説明

流体噴射装置、流体収容容器および流体収容容器の封止方法

【課題】廃却時における流体収容容器からの流体の漏れを確実に防止すること。
【解決手段】流体供給針33aを介して流体噴射ユニット30に供給されると共に所定の波長の光の照射によって硬化される流体を、流体噴射ユニット30から噴射する流体噴射装置10に用いられ、流体噴射ユニット30に対して着脱可能な流体収容容器31であって、流体を収容する流体収容部34と、流体収容部34に収容されている流体を当該流体収容部から流体噴射ユニット30に供給する供給部35と、を有し、供給部35もしくは供給部35近傍の流体収容部34に、外部からの光を透過させる透光部Aを設けていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置、流体収容容器および流体収容容器の封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、流体噴射装置の代表例であるインクジェット式記録装置は、流体であるインクを貯留したインクカートリッジから、インク噴射ユニットにインクを供給するように構成されている。このインク噴射ユニットへのインクの供給は、インクカートリッジにインク供給口を設けると共に、インク噴射ユニットのインク供給流路に中空針を設け、インクカートリッジの装着により中空針をインク供給口に挿入することにより行われる。
【0003】
また、インクカートリッジに貯留されたインクがインクエンドになり空の状態となると、その空になったインクカートリッジを廃棄して、新たなインクカートリッジに交換される。しかし、インクカートリッジを交換する際に、該インクカートリッジのインク供給口からインクが漏れるといった問題がある。
【0004】
特許文献1には、インク供給口の内部に、インク供給針と嵌合可能な筒状パッキングと、インク供給針と呼応して移動する弁体を設け、該弁体を筒状パッキングに弾接させて、インク供給口を封止するインクカートリッジが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−113723号公報(要約書)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているインクカートリッジでは、弁体を筒状パッキングに圧接させて、インク供給口を封止しても、インク供給口に付着しているインクがインク供給口から滴下する可能性がある。このため、より確実にインク供給口からのインクの漏れを防止できるインクカートリッジが要望されている。
【0007】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、廃却時における流体の漏れを確実に防止することができる流体収容容器、流体噴射装置および流体収容容器の封止方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、流体供給針を介して流体噴射ユニットに供給されると共に所定の波長の光の照射によって硬化される流体を、流体噴射ユニットから噴射する流体噴射装置に用いられ、流体噴射ユニットに対して着脱可能な流体収容容器であって、流体を収容する流体収容部と、流体収容部に収容されている流体を当該流体収容部から流体噴射ユニットに供給する供給部と、を有し、供給部もしくは供給部近傍の流体収容部に、外部からの光を透過させる透光部を設けたものである。
【0009】
このように構成した場合には、外部から透光部に向かって光を照射すると、当該光が透光部を透過して、流路内に貯留されている流体に到達する。このため、光を透光部に照射させて供給部もしくは供給部近傍内の流体を固化させることが可能となり、固化された流体によって、供給部を確実に封止することができる。このため、流体収容容器を流体噴射ユニットから取り外しても、供給部から流体が漏れるのを防止できる。その結果、流体収容容器を廃却する際に、供給部から流体が漏れるのを防止できる。
【0010】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、流体収容部に収容されている流体には、流体の残量に応じて推移すると共に流体よりも比重の小さな浮体が配置され、流体収容部内の流体が流体噴射ユニットに供給されて減少し、その流体レベルが流体エンドに近づくと、浮体が供給部を閉塞するものである。
【0011】
このように構成した場合には、流体収納部内の流体が減少していくと、自動的に浮体が供給部を閉塞する。このため、流体収容容器の供給部を確実に封止することが可能となる。したがって、流体収容容器を廃却する際に、供給部から流体が漏れるのを確実に防止できる。
