説明

流体噴射装置

【課題】線状の吸収部材を移動させる際、吸収部材の振動を、高価なモーターを使用することなく簡易な機械的機構によって抑えるようにした、流体噴射装置を提供する。
【解決手段】複数のノズルからなるノズル列を有し、ノズル列から流体を噴射する流体噴射ヘッド21を備えた流体噴射装置である。ノズル列に沿って延在して移動可能に設けられた吸収部材12と、吸収部材12をノズル列と交差する方向に移動させる移動機構14と、吸収部材12を走行させる走行機構とを備える。移動機構14は、移動可能に設けられた移動部材55A、55Bと、これに移動可能に設けられ、かつ吸収部材12を移動可能に保持する位置決め部材54a、54bと、位置決め部材54a、54bを所定方向に付勢する第1付勢部材56と、を備える。吸収部材12に対して張力を付与する張力付与機構が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インク滴を記録紙(媒体)に対して噴射させる流体噴射装置として、インクジェット式プリンター(以下、「プリンター」という。)が広く知られている。このようなプリンターにあっては、記録ヘッドのノズルからインクが蒸発することによるインクの増粘や固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などにより、ノズルに目詰まりが生じ、印刷不良が引き起こされるという問題があった。そこで、このようなプリンターでは、記録紙に対しての噴射とは別に、ノズル内のインクを強制的に吐出させるフラッシング動作を行うようにしている。
【0003】
一般に走査タイプのプリンターでは、記録ヘッドを記録領域以外のエリアに移動させてフラッシング動作を行わせるようにしているが、記録ヘッドが固定されたラインヘッドを備えるプリンターでは、フラッシング動作時に記録ヘッドを移動させることができない。そこで、例えば記録紙を搬送する搬送ベルトの表面に設けられた吸収材(吸収部材)に向けて、インクを吐出する方法が考えられている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、搬送ベルト上に複数の吸収材が記録紙のサイズに合わせて等間隔に配置されているため、フラッシング時においては記録紙間の隙間を狙ってインクを噴射しなければならず、記録紙のサイズや搬送速度に制約が生じてしまうという問題がある。また、平面形状の吸収材に対してフラッシングを行うと、インク滴の吐出に伴う風圧によってミスト状のインクが散ってしまい、記録紙や搬送ベルト上を汚してしまうおそれもある。
【0005】
そこで、吸収材として線状のものを用い、この線状の吸収部材(吸収材)をラインヘッドと記録紙(記録媒体)との間に配置し、これに向けてインクを噴射しフラッシングすることにより、インクを吸収部材に受容させることが考えられる。その場合に、吸収部材については、フラッシング動作時と記録紙への記録時との間で、ノズルから噴射されたインク滴を吸収するフラッシング位置と、ノズルから噴射されたインク滴の飛行経路から退避する退避位置との間を移動させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−119284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば前記の吸収部材を退避位置からフラッシング位置に移動させた際、移動や停止に伴う加減速によって吸収部材に振動が生じる。このように振動した状態のもとでフラッシングを行うと、インク滴が吸収部材に捕捉されることなく、記録紙あるいは記録紙を保持するための面を汚してしまうおそれがある。そこで、吸収部材の振動が収まるまでフラッシング動作を行わずに待機する必要があるが、例えば印字(記録)の合間に定期的にフラッシングを行おうとすると、印字時間を短縮するうえでフラッシング時間の短縮は重要であり、フラッシングに要する時間をより短くする必要がある。
【0008】
吸収部材の振動を抑えるべく、吸収部材の移動や停止に伴う加減速の影響をより小さくするためには、高度な機構を有するモーターを使用し、このモーターの駆動を高度に制御することが考えられる。しかし、このようなモーターは高価であり、これを使用するとプリンターのコストが大幅に上昇してしまうといった不都合がある。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、流体を受容する吸収部材として線状のものを用い、これを移動させる場合において、例えば吸収部材を退避位置とフラッシング位置との間で移動させた際に生じる吸収部材の振動を、高価なモーターを使用することなく簡易な機械的機構によって抑えるようにした、流体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため本発明の流体噴射装置は、複数のノズルからなるノズル列を有し、該ノズル列から流体を噴射する流体噴射ヘッドを備えた流体噴射装置であって、
前記ノズル列に沿って延在するとともに、該ノズル列の一方側から他方側に向かって移動可能に設けられ、前記ノズルから噴射された流体を吸収する線状の吸収部材と、
前記吸収部材を前記ノズル列と交差する方向に移動させる移動機構と、
前記吸収部材を前記ノズル列の一方側から他方側に向かって走行させる走行機構と、を備え、
前記移動機構は、前記ノズル列の一方側と他方側とにそれぞれ配置され、前記吸収部材を、前記ノズル列と直交する方向における一方の側の基準位置から他方の側の所定位置に移動させるとともに、前記所定位置から前記基準位置に移動させる一対の移動機構部を備え、
前記移動機構部は、前記ノズル列と交差する方向に沿って往復移動可能に設けられた移動部材と、該移動部材に前記ノズル列と交差する方向に沿って移動可能に設けられ、かつ、前記ノズル列と直交する方向における前記所定位置側に停止位置を有した、前記吸収部材を移動可能に保持する位置決め部材と、該位置決め部材を、前記ノズル列と直交する方向における前記基準位置側から前記所定位置側に付勢する第1付勢部材と、を備えてなり、
前記一対の移動機構部は、それぞれの位置決め部材間に前記吸収部材を保持することで、前記吸収部材を前記ノズル列に沿って延在させるよう構成され、
前記位置決め部材は、保持した吸収部材の張力が強まると前記第1付勢部材の付勢方向と反対の方向に付勢されるよう構成され、
前記位置決め部材間に保持された吸収部材に張力を付与するとともに、前記位置決め部材が前記ノズル列と直交する方向における前記基準位置側に移動すると吸収部材に付与する張力を弱め、前記所定位置側に移動すると吸収部材に付与する張力を強める張力付与機構が、設けられていることを特徴としている。
【0011】
この流体噴射装置によれば、移動部材を移動させることで吸収部材を例えば退避位置となる基準位置から所定位置となるフラッシング位置に移動させると、前記張力付与機構によって吸収部材に付与される張力が強められる。すると、保持した吸収部材の張力が強まることにより、前記位置決め部材は前記第1付勢部材の付勢方向と反対の方向に付勢される。したがって、吸収部材の張力が第1付勢部材の付勢力より強くなると、前記位置決め部材は前記移動部材に対して第1付勢部材の付勢方向と反対の方向、すなわち前記基準位置側に移動させられる。
よって、移動初期においては、張力付与機構によって吸収部材に付与される張力が強められることにより、吸収部材は移動部材の移動方向(所定位置側)と反対側(基準位置側)に僅かずつ移動させられ、これによって移動部材の移動時における吸収部材の加速力が抑えられる。
また、位置決め部材が第1付勢部材の付勢方向と反対の方向である基準位置側に移動させられると、張力付与機構によって吸収部材に付与される張力が弱められる。そこで、例えば吸収部材の長さを長くすることでその張力をさらに弱め、第1付勢部材の付勢力より弱くすると、前記位置決め部材は第1付勢部材の付勢方向である所定位置側に移動させられ、停止位置に至ってここで停止する。
よって、移動終期においては、張力付与機構によって吸収部材に付与される張力が弱められことにより、吸収部材は移動部材の移動方向(所定位置側)に僅かずつ移動させられて停止するようになり、これによって停止移動時における減速力が抑えられる。
このように、吸収部材は移動初期時における加速力や移動終期時における減速力が抑えられるので、吸収部材の移動に伴う加減速の影響が少なくなり、これによって移動時に生じる吸収部材の振動を、最小限に抑えることができる。
また、このような振動の抑制を、高価なモーターを使用することなく簡易な機械的機構によって実現することができる。
【0012】
また、前記流体噴射装置において、前記走行機構は、前記吸収部材を巻き取った状態からこれを巻き出すことで送り出す送出回転体と、前記送出回転体を回転駆動させる送出駆動部と、前記送出回転体から送り出された吸収部材を巻き取る巻取回転体と、前記巻取回転体を回転駆動させる巻取駆動部と、を有しているのが好ましい。
このようにすれば、前述したように位置決め部材が第1付勢部材の付勢方向と反対の方向である基準位置側に移動させられ、張力付与機構によって吸収部材に付与される張力が弱められた際、送出駆動部を制御して送出回転体を回転させることにより、吸収部材の長さを長くしてその張力をさらに弱めることができる。
