説明

流体ポンプ用のバイパス通路

流体ポンプ(10)が、ポンピングチャンバ(14)と、ポンピングチャンバに流体接続された吸入口(16)および排出口(18)と、吸入口と排出口との間に流体接続された通路(24)とを含む。通路を流れる流体が、ポンピングチャンバを迂回する。1つの例において、流体ポンプ(10)は、ヒーターコア(23b)と車両用エンジン(23a)との間の車両用冷却システム内に冷却水を流入、排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォータポンプに関し、特に、ポンプ吸入口からポンプ排出口へと通じ、ウォータポンプに入る流体がメインインペラチャンバを迂回するようにするバイパスチャネルを有するウォータポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のウォータポンプは、広く知られたものであり、例えば、エンジン冷却システムに冷却水を循環させる目的で車両に使用されている。典型的なポンプは、ポンプ吸入口およびポンプ排出口と流通状態にあるアクチュエータ駆動式のインペラを有する中央チャンバを含む。インペラは、ポンプ吸入口を通って流入した流体を、ポンプ排出口から外へ押し出す。
【0003】
ポンプの動作中、ポンプ吸入口とポンプ排出口との間には、インペラが存在、回転、および動作することで生じる圧力差がある場合が多い。オフ状態において、流量が減少すると、圧力差が大きくなることで、操作効率が落ちてしまう。オン状態において、流量の増大がないと、圧力差が大きくなることで、操作効率が落ちてしまう。圧力差が大きすぎればエンジン冷却システム、例えば、エンジン冷却システム内のさまざまなコンポーネントの動作が、望ましいように機能しなくなることもある。
【0004】
圧力差の一部を低減するために、インペラと中央チャンバの内面との間に間隔またはギャップを設けて従来のポンプをデザインすることもできる。しかしながら、間隔を設けると、中央チャンバ内で流体の流れに乱流が生じ、インペラの動作の妨げとなって、ポンプ効率が落ちるため望ましくない。
【0005】
したがって、インペラの動作にあまり悪影響を及ぼすことなく、圧力差を最小限に抑える流体ポンプが必要とされている。
【発明の開示】
【0006】
1つの例示的な流体ポンプは、ポンプチャンバと、ポンプチャンバに流体接続された吸入口および排出口と、吸入口と排出口との間に流体接続された通路とを含む。通路を流れる流体は、ポンピングチャンバを迂回する。1つの例において、流体ポンプは、ヒーターコアと車両用エンジンとの間の車両用冷却システム内に冷却水を吸入、排出する。
【0007】
別の態様において、流体ポンプは、ポンピングチャンバと、少なくとも部分的にポンピングチャンバ内にあるアクチュエータ駆動式のインペラとを含む。吸入口および排出口は、ポンピングチャンバと流体接続され、テーパー状の通路が、吸入口および排出口と流体接続する。通路を流れる流体は、ポンピングチャンバを迂回する。
【0008】
吸入口および排出口がポンピングチャンバに流体接続された流体ポンプを制御する1つの例示的な方法は、吸入口と排出口との間に流体圧力差を生成するステップを含む。次いで、流体は、ポンピングチャンバを流れる流体の流れを迂回させて、流体圧力差を低減するために、吸入口と排出口との間に接続された通路を通って流出する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のさまざまな特徴および利点は、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。詳細な説明に付随する図面については、以下に簡潔に記載している。
【0010】
図1は、冷却システムに流体を循環させるために、例えば、車両で使用されるポンプ10の選択部分の略図を示す。図示した例において、ポンプ10は、中央チャンバ14を画定するハウジング12を含む。ハウジング12は、中央チャンバ14に流体接続された吸入口16および排出口18を有する。インペラ20が、中央チャンバ14に収容され、電気モータ、ブラシ式磁気モータ、ブラシレスDCモータ、または他の既知のアクチュエータなどのアクチュエータ22によって駆動される。この例において、ポンプ10は、車両用エンジン23aから吸入口16を通して中央チャンバ14内に冷却水を受け取る。インペラ20は、排出口18を通して車両用ヒーターコア23bへ冷却水を推進させる。
【0011】