【0012】
また、他の発明は、装置本体に装着された流体収容容器に収容されると共に所定の波長の光の照射によって硬化される流体を、流体噴射ユニットから噴射する流体噴射装置であって、流体収容容器内に収容される流体の流体レベルを検出する流体レベル検出手段と、流体収容容器から流体噴射ユニットに流体を供給する供給部もしくは供給部近傍の流体収容容器に向かって光を放射する光照射装置と、流体レベル検出手段によって検出された検出信号に基づいて、光照射装置の作動を制御する制御部と、を有し、供給部もしくは供給部近傍の流体収容容器に、外部からの光を透過させる透光部を設け、流体レベル検出手段が、流体収容容器内に収容された流体の流体レベルを流体エンドであることを検出すると、制御部の制御に基づき光照射装置が作動し、透光部に光が照射されるものである。
【0013】
このように構成した場合には、流体エンドになると、光照射装置が作動し、透光部に光を照射することが可能となる。このため、供給部もしくは供給部近傍内の流体を固化させることが可能となり、固化された流体によって、供給部を確実に封止することができる。したがって、流体収容容器を流体噴射ユニットから取り外しても、供給部から流体が漏れるのを防止できる。その結果、流体収容容器を廃却する際に、供給部から流体が漏れるのを防止できる。
【0014】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、流体収容容器に収容されている流体には、流体の残量に応じて推移すると共に流体よりも比重の小さな浮体が配置され、流体収容容器内の流体レベルが降下して、浮体が供給部を閉塞すると、流体レベル検出手段によって流体エンドであることが検出され、透光部に向かって光照射装置から光が照射されるものである。
【0015】
このように構成した場合には、浮体が供給部を閉塞させると、流体レベル検出手段によって流体エンドであることが検出されるため、浮体によって供給部を閉塞した状態で、該流路に貯留している流体を固化させることができる。したがって、より確実に供給部を封止することが可能となる。このため、流体収容容器を記録ヘッドから取り外して廃棄する際に、供給部から流体の漏れをより確実に防止することができる。
【0016】
また、他の発明は、流体噴射ユニットから所定の波長の光の照射によって硬化される流体を噴射する流体噴射装置に用いられ、流体噴射ユニットに流体を供給する供給部を備え、該供給部もしくは供給部近傍に、外部からの光を透過させる透光部を有する流体収容容器の封止方法であって、流体収容容器に収容された流体が、流体エンドであることを検出するステップと、流体エンドであると検出した場合に、透光部に向かって光を照射するステップとを有するものである。
【0017】
このため、流体エンドを検出し、その検出信号に基づいて、供給部もしくは供給部近傍に貯留している流体に光を照射させることが可能となる。このため、光の照射によって供給部もしくは供給部近傍内の流体を固化させることが可能となり、固化された流体によって、供給部を確実に封止することができる。したがって、流体収容容器を流体噴射ユニットから取り外しても、供給部から流体が漏れるのを防止できる。その結果、流体収容容器を廃却する際に、供給部から流体が漏れるのを防止できる。
【0018】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、流体収容容器に収容されている流体に、該流体の残量に応じて推移すると共に流体よりも比重の小さな浮体を配置し、該浮体の高さ方向の位置に基づいて、流体エンドであることを検出するものである。このため、浮体の位置を検知すことによって、流体エンドを検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、廃却時における流体収容容器からの流体の漏れを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態に係る、流体噴出装置としてのインクジェット式記録装置10について、図面を参照しながら説明する。なお、流体収容容器としてのインクカートリッジ31の説明についてもインクジェット式記録装置10と共に行うものとする。また、図2および図3中の矢示X1方向を左、矢示X2方向を右、このX1方向とX2方向と水平方向で直交する方向となる矢示Z1方向を上および矢示Z2方向を下とそれぞれ規定する。
【0021】
<インクジェット式記録装置の概略構成>
