説明

流体噴射装置

【課題】第一の流体を噴射する噴射口と第二の流体を噴射する噴射口とが近接していた場合であっても、流体噴射ヘッドの内部の第二の流体に第一の流体が混合することを防止できる流体噴射装置を提供する。
【解決手段】第一流体を噴射する第一流体噴射口47Aと第二流体を噴射する第二流体噴射口47Bとが近接してそれぞれ複数形成された流体噴射ヘッド3と、第二流体噴射口47Bから流体噴射ヘッド3の内部への第一流体の浸入を防止する第一流体浸入防止機構PMと、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体を噴射可能な噴射ヘッドを備え、この流体噴射ヘッドから各種の流体を被記録材等に向けて噴射する流体噴射装置が知られている。このような流体噴射装置として、ノズルの目詰まりを防止するインクジェット装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このインクジェット装置は、クリーニング時にノズルの前面をワイパーブレードにより拭き取るように構成されている。
【特許文献1】特開昭59−131464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の液体噴射装置では、従来よりも高粘度の流体(インク)を噴射する場合、ワイピングの際に、ノズルの形成面に増粘した流体をワイパーブレードにより擦り付けてダメージを与えてしまう。また、ワイピングの際にノズルの形成面に十分な流体が無いと乾拭きとなり、ノズルの形成面にダメージを与えてしまう。
【0004】
このようなダメージを防止するために、ワイピングをすることなくノズルの周辺に残留した流体をノズルから吸引することが考えられる。
しかし、流体の供給圧がやや負圧となるように設定されており、さらに濃色流体を噴射する濃色用ノズルと淡色流体を噴射する淡色用ノズルとが近接して設けられているため、淡色用ノズルの周辺に残留した濃色流体が淡色用ノズルからヘッド内部に吸引され、淡色流体に混色してしまうという課題がある。
このような場合、淡色流体に混入した濃色流体の影響を排除するために多量のフラッシングが必要となり、淡色流体の無駄な消費やフラッシング時間の増加等の要因となっている。
【0005】
そこで、この発明は、噴射口の形成面のダメージを防止すると共に、第一の流体を噴射する噴射口と第二の流体を噴射する噴射口とが近接していた場合であっても、流体噴射ヘッドの内部の第二の流体に第一の流体が混合することを防止できる流体噴射装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の流体噴射装置は、第一流体を噴射する第一流体噴射口と第二流体を噴射する第二流体噴射口とが近接してそれぞれ複数形成された流体噴射ヘッドと、前記第二流体噴射口から前記流体噴射ヘッドの内部への前記第一流体の浸入を防止する第一流体浸入防止機構と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このように構成することで、第一流体噴射口および第二流体噴射口からそれぞれ第一流体および第二流体が噴射される。このとき、第一流体噴射口と第二流体噴射口は近接して設けられているので、第二流体噴射口の周辺には、第一流体や第一流体と第二流体との混合流体が残留する。ここで、流体噴射装置は第一流体浸入防止機構を備えているので、第二流体噴射口から第一流体や第一流体を含む混合流体が浸入して流体噴射ヘッド内部の第二流体が汚染されることが防止できる。
したがって、本発明の流体噴射装置によれば、第一流体を噴射する第一流体噴射口と第二流体を噴射する第二流体噴射口とが近接していた場合であっても、流体噴射ヘッドの内部の第二流体に第一流体が混合することを防止し、第二流体の汚染を防止することができる。
【0008】
また、本発明の流体噴射装置は、前記第一流体は濃色流体であり、前記第二流体は淡色流体であることを特徴とする。
【0009】
このように構成することで、第一流体噴射口および第二流体噴射口からそれぞれ濃色流体および淡色流体が噴射される。このとき、第一流体噴射口と第二流体噴射口は近接して設けられているので、第二流体噴射口の周辺には、濃色流体や濃色流体と淡色流体との混色流体が残留する。ここで、流体噴射装置は第一流体浸入防止機構を備えているので、第二流体噴射口から流体噴射ヘッドの内部に濃色流体や濃色流体を含む混色流体が浸入することが防止できる。また、濃色流体や濃色流体と淡色流体との混色流体を第一流体噴射口から吸引させ、これらをワイピングすることなく除去することができる。
したがって、流体噴射ヘッドの内部の淡色流体に濃色流体が混入することが防止され、淡色流体に混入した濃色流体の影響を排除するためのフラッシングが必要なくなる。これにより、淡色流体の消費量を抑制できるだけでなく、フラッシング時間を短縮することが可能となる。また、ワイピングによる噴射口の形成面のダメージを防止することができる。
【0010】
また、本発明の流体噴射装置は、前記第一流体浸入防止機構は、前記第一流体噴射口に対して所定供給圧で前記第一流体を供給する第一流体供給系と、前記第二流体噴射口に対して前記所定供給圧よりも高圧で前記第二流体を供給する第二流体供給系と、を備えることを特徴とする。
【0011】
このように構成することで、第一流体噴射口および第二流体噴射口の周辺に残留した第一流体や第一流体と第二流体との混合流体が流体噴射ヘッドに吸引される場合であっても、供給圧の低い第一流体噴射口から第一流体供給系に吸引される。これにより、第二流体噴射口から流体噴射ヘッドの内部に第一流体や第一流体と第二流体との混合流体が浸入することを防止できる。
