説明

流体ポンプ

【課題】流体ポンプのピストンを駆動する駆動室に対する流体の給排により駆動負荷の軽減を図りながら、駆動室に対する塵埃や湿気の吸引を抑制する。
【解決手段】シリンダ1の内部で、シリンダヘッド側の弁ユニットVとピストン2との間に加減圧室Aを形成し、この反対側に駆動室Bを配置する。駆動室Bと外部空間とに亘る通気経路Fを形成し、弁ユニットVを介して接続する流体経路Eを備え、この流体経路Eが通気経路Fの中間位置の合流空間Gで合流し、この合流空間Gにエアーフィルタ17を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンの作動により流体の給排を行う流体ポンプに関し、詳しくは、ピストンに連結するコネクションロッドやクランク機構等が配置された駆動室に対する流体の給排を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
流体ポンプの一例として、特許文献1にはシリンダの内部に往復移動自在にピストンを備え、モータの駆動力をクランク機構により往復作動に変換してピストンに伝える駆動手段を備え、シリンダヘッドには吸気弁と排気弁とを有するバルブボディを備えた真空ポンプが示されている。
【0003】
この特許文献1では、クランク機構を収容する駆動室(文献ではクランク室)に隣接する位置にケースが配置され、このケースの内部空間(文献では機器室)に対しバルブボディの排出ガスを供給する排出ガス流路がシリンダ壁内に形成されている。駆動室とケースの内部空間(機器室)とが駆動室側排気ポートにより連通し、ケースには内部空間の排出ガスを大気へ放出する緩和室側排気ポートが形成されている。これにより、ピストンの作動時には排出ガスが、排出ガス流路、クランク室、駆動室側排気ポート、機器室、緩和室側排気ポートに順次流れることで外部に排出され、排出時の脈動圧の変化を抑制して排気騒音を抑制する。
【0004】
また、流体ポンプの一例として、特許文献2には、シリンダの内部に往復移動自在にピストンを備え、シリンダの上部のシリンダヘッドにバルブ組付体を備え、シリンダの下部にクランクケースを備え、このクランクケースの内部に備えたクランク機構としてクロススライダクランク機構とピストンとがピストンロッドにより連結された構成のコンプレッサ(空気圧縮機)が示されている。
【0005】
この特許文献2では、シリンダ下部の支持部材に空気通路が形成され、この空気経路に密封チャンバが接続する構成(文献中の図5)、あるいは、この空気経路にエアーフィルタが接続する構成(文献中の図6、図9など)が示されている。これらの構成では、ピストンの作動によりピストンの下側(シリンダヘッドと反対側)の空間の圧力が低下した場合には、チャンバの空気を吸入する、あるいは、エアーフィルタ(文献ではエアクリーナ)透して外部の空気を吸入し、これとは逆に、ピストンの作動によりピストンの下側の空間の圧力が上昇した場合には、この空間の空気を密封チャンバに送り出す、あるいは、エアーフィルタを透して外部に送り出す作動が行われる。このような構成から、作動動力の軽減を図り、シリンダ内の温度上昇を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−7118号公報
【特許文献2】特開平10−266966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ピストンの作動によりピストンヘッド側の空間に流体を給排する流体ポンプでは、ピストンの往復作動時にピストンヘッドの反対側の駆動室(クランク機構等が配置された空間)においても圧力が変動することになり、この駆動室が密封された空間である場合には、駆動室の圧量変動がアクチュエータの駆動負荷として作用する。
【0008】
この不都合を解消するため、特許文献1、あるいは、特許文献2に記載されるように駆動室に対して外部から流体の給排を行えるように構成することが有効と考えられる。特に、特許文献1に記載される真空ポンプの構成では、ピストンの排気方向への作動時にシリンダヘッド側の空間からの排気を駆動室に導くことが流体の流れに無駄がなく、特許文献2に記載されるコンプレッサ(空気圧縮機)の構成(文献中の図6、図9に示される構成)ではピストンの吸気方向への作動時に駆動室の流体の一部をシリンダに供給するため流体の流れに無駄がない。このような構成を採用することでピストンを駆動する電動モータの負荷が軽減する。
【0009】
しかしながら、ピストンの作動により流体の給排を行う流体ポンプにおいて負圧状態に達した駆動室に流体が吸入される場合に、その流体に塵埃や湿気が含まれていると、駆動系の作動不良を招くことや、腐食を招くことがあり改善の余地がある。
