説明

流体噴射アセンブリ

【課題】高品質画像を確実に最小限のコストで作成することができる流体噴射アセンブリの提供。
【解決手段】噴射ヘッドキャリア72と、噴射ヘッドキャリアに対して位置固定されるように噴射ヘッドキャリアの外形に合わせて成形された剛性の基板62と、剛性の基板上に画定されて、電気信号を噴射ヘッド70に伝送するように構成された導電性パターン64と、導電性パターンの一部分が変成物質に暴露されるのを制限するほぼ液密状のシールを生じさせて導電性パターンの少なくとも一部分を被覆するように構成されたオーバーモールディングとを有する流体噴射アセンブリ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ装置にデジタルデータとして電子的に保存されている画像の物理的複写を行うために、インクジェットプリンタなどの流体噴射システムがしばしば使用される。そのような複写を行うために、流体噴射システムは、インクなどの流体を媒体上に正確に向ける。流体噴射に対する制御レベルの向上は、画像複写の品質の向上に通常一致し、したがって、流体噴射システムをさらに望ましくする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
流体噴射システムの性能に加えて、サイズ、コスト及び信頼性が設計上の重要な考慮点である。したがって、高品質画像を確実に最小限のコストで作成することができる流体噴射システムが望まれる。
本発明は、高品質画像を確実に最小限のコストで作成することができる流体噴射アセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、噴射ヘッドキャリア(72)と、該噴射ヘッドキャリア(72)に対して位置固定されるように前記噴射ヘッドキャリアの外形に合わせて成形された剛性の基板(62)と、該剛性の基板上に画定されて、電気信号を噴射ヘッド(70)に伝送するように構成された導電性パターン(64)と、前記導電性パターンの一部分が変成物質に暴露されるのを制限するほぼ液密状のシールを生じさせて前記導電性パターンの少なくとも一部分を被覆するように構成されたオーバーモールディング(100)とを有する流体噴射アセンブリ。
ほぼ剛性の基板と、ほぼ剛性の基板に対して固定した関係に位置決めされるように構成された噴射ヘッドとを有する流体噴射アセンブリが設けられている。噴射ヘッドは、基板上に画定された導電性パターンを介して受け取った噴射信号に基づいて、流体を噴射するように構成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
図1は、流体噴射システム10を概略的に示す。流体噴射システムは、さまざまな実施形態においてさまざまに異なった流体を対応するさまざまに異なった媒体上に噴射するように構成することができるが、本開示は、インクを紙などの印刷媒体上に噴射、すなわち印刷するために使用される例示的な印刷システムに焦点を合わせている。しかし、他の印刷システムと共に、ノンプリント用途向けにデザインされた流体噴射システムも、以下に述べる着想を組み込むことができることを理解されたい。
【0006】
流体噴射システム10は、制御システム12と、媒体位置決めシステム14と、流体送出システム16と、インタフェース18とを備えている。制御システム12は、印刷回路板、プロセッサ、メモリ、特定用途向け集積回路などの構成部品を有することができ、受信した流体噴射信号20に対応した流体噴射を行う。流体噴射信号は、有線または無線式インタフェース18か、または他の適当な機構を介して受け取ることができる。流体噴射信号は、所望の流体噴射プロセスの実行命令を含むことができる。そのような流体噴射信号を受け取ると、制御システムは、媒体位置決めシステム14及び流体送出システム16を協働させて、流体を媒体22上に噴射させることができる。一例として、流体噴射信号すなわち印刷信号は、印刷すべき特定画像を定める印刷ジョブを含むであろう。制御システムは、印刷ジョブを解釈して、インクなどの流体を、印刷ジョブによって定められた画像を複写するパターンで紙の上に噴射させる。
【0007】