【0012】
また、本発明の流体噴射装置は、前記第一流体供給系の最上流に配置される第一流体貯留容器が、前記第二流体供給系の最上流に配置される第二流体貯留容器よりも鉛直方向下方側に配置されていることを特徴とする。
【0013】
このように構成することで、第一流体噴射口における第一流体の水頭圧は第二流体噴射口における第二流体の水頭圧よりも低くなる。これにより、第一流体噴射口における第一流体の供給圧を第二流体噴射口における第二流体の供給圧よりも低くすることができ、第一流体噴射口および第二流体噴射口の周辺に残留した第一流体や第一流体と第二流体との混合流体を供給圧の低い第一流体噴射口から第一流体供給系に吸引させることができる。
したがって、第二流体噴射口から流体噴射ヘッドの内部に第一流体や第一流体と第二流体との混合流体が浸入することを防止できる。
【0014】
また、本発明の流体噴射装置は、前記第一流体浸入防止機構は、前記第二流体供給系の流路抵抗を前記第一流体供給系の流路抵抗よりも増加させる流路抵抗調整部を備えることを特徴とする。
【0015】
このように構成することで、第二流体供給系に第二流体を逆流させる際の流路抵抗が第一流体供給系に第一流体を逆流させる際の流路抵抗よりも大きくなる。これにより、第二流体噴射口に残留した第一流体や第一流体と第二流体の混合流体が第一流体供給系に吸引されやすくなり、第二流体供給系に吸引されることを防止できる。
【0016】
また、本発明の流体噴射装置は、前記第一流体浸入防止機構は、前記第一流体供給系の途中に配置され前記第一流体を貯留する所定容積の第一流体貯留部と、前記第二流体供給系の途中に配置され前記第二流体を貯留する前記所定容積よりも小さい容積の第二流体貯留部と、を備えることを特徴とする。
【0017】
このように構成することで、第二流体供給系に第二流体を逆流させる際の流路抵抗が第一流体供給系に第一流体を逆流させる際の流路抵抗よりも大きくなる。これにより、第二流体噴射口に残留した第一流体や第一流体と第二流体の混合流体が第一流体供給系に吸引されやすくなり、第二流体供給系に吸引されることを防止できる。
【0018】
また、本発明の流体噴射装置は、前記第一流体浸入防止機構は、前記第一流体供給系の前記第一流体の供給圧を減圧する減圧ポンプを備えることを特徴とする。
【0019】
このように構成することで、減圧ポンプによって第一流体供給系の第一流体の供給圧を減圧し、第一流体噴射口における第一流体の供給圧を第二流体噴射口における第二流体の供給圧よりも低圧にすることができる。したがって、第一流体噴射口および第二流体噴射口の周辺に残留した第一流体や第一流体と第二流体との混合流体を供給圧の低い第一流体噴射口から第一流体供給系に吸引させることができる。
【0020】
また、本発明の流体噴射装置は、前記第一流体浸入防止機構は、前記第二流体供給系の前記第二流体の供給圧を加圧する加圧ポンプを備えることを特徴とする。
【0021】
このように構成することで、加圧ポンプによって第二流体供給系の第二流体の供給圧を加圧し、第二流体噴射口における第二流体の供給圧を第一流体噴射口における第一流体の供給圧よりも高圧にすることができる。したがって、第一流体噴射口および第二流体噴射口の周辺に残留した第一流体や第一流体と第二流体との混合流体が第二流体噴射口から第二流体供給系に吸引されることを防止できる。
【0022】
また、本発明の流体噴射装置は、前記第一流体浸入防止機構は、前記流体噴射ヘッドの前記第一流体噴射口の周辺に形成された親水処理膜と、前記第二流体噴射口の周辺に形成された撥水処理膜と、を備えることを特徴とする。
【0023】
このように構成することで、第一流体や第一流体を含む混合流体を撥水処理膜によって第二流体噴射口の周辺から排除することができる。また、第一流体や第一流体を含む混合流体を第一流体噴射口に周辺の親水処理膜上に集めることができる。これにより、第一流体や第一流体を含む混合流体が第二流体噴射口へ浸入することが防止される。
【0024】
また、本発明の流体噴射装置は、前記第一流体浸入防止機構は、前記第二流体噴射口と、前記第二流体噴射口よりも径が大きく形成された前記第一流体噴射口と、を備えることを特徴とする。
【0025】
このように構成することで、第一流体噴射口の流路抵抗を第二流体噴射口の流路抵抗よりも小さくし、第一流体や第一流体を含む混合流体を第一流体噴射口から吸引させやすくすることができる。
【0026】
また、本発明の流体噴射装置は、前記第一流体浸入防止機構は、前記第一流体噴射口が前記第二流噴射口よりも鉛直方向下方側に形成された前記流体噴射ヘッドの噴射面を備えることを特徴とする。
【0027】
このように構成することで、噴射面の第一流体噴射口の周辺に残留した第一流体が第二流体噴射口側へ移動することが防止される。また、第一流体を含む混合流体は、鉛直方向上方側の第二流体噴射口側から鉛直方向下方側の第一流体噴射口側へと流下する。これにより、噴射面の第二流体噴射口の周辺に第一流体や第一流体を含む混合流体が残留することが防止される。
【0028】
また、本発明の流体噴射装置は、前記第一流体浸入防止機構は、前記第一流体噴射口が前記第二流噴射口よりも鉛直方向下方側に位置するように前記流体噴射ヘッドを傾斜させる流体噴射ヘッド傾斜部を備えることを特徴とする。
【0029】
このように構成することで、流体噴射ヘッドを傾斜させ、第一流体噴射口の周辺に残留した第一流体が第二流体噴射口側へ移動することを防止できる。また、第一流体を含む混合流体を、鉛直方向上方側の第二流体噴射口側から鉛直方向下方側の第一流体噴射口側へと流下させることができる。これにより、噴射面の第二流体噴射口の周辺に第一流体や第一流体を含む混合流体が残留することが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