【0010】
本発明の目的は、ピストンを駆動する駆動室に対する流体の給排により駆動負荷の軽減を図りながら、駆動室に対する塵埃や湿気の吸引を抑制し得る流体ポンプを合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴は、シリンダと、当該シリンダの内部をシリンダヘッドの側の加減圧室と、前記加減圧室と反対側の駆動室とに仕切りつつ、シリンダの内部で往復作動自在に設けられたピストンと、前記ピストンの往復作動時に前記加減圧室への流体の流れを制御するように前記シリンダヘッドに設けられた弁ユニットとを備え、前記弁ユニットが、前記加減圧室の流体を加減圧対象に作用させる制御空間と、前記加減圧室と外部空間との間で流体を給排する給排空間とを有しており、前記駆動室と外部空間とに亘る通気経路と、前記弁ユニットの前記給排空間に接続する流体経路とを備え、この流体経路が前記通気経路の中間位置の合流空間で合流し、この合流空間に流体フィルタが設けられている点にある。
【0012】
この構成によると、ピストンが排気方向に作動して駆動室が負圧状態に達した場合には、駆動室に対して通気経路からの流体が流体フィルタで濾過された状態で吸引され、これと同時に、合流空間に接続する流体経路からの流体も駆動室に吸引される。これとは逆に、ピストンが吸気方向に作動して駆動室が加圧状態に達した場合には、駆動室の流体が通気経路から流体フィルタで濾過された状態で外部空間に送り出され、これと同時に、合流空間に接続する流体経路に対して駆動室の流体の一部が送られる。
その結果、ピストンを駆動する駆動室に対する流体の給排により駆動負荷の軽減を図りながら、駆動室に対する塵埃や湿気の吸引を抑制し得る流体ポンプが構成された。特に、この構成では、ピストンの作動時には駆動室の圧力変動に伴い給排音が発生するものであるが、駆動室に通気経路と流体経路とが接続しているので、これらの空間の空気圧の急激な変動を抑制して騒音低減の効果を奏する。
【0013】
本発明は、前記弁ユニットが、前記ピストンの吸気方向への作動時にのみ開放して前記加減圧対象としての負圧作用対象から前記加減圧室に対し前記流体としての空気を吸引するために前記制御空間に配置された吸気弁と、前記ピストンの排気方向への作動時にのみ開放して前記加減圧室に対し前記流体としての空気を送り出すために前記給排空間に配置された排気弁とを備えることにより前記加減圧室に負圧を作り出すように構成されると共に、前記排気弁から前記合流空間に空気を送り出す排気経路が前記流体経路として構成されても良い。
【0014】
これによると、ピストンが吸気方向に作動した場合には、負圧作用対象からの空気を吸気弁を介して加減圧室に吸引すると共に、駆動室の圧力上昇に伴い駆動室の空気が通気経路から外部空間に送り出される。これとは逆に、ピストンが排気方向に作動した場合には、排気弁が開放して加減圧室の空気を流体経路としての排気経路に送り出す。この作動時には駆動室が負圧になるため、外部空間の空気が通気経路から流体フィルタで濾過された状態で駆動室に吸引されると共に、この通気経路に合流する流体経路からの空気が駆動室に吸引される。つまり、駆動室に外部空間から吸引される空気は必ず流体フィルタで濾過され、塵埃や湿気が除去されることになり、この吸引時には加減圧室から排気経路に送られる空気の一部を合流空間を介して駆動室に吸引するので、ピストンに作用する負荷を軽減しながら外部空間から吸引する空気の量を低減できる。
【0015】
本発明は、前記弁ユニットが、前記ピストンの排気方向への作動時にのみ開放して前記加減圧対象としての加圧対象に前記加減圧室から前記流体としての空気を供給するため前記制御空間に配置された排気弁と、前記ピストンの吸気方向への作動時にのみ開放して前記加減圧室に前記流体としての空気を吸引するため前記給排空間に配置された吸気弁とを備えることにより前記加減圧室に加圧空気を作り出すように構成されると共に、前記流体フィルタを介して吸引した流体を前記吸気弁に供給する吸気経路が前記流体経路として構成されても良い。
【0016】
これによると、ピストンが吸気方向に作動した場合には、外部空間の空気が流体フィルタで濾過された状態で合流空間から流体経路としての吸気経路から加減圧室に供給されると共に、駆動室の空気が通気経路から合流空間に送り出され、この合流空間に送られた空気の一部が吸気経路に送られる。これとは逆に、ピストンが排気方向に作動した場合には、加圧対象に対して加減圧室からの空気を排気弁を介して供給すると共に、この作動時には駆動室が負圧になるため、外部空間の空気が通気経路から流体フィルタで濾過された状態で駆動室に吸引され、吸気経路の空気の一部も駆動室に吸引される。