【0013】
また、前記流体噴射装置において、前記張力付与機構は、前記位置決め部材間に保持された吸収部材に所定の張力を付与するとともに、該吸収部材の張力に応じて変位し、前記吸収部材に付与する張力の強度を変化させる張力調整部材を有してなるのが好ましい。
このようにすれば、張力調整部材が吸収部材に付与する張力の強度が変化するので、吸収部材にかかる移動初期時における加速力や移動終期時における減速力がより抑えられるようになり、これによって吸収部材の移動に伴う加減速の影響がより少なくなる。
【0014】
なお、この流体噴射装置において、前記張力調整部材は、前記吸収部材を保持する保持位置が前記ノズル列と交差する方向に変位可能に設けられるとともに、前記保持位置が第2付勢部材によって前記第1付勢部材の付勢方向と反対の方向に付勢されているのが好ましい。
このようにすれば、張力調整部材が吸収部材に付与する張力の強度変化を、第2付勢部材によって容易に調整することができる。
【0015】
また、前記流体噴射装置において、前記走行機構は、前記吸収部材を巻き取った状態からこれを巻き出すことで送り出す送出回転体と、前記送出回転体を回転駆動させる送出駆動部と、前記送出回転体から送り出された吸収部材を巻き取る巻取回転体と、前記巻取回転体を回転駆動させる巻取駆動部と、を有し、前記張力調整部材は前記ノズル列より前記送出回転体側に設けられ、前記送出回転体と前記張力調整部材との間を走行する前記吸収部材の走行路中には、該吸収部材を周回させるとともに該吸収部材の走行によって連れ回りする検査用回転体が設けられ、前記検査用回転体には、該検査用回転体の回転数を検知することで該検査用回転体を周回する吸収部材の走行長さを検出する検出機構が設けられているのが好ましい。
このようにすれば、検査用回転体の回転数は吸収部材の走行長さ(走行距離)に正比例するため、検出機構によって吸収部材の走行長さを正確に検出することができる。したがって、移動部材を移動させることで吸収部材を例えば退避位置となる基準位置から所定位置となるフラッシング位置に移動させた際、移動に伴って吸収部材の長さが変化する分を、前記送出回転体を回転駆動させることで補うことができる。また、その際、送出回転体からの吸収部材の送り出し量を正確に把握することが可能であるため、移動に伴って吸収部材の長さが変化する分を、過不足なく正確に補うことができる。これにより、吸収部材の張力を、退避位置とフラッシング位置とで同じに維持することが可能になる。
【0016】
また、前記検査用回転体には、周方向に沿って識別体が設けられており、前記検出機構は、前記識別体を検知することで、前記検査用回転体の回転数を検知するように構成されているのが好ましい。
このようにすれば、簡易な構成によって検査用回転体の回転数を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るプリンターの概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るヘッドユニットの概略構成を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る記録ヘッドの概略構成を示す斜視図である。
【図4】本発明に係るキャップユニットの概略構成を示す斜視図である。
【図5】(a)、(b)はフラッシングユニットの概略構成を示す底面図である。
【図6】(a)、(b)は吸収部材を模式的に示す拡大図である。
【図7】図5の要部拡大図である。
【図8】図5の要部拡大図である。
【図9】フラッシング位置の説明図である。
【図10】(a)〜(d)は移動機構の動作を説明するための図である
【図11】第2実施形態を説明するための要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の流体噴射装置の第1実施形態を説明する。なお、以下の説明で用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
本実施形態では、流体噴射装置として、インクジェットプリンター(以下、単にプリンターと称す)について例示する。
【0019】
図1はプリンターの概略構成斜視図、図2はヘッドユニットの概略構成斜視図、図3はヘッドユニットを構成する記録ヘッド(流体噴射ヘッド)の概略構成斜視図、図4はキャップユニットの概略構成斜視図である。
図1に示すように、プリンター1は、ヘッドユニット2と、記録紙(記録媒体)を搬送する搬送装置3と、記録紙を供給する給紙ユニット4と、ヘッドユニット2によって印字された記録紙を排出する排紙ユニット5と、ヘッドユニット2に対してメンテナンス処理を行うメンテナンス装置10と、を備えて構成されている。
【0020】
搬送装置3は、ヘッドユニット2を構成する各記録ヘッド(流体噴射ヘッド)21(21A、21B、21C、21D、21E)のノズル面23との間に所定の間隔をあけた状態で、記録紙を保持するように構成されたものである。この搬送装置3は、駆動ローラー部31と、従動ローラー部32と、これらローラー部31、32との間に架け回された複数のベルトから構成された搬送ベルト部33と、を備えている。また、この搬送装置3における記録紙の搬送方向下流側(排紙ユニット5側)であって、排紙ユニット5との間に、記録紙を保持する保持部材34が設けられている。
【0021】
駆動ローラー部31は、回転軸方向の一端側が不図示の駆動モーターに接続されたもので、駆動モーターによって回転駆動されるように構成されたものである。そして、この駆動ローラー部31の回転動力が搬送ベルト部33に伝達され、搬送ベルト部33が回転駆動するようになっている。駆動ローラー部31と駆動モーターとの間には、必要に応じて伝達ギアが設置される。従動ローラー部32は、いわゆるフリーローラーであり、搬送ベルト部33を支持するとともに、搬送ベルト部33(駆動ローラー部31)の回転駆動に従動して回転するようになっている。
排紙ユニット5は、排紙用ローラー51と、この排紙用ローラー51によって搬送された記録紙を保持する排紙トレー52と、を備えて構成されている。
【0022】
ヘッドユニット2は、複数(本実施形態では5つ)の記録ヘッド21A〜21Eをユニット化することで構成されたもので、各記録ヘッド21A〜21Eの各ノズル24(図3参照)からは、複数色のインク(例えば、ブラックB、マゼンタM、イエローY、シアンCの各インク)が吐出されるようになっている。これら記録ヘッド21A〜21E(以下、記録ヘッド21と称す場合もある)は、取付板22に取付けられることでユニット化されている。すなわち、本実施形態に係るヘッドユニット2は、複数の記録ヘッド21が複数組み合わされたことにより、ヘッドユニット2の有効印字幅が記録紙の横幅(搬送方向と直交する幅)と略同等とされる、ラインヘッドモジュールを構成している。なお、前記各記録ヘッド21A〜21Eにおけるそれぞれの構造自体は共通とされている。
【0023】
図2に示すようにヘッドユニット2は、取付板22に形成された開口部25内に、各記録ヘッド21A〜21Eを配置したものである。具体的には、各記録ヘッド21A〜21Eが取付板22の裏面22b側に螺子止めされたことで、ノズル面23が前記開口部25を通って取付板22の表面22a側から突出した状態に配置されたものである。また、このヘッドユニット2は、前記取付板22が不図示のキャリッジに固定されたことにより、プリンター1に搭載されている。
【0024】
本実施形態におけるヘッドユニット2は、前記キャリッジによって記録位置とメンテナンス位置との間(図1中の矢印で示す方向)で移動可能に構成されている。ここで、記録位置とは、搬送装置3に対向し且つ記録紙に対して記録を行う位置である。一方、メンテナンス位置とは、搬送装置3上から退避した位置であって、メンテナンス装置10と対向する位置である。このメンテナンス位置において、ヘッドユニット2に対するメンテナンス処理(吸引処理、ワイピング処理)が実施されるようになっている。
【0025】
図3に示すように、ヘッドユニット2を構成する記録ヘッド21A〜21E(以下、単に記録ヘッド21と称す場合もある)は、複数のノズル24によって構成されるノズル列Lが複数列形成されたノズル面23を有するヘッド本体25Aと、このヘッド本体25Aが取付けられる支持部材28と、を備えて構成されている。
【0026】
各記録ヘッド21A〜21Eは、4色(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk))に対応したノズル列(L(Y)、L(M)、L(C)、L(Bk))を有しており、したがってノズル列Lを4列形成している。各ノズル列(L(Y)、L(M)、L(C)、L(Bk))において、これらノズル列(L(Y)、L(M)、L(C)、L(Bk))を構成するノズル24は、記録紙の搬送方向と交差する水平方向に配列されている。具体的には、記録紙の搬送方向と直交する水平方向に配列されている。そして、各記録ヘッド21A〜21Eは、それぞれのノズル列が、これら記録ヘッド21A〜21Eの配置方向において同じ色に対応するノズル列Lが一列になるように、配置されている。なお、各記録ヘッド21A〜21Eにおける各ノズル列(L(Y)、L(M)、L(C)、L(Bk))については、各色毎に2列ずつ、合計8列形成されていてもよい。その場合に、各色毎に設けられた2列のノズル列は、千鳥状に配置されているのが好ましい。