<第一実施形態>
以下、本発明に係る液体噴射装置の第一実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、本発明に係る液体噴射装置として、インクジェット式プリンタ(以下、プリンタ1という)を例示する。本実施形態では簡略化のため、濃色インク(第一流体)と淡色インク(第二流体)の二種類のインクを用いるプリンタ1について説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係るプリンタ1の概略構成を示す一部分解図である。
プリンタ1は、サブタンク2A,2B及び記録ヘッド3を搭載したキャリッジ4と、プリンタ本体5とから概略構成される。
プリンタ本体5には、キャリッジ4を往復移動させるキャリッジ移動機構と、記録ヘッド3に供給するインクを貯留したインクカートリッジ6A,6Bが設けられている。
一方のインクカートリッジ6Aには、例えば、黒色(K)等の濃色インクが貯留されている。他方のインクカートリッジ6Bには、例えば、黄色(Y)等の淡色インクが貯留されている。
【0032】
キャリッジ移動機構は、プリンタ本体5の幅方向に架設されたガイド軸8と、パルスモータ9と、パルスモータ9の回転軸に接続されてこのパルスモータ9によって回転駆動される駆動プーリー10と、駆動プーリー10とはプリンタ本体5の幅方向の反対側に設けられた遊転プーリー11と、駆動プーリー10と遊転プーリー11との間に掛け渡されてキャリッジ4に接続されたタイミングベルト12と、から構成されている。
そして、パルスモータ9を駆動することで、キャリッジ4がガイド軸8に沿って主走査方向に往復移動するように構成されている。
【0033】
また、プリンタ本体5には記録紙(不図示)を搬送する紙送り機構や、記録ヘッド3の各ノズルから増粘したインクを吸引するクリーニング動作等に用いられるキャッピング機構14等が設けられている。
紙送り機構は、紙送りモータMやこの紙送りモータMによって回転駆動される紙送りローラ(不図示)等から構成され、記録紙を記録(印字・印刷)動作に連動させてプラテン13の上に順次送り出す。
【0034】
キャッピング機構14は、キャップ部材15およびキャップ部材15の底壁に連結された吸引ポンプ(不図示)等から構成されている。
キャップ部材15は、ゴム等の弾性材をトレイ形状に成型した部材によって構成してあり、ホームポジションに配設されている。このホームポジションは、キャリッジ4の移動範囲内であって記録領域よりも外側の端部領域に設定され、電源オフ時や長時間に亘って記録が行われなかった場合にキャリッジ4が位置する場所である。
【0035】
ホームポジションにキャリッジ4が位置する場合には、キャップ部材15が記録ヘッド3のノズル基板43(図3参照)の表面(即ち、ノズル開口面43a)に当接して封止する。この封止状態で吸引ポンプを作動させると、キャップ部材15の内部が減圧されて、記録ヘッド3内のインクがノズル47A,47Bから強制的に排出される。
また、キャップ部材15は、記録ヘッド3による記録動作前や記録動作中等において、増粘したインクや気泡等を排出するためにインク滴を吐出するフラッシング処理においてインク滴を受ける。
【0036】
図2は記録ヘッド3の構成を説明する断面図、図3は記録ヘッド3の要部断面図である。本実施形態における記録ヘッド3は、導入針ユニット17、ヘッドケース18、流路ユニット19及びアクチュエータユニット20を主な構成要素としている。
【0037】
図2に示すように、導入針ユニット17の上面にはフィルタ21を介在させた状態で2本のインク導入針22が横並びで取り付けられている。これらのインク導入針22には、サブタンク2A,2Bがそれぞれ装着される。また、導入針ユニット17の内部には、各インク導入針22に対応したインク導入路23が形成されている。
このインク導入路23の上端はフィルタ21を介してインク導入針22に連通し、下端はパッキン24を介してヘッドケース18内部に形成されたケース流路25と連通する。
【0038】
サブタンク2A,2Bは、ポリプロピレン等の樹脂製材料によって成型されている。このサブタンク2A,2Bには、インク室27A,27Bとなる凹部が形成され、この凹部の開口面に透明な弾性シート26A,26Bを貼設してインク室27A,27Bが区画されている。
また、サブタンク2A,2Bの下部にはインク導入針22が挿入される針接続部28が下方に向けて突設されている。サブタンク2A,2Bにおけるインク室27A,27Bは、底の浅いすり鉢形状をしている。その側面における上下中央よりも少し下の位置には、針接続部28との間を連通する接続流路29の上流側開口が臨んでいる。この上流側開口にはインクを濾過するタンク部フィルタ30が取り付けられている。
針接続部28の内部空間にはインク導入針22が液密に嵌入されるシール部材31が嵌め込まれている。
【0039】
サブタンク2A,2Bのインク室27A、27Bは、図4に示すように、淡色インク(第二流体)を貯留するインク室27B(第二流体貯留部)の容積が、濃色インク(第一流体)を貯留するインク室27A(第一流体貯留部)の容積よりも小さくなるように形成されている。
サブタンク2A,2Bには、インク室27A,27Bに連通する連通溝部32A’,32B’を有する延出部32A,32Bが形成されている。この延出部32A,32Bの上面にはインク流入口33A,33Bが突設されている。