媒体位置決めシステム14は、流体噴射システムと、流体噴射システムが流体を噴射しようとする媒体との相対位置決めを制御することができる。たとえば、媒体位置決めシステム14は、流体噴射システムの印刷ゾーン24を通過するように紙を前進させる紙送りを含むことができる。媒体位置決めシステムは、追加的または代替的に、印刷ゾーンの異なった領域に流体を噴射するために、プリントヘッドまたは同様な装置を横方向に位置決めする機構を備えることができる。媒体及び流体噴射アセンブリの相対位置は、流体が媒体の所望部分だけに噴射できるように制御されるであろう。一部の実施形態では、媒体位置決めシステム14は、複数の異なった種類及び/またはサイズの媒体に適合するように選択的に構成可能にすることができる。
【0008】
図2は、例示的な流体送出アセンブリの一部分を概略的に示しており、これには流体噴射ヘッド30が含まれる。図示の実施形態では、流体噴射ヘッド30は、半導体で形成された抵抗器(semiconductor formed resistors)などの複数の流体エジェクタ32を有し、これら抵抗器は複数のノズル34に対応している。流体噴射ヘッドは、流体エジェクタ付近の位置に一定量の流体を配置するための流体供給機構36も備えることができる。流体送出アセンブリは、流体供給機構36によって流体エジェクタに送出される流体を補充する流体タンク40も備えることができる。流体タンク40は、オフアクシス(off-axis)流体タンクとして概略的に図示されており、流体タンクが流体噴射ヘッドと流体連通状態にあるが、流体噴射ヘッドから物理的に分離していることを意味する。流体噴射ヘッドを含む流体噴射カートリッジに物理的に組み込まれたオンアクシス(on-axis)タンクも、本開示の範囲に入る。オフアクシス流体送出システム内のオフアクシスタンクを1つまたは複数のオフアクシスタンクスペアによって使用してもよい。したがって、オフアクシスタンクと共に使用される流体噴射ヘッドか、または補充されるオンアクシスタンクと共に使用される流体噴射ヘッドは、使用期間が長くなるであろう。使用期間が長くなるほど、流体噴射ヘッドが受ける機械的及び化学的ストレスが増加する。したがって、そのようなストレスによりうまく耐えるようにデザインされたインク送出システムであれば、流体噴射アセンブリを作動不能にするおそれがある動作故障を回避することができるであろう。
【0009】
流体タンクから流体供給機構を介して流体エジェクタに送出される流体は、噴射信号に応じて選択的に噴射されるであろう。ある特定のノズルに対応した流体エジェクタを起動させる時、たとえば、抵抗器を加熱し、それによって流体を蒸発させて流体気泡を生じる時、その流体エジェクタ付近に移動した流体の一部がそのノズルから噴射されるであろう。気泡が膨張すると、流体の一部が対応のノズルから噴射されるであろう。流体気泡がはじけると、真空力が追加流体を流体供給源から引き出してノズルに送り、次の噴射に備える。一部の実施形態では、流体エジェクタは、振動を利用して流体を噴射する流体エジェクタなどの非熱的機構を介して流体の噴射を実行する部品を含むことができる。
【0010】
流体噴射ヘッド30は、流体エジェクタの制御に使用することができる電気信号を制御システム12などから受け取るための電気コネクタ50を有する。電気コネクタは、流体エジェクタ及び/または論理サブシステム56につながった導電路54に電気接続している複数の電気接点52を有することができる。論理サブシステム56は、制御システムから受け取られ、流体噴射信号から導き出される命令に基づいて、個々の流体エジェクタに電流を送るためのトランジスタ及び/または他の回路部品を含む複数の論理ゲートを有することができる。そのような命令は、電気信号の形で電気コネクタ50を介して受け取ることができる。抵抗器の形の流体エジェクタの場合、電気コネクタ50を介して伝達された電流を個々の抵抗器に流し、それによって抵抗器がその抵抗器付近の流体を加熱することができる。
【0011】