【0027】
支持部材28には、ノズル面23の長手方向の両側に張り出し部26、26が形成されており、これら張り出し部26、26には、記録ヘッド21を前記取付板22の裏面22bに螺子止めするための貫通孔27が形成されている。これにより、複数の記録ヘッド21が取付板22に取付けられ、前記ヘッドユニット2が構成されている(図1参照)。
【0028】
メンテナンス装置10は、ヘッドユニット2に対して吸引処理を行うキャップユニット6と、フラッシング動作により吐出されたインクを受けるためのフラッシングユニット11と、を有して構成されている。
図4に示すようにキャップユニット6は、前記ヘッドユニット2に対してメンテナンス処理を行うもので、各記録ヘッド21A〜21Eに対応する複数(本実施形態では5つ)のキャップ部61A〜61Eがユニット化されたことにより、構成されたものである。このキャップユニット6は、ヘッドユニット2の記録エリアから外れた場所に配置されている。
【0029】
各キャップ部61A〜61E(以下、単にキャップ部61と称す場合もある)は、記録ヘッド21A〜21Eの各々にそれぞれ対応して設けられたもので、各記録ヘッド21A〜21Eのノズル面23に当接可能に構成されたものである。このような構成のもとにキャップ部61A〜61Eは、記録ヘッド21A〜21Eの各ノズル面23にそれぞれ密着することにより、各ノズル面23のノズル24からインク(流体)を排出させる吸引動作を、良好に行うことができるようになっている。
【0030】
また、これら各キャップ部61A〜61Eは、キャップ本体67と、キャップ本体67の上面に枠状に設けられ、記録ヘッド21に当接されるシール部材62と、記録ヘッド21のノズル面23を払拭するワイピング処理時に用いられるワイプ部材63と、これらキャップ本体67及びワイプ部材63を一体的に保持する筐体部64と、を備えている。
【0031】
筐体部64の底部には、筐体部64をベース部材69に保持するための保持部65が2つ(1つは不図示)形成されている。これら保持部65は平面視において筐体部64における対角をなす位置に配置されている。保持部65の各々には、筐体部64をベース部材69に螺子止め固定するための螺子が挿入される貫通孔65bが形成されている。
【0032】
フラッシングユニット11は、ヘッドユニット2の底面側を示す図5(a)、(b)に示すように、フラッシング動作時に吐出されたインク滴(流体)を吸収する吸収部材12と、これら吸収部材12を支持する支持機構9と、を備えて構成されている。
吸収部材12は、各ノズル24から吐出されたインク滴を吸収する線状のもので、本実施形態では1つのヘッドユニット2に対して1本設けられている。吸収部材12は、後述する移動機構14によって移動可能に保持されることにより、対応するノズル列(L(Y)、L(M)、L(C)、L(Bk))に沿って延在した状態に配置され、かつ、各ノズル面23と記録紙の搬送領域との間に配置されるようになっている。
【0033】
この吸収部材12は、例えば糸材などによって形成されたもので、インクを効率よく吸収、保持(受容)できるものが好適に用いられる。具体的には、SUS304、ナイロン、親水性コートを施したナイロン、アラミド、絹、綿、ポリエステル、超高分子量ポリエチレン、ポリアリレート、ザイロン(商品名)等の繊維、あるいはこれらの複数を含む複合繊維から吸収部材12を形成することができる。
より詳細には、前記繊維あるいは複合繊維から形成される繊維束が、撚り合わされるあるいは束ねられることによって吸収部材12が形成可能である。
図6は、吸収部材12の一例を示す模式図であり、(a)が断面図、(b)が平面図である。これらの図に示すように、吸収部材12は、例えば、繊維から形成される繊維束12aが2本撚り合わされることによって形成される。
【0034】
また、他の例としては、SUS304からなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、ナイロンからなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、親水性コートが施されたナイロンからなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、アラミドからなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、絹からなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、綿からなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、ベリーマ(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ソアリオン(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロン03T(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ダイニーマハミロンDB−8(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ベクトランハミロンVB−30からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンS−5コアケブラースリーブポリエステル(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンS−212コアカブラースリーブポリエステル(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンSZ−10コアザイロンスリーブポリエステル(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンVB−3ベクトラン(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材が、吸収部材12として好適に用いられる。
【0035】
ナイロンの繊維を用いた吸収部材12は、汎用水糸として広く用いられるナイロンによって形成されているため、安価なものとなる。
SUS材の金属繊維を用いた吸収部材12は、耐腐食性に優れるため多様なインクを吸収可能となると共に、樹脂と比較して磨耗性が高いため繰り返しの使用が可能となる。
【0036】
超高分子ポリエチレンの繊維を用いた吸収部材12は、切断強度及び耐薬品性が高く、有機溶剤や酸、アルカリに強いものとなる。このように、超高分子ポリエチレンの繊維を用いた吸収部材12は、切断強度が高いため、強いテンションで引っ張ることが可能となり、撓みを抑止することができる。このため、例えば、吸収部材12の径を太くして吸収容量を増加させたり、また吸収部材12の径を太くしない場合にはヘッド21A〜21Eから記録紙の搬送領域までの距離を狭くし印刷精度を向上させることができる。また、ザイロンやアラミドの繊維を用いた吸収部材12も、超高分子ポリエチレンの繊維を用いた吸収部材12と同様の効果を期待できる。
綿の繊維を用いた吸収部材12は、インク吸収性に優れたものとなる。
【0037】
このような吸収部材12では、滴下されたインクが表面張力によって繊維間及び繊維束12a間に形成される谷部12b(図6参照)に保持されるため、インクが吸収・受容される。
また、吸収部材12の表面に滴下したインクは、一部が直接吸収部材12の内部に浸透し、残りが繊維束12a間に形成される谷部12bを伝う。そして、吸収部材12の内部に浸透したインクは、吸収部材12の内部において一部が徐々に吸収部材12の延在方向に移動し吸収部材12の延在方向に分散して保持される。吸収部材12の谷部12bを伝うインクは、谷部12bを伝いながら、徐々にその一部が吸収部材12の内部に浸透し、残りが谷部12bに残存し、これによって吸収部材12の延在方向に分散して保持される。つまり、吸収部材12の表面に滴下したインクは、長期的には全てが滴下された箇所に留まるわけではなく、滴下された箇所の周囲に分散して吸収される。
【0038】
なお、実際にプリンター1に設置する吸収部材12の形成材料については、吸インク性、保持インク性、引張強度、耐インク性、成形性(けばやほつれの発生量)、ねじれ性、コスト等を考慮して適宜に選択される。
また、吸収部材12のインク吸収量は、吸収部材12の繊維間に保持できるインク量と谷部12bに保持できるインク量の合計である。このため、このインク吸収量が、吸収部材12の交換頻度等を考慮して、フラッシングによって吐出されるインク量よりも十分に大きくなるように、吸収部材12の形成材料が選択される。
【0039】