【0040】
インク流入口33A,33Bには、インクカートリッジ6A,6Bに貯留されたインクを供給するインク供給チューブ34A,34Bが接続される。淡色インクを供給するインク供給チューブ34Bの途中には、流路抵抗調整弁35(流路抵抗調整部)が設けられている。
流路抵抗調整弁35は、例えば、弁を開閉することで流路面積を調整し、流路抵抗を調整可能に構成されている。インク供給チューブ34Bは、この流路抵抗調整弁35により、濃色インクを供給するインク供給チューブ34Bよりも流路抵抗が大きくなるように調整されている。
インク供給チューブ34A,34Bを通過したインクは、インク流入口33A,33Bから連通溝部32A’,32B’を通過してインク室27A,27Bに流入する。
【0041】
図2に示すように、弾性シート26A,26Bは、インク室27A,27Bを収縮させる方向と膨張させる方向とに変形可能である。そして、この弾性シート26A,26Bの変形によるダンパ機能によって、インクの圧力変動が吸収される。すなわち、弾性シート26A,26Bの作用によってサブタンク2A,2Bが圧力ダンパとして機能する。従って、インクは、サブタンク2A,2B内で圧力変動が吸収された状態で記録ヘッド3側に供給される。
【0042】
ヘッドケース18は、図3に示すように、合成樹脂製の中空箱体状部材である。ヘッドケース18は、下端面に流路ユニット19を接合し、内部に形成された収容空部37内にアクチュエータユニット20を収容している。ヘッドケース18は、図2に示すように、流路ユニット19側とは反対側の上端面にパッキン24を介在した状態で導入針ユニット17を取り付けるようになっている。
【0043】
ヘッドケース18の内部には、高さ方向を貫通してケース流路25が設けられている。このケース流路25の上端は、パッキン24を介して導入針ユニット17のインク導入路23と連通するようになっている。
また、ケース流路25の下端は、流路ユニット19内の共通インク室44に連通するようになっている。したがって、インク導入針22から導入されたインクは、インク導入路23及びケース流路25を通じて共通インク室44側に供給される。
【0044】
ヘッドケース18の収容空部37内に収容されるアクチュエータユニット20は、櫛歯状に列設された複数の圧電振動子38と、この圧電振動子38が接合される固定板39と、プリンタ本体側からの駆動信号を圧電振動子38に供給する配線部材としてのフレキシブルケーブル40とから構成される。各圧電振動子38は、固定端部側が固定板39上に接合され、自由端部側が固定板39の先端面よりも外側に突出している。即ち、各圧電振動子38は、所謂片持ち梁の状態で固定板39上に取り付けられている。
また、各圧電振動子38を支持する固定板39は、例えば厚さ1mm程度のステンレス鋼によって構成されている。そして、アクチュエータユニット20は、固定板39の背面を、収容空部37を区画するケース内壁面に接着することで収容空部37内に収納・固定されている。
【0045】
流路ユニット19は、振動板41、流路基板42及びノズル基板43からなる流路ユニット構成部材を積層し、各基板を接着剤で接合して一体化することにより作製されている。流路ユニット19は、共通インク室44からインク供給口45及び圧力室46を通りノズル47A(47B)に至るまでの一連のインク流路(液体流路)を形成している。
圧力室46は、ノズル47A(47B)の配列方向(図5参照)に対して直交する方向に細長い室として形成されている。
共通インク室44は、ケース流路25と連通し、インク導入針22側からのインクが導入される室である。そして、この共通インク室44に導入されたインクは、インク供給口45を通じて各圧力室46に分配供給される。
【0046】
図5は、ノズル基板43の底面図である。ノズル基板43は、図5に示すように、ドット形成密度に対応したピッチ(例えば180dpi)で複数のノズル47A,47Bを列状に開設した金属製の薄い板材である。
ここで、濃色インクを噴射するノズル47A(第一流体噴射口)と淡色インクを噴射するノズル47B(第二流体噴射口)とは、それぞれ隣接して設けられている。また、ノズル47Aの径D1は、ノズル47Bの径D2よりも大きくなるように形成されている。
【0047】
図6はノズル47A,47B近傍の拡大断面図である。図6に示すように、ノズル開口面43aのノズル47A,47Bの周辺には、それぞれ親水処理膜53Aおよび撥水処理膜53Bが形成されている。
親水処理膜53Aは、例えば、親水性を有する材料をノズル開口面43aに薄膜状に形成し、フォトリソグラフィー等によりパターニングすることにより形成される。また、撥水処理膜53Bも同様に、例えば、撥水性を有する材料をノズル開口面43aに薄膜状に形成し、フォトリソグラフィー等によりパターニングすることにより形成される。
【0048】
ノズル基板43と振動板41との間に配置される流路基板42は、図3に示すように、インク流路となる流路部、具体的には、共通インク室44、インク供給口45及び圧力室46となる空部が区画形成された板状の部材である。
本実施形態において、流路基板42は、結晶性を有する基材であるシリコンウェハーを異方性エッチング処理することによって作製されている。振動板41は、ステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムをラミネート加工した二重構造の複合板材である。この振動板41の圧力室46に対応する部分には、エッチングなどによって支持板を環状に除去することで、圧電振動子38の先端面が接合される島部48が形成されており、この部分はダイヤフラム部として機能する。