最初に、インクジェット式記録装置10の構成の概略について説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るインクジェット式記録装置10の概略構成を示す図である。図2は、カートリッジ31の概略構成を示す側断面図である。
【0022】
図1に示すように、インクジェット式記録装置10は、紙送り機構20と、記録ヘッドユニット30と、制御部50と、を主に具備している。
【0023】
紙送り機構20は、紙送りモータ(PFモータ)21と、この紙送りモータ21からの駆動力が伝達される給紙ローラ23等を具備している。また、流体噴射ユニットとなる記録ヘッドユニット30は、カートリッジ31(流体収容容器に対応)と、カートリッジ31を保持するカートリッジホルダ32と、記録ヘッド33と、を具備している。カートリッジホルダ32は、例えば、不図示のシャーシに取り付けられていて、このカートリッジホルダ32に着脱自在にカートリッジ31が装着されている。そのため、本実施の形態のインクジェット式記録装置10は、いわゆるオンキャリッジタイプの構成となっている。記録ヘッドユニット30は、カートリッジ31内に収容されるインクのインクレベルを検出する流体レベル検出手段となるインクレベル検出手段45と、残インクに紫外線を照射して固化させる光照射装置となる紫外線ランプ44とを備えている(図2参照)。
【0024】
記録ヘッド33には、インク(流体に対応)の噴射箇所としてのノズル(不図示)が記録用紙Pの搬送方向に列状に配置され、それぞれの色のインクに対応したノズル列を形成している。また、このノズル列には、ノズル毎に、電歪素子の1つであって応答性に優れたピエゾ素子(不図示)が配置されている。このピエゾ素子の作動によって、インク通路の端部にあるノズルからインク滴を噴出することが可能となっている。このピエゾ素子に印加する電圧の相違により、異なるサイズのインク滴が噴出可能となっている。例えば、本実施の形態では、大、中、小の3種類の異なる大きさのドットを形成することが可能となっている。
【0025】
また、カートリッジホルダ32には、複数の電気接点(不図示)が設けられている。また、カートリッジ31にも、不図示の電気接点と対応するように複数の接続端子(不図示)が設けられている。カートリッジ31をカートリッジホルダ32に装着すると、不図示の電気接点と接続端子とが接触することにより、記録ヘッドユニット30と制御部50との間での信号の送受信が可能となる。すなわち、記録ヘッドユニット30に備えられたインクレベル検出手段45が検出した信号を制御部50に送信できると共に、制御部50からの信号を紫外線ランプ44に送信できるようになる。
【0026】
また、制御部50は、不図示のCPU、メモリ(ROM、RAM、不揮発性メモリ等)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、バス、タイマ、ランプ駆動回路、インターフェース等を有している。この制御部50には、各種センサ(インクレベル検出手段45を含む)からの信号が入力されると共に、これらのセンサからの信号に基づいて、制御部50は、紙送りモータ21等の各種モータや紫外線ランプ44等の駆動を制御する。
【0027】
また、上述のメモリの中のデータ、およびプログラムがCPUで実行され、制御部50の各構成が協働することにより、種々の機能的な構成が実現される。なお、本実施の形態では、メモリには、後述する紫外線ランプ44の駆動を制御するためのプログラムおよびデータが記憶されていて、インクレベル検出手段45の作動に際して、それらプログラムおよびデータを読み出すことにより、不図示のランプ駆動回路に向けて制御部50から制御指令を発し、当該紫外線ランプ44の作動を制御している。
【0028】
また、制御部50は、不図示のコネクタを介してコンピュータ70と接続され、通信を行うことが可能である。それにより、インクジェット式記録装置10がコンピュータ70側から記録信号PSを受け取ると、その記録信号PSに基づいて、インクジェット式記録装置10で記録のための処理が開始される。また、制御部50を介して、コンピュータ70がインクジェット式記録装置10側から各カートリッジ31のインクに関する情報を受け取ると、コンピュータ70側で、カートリッジ31のインク残量等が表示可能となる。
【0029】
<カートリッジの構成について>