【0017】
本発明は、前記合流空間を形成する経路ブロックが備えられ、この経路ブロックの底壁に当該経路ブロックの内部空間と前記外部空間とを連通させる開放口が穿設され、前記底壁の上面が前記開放口に近い位置ほど低いレベルとなる傾斜姿勢で形成されても良い。
【0018】
これによると、経路ブロックの内部に水滴が発生した場合には、この水滴が底壁の上面の傾斜に沿って流れることにより、開放口に達し、この開放口から経路ブロックの外部に容易に排出される。
【0019】
本発明は、前記開放口を中心として、この開放口を取り囲む環状領域に、前記底壁の上面から立ち上がる姿勢の複数の縦壁を形成し、これらの縦壁で取り囲まれる領域で前記合流空間が形成され、この合流空間の外側位置に前記流体経路と前記通気経路とが連通しても良い。
【0020】
これよると、複数の縦壁に取り囲まれる空間に流体フィルタを挿入する等、流体フィルタを、縦壁によって移動が規制される状態で容易に配置できる。
【0021】
本発明は、前記経路ブロックの前記底壁の下面側で前記開放口を取り囲む位置に筒状体が下方に向けて突設されても良い。
【0022】
これによると、経路ブロックの底壁に水滴が付着した場合にも、その水滴が開放口の方向へ移動する現象を筒状体が阻止することになり、その水滴が凍結した場合にも凍結により開放口における流体の流れを阻害されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態の真空ポンプの断面図である。
【図2】経路ブロックの上面からの斜視図である。
【図3】経路ブロックの下面からの斜視図である。
【図4】経路ブロックの縦断側面図である。
【図5】第1実施形態のピストンが排気方向と吸気方向とに移動する際のピストンリングと連通孔との位置関係を示す断面図である。
【図6】第2実施形態のコンプレッサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1に示すように、シリンダ1の内部に往復移動自在にピストン2を備え、このピストン2を基準にしてシリンダヘッド側に加減圧室Aを備え、ピストン2を基準にして加減圧室Aと反対側にピストン2に駆動力を伝えるクランク機構Cを収容した駆動室Bを備えることにより流体ポンプとしてのレシプロ型の真空ポンプが構成されている。
【0025】
この真空ポンプは、自動車のブレーキブースター(図示せず)の負圧源として使用されるものであり、ピストン2を吸気方向(図1で右側)に作動させることにより、加減圧室Aに負圧を作り出し、ピストン2を排気方向(図1で左側)に作動させることにより、流体としての空気を加減圧室Aから外部に排出する。尚、この真空ポンプは自動車に使用されるものに限らず、負圧を必要とする他の機器にも使用可能であり、流体として空気以外のガスを対象にしても良い。
【0026】
〔具体構成〕
この真空ポンプは、シリンダ1の一方の端部(シリンダヘッド側)に弁ユニットVを配置することにより、この弁ユニットVとピストン2との間に加減圧室Aが形成される。また、シリンダ1の他方の端部側にポンプハウジング3を配置し、このポンプハウジング3の内部空間によって駆動室Bが形成される。
【0027】
ポンプハウジング3に電動モータ4が備えられ、この電動モータ4の出力軸4Aと一体的に回転するクランクアーム5にコネクティングロッド6の基端を連結し、このコネクティングロッド6の先端にピストン2が連結している。このようにクランク機構Cは、クランクアーム5とコネクティングロッド6とを備えて構成されている。この構成から、電動モータ4の出力軸4Aの回転駆動力をクランク機構Cが往復作動力に変換してピストン2に伝え、このピストン2を往復作動させる。
【0028】
駆動室Bは、ポンプハウジング3において側方に開放する空間をプレート状の閉塞部材7で閉塞した構造を有しており、閉塞部材7には通気口7Aが穿設されている。この通気口7Aと連通する内部空間を有する経路ブロック15が閉塞部材7の外側の下面に配置され、この経路ブロック15と閉塞部材7とが固定ボルト8によりポンプハウジング3に連結固定されている。また、経路ブロック15の内部空間に連通する筒状部16が弁ユニットVの方向に突設されている。
【0029】