【0049】
即ち、この振動板41は、圧電振動子38の作動に応じて島部48の周囲の弾性フィルムが弾性変形するように構成されている。また、振動板41は、流路基板42の一方の開口面を封止し、コンプライアンス部49としても機能する。このコンプライアンス部49に相当する部分についてはダイヤフラム部と同様にエッチングなどにより支持板を除去して弾性フィルムだけにしている。
【0050】
そして、上記の記録ヘッド3において、フレキシブルケーブル40を通じて駆動信号が圧電振動子38に供給されると、この圧電振動子38が素子長手方向に伸縮し、これに伴い島部48が圧力室46に近接する方向或いは離隔する方向に移動する。これにより、圧力室46の容積が変化し、圧力室46内のインクに圧力変動が生じる。この圧力変動によってノズル47A,47Bからインク滴が吐出される。
【0051】
インクカートリッジ6A,6Bは、図4に示すように、中空箱形状に形成されたケース部材51A,51Bと、可塑性材料によって形成されたインクパック52A,52Bとから構成されている。インクパック52A,52Bはケース部材51A,51B内の収容室に収容されている。
このインクカートリッジ6A,6Bは、インク供給チューブ34A,34Bの一端部と連通しており、記録ヘッド3のノズル開口面43aとの水頭差によってインクパック52A,52B内のインクを記録ヘッド3側に供給するように構成されている。具体的には、インクカートリッジ6A,6Bと記録ヘッド3との重量方向の相対的な位置関係がノズル47A,47Bのメニスカスに対して極く僅かに負圧がかかるような状態に設定されている。
【0052】
ここで、ノズル47Aにおける濃色インクの供給圧がノズル47Bにおける淡色インクの供給圧よりも低くなるように、濃色インクを貯留するインクカートリッジ6A(第一流体貯留容器)は、淡色インクを貯留するインクカートリッジ6B(第一流体貯留容器)よりもやや(高さH)鉛直方向下方側に配置されている。
そして、圧電振動子38を駆動することによる圧力変化によって、圧力室46へのインクの供給と、この圧力室46内のインクの吐出を行う。
【0053】
以上説明したように、本実施形態のプリンタ1においては、濃色インクを供給する濃色インク供給系S1(第一流体供給系)は、最上流側に配置され濃色インクが貯留されたインクカートリッジ6Aと、インク供給チューブ34Aと、サブタンク2Aと、記録ヘッド3によって構成されている。また、淡色インクを供給する淡色インク供給系S2(第二流体供給系)は、最上流側に配置され淡色インクが貯留されたインクカートリッジ6Bと、インク供給チューブ34Bと、サブタンク2Bと、記録ヘッド3によって構成されている。
【0054】
このように構成された本実施形態のプリンタ1において、記録ヘッド3からインクを噴射すると、濃色インクを噴射するノズル47Aと淡色インクを噴射するノズル47Bとがそれぞれ隣接して設けられているので、ノズル47Bの周辺には、濃色インクや濃色インクと淡色インクとの混色インクが残留する。
しかし、本実施形態においては、インクカートリッジ6A,6Bは、ノズル47Aにおける濃色インクの供給圧がノズル47Bにおける淡色インクの供給圧よりも低くなるように、濃色インクを貯留するインクカートリッジ6Aが、淡色インクを貯留するインクカートリッジ6Bよりもやや(高さH)鉛直方向下方側に配置されている。
これにより、ノズル47Aにおける濃色インクの水頭圧はノズル47Bにおける淡色インクの水頭圧よりも低くなる。そのため、ノズル47Aにおける濃色インクの供給圧をノズル47Bにおける淡色インクの供給圧よりも低くすることができる。
【0055】
したがって、ノズル47A,47Bの周辺に残留した濃色インクや濃色インクと淡色インクとの混色インクを記録ヘッドの内部に吸引する際には、供給圧の低いノズル47Aから記録ヘッド内部の濃色インク供給系S1に吸引される。これにより、ノズル47Bから記録ヘッド3の内部に濃色インクや濃色インクを含む混色インクの浸入が防止され、淡色インク供給系S2の汚染が防止できる。
【0056】
また、淡色インクを貯留するインク室27Bの容積が濃色インクを貯留するインク室27Aの容積よりも小さくなるように形成されているので、淡色インク供給系S2に淡色インクを逆流させる際の流路抵抗が、濃色インク供給系S1に濃色インクを逆流させる際の流路抵抗よりも大きくなる。これにより、ノズル47Bの周辺に残留した濃色インクや濃色インクと淡色インクの混色インクが濃色インク供給系S1に吸引されやすくし、淡色インク供給系S2に吸引されることを防止できる。
【0057】
また、インク供給チューブ34Bは、流路抵抗調整弁35により、濃色インクを供給するインク供給チューブ34Bよりも流路抵抗が大きくなるように調整されているので、淡色インク供給系S2に淡色インクの逆流させる際の流路抵抗が、濃色インク供給系S1に濃色インクを逆流させる際の流路抵抗よりも大きくなる。これにより、ノズル47Bの周辺に残留した濃色インクや濃色インクと淡色インクの混色インクが淡色インク供給系S2に吸引されることを防止できる。
【0058】
また、ノズル開口面43aのノズル47A,47Bの周辺には、それぞれ親水処理膜53Aおよび撥水処理膜53Bが形成されているので、図6に示すように、濃色インクや濃色インクを含む混色インクを撥水処理膜53Bによってノズル47Bの周辺から排除することができる。また、濃色インクや濃色インクを含む混色インクをノズル47Aの周辺の親水処理膜53A上に集めることができる。これにより、濃色インクや濃色インクを含む混色インクがノズル47Bから淡色インク供給系S2へ浸入することが防止される。