次に、カートリッジ31の構成について、図2等を参照しつつ説明する。記録ヘッドユニット30には、図1に示すように、ブラック(K)のインクを収納したカートリッジ31A、シアン(C)のインクを収納したカートリッジ31B、ライトシアン(LC)のインクを収納したカートリッジ31C、マゼンタ(M)のインクを収納したカートリッジ31D、ライトマゼンタ(LM)のインクを収納したカートリッジ31E、イエロー(Y)のインクを収納したカートリッジ31Fの6つのインクカートリッジ31A〜31Fが着脱可能に搭載される。本実施の形態では、これらのインクとしては、紫外線によって硬化する紫外線硬化型のインクが好適に用いられる。
【0030】
また、以下の説明においては、カートリッジ31A〜31Fをまとめて表記する場合、カートリッジ31とする。さらに、カートリッジ31は、6色には限られず、4色、7色または8色等、何色分であっても良い。また、カートリッジ31に充填されるインクは、染料系インクには限られず、顔料系インク等、他の種類のインクであっても良い。
【0031】
図2に示すように、カートリッジ31は、インク収容部34と、インク供給部35とを有する。インク収容部34は、その内部にインクを収容するための収容室36を有する。また、インク供給部35は、インク収容部34から下方に向かって円筒状に突出しており、この内側にインクを記録ヘッド33に供給するためのインク供給口37を有している。また、インク供給口37は、収容室36と連通している。また、インク供給部35の上端部近傍には、全周に亘って、インク供給口37の中心軸線M方向に向かって突出する内側凸部38が設けられている。この内側凸部38によって囲まれる部分は、インク供給口37の直径より小径となるインク路39となっている。この内側凸部38の上端面38aは、インク収容部34の底壁面34aと面一となっている。また、内側凸部38のうちインク収容部34の左壁34bから右方に向かって突出する右内側凸部38bおよび該左壁34bのうち右内側凸部38bと隣接する部分(以下、これらの部分をまとめて透光部Aと表記する。)は、紫外線が透過可能な透光性を有する部材から形成されている。
【0032】
さらに、内側凸部38のうち右壁35aから中心軸線M方向に向かって突出する部分となる左内側凸部38cの上方には、収容室36を左右に仕切る仕切り40が設けられている。仕切り40は、インク収容部34における図3中の紙面手前側の壁面(不図示)と紙面奥側の壁面34cとの間に設けられている。また、この仕切り40は、上下両側がインク収容部34の上壁面34dおよび底壁面34aのそれぞれと間隔を有するように設けられている。また、収容室36における仕切り40と左壁34bとの間に設けられる左空間部41には、浮体となるフロート42が配置されている。このフロート42は、インクよりも比重が軽く、収容室36に収容されるインク上に浮いており、インクの液位の推移に伴って、左空間部41内を上下に移動する。収容室36内のインクが減り、該インクの液位が底壁面34aよりも下方の位置に推移すると、フロート42がインク路39の上部を閉塞する。
【0033】
フロート42の一部には永久磁石42aが取り付けられている。そして、ホール素子に代表される磁電変換素子43a,43bが、カートリッジホルダ32の左壁32aに取り付けられている。この構成により、フロート42に配置された永久磁石42aと、フロート42の浮上位置にしたがった該永久磁石42aによる磁力線量に応じて、電気的出力が発生されるホール素子43a,43bと、により出力発生手段が構成されており、フロート42を含めて収容室36内のインクレベルを検出するインクレベル検出手段45を構成している。このインクレベル検出手段45により、インクエンドの位置を検出することができる。
【0034】
なお、インクレベル検出手段としては、磁力線によって検出するものに限らず、インク収容部34の上部にフロート42との相対距離を検出するための距離検出部を設けて、距離検出部と、フロート42との相対距離を検出することによって、インクエンドの位置を検出するような構成としても良い。また、近赤外光を発する投光部と、この近赤外光を受光する受光部とからなる光学センサを用いて、インクエンドの位置を検出するようにしても良い。この場合、投光部および受光部のそれぞれを、インク収容部34を挟んでカートリッジホルダ32に対向配置させる。そして、インクの消費により投光部から発した近赤外光が受光部に到達した場合、インクによって赤外線が遮られない程度まで液面が低下していることになるので、インクエンドを検出することができる。なお、インクが消費されず、光電センサの位置にインクが充填されている場合は、投光部から発した近赤外光は、受光部に到達しないため、光学センサによる位置検出はなされない。
【0035】