弁ユニットVは、弁ボディ21の吸気空間21A(制御空間の一例)と連通する部位に吸気弁22を備え、この弁ボディ21の排気空間21B(給排空間の一例)と連通する部位に排気弁23を備えている。また、この弁ユニットVは、吸気空間21Aと排気空間21Bとを外部から隔絶するカバープレート24を備え、このカバープレート24には外部のブレーキブースター(加減圧対象の一例)に負圧を作用させるチューブ25が接続している。吸気弁22は、樹脂のように柔軟に変形し得る素材を用いて構成され、空気の流れを阻止する場合には外周のリップ部が弁ボディ21に密着し、空気の流れを許す場合にはリップ部が弁ボディ21から浮き上がり空気の流れを許す空間を形成する。また、排気弁23は、バネ23Sで閉塞方向に付勢される構成を有しており、空気の流れを阻止する場合にはバネ23Sの付勢力により外周が弁ボディ21に密着し、空気の流れを許す場合には、バネ23Sの付勢力に抗して外周部分が弁ボディ21から浮き上がり空気の流れを許す空間を形成する。尚、吸気弁22と排気弁23として、バネで閉じ方向に付勢されたボールやポペット等を用いることや、ヒンジによって作動する板状の部材を用いても良い。
【0030】
弁ボディ21には、排気空間21Bに連通する筒状の突出部26がポンプハウジング3の方向に向けて突設されている。この突出部26と筒状部16とを連通状態で接続する筒状の接続管9が備えられ、この接続管9は、一端を突出部26に外嵌し、他端を筒状部16とに外嵌する形態で備えられる。
【0031】
弁ユニットVは、弁ボディ21とカバープレート24との貫通孔に挿通する連結ボルト10の先端をポンプハウジング3の雌ネジ部に螺合させる形態でポンプハウジング3に連結している。この連結は複数の連結ボルト10により行われるものであり、連結時に弁ユニットVとポンプハウジング3との間にシリンダ1を挟み込み、弁ユニットVと経路ブロック15との間に接続管9を挟み込むことで、これらが一体化される。
【0032】
通気口7Aから経路ブロック15の内部空間を通過し、経路ブロック15の外面に穿設された開放口15Hに亘って通気経路Fが形成されている。また、弁ボディ21の排気空間21Bから接続管9を介して経路ブロック15の内部空間に亘って排気経路として機能する流体経路Eが形成されている。この流体経路Eは、通気経路Fの中間位置に形成された合流空間Gで合流しており、この合流空間Gにエアーフィルタ17(流体フィルタの一例)が備えられている。
【0033】
この真空ポンプは図1に示す如く、電動モータ4を上部に配置し、経路ブロック15を下側に配置した姿勢で使用するように設計されている。経路ブロック15は、図2〜図4に示すように、円形の底壁15Aと、この外周に連なる円筒壁15Bとを有するブロック本体の上部位置に側方に張り出すフランジ体15Cを一体形成した構成を有している。フランジ体15Cには固定ボルト8が挿通するボルト孔15Dが形成され、ブロック本体を取り囲む位置にシール19を収容するシール溝15Eが形成されている。
【0034】
底壁15Aの中心位置には、経路ブロック15の内部空間と外部空間とを連通させる開放口15Hが穿設され、この底壁15Aの上面が、開放口15Hに近い位置ほど低いレベルとなる傾斜姿勢で形成されている。この底壁15Aの上面で開放口15Hを取り囲む環状領域に底壁15Aから立ち上がる姿勢の複数の縦壁15Fが底壁15Aと一体的に形成されている。この複数の縦壁15Fと底壁15Aとに連結する補強リブ15Gが開放口15Hを中心にして放射状に伸びる姿勢で形成されている。複数の縦壁15F同士の隙間部分には、底壁15Aの上面の傾斜に沿って水を流すことが可能となる。この縦壁15Fの縦方向の寸法は、経路ブロック15のフランジ体15Cの上面から底壁15Aまでの距離より短く設定されている。
【0035】
図3に示すように、底壁15Aの下面側で開放口15Hを取り囲む位置に円筒状で下方に突出する筒状体15Lが底壁15Aと一体的に形成され、この筒状体15Lと底壁15Aの下面とに連結するリブ体15Mが開放口15Hを中心にして放射状に伸びる姿勢で形成されている。
【0036】
この経路ブロック15の側壁に前述した筒状部16が形成され、この筒状部16が、底壁15Aと円筒壁15Bとで成るブロック本体の内部空間に連通している。また、この経路ブロック15を閉塞部材7に連結した状態で、閉塞部材7に穿設された通気口7Aがブロック本体の内部空間に連通するように構成されている。
【0037】
特に、経路ブロック15の内部空間のうち縦壁15Fに取り囲まれる空間によってエアーフィルタ17が備えられるフィルタ空間が形成され、このフィルタ空間を取り囲むドーナツ状となる空洞型のサイレンサ18が形成されている。このサイレンサ18を構成するサイレンサ空間とフィルタ空間とを併せて合流空間Gが形成されている。尚、フィルタ空間は、通気経路Fのうち合流空間Gの外部空間側(フィルタ空間より開放口15Hに近い側)の経路中に形成されている。サイレンサ18を構成するサイレンサ空間と、フィルタ空間とは、閉塞部材7の外壁と経路ブロック15の内壁との間に形成されている。フィルタ空間には閉塞部材7の外壁と経路ブロック15の内壁とに密接する状態でエアーフィルタ17が備えられている。このエアーフィルタ17は除塵性能を有する羊毛フェルトや、紙材、ウレタンフォーム等が使用される。