上述したように、流体噴射ヘッド30は、制御システムから噴射信号を受け取ることができる。そのような信号を伝送するために、流体送出アセンブリは、制御システムを電気コネクタ50に電気接続する1つまたは複数の導電路を含む相互接続部(inteconnect)を有することができる。相互接続部は、代替的または追加的に、電力伝達用及び/または接地用の1つまたは複数の電荷路(charge path)を提供する。相互接続部は、溶剤、塩、水などの、相互接続部の有効性を化学的に変化させる可能性がある変性物質に近接しているであろう。たとえば、インクは、相互接続部の信号伝送能力に悪影響を与えるであろう。このことは、オフアクシス流体送出システムで、同一の流体噴射ヘッド及び関連の相互接続部をプリンタの全寿命を通して使用する場合など、同一の相互接続部を長期間にわたって使用する場合に特に当てはまるであろう。さらに、一部の相互接続部は、機械的故障を生じやすく、相互接続部を使用する期間が長くなるほど、機械的故障の可能性が高くなるであろう。そのような化学的及び機械的ストレスに耐えることができる相互接続部であれば、信頼性が向上するであろう。
【0012】
相互接続部は、空間許容誤差が比較的厳しい部品に接続されることが多い。たとえば、流体噴射ヘッドは、それが流体を噴射する媒体から狭い間隔に位置するであろう。一部の実施形態では、相互接続部は、流体噴射ヘッド及び受け取り側媒体間の空間の減少を妨害しない。一部の実施形態では、隣接部品間の空間の減少を、そのような減少を容易にする相互接続部で行う。さらに、別の実施形態では、相互接続部の正確な装着を制御できることで、流体噴射アセンブルの他の部分に与えられる設計自由度が向上するであろう。本実施形態では、相互接続部は使用中に形状が変化しない。
【0013】
1つの形式の相互接続部は、制御信号及び/または電力を流体噴射ヘッドに送るためのフレキシブル回路を有する。特に、流体噴射ヘッドを制御システムに電気接続するために、テープ・オートメーテッド・ボンディング(tape automated bonding)(TAB)処理が使用される。標準TAB処理を使用することによって、金属導体がフレキシブルポリマー基板上に載置されて、カバー層で保護される。フレキシブルとは、基板及び関連の金属導体が屈曲、撓みまたは他の変形を生じることができることを意味する。反対に、1つの実施形態では、剛性または非可撓性相互接続部がそのような変形に抵抗して、一般的にほぼ静的なままである。
【0014】
相互接続部を流体噴射アセンブリに容易に組み込むことができるように、剛性相互接続部を流体噴射アセンブリの他の部品と相補的である形状にすることができる。1つの非制限的な例として、剛性相互接続部を別の部品と組み合わされる物理的形状にして、相互接続部を他方の部品の外形に合わせることができる。剛性相互接続部は、別の部品に機械的にロックされ、それによって2つ以上の部品を効果的にアセンブリにすることができる。アセンブリは、アセンブリのそれぞれの部品を電気接続するために使用される空間も全体的に減少させるであろう。さらに、剛性相互接続部は撓まないので、一度別の部品と組み合わされると、そのアセンブリの機械的ストレスレベルが低くなる。
【0015】
図3は、複数のトレース66を含む導電性回路パターン64を埋め込んだほぼ剛性の基板62の形の例示的な相互接続部60を示す。図示のように、相互接続部60は、流体噴射ヘッド70に電気接続することができる。相互接続部60は、直接的か、あるいは1つまたは複数の中間電荷路を介して制御システムにも電気接続することができ、これにより、流体噴射ヘッド及び制御システムを電気接続することができる。言い換えると、トレース66が、制御システム及び流体噴射ヘッド間で電荷を伝送することができる。このように、流体エジェクタは、伝送信号を介して制御システムによって選択的に制御することができる。追加的または代替的に、流体噴射システムの異なったノードを電気接続するために、剛性相互接続部を使用してもよい。
【0016】
1つの実施形態では、基板62は、非導電性であって、液晶ポリマー、シンジオタクチックポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミド、及び/または他の熱可塑性樹脂または同様な物質などの、1つまたは複数の成形可能な非導電性材料で構成することができる。非導電性材料は、個々のトレースを互いに電気的に分離する一方、トレースをしっかり支持する。別の実施形態では、基板62がトレースを電気的に隔離する。したがって、トレースは、互いに電気的に隔離されていると同時に、互いの相対位置が固定されている。トレースは、基板の1つまたは複数表面にわたることができる三次元パターンに埋め込むことができる。そのような三次元パターンでは、基板上に固定されるトレースを基板の外形に一致させることができる。さらに、導電性バイア及び/または他の基板操作を使用するか、または表面の周囲にまたがるだけで、異なった表面上の回路を電気接続することができる。このように、トレースが2つ以上の平行または非平行の剛性表面にわたって延在することができ、それらの表面の各々がほぼ平面的及び/または曲線的でもよい。
