流体噴射装置
【課題】複数の流体噴射開口部から液体を噴射する流体噴射装置を提供する。
【解決手段】流体噴射装置は、柱状の基体60と、基体60の外周側面に穿設される複数の凹部それぞれの内部に設けられる容積可変チャンバ21,22と、容積可変チャンバ21,22それぞれの内部に形成される流体室61,62と、流体室61,62それぞれを封止するダイアフラム40,41と、ダイアフラム40,41の変位方向に略平行な流体室61,62の側壁に連通する出口流路30,31と、出口流路30,31の先端部に設けられる流体噴射開口部30a,31aと、流体室61,62それぞれに連通する入口流路35,36とを有する流体噴射部10と、入口流路35,36に連通する液体供給路81,82を有する液体供給チューブ80と、を備え、流体室61,62の容積をダイアフラム40,41により縮小して流体噴射開口部30a,31aから液体をパルス状に噴射する。
【解決手段】流体噴射装置は、柱状の基体60と、基体60の外周側面に穿設される複数の凹部それぞれの内部に設けられる容積可変チャンバ21,22と、容積可変チャンバ21,22それぞれの内部に形成される流体室61,62と、流体室61,62それぞれを封止するダイアフラム40,41と、ダイアフラム40,41の変位方向に略平行な流体室61,62の側壁に連通する出口流路30,31と、出口流路30,31の先端部に設けられる流体噴射開口部30a,31aと、流体室61,62それぞれに連通する入口流路35,36とを有する流体噴射部10と、入口流路35,36に連通する液体供給路81,82を有する液体供給チューブ80と、を備え、流体室61,62の容積をダイアフラム40,41により縮小して流体噴射開口部30a,31aから液体をパルス状に噴射する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の容積可変チャンバと、複数の容積可変チャンバそれぞれに連通する流体噴射開口部を有する流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
噴射される流体による手術は、血管等の脈管構造を保存しながら臓器実質を切開することが可能であり、さらに、切開部以外の生体組織に与える付随的損傷が軽微であることから患者負担が小さく、また、出血が少ないため出血が術野の視界を妨げないことから迅速な手術が可能であり、特に微小血管からの出血に難渋する肝切除等に多く臨床応用されている。
【0003】
このような噴射される流体による手術装置として、基端部に一つの開口部を有し、この開口部と対向する蒸気発生手段を有する液体チャンバを含み、液体チャンバは作動時にマイクロ液体ジェットを発生させるというマイクロ液体ジェット発生装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、高圧流体を通す流路を備え、先端部の流路断面形状を扁平にした噴射ノズルを有したウォータジェットカテーテルを備えたウォータジェット手術装置というものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、高圧流体を通す流路を備え、先端部に噴射ノズルを有したウォータジェットカテーテルと、このウォータジェットカテーテルとは別体で併設され先端部に吸引口を有すると共に、この吸引口を噴射ノズルと同位置か、前方に位置させた排液吸引用カテーテルとを備えたウォータジェット手術装置というものも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特表2003−500098号公報
【特許文献2】特開平6−90957号公報
【特許文献3】特開平5−285150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような特許文献1から特許文献3では共に、流体を噴射するノズルが、高速流体発生装置に対して一つ設けられており、切除能力を高めるためには噴射速度を高めると共に噴射量を増加させる。しかしながら、このようにすれば、水流が生体組織に深く入り込みすぎるということが考えられる。
【0008】
このような課題を解決するために、特許文献2に記載のように噴射ノズルの先端を扁平にすることが提案されているが、噴射ノズルを扁平にすることで、噴射面積が広くなり、十分な切除圧力が得られにくいという課題が生じる。
【0009】
また、特許文献3によれば、噴射ノズルを有するウォータジェットカテーテルとは別体の排液吸引用カテーテルを併設している。このような構成では、液体噴射(切除)と排液吸引とが同時に可能となるが、装置が大きくなり、微細な間隙の手術や、血管等の細管内に装置を挿入することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]本適用例に係る流体噴射装置は、外周面に複数の凹部が穿設された柱状の基体と、複数の前記凹部それぞれを封止するダイアフラムと前記凹部と前記ダイアフラムによってそれぞれ形成される複数の流体室とからなる複数の容積可変チャンバと、前記ダイアフラムの変位方向に略平行な複数の前記流体室それぞれの側壁に連通する出口流路と、前記出口流路の先端部に設けられる流体噴射開口部と、複数の前記流体室それぞれに連通する入口流路と、前記入口流路に連通する流体供給チューブと、が備えられ、前記流体室の容積を前記ダイアフラムにより縮小して前記流体噴射開口部から流体をパルス状に噴射することを特徴とする。
【0012】
本適用例によれば、複数の容積可変チャンバそれぞれに出口流路及び流体噴射開口部を設けていることから、各容積可変チャンバそれぞれにおいてダイアフラムによる容積縮小率を設定することにより、術部硬度に適切な流体の噴射速度、噴射量を得ることができる。
【0013】
また、上述したように、流体噴射開口部一つ一つを適切な設定としながら、複数の流体噴射開口部から流体を噴射できるので、流体噴射装置全体として流体噴射量を多くして、切除能力を高めることができる。
【0014】
[適用例2]上記適用例に係る流体噴射装置において、複数の前記容積可変チャンバそれぞれが、前記基体の外周側面の周方向に離間して配設されていることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、複数の容積可変チャンバを柱状の基体の外周側面の周方向に穿設される凹部内に配設しているため、突出部がない細い流体噴射部を構成することができ、微細な間隙の手術や、血管等の細管内に装置を挿入することが可能な流体噴射装置を実現できる。
【0016】
[適用例3]上記適用例に係る流体噴射装置において、複数の前記容積可変チャンバそれぞれが、平面方向に併設されていることが望ましい。
【0017】
このような構成の流体噴射装置は扁平形状となるが複数の流体噴射開口部を有していることから、前述した特許文献2のような単純に噴射ノズルを扁平にすることで、噴射面積が広くなり、十分な切除圧力が得られにくいという課題を解決できる。また、複数の流体開口部それぞれから流体を高速で噴射できるので長い術線の切除を可能にし、このことにより、切開手術以外の剥離切除が可能となる効果がある。
【0018】
[適用例4]上記適用例に係る流体噴射装置において、複数の前記入口流路それぞれに連通する前記流体供給チューブが備えられていることが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、容積可変チャンバと、内部に設けられる流体室と、出口流路(流体噴射開口部)と、入口流路と、流体供給チューブとが専用対応となり、複数の容積可変チャンバ間の流体噴射速度、噴射量を個々に設定可能になる他、ばらつきを減縮することができる。
【0020】
[適用例5]上記適用例に係る流体噴射装置において、前記基体の外周部に嵌着されると共に、前記流体供給チューブを内包する外郭チューブが、さらに備えられていることが好ましい。
【0021】
複数の入口流路それぞれに流体供給チューブを連通させる場合、流体噴射部の外周と流体チューブそれぞれの外周との間には段差ができることになる。そこで、これら流体供給チューブを内包するような外郭チューブを設けることにより、流体噴射部と外郭チューブの外周を概ね同じ外径とすれば上記段差を解消し、血管等の細間に流体噴射部を挿入または引き抜きを容易にし、組織を傷つけることを防止することができる。
【0022】
また、各流体供給チューブが非常に細く強度が十分とはいえない場合があるが、外郭チューブを設けることにより、流体供給チューブを保護することができ、取り扱いが容易となる。
【0023】
[適用例6]上記適用例に係る流体噴射装置において、前記流体供給チューブが、複数の前記入口流路に連通すると共に、複数の前記容積可変チャンバを密閉するように前記基体の外周部に嵌着されていることが好ましい。
【0024】
上述したように、容積可変チャンバは、基体の外周部に穿設された凹部内に配設される。流体供給チューブで容積可変チャンバを密閉することにより、液体を含む環境下において、容積可変チャンバに液体が付着することによるダイアフラムの駆動を妨げることを防止することができる。
【0025】
また、このような構成にすれば、複数の入口流路への流体供給と、容積可変チャンバの密閉と、を一つの流体供給チューブで行い、構造を簡素化することができる。
さらに、基体及び容積可変チャンバを含む流体噴射部が流体供給チューブ内に収納されることになり、流体噴射部を流体供給チューブの延長範囲に存在させることができるので、血管等の脈管構造に挿入しやすくなるという効果がある。
【0026】
[適用例7]上記適用例に係る流体噴射装置において、複数の前記流体室に対して共通の入口流路と、前記入口流路から分岐され、複数の前記流体室それぞれに連通される接続流路が設けられていることが好ましい。
【0027】
複数の容積可変チャンバを備え、これらに連通する入口流路に対応する液体供給チューブの数が増加する場合、流体供給チューブが互いに干渉して基体の外径(つまり、流体噴射部の外径)が大きくなってしまう。しかし、上述した適用例4による構成では、入口流路及び流体供給チューブを1本とし、基体内部において1本の入口流路から複数の流体室それぞれに連通する接続流路に分岐すれば小径の流体噴射部を実現できる。
【0028】
[適用例8]上記適用例に係る流体噴射装置において、前記基体の先端部に突設された複数の突起部に、複数の前記出口流路それぞれが連通されていることが好ましい。
【0029】
このような構成によれば、複数の出口流路それぞれが基体の先端部に突設される突起部に連通されている。従って、これら突起部に流体噴射開口部が設けられることになり、各流体噴射開口部と術部に対して良好な視界を得ることができる。
【0030】
[適用例9]上記適用例に係る流体噴射装置において、前記流体供給チューブが、複数の前記入口流路それぞれに連通する複数の流体供給路を有することが好ましい。
【0031】
このような構成によれば、複数の入口流路それぞれに対応する流体供給路を1本の流体供給チューブに形成することにより、構造を簡素化すると共に、基体の外径(つまり、流体噴射部の外径)を小さくすることができる。
【0032】
[適用例10]上記適用例に係る流体噴射装置において、前記入口流路と前記流体供給チューブの流体供給路との間に、流体滞留室が設けられていることが望ましい。
【0033】
流体室、入口流路、流体供給路がそのまま直列に連通される場合、パルス状の噴射の間に、流体供給路からの流体圧力により、不要な流体流動が発生することがある。そこで、流体滞留室を設けることにより流体滞留室内に充填されている流体が緩衝部となり、不要な流体流動の発生を抑制することができる。
【0034】
逆に、パルス状の噴射時には、流体滞留室内に充填されている流体が流体抵抗となり、入口流路から流体が逆流することを抑制することができる。
【0035】
[適用例11]上記適用例に係る流体噴射装置において、前記基体の先端部から尾部を貫通する吸引流路と、前記吸引流路に連通する吸引チューブが設けられていることが好ましい。
【0036】
このような構成によれば、流体噴射開口部からの液体噴射による組織切除と、組織切除による残渣及び排液を吸引流路から吸引することができる。そして、吸引流路を基体内に形成していることから、前述した特許文献3のように、ウォータジェットカテーテルと排液吸引用カテーテルとを併設する構成に比べ小型の流体噴射装置を実現できる。
【0037】
[適用例12]上記適用例に係る流体噴射装置において、前記流体供給チューブと前記吸引チューブとが一体の接続チューブで形成され、複数の前記入口流路に連通する流体供給路と、前記吸引流路に連通する吸引路と、が、前記接続チューブに設けられていることが望ましい。
【0038】
このような構成によれば、複数の流体供給路と、吸引路と、を1本の接続チューブに形成することにより、複数の流体供給路と吸引流路とを備えていても小径で、構造が簡単な流体噴射装置を実現できる。
【0039】
[適用例13]上記適用例に係る流体噴射装置において、複数の前記容積可変チャンバそれぞれの駆動タイミングが一致していることが好ましい。
【0040】
備えられる全ての容積可変チャンバの駆動タイミングを一致させることにより、全体としての流体噴射量を増加し、切除能力を高めることができる。
【0041】
[適用例14]上記適用例に係る流体噴射装置において、複数の前記容積可変チャンバそれぞれの駆動タイミングをずらしていることが望ましい。
【0042】
このような構成にすれば、各流体噴射開口部からの流体噴射のタイミングを変えることにより、例えば、前述のタイミングを一致させる場合よりも切除能力が小さくなるので、このような制御を行うことで、弱い切除能力をもつ流体によって切除部を洗浄して視界を確保することが可能になる。
【0043】
[適用例15]上記適用例に係る流体噴射装置において、複数の前記容積可変チャンバそれぞれから噴射する流体の噴射速度、噴射量が同等であることが望ましい。
【0044】
このような構成では、複数の容積可変チャンバの構成と寸法を同じにし、入力する駆動信号を共通にできるので、駆動信号を生成する駆動制御回路を含めて構造を簡素化することができる。
【0045】
[適用例16]上記適用例に係る流体噴射装置において、複数の前記容積可変チャンバのうち、少なくとも一つから噴射する流体の噴射速度、噴射量が、他と異なることが望ましい。
【0046】
このようにすれば、切除部の硬度や状態に応じて、適切な噴射速度、噴射量を選択して使用することが可能となる。
【0047】