【0038】
つまり、経路ブロック15は、流体経路Eと通気経路Fと合流空間Gとを構成する内部空間を有すると共に、エアーフィルタ17による除塵、除湿を実現し、サイレンサ18による消音を実現する。また、経路ブロック15の底壁15Aが傾斜姿勢で形成されているため、内部で発生した水滴や、エアーフィルタ17で除去された水を底壁15Aの上面に傾斜に沿って開放口15Hの方向に流し、開放口15Hから外部に排出する。
【0039】
底壁15Aの下面側に筒状体15Lを突設しているので、例えば、底壁15Aの下面に水滴が付着して凍結する環境においても、この水滴が開放口15Hの付近で凍結する不都合を解消して開放口15Hの通気性を良好に維持できるように構成されている。尚、筒状体15Lの下方への突出量を、固定ボルト8の頭部の下方への突出量より小さくすることで、この筒状体15Lの破損を抑制するようにも構成されている。
【0040】
〔ピストンリング〕
図5に示すように、ピストン2の外面の全周に環状溝2Gが形成され、この環状溝2Gの溝幅より狭い幅で、環状溝2Gの内部で幅方向(ピストン2の作動方向)に変位自在にピストンリング30が嵌め込まれている。また、ピストン2の外周にはピストンガイドブッシュ31が嵌め込まれ、シリンダ1の内周面にはピストンリング30とピストンガイドブッシュ31とが接触し、ピストン2の両端の外周がシリンダ1の内周面に接触しないように構成されている。環状溝2Gは、加減圧室側の第1側壁2Gaと駆動室側の第2側壁2Gbと、これらに挟まれる位置の環状溝2Gの底部となる底壁2Gcとを有している。ピストンリング30は、内リング30Aと中間リング30Bと外リング30Cとの3種を重ね合わせた3重構造を有している。
【0041】
内リング30Aは、ステンレス鋼で成りリング部にスリットが形成されている。中間リング30Bと外リング30Cとは4フッ化エチレン樹脂で成り、リング部にスリットが形成されている。尚、内リング30Aと中間リング30Bと外リング30Cとのスリットは環状溝2Gに嵌め込む際に内径の拡大を容易にするために一般的に形成されるものと変わりはない。また、内リング30Aのスリットに対し中間リング30Bのスリットの位置を180度異なる位置に配置し、この中間リング30Bのスリットの位置に対し外リング30Cのスリットを180度異なる位置に配置することでシール性能の向上が図られている。
【0042】
このピストンリング30は、内リング30Aが半径を拡大する方向に付勢力を作用させており、この付勢力により外リング30Cの外周をシリンダ1の内周面に接触させると共に、内リング30Aの内周面と環状溝2Gの底壁2Gcとの間に隙間を形成している。
【0043】
環状溝2Gの底壁2Gcとピストン2の内部とを連通させる複数の連通孔2Tが形成され、この連通孔2Tは駆動室Bに連通している。そして、ピストン2が吸気方向へ作動した場合には、図5(b)に示すように、ピストンリング30が第1側壁2Gaの方向に変位して第1側壁2Gaに当接し、加減圧室Aから連通孔2Tへの空気の流れを阻止する。これとは逆に、ピストン2が排気方向へ作動した場合には、図5(a)に示すように、ピストンリング30が第2側壁2Gbの方向に変位して第2側壁2Gbに当接し、このピストンリング30と第1側壁2Gaとの間に隙間を形成するため加減圧室Aから連通孔2Tへの空気の流れを許す。
【0044】
〔第1実施形態の作動形態〕
このような構成のため、ピストン2が吸気方向に作動する場合には、ピストンリング30が第1側壁2Gaに当接(密接)する位置に変位するため加減圧室Aから駆動室Bへの空気の流れが阻止される。このピストン2の作動により吸気弁22が開放してチューブ25からの空気を加減圧室Aに吸引して負圧を作用させることになり、駆動室Bの空気が通気口7Aから通気経路Fに送られ開放口15Hからポンプ外に排出される。
【0045】