なお、吸収部材12の繊維間に保持できるインク量及び谷部12bに保持できるインク量は、インクと繊維との接触角、インクの表面張力に依存する繊維隙間における毛細管力によって規定することができる。つまり、細い繊維を用いて形成することで繊維間の隙間を多くし、全体として繊維の表面積を増加することにより、吸収部材12の断面積が同一であっても、吸収部材12はより多量のインクを吸収することができるようになる。したがって、繊維間の隙間をより多くするため、繊維束12aを形成する繊維として、マイクロファイバー(極細繊維)を用いるようにしてもよい。
ただし、吸収部材12のインク保持力は、繊維間の隙間が大きくなって毛細管力が低下することで低減する。このため、繊維間の隙間については、吸収部材12におけるインク保持力が吸収部材12の移動によってインクが垂れない程度となるように、設定する必要がある。
【0040】
また、吸収部材12の太さについては、例えば前記ノズル24の径(ノズル径)に対して、5〜75倍程度の太さ(径)とされる。一般的なプリンターでは、各記録ヘッド21A〜21Eにおける各ノズル面23と記録紙との間のギャップが1mm〜2mm程度、ノズル径が約0.02mmとなっている。したがって、吸収部材12は、直径が0.5mm以下であれば、各ノズル面23や記録紙に接触することなくこれらの間に配置させることができ、かつ0.2mm以上であれば、部品の誤差を考慮しても、吐出されたインク滴を確実に捕捉することができるようになる。そのため、吸収部材12は太さ(径)が0.2mm〜0.5mm程度、すなわちノズル径に対して10〜25倍程度であるのが好ましい。なお、吸収部材12の断面形状は、必ずしも円形である必要はなく、多角形等であってもよい。ここで、吸収部材は完全な円形に作るのは難しいので、円形とは略円形も含む。
【0041】
また、吸収部材12の長さについては、ヘッドユニット2の有効印字幅に対して十分な長さを有しているのが好ましい。本実施形態のプリンター1では、後述するように吸収部材12の使用済み(インク吸収済み)の領域が順次巻き取られ、吸収部材12のほぼ全領域においてインクが吸収された際に、吸収部材12全体が取り替えられる構成が採用されている。そのため、吸収部材12の取替え期間を実用に耐え得る時間とするべく、吸収部材12の長さは、ヘッドユニット2の有効印字幅の数百倍程度であるのが好ましい。
【0042】
このような構成からなる吸収部材12は、図5(a)、(b)に示すように支持機構9によって支持されている。
支持機構9は、走行機構13および移動機構14を備えて構成されたもので、本実施形態では、いずれもヘッドユニット2の両側、すなわち記録ヘッド21の配列方向における一方側と他方側とに設けられている。なお、図5(a)、(b)では、ヘッドユニット2の一部を省略し、記録ヘッド21を二つのみ示している。また、このヘッドユニット2を構成する記録ヘッド21については、ノズル列Lが(Y)、(M)、(C)、(Bk)の各色毎に2列ずつ、合計8列形成されているものを示している。
【0043】
走行機構13は、ヘッドユニット2の両側に連結された一対の支持基板15A、15Bに設けられたもので、吸収部材12を記録ヘッド21のノズル列Lに沿う方向に、すなわちノズル列Lと平行な直線上を、その一方側から他方側に向けて走行させるものである。
この走行機構13は、一方側の支持基板15Aに送出リール(送出回転体)16とこれを駆動させる送出モーター(送出駆動部)16Aを備え、他方側の支持基板15Bに巻取リール(巻取回転体)17とこれを駆動させる巻取モーター(巻取駆動部)17Aを備えて構成されたものである。送出リール16は、吸収部材12を予め所定長さ巻き取ったもので、この状態から、吸収部材12を巻き出すことでヘッドユニット2側に送り出すものである。巻取リール17は、送出リール16から送り出された吸収部材12を巻き取るものである。
【0044】
また、支持基板15Aには、要部拡大図である図7に示すように、吸収部材12に所定の張力を付与するための調整レバー(張力調整部材)18が設けられている。この調整レバー18は細長い板状のもので、その中央部を回動軸として、正逆方向に回動可能に設けられたものである。また、この調整レバー18は、送出リール16の下側(支持基板15A側)に配置されたもので、その回動軸を送出リール16の回転軸に一致させて配置されたものである。
【0045】
調整レバー18には、その一端側にコイルバネからなる引っ張りバネ(第2付勢部材)19が連結されており、他端側にはローラー18aが回転可能に設けられている。引っ張りバネ19は、その一端側が調整レバー18に連結し、他端側が支持基板15Aに固定されたものであり、調整レバー18の一端側を図7中矢印A方向に付勢するものである。このような構成のもとに調整レバー18は、引っ張りバネ19によって矢印A方向に回動するように付勢されている。そして、これによって調整レバー18とそのローラー18a、および引っ張りバネ19は、後述するように吸収部材12に所定の張力を付与するための張力付与機構を構成するものとなっている。
【0046】
調整レバー18の一端部の両側、すなわちその回動方向の両側には、この一端部に当接可能な位置に第1センサ36と第2センサ37とが設けられている。第1センサ36は、調整レバー18の一端部に対して、矢印A方向と反対の側に配置されたものであり、第2センサ37は、調整レバー18の一端部に対して、矢印A方向の側に配置されたものである。これら第1センサ36、第2センサ37は、調整レバー18の一端部によって押圧されることでオンになり、押圧が解除されることでオフになる、リミットスイッチとなっている。ただし、これら第1センサ36、第2センサ37は、その押圧抵抗が十分に小さくなっており、したがって調整レバー18の一端部に押圧された際、その押圧力にほとんど抗することなく後退し、押圧力が解除されることで元の位置に円滑に復帰するようになっている。なお、本実施形態では、これら第1センサ36と第2センサ37とによってセンサ部が構成されている。
【0047】
また、これら第1センサ36、第2センサ37は、後述するように吸収部材12の張力を所定範囲内に維持するために設けられたもので、第1センサ36は、オンになると巻取モーター17Aの駆動を停止させ、オフになると巻取モーター17Aを駆動させるようになっている。また、第2センサ37は、オンになると送出モーター16Aの駆動を停止させるとともに、巻取モーター17Aを駆動させるようになっている。
【0048】
なお、第1センサ36がオンになる位置、本実施形態では調整レバー18の一端部が第1センサ36に当接しこれを所定量押圧した位置が、調整レバー18が変位(回動)する範囲における第1位置とされ、第2センサ37がオンになる位置、すなわち調整レバー18の一端部が第2センサ37に当接しこれを所定量押圧した位置が、調整レバー18が変位(回動)する範囲における第2位置とされる。これら第1位置、第2位置は、後述するように予め設定した吸収部材12の張力の範囲に対応して、それぞれ決められている。
【0049】
前記調整レバー18の他端側のローラー18aは、吸収部材12を移動可能に保持する保持位置となるもので、このローラー18aには、送出リール16から巻き出された(送り出された)吸収部材12が周回させられている。ただし、吸収部材12は、ローラー18aに周回させられる前に、検査用回転体20に周回させられている。検査用回転体20は、回転板20aとローラー20bとが同じ回転軸を有して一体に形成されたもので、送出リール16から巻き出された吸収部材12をローラー20bに周回させたものである。すなわち、送出リール16から巻き出された吸収部材12は、ローラー20bを周回した後、調整レバー18のローラー18aを周回するようになっている。
【0050】
ここで、検査用回転体20のローラー20bは、吸収部材12が走行した際、これに連れ回りするようになっている。したがって、ローラー20bと一体に形成された回転板20aは、ローラー20bと同じ速度(回転速度)で回転するようになっている。この回転板20aには、その外周部に、周方向に沿ってパルス発生用の孔(識別体)40が等間隔(所定間隔)で多数設けられている。また、この回転板20aの外周部の一部と対向する位置には、前記孔40を検知する検知部41が配置されている。検知部41は、例えば回転板20aの一方の側に発光部を配し、他方の側に受光部を配して構成されたもので、発光部からの光が回転する回転板20aの孔を通過すると、これを受光部で受光するように構成されたものである。
【0051】
このような構成のもとに検知部41は、孔の検知数に基づき、回転板20aの回転数が検出できるようになっている。また、ローラー20bは吸収部材12に連れ回りするため、吸収部材12の走行長さ(走行距離)と回転板20aの回転数とは正比例する。したがって、前記したように回転板20aの回転数を検出することで、吸収部材12の走行長さを正確に検出することが可能になる。なお、本実施形態では、このような検知部41と回転板20aの孔40(識別体)とにより、本発明の検出機構が構成されている。
【0052】
ローラー20bを周回した吸収部材12は、前記したように調整レバー18の他端側のローラー18aに送られてこれを周回している。そして、図5(a)、(b)に示したように移動機構14に送られるようになっている。