図2Aは、1つの例示的なポンプ10の分解図を示し、図2Bは、組み立て後の例示的なポンプ10の断面図を示す。この例において、ハウジング12は、ファスナ21で第2のセクション19bに固定された第1のセクション19aを含む。インペラ20、アクチュエータ22、およびいくつかの他のコンポーネント23(例えば、Oリング、スペーサ、摩擦リング)は、ハウジングセクション19aおよび19bの間に入れられている。
【0012】
図3および図4を参照すると、ポンプハウジング12の第1のセクション19aは、吸入口16および排出口18を流体接続するバイパスチャネル24を含む。この例において、バイパスチャネル24は、吸入口16に流体接続された第1の開口部25と、排出口18に流体接続された第2の開口部26とを含む。第1の開口部は、第1の寸法Dを含み、第2の開口部は、第1の開口部25より小さい第2の寸法Dを含む。言い換えれば、バイパスチャネル24は、排出口18から吸入口16に向かってテーパー状になっている。
【0013】
ポンプ10の動作中、吸入口16に入る流体の一部は、中央チャンバ14へ流入および貫流することなく、バイパスチャネル24を通って排出口18内へと流れる。バイパスチャネル24内に流入しない流体は、中央チャンバ14内に流入し、上述したように、インペラ20によって排出口18から推進される。バイパスチャネル24は、ある一定のサイズ、形状、および場所を有するように図示しているが、別のサイズ、形状、および場所も使用可能であることを理解されたい。
【0014】
図示した例において、バイパスチャネル24は、ポンプ10を通って流れる流体を安定化させるという利点を備え、吸入口16と排出口18との間の圧力差を低減する。1つの例において、ポンプ10が休止状態のとき、バイパスチャネル24は、バイパスチャネル24を通して、吸入口16から排出口18へ、または排出口18から吸入口16へと、インペラ20を抵抗回転させることなく、流体を流出させることができる。この特徴により、インペラ20の干渉を受けることなく、吸入口16と排出口18との間を流体が自由に流れることができるため、ポンプ10の休止時、吸入口16と排出口18との間の圧力差が低減される。
【0015】
別の例において、ポンプの動作時、バイパスチャネル24により、流体の一部が、中央チャンバ14に入ることなくバイパスチャネル24を通って流出する。これにより、流体は、インペラ20による中央チャンバ14での圧力蓄積を回避できることで、吸入口16と排出口18との間の圧力が均衡しやすくなる。
【0016】
バイパスチャネル24のサイズ、形状、および場所は、特定のデザインまたは用途の需要に見合うように調整されうる。図示した例から、バイパスチャネル24の断面積が、吸入口16および排出口18より概して小さいことを認識できるであろう。別の例において、バイパスチャネル24は、より多くの流体を流出させることができるように、図3および図4に示すものより大きくされる。これにより、吸入口16および排出口18との間の圧力差がさらに低減されるが、バイパスチャネル24を大きくしすぎると、ポンプ10のポンプ効率が低下してしまうこともある。別の例において、バイパスチャネル24は、図3および図4に示すものより小さくされる。バイパスチャネル24がより小さいと、吸入口16と排出口18との間の均圧効果が減少する。バイパスチャネル24のサイズが小さすぎると、均圧効果が不十分になってしまうこともある。
【0017】
図示した例において、ハウジング12は、プラスチック材料から成形される。1つの例において、プラスチック材料は、ポリアミドおよび35%ガラス繊維のプラスチック複合材である。これにより、比較的高い強度および軽量の組み合わせが得られる。あるいは、ハウジング12は、金属材料から鋳造されてもよく、または他の既知の製造方法で形成されてもよい。
【0018】
図5は、中央チャンバ14内の選択部分を示す斜視図である。この例において、ハウジング12は、中央チャンバ14を画定する表面30を含む。この例において、バイパスチャネル24は、吸入口16と排出口18との間の表面30の下に延伸する。表面30の部分32(円形)が、バイパスチャネル24と中央チャンバ14との間に共通の壁があるように、中央チャンバ14の一部およびバイパスチャネル24の一部を画定する。図において、バイパスチャネル24は、中央チャンバ14内に小さな隆起34を形成する。この例において、隆起34が、インペラ20の動作と、中央チャンバ14を通る流体の流れに及ぼす影響は最小限のものである。他の例において、バイパスチャネル24は、隆起34が存在しないように中央チャンバ14から離れた位置に設けられる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態について開示してきたが、当業者であれば、本発明の範囲内において何らかの修正が可能であることを認識するであろう。したがって、本発明の正確な範囲および内容を確認するためには、特許請求の範囲を検討されたい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】1つの例示的なポンプシステムの略図を示す。