また、ピストン2が排気方向に作動する際には、排気弁23が開放して加減圧室Aからの空気が流体経路Eに送られる。これと同時に、ピストンリング30が第2側壁2Gbに当接する位置に変位するため加減圧室Aの空気がピストンリング30と第1側壁2Gaとの間の隙間から連通孔2Tに送られる。この作動では駆動室Bが負圧状態に達するが、連通孔2Tから駆動室Bに空気が送り込まれるため負圧の程度は低く、通気口7Aから駆動室Bに吸引される空気量は低減される。特に、通気口7Aに空気を送る通気経路Fは合流空間Gにおいて流体経路E(排気経路)と合流しているため、通気経路Fに対して流体経路E(排気経路)からの空気を送ることが可能となり、負圧により駆動室Bに空気が吸引される場合でも、流体経路E(排気経路)の空気と、開放口15Hで吸引された空気とが混合することになり、外気の吸引量を低減できる。尚、開放口15Hから空気が吸引される場合にはエアーフィルタ17で濾過された空気が吸引されることになるので、塵埃や湿気(水分)がエアーフィルタ17で除去され駆動室Bに浸入することがない。
【0046】
更に、排気方向にピストン2が作動する場合に、加減圧室Aの空気が連通孔2Tを介して直接的に駆動室Bに流れるため、この駆動室Bが負圧化を抑制して駆動負荷の変動を少なくして電動モータ4の駆動トルクを安定させる。また、電動モータ4を一定の負荷で駆動することにより電動モータ4に供給される電力を変動させず電動モータ4の耐久性が向上する。ピストン2の往復作動時には流体経路Eと通気経路Fとの空気が間歇的に流れ、圧力変動に伴い騒音を発生させるが、サイレンサ18が騒音を抑制する。
【0047】
尚、この第1実施の形態では、ピストン2に連通孔2Tを形成せず、ピストン2に対してピストンリング30を単純に備えた構成を採用しても良い。
【0048】
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図6に示すように、シリンダ1の内部に往復移動自在にピストン2を備え、このピストン2を基準にしてシリンダヘッド側に加減圧室Aを備え、ピストン2を基準にして加減圧室Aと反対側にピストン2に駆動力を伝えるクランク機構Cを収容した駆動室Bを備えることにより流体ポンプとしてのレシプロ型のコンプレッサが構成されている。
【0049】
このコンプレッサは、ピストン2を吸気方向(図6で右側)に作動させることにより、流体としての空気を加減圧室Aに吸入し、ピストン2を排気方向(図6で左側)に作動させることにより、流体としての加圧空気を加減圧室Aから外部に排出する。尚、このコンプレッサでは流体として空気以外のガスを対象とするものでも良い。
【0050】
〔具体構成〕
このコンプレッサは、第1実施形態と比較して弁ユニットVの構成が異なり、ピストン2に連通孔2Tを備えていない点において構成が異なるものであるが、これ以外の構成は第1実施形態と共通している。
【0051】
つまり、シリンダ1の一方の端部(シリンダヘッド側)に弁ユニットVを配置することにより、この弁ユニットVとピストン2との間に加減圧室Aが形成されている。また、シリンダ1の他方の端部側にポンプハウジング3を配置し、このポンプハウジング3の内部空間によって駆動室Bが形成されている。
【0052】
ポンプハウジング3に電動モータ4が備えられ、この電動モータ4の出力軸4Aと一体的に回転するクランクアーム5にコネクティングロッド6の基端を連結し、このコネクティングロッド6の先端にピストン2が連結している。このようにクランク機構Cは、クランクアーム5とコネクティングロッド6とを備えて構成されている。
【0053】
駆動室Bは、ポンプハウジング3において側方に開放する空間をプレート状の閉塞部材7で閉塞した構造を有しており、閉塞部材7には通気口7Aが穿設されている。この通気口7Aと連通する内部空間を有する経路ブロック15が閉塞部材7の外側に配置され、この経路ブロック15と閉塞部材7とが固定ボルト8によりポンプハウジング3に連結固定されている。また、経路ブロック15の内部空間に連通する筒状部16が、この経路ブロック15から弁ユニットVの方向に突設されている。
【0054】
弁ユニットVは、弁ボディ21の吸気空間21A(給排空間の一例)と連通する部位に吸気弁22を備え、この弁ボディ21の排気空間21B(制御空間の一例)と連通する部位に排気弁23を備えている。また、この弁ユニットVは、吸気空間21Aと排気空間21Bとを外部から隔絶するカバープレート24を備え、このカバープレート24には外部の加圧対象(加減圧対象の一例)に加減圧室Aから加圧空気を供給するチューブ25が接続している。吸気弁22は、ゴムや樹脂のように柔軟に変形し得る素材を用いて構成され、空気の流れを阻止する場合には外周のリップ部が弁ボディ21に密着し、空気の流れを許す場合にはリップ部が弁ボディ21から浮き上がり空気の流れを許す空間を形成する。また、排気弁23は、バネ23Sで閉塞方向に付勢される構成を有しており、空気の流れを阻止する場合にはバネ23Sの付勢力により外周が弁ボディ21に密着し、空気の流れを許す場合には、バネ23Sの付勢力に抗して外周部分が弁ボディ21から浮き上がり空気の流れを許す空間を形成する。