また、インク供給口37の下端には、不図示のフィルムが貼付され、かかるフィルムにより、未使用時にはインク供給口37および収容室36が外部から封止されている。一方、記録ヘッドユニット30にはインク供給針33aが設けられている。該インク供給針33aはカートリッジホルダ32に固定されている。このため、カートリッジ31が、カートリッジホルダ32に搭載され、カートリッジ31が保持された状態となると、インク供給針33aがフィルムを突き破る。ここで、上述したように、カートリッジホルダ32の左壁32aには、紫外線を放射する紫外線ランプ44が備えられている。このため、紫外線ランプ44から透光部Aに向かって放射された紫外線が透光部Aを透過して、インク路39内に貯留しているインクに照射される。それによって、インク路39内に貯留しているインクが固化する。
【0036】
さらに、カートリッジ31内のインクがインクエンドとなり空の状態になると、その空になったカートリッジ31を廃棄して、新たなものと交換する必要がある。この際、カートリッジ31からインクが漏れないようにインク供給口37を封止する必要がある。
【0037】
これより、カートリッジ31内のインクが空になりインク供給口37からインク供給針33aを引き抜いた際に、該インク供給口37からインクが漏れないようにする必要がある。すなわち、インク供給口37からインク供給針33aを引き抜いた状態で、インク供給口37を封止する必要がある。本実施の形態では、フロート42を用いてインク路39の上方を塞ぐと共に、紫外線ランプ44から放射される紫外線によって、インク路39内に貯留しているインクを固化させる構成となっている。このように、インク路39のインクを固化させることにより、インク供給口37が封止され、カートリッジ31からのインク漏れを防止することが可能となる。
【0038】
当該インクの固化は、主に、インクレベル検出手段45と、紫外線ランプ44と、制御部50とによって行われる。具体的には、インクレベル検出手段45により、収容室36のインク残量がインクエンドとなった旨の検出がなされると、その信号が制御部50に送信される。すると、制御部50は、インクレベル検出手段45からの信号に基づいて、紫外線ランプ44を作動させる旨の指令を出す。これにより、紫外線ランプ44からインク路39内のインクに紫外線が照射され、インク路39内のインクが固化される。なお、制御部50は、インクレベル検出手段45から送信される信号に基づいて、初期にカートリッジ31に充填されているインクの量を示すインク容量データ、並びに、インク残量を示すインク残量データ等も記憶している。
【0039】
<インク固化のための動作の詳細について>
以上のような構成を有するインクジェット式記録装置10に搭載されたカートリッジ31のインクを固化するための動作について、以下に説明する。図3は、フロート42によってインク路39が閉塞され、該インク路39に紫外線が照射されている状態のカートリッジ31の側断面図である。
【0040】
インクジェット式記録装置10を使用して記録用紙Pに記録し続けると、収容室36のインクが減少し、インクの液面が底壁面34aまで到達する。フロート42は、インクの液面の推移に伴って下方に移動するため、インクの液面が底壁面34aに到達し、インクエンドとなると、フロート42は内側凸部38の上端面38aに接触してインク路39を閉塞する(図3参照)。すると、インクレベル検出手段45によって、収容室36のインクがインクエンドになった旨が検出される。そして、その旨の信号が不図示の電気接点および不図示の接続端子を介して、制御部50に送信される。
【0041】
制御部50が、インクレベル検出手段45からインクエンドである旨の信号を受信すると、該制御部50は、その信号に基づいて、記録ヘッドユニット30に搭載されている複数のカートリッジ31のうち、インクエンドとなったカートリッジ31に対応する紫外線ランプ44を作動させる旨の信号をランプ駆動回路に送信し、そのランプ駆動回路を介して紫外線ランプ44が作動され、紫外線ランプ44から紫外線が放射される。放射された紫外線は透過部Aを透過して、インク路39内に貯留しているインクに所定の時間だけ照射される。その結果、インク路39内に貯留しているインクが紫外線照射によって固化され、インクがインク供給口37から漏れなくなる。
【0042】
<本発明を適用した場合における効果>