【0059】
また、ノズル47Aの径D1は、ノズル47Bの径D2よりも大きくなるように形成されているので、ノズル47Aの流路抵抗をノズル47Bの流路抵抗よりも小さくし、濃色インクや濃色インクを含む混色インクをノズル47Aから吸引させやすくすることができる。
上述のように、本実施形態では、インクカートリッジ6A,6B、流路抵抗調整弁35、サブタンク2A,2B、親水処理膜53A、撥水処理膜53Bおよびノズル47A,47Bによって、淡色インクを噴射するノズル47Bから記録ヘッド内部へ濃色インクが侵入することを防止する濃色インク浸入防止機構PM(第一流体浸入防止機構)が構成されている。
【0060】
したがって、本実施形態のプリンタ1によれば、上述した濃色インク浸入防止機構PMにより、濃色インクを噴射するノズル47Aと淡色インクを噴射するノズル47Bとが近接していた場合であっても、淡色インク供給系S2に濃色インクが混合することを防止し、淡色インクの汚染を防止することができる。これにより、淡色インクに混入した濃色インクの影響を排除するためのフラッシングが必要なくなる。このため、淡色インクの消費量を抑制できるだけでなく、フラッシング時間を短縮することが可能となる。
【0061】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について、図1〜図3および図5を援用し、図7および図8を用いて説明する。本実施形態では上述の第一実施形態で説明したプリンタ1と、濃色インク浸入防止機構の構成が異なっている。その他の点は第一実施形態と同様であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0062】
図7に示すように、濃色インク供給系S1’および淡色インク供給系S2’は同一のサブタンク2,2を備えている。濃色インク供給系S1’のサブタンク2のインク流入口33には、インク供給チューブ34Aの一端が接続されている。インク供給チューブ34Aの他端は濃色インクが貯留されたインクカートリッジ6Aに接続されている。インク供給チューブ34Aの途中には、濃色インク供給系S1’の濃色インクの供給圧を減圧する減圧ポンプ54Aが設けられている。
【0063】
また、淡色インク供給系S2’のサブタンク2のインク流入口33には、インク供給チューブ34Bの一端が接続されている。インク供給チューブ34Bの他端は淡色インクが貯留されたインクカートリッジ6Bに接続されている。インク供給チューブ34Bの途中には、淡色インク供給系S2’の淡色インクの供給圧を加圧する加圧ポンプ54Bが設けられている。
【0064】
また、本実施形態の流路ユニット19’を構成するノズル基板43’は、図8に示すように、ノズル47Aとノズル47Bとの間のノズル開口面43a’に傾斜が設けられ、ノズル47Aがノズル47Bよりも鉛直方向下方側に形成されている。
また、第一実施形態と同様に、ノズル47Aの径D1は、ノズル47Bの径D2よりも大きくなるように形成されている。
【0065】
このように、本実施形態の濃色インク浸入防止機構PM’は、濃色インク供給系S1’に設けられた減圧ポンプ54Aと、淡色インク供給系S2’に設けられた加圧ポンプ54Bと、ノズル47Aがノズル47Bよりも鉛直方向下方側に形成されたノズル基板43’と、径D1が径D2よりも大きくなるように形成されたノズル47Aおよびノズル47Bにより構成されている。
【0066】
次に、この実施形態の作用について説明する。
第一実施形態と同様に、記録ヘッド3からインクを噴射すると、濃色インクを噴射するノズル47Aと淡色インクを噴射するノズル47Bとがそれぞれ隣接して設けられているので、ノズル47Bの周辺には、濃色インクや濃色インクと淡色インクとの混色インクが残留する。
【0067】
ここで、本実施形態では、図7に示すように、濃色インク供給系S1’に設けられた減圧ポンプ54Aによって濃色インクの供給圧を減圧し、ノズル47Aにおける濃色インクの供給圧をノズル47Bにおける淡色インクの供給圧よりも低圧にすることができる。
また、淡色インク供給系S2’に設けられた加圧ポンプ54Bによって淡色インクの供給圧を加圧し、ノズル47Bにおける淡色インクの供給圧をノズル47Aにおける濃色インクの供給圧よりも高圧にすることができる。
【0068】
また、ノズル47Aがノズル47Bよりも鉛直方向下方側に形成されているので、図8に示すように、ノズル47Bの周辺に残留した濃色インクや濃色インクを含む混色インクは、ノズル開口面43a’に設けられた傾斜を伝ってノズル47Aの周辺に流下する。また、ノズル開口面43a’に設けられた傾斜によって、ノズル47Aの周辺に集まったインクがノズル47Bの周辺に移動することが防止される。
【0069】
また、第一実施形態と同様に、ノズル47Aの径D1は、ノズル47Bの径D2よりも大きくなるように形成されているので、ノズル47Aの流路抵抗をノズル47Bの流路抵抗よりも小さくし、濃色インクや濃色インクを含む混色インクをノズル47Aから吸引させやすくすることができる。
【0070】
したがって、本実施形態の濃色インク浸入防止機構PM’によれば、上述した第一実施形態の濃色インク浸入防止機構PMと同様に、濃色インクを噴射するノズル47Aと淡色インクを噴射するノズル47Bとが近接していた場合であっても、淡色インク供給系S2’に濃色インクが混合することを防止し、淡色インクの汚染を防止することができる。したがって、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0071】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態について、図1〜図5を援用し、図9を用いて説明する。本実施形態では上述の第一実施形態で説明したプリンタ1と、記録ヘッド3を傾斜させる記録ヘッド傾斜部60が形成され、ノズル基板43に親水処理膜53Aおよび撥水処理膜53Bが形成されていない点で異なっている。その他の点は第一実施形態と同様であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0072】