【0055】
弁ボディ21には、吸気空間21Aに連通する筒状の突出部26がポンプハウジング3の方向に向けて突設されている。この突出部26と筒状部16とを連通状態で接続する筒状の接続管9が備えられ、この接続管9は、一端を突出部26に外嵌し、他端を筒状部16とに外嵌する形態で備えられる。
【0056】
弁ユニットVは、弁ボディ21とカバープレート24との貫通孔に挿通する連結ボルト10の先端をポンプハウジング3の雌ネジ部に螺合させる形態でポンプハウジング3に連結している。この連結は複数の連結ボルト10により行われるものであり、連結時に弁ユニットVとポンプハウジング3との間にシリンダ1を挟み込み、弁ユニットVと経路ブロック15との間に接続管9を挟み込むことで、これらが一体化される。
【0057】
通気口7Aから経路ブロック15の内部空間を通過し、経路ブロック15の外面に穿設された開放口15Hに亘って通気経路F形成されている。また、弁ボディ21の吸気空間21Aから接続管9を介して経路ブロック15の内部空間に亘って吸気経路として機能する流体経路Eが形成されている。この流体経路Eは、通気経路Fの中間位置に形成された合流空間Gで合流しており、この合流空間Gにエアーフィルタ17(流体フィルタの一例)が備えられている。
【0058】
特に、経路ブロック15の内部空間のうち縦壁15Fに取り囲まれる空間によってエアーフィルタ17が備えられるフィルタ空間が形成され、このフィルタ空間を取り囲むドーナツ状となる空洞型のサイレンサ18が形成され、このサイレンサ18を構成するサイレンサ空間とフィルタ空間とを併せて合流空間Gが形成されている。尚、フィルタ空間は、通気経路Fのうち合流空間Gの外部空間側(フィルタ空間より開放口15Hに近い側)の経路中に形成されている。サイレンサ18を構成するサイレンサ空間と、フィルタ空間とは、閉塞部材7の外壁と経路ブロック15の内壁との間に形成されている。フィルタ空間には閉塞部材7の外壁と経路ブロック15の内壁とに密接する状態でエアーフィルタ17が備えられている。このエアーフィルタ17は除塵性能を有する羊毛フェルトや、紙材、ウレタンフォーム等が使用される。
【0059】
尚、経路ブロック15は、第1実施形態と同様に、流体経路Eと通気経路Fと合流空間Gとを構成する内部空間を有すると共に、エアーフィルタ17による除塵、除湿を実現し、サイレンサ18による消音を実現する。また、経路ブロック15の底壁15Aが傾斜姿勢で形成されているため、内部で発生した水滴や、エアーフィルタ17で除去された水を底壁15Aの上面に傾斜に沿って開放口15Hの方向に流し、開放口15Hから外部に排出する。
【0060】
また、ピストン2の外面の全周に形成された環状溝に対してピストンリング30が嵌め込まれている。図面には詳細を示していないが、このピストンリング30は複数のリングを内方から外方に重ね合わせた構成を有しており、最も外周のリングには4フッ化エチレン樹脂が用いられている。ピストン2の外周にはピストンガイドブッシュ31が嵌め込まれ、シリンダ1の内周面にはピストンリング30とピストンガイドブッシュ31とが接触し、ピストン2の両端の外周がシリンダ1の内周面に接触しないように構成されている。
【0061】
〔第2実施形態の作動形態〕
このような構成のため、ピストン2が吸気方向に作動する場合には、吸気弁22が開放することにより、外部空間の空気が開放口15Hから吸引され、エアーフィルタ17で濾過された状態で流体経路E(吸気経路)から加減圧室Aに供給される。この吸気が行われる場合には、駆動室Bの圧力が上昇するため、駆動室Bの空気が通気経路Fに送り出され、この空気の一部が合流空間G(フィルタ空間とサイレンサ空間)で合流した状態で流体経路Eに送られる。つまり、ピストン2が吸気方向に作動した場合には、外部の空気と駆動室Bから送り出された空気とが合流空間Gで合流し、加減圧室Aに供給されるのである。
【0062】
また、ピストン2が排気方向(圧縮方向)に作動する際には、排気弁23が開放して加減圧室Aからの空気がチューブ25に送り出される。これと同時に、駆動室Bが負圧になるため、外部の空気が開放口15Hから通気経路Fに送られ駆動室Bに吸引されると共に、流体経路Eの空気の一部が合流空間Gに合流する形態で吸引される。つまり、ピストン2が排気方向に作動する際には、流体経路Eは加減圧室Aと連通しない状態にあるが、駆動室Bが負圧に達した場合にはチャンバーと同様に空気を送り出すことが可能となり、外部空間から吸引される空気量を低減できる。また、外部の空気が駆動室Bに吸引される空気はフィルタ空間のエアーフィルタ17を必ず濾過されるため、塵埃や湿気(水分)がエアーフィルタ17で除去され駆動室Bに浸入することがない。