[適用例17]上記適用例に係る流体噴射装置において、複数の前記容積可変チャンバのうちのいくつかを選択的に駆動することが望ましい。
【0048】
このようにすれば、切除部の硬度や範囲に応じて、必要な容積可変チャンバを選択して使用することができる。この際、選択する容積可変チャンバは、一つまたは複数または全部であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図6は実施形態1及びその変形例、図7,8は実施形態2、図9は実施形態3、図10は実施形態4、図11,12は実施形態5、図13は実施形態6に係る流体噴射装置を示している。
なお、以下の説明で参照する図は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
また、本発明による流体噴射装置は、インク等を用いた描画、細密な物体及び構造物の洗浄、手術用メス等様々に採用可能である。但し、以下に説明する実施の形態では、血管内に挿入し血栓等を除去する目的で用いるカテーテルの先端に設置することに適した流体噴射装置、あるいは生体組織を切開または切除することに好適な流体噴射装置を例示して説明する。従って、実施の形態にて用いる流体は、水または生理食塩水であり、以降、これら流体を総称して液体と表すことがある。
(実施形態1)
【0050】
図1は、実施形態1に係る流体噴射装置の概略構成の一例を示す説明図である。図1において、流体噴射装置100は、基本構成として液体を収容し、その液体を供給する液体供給部としての輸液バッグを含む駆動制御部110と、液体を脈動に変化させる流体噴射部10と、駆動制御部110と流体噴射部10とを連通する液体供給チューブ80と、を備えている。流体噴射部10は、液体を脈動に変化させて複数の液体噴射開口部から液滴200としてパルス状に高速噴射させる。
【0051】
駆動制御部110には、図示しない駆動波形生成回路部と駆動制御回路部とが備えられ、術部の硬度、切除範囲等の条件に対応して駆動波形を調整する調整装置112と、駆動条件等を表示する表示部111が備えられている。
【0052】
次に、図2を参照して本実施形態の流体噴射装置について説明する。
図2は、実施形態1に係る流体噴射部を示し、(a)は液体の流動方向に沿って切断した切断面を示す断面図、(b)は(a)のA−A切断面を示す断面図、(c)は(a)のB−B切断面を示す断面図、(d)は液体供給チューブの断面形状を示している。図2(a)〜(c)において、流体噴射部10は、内部に複数の容積可変チャンバ21,22を備えて構成されている。
【0053】
容積可変チャンバ21,22は、図2(b)に示すように円柱状の基体60の外周部に互いに対向する位置に穿設された凹部内に配設されている。
容積可変チャンバ21は、流体室61の上部開口部の周縁に固定されると共に、流体室61を密閉封止するダイアフラム40と、ダイアフラム40の表面に設けられる圧電素子51とから構成されている。
【0054】
一方、容積可変チャンバ22は、流体室62の上部開口部の周縁に固定され、流体室62を密閉封止するダイアフラム41と、ダイアフラム41の表面に設けられる圧電素子52とから構成されている。
従って、容積可変チャンバ21,22共に、基体60の外周部から突出する部位は存在しない。
【0055】
流体室61には、ダイアフラム40の変位方向に略平行な側壁と基体60の先端部60aに連通する出口流路30が形成され、出口流路30の先端部は流体噴射開口部30aである。
【0056】
また、流体室62には、ダイアフラム41の変位方向に略平行な側壁と基体60の先端部60aに連通する出口流路31が形成され、出口流路31の先端部は流体噴射開口部31aである。
【0057】
出口流路30,31は共に液体の流動方向に垂直な断面積が、流体室61,62の同方向の断面積よりもはるかに小さく設定される。従って、出口流路30と流体噴射開口部30a、出口流路31と流体噴射開口部31aで構成される部位はノズルを構成する。
【0058】
出口流路30と対向する位置には入口流路35が形成され、出口流路31と対向する位置には入口流路36が形成されている。入口流路35は流体室61と基体60の尾部60bの間を貫通し、入口流路36は流体室62と基体60の尾部60bの間を貫通している。
【0059】
また、基体60の尾部60bには、接続管71,72が植立されている。接続管71には接続流路71aが開設されており、一部が尾部60bから突出されている。接続流路71aは入口流路35に連通している。なお、接続流路71aの液体流動方向に垂直な断面積は入口流路35の同方向の断面積よりも大きい。接続流路72aは入口流路36に連通している。なお、接続流路72aの液体流動方向に垂直な断面積は入口流路36の同方向の断面積よりも大きい。
【0060】
基体60の外周部には蓋筒体70が嵌着されている。蓋筒体70は、基体60のほぼ全長にわたって設けられており、基体60と密着固定される。従って、容積可変チャンバ21,22はそれぞれ、空間21a,22aを有して密閉封止される。空間21a,22aは、ダイアフラム40,41の可動範囲を確保する大きさに設定される。
【0061】
基体60の尾部60bには、液体供給チューブ80が装着される。液体供給チューブ80は、図2(d)に示すように、液体供給路81,82が開設されている。液体供給路81は接続管71に嵌着され、液体供給路82は接続管72に嵌着されている。こうして、流体室61から液体供給路81まで、及び流体室62から液体供給路82までが連通される。
【0062】
液体供給チューブ80は、図1に示す駆動制御部110内の輸液バッグに連通し、輸液バッグから一定の圧力で液体が液体供給路81,82を通って流体室61,62まで供給される。
なお、液体供給チューブ80の外径は、蓋筒体70の外径とほぼ同じであり、流体噴射部10と液体供給チューブ80の外形は連続した形状となる。
【0063】
続いて、図1,2を参照して本実施形態による流体噴射装置100における液体の流動の概要を簡単に説明する。駆動制御部110内部には輸液バッグと、輸液バッグに接続された圧力発生部(共に図示は省略)が内蔵されている。圧力発生部は液体供給チューブ80に液体を送出するように接続されている。輸液バッグに収容されている液体は、圧力発生部によって一定の圧力で液体供給チューブ80(液体供給路81,82)を介して入口流路35,36に供給される。さらに液体は流体室61,62、出口流路30,31を通って流体噴射開口部30a,31aからパルス状に噴射される。
【0064】
なお、輸液バッグは、駆動制御部110から分離し、流体噴射部10に対して高い位置に配設して、輸液バッグと流体噴射部10との位置水頭の差によって生じる圧力差を利用して流体噴射部10に液体を一定の圧力で流入させる構成としてもよい。
【0065】
次に、流体噴射部10の動作について説明する。図2を参照して説明する。各容積可変チャンバの個別の基本動作は同じであるので、容積可変チャンバ21を例示して説明する。まず、駆動制御部110に含まれる駆動波形生成回路部によって形成された駆動波形を駆動制御回路部から圧電素子51,52に印加する。
【0066】
流体室61には、入口流路35から液体が供給される。ここで、圧電素子51に駆動信号が入力され、圧電素子51が充電され急激に圧電素子51が収縮したとすると、ダイアフラム40は流体室61の容積を縮小する方向に急激に凸状に変位する。その結果、流体室61内の圧力は、入口流路35側及び出口流路30側のそれぞれの合成イナータンスL1,L2が十分な大きさを有していれば急速に上昇して数気圧に達する。
【0067】
この圧力は、入口流路35に加えられていた圧力発生部による圧力よりはるかに大きいため、入口流路35側から流体室61内への液体の流入はその圧力によって減少し、出口流路30からの流出は増加する。しかし、入口流路35側の合成イナータンスL1は、出口流路30側の合成イナータンスL2よりも大きいため、入口流路35から流体室61内への液体の流入の減少量より出口流路30からの流出の増加量が大きい。
その結果、出口流路30を通して、流体噴射開口部30aからパルス状の流体吐出、つまり、高速の液滴200がパルス状に噴射される。
【0068】
一方、流体室61の容積を縮小した後、駆動電圧の電圧低下に伴い圧電素子51は放電し初期状態に復帰する。流体室61内は、入口流路35側からの液体流入量の減少と出口流路30からの液体流出の増加との相互作用で、圧力上昇後に低圧若しくは真空状態となり、入口流路35から液体が流体室61内に流入する。その後、圧電素子51の収縮があれば、流体噴射開口部30aから高速のパルス状の液滴を継続して噴射することができる。
【0069】
容積可変チャンバ22側においても同様な動作を行うので、流体噴射開口部30a,31aから同時に液滴が高速で噴射される。
【0070】
従って、上述した構成によれば、複数の容積可変チャンバ21,22それぞれに出口流路30,31及び流体噴射開口部30a,31aを設けていることから、各容積可変チャンバそれぞれにおいてダイアフラム40,41による容積縮小率を設定することにより、術部硬度に適切な流体の噴射速度、噴射量を得ることができる。
【0071】
また、流体噴射開口部30a,31aそれぞれの噴射条件を適切な設定としながら、流体噴射開口部30a,31aから同時に流体を噴射できるので、流体噴射装置100(流体噴射部10)全体として流体噴射量を多くして、切除能力を高めることができる。
【0072】
また、容積可変チャンバ21,22を柱状の基体60の外周の対向する側面に穿設される凹部内に配設しているため、突出部がない細い流体噴射部10を構成することができ、微細な間隙の手術や、血管等の細管内に装置を挿入することが可能な流体噴射装置を実現できる。
【0073】
また、液体供給チューブ80が、入口流路35,36それぞれに連通する複数の液体供給路81,82を有していることから、液体供給チューブ80の流体噴射部10への接続構造を簡素化すると共に、基体60の外径(つまり、流体噴射部の外径)を小さくすることができる。
(第1変形例)
【0074】
続いて、実施形態1の第1変形例について図面を参照して説明する。第1変形例は、複数の入口流路それぞれに連通する液体供給チューブが備えられていることに特徴を有している。従って、上述した実施形態1との相違個所について説明する。
図3は実施形態1の第1変形例に係る流体噴射部を示す部分断面図である。図3において、入口流路35に連通する接続流路71aを有する接続管71には、液体供給チューブ83が嵌着されている。一方、入口流路36に連通する接続流路72aを有する接続管72には、液体供給チューブ84が嵌着されている。液体供給チューブ83,84は、前述した輸液バッグに接続される。
【0075】
これら入口流路35,36に対応して設けられる液体供給チューブ83,84の外側には、液体供給チューブ83,84を内包する外郭チューブ90が設けられている。外郭チューブ90は、基体60の尾部60bに嵌着され、液体供給チューブ83,84の全長範囲に設けられることがより好ましい。外郭チューブ90の端部は、蓋筒体70の端部に当接する位置まで挿着され、外径は蓋筒体70の外径とほぼ同等とする。
【0076】
このような構成にすれば、容積可変チャンバ21,22と、内部に設けられる流体室61,62と、出口流路30,31(流体噴射開口部30a,31a)と、入口流路35,36と、液体供給チューブ83,84とがそれぞれ専用の組み合わせとなる。従って、複数の容積可変チャンバ間のばらつきを減縮することができる。また、流体噴射速度、噴射量を個々に設定することができる。
【0077】
さらに、外郭チューブ90を設け、流体噴射部10の外周(第1変形例では蓋筒体70の外周)と外郭チューブ90の外周を概ね同じ外径とすれば、血管等の細間に流体噴射部を挿入または引き抜きすることを容易にし、挿入、引き抜きにより組織を傷つけることを防止することができる。
【0078】
また、液体供給チューブ83,84は、非常に細く強度を十分に確保することが困難になる場合があるが、外郭チューブ90を設けることにより、液体供給チューブ83,84を保護することができ、取り扱いが容易となる。
(第2変形例)
【0079】
続いて、実施形態1の第2変形例について図面を参照して説明する。第2変形例は、流体供給チューブが複数の入口流路に連通すると共に、複数の容積可変チャンバを密閉するように基体の外周部に嵌着されていることを特徴とする。従って、実施形態1との相違個所を中心に説明する。
図4は実施形態1の第2変形例に係る流体噴射部を示す断面図である。図4において、流体噴射部10は、容積可変チャンバ21,22が配設された基体60の外周部に液体供給チューブ80が嵌着されて構成されている。
【0080】
基体60には先端部外周に鍔部60cが設けられている。また、流体室61に連通する入口流路35は尾部60bまで貫通している。一方、流体室62に連通する入口流路36は尾部60bまで貫通している。そして、入口流路35,36の両方が液体供給チューブ80の液体供給路85に連通される。
【0081】
液体供給チューブ80は、端部が基体60の鍔部60cに当接する位置まで挿入され、容積可変チャンバ21,22それぞれの上部を密閉封止している。なお、液体供給チューブ80の外径は、鍔部60cの外径とほぼ一致している。他の構成は前述した実施形態1(図2、参照)と同じである。
【0082】
従って、このような構成にすれば、液体供給チューブ80で容積可変チャンバ21,22を密閉することにより、液体を含む施術環境下において、容積可変チャンバ21,22(具体的には、ダイアフラム40,41及び圧電素子51,52)に液体が付着することによる容積可変チャンバ21,22の駆動を妨げることを防止することができる。
【0083】
また、このような構成にすれば、複数の入口流路への流体供給と、容積可変チャンバの密閉と、を一つの流体供給チューブで行うことができ、構造を簡素化することができる。
【0084】
さらに、基体60及び容積可変チャンバ21,22を含む流体噴射部10が液体供給チューブ80内に収納されることになり、流体噴射部10を液体供給チューブ80の延長範囲に存在させることができるので、血管等の脈管構造に挿入しやすくなるという効果がある。
(第3変形例)
【0085】
続いて、実施形態1の第3変形例について図面を参照して説明する。第3変形例は、基体の先端部に突設された突起部に、複数の出口流路それぞれが連通されていることを特徴とする。従って、実施形態1との相違個所を中心に説明する。