【0017】
剛性相互接続部は、幾つかの異なった処理を使用して製造することができる。たとえば、相互接続部は、基板を所望形状に射出成形することによって形成することができる。射出成形は、複雑な形状を形成するために1つまたは複数の段階、すなわち、ショットで行うことができる。基板の上に、アルミニウムまたは銅層などの導電層を設けることができる。写真画像形成(photo imaging)またはレーザパターニングなどの技法を使用して、導電層上に回路パターンを画定することができる。そのような技法を使用して、0.001インチ〜0.025インチ、好ましくは0.001インチ〜0.005インチの範囲内の線幅及び線間隔を達成することができるが、他の線幅及び線間隔を使用してもよい。回路パターンを形成するために選択される技法に応じて、導電層をレジスト樹脂で処理してもよい。たとえば、写真画像形成の場合、回路パターンを画定するフォトマスクを通して紫外線に暴露することによって、レジスト樹脂を硬化させることができる。未硬化樹脂を除去して、下側の導電層を露出させ、これを化学的に剥離して、フォトマスクによって画定された導電性トレースを残すことができる。
【0018】
基板は、ほぼ任意の所望形状に成形または他の方法で形成することができる。一部の実施形態では、基板を流体噴射アセンブリの別の部品に対応する形状にして、基板をその部品に物理的に連結するなどによって、他の部品に対して固定した関係に位置決めすることができるようにするか、あるいは、少なくとも他の部品の直ぐ近くに位置決めできる形状にする。そのような位置決めを容易にするために、基板は、他の部品の外形に合わせた形状にすることができる。この一例が図3に示されており、ここでは、相互接続部60が、流体噴射ヘッド70を載置した流体噴射ヘッドキャリヤ72と組み合わされる形状になっている。流体噴射ヘッドキャリヤは、プラスチック材料か、アルミナなどのセラミックから射出成形、乾燥プレス成形、または同様な処理で形成することができる。一部の実施形態では、剛性基板を噴射ヘッドキャリヤ以外の部品と組み合わせる形状にすることができる。相互接続部を別の部品の形状に対応する形状にすることで、組付けが簡単になるであろう。基板は、接着剤、機械式ロック機構、または基板を固定するために溶解されるスウェージポストなどによって、対応の部品に固定することができる。
【0019】
一部の実施形態では、非導電性基板を流体噴射アセンブリの構成部品として形成して、部品そのものが相互接続部として機能するようにしてもよい。図4は、回路パターン86を埋め込んだ非導電性基板84を含む相互接続部82から少なくとも部分的に形成されている流体噴射ヘッドキャリヤ80の一例を示す。言い換えると、非導電性基板84が、流体噴射ヘッドキャリヤ80の一部を画定している、すなわち構成している。流体噴射ヘッドキャリヤは、それの通常の機械的機能を果たすと共に、流体噴射ヘッド及び制御システム、または他の電気ノードを電気的に相互接続することができる。流体噴射ヘッドキャリヤとして図示されているが、流体噴射アセンブリの他の部品に回路パターンを埋め込み、それによってそのような部品に相互接続機能を与えることもできる。非導電性基板は、実質的に任意の形状に成型または他の方法で成形することができ、したがって、相互接続機能性を広範囲の部品に組み込むための設計の自由度が大きくなる。電気信号を伝送する能力を従来型機械部品に組み込むことができるため、構造の複雑さが低減するであろう。多数の部品の機能を単一部品に一体化することができ、これにより、組み立てが簡単になり、サイズが小さくなり、かつ/またはコストが削減される。
【0020】