以上のように構成されたインクジェット式記録装置10では、収容室36に収容されているインクがインクエンドとなると、インクレベル検出手段45からの検出信号に基づいて、制御部50が紫外線ランプ44を作動させる。したがって、収容室36内のインクがインクエンドになると、自動的に紫外線ランプ44が作動し、インク路39内に貯留しているインクに紫外線を照射させることが可能となる。したがって、インクが空になった状態で、インク路39内に貯留しているインクを固化させることが可能となる。その結果、カートリッジ31を廃棄して新しいカートリッジと交換する際に、インク供給口37からのインク漏れを確実に防止することが可能となる。
【0043】
また、インクジェット式記録装置10では、収容室36内に配置されているフロート42がインク路39の上端を塞ぐと、インクレベル検出手段45によってインクエンドである旨が検出され、紫外線ランプ44によってインク路39に紫外線が照射される。このように、フロート42がインク路39の上端を塞いだ状態で、インク路39内に貯留しているインクが固化されるため、インク供給口37を確実に封止することが可能となる。
【0044】
また、このように、フロート42がインク路39の上端を塞いだ状態で、インク路39内に貯留しているインクを固化させると、フロート42と内側凸部38が固着し、インク供給口37が気密に密閉される。したがって、カートリッジ31からのインクの漏れをより効果的に防止することが可能となる。
【0045】
また、カートリッジ31では、透過部Aは透光性を有する部材から構成されているため、紫外線ランプ44からの紫外線を確実にインク路39に進入させることができる。そのため、インク路39内に貯留しているインクを確実に固化させることが可能となる。
【0046】
また、カートリッジ31では、収容室36内に仕切り40を設け、フロート42が上下に移動するための左空間部41が設けられている。したがって、フロート42を確実に内側凸部38の上部に配置させることができる。したがって、インク路39をフロート42によって確実に閉塞させることが可能となる。
【0047】
<本発明の変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上述の形態に限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0048】
上述の実施の形態では、フロート42を配置して、インク路39を閉塞させる構成を採用しているが、フロート42を配置しないようにしても良い。この場合、透明な窓の側方に設けられたCCDラインセンサによって液面を読取るようにしても良い。なお、この場合、フロート42が配置されないため、フロート42の動作を規制する仕切りを設けないようにしても良い。
【0049】
また、上述の実施の形態では、内側凸部38は、インク供給部35の内部に全周に亘って設けられている。しかしながら、内側凸部38は、全周に設けることに限定されず、例えば、周方向に所定の間隔を隔てて突起状に設けるようにしても良い。また、内側凸部38はインク供給部35の内部に設けられているが、例えば、インク供給部35の内部ではなく、インク供給部35から収容室36側に突出するように、収容室36内においてインク供給口37と連通するように設けるようにしても良い。
【0050】
また、上述の実施の形態では、右内側凸部38b近傍を透過部Aとして、紫外線が透過可能な構成としているが、例えば、左内側凸部38c近傍を透過部Aとし、その側方に紫外線ランプ44を配置して、左内側凸部38c側から紫外線を照射させてインク路39内のインクを固化させるようにしても良い。また、紫外線硬化型インクの代わりに、例えば、電子線硬化型インクを用い、電子線を照射させて、インクを固化させるようにしても良い。
【0051】
また、上述の実施の形態では、流体吐出装置として、インクジェット式記録装置10に関して説明している。しかしながら、流体吐出装置は、インクジェット式記録装置10には限られるものではなく、例えばコピー機能を備える複写機に本発明を適用しても良い。また、その他の流体吐出装置としては、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ等の製造に用いられる、流体を噴射する装置等がある。また、流体は、インク以外の流体であっても良く、たとえば液晶ディスプレイ、ELディスプレイに用いられる流体を噴射する装置においては、色材、電極材が流体となる。また、流体は、脱気インクには限られず、気泡が所定だけ溶解しているインク(飽和しているインク等)を用いても良い。なお、飽和しているインクを用いる場合、加圧または冷却等の別途の作業が必要となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施の形態に係るインクジェット式記録装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1中のカートリッジの概略構成を示す側断面図である。