図5は、実施形態1の第3変形例に係る流体噴射部を示す断面図である。図5において、流体噴射部10は、流体室61,62それぞれに連通された出口流路30,31を有している。
【0086】
基体60の先端部60aには突起部としての吐出管75,76が植立されている。吐出管75には出口流路30に連通する流路75aが開設され、吐出管76には出口流路31に連通する流路76aが開設されている。流路75a,76aそれぞれの液体流動方向に垂直な断面積は、出口流路30,31それぞれの断面積と同じか、僅かに縮小されていることが望ましい。また、流路75a,76aの先端部には、液体噴射開口部が形成される。
【0087】
なお、吐出管75,76に対して、基体60から類似形状の突起部を基体60と一体で形成する構成としてもよい。
また、液体供給チューブと入口流路との接続構造は、前述した第1変形例(図3、参照)または第2変形例(図4、参照)に記載の構造を適合できる。
【0088】
従って、このような構成によれば、出口流路30,31それぞれが基体60の先端部に突設される突起部としての吐出管75,76に連通されている。これら突起部それぞれに流体噴射開口部が設けられることになり、各流体噴射開口部と術部に対して良好な視界を得ることができる。
(第4変形例)
【0089】
続いて、実施形態1の第4変形例について図面を参照して説明する。第4変形例は、複数の流体室に流体を供給する共通の入口流路と、この入口流路から分岐され、流体室それぞれに連通される接続流路が設けられていることを特徴とする。従って、実施形態1との相違個所を中心に説明する。
図6は、実施形態1の第4変形例に係る流体噴射部を示す断面図であり、(a)は液体の流動方向に沿って切断した断面図、(b)は(a)のC−C切断面を示す断面図である。図6(a),(b)において、流体噴射部10は、流体室61,62に対して共通の1本の入口流路65が設けられている。入口流路65は、基体60の断面方向の略中央部に設けられ、一方の端部は流体室61,62の底部に達する位置まで延在され、他方の端部は尾部60bを貫通している。
【0090】
入口流路65からは、流体室61に連通する接続流路66と、流体室62に連通する接続流路67と、が分岐されて形成されている。ここで、入口流路65は、流体室61,62に対して十分な液体供給が可能な断面積を有している。また、入口流路65と接続流路66または接続流路67の合成イナータンスが入口流路側の合成イナータンスL1であって、出口流路30または出口流路31それぞれの合成イナータンスL2よりも大きくなるように、入口流路65及び接続流路66,67の断面積、流路長さが設定されている。
【0091】
また、液体供給チューブ80は、前述した第2変形例(図4、参照)と同様に、端部が基体60の鍔部60cに当接する位置まで挿入され、基体60の外周部に嵌着されると共に容積可変チャンバ21,22それぞれの上部を密閉封止している。
【0092】
なお、容積可変チャンバ21,22の密閉は、前述した第1変形例(図3、参照)と同様に蓋筒体70にて行い、液体供給チューブ80を基体60の尾部60bの付近の外周部に嵌着させる構造としてもよい。
【0093】
また、図示は省略するが、入口流路65に連通する液体チューブ嵌着部を尾部60bから突設させ、この液体チューブ嵌着部に液体供給チューブ80を嵌着接続する構造としてもよい。その際、第1変形例(図3、参照)と同様に、液体供給チューブ80を内包する外郭チューブ90を設ける構造とすることがより好ましい。
【0094】
複数の容積可変チャンバを備え、これらに連通する入口流路に対応する液体供給チューブの数が増加する場合、液体供給チューブが互いに干渉して基体60の外径(つまり、流体噴射部10の外径)が大きくなってしまう。しかし、上述した第4変形例による構成では、入口流路65及び液体供給チューブ80を1本とし、基体60内部において1本の入口流路65から接続流路66,67に分岐すれば小径の流体噴射部10を実現できる。
(実施形態2)
【0095】
続いて、実施形態2に係る液体噴射装置について図面を参照して説明する。実施形態2は、入口流路と液体供給チューブの液体供給路との間に、液体滞留室が設けられていることを特徴としている。従って、前述した実施形態1(図2、参照)との相違個所を中心に説明する。
図7は、実施形態2に係る流体噴射部を示す断面図であり、(a)は液体の流動方向に沿って切断した部分断面図、(b)は(a)のD−D切断面を示す断面図である。図7(a),(b)において、流体噴射部10は、基体60の尾部60bに接続管95が嵌着され、この接続管95に液体供給チューブ80が嵌着されて構成されている。
【0096】
接続管95は基体60側に入口流路35,36の両方に連通し、入口流路35,36の容積よりもはるかに大きい容積を有する液体滞留室96が設けられている。接続管95には、液体滞留室96と液体供給チューブ80とを連通する接続開口部95aがさらに備えられている。なお、接続開口部95aの液体流動方向に垂直な断面積は、入口流路35,36の総断面積よりも大きい。
【0097】
また、液体供給チューブ80の外径は、蓋筒体70の外径とほぼ一致し、対向するそれぞれの端部が密接されている。
なお、液体滞留室の構成形態は様々であって、以下にその変形例の一つを説明する。
(実施形態2の変形例)
【0098】
続いて、実施形態2の変形例に係る液体噴射部を図面を参照して説明する。
図8は、実施形態2の変形例に係る液体噴射部の概略構成を示す部分断面図である。図8において、流体噴射部10は、基体60の尾部60bに液体滞留室97が設けられた液体供給チューブ80が嵌着されて構成されている。
【0099】
液体滞留室97は、入口流路35,36両方に連通し、入口流路35,36の容積よりもはるかに大きい容積を有して液体供給チューブ80の嵌着側端部に穿設されて構成される。液体供給チューブ80には、液体流動方向に垂直な液体滞留室97の断面積よりも小さい断面積を有する液体供給路80aが開設されている。そして、液体供給チューブ80は、液体滞留室97の内周部を基体60の尾部60bの外周部に嵌着することで基体60に装着される。
【0100】
流体室61,62、入口流路35,36、液体供給路80aがそのまま直列に連通される場合、パルス状の液滴噴射の間に、液体供給路80aからの液体圧力により、不要な液体流動が発生することがある。そこで、上述した実施形態2及び変形例に記載のように、液体滞留室96または液体滞留室97を設けることにより液体滞留室96,97の内部に充填されている液体が緩衝部となり、不要な液体流動の発生を抑制することができる。
【0101】
逆に、パルス状の液滴噴射の際には、液体滞留室96,97の内部に充填されている液体が抵抗となり、入口流路35,36から流体が逆流することを抑制することができる。
(実施形態3)
【0102】
続いて、実施形態3に係る液体噴射部について図面を参照して説明する。実施形態3は、複数の容積可変チャンバそれぞれが、平面方向に併設されていることを特徴としている。容積可変チャンバが二つ備えられている構成を例示して説明する。
図9は、実施形態3に係る液体噴射部を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のE−E切断面を示す断面図である。なお、(a)は後述する上枠を透視した状態を図示している。図9(a),(b)において、流体噴射部10は、容積可変チャンバ21,22が平面方向に併設され構成されている。
【0103】
容積可変チャンバ21は、下枠69に穿設された流体室61、流体室61の開口部を封止するダイアフラム40と、ダイアフラム40の上面に設けられる圧電素子51とから構成される。また、容積可変チャンバ22は、下枠69に穿設された流体室62、流体室62の開口部を封止するダイアフラム41と、ダイアフラム41の上面に設けられる圧電素子52とから構成されている。なお、容積可変チャンバ21,22それぞれの構成は実施形態1(図2、参照)と同じなので詳しい説明を省略する。
なお、ダイアフラム40,41を1体構成とすることもできる。
【0104】
下枠69に容積可変チャンバ21,22を実装した後、上枠68を下枠69に密着固定することで流体噴射部10が構成される。この際、容積可変チャンバ21,22の上方に空間68aが形成される。
【0105】
流体室61,62のそれぞれには、出口流路30,31及び入口流路35,36が連通されている。入口流路35,36の端部には、接続管71,72が設けられており、接続管71,72それぞれに液体供給チューブ83,84が嵌着され、接続流路71a,72aが入口流路35,36に連通されている。
【0106】
従って、このような構成の流体噴射装置は扁平形状となるが複数の流体噴射開口部を有していることから、前述した特許文献2のような単純に噴射ノズルを扁平にすることで、噴射面積が広くなり、十分な切除圧力が得られにくいという課題を解決できる。また、複数の流体開口部それぞれから流体を高速で噴射できるので長い術線の切除を可能にし、このことにより、切開手術以外の剥離切除が可能となる効果がある。液体噴射部は扁平形状となり、横並びの液体噴射開口部を有することになり長い術線の切除を可能にする。このことにより、被手術部の剥離切除が可能となる効果がある。
(実施形態4)
【0107】
続いて、実施形態4に係る流体噴射装置について図面を参照して説明する。実施形態4は、前述した実施形態1〜実施形態3の構成に対して、さらに吸引路が設けられていることを特徴とする。
図10は、実施形態4に係る流体噴射部を示し、(a)は液体の流動方向に沿って切断した切断面を示す断面図、(b)は(a)のF−F切断面を示す断面図である。図10(a),(b)において、流体噴射部10は、基体60の先端部60aから尾部60bを貫通する吸引流路92が開設されている。
【0108】
吸引流路92は、基体60の断面方向の略中央部に設けられており、出口流路30,31及び入口流路35,36の液体流動方向に垂直な断面積よりも大きな断面積を有する。なお、吸引流路92の先端部には吸引開口部92aが設けられ、他方の基端部は吸引チューブ91に連通されている。
【0109】
吸引チューブ91の一方の端部は、基体60の尾部60bに突設されたチューブ嵌着部60dに嵌着されると共に、他方の端部が駆動制御部110(図1、参照)の内部または外部に向けられる吸引装置(図示せず)に接続される。
【0110】
また、基体60の外周部には液体供給チューブ80が嵌着されている。液体供給チューブ80の内周部と吸引チューブ91の外周部とから構成される空間が液体供給路80aとなる。そして、この液体供給路80aに入口流路35,36が連通し、液体が流体室61,62に供給される。
【0111】
このような構成によれば、流体噴射開口部30a,31aからの液体噴射による組織切除と、切除により発生する残渣及び排液を吸引路から吸引することができる。従って、術部を良好に視認しながら施術することができる。そして、吸引流路92を基体60内に形成していることから、前述した特許文献3のように、ウォータジェットカテーテルと排液吸引用カテーテルとを併設する構成に比べ小型の流体噴射装置を実現できる。
【0112】
なお、吸引流路92を設ける流体噴射部10の他の構成としては、実施形態1(図2、参照)のように、液体供給チューブ80と吸引チューブ91とを一体の接続チューブで形成し、入口流路35,36に連通する液体供給路81,82と吸引流路92に連通する吸引路と、を接続チューブに設ける構造としてもよい。
【0113】
このような構成にすれば、複数の液体供給路と、吸引路と、を1本の接続チューブに形成することにより、複数の液体供給路と吸引路とを備えていても小径で、構造が簡単な流体噴射部10を実現できる。
【0114】
また、前述した実施形態2及び変形例(図7,8、参照)のように、液体滞留室96または液体滞留室97を設ける構造を採用することもできる。
(実施形態5)
【0115】
続いて、実施形態5に係る流体噴射装置について図面を参照して説明する。実施形態5は、前述した実施形態1〜実施形態4が容積可変チャンバを二つ備える構造に対して、さらに多くの容積可変チャンバを備える構造としていることを特徴としている。ここでは、容積可変チャンバを4個備える構造を例示して説明する。
図11は、実施形態5に係る流体噴射部の1例を示し、(a)は液体の流動方向に沿って切断した断面図、(b)は(a)のA−A切断面を示す断面図、(c)は(a)のB−B切断面を示す断面図を示している。図11(b)に示すように、流体噴射部10は、基体60の外周側面の周方向に4個の容積可変チャンバ21〜24をそれぞれ離間して配設し構成されている。
【0116】
容積可変チャンバ21〜24は、図11(a),(b)に示すように円柱状の基体60の外周部に90度ずつ分割される位置に穿設された凹部内に配設されている。そして、容積可変チャンバ21と容積可変チャンバ22、容積可変チャンバ23と容積可変チャンバ24が互いに対向するように配設される。
【0117】
容積可変チャンバ21は、流体室61の上部開口部の周縁に固定され、流体室61を密閉封止するダイアフラム40と、ダイアフラム40の表面に設けられる圧電素子51とから構成されている。
【0118】
また、容積可変チャンバ22も容積可変チャンバ21と同様な構成であって、流体室62とダイアフラム41と圧電素子52とから構成される。同様に、容積可変チャンバ23は、流体室63とダイアフラム42と圧電素子53とから構成され、容積可変チャンバ24は、流体室64とダイアフラム43と圧電素子54とから構成される。流体室61〜64それぞれには、出口流路30,31,32,33と、入口流路35,36,37,38(図11(c)、参照)が連通されている。
【0119】
図11(a),(c)に示すように、基体60の尾部60bには接続管71〜74が植立されており、それぞれが入口流路35,36,37,38に連通している。さらに、接続管71〜74それぞれには接続流路71a,72a,73a,74aが開設されており、液体供給チューブ80に開設される液体供給路80a〜80dが嵌着接続されることにより、液体供給路80a〜80dと連通される。なお、容積可変チャンバ21〜24は、蓋筒体70によって封止され、容積可変チャンバ21〜24それぞれの上方には空間21a,22a,23a,24aが形成される。
【0120】
なお、実施形態5の構成は、容積可変チャンバを3個備える構成にも適合できる。
図12は、容積可変チャンバを3個備える構成を示す縦断面図である。図12において、流体噴射部10は、基体60の外周側面の周方向に3個の容積可変チャンバ21〜23をそれぞれ離間して配設し構成されている。