図4に示すように、本実施形態では、記録ヘッド3をノズル47A,47Bの配列方向に直交する軸X周りに傾斜させる記録ヘッド傾斜部60が設けられている。記録ヘッド傾斜部60は、記録ヘッド3を軸X周りに回転させるモータM1を備えている。
このように、本実施形態の濃色インク浸入防止機構は、親水処理膜53Aおよび撥水処理膜53Bの代わりに、記録ヘッド傾斜部60を備えて構成されている。
【0073】
次に、この実施形態の作用について説明する。
第一実施形態と同様に、記録ヘッド3からインクを噴射すると、濃色インクを噴射するノズル47Aと淡色インクを噴射するノズル47Bとがそれぞれ隣接して設けられているので、ノズル47Bの周辺には、濃色インクや濃色インクと淡色インクとの混色インクが残留する。
【0074】
ここで、本実施形態では、記録ヘッド3は記録ヘッド3を傾斜させる記録ヘッド傾斜部60を備えているので、図9に示すように、ノズル47Bがノズル47Aよりも鉛直方向上方側に位置するように、記録ヘッド3を傾斜させることができる。
これにより、ノズル47Aの周辺に残留した濃色インクがノズル47B側へ移動することを防止できる。また、濃色インクを含む混色インクを、鉛直方向上方側のノズル47B側から鉛直方向下方側のノズル47A側へと流下させることができる。これにより、ノズル開口面43aのノズル47Bの周辺に濃色インクや濃色インクを含む混色インクが残留することが防止される。
【0075】
したがって、本実施形態の濃色インク浸入防止機構PM”によれば、上述した第一実施形態の濃色インク浸入防止機構PMと同様に、濃色インクを噴射するノズル47Aと淡色インクを噴射するノズル47Bとが近接していた場合であっても、淡色インク供給系S2に濃色インクが混合することを防止し、淡色インクの汚染を防止することができる。したがって、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上述の実施形態では、第一流体として濃色インクを、第二流体として淡色インクを使用する構成について説明したが、第一流体および第二流体はインクでなくてよい。例えば、第一流体および第二流体として、流体状の金属材料を用いてもよい。
【0077】
また、2種類のインクを使用する構成であるため、サブタンク2を2つ配設しているが、本発明は3種類以上のインクを使用する構成にも当然に適用されるものである。
また、上述の実施形態において説明した濃色インク浸入防止機構の組み合わせは、いずれか一つでもよく、上述の実施形態で説明した組み合わせ以外の組み合わせであってもよい。
【0078】
また、上述の実施形態においては、インクジェット式記録装置がインクジェットプリンタ1である場合を例にして説明したが、インクジェットプリンタに限られず、複写機及びファクシミリ等の記録装置であってもよい。
【0079】
また、上述の実施形態においては、流体噴射装置が、インク等の液体(液状体)を噴射する液体噴射装置(液状体噴射装置)である場合を例にして説明したが、本発明の流体噴射装置は、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に適用することができる。流体噴射装置が噴射可能な流体は、液体、機能材料の粒子が分散又は溶解されている液状体、ジェル状の流状体、流体として流して噴射できる固体、及び粉体(トナー等)を含む。
【0080】
また、上述の実施形態において、流体噴射装置から噴射される液体(液状体)としては、インクのみならず、特定の用途に対応する液体を適用可能である。流体噴射装置に、その特定の用途に対応する液体を噴射可能な噴射ヘッドを設け、その噴射ヘッドから特定の用途に対応する液体を噴射して、その液体を所定の物体に付着させることによって、所定のデバイスを製造可能である。例えば、本発明の液体噴射装置(液状体噴射装置)は、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、及び面発光ディスプレイ(FED)の製造等に用いられる電極材、色材等の材料を所定の分散媒(溶媒)に分散(溶解)した液体(液状体)を噴射する液体噴射装置に適用可能である。
【0081】
また、液体噴射装置としては、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。
【0082】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体を例とする固体を噴射するトナージェット式記録装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第一実施形態に係るプリンタの概略構成を示す一部分解図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る記録ヘッドの構成を説明する断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る記録ヘッドの構成を説明する要部断面図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係る濃色インク供給系および淡色インク供給系の構成を説明する模式図である。