【図2A】1つの例示的なポンプを示す分解図を示す。
【図2B】例示的なポンプの組み立て図を示す。
【図3】ポンプのポンプハウジングのセクション内におけるバイパスチャネルを示す。
【図4】図3のバイパスチャネルのさらに詳細な図を示す。
【図5】ポンプ内の中央チャンバの一部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体ポンプであって、
ポンピングチャンバと、
前記ポンピングチャンバに流体接続された吸入口と、
前記ポンピングチャンバに流体接続された排出口と、
通路を流れる流体が、前記ポンピングチャンバを迂回するように、前記吸入口と前記排出口との間に流体接続された通路とを備える、流体ポンプ。
【請求項2】
少なくとも部分的に前記ポンピングチャンバ内にあるアクチュエータ駆動式のインペラをさらに備える、請求項1に記載の流体ポンプ。
【請求項3】
一体形の単体で作られたポンプハウジングセクションをさらに備え、前記ポンプハウジングセクションが、前記吸入口と、前記排出口と、前記ポンプハウジングセクションに形成された前記通路とを含む、請求項1に記載の流体ポンプ。
【請求項4】
前記ポンプハウジングが、ポリアミドおよびガラス繊維の複合材を含む、請求項3に記載の流体ポンプ。
【請求項5】
前記吸入口、前記排出口、および前記通路の各々が、公称直径をそれぞれ含み、前記通路の公称直径が、前記吸入口および前記排出口の公称直径より小さい、請求項1に記載の流体ポンプ。
【請求項6】
前記通路が、テーパー状のものである、請求項1に記載の流体ポンプ。
【請求項7】
前記通路が、前記吸入口に流体接続された第1の開口部と、前記排出口に流体接続された第2の開口部とを含み、前記第1の開口部が、関連付けられた第1の面積を有し、前記第2の開口部が、前記第1の面積より小さい関連付けられた第2の面積を有する、請求項1に記載の流体ポンプ。
【請求項8】
前記排出口に流体接続されたヒーターコアをさらに備える、請求項1に記載の流体ポンプ。
【請求項9】
前記吸入口および前記ヒーターコアに流体接続された車両用燃焼エンジンをさらに備える、請求項8に記載の流体ポンプ。
【請求項10】
流体ポンプであって、
ポンピングチャンバと、
少なくとも部分的に前記ポンピングチャンバ内にあるアクチュエータ駆動式のインペラと、
前記ポンピングチャンバに流体接続された吸入口と、
前記ポンピングチャンバに流体接続された排出口と、
通路を流れる流体が、前記ポンピングチャンバを迂回するように、前記吸入口と前記排出口との間に流体接続されたテーパー状の通路とを備える、流体ポンプ。
【請求項11】
前記テーパー状の通路の断面積が、前記吸入口から前記排出口へ向かって狭くなる、請求項10に記載の流体ポンプ。
【請求項12】
ポンピングチャンバに流体接続された吸入口および排出口を有する流体ポンプの制御方法であって、
前記吸入口と前記排出口との間に流体圧力差を生成するステップと、
前記ポンピングチャンバを流れる流体の流れを迂回させて、流体圧力差を低減するために、前記吸入口と前記排出口との間に接続された通路を通って流体を流出させるステップとを含む、方法。
【請求項13】
前記ポンピングチャンバ内でのインペラの回転と調和しながら、前記通路を通して流体を流出させるステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ポンピングチャンバ内でのインペラの非回転に応答して、前記通路を通して流体を流出させるステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−504975(P2009−504975A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526133(P2008−526133)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/030874
【国際公開番号】WO2007/019496
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(502393914)クーパー−スタンダード オートモーティブ、 インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】