【0121】
容積可変チャンバ21〜23は、円柱状の基体60の外周部に120度ずつ分割される位置に穿設された凹部内に配設されている。容積可変チャンバ21は、流体室61の上部開口部の周縁に固定され、流体室61を密閉封止するダイアフラム40と、ダイアフラム40の表面に設けられる圧電素子51とから構成されている。
【0122】
また、容積可変チャンバ22,23も容積可変チャンバ21と同様な構成であって、容積可変チャンバ22は流体室62とダイアフラム41と圧電素子52とから構成される。容積可変チャンバ23は、流体室63とダイアフラム42と圧電素子53とから構成される。流体室61〜63それぞれには、出口流路30,31,32と、同数の入口流路(図示せず)が連通されている。
【0123】
なお、上述した実施形態5の構成においても、前述した実施形態1の第1変形例(図3、参照)のように、各入口流路それぞれに液体供給チューブを備える構造、外郭チューブを備える構造、第2変形例(図4、参照)のように、各入口流路に連通する1本の液体供給チューブを備える構造を採用することができる。
【0124】
また、第3変形例(図5、参照)のように、基体60の先端部に各出口流路それぞれに対応する突設部を設けて、これら突設部に流体噴射開口部を設ける構造が適合できる。
【0125】
また、第4変形例(図6、参照)のように、入口流路を1本とし、この入口流から各流体室に連通する接続流路を分岐する構造、あるいは、実施形態2(図7,8、参照)のように、入口流路と液体供給チューブとの間に液体滞留室を設ける構造も適合できる。
【0126】
このように、容積可変チャンバを4個または3個備える構成であっても、前述した実施形態1,2と同様な効果が得られる。
なお、容積可変チャンバは、5個以上設ける構成であっても前述した実施形態1,2の構成が適合できる。
(実施形態6)
【0127】
続いて、実施形態6に係る流体噴射装置について図面を参照して説明する。実施形態6は、前述した実施形態5に対して、吸引路をさらに設けたことを特徴とする。ここでは、容積可変チャンバを4個備える構成を例示して説明する。実施形態5(図11、参照)と異なる部分を中心に説明し、同じ機能部位には同じ符号を附している。
図13は、実施形態6に係る流体噴射部を示し、(a)は液体の流動方向に沿って切断した断面図、(b)は(a)のA−A切断面を示す断面図、(c)は(a)のB−B切断面を示す断面図を示している。図13(a),(b),(c)において、流体噴射部10は、基体60の先端部から尾部60bを貫通する吸引流路92が開設されている。
【0128】
吸引流路92は、基体60の断面方向の略中央部に設けられており、出口流路30〜33及び入口流路35〜38の液体流動方向に垂直な断面積よりも大きな断面積を有する。なお、吸引流路92の先端部には吸引開口部92aが設けられている。
【0129】
入口流路35〜38のそれぞれは、接続管71〜74に開設される接続流路71a,72a,73a,74aを介して液体供給チューブ80に開設される液体供給路80a〜80dのそれぞれに連通される。吸引流路92は、吸引接続管78に開設される接続流路78aを介して液体供給チューブ80に開設される吸引路80eに接続されている。
【0130】
液体供給路80a〜80dは、駆動制御部110(図1、参照)の内部または外部に備えられる輸液バッグに接続され、吸引路80eは、駆動制御部110の内部または外部に備えられる吸引装置に接続される。
【0131】
なお、接続管71〜74それぞれに対応する液体供給チューブと、吸引接続管78に接続される吸引チューブを個別に設ける構造としてもよく、この際、これらの液体供給チューブと吸引チューブとを内包する外郭チューブを設ける構成とすればなおよい。
【0132】
このような吸引流路92を設ける構成とすれば、流体噴射開口部からの液体噴射による組織切除と、組織切除による残渣及び排液を吸引路から吸引することができる。そして、吸引路を基体内に形成していることから、容積可変チャンバを3個または4個またはそれ以上設ける構成であっても、前述した特許文献3のように、ウォータジェットカテーテルと排液吸引用カテーテルとを併設する構成に比べ小型の流体噴射装置を実現できる。
【0133】
なお、以上説明した実施形態では、複数の容積可変チャンバと、複数の容積可変チャンバそれぞれに出口流路及び流体噴射開口部を備える各構成を説明したが、これら複数の容積可変チャンバの駆動方法によって様々な作用効果を実現できる。
【0134】
例えば、上記各実施形態における流体噴射装置100において、複数の前記容積可変チャンバの構成と、複数の前記容積可変チャンバそれぞれの駆動タイミングを一致させれば、流体噴射開口部個々の液体噴射速度、噴射量を同じとし、全体としての流体噴射量を増加し、切除能力を高めることができる。
【0135】
また、このようにすれば、複数の前記容積可変チャンバに対して入力する駆動信号を共通にできること、複数の容積可変チャンバの構成と寸法を同じにできることから、駆動信号を生成する駆動制御回路を含めて構造を簡素化することができる。
【0136】
また、複数の容積可変チャンバそれぞれの駆動タイミングをずらして駆動することができる。実施形態1(図2、参照)の構成を例にあげ説明すると、容積可変チャンバ21と容積可変チャンバ22に印加する駆動信号入力のタイミングをずらすことにより、容積可変チャンバ21,22の互いの駆動タイミングを変えることができる。従って、前述のタイミングを一致させる場合よりも切除能力が小さくなるので、このような制御を行うことで、弱い切除能力をもつ流体によって切除部を洗浄して視界を確保することが可能になる。一方を主切除用として用い、他方を洗浄用として使い分けることが可能になる。
【0137】
また、複数の前記容積可変チャンバのうち、少なくとも一つから噴射する流体の噴射速度、噴射量を、他と異なるように設定することができる。これは、複数の容積可変チャンバの寸法構成を変えること、あらかじめ複数の駆動信号波形を複数種用意しておき入力する駆動信号波形を選択的に変えることで実現できる。
【0138】
このようにすれば、切除部の硬度や状態に応じて、適切な噴射速度、噴射量に対応して容積可変チャンバ(流体噴射開口部)を選択して使用することが可能となる。
【0139】
さらに、複数の前記容積可変チャンバのうちのいくつかを選択的に駆動することができる。
このようにすれば、切除部の硬度や範囲に応じて、必要な容積可変チャンバ(流体噴射開口部)を選択して使用することができる。この際、選択する容積可変チャンバは、一つまたは複数または全部であってもよい。
【0140】
以上説明した、容積可変チャンバの駆動タイミングの組み合わせ、駆動する容積可変チャンバの選択は、駆動制御部110(図1、参照)内に設けられる駆動波形生成回路部または駆動制御回路部を調整装置112を操作して切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】実施形態1に係る流体噴射装置の概略構成の一例を示す説明図。
【図2】実施形態1に係る流体噴射部を示し、(a)は液体の流動方向に沿って切断した断面図、(b)は(a)のA−A切断面を示す断面図、(c)は(a)のB−B切断面を示す断面図、(d)は液体供給チューブを示す断面図。
【図3】実施形態1の第1変形例に係る流体噴射部を示す部分断面図。
【図4】実施形態1の第2変形例に係る流体噴射部を示す断面図。
【図5】実施形態1の第3変形例に係る流体噴射部を示す断面図。
【図6】実施形態1の第4変形例に係る流体噴射部を示す断面図であり、(a)は液体の流動方向に沿って切断した断面図、(b)は(a)のC−C切断面を示す断面図。
【図7】実施形態2に係る流体噴射部を示す断面図であり、(a)は液体の流動方向に沿って切断した部分断面図、(b)は(a)のD−D切断面を示す断面図。
【図8】実施形態2の変形例に係る液体噴射部の概略構成を示す部分断面図。
【図9】実施形態3に係る液体噴射部を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のE−E切断面を示す断面図。
【図10】実施形態4に係る流体噴射部を示し、(a)は液体の流動方向に沿って切断した切断面を示す断面図、(b)は(a)のF−F切断面を示す断面図。
【図11】実施形態5に係る流体噴射部の1例を示し、(a)は液体の流動方向に沿って切断した断面図、(b)は(a)のA−A切断面を示す断面図、(c)は(a)のB−B切断面を示す断面図。
【図12】容積可変チャンバを3個備える構成を示す縦断面図。
【図13】実施形態6に係る流体噴射部を示し、(a)は液体の流動方向に沿って切断した断面図、(b)は(a)のA−A切断面を示す断面図、(c)は(a)のB−B切断面を示す断面図。
【符号の説明】
【0142】
21,22…容積可変チャンバ、30,31…出口流路、30a,31a…流体噴射開口部、35,36…入口流路、40,41…ダイアフラム、61,62…流体室、80…液体供給チューブ、81,82…液体供給路、100…流体噴射装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の容積可変チャンバと、複数の容積可変チャンバそれぞれに連通する流体噴射開口部を有する流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
噴射される流体による手術は、血管等の脈管構造を保存しながら臓器実質を切開することが可能であり、さらに、切開部以外の生体組織に与える付随的損傷が軽微であることから患者負担が小さく、また、出血が少ないため出血が術野の視界を妨げないことから迅速な手術が可能であり、特に微小血管からの出血に難渋する肝切除等に多く臨床応用されている。
【0003】
このような噴射される流体による手術装置として、基端部に一つの開口部を有し、この開口部と対向する蒸気発生手段を有する液体チャンバを含み、液体チャンバは作動時にマイクロ液体ジェットを発生させるというマイクロ液体ジェット発生装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、高圧流体を通す流路を備え、先端部の流路断面形状を扁平にした噴射ノズルを有したウォータジェットカテーテルを備えたウォータジェット手術装置というものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、高圧流体を通す流路を備え、先端部に噴射ノズルを有したウォータジェットカテーテルと、このウォータジェットカテーテルとは別体で併設され先端部に吸引口を有すると共に、この吸引口を噴射ノズルと同位置か、前方に位置させた排液吸引用カテーテルとを備えたウォータジェット手術装置というものも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特表2003−500098号公報
【特許文献2】特開平6−90957号公報
【特許文献3】特開平5−285150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような特許文献1から特許文献3では共に、流体を噴射するノズルが、高速流体発生装置に対して一つ設けられており、切除能力を高めるためには噴射速度を高めると共に噴射量を増加させる。しかしながら、このようにすれば、水流が生体組織に深く入り込みすぎるということが考えられる。
【0008】
このような課題を解決するために、特許文献2に記載のように噴射ノズルの先端を扁平にすることが提案されているが、噴射ノズルを扁平にすることで、噴射面積が広くなり、十分な切除圧力が得られにくいという課題が生じる。
【0009】
また、特許文献3によれば、噴射ノズルを有するウォータジェットカテーテルとは別体の排液吸引用カテーテルを併設している。このような構成では、液体噴射(切除)と排液吸引とが同時に可能となるが、装置が大きくなり、微細な間隙の手術や、血管等の細管内に装置を挿入することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]本適用例に係る流体噴射装置は、外周面に複数の凹部が穿設された柱状の基体と、複数の前記凹部それぞれを封止するダイアフラムと前記凹部と前記ダイアフラムによってそれぞれ形成される複数の流体室とからなる複数の容積可変チャンバと、前記ダイアフラムの変位方向に略平行な複数の前記流体室それぞれの側壁に連通する出口流路と、前記出口流路の先端部に設けられる流体噴射開口部と、複数の前記流体室それぞれに連通する入口流路と、前記入口流路に連通する流体供給チューブと、が備えられ、前記流体室の容積を前記ダイアフラムにより縮小して前記流体噴射開口部から流体をパルス状に噴射することを特徴とする。
【0012】
本適用例によれば、複数の容積可変チャンバそれぞれに出口流路及び流体噴射開口部を設けていることから、各容積可変チャンバそれぞれにおいてダイアフラムによる容積縮小率を設定することにより、術部硬度に適切な流体の噴射速度、噴射量を得ることができる。
【0013】
また、上述したように、流体噴射開口部一つ一つを適切な設定としながら、複数の流体噴射開口部から流体を噴射できるので、流体噴射装置全体として流体噴射量を多くして、切除能力を高めることができる。
【0014】
[適用例2]上記適用例に係る流体噴射装置において、複数の前記容積可変チャンバそれぞれが、前記基体の外周側面の周方向に離間して配設されていることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、複数の容積可変チャンバを柱状の基体の外周側面の周方向に穿設される凹部内に配設しているため、突出部がない細い流体噴射部を構成することができ、微細な間隙の手術や、血管等の細管内に装置を挿入することが可能な流体噴射装置を実現できる。
【0016】
[適用例3]上記適用例に係る流体噴射装置において、複数の前記容積可変チャンバそれぞれが、平面方向に併設されていることが望ましい。
【0017】
このような構成の流体噴射装置は扁平形状となるが複数の流体噴射開口部を有していることから、前述した特許文献2のような単純に噴射ノズルを扁平にすることで、噴射面積が広くなり、十分な切除圧力が得られにくいという課題を解決できる。また、複数の流体開口部それぞれから流体を高速で噴射できるので長い術線の切除を可能にし、このことにより、切開手術以外の剥離切除が可能となる効果がある。
【0018】
