン16に対してシリンダー17をスライド式に移動させる。この動きによって、物質が弁113を通って多岐管110中に入り、スロット111を通って出て、さらにはスロット開口部111を、円柱軸方向で皮膚表面20を横切り、スロット110の長さ方向に対して横に移動させる。ノズル111の形状および配置は、ノズル111が皮膚表面20に隣接して移動する方向に対し垂直で、ノズル111のスロット形状の開口部の長さ方向に対して垂直な図5中で矢印によって示される方向に物質の流れを向けるものとなっていることが、図1〜5からわかる。これによって、物質は表面20上に実質的に均一な厚さのフィルム21として堆積される。この動きの限界は、多岐管110に隣接するシリンダー17の末端に対してピストン16を当接させることで(あるいは、シリンダー18の末端に対して多岐管110を当接させることで)規定され、その結果として、この限定された運動によって規定される長さを有する領域に計量された用量の物質が堆積することになる。シリンダー17の往復運動の振幅は、約3〜4cmである。
【0036】
ここで分配容器は、図3および4に示した構成のものであり、図1に相当する図3では断面平面図を、図2に相当する図4では側断面図を示している。バネ19は圧縮されている。この排出動作の終わりの時点でユーザーの指の圧力を解放すると、バネ19が図1および2に示した位置にシリンダーを戻す。これによって、容器11から吸入口15を介して、さらなる物質12がポンプシリンダー中に引き込まれ、弁113が多岐管110からの物質の吸い戻しを防止する。同時に、浮動ピストン14が、円柱形容器に沿って図の左から右に移動し、容器11から分配される物質12の容量を作り出す。
【0037】
図6には、足114の配置を示す図1〜4の分配容器の斜視図を示す。
【0038】
足114とノズル111の、使用時に皮膚に最も接近するか皮膚と接触する部分間で形成される直線が、ポンプのシリンダー17が往復する方向に対して実質的に平行であることがわかる。図4でわかるように、容器11から最も遠い足114の先端、およびノズル111のスロット形状の開口部は、この方向に対して実質的に平行な面内にある。
【0039】
図7には、分配容器10の別の構成を示す。図1〜6の分配容器と類似する部品には同様に番号を割り付けてある。分配容器10は容器11を有し、その外側プロファイル115の形状およびノズル111に対する位置は、使用時にその外側プロファイル115が、支持部である足114と同様に、ユーザーの皮膚などの表面に置かれた時に、ノズルが表面から適切な距離で、または表面と接触して位置するようなものである。プロファイル115は、ポンプ15〜19が往復する方向に対し実質的に平行な方向で実質的に平面状であり、ノズル111のスロット形状の排出開口は、この平面状表面115の面内にある。
【0040】
分配容器10は、図示されていない他の特徴を有することができる。例えばノズル111には、取り外し可能なカバーを設けることで、物質の放出後に多岐管111内に残った物質の汚染または損失を防止することができる。例えば、シリンダー17もしくは18、またはピストン16には、相対的に移動可能な末端停止部を設けて、円柱軸方向における多岐管110の動きを、可変可能な所定の限界に設定して、放出される物質の容量および/または物質が放出される長さを制御することができる。シリンダー17およびピストン16には、ツイストロック手段を設けて、そのツイストロック手段が外れるまで、ポンプ16、17の動作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】排出動作前の本発明の分配容器の縦断面図である。
【図2】排出動作前の本発明の分配容器の縦断面図である。
【図3】排出動作後の図1の分配容器の縦断面図である。
【図4】排出動作後の図1の分配容器の縦断面図である。
【図5】図1〜4の分配容器のノズルの断面図である。
【図6】図1〜4の分配容器の斜視図である。
【図7】別の形態の分配容器の斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
10 分配容器全体
11 貯留部
12 流体フィルム形成性物質
13 開放端
14 浮動ピストン
15 ポンプ吸入口
16 ピストン
17 ポンプシリンダー
18 外側シリンダー
19 バネ
110 多岐管
111 分配ノズル
112 多岐管への吸入開口
113 一方向弁
114 支持部
20 皮膚表面
21 フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体フィルム形成性物質の貯留部と、
前記フィルム形成性物質のための分配ノズルと、
前記貯留部から前記分配ノズルを通って前記物質を送る手段と、
を有する流体フィルム形成性物質を表面に適用するための分配容器であって、
前記分配ノズルが細長いスロット形状の開口部を有し、前記物質を開口部を通じて流しながら、前記スロットの長さ方向に対して横方向へ前記ノズルが前記表面と隣接して移動可能であるように前記分配容器が適合されていることを特徴とする分配容器。
【請求項2】
貯留部が物質のための容器を有し、前記貯留部から分配ノズルを通って前記物質を送る手段が、前記容器と前記分配ノズルとの間に位置するポンプを含み、そのポンプは前記容器と連通する吸入口および前記ノズルと連通する排出口を有することを特徴とする請求項1に記載の分配容器。
【請求項3】