【図3】フロートによってインク路が閉塞され、インク路に向かって紫外線が照射されている状態のカートリッジの側断面図である。
【符号の説明】
【0053】
10…インクジェット式記録装置(流体噴射装置)、30…記録ヘッドユニット(流体噴射ユニット)、31…カートリッジ(流体収容容器)、33…記録ヘッド、33a…インク供給針(流体供給針)、34…インク収容部(流体収容部)、35…インク供給部(供給部)、39…インク路、42…フロート(浮体)、44…紫外線ランプ(光照射装置)、45…インクレベル検出手段(流体レベル検出手段)、50…制御部、A…透光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体供給針を介して流体噴射ユニットに供給されると共に所定の波長の光の照射によって硬化される流体を、上記流体噴射ユニットから噴射する流体噴射装置に用いられ、上記流体噴射ユニットに対して着脱可能な流体収容容器であって、
上記流体を収容する流体収容部と、
上記流体収容部に収容されている上記流体を当該流体収容部から上記流体噴射ユニットに供給する供給部と、
を有し、
上記供給部もしくは上記供給部近傍の上記流体収容部に、外部からの光を透過させる透光部を設けていることを特徴とする流体収容容器。
【請求項2】
前記流体収容部に収容されている前記流体には、前記流体の残量に応じて推移すると共に前記流体よりも比重の小さな浮体が配置され、前記流体収容部内の前記流体が前記流体噴射ユニットに供給されて減少し、その流体レベルが流体エンドに近づくと、上記浮体が前記供給部を閉塞することを特徴とする請求項1記載の流体収容容器。
【請求項3】
装置本体に装着された流体収容容器に収容されると共に所定の波長の光の照射によって硬化される流体を、流体噴射ユニットから噴射する流体噴射装置であって、
上記流体収容容器内に収容される上記流体の流体レベルを検出する流体レベル検出手段と、
上記流体収容容器から上記流体噴射ユニットに上記流体を供給する供給部もしくは上記供給部近傍の上記流体収容容器に向かって光を放射する光照射装置と、
上記流体レベル検出手段によって検出された検出信号に基づいて、上記光照射装置の作動を制御する制御部と、
を有し、
上記供給部もしくは上記供給部近傍の上記流体収容容器に、外部からの光を透過させる透光部を設け、上記流体レベル検出手段が、上記流体収容容器内に収容された上記流体の流体レベルを流体エンドであることを検出すると、上記制御部の制御に基づき上記光照射装置が作動し、上記透光部に光が照射されることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項4】
前記流体収容容器に収容されている前記流体には、前記流体の残量に応じて推移すると共に前記流体よりも比重の小さな浮体が配置され、前記流体収容容器内の流体レベルが降下して、上記浮体が前記供給部を閉塞すると、前記流体レベル検出手段によって流体エンドであることが検出され、前記透光部に向かって前記光照射装置から光が照射されることを特徴とする請求項3記載の流体噴射装置。
【請求項5】
流体噴射ユニットから所定の波長の光の照射によって硬化される流体を噴射する流体噴射装置に用いられ、上記流体噴射ユニットに流体を供給する供給部を備え、該供給部もしくは供給部近傍に、外部からの光を透過させる透光部を有する流体収容容器の封止方法であって、
上記流体収容容器に収容された上記流体が、流体エンドであることを検出するステップと、
上記流体エンドであると検出した場合に、上記透光部に向かって光を照射するステップと、
を有することを特徴とする流体収容容器の封止方法。
【請求項6】
前記流体収容容器に収容されている前記流体に、該流体の残量に応じて推移すると共に前記流体よりも比重の小さな浮体を配置し、該浮体の高さ方向の位置に基づいて、流体エンドであることを検出することを特徴とする請求項5記載の流体収容容器の封止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−202435(P2009−202435A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47314(P2008−47314)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】