[適用例4]上記適用例に係る流体噴射装置において、複数の前記入口流路それぞれに連通する前記流体供給チューブが備えられていることが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、容積可変チャンバと、内部に設けられる流体室と、出口流路(流体噴射開口部)と、入口流路と、流体供給チューブとが専用対応となり、複数の容積可変チャンバ間の流体噴射速度、噴射量を個々に設定可能になる他、ばらつきを減縮することができる。
【0020】
[適用例5]上記適用例に係る流体噴射装置において、前記基体の外周部に嵌着されると共に、前記流体供給チューブを内包する外郭チューブが、さらに備えられていることが好ましい。
【0021】
複数の入口流路それぞれに流体供給チューブを連通させる場合、流体噴射部の外周と流体チューブそれぞれの外周との間には段差ができることになる。そこで、これら流体供給チューブを内包するような外郭チューブを設けることにより、流体噴射部と外郭チューブの外周を概ね同じ外径とすれば上記段差を解消し、血管等の細間に流体噴射部を挿入または引き抜きを容易にし、組織を傷つけることを防止することができる。
【0022】
また、各流体供給チューブが非常に細く強度が十分とはいえない場合があるが、外郭チューブを設けることにより、流体供給チューブを保護することができ、取り扱いが容易となる。
【0023】
[適用例6]上記適用例に係る流体噴射装置において、前記流体供給チューブが、複数の前記入口流路に連通すると共に、複数の前記容積可変チャンバを密閉するように前記基体の外周部に嵌着されていることが好ましい。
【0024】
上述したように、容積可変チャンバは、基体の外周部に穿設された凹部内に配設される。流体供給チューブで容積可変チャンバを密閉することにより、液体を含む環境下において、容積可変チャンバに液体が付着することによるダイアフラムの駆動を妨げることを防止することができる。
【0025】
また、このような構成にすれば、複数の入口流路への流体供給と、容積可変チャンバの密閉と、を一つの流体供給チューブで行い、構造を簡素化することができる。
さらに、基体及び容積可変チャンバを含む流体噴射部が流体供給チューブ内に収納されることになり、流体噴射部を流体供給チューブの延長範囲に存在させることができるので、血管等の脈管構造に挿入しやすくなるという効果がある。
【0026】
[適用例7]上記適用例に係る流体噴射装置において、複数の前記流体室に対して共通の入口流路と、前記入口流路から分岐され、複数の前記流体室それぞれに連通される接続流路が設けられていることが好ましい。
【0027】
複数の容積可変チャンバを備え、これらに連通する入口流路に対応する液体供給チューブの数が増加する場合、流体供給チューブが互いに干渉して基体の外径(つまり、流体噴射部の外径)が大きくなってしまう。しかし、上述した適用例4による構成では、入口流路及び流体供給チューブを1本とし、基体内部において1本の入口流路から複数の流体室それぞれに連通する接続流路に分岐すれば小径の流体噴射部を実現できる。
【0028】
[適用例8]上記適用例に係る流体噴射装置において、前記基体の先端部に突設された複数の突起部に、複数の前記出口流路それぞれが連通されていることが好ましい。
【0029】
このような構成によれば、複数の出口流路それぞれが基体の先端部に突設される突起部に連通されている。従って、これら突起部に流体噴射開口部が設けられることになり、各流体噴射開口部と術部に対して良好な視界を得ることができる。
【0030】
[適用例9]上記適用例に係る流体噴射装置において、前記流体供給チューブが、複数の前記入口流路それぞれに連通する複数の流体供給路を有することが好ましい。
【0031】
このような構成によれば、複数の入口流路それぞれに対応する流体供給路を1本の流体供給チューブに形成することにより、構造を簡素化すると共に、基体の外径(つまり、流体噴射部の外径)を小さくすることができる。
【0032】
[適用例10]上記適用例に係る流体噴射装置において、前記入口流路と前記流体供給チューブの流体供給路との間に、流体滞留室が設けられていることが望ましい。
【0033】
流体室、入口流路、流体供給路がそのまま直列に連通される場合、パルス状の噴射の間に、流体供給路からの流体圧力により、不要な流体流動が発生することがある。そこで、流体滞留室を設けることにより流体滞留室内に充填されている流体が緩衝部となり、不要な流体流動の発生を抑制することができる。
【0034】
逆に、パルス状の噴射時には、流体滞留室内に充填されている流体が流体抵抗となり、入口流路から流体が逆流することを抑制することができる。
【0035】
[適用例11]上記適用例に係る流体噴射装置において、前記基体の先端部から尾部を貫通する吸引流路と、前記吸引流路に連通する吸引チューブが設けられていることが好ましい。
【0036】
このような構成によれば、流体噴射開口部からの液体噴射による組織切除と、組織切除による残渣及び排液を吸引流路から吸引することができる。そして、吸引流路を基体内に形成していることから、前述した特許文献3のように、ウォータジェットカテーテルと排液吸引用カテーテルとを併設する構成に比べ小型の流体噴射装置を実現できる。
【0037】
[適用例12]上記適用例に係る流体噴射装置において、前記流体供給チューブと前記吸引チューブとが一体の接続チューブで形成され、複数の前記入口流路に連通する流体供給路と、前記吸引流路に連通する吸引路と、が、前記接続チューブに設けられていることが望ましい。
【0038】
このような構成によれば、複数の流体供給路と、吸引路と、を1本の接続チューブに形成することにより、複数の流体供給路と吸引流路とを備えていても小径で、構造が簡単な流体噴射装置を実現できる。
【0039】
[適用例13]上記適用例に係る流体噴射装置において、複数の前記容積可変チャンバそれぞれの駆動タイミングが一致していることが好ましい。
【0040】
備えられる全ての容積可変チャンバの駆動タイミングを一致させることにより、全体としての流体噴射量を増加し、切除能力を高めることができる。
【0041】
[適用例14]上記適用例に係る流体噴射装置において、複数の前記容積可変チャンバそれぞれの駆動タイミングをずらしていることが望ましい。
【0042】
このような構成にすれば、各流体噴射開口部からの流体噴射のタイミングを変えることにより、例えば、前述のタイミングを一致させる場合よりも切除能力が小さくなるので、このような制御を行うことで、弱い切除能力をもつ流体によって切除部を洗浄して視界を確保することが可能になる。
【0043】
[適用例15]上記適用例に係る流体噴射装置において、複数の前記容積可変チャンバそれぞれから噴射する流体の噴射速度、噴射量が同等であることが望ましい。
【0044】
このような構成では、複数の容積可変チャンバの構成と寸法を同じにし、入力する駆動信号を共通にできるので、駆動信号を生成する駆動制御回路を含めて構造を簡素化することができる。
【0045】
[適用例16]上記適用例に係る流体噴射装置において、複数の前記容積可変チャンバのうち、少なくとも一つから噴射する流体の噴射速度、噴射量が、他と異なることが望ましい。
【0046】
このようにすれば、切除部の硬度や状態に応じて、適切な噴射速度、噴射量を選択して使用することが可能となる。
【0047】
[適用例17]上記適用例に係る流体噴射装置において、複数の前記容積可変チャンバのうちのいくつかを選択的に駆動することが望ましい。
【0048】
このようにすれば、切除部の硬度や範囲に応じて、必要な容積可変チャンバを選択して使用することができる。この際、選択する容積可変チャンバは、一つまたは複数または全部であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図6は実施形態1及びその変形例、図7,8は実施形態2、図9は実施形態3、図10は実施形態4、図11,12は実施形態5、図13は実施形態6に係る流体噴射装置を示している。
なお、以下の説明で参照する図は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
また、本発明による流体噴射装置は、インク等を用いた描画、細密な物体及び構造物の洗浄、手術用メス等様々に採用可能である。但し、以下に説明する実施の形態では、血管内に挿入し血栓等を除去する目的で用いるカテーテルの先端に設置することに適した流体噴射装置、あるいは生体組織を切開または切除することに好適な流体噴射装置を例示して説明する。従って、実施の形態にて用いる流体は、水または生理食塩水であり、以降、これら流体を総称して液体と表すことがある。
(実施形態1)
【0050】
図1は、実施形態1に係る流体噴射装置の概略構成の一例を示す説明図である。図1において、流体噴射装置100は、基本構成として液体を収容し、その液体を供給する液体供給部としての輸液バッグを含む駆動制御部110と、液体を脈動に変化させる流体噴射部10と、駆動制御部110と流体噴射部10とを連通する液体供給チューブ80と、を備えている。流体噴射部10は、液体を脈動に変化させて複数の液体噴射開口部から液滴200としてパルス状に高速噴射させる。
【0051】
駆動制御部110には、図示しない駆動波形生成回路部と駆動制御回路部とが備えられ、術部の硬度、切除範囲等の条件に対応して駆動波形を調整する調整装置112と、駆動条件等を表示する表示部111が備えられている。
【0052】
次に、図2を参照して本実施形態の流体噴射装置について説明する。
図2は、実施形態1に係る流体噴射部を示し、(a)は液体の流動方向に沿って切断した切断面を示す断面図、(b)は(a)のA−A切断面を示す断面図、(c)は(a)のB−B切断面を示す断面図、(d)は液体供給チューブの断面形状を示している。図2(a)〜(c)において、流体噴射部10は、内部に複数の容積可変チャンバ21,22を備えて構成されている。
【0053】
容積可変チャンバ21,22は、図2(b)に示すように円柱状の基体60の外周部に互いに対向する位置に穿設された凹部内に配設されている。
容積可変チャンバ21は、流体室61の上部開口部の周縁に固定されると共に、流体室61を密閉封止するダイアフラム40と、ダイアフラム40の表面に設けられる圧電素子51とから構成されている。
【0054】
一方、容積可変チャンバ22は、流体室62の上部開口部の周縁に固定され、流体室62を密閉封止するダイアフラム41と、ダイアフラム41の表面に設けられる圧電素子52とから構成されている。
従って、容積可変チャンバ21,22共に、基体60の外周部から突出する部位は存在しない。
【0055】
流体室61には、ダイアフラム40の変位方向に略平行な側壁と基体60の先端部60aに連通する出口流路30が形成され、出口流路30の先端部は流体噴射開口部30aである。
【0056】
また、流体室62には、ダイアフラム41の変位方向に略平行な側壁と基体60の先端部60aに連通する出口流路31が形成され、出口流路31の先端部は流体噴射開口部31aである。
【0057】
出口流路30,31は共に液体の流動方向に垂直な断面積が、流体室61,62の同方向の断面積よりもはるかに小さく設定される。従って、出口流路30と流体噴射開口部30a、出口流路31と流体噴射開口部31aで構成される部位はノズルを構成する。
【0058】
出口流路30と対向する位置には入口流路35が形成され、出口流路31と対向する位置には入口流路36が形成されている。入口流路35は流体室61と基体60の尾部60bの間を貫通し、入口流路36は流体室62と基体60の尾部60bの間を貫通している。
【0059】
また、基体60の尾部60bには、接続管71,72が植立されている。接続管71には接続流路71aが開設されており、一部が尾部60bから突出されている。接続流路71aは入口流路35に連通している。なお、接続流路71aの液体流動方向に垂直な断面積は入口流路35の同方向の断面積よりも大きい。接続流路72aは入口流路36に連通している。なお、接続流路72aの液体流動方向に垂直な断面積は入口流路36の同方向の断面積よりも大きい。
【0060】
基体60の外周部には蓋筒体70が嵌着されている。蓋筒体70は、基体60のほぼ全長にわたって設けられており、基体60と密着固定される。従って、容積可変チャンバ21,22はそれぞれ、空間21a,22aを有して密閉封止される。空間21a,22aは、ダイアフラム40,41の可動範囲を確保する大きさに設定される。
【0061】
基体60の尾部60bには、液体供給チューブ80が装着される。液体供給チューブ80は、図2(d)に示すように、液体供給路81,82が開設されている。液体供給路81は接続管71に嵌着され、液体供給路82は接続管72に嵌着されている。こうして、流体室61から液体供給路81まで、及び流体室62から液体供給路82までが連通される。
【0062】
液体供給チューブ80は、図1に示す駆動制御部110内の輸液バッグに連通し、輸液バッグから一定の圧力で液体が液体供給路81,82を通って流体室61,62まで供給される。
なお、液体供給チューブ80の外径は、蓋筒体70の外径とほぼ同じであり、流体噴射部10と液体供給チューブ80の外形は連続した形状となる。
【0063】
続いて、図1,2を参照して本実施形態による流体噴射装置100における液体の流動の概要を簡単に説明する。駆動制御部110内部には輸液バッグと、輸液バッグに接続された圧力発生部(共に図示は省略)が内蔵されている。圧力発生部は液体供給チューブ80に液体を送出するように接続されている。輸液バッグに収容されている液体は、圧力発生部によって一定の圧力で液体供給チューブ80(液体供給路81,82)を介して入口流路35,36に供給される。さらに液体は流体室61,62、出口流路30,31を通って流体噴射開口部30a,31aからパルス状に噴射される。
【0064】
なお、輸液バッグは、駆動制御部110から分離し、流体噴射部10に対して高い位置に配設して、輸液バッグと流体噴射部10との位置水頭の差によって生じる圧力差を利用して流体噴射部10に液体を一定の圧力で流入させる構成としてもよい。
【0065】
次に、流体噴射部10の動作について説明する。図2を参照して説明する。各容積可変チャンバの個別の基本動作は同じであるので、容積可変チャンバ21を例示して説明する。まず、駆動制御部110に含まれる駆動波形生成回路部によって形成された駆動波形を駆動制御回路部から圧電素子51,52に印加する。
【0066】