図5に示されているように、埋め込み回路パターン64の個々のトレース66を流体噴射ヘッド70に電気接続してもよい。図示の実施形態では、ワイヤボンド90が電気接続を行っているが、他の種類のコネクタ、たとえば、TABまたは他の適当なコネクタを使用してもよい。一部の実施形態では、埋め込みトレース自体が、そのような接続を行うように構成された電気コネクタに直接的に接触するように、非導電性基板を形成することができ、これにより、中間コネクタをなくすことができる。相互接続部の回路パターン及び電気コネクタは通常、相対移動しないので、接続部に加わる機械的ひずみは限定的である。しかし、接続部が流体噴射ヘッドに近接しており、また、ヘッドから噴射される流体が潜在的に有害であることから、接続部は化学的攻撃を受けやすいであろう。そのような攻撃による損傷を限定的にするために、図6に示されているように、接続部にコーティング92を塗布するなどによって、接続部を被覆することができる。一部の実施形態では、さらに詳細に後述するように、追加的または代替的に、オーバーモールディング(overmolding)を使用して、接続部を被覆することができる。
【0021】
図7は、流体噴射ヘッド102の一部分及び相互接続部104の回路パターンの一部分を被覆するオーバーモールディング100を示す。オーバーモールディングは、相互接続部、流体噴射ヘッド及び/または流体噴射アセンブリの別の部品の選択部分を被覆するように構成することができる。被覆とは、オーバーモールディングが単独で、またはコーティング、シーラント及び/または他の材料と協働して、保護領域がインクなどの変性物質に暴露されるのを制限するほぼ液密状のシールを形成することを意味する。オーバーモールディングは、変性物質から保護しながら、機械的強化も行うことができる。したがって、オーバーモールディングは、流体噴射アセンブリの早期故障の原因になる機械的及び化学的ストレスを制限することができる。オーバーモールディングは、ポリマー、たとえば、ポリ(エチレンテレフタレート)、グリコール、液晶ポリマー、ポリ(フェニレンスルフィド)及びポリ(シクロへキシレンジメチレンテレフタレート)、酸及び/または他の適当な材料で構成することができる。そのような材料は通常、コスト、作業性、装置付近に存在しがちである変性物質から化学的に保護する能力の点から選択される。
【0022】
オーバーモールディングのサイズ及び形状は、所定の部品、または部品群を、被覆領域付近に存在しがちである変性物質から十分に保護するように選択することができる。たとえば、流体噴射ヘッドは、流体噴射ヘッド及び相互接続部を傷める可能性がある流体を放出するであろう。特に、電気信号の伝送に使用される電荷路またはトレースが損傷を受けるであろう。したがって、それらの部品の、化学的攻撃を受けやすい部分を被覆することで、早期故障の原因になるそのような攻撃の可能性を低下させることができる。一部の実施形態では、印刷システムの他の部分にもオーバーモールディングを施して、インク及び/または他の変性物質からの攻撃から守ることができる。
【0023】
オーバーモールディングは、別の部品と共に機械的シールを生じるように構成すること、付着性を向上させるためにシーラントまたは接着剤と組み合わせて使用すること、別の部品に効果的に溶接すること、化学的攻撃に耐えるためにほぼ液密状のシールを生じるように他の方法で取り付けることができる。オーバーモールディングは通常、それが保護している部品に対して移動しないので、オーバーモールディングと対応部品との間の機械的ストレスは無視できる。反対に、フレキシブル相互接続部を保護するために使用されるさまざまなシールドは、移動及び/またはたわみを行う必要があり、したがって、有効性を失うであろう。
【0024】
図7では、オーバーモールディングが、流体噴射ヘッド、剛性基板上に画定された回路パターン、及びその間のインタフェースの周囲を被覆するように図示されている。図8は、オーバーモールディング110が剛性基板上に画定された回路パターンを被覆する別の例を示している。図8では、流体噴射ヘッド及び相互接続部間のインタフェースを被覆するために、コーティング112が使用されている。保護を行うためにオーバーモールディング及び他の材料の上記及び他の組み合わせを使用することは、本開示の範囲に入る。一般的に、オーバーモールディング、コーティング、ペースト及び/または他の物質と共にそれらの組み合わせによって、導電性トレース、ワイヤ及び/または他の電荷路を変性物質から保護することができる。
【0025】