手動往復ポンプを有し、分配ノズルがその往復部分の一つに連結されていることで、排出動作時における前記往復部分およびノズルの往復運動が、前記排出動作中に物質を開口部を通じて流しながら、前記物質が適用される表面に沿う直線的な方向で前記ノズルをガイドするようになっていることを特徴とする請求項2に記載の分配容器。
【請求項4】
貯留部が細長い貯留部であり、ポンプが前記貯留部の長軸に平行な方向に沿って往復することを特徴とする請求項3に記載の分配容器。
【請求項5】
細長い長さ方向を横切るスロットの幅が0.1〜1mmであり、長手方向に沿うスロットの長さが1〜2cmである、分配ノズルの細長いスロット形状の開口部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の分配容器。
【請求項6】
ノズルの形状および配置が、前記ノズルが皮膚表面と隣接して移動する方向に対し横方向に、かつスロット形状の開口部の長さ方向に対して横方向に物質の流れを向けるようなものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の分配容器。
【請求項7】
スロット形状の開口部が、物質が貯留部から送られる多岐管の排出開口を有し、前記スロット形状の開口部の長さ全体にわたって物質の均一な排出流れが得られるように前記多岐管が構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の分配容器。
【請求項8】
多岐管が、中央供給コートハンガー形多岐管であることを特徴とする請求項7に記載の分配容器。
【請求項9】
多岐管が、ノズルが皮膚表面と隣接して移動する方向に対し垂直な方向で切った場合に全体的に概して三角形の断面となる空洞部を有し、スロット形状の開口部が前記空洞部の下側底辺に沿うものであり、前記多岐管に入る注入開口が前記三角形状の上半分にある請求項7に記載の分配容器。
【請求項10】
排出動作時にノズルが移動する間、分配容器をユーザーの皮膚に対して保持することができる支持部を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の分配装置。
【請求項11】
分配容器が貯留部および往復ポンプを有し、支持部の寸法が、前記支持部が表面に接触している場合に、ノズルが前記表面に接触した状態または前記表面のすぐ近くに隣接している状態で保持され得るようなものであり、前記ポンプの往復する方向が前記表面と実質的に平行であることを特徴とする請求項10に記載の分配容器。
【請求項12】
支持部およびノズルの、使用時に皮膚と最も近いか皮膚と接触している部分間に構築される直線が、ポンプが往復する方向に対して実質的に平行であることを特徴とする請求項11に記載の分配容器。
【請求項13】
支持部が、ノズルが表面と隣接して移動する方向に対し横方向に延在する、分配容器の外側表面からの1以上の突出部を有することを特徴とする請求項10、11または12のいずれかに記載の分配容器。
【請求項14】
分配容器が往復ポンプを組み込み、支持部が、前記ポンプの往復方向に対し横方向に延在する、分配容器の外側表面からの1以上の突出部を有することを特徴とする請求項10、11、12または13のいずれかに記載の分配容器。
【請求項15】
ノズルに対する外側プロファイルの形状および位置が、使用時にこの外側プロファイルをユーザーの皮膚などの表面に配置した場合に、前記ノズルが前記表面と隣接するか前記表面と接触して位置するようになっていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の分配容器。
【請求項16】
分配容器が貯留部および往復ポンプを組み込み、プロファイルが、ポンプが往復する方向に対し平行な方向で実質的に平面状であり、ノズルが、この平面状表面の面内にあることを特徴とする請求項15に記載の分配容器。
【請求項17】
物質のための細長い容器と、前記容器の長軸に対し平行な方向に沿って往復し、かつ前記容器の一端と分配ノズルとの間に配置された手動往復ポンプとを有し、前記ポンプは、前記容器と連通する吸入口および前記ノズルと連通する排出口を有し、前記ポンプが、シリンダーからノズル方向へ物質が流れるように付勢する、前記ポンプと前記ノズルの間の一方向弁によって、吸入動作の動きに偏っており、貯留部には支持部が設けられ、前記支持部によって、前記ポンプの排出動作時に前記ノズルを移動させながら、前記貯留部をユーザーの皮膚に対して保持することができ、前記ノズルは、前記貯留部から前記物質がポンプ送りされる多岐管を有し、前記ノズルが皮膚表面と隣接して移動する方向に対し垂直な方向で、かつスロット形状の開口部の長さ方向に対して横方向に前記物質の流れを向けるような形状および配置にされたスロット形状の開口部を有することを特徴とする請求項1に記載の分配容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−537032(P2007−537032A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512115(P2007−512115)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005260
【国際公開番号】WO2005/113155
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】