【0063】
更に、ピストン2の作動時において、ピストン2が吸気方向に作動する場合には、駆動室Bの空気を送り出し、ピストン2が排気方向に作動する場合には、駆動室Bに対して空気を吸入するため、この駆動室Bの圧力変動の幅を小さくして電動モータ4の駆動トルクを安定させる。また、電動モータ4を一定の負荷で駆動することにより電動モータ4に供給される電力を変動させず電動モータ4の耐久性が向上する。ピストン2の往復作動時には流体経路Eと通気経路Fとの空気が間歇的に流れ、圧力変動に伴い騒音を発生させるが、サイレンサ18が騒音を抑制する。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、シリンダの内部でピストンが作動する構成の流体ポンプ全般に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 シリンダ
2 ピストン
15 経路ブロック
15A 底壁
15F 縦壁
15H 開放口
15L 筒状体
17 流体フィルタ(エアーフィルタ)
21A 制御空間・給排空間(吸気空間)
21B 給排空間・制御空間(排気空間)
22 吸気弁
23 排気弁
A 加減圧室
B 駆動室
E 流体経路(排気経路・吸気経路)
F 通気経路
G 合流空間
V 弁ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
当該シリンダの内部をシリンダヘッドの側の加減圧室と、前記加減圧室と反対側の駆動室とに仕切りつつ、シリンダの内部で往復作動自在に設けられたピストンと、
前記ピストンの往復作動時に前記加減圧室への流体の流れを制御するように前記シリンダヘッドに設けられた弁ユニットとを備え、
前記弁ユニットが、前記加減圧室の流体を加減圧対象に作用させる制御空間と、前記加減圧室と外部空間との間で流体を給排する給排空間とを有しており、
前記駆動室と外部空間とに亘る通気経路と、前記弁ユニットの前記給排空間に接続する流体経路とを備え、この流体経路が前記通気経路の中間位置の合流空間で合流し、この合流空間に流体フィルタが設けられている流体ポンプ。
【請求項2】
前記弁ユニットが、前記ピストンの吸気方向への作動時にのみ開放して前記加減圧対象としての負圧作用対象から前記加減圧室に対し前記流体としての空気を吸引するために前記制御空間に配置された吸気弁と、前記ピストンの排気方向への作動時にのみ開放して前記加減圧室に対し前記流体としての空気を送り出すために前記給排空間に配置された排気弁とを備えることにより前記加減圧室に負圧を作り出すように構成されると共に、
前記排気弁から前記合流空間に空気を送り出す排気経路が前記流体経路として構成されている請求項1記載の流体ポンプ。
【請求項3】
前記弁ユニットが、前記ピストンの排気方向への作動時にのみ開放して前記加減圧対象としての加圧対象に前記加減圧室から前記流体としての空気を供給するため前記制御空間に配置された排気弁と、前記ピストンの吸気方向への作動時にのみ開放して前記加減圧室に前記流体としての空気を吸引するため前記給排空間に配置された吸気弁とを備えることにより前記加減圧室に加圧空気を作り出すように構成されると共に、
前記流体フィルタを介して吸引した流体を前記吸気弁に供給する吸気経路が前記流体経路として構成されている請求項1記載の流体ポンプ。
【請求項4】
前記合流空間を形成する経路ブロックが備えられ、この経路ブロックの底壁に当該経路ブロックの内部空間と前記外部空間とを連通させる開放口が穿設され、前記底壁の上面が前記開放口に近い位置ほど低いレベルとなる傾斜姿勢で形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の流体ポンプ。
【請求項5】
前記開放口を中心として、この開放口を取り囲む環状領域に、前記底壁の上面から立ち上がる姿勢の複数の縦壁を形成し、これらの縦壁で取り囲まれる領域で前記合流空間が形成され、この合流空間の外側位置に前記流体経路と前記通気経路とが連通している請求項4記載の流体ポンプ。
【請求項6】
前記経路ブロックの前記底壁の下面側で前記開放口を取り囲む位置に筒状体が下方に向けて突設されている請求項4又は5記載の流体ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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