以上に上記作動原理及び実施形態を参照しながら開示してきたが、添付の特許請求項に定義される精神及び範囲から逸脱することなく、形状及び詳細に様々な変更を加えることができることは、当該技術分野の技術者には明らかであろう。本開示は、そのような代替、変更及び変化をすべて包含するものとする。開示または特許請求の範囲は「1つの」、「第1の」または「別の」要素またはその相当語句を用いている場合、1つまたは複数のそのような要素を含むものと解釈すべきであり、2つ以上のそのような要素を必要とすることも、排除することもない。
【0026】
以上本発明の各実施例について説明したが、実施例の理解を容易にするために、実施例ごとの要約を以下に列挙する。
〔1〕 受け取った噴射信号(20)に基づいて流体を噴射するように構成された噴射ヘッド(70)と、該噴射ヘッド(70)に対してほぼ固定した関係に位置決めされるように構成されたほぼ剛性の非導電性基板(62)と、該ほぼ剛性の非導電性基板上に画定されて、前記噴射信号を前記噴射ヘッドに伝送するように構成された導電性パターン(64)とを有する流体噴射アセンブリ。
〔2〕 噴射ヘッドキャリヤ(72)と組み合わされる形状であり、そのため、前記噴射ヘッドキャリヤに対して位置がほぼ固定されるほぼ剛性の非導電性基板(62)と、該ほぼ剛性の非導電性基板上に画定された導電性パターン(64)とを有する流体噴射アセンブリであって、前記導電性パターンは、電気信号を噴射ヘッド(70)に伝送するように構成されている流体噴射アセンブリ。
〔3〕 受け取った印刷信号(20)に基づいてインクを印刷媒体(22)上に噴射するように構成されたプリントヘッド(70)と、該プリントヘッドに対して固定した関係に位置決めされるように構成されたほぼ剛性の非導電性基板(62)と、該ほぼ剛性の非導電性基板上に画定されて、前記印刷信号を前記プリントヘッドに伝送するように構成された導電性パターン(64)とを有する流体噴射アセンブリ。
〔4〕 受け取った噴射信号(20)に基づいて流体を噴射するように構成された噴射ヘッド(70)と、該噴射ヘッドに対してほぼ固定した関係に位置決めされるように構成されたほぼ剛性の基板(62)と、該ほぼ剛性の基板上に画定されて、前記噴射信号を前記噴射ヘッドに伝送するように構成された導電性パターン(64)であって、前記導電性パターンは複数の導電性トレース(66)を有する流体噴射アセンブリ。
〔5〕 噴射ヘッドキャリヤ(72)と組み合わされる形状であり、そのため、前記噴射ヘッドキャリヤに対して位置がほぼ固定されるほぼ剛性の基板(62)と、該ほぼ剛性の基板上に画定された導電性パターン(64)とを有する流体噴射アセンブリであって、前記導電性パターンは、複数の導電性トレース(66)を有し、電気信号を噴射ヘッドに伝送するように構成されている流体噴射アセンブリ。
〔6〕 前記導電性パターンの少なくとも一部分を被覆するように構成されたオーバーモールディング(100)をさらに有する〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の流体噴射アセンブリ。
〔7〕 前記導電性パターンは三次元回路パターンを有する〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の流体噴射アセンブリ。
〔8〕 前記導電性パターンは、線幅が約0.001インチ〜0.005インチである複数の導電性トレース(66)を有する〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の流体噴射アセンブリ。
〔9〕 前記導電性パターンは、線間隔が約0.001インチ〜0.005インチである複数の導電性トレース(66)を有する〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の流体噴射アセンブリ。
〔10〕 噴射ヘッドキャリヤ(72)をさらに有しており、前記基板は、前記噴射ヘッドキャリヤの外形に合わせて成形される〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の流体噴射アセンブリ。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】制御信号の形で受け取られた命令に従って、流体を媒体上に噴射するように構成された流体噴射システムの1つの実施形態の概略図である。