移動機構14は、ヘッドユニット2の両側に設けられた一対の移動機構部53A、53Bによって構成されたもので、これら移動機構部53A、53Bにそれぞれ設けられた位置決めローラー(位置決め部材)54a、54bに、前記吸収部材12をこの順に周回させている。なお、この移動機構14については、後に詳述する。
【0053】
支持基板15A側の移動機構部53Aにおける位置決めローラー54aを周回し、ヘッドユニット2に対向する側を通過して支持基板15B側の移動機構部53Bにおける位置決めローラー54bを周回した吸収部材12は、前記巻取リール17に巻き取られている。ただし、本実施形態では、位置決めローラー54bを周回した吸収部材12は、位置決めローラー54bと巻取リール17との間に配置された安全レバー44を経由して、巻取リール17に巻き取られている。
【0054】
安全レバー44は、要部拡大図である図8に示すように細長い板状のもので、その中央部を回動軸として正逆方向に回動可能に設けられたものである。この安全レバー44には、その一端側にコイルバネからなる引っ張りバネ(テンションバネ)45が連結されており、他端側にはローラー46aが回転可能に設けられている。また、前記回動軸(図示せず)より前記一端側には、別のローラー46bが回転可能に設けられている。
【0055】
引っ張りバネ45は、その一端側が安全レバー44に連結し、他端側が支持基板15Bに固定されたものであり、安全レバー44の一端側を図8中矢印B方向に付勢するものである。このような構成によって調整レバー18は、引っ張りバネ44によって矢印B方向に回動するように付勢されている。
【0056】
安全レバー44の一端部の、前記引っ張りバネ45と反対の側には、この一端部に当接可能な位置に安全センサ部47が設けられている。安全センサ部47は、安全レバー44の一端部によって押圧されることでオンになり、押圧が解除されることでオフになる、リミットスイッチとなっている。また、この安全センサ部47は、オンになると巻取モーター17Aの駆動を停止させるように構成されている。そして、本実施形態では、このような安全レバー44、引っ張りバネ45、ローラー46a、46b、及び安全センサ部47により、安全機構が構成されている。
【0057】
この安全機構によれば、ローラー46a、46bを周回する吸収部材12の張力が所定以上の張力になると、安全レバー44の一端側が引っ張りバネ45の付勢力に抗して矢印Bと反対の方向に回動する。すると、安全センサ部47が押圧されてオンになることにより、巻取モーター17Aの駆動が停止し、巻取リール17の回転が停止する。これにより、後述するように吸収部材12を無理に引っ張ることによる、切断が回避されるようになっている。
【0058】
なお、図5(a)、(b)に示したように吸収部材12は、移動機構14を構成する支持基板15Aの位置決めローラー54aと支持基板15Bの位置決めローラー54bとにより、ヘッドユニット2に対向する位置が決められるようになっている。
移動機構14は、前記したように一対の移動機構部53A、53Bによって構成されたものである。これら移動機構部53A、53Bは、吸収部材12を、図5(a)に示すようにヘッドユニット2における基準位置から、図5(b)に示すようにヘッドユニット2における所定位置に平行移動させるとともに、前記所定位置から前記基準位置に平行移動させるようにしたものである。
【0059】
すなわち、移動機構部53A(53B)は、ヘッドユニット2の記録ヘッド21におけるノズル列Lの延在方向Pと交差(本実施形態においては直交)する方向Rに往復移動可能に設けられた移動ステージ(移動部材)55A(55B)と、該移動ステージ部材55A(55B)に、前記方向Rに沿って往復移動可能に設けられた前記位置決めローラー54a(54b)と、該位置決めローラー54a(54b)を、前記方向Rにおける前記基準位置側から前記所定位置側に付勢する押圧バネ(第1付勢部材)56と、を備えて構成されたものである。
【0060】
移動ステージ55A(55B)は、雄螺子状のボールネジ57と、該ボールネジ57を正逆方向に回転させるモーター58と、によって前記方向Rに往復移動させられるようになっている。モーター58はステッピングモーター等からなるもので、支持基板53A(53B)に固定されたものである。一方、移動ステージ55A(55B)は、その支持基板53A(53B)側の面が支持基板53A(53B)に摺動可能に当接して設けられたもので、ボールネジ57に螺合する雌螺子部(図示せず)を有したものである。このような構成のもとに移動ステージ55A(55B)は、モーター58によってボールネジ57が回転させられると、前述したように方向Rに往復移動させられるようになっている。
【0061】
ここで、図5(a)に示した基準位置とは、前記方向Rにおける一方の側、本実施形態では記録ヘッド21に対して前記調整レバー18のローラー18aが配置された側で、記録ヘッド21のノズル面23より外側となる位置とされる。また、所定位置とは、図5(b)に示したように前記方向Rにおける他方の側であって、記録ヘッド21のノズル面23に対向する位置、詳しくは、ノズル列Lに沿う位置である。
【0062】
このようにノズル列Lに沿うことにより、この所定位置は、吸収部材12がノズル列Lを構成する各ノズル23からフラッシングを受ける、フラッシング位置となる。フラッシング位置とは、図9に示すように、吸収部材12が対応するノズル列L(ノズル列Lを構成する複数のノズル24)に対向した(平面視して重なる)状態であって、フラッシング動作時にノズル列Lから吐出されたインク滴を受容し吸収できる位置、すなわちインクの飛行経路上の位置である。
【0063】
なお、ここでノズル列Lと吸収部材12とが対向するとは、必ずしもノズル24の中心と吸収部材12の中心とが平面視した状態で重なることのみを意味するのではなく、平面視した状態で吸収部材12の幅の中にノズル24が位置する状態のことを言う。このような状態であれば、ノズル24から吐出されたインクを吸収部材12は吸収することができる。
【0064】
また、このように所定位置がフラッシング位置となるのに対し、前記の基準位置は、ノズル列L(ノズル列Lを構成する複数のノズル24)とは対向しない(平面視して重ならない)状態であって、記録動作時に各ノズル24から吐出された記録用のインク滴が吸収部材12に吸収されることのない、退避位置となる。
なお、前記のようにフラッシング位置が所定位置となることから、前記の基準位置に対する所定位置としては、本実施形態では記録ヘッド21に形成された各ノズル列Lに対応する全ての位置、すなわち8列のノズル列Lのそれぞれに沿う位置が、全て所定位置となっている。一方、基準位置については、本実施形態では図5(a)に示した一つの位置となっている。
【0065】
よって、本実施形態の移動機構部53A(53B)では、吸収部材12を基準位置から8箇所の所定位置のそれぞれに、移動させることができるようになっている。なお、これら8箇所の停止位置又は前記の移動ステージ55A、55Bには、互いの位置を検出する位置検知センサ(図示せず)が設けられている。これにより、移動ステージ55A、55Bは所望の停止位置を検知すると、その停止位置で移動を正確に停止するようになっている。
【0066】
ここで、移動機構部53A、53Bは、それぞれのモーター58が回転することでボールネジ57が回転し、このボールネジ57に螺合する移動ステージ55A、55Bがボールネジ57の長さ方向、すなわち図5(a)、(b)中のR方向に移動するようになっている。その際、モーター58、58は図示しない制御部によって同期して動作するように制御されており、これによって移動ステージ55A、55Bは、方向Rにおける同方向に、同時にかつ同一長さ、移動するようになっている。なお、モーター58は正逆方向に回転可能になっており、したがって移動ステージ55A、55Bや吸収部材12も、R方向における両方の側に移動可能になっている。
【0067】
また、位置決めステージ55A(55B)には、前記方向Rに沿って長孔59が形成されており、この長孔59には、位置決めローラー54a(54b)が移動可能に設けられている。位置決めローラー54a、54bは、これらの間に吸収部材12を周回させ、保持することにより、吸収部材12の前記方向Rにおける位置を決めるものである。本実施形態では、これら位置決めローラー54a、54bは前記調整レバー18のローラー18aと反対の側で吸収部材12を保持するようになっており、したがってこの保持位置が、前記の基準位置、あるいは所定位置となるように制御されている。
【0068】
また、位置決めローラー54a(54b)には、前記したように押圧バネ56が連結されている。押圧バネ56は、位置決めローラー54a(54b)を前記基準位置側から前記所定位置側に付勢するものである。したがって、位置決めローラー54a(54b)は、長孔59内を基準位置側から所定位置側に移動するように付勢されている。ここで、長孔69はその端部が開放されておらず、したがって位置決めローラー54a(54b)は長孔69の長さ方向での範囲内のみ、移動可能になっている。よって、通常は、位置決めローラー54a(54b)は押圧バネ56に押圧(付勢)されて、長孔69における前記基準位置と反対の側(所定位置側)の端縁部に停止させられている。すなわち、位置決めローラー54a(54b)は、前記R方向における前記所定位置側に、長孔59の所定位置側における端縁部からなる、停止位置を有したものとなっている。