流体室61には、入口流路35から液体が供給される。ここで、圧電素子51に駆動信号が入力され、圧電素子51が充電され急激に圧電素子51が収縮したとすると、ダイアフラム40は流体室61の容積を縮小する方向に急激に凸状に変位する。その結果、流体室61内の圧力は、入口流路35側及び出口流路30側のそれぞれの合成イナータンスL1,L2が十分な大きさを有していれば急速に上昇して数気圧に達する。
【0067】
この圧力は、入口流路35に加えられていた圧力発生部による圧力よりはるかに大きいため、入口流路35側から流体室61内への液体の流入はその圧力によって減少し、出口流路30からの流出は増加する。しかし、入口流路35側の合成イナータンスL1は、出口流路30側の合成イナータンスL2よりも大きいため、入口流路35から流体室61内への液体の流入の減少量より出口流路30からの流出の増加量が大きい。
その結果、出口流路30を通して、流体噴射開口部30aからパルス状の流体吐出、つまり、高速の液滴200がパルス状に噴射される。
【0068】
一方、流体室61の容積を縮小した後、駆動電圧の電圧低下に伴い圧電素子51は放電し初期状態に復帰する。流体室61内は、入口流路35側からの液体流入量の減少と出口流路30からの液体流出の増加との相互作用で、圧力上昇後に低圧若しくは真空状態となり、入口流路35から液体が流体室61内に流入する。その後、圧電素子51の収縮があれば、流体噴射開口部30aから高速のパルス状の液滴を継続して噴射することができる。
【0069】
容積可変チャンバ22側においても同様な動作を行うので、流体噴射開口部30a,31aから同時に液滴が高速で噴射される。
【0070】
従って、上述した構成によれば、複数の容積可変チャンバ21,22それぞれに出口流路30,31及び流体噴射開口部30a,31aを設けていることから、各容積可変チャンバそれぞれにおいてダイアフラム40,41による容積縮小率を設定することにより、術部硬度に適切な流体の噴射速度、噴射量を得ることができる。
【0071】
また、流体噴射開口部30a,31aそれぞれの噴射条件を適切な設定としながら、流体噴射開口部30a,31aから同時に流体を噴射できるので、流体噴射装置100(流体噴射部10)全体として流体噴射量を多くして、切除能力を高めることができる。
【0072】
また、容積可変チャンバ21,22を柱状の基体60の外周の対向する側面に穿設される凹部内に配設しているため、突出部がない細い流体噴射部10を構成することができ、微細な間隙の手術や、血管等の細管内に装置を挿入することが可能な流体噴射装置を実現できる。
【0073】
また、液体供給チューブ80が、入口流路35,36それぞれに連通する複数の液体供給路81,82を有していることから、液体供給チューブ80の流体噴射部10への接続構造を簡素化すると共に、基体60の外径(つまり、流体噴射部の外径)を小さくすることができる。
(第1変形例)
【0074】
続いて、実施形態1の第1変形例について図面を参照して説明する。第1変形例は、複数の入口流路それぞれに連通する液体供給チューブが備えられていることに特徴を有している。従って、上述した実施形態1との相違個所について説明する。
図3は実施形態1の第1変形例に係る流体噴射部を示す部分断面図である。図3において、入口流路35に連通する接続流路71aを有する接続管71には、液体供給チューブ83が嵌着されている。一方、入口流路36に連通する接続流路72aを有する接続管72には、液体供給チューブ84が嵌着されている。液体供給チューブ83,84は、前述した輸液バッグに接続される。
【0075】
これら入口流路35,36に対応して設けられる液体供給チューブ83,84の外側には、液体供給チューブ83,84を内包する外郭チューブ90が設けられている。外郭チューブ90は、基体60の尾部60bに嵌着され、液体供給チューブ83,84の全長範囲に設けられることがより好ましい。外郭チューブ90の端部は、蓋筒体70の端部に当接する位置まで挿着され、外径は蓋筒体70の外径とほぼ同等とする。
【0076】
このような構成にすれば、容積可変チャンバ21,22と、内部に設けられる流体室61,62と、出口流路30,31(流体噴射開口部30a,31a)と、入口流路35,36と、液体供給チューブ83,84とがそれぞれ専用の組み合わせとなる。従って、複数の容積可変チャンバ間のばらつきを減縮することができる。また、流体噴射速度、噴射量を個々に設定することができる。
【0077】
さらに、外郭チューブ90を設け、流体噴射部10の外周(第1変形例では蓋筒体70の外周)と外郭チューブ90の外周を概ね同じ外径とすれば、血管等の細間に流体噴射部を挿入または引き抜きすることを容易にし、挿入、引き抜きにより組織を傷つけることを防止することができる。
【0078】
また、液体供給チューブ83,84は、非常に細く強度を十分に確保することが困難になる場合があるが、外郭チューブ90を設けることにより、液体供給チューブ83,84を保護することができ、取り扱いが容易となる。
(第2変形例)
【0079】
続いて、実施形態1の第2変形例について図面を参照して説明する。第2変形例は、流体供給チューブが複数の入口流路に連通すると共に、複数の容積可変チャンバを密閉するように基体の外周部に嵌着されていることを特徴とする。従って、実施形態1との相違個所を中心に説明する。
図4は実施形態1の第2変形例に係る流体噴射部を示す断面図である。図4において、流体噴射部10は、容積可変チャンバ21,22が配設された基体60の外周部に液体供給チューブ80が嵌着されて構成されている。
【0080】
基体60には先端部外周に鍔部60cが設けられている。また、流体室61に連通する入口流路35は尾部60bまで貫通している。一方、流体室62に連通する入口流路36は尾部60bまで貫通している。そして、入口流路35,36の両方が液体供給チューブ80の液体供給路85に連通される。
【0081】
液体供給チューブ80は、端部が基体60の鍔部60cに当接する位置まで挿入され、容積可変チャンバ21,22それぞれの上部を密閉封止している。なお、液体供給チューブ80の外径は、鍔部60cの外径とほぼ一致している。他の構成は前述した実施形態1(図2、参照)と同じである。
【0082】
従って、このような構成にすれば、液体供給チューブ80で容積可変チャンバ21,22を密閉することにより、液体を含む施術環境下において、容積可変チャンバ21,22(具体的には、ダイアフラム40,41及び圧電素子51,52)に液体が付着することによる容積可変チャンバ21,22の駆動を妨げることを防止することができる。
【0083】
また、このような構成にすれば、複数の入口流路への流体供給と、容積可変チャンバの密閉と、を一つの流体供給チューブで行うことができ、構造を簡素化することができる。
【0084】
さらに、基体60及び容積可変チャンバ21,22を含む流体噴射部10が液体供給チューブ80内に収納されることになり、流体噴射部10を液体供給チューブ80の延長範囲に存在させることができるので、血管等の脈管構造に挿入しやすくなるという効果がある。
(第3変形例)
【0085】
続いて、実施形態1の第3変形例について図面を参照して説明する。第3変形例は、基体の先端部に突設された突起部に、複数の出口流路それぞれが連通されていることを特徴とする。従って、実施形態1との相違個所を中心に説明する。
図5は、実施形態1の第3変形例に係る流体噴射部を示す断面図である。図5において、流体噴射部10は、流体室61,62それぞれに連通された出口流路30,31を有している。
【0086】
基体60の先端部60aには突起部としての吐出管75,76が植立されている。吐出管75には出口流路30に連通する流路75aが開設され、吐出管76には出口流路31に連通する流路76aが開設されている。流路75a,76aそれぞれの液体流動方向に垂直な断面積は、出口流路30,31それぞれの断面積と同じか、僅かに縮小されていることが望ましい。また、流路75a,76aの先端部には、液体噴射開口部が形成される。
【0087】
なお、吐出管75,76に対して、基体60から類似形状の突起部を基体60と一体で形成する構成としてもよい。
また、液体供給チューブと入口流路との接続構造は、前述した第1変形例(図3、参照)または第2変形例(図4、参照)に記載の構造を適合できる。
【0088】
従って、このような構成によれば、出口流路30,31それぞれが基体60の先端部に突設される突起部としての吐出管75,76に連通されている。これら突起部それぞれに流体噴射開口部が設けられることになり、各流体噴射開口部と術部に対して良好な視界を得ることができる。
(第4変形例)
【0089】
続いて、実施形態1の第4変形例について図面を参照して説明する。第4変形例は、複数の流体室に流体を供給する共通の入口流路と、この入口流路から分岐され、流体室それぞれに連通される接続流路が設けられていることを特徴とする。従って、実施形態1との相違個所を中心に説明する。
図6は、実施形態1の第4変形例に係る流体噴射部を示す断面図であり、(a)は液体の流動方向に沿って切断した断面図、(b)は(a)のC−C切断面を示す断面図である。図6(a),(b)において、流体噴射部10は、流体室61,62に対して共通の1本の入口流路65が設けられている。入口流路65は、基体60の断面方向の略中央部に設けられ、一方の端部は流体室61,62の底部に達する位置まで延在され、他方の端部は尾部60bを貫通している。
【0090】
入口流路65からは、流体室61に連通する接続流路66と、流体室62に連通する接続流路67と、が分岐されて形成されている。ここで、入口流路65は、流体室61,62に対して十分な液体供給が可能な断面積を有している。また、入口流路65と接続流路66または接続流路67の合成イナータンスが入口流路側の合成イナータンスL1であって、出口流路30または出口流路31それぞれの合成イナータンスL2よりも大きくなるように、入口流路65及び接続流路66,67の断面積、流路長さが設定されている。
【0091】
また、液体供給チューブ80は、前述した第2変形例(図4、参照)と同様に、端部が基体60の鍔部60cに当接する位置まで挿入され、基体60の外周部に嵌着されると共に容積可変チャンバ21,22それぞれの上部を密閉封止している。
【0092】
なお、容積可変チャンバ21,22の密閉は、前述した第1変形例(図3、参照)と同様に蓋筒体70にて行い、液体供給チューブ80を基体60の尾部60bの付近の外周部に嵌着させる構造としてもよい。
【0093】
また、図示は省略するが、入口流路65に連通する液体チューブ嵌着部を尾部60bから突設させ、この液体チューブ嵌着部に液体供給チューブ80を嵌着接続する構造としてもよい。その際、第1変形例(図3、参照)と同様に、液体供給チューブ80を内包する外郭チューブ90を設ける構造とすることがより好ましい。
【0094】
複数の容積可変チャンバを備え、これらに連通する入口流路に対応する液体供給チューブの数が増加する場合、液体供給チューブが互いに干渉して基体60の外径(つまり、流体噴射部10の外径)が大きくなってしまう。しかし、上述した第4変形例による構成では、入口流路65及び液体供給チューブ80を1本とし、基体60内部において1本の入口流路65から接続流路66,67に分岐すれば小径の流体噴射部10を実現できる。
(実施形態2)
【0095】
続いて、実施形態2に係る液体噴射装置について図面を参照して説明する。実施形態2は、入口流路と液体供給チューブの液体供給路との間に、液体滞留室が設けられていることを特徴としている。従って、前述した実施形態1(図2、参照)との相違個所を中心に説明する。
図7は、実施形態2に係る流体噴射部を示す断面図であり、(a)は液体の流動方向に沿って切断した部分断面図、(b)は(a)のD−D切断面を示す断面図である。図7(a),(b)において、流体噴射部10は、基体60の尾部60bに接続管95が嵌着され、この接続管95に液体供給チューブ80が嵌着されて構成されている。
【0096】
接続管95は基体60側に入口流路35,36の両方に連通し、入口流路35,36の容積よりもはるかに大きい容積を有する液体滞留室96が設けられている。接続管95には、液体滞留室96と液体供給チューブ80とを連通する接続開口部95aがさらに備えられている。なお、接続開口部95aの液体流動方向に垂直な断面積は、入口流路35,36の総断面積よりも大きい。
【0097】
また、液体供給チューブ80の外径は、蓋筒体70の外径とほぼ一致し、対向するそれぞれの端部が密接されている。
なお、液体滞留室の構成形態は様々であって、以下にその変形例の一つを説明する。
(実施形態2の変形例)
【0098】
続いて、実施形態2の変形例に係る液体噴射部を図面を参照して説明する。
図8は、実施形態2の変形例に係る液体噴射部の概略構成を示す部分断面図である。図8において、流体噴射部10は、基体60の尾部60bに液体滞留室97が設けられた液体供給チューブ80が嵌着されて構成されている。
【0099】
液体滞留室97は、入口流路35,36両方に連通し、入口流路35,36の容積よりもはるかに大きい容積を有して液体供給チューブ80の嵌着側端部に穿設されて構成される。液体供給チューブ80には、液体流動方向に垂直な液体滞留室97の断面積よりも小さい断面積を有する液体供給路80aが開設されている。そして、液体供給チューブ80は、液体滞留室97の内周部を基体60の尾部60bの外周部に嵌着することで基体60に装着される。
【0100】
流体室61,62、入口流路35,36、液体供給路80aがそのまま直列に連通される場合、パルス状の液滴噴射の間に、液体供給路80aからの液体圧力により、不要な液体流動が発生することがある。そこで、上述した実施形態2及び変形例に記載のように、液体滞留室96または液体滞留室97を設けることにより液体滞留室96,97の内部に充填されている液体が緩衝部となり、不要な液体流動の発生を抑制することができる。
【0101】
逆に、パルス状の液滴噴射の際には、液体滞留室96,97の内部に充填されている液体が抵抗となり、入口流路35,36から流体が逆流することを抑制することができる。
(実施形態3)
【0102】
続いて、実施形態3に係る液体噴射部について図面を参照して説明する。実施形態3は、複数の容積可変チャンバそれぞれが、平面方向に併設されていることを特徴としている。容積可変チャンバが二つ備えられている構成を例示して説明する。