【図2】噴射ヘッド及びオフアクシス流体タンクを有するインク送出システムの1つの実施形態の概略図である。
【図3】流体噴射アセンブリの、ほぼ剛性の非導電性基板上に画定された導電性パターンを有する相互接続部を含む部分の1つの実施形態の斜視図である。
【図4】噴射ヘッドを制御システムに電気接続するための導電性パターンを埋め込んだほぼ剛性の非導電性基板から形成された噴射ヘッドキャリヤの1つの実施形態を示す斜視図である。
【図5】流体噴射ヘッドと、ほぼ剛性の非導電性基板上に画定された導電性パターンとの間の電気インタフェースの1つの実施形態の幾分概略的な図である。
【図6】図5の電気インタフェースを変性物質から保護するためのシールドの幾分概略的な図である。
【図7】一部分を変性物体から保護するためにオーバーモールディングを組み込んだ流体噴射アセンブリの1つの実施形態の斜視図である。
【図8】オーバーモールディングを備えた流体噴射アセンブリの別の実施形態の斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
10 流体噴射システム
12 制御システム
14 媒体位置決めシステム
16 流体送出システム
18 インタフェース
20 噴射信号
22 印刷媒体
30 流体噴射ヘッド
32 流体エジェクタ
36 流体供給部
40 流体タンク
62 非導電性基板
64 導電性パターン
70 噴射ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射ヘッドキャリア(72)と、
該噴射ヘッドキャリア(72)に対して位置固定されるように前記噴射ヘッドキャリアの外形に合わせて成形された剛性の基板(62)と、
該剛性の基板上に画定されて、電気信号を噴射ヘッド(70)に伝送するように構成された導電性パターン(64)と、
前記導電性パターンの一部分が変成物質に暴露されるのを制限するほぼ液密状のシールを生じさせて前記導電性パターンの少なくとも一部分を被覆するように構成されたオーバーモールディング(100)と
を有する流体噴射アセンブリ。
【請求項2】
前記基板(62)は非導電性基板であることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射アセンブリ。
【請求項3】
前記導電性パターンは、複数の電気的に隔離されたトレース(66)を有することを特徴とする請求項1に記載の流体噴射アセンブリ。
【請求項4】
受け取った前記噴射信号(20)に基づいて流体を噴射するように構成された噴射ヘッド(70)をさらに備え、前記基板は該噴射ヘッド(70)に対して固定した関係に位置決めされるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の流体噴射アセンブリ。
【請求項5】
前記噴射ヘッドは、インクを印刷媒体(22)上に噴射するように構成されたプリントヘッド(70)であって、前記基板は該プリントヘッド(70)に対して固定した関係に位置決めされるように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の流体噴射アセンブリ。
【請求項6】
前記導電性パターンは三次元回路パターンを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の流体噴射アセンブリ。
【請求項7】
前記導電性パターンは、線幅が約0.0254mm(0.001インチ)〜0.127mm(0.005インチ)である複数の導電性トレース(66)を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の流体噴射アセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−96209(P2009−96209A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314529(P2008−314529)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【分割の表示】特願2004−132926(P2004−132926)の分割
【原出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】