【0069】
ここで、位置決めローラー54a、54bは、これらの間に吸収部材12を保持しているが、この吸収部材12の張力、すなわち送出ローラー16と巻取ローラー17との間に保持されることで与えられる張力、および前記調整レバー18に連結された引っ張りバネ19によってこの調整レバー18を介して付与される張力により、吸収部材12が前記方向Rにおける基準位置側に付勢されると、前記の停止位置から基準位置側に、長孔59内を移動することがある。すなわち、吸収部材12の付勢力が前記の押圧バネ56による付勢力より強くなると、位置決めローラー54a、54bは、長孔59内を基準位置側に移動するようになっている。
【0070】
なお、調整レバー18は、引っ張りバネ19によって矢印A方向に回動するように付勢されていることにより、ローラー18aによって位置決めローラー54a、54b間に保持される吸収部材12の張力を高めている。したがって、調整レバー18とそのローラー18a、および引っ張りバネ19は、吸収部材12に所定の張力を付与するための張力付与機構として機能するようになっている。
【0071】
次に、前述の走行機構13による吸収部材12の走行動作、および移動機構14による吸収部材12の移動動作に関する、本実施形態のプリンター1の動作について説明する。なお、本実施形態のプリンター1の動作は、図示しない制御装置(制御部)によって統括されている。
【0072】
まず、走行機構13による吸収部材12の走行動作について説明する。
図9に示した状態でフラッシングを終了した後、記録ヘッド21による記録紙へのインクの噴射に備え、吸収部材12を前記移動機構14によって図5(b)に示したフラッシング位置(所定位置)から図5(a)に示した退避位置(基準位置)に移動させる。その際、送出モーター16Aについてはその駆動を停止させ、巻取モーター17Aのみ回転させることにより、送出リール16と巻取リール17との間に保持された吸収部材12の張力を、予め設定された所定の張力に保持する。すなわち、図5(b)に示したフラッシング位置(所定位置)から図5(a)に示した退避位置(基準位置)に移動させると、移動ステージ55A、55Bが共に送出リール16、巻取リール17に近づくことにより、これら送出リール16、巻取リール17間に保持された吸収部材12はその経路が短くなることで、張力が低下する(弱くなる)。
【0073】
したがって、短くなった経路に相当する分、巻取モーター17Aによって吸収部材12を巻き取ることにより、吸収部材12の張力を高め(強め)、予め設定された所定の張力にする。ここで、このように吸収部材12が予め設定された所定の張力に保持された状態では、位置決めローラー54a、54bは、押圧バネ56に押圧されて停止位置に留まっている。
なお、このような移動機構14の動作に伴う吸収部材12の張力変化については、後に詳述する。
【0074】
また、このように退避位置(基準位置)に移動させた際には、図7中に二点鎖線で示すように、調整レバー18が第1センサ36をオンにした状態となっており、すなわち、該調整レバー18が変位する範囲における第1位置に至った状態となっている。したがって、吸収部材12は、引っ張りバネ19による付勢力を上回った力で調整レバー18を矢印A方向と反対の側に変位させており、その張力は、引っ張りバネ19による付勢力に対応する第1の張力以上になっている。
【0075】
このような状態のもとで、例えばフラッシングに動作によって既にインクを吸収・受容した領域を巻取リール17側に巻き取り、まだインクを吸収・受容していない新たな領域をヘッドユニット2に対向させるべく、送出モーター16Aを駆動し、送出リール16を回転させる。すると、巻取リール17は停止しているので、送出リール16と巻取リール17との間に巻き出される吸収部材12の巻き出し量(送り出し量)が多く(長く)なり、これによって吸収部材12の張力が弱くなる。
【0076】
その結果、前記の第1の張力未満になるため、調整レバー18は図7中実線で示したように第1位置から離れ、第1位置と第2位置(第2センサ37をオンにする位置)との間に至る。このように調整レバー18が第1位置から離れると、第1センサ36はこれを検知して巻取モーター17Aを駆動させ、巻取リール17を回転させる。したがって、送出リール16、巻取リール17が共に回転することにより、吸収部材12の張力は安定し、調整レバー18の変位も所定範囲内に維持され、したがって図7中実線で示したように第1位置と第2位置との間に維持される。
【0077】
ここで、送出モーター16A、巻取モーター17Aのそれぞれの回転速度については、予めほぼ同じになるように設定されており、したがって送出リール16、巻取リール17の各回転速度はほぼ同じになっている。ところが、これら送出リール16、巻取リール17に巻き取られている吸収部材12の巻取量は、初期では送出リール16側の方が多く、その後使用を重ねるに連れ、巻取リール17側が増えていく。したがって、送出リール16と巻取リール17とでは、巻取量に差があることから、吸収部材12の巻取径に差が生じ、そのため同じ回転数で回転していても、巻取径の差によって単位時間あたりの送り出し長さ(巻き出し長さ)と巻き取り長さとの間に差が生じてしまう。したがって、単に送出モーター16Aの回転速度と巻取モーター17Aの回転速度とをそれぞれ制御するだけでは、これらの間に保持される吸収部材12の長さを常に一定にするのは難しく、実際には保持される長さが僅かながら連続的に変化する。
【0078】
よって、例えば送り出し長さが巻き取り長さを上回ると、吸収部材12の張力がさらに弱くなり、前記の第1の張力より弱い第2の張力以下になる。ここで、第1の張力、第2の張力は、例えば送出リール16と巻取リール17との間に保持される吸収部材12の、望ましい範囲の張力の上限値を第1の張力に設定し、下限値を第2の張力に設定する。
【0079】
吸収部材12の張力が第2の張力以下になると、調整レバー18は第2位置に至り、第2センサ37をオンにする。第2センサ37は、オンになることで送出モーター16Aを停止させるとともに、巻取モーター17Aの駆動を維持する(巻取モーター17Aを駆動させる)。これにより、送出リール16と巻取リール17との間に保持される(巻き出される)吸収部材12の巻き出し長さ(量)が短く(少なく)なり、その張力が強くなって第2の張力以上になる。
【0080】
その結果、調整レバー18は第2位置から離れ、再度第1位置と第2位置との間に至る。このように調整レバー18が第2位置から離れると、第2センサ37はこれを検知してオフとなり、送出モーター16Aを駆動させ、送出リール16を回転させる。したがって、送出リール16、巻取リール17が再度共に回転するようになり、吸収部材12の張力が安定し、調整レバー18の変位も所定範囲内に維持される。
【0081】
また、例えば送り出し長さが巻き取り長さを下回ると、吸収部材12の張力が強くなり、再度第1の張力以上になる。すると、調整レバー18は再度第1位置に至り、第1センサ36をオンにする。第1センサ36は、オンになることで送出モーター16Aを停止させるとともに、巻取モーター17Aの駆動を維持する(巻取モーター17Aを駆動させる)。これにより、送出リール16と巻取リール17との間に保持される(巻き出される)吸収部材12の巻き出し長さ(量)が長く(多く)なり、その張力が弱くなって第1の張力未満になる。
【0082】
なお、吸収部材12の張力が強くなって再度第1の張力以上になっても、第1センサ36がオンになることによる送出モーター16Aの停止が瞬時になされることから、吸収部材12は予め設定された所定の張力にほぼ保持された状態となる。したがって、前記の位置決めローラー54a、54bは、依然として停止位置に留まった状態に維持される。
【0083】
吸収部材12の張力が弱くなって第1の張力未満になると、調整レバー18は第1位置から離れ、再度第1位置と第2位置との間に至る。このように調整レバー18が第1位置から離れると、第1センサ36はこれを検知してオフとなり、前記したように巻取モーター17Aを駆動させ、巻取リール17を回転させる。よって、送出リール16、巻取リール17が再度共に回転するようになり、吸収部材12の張力が安定し、調整レバー18の変位も所定範囲内に維持される。
【0084】
したがって、吸収部材12の張力が予め設定した第1の張力と第2の張力との範囲を超えて変化すると、調整レバー18の変位も第1位置と第2位置との間の所定範囲を超え、これが第1センサ36又は第2センサ37に検知されるため、送出リール16(送出モーター16A)及び/又は巻取リール17(巻取モーター17A)の駆動とその停止が自動的に制御される。これにより、調整レバー18の変位が所定範囲内に復帰するように調整されているため、吸収部材12の張力は所定範囲内で安定するようになる。
【0085】