【図5】本発明の第一実施形態に係るノズル基板の底面図である。
【図6】本発明の第一実施形態に係る記録ヘッドの構成を説明する図5のA−A’線に沿う部分の要部断面図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る濃色インク供給系および淡色インク供給系の構成を説明する模式図である。
【図8】本発明の第二実施形態に係る記録ヘッドの構成を説明する図6に相当する要部断面図である。
【図9】本発明の第三実施形態に係る記録ヘッドの構成を説明する図6に相当する要部断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 プリンタ(流体噴射装置)、3 記録ヘッド(流体噴射ヘッド)、6A インクカートリッジ(第一流体貯留容器)、6B インクカートリッジ(第二流体貯留容器)、27A インク室(第一流体貯留部)、27B インク室(第二流体貯留部)、35 流路抵抗調整弁(流路抵抗調整部)、43a’ ノズル開口面(噴射面)、47A ノズル(第一流体噴射口)、47B ノズル(第二流体噴射口)、53A 親水処理膜、53B 撥水処理膜、54A 減圧ポンプ、54B 加圧ポンプ、60 記録ヘッド傾斜部(流体噴射ヘッド傾斜部)、D1,D2 径、PM 濃色インク浸入防止機構(第一流体浸入防止機構)S1 濃色インク供給系(第一流体供給系)、S2 淡色インク供給系(第二流体供給系)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一流体を噴射する第一流体噴射口と第二流体を噴射する第二流体噴射口とが近接してそれぞれ複数形成された流体噴射ヘッドと、
前記第二流体噴射口から前記流体噴射ヘッドの内部への前記第一流体の浸入を防止する第一流体浸入防止機構と、
を備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記第一流体は濃色流体であり、前記第二流体は淡色流体であることを特徴とする請求項1記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記第一流体浸入防止機構は、
前記第一流体噴射口に対して所定供給圧で前記第一流体を供給する第一流体供給系と、前記第二流体噴射口に対して前記所定供給圧よりも高圧で前記第二流体を供給する第二流体供給系と、を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記第一流体供給系の最上流に配置される第一流体貯留容器が、記第二流体供給系の最上流に配置される第二流体貯留容器よりも鉛直方向下方側に配置されていることを特徴とする請求項3記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記第一流体浸入防止機構は、
前記第二流体供給系の流路抵抗を前記第一流体供給系の流路抵抗よりも増加させる流路抵抗調整部を備えることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記第一流体浸入防止機構は、
前記第一流体供給系の途中に配置され前記第一流体を貯留する所定容積の第一流体貯留部と、前記第二流体供給系の途中に配置され前記第二流体を貯留する前記所定容積よりも小さい容積の第二流体貯留部と、を備えることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記第一流体浸入防止機構は、
前記第一流体供給系の前記第一流体の供給圧を減圧する減圧ポンプを備えることを特徴とする請求項3ないし請求項6のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項8】
前記第一流体浸入防止機構は、
前記第二流体供給系の前記第二流体の供給圧を加圧する加圧ポンプを備えることを特徴とする請求項3ないし請求項7のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項9】
前記第一流体浸入防止機構は、
前記流体噴射ヘッドの前記第一流体噴射口の周辺に形成された親水処理膜と、前記第二流体噴射口の周辺に形成された撥水処理膜と、を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項10】
前記第一流体浸入防止機構は、
前記第二流体噴射口と、前記第二流体噴射口よりも径が大きく形成された前記第一流体噴射口と、を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項11】
前記第一流体浸入防止機構は、
前記第一流体噴射口が前記第二流噴射口よりも鉛直方向下方側に形成された前記流体噴射ヘッドの噴射面を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項12】
前記第一流体浸入防止機構は、
前記第一流体噴射口が前記第二流噴射口よりも鉛直方向下方側に位置するように前記流体噴射ヘッドを傾斜させる流体噴射ヘッド傾斜部を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−73020(P2009−73020A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243839(P2007−243839)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】