図9は、実施形態3に係る液体噴射部を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のE−E切断面を示す断面図である。なお、(a)は後述する上枠を透視した状態を図示している。図9(a),(b)において、流体噴射部10は、容積可変チャンバ21,22が平面方向に併設され構成されている。
【0103】
容積可変チャンバ21は、下枠69に穿設された流体室61、流体室61の開口部を封止するダイアフラム40と、ダイアフラム40の上面に設けられる圧電素子51とから構成される。また、容積可変チャンバ22は、下枠69に穿設された流体室62、流体室62の開口部を封止するダイアフラム41と、ダイアフラム41の上面に設けられる圧電素子52とから構成されている。なお、容積可変チャンバ21,22それぞれの構成は実施形態1(図2、参照)と同じなので詳しい説明を省略する。
なお、ダイアフラム40,41を1体構成とすることもできる。
【0104】
下枠69に容積可変チャンバ21,22を実装した後、上枠68を下枠69に密着固定することで流体噴射部10が構成される。この際、容積可変チャンバ21,22の上方に空間68aが形成される。
【0105】
流体室61,62のそれぞれには、出口流路30,31及び入口流路35,36が連通されている。入口流路35,36の端部には、接続管71,72が設けられており、接続管71,72それぞれに液体供給チューブ83,84が嵌着され、接続流路71a,72aが入口流路35,36に連通されている。
【0106】
従って、このような構成の流体噴射装置は扁平形状となるが複数の流体噴射開口部を有していることから、前述した特許文献2のような単純に噴射ノズルを扁平にすることで、噴射面積が広くなり、十分な切除圧力が得られにくいという課題を解決できる。また、複数の流体開口部それぞれから流体を高速で噴射できるので長い術線の切除を可能にし、このことにより、切開手術以外の剥離切除が可能となる効果がある。液体噴射部は扁平形状となり、横並びの液体噴射開口部を有することになり長い術線の切除を可能にする。このことにより、被手術部の剥離切除が可能となる効果がある。
(実施形態4)
【0107】
続いて、実施形態4に係る流体噴射装置について図面を参照して説明する。実施形態4は、前述した実施形態1〜実施形態3の構成に対して、さらに吸引路が設けられていることを特徴とする。
図10は、実施形態4に係る流体噴射部を示し、(a)は液体の流動方向に沿って切断した切断面を示す断面図、(b)は(a)のF−F切断面を示す断面図である。図10(a),(b)において、流体噴射部10は、基体60の先端部60aから尾部60bを貫通する吸引流路92が開設されている。
【0108】
吸引流路92は、基体60の断面方向の略中央部に設けられており、出口流路30,31及び入口流路35,36の液体流動方向に垂直な断面積よりも大きな断面積を有する。なお、吸引流路92の先端部には吸引開口部92aが設けられ、他方の基端部は吸引チューブ91に連通されている。
【0109】
吸引チューブ91の一方の端部は、基体60の尾部60bに突設されたチューブ嵌着部60dに嵌着されると共に、他方の端部が駆動制御部110(図1、参照)の内部または外部に向けられる吸引装置(図示せず)に接続される。
【0110】
また、基体60の外周部には液体供給チューブ80が嵌着されている。液体供給チューブ80の内周部と吸引チューブ91の外周部とから構成される空間が液体供給路80aとなる。そして、この液体供給路80aに入口流路35,36が連通し、液体が流体室61,62に供給される。
【0111】
このような構成によれば、流体噴射開口部30a,31aからの液体噴射による組織切除と、切除により発生する残渣及び排液を吸引路から吸引することができる。従って、術部を良好に視認しながら施術することができる。そして、吸引流路92を基体60内に形成していることから、前述した特許文献3のように、ウォータジェットカテーテルと排液吸引用カテーテルとを併設する構成に比べ小型の流体噴射装置を実現できる。
【0112】
なお、吸引流路92を設ける流体噴射部10の他の構成としては、実施形態1(図2、参照)のように、液体供給チューブ80と吸引チューブ91とを一体の接続チューブで形成し、入口流路35,36に連通する液体供給路81,82と吸引流路92に連通する吸引路と、を接続チューブに設ける構造としてもよい。
【0113】
このような構成にすれば、複数の液体供給路と、吸引路と、を1本の接続チューブに形成することにより、複数の液体供給路と吸引路とを備えていても小径で、構造が簡単な流体噴射部10を実現できる。
【0114】
また、前述した実施形態2及び変形例(図7,8、参照)のように、液体滞留室96または液体滞留室97を設ける構造を採用することもできる。
(実施形態5)
【0115】
続いて、実施形態5に係る流体噴射装置について図面を参照して説明する。実施形態5は、前述した実施形態1〜実施形態4が容積可変チャンバを二つ備える構造に対して、さらに多くの容積可変チャンバを備える構造としていることを特徴としている。ここでは、容積可変チャンバを4個備える構造を例示して説明する。
図11は、実施形態5に係る流体噴射部の1例を示し、(a)は液体の流動方向に沿って切断した断面図、(b)は(a)のA−A切断面を示す断面図、(c)は(a)のB−B切断面を示す断面図を示している。図11(b)に示すように、流体噴射部10は、基体60の外周側面の周方向に4個の容積可変チャンバ21〜24をそれぞれ離間して配設し構成されている。
【0116】
容積可変チャンバ21〜24は、図11(a),(b)に示すように円柱状の基体60の外周部に90度ずつ分割される位置に穿設された凹部内に配設されている。そして、容積可変チャンバ21と容積可変チャンバ22、容積可変チャンバ23と容積可変チャンバ24が互いに対向するように配設される。
【0117】
容積可変チャンバ21は、流体室61の上部開口部の周縁に固定され、流体室61を密閉封止するダイアフラム40と、ダイアフラム40の表面に設けられる圧電素子51とから構成されている。
【0118】
また、容積可変チャンバ22も容積可変チャンバ21と同様な構成であって、流体室62とダイアフラム41と圧電素子52とから構成される。同様に、容積可変チャンバ23は、流体室63とダイアフラム42と圧電素子53とから構成され、容積可変チャンバ24は、流体室64とダイアフラム43と圧電素子54とから構成される。流体室61〜64それぞれには、出口流路30,31,32,33と、入口流路35,36,37,38(図11(c)、参照)が連通されている。
【0119】
図11(a),(c)に示すように、基体60の尾部60bには接続管71〜74が植立されており、それぞれが入口流路35,36,37,38に連通している。さらに、接続管71〜74それぞれには接続流路71a,72a,73a,74aが開設されており、液体供給チューブ80に開設される液体供給路80a〜80dが嵌着接続されることにより、液体供給路80a〜80dと連通される。なお、容積可変チャンバ21〜24は、蓋筒体70によって封止され、容積可変チャンバ21〜24それぞれの上方には空間21a,22a,23a,24aが形成される。
【0120】
なお、実施形態5の構成は、容積可変チャンバを3個備える構成にも適合できる。
図12は、容積可変チャンバを3個備える構成を示す縦断面図である。図12において、流体噴射部10は、基体60の外周側面の周方向に3個の容積可変チャンバ21〜23をそれぞれ離間して配設し構成されている。
【0121】
容積可変チャンバ21〜23は、円柱状の基体60の外周部に120度ずつ分割される位置に穿設された凹部内に配設されている。容積可変チャンバ21は、流体室61の上部開口部の周縁に固定され、流体室61を密閉封止するダイアフラム40と、ダイアフラム40の表面に設けられる圧電素子51とから構成されている。
【0122】
また、容積可変チャンバ22,23も容積可変チャンバ21と同様な構成であって、容積可変チャンバ22は流体室62とダイアフラム41と圧電素子52とから構成される。容積可変チャンバ23は、流体室63とダイアフラム42と圧電素子53とから構成される。流体室61〜63それぞれには、出口流路30,31,32と、同数の入口流路(図示せず)が連通されている。
【0123】
なお、上述した実施形態5の構成においても、前述した実施形態1の第1変形例(図3、参照)のように、各入口流路それぞれに液体供給チューブを備える構造、外郭チューブを備える構造、第2変形例(図4、参照)のように、各入口流路に連通する1本の液体供給チューブを備える構造を採用することができる。
【0124】
また、第3変形例(図5、参照)のように、基体60の先端部に各出口流路それぞれに対応する突設部を設けて、これら突設部に流体噴射開口部を設ける構造が適合できる。
【0125】
また、第4変形例(図6、参照)のように、入口流路を1本とし、この入口流から各流体室に連通する接続流路を分岐する構造、あるいは、実施形態2(図7,8、参照)のように、入口流路と液体供給チューブとの間に液体滞留室を設ける構造も適合できる。
【0126】
このように、容積可変チャンバを4個または3個備える構成であっても、前述した実施形態1,2と同様な効果が得られる。
なお、容積可変チャンバは、5個以上設ける構成であっても前述した実施形態1,2の構成が適合できる。
(実施形態6)
【0127】
続いて、実施形態6に係る流体噴射装置について図面を参照して説明する。実施形態6は、前述した実施形態5に対して、吸引路をさらに設けたことを特徴とする。ここでは、容積可変チャンバを4個備える構成を例示して説明する。実施形態5(図11、参照)と異なる部分を中心に説明し、同じ機能部位には同じ符号を附している。
図13は、実施形態6に係る流体噴射部を示し、(a)は液体の流動方向に沿って切断した断面図、(b)は(a)のA−A切断面を示す断面図、(c)は(a)のB−B切断面を示す断面図を示している。図13(a),(b),(c)において、流体噴射部10は、基体60の先端部から尾部60bを貫通する吸引流路92が開設されている。
【0128】
吸引流路92は、基体60の断面方向の略中央部に設けられており、出口流路30〜33及び入口流路35〜38の液体流動方向に垂直な断面積よりも大きな断面積を有する。なお、吸引流路92の先端部には吸引開口部92aが設けられている。
【0129】
入口流路35〜38のそれぞれは、接続管71〜74に開設される接続流路71a,72a,73a,74aを介して液体供給チューブ80に開設される液体供給路80a〜80dのそれぞれに連通される。吸引流路92は、吸引接続管78に開設される接続流路78aを介して液体供給チューブ80に開設される吸引路80eに接続されている。
【0130】
液体供給路80a〜80dは、駆動制御部110(図1、参照)の内部または外部に備えられる輸液バッグに接続され、吸引路80eは、駆動制御部110の内部または外部に備えられる吸引装置に接続される。
【0131】
なお、接続管71〜74それぞれに対応する液体供給チューブと、吸引接続管78に接続される吸引チューブを個別に設ける構造としてもよく、この際、これらの液体供給チューブと吸引チューブとを内包する外郭チューブを設ける構成とすればなおよい。
【0132】
このような吸引流路92を設ける構成とすれば、流体噴射開口部からの液体噴射による組織切除と、組織切除による残渣及び排液を吸引路から吸引することができる。そして、吸引路を基体内に形成していることから、容積可変チャンバを3個または4個またはそれ以上設ける構成であっても、前述した特許文献3のように、ウォータジェットカテーテルと排液吸引用カテーテルとを併設する構成に比べ小型の流体噴射装置を実現できる。
【0133】
なお、以上説明した実施形態では、複数の容積可変チャンバと、複数の容積可変チャンバそれぞれに出口流路及び流体噴射開口部を備える各構成を説明したが、これら複数の容積可変チャンバの駆動方法によって様々な作用効果を実現できる。
【0134】
例えば、上記各実施形態における流体噴射装置100において、複数の前記容積可変チャンバの構成と、複数の前記容積可変チャンバそれぞれの駆動タイミングを一致させれば、流体噴射開口部個々の液体噴射速度、噴射量を同じとし、全体としての流体噴射量を増加し、切除能力を高めることができる。
【0135】
また、このようにすれば、複数の前記容積可変チャンバに対して入力する駆動信号を共通にできること、複数の容積可変チャンバの構成と寸法を同じにできることから、駆動信号を生成する駆動制御回路を含めて構造を簡素化することができる。
【0136】
また、複数の容積可変チャンバそれぞれの駆動タイミングをずらして駆動することができる。実施形態1(図2、参照)の構成を例にあげ説明すると、容積可変チャンバ21と容積可変チャンバ22に印加する駆動信号入力のタイミングをずらすことにより、容積可変チャンバ21,22の互いの駆動タイミングを変えることができる。従って、前述のタイミングを一致させる場合よりも切除能力が小さくなるので、このような制御を行うことで、弱い切除能力をもつ流体によって切除部を洗浄して視界を確保することが可能になる。一方を主切除用として用い、他方を洗浄用として使い分けることが可能になる。
【0137】
また、複数の前記容積可変チャンバのうち、少なくとも一つから噴射する流体の噴射速度、噴射量を、他と異なるように設定することができる。これは、複数の容積可変チャンバの寸法構成を変えること、あらかじめ複数の駆動信号波形を複数種用意しておき入力する駆動信号波形を選択的に変えることで実現できる。
【0138】
このようにすれば、切除部の硬度や状態に応じて、適切な噴射速度、噴射量に対応して容積可変チャンバ(流体噴射開口部)を選択して使用することが可能となる。
【0139】
さらに、複数の前記容積可変チャンバのうちのいくつかを選択的に駆動することができる。
このようにすれば、切除部の硬度や範囲に応じて、必要な容積可変チャンバ(流体噴射開口部)を選択して使用することができる。この際、選択する容積可変チャンバは、一つまたは複数または全部であってもよい。
【0140】
以上説明した、容積可変チャンバの駆動タイミングの組み合わせ、駆動する容積可変チャンバの選択は、駆動制御部110(図1、参照)内に設けられる駆動波形生成回路部または駆動制御回路部を調整装置112を操作して切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】実施形態1に係る流体噴射装置の概略構成の一例を示す説明図。