また、走行機構13による吸収部材12の走行を停止する場合には、予め制御装置に終了動作として、送出モーター16Aを停止させる制御(指令)を行う。すると、巻取モーター17Aのみが駆動し、巻取リール17のみが回転するので、送出リール16と巻取リール17との間に保持される(巻き出される)吸収部材12の巻き出し長さ(量)が短く(少なく)なり、その張力が強くなって第1の張力以上になる。すると、調整レバー18は再度第1位置に至り、第1センサ36をオンにする。第1センサ36は、オンになることで送出モーター16Aを停止させる。
【0086】
なお、通常時では第1センサ36がオンになることにより、巻取モーター17Aを駆動させるが、ここでは終了時であり、予め制御装置に終了動作についての指令を与えているため、巻取モーター17Aを駆動させることなく、停止させたままにする。したがって、調整レバー18は図7中二点鎖線で示したように、調整レバー18が第1センサ36をオンにした状態となっており、すなわち、該調整レバー18が変位する範囲における第1位置に至った状態となっている。
このようにすれば、終了時には吸収部材12は常に一定の張力で保持されるため、張力の変動によって吸収部材12に挙動変化が発生せず、したがって振動等が生じないようになる。
【0087】
また、このような終了時において、すなわち吸収部材12が第1の張力以上になっていて調整レバー18が第1位置にあり、吸収部材12の走行が停止している状態のもとで、吸収部材12が塑性変形して伸びが生じると、吸収部材12はその張力が弱くなって第1の張力未満になる。すると、前記したように調整レバー18が第1位置から離れることで巻取モーター17Aが駆動し、巻取リール17が回転する。そして、前記の伸び量に対応する分吸収部材12が巻取リール17に巻き取られ、これによって吸収部材12の張力が再度第1の張力以上になる。これにより、調整レバー18が再度第1位置に至り、巻取モーター17Aは再度停止する。したがって、吸収部材12は例えば長期の停止時においても、その張力が安定した状態で維持されるようになる。
【0088】
また、送出リール16から吸収部材12を巻き出し、巻取リール17に巻き取らせることで吸収部材12を走行させると、この吸収部材12は、送出リール16から調整レバー18のローラー18aに至る途中で、前述したように検査用回転体20のローラー20bを周回する。
【0089】
その際、吸収部材12の走行によってローラー20bは連れ回りすることにより、検査用回転体20は吸収部材12の走行長さ(走行距離)に対応して回転する。検査用回転体20の回転数は吸収部材12の走行長さ(走行距離)に正比例するため、検知部41で回転板20aの孔40を検知することにより、吸収部材12の走行長さを正確に検出することができる。
【0090】
したがって、前記したようにフラッシングに動作によって既にインクを吸収・受容した領域を巻取リール17側に巻き取り、まだインクを吸収・受容していない新たな領域をヘッドユニット2に対向させるべく、送出モーター16Aを駆動し、送出リール16を回転させる際、例えばインクを吸収・受容した領域の長さを吸収部材12の送り量として設定する。そして、実際に走行させた吸収部材12の走行長さを前記の検査用回転体20と検知部41及び回転板20aの孔40からなる検査機構とによって検出し、検出値が設定した送り量となったら、前記したように制御装置に終了動作を行わせる。
【0091】
このように構成することで、必要以上に吸収部材12を送り出し(走行させ)、巻取リール17に送ることにより、インクを吸収しないまま巻取リール17に巻き取られる領域が増えて吸収部材12の使用効率が低下してしまうことを、防止することができる。
なお、単に送出リール16や巻取リール17の回転数を検知することで、走行させる吸収部材12の長さを検出することも考えられるが、前述したように送出リール16や巻取リール17に巻き取られている吸収部材12の巻取量は、使用を重ねるに連れて変化する。したがって、それぞれの巻取径も変化するため、これら送出リール16や巻取リール17の回転数は、走行させられる吸収部材12の長さとは正確に対応しない。したがって、走行させる吸収部材12の長さをより正確に把握し、吸収部材12の使用効率の低下を防止するには、前記した検査用回転体20と検知部41及び回転板20aの孔40からなる検査機構が有効になる。
【0092】
また、ヘッドユニット2に対向する側を通過して支持基板15B側に移動(走行)した吸収部材12は、位置決めローラー54bを周回した後、巻取リール17に巻き取られる前に安全レバー44のローラー46a、ローラー46bをこの順に周回するので、前述したようにこの安全レバー44を含む安全機構により、吸収部材12の張力が所定以上の張力になると、巻取モーター17Aの駆動が停止するようになっている。
【0093】
すなわち、例えば送出リール16に巻かれた吸収部材12の残が無くなったり、不測に吸収部材12が引っかかったりすると、吸収部材12の張力が所定の張力以上になり、位置決めローラー54a、54bが押圧バネ56の押圧力(付勢力)に抗して停止位置と反対の側に移動する。そして、さらに吸収部材12の張力が高くなると、安全レバー44の一端側が引っ張りバネ45の付勢力に抗して矢印Bと反対の方向に回動し、安全センサ部47が押圧されてオンになり、巻取モーター17Aの駆動が停止して巻取リール17の回転が停止する。
これにより、吸収部材12を無理に引っ張ることにより、この吸収部材12を切断してしまうといった不都合を回避することができる。
【0094】
なお、フラッシング動作を複数回実行した後、送出リール16に巻かれた吸収部材12のほとんどが巻取リール17へと巻き取られ、巻取リール17による吸収部材12の巻き取りが終了したら、新しいものと交換する。
【0095】
次に、移動機構14による吸収部材12の移動動作について、図10(a)〜(d)を参照して説明する。なお、図10(a)〜(d)では、移動機構14の動作を主に説明するため、走行機構13についてはその一部を省略している。また、図10(a)は図5(a)に示した状態と同じ状態を示し、図10(c)は図5(b)に示した状態と同じ状態を示している。
【0096】
図10(a)(図5(a))に示した状態で吸収部材12を走行させ、インクを吸収・受容していない新たな領域をヘッドユニット2に対向させた後、再度フラッシングを行う際には、移動機構14を動作させ、吸収部材12を例えば図5(b)に示した所定位置、すなわちフラッシング位置に移動させるべく、移動機構部53A、53Bにおけるモーター58を駆動させる。なお、このような移動の初期には、送出ローラー16、巻取ローラー17については共に駆動させることなく、停止させた状態に維持しておく。
【0097】
すると、移動ステージ55A、55Bはモーター58の駆動によるボールネジ57の回転により、方向Rに沿って基準位置側から所定位置側に移動させられる。このようにして移動させられると、吸収部材12は送出ローラー16から巻取ローラー17に至る経路が長くなることにより、その張力が強まる(高まる)。すなわち、調整レバー18や引っ張りバネ19によって付与された張力が強くなる。すると、位置決めローラー54a、54bは、保持した吸収部材12の張力が強まることにより、押圧バネ56による押圧(付勢)方向と反対の方向に付勢されるようになる。なお、吸収部材12の張力が強まる速度は、移動ステージ55A、55Bが移動する速度より遅くなるため、相対的な吸収部材12の移動速度としては、張力変化が無い場合に比べ遅くなる。
【0098】
そして、例えば図10(b)に示すようにある程度の距離進み、吸収部材12の張力がさらに強くなると、これが押圧バネ56による付勢力より強くなり、これによって位置決めローラー54a、54bは、移動ステージ55A、55Bに対して押圧バネ56の付勢方向と反対の方向、すなわち基準位置側に移動させられる。
よって、移動初期から移動中期においては、調整レバー18や引っ張りバネ19によって吸収部材12に付与される張力が強められることにより、吸収部材12は移動ステージ55A、55Bの移動方向(所定位置側)と反対側(基準位置側)に僅かずつ移動させられ、これによって移動ステージ55A、55Bの移動時における吸収部材12の加速力が抑えられる。したがって、前記したように相対的な吸収部材12の移動速度が、張力変化が無い場合に比べ遅くなり、また、吸収部材12の加速力が抑えられるため、吸収部材12に振動が生じるのが抑制される。
【0099】
また、位置決めローラー54a、54bが押圧バネ56の付勢方向と反対の方向に移動させられると、調整レバー18や引っ張りバネ19によって吸収部材12に付与される張力が弱められる。そこで、例えば移動ステージ55A、55Bの移動を開始した後の適宜なタイミングで、送出モーター16Aを駆動させて送出リール16を回転させ、吸収部材12を送り出すことでその長さを長くするとともに、図10(c)に示すように移動ステージ55A、55Bをその所望の位置、すなわちその停止位置まで進ませる。これにより、吸収部材12はその張力がバランスされつつ僅かながら弱まる。そして、押圧バネ56の付勢力より弱くなると、位置決めローラー54a、54bは、長孔59内を押圧バネ56の付勢方向である所定位置側に移動させられ、停止位置に至ってここで停止する。これにより、吸収部材12は図10(c)中二点鎖線で示すように、ノズル列Lに沿う位置、すなわち所定位置となるフラッシング位置に至る。