【図2】実施形態1に係る流体噴射部を示し、(a)は液体の流動方向に沿って切断した断面図、(b)は(a)のA−A切断面を示す断面図、(c)は(a)のB−B切断面を示す断面図、(d)は液体供給チューブを示す断面図。
【図3】実施形態1の第1変形例に係る流体噴射部を示す部分断面図。
【図4】実施形態1の第2変形例に係る流体噴射部を示す断面図。
【図5】実施形態1の第3変形例に係る流体噴射部を示す断面図。
【図6】実施形態1の第4変形例に係る流体噴射部を示す断面図であり、(a)は液体の流動方向に沿って切断した断面図、(b)は(a)のC−C切断面を示す断面図。
【図7】実施形態2に係る流体噴射部を示す断面図であり、(a)は液体の流動方向に沿って切断した部分断面図、(b)は(a)のD−D切断面を示す断面図。
【図8】実施形態2の変形例に係る液体噴射部の概略構成を示す部分断面図。
【図9】実施形態3に係る液体噴射部を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のE−E切断面を示す断面図。
【図10】実施形態4に係る流体噴射部を示し、(a)は液体の流動方向に沿って切断した切断面を示す断面図、(b)は(a)のF−F切断面を示す断面図。
【図11】実施形態5に係る流体噴射部の1例を示し、(a)は液体の流動方向に沿って切断した断面図、(b)は(a)のA−A切断面を示す断面図、(c)は(a)のB−B切断面を示す断面図。
【図12】容積可変チャンバを3個備える構成を示す縦断面図。
【図13】実施形態6に係る流体噴射部を示し、(a)は液体の流動方向に沿って切断した断面図、(b)は(a)のA−A切断面を示す断面図、(c)は(a)のB−B切断面を示す断面図。
【符号の説明】
【0142】
21,22…容積可変チャンバ、30,31…出口流路、30a,31a…流体噴射開口部、35,36…入口流路、40,41…ダイアフラム、61,62…流体室、80…液体供給チューブ、81,82…液体供給路、100…流体噴射装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に複数の凹部が穿設された柱状の基体と、
複数の前記凹部それぞれを封止するダイアフラムと前記凹部と前記ダイアフラムによってそれぞれ形成される複数の流体室とからなる複数の容積可変チャンバと、
前記ダイアフラムの変位方向に略平行な複数の前記流体室それぞれの側壁に連通する出口流路と、
前記出口流路の先端部に設けられる流体噴射開口部と、
複数の前記流体室それぞれに連通する入口流路と、
前記入口流路に連通する流体供給チューブと、が備えられ、
前記流体室の容積を前記ダイアフラムにより縮小して前記流体噴射開口部から流体をパルス状に噴射することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
複数の前記容積可変チャンバそれぞれが、前記基体の外周側面の周方向に離間して配設されていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項3】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
複数の前記容積可変チャンバそれぞれが、平面方向に併設されていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の流体噴射装置において、
複数の前記入口流路それぞれに連通する前記流体供給チューブが備えられていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項5】
請求項4に記載の流体噴射装置において、
前記基体の外周部に嵌着されると共に、前記流体供給チューブを内包する外郭チューブが、さらに備えられていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項6】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
前記流体供給チューブが、複数の前記入口流路に連通すると共に、複数の前記容積可変チャンバを密閉するように前記基体の外周部に嵌着されていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の流体噴射装置において、
複数の前記流体室に対して共通の前記入口流路と、
前記入口流路から分岐され、複数の前記流体室それぞれに連通される接続流路が設けられていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項8】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
前記基体の先端部に突設された複数の突起部に、複数の前記出口流路それぞれが連通されていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項9】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
前記流体供給チューブが、複数の前記入口流路それぞれに連通する複数の流体供給路を有することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項10】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
前記入口流路と前記流体供給チューブの流体供給路との間に、流体滞留室が設けられていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項11】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
前記基体の先端部から尾部を貫通する吸引流路と、
前記吸引流路に連通する吸引チューブが設けられていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項12】
請求項1または請求項11に記載の流体噴射装置において、
前記流体供給チューブと前記吸引チューブとが一体の接続チューブで形成され、
複数の前記入口流路に連通する流体供給路と、前記吸引流路に連通する吸引路と、が、前記接続チューブに設けられていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項13】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
複数の前記容積可変チャンバそれぞれの駆動タイミングが一致していることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項14】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
複数の前記容積可変チャンバそれぞれの駆動タイミングをずらしていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項15】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
複数の前記容積可変チャンバそれぞれから噴射する流体の噴射速度、噴射量が同等であることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項16】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
複数の前記容積可変チャンバのうち、少なくとも一つから噴射する流体の噴射速度、噴射量が、他と異なることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項17】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
複数の前記容積可変チャンバのうちのいくつかを選択的に駆動することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項1】
外周面に複数の凹部が穿設された柱状の基体と、
複数の前記凹部それぞれを封止するダイアフラムと前記凹部と前記ダイアフラムによってそれぞれ形成される複数の流体室とからなる複数の容積可変チャンバと、
前記ダイアフラムの変位方向に略平行な複数の前記流体室それぞれの側壁に連通する出口流路と、
前記出口流路の先端部に設けられる流体噴射開口部と、
複数の前記流体室それぞれに連通する入口流路と、
前記入口流路に連通する流体供給チューブと、が備えられ、
前記流体室の容積を前記ダイアフラムにより縮小して前記流体噴射開口部から流体をパルス状に噴射することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
複数の前記容積可変チャンバそれぞれが、前記基体の外周側面の周方向に離間して配設されていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項3】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
複数の前記容積可変チャンバそれぞれが、平面方向に併設されていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の流体噴射装置において、
複数の前記入口流路それぞれに連通する前記流体供給チューブが備えられていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項5】
請求項4に記載の流体噴射装置において、
前記基体の外周部に嵌着されると共に、前記流体供給チューブを内包する外郭チューブが、さらに備えられていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項6】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
前記流体供給チューブが、複数の前記入口流路に連通すると共に、複数の前記容積可変チャンバを密閉するように前記基体の外周部に嵌着されていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の流体噴射装置において、
複数の前記流体室に対して共通の前記入口流路と、
前記入口流路から分岐され、複数の前記流体室それぞれに連通される接続流路が設けられていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項8】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
前記基体の先端部に突設された複数の突起部に、複数の前記出口流路それぞれが連通されていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項9】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
前記流体供給チューブが、複数の前記入口流路それぞれに連通する複数の流体供給路を有することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項10】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
前記入口流路と前記流体供給チューブの流体供給路との間に、流体滞留室が設けられていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項11】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
前記基体の先端部から尾部を貫通する吸引流路と、
前記吸引流路に連通する吸引チューブが設けられていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項12】
請求項1または請求項11に記載の流体噴射装置において、
前記流体供給チューブと前記吸引チューブとが一体の接続チューブで形成され、
複数の前記入口流路に連通する流体供給路と、前記吸引流路に連通する吸引路と、が、前記接続チューブに設けられていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項13】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
複数の前記容積可変チャンバそれぞれの駆動タイミングが一致していることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項14】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
複数の前記容積可変チャンバそれぞれの駆動タイミングをずらしていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項15】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
複数の前記容積可変チャンバそれぞれから噴射する流体の噴射速度、噴射量が同等であることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項16】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
複数の前記容積可変チャンバのうち、少なくとも一つから噴射する流体の噴射速度、噴射量が、他と異なることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項17】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
複数の前記容積可変チャンバのうちのいくつかを選択的に駆動することを特徴とする流体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−214192(P2009−214192A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57410(P2008−57410)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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