【0100】
よって、移動終期においては、調整レバー18や引っ張りバネ19によって吸収部材12に付与される張力が弱められることにより、吸収部材12は移動55A、55Bの移動方向(所定位置側)に僅かずつ移動させられて停止するようになり、これによって停止移動時における減速力が抑えられる。
このように、吸収部材12は移動初期時における加速力や移動終期時における減速力が抑えられるので、吸収部材12の移動に伴う加減速の影響が少なくなり、これによって移動時に生じる吸収部材の振動を、最小限に抑えることができる。
【0101】
また、吸収部材12をフラッシング位置に移動させ、フラッシングを行った後、再度吸収部材12を基準位置である退避位置に移動させるには、図10(d)に示すように移動機構部53A、53Bにおけるモーター58を駆動させ、移動ステージ55A、55Bを基準位置側に移動させるとともに、巻取モーター17Aを駆動させて巻取リール17を回転させ、吸収部材12を所定長さ巻き取る。
その際、移動ステージ55A、55Bの基準位置側への移動と吸収部材12の巻取リール17への巻き取りとをバランスさせることで、フラッシング位置(所定位置)への移動時と同様に吸収部材12が退避位置(基準位置)側に急激に移動するのを抑え、吸収部材12の移動速度を緩和することができる。よって、インクを吸収した吸収部材12が振動することで、インク滴が吸収部材12から飛散するのを防止することができる。
【0102】
以上説明したように本実施形態のプリンター1によれば、吸収部材12の速度を段階的に遅くできるため、停止時や加速時に発生する加速度を軽減することができ、別段のステージを動かすモーター等の制御を用いることなく、吸収部材12の張力とその送りと、吸収部材12の走査時の速度とによって、自動的に吸収部材12の移動時の急激な変化を緩和することができる。したがって、従来では自然任せに振動の納まりを待っていたのに対し、このプリンター1では収束時間を短くし、これによってフラッシング時間の短縮化を図ることができる。また、吸収部材12の走査制御も容易になる。
よって、吸収部材12を退避位置とフラッシング位置との間で移動させた際に生じる振動を、高価なモーターを使用することなく、簡易な機械的機構によって抑えることができる。
【0103】
また、吸収部材12の走行長さを、検査用回転体20と前記検査機構とによって正確に検出するようにしたので、移動ステージ55A、55Bを移動させることで吸収部材12を例えば退避位置となる基準位置から所定位置となるフラッシング位置に移動させた際、移動に伴って吸収部材12の長さが変化する分を、送出リール16を回転駆動させることで補うことができる。また、その際、送出リール16からの吸収部材12の送り出し量を正確に把握することができるため、移動に伴って吸収部材12の長さが変化する分を、過不足なく正確に補うことができる。これにより、吸収部材12の張力を、退避位置とフラッシング位置とで同じに維持することができる。
【0104】
次に、本発明の流体噴射装置としてのプリンターの、第2実施形態を説明する。
図11は、この第2実施形態のプリンターにおける、送出リール16とその近傍を示す要部拡大図である。
図11に示した第2実施形態が、図7に示した第1実施形態と主に異なるところは、この第2実施形態では、センサ部として、前記の第1センサ36、第2センサ37に加えて、第3センサ38を備えた点である。
【0105】
すなわち、この第2実施形態では、調整レバー18が第1センサ36(第1位置)と第2センサ37(第2位置)との間で変位している状態において、第3センサ38によって基準位置(例えば第1位置あるいは第2位置)からの変位量を検出し、送出モーター16A及び巻取モーター17Aの駆動を制御するようにしている。第3センサ38としては、本実施形態ではポテンションメーターが用いられる。このポテンションメーター(第3センサ38)は、前記調整レバー18の回動軸に直結させられて配設されている。
【0106】
また、このポテンションメーターは、送出モーター16A、巻取モーター17Aにそれぞれ接続され、これらの回転速度を制御するようになっている。すなわち、このポテンションメーター(第3センサ38)は、吸収部材12の張力の変化に対応して変位する調整レバー18の、基準位置からの変位量に対応して出力値を変化させるようになっており、これにより、送出モーター16A、巻取モーター17Aの回転速度をそれぞれ変化させるようにしている。
【0107】
具体的には、調整レバー18が第1センサ36側(第1位置側)に近づくと、巻取モーター17Aの回転速度を漸次遅くする。これにより巻取モーター17Aの回転速度を一定にした場合に、調整レバー18が第1センサ36をオンさせた際(第1位置に至った際)、巻取モーター17Aが急に停止し、その反力が吸収部材12に伝わるのを抑えることができる。また、調整レバー18が第2センサ37側(第2位置側)に近づくと、送出モーター16Aの回転速度を漸次遅くする。これにより送出モーター16Aの回転速度を一定にした場合に、調整レバー18が第2センサ37をオンさせた際(第2位置に至った際)、送出モーター16Aが急に停止し、その反力が吸収部材12に伝わるのを抑えることができる。
【0108】
したがって、本実施形態のプリンターによれば、第1センサ36、第2センサ37により、送出モーター16Aや巻取モーター17Aについて単に駆動・停止のオンオフを制御するだけでなく、第3センサにより、調整レバー18の変位量(つまり吸収部材12の張力)に応じて送出モーター16A(送出リール16)や巻取モーター17A(巻取リール17)の回転速度も制御するようにしたので、吸収部材12の張力をより滑らかに変化させることができる。よって、吸収部材12に振動が生じるのをより良好に防止することができる。
【0109】
なお、図1では、ヘッドモジュール2、メンテナンス装置10及びフラッシングユニット12を1組のみ図示しているが、実際には、記録紙の搬送方向にもう1組のヘッドモジュール2、メンテナンス装置10及びフラッシングユニット12を配置しているものとする。これらの2組は、機構的には同一の構成を有しているが、記録紙の搬送方向と直交する水平方向(ヘッド21A〜21Eの配列方向)にずれて配置されている。より詳細には、記録紙の搬送方向に見て、1組目のヘッドモジュール2が備えるヘッド21A〜21E間に2組目のヘッドモジュール2が備えるヘッド21A〜21Eが配置されている。
このように、2組のヘッドモジュール2、メンテナンス装置10及びフラッシングユニット12を記録紙の搬送方向と直交する水平方向にずれて配置することにより、全体的にはヘッド21A〜21Eが千鳥配置されることとなり、有効印字幅の全領域にインクを吐出することが可能となる。
【0110】
ここで、このように2組のヘッドモジュール2で千鳥状に配置された2組のヘッド21A〜21Eにおいて、記録紙の搬送方向と直交する水平方向にてずれて隣り合うヘッド間では、それぞれのノズル列Lを構成する各ノズル24間のピッチが、一定に形成されている。すなわち、ずれて隣り合うヘッドは、これらヘッド間の、互いに内側の端部に位置するノズル24、24間のピッチが、同一のヘッド内の隣り合うノズル24、24間のピッチと同一になるように配置されている。ただし、これらずれて隣り合うヘッドは、該ヘッド間の、互いに内側の端部側に位置する一つ又は複数のノズル24が、該ヘッド間にて記録紙の搬送方向に沿って一列又は複数列で並ぶように、配置されていてもよい。このように配置した場合には、ヘッド間にて一列又は複数列で並んだノズル24、24のうちの、一方のヘッドのノズル24からは、流体が噴射されないように構成するのが好ましい。このように構成することにより、使用する各ノズル24間のピッチが一定になる。
【0111】
なお、ヘッド21A〜21Eを記録紙の搬送方向と直交する方向に連接して配列する場合には、ヘッドモジュール2、メンテナンス装置10及びフラッシングユニット12が1組のみとしてもよい。この場合には、ヘッド21A〜21E間に十分な隙間が形成されないため、メンテナンス装置10が備えるキャップ部61A〜61Eをヘッド21A〜21Eごとに設けることが難しい。このため、全てのヘッド21A〜21Eのノズル24が囲える単一のキャップ部を用いることが好ましい。
【0112】
以上、図面を参照して本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、前記移動ステージ55A、55Bを移動させる機構としては、前記のボールネジ57を備える構成に限定されることなく、例えばラック・アンド・ピニオンを用いた構成等を採用することもできる。
【0113】
また、前記実施形態においては、吸収部材12がノズル列に平行に沿う構成について説明したが、本発明では、必ずしも吸収部材12の延在方向とノズル列の延在方向とが完全に平行になるようにする必要はない。つまり、本発明において、ノズル列に沿って延在するとは、ノズル列と完全に平行となる状態のみに限定されるものではなく、フラッシング時に吸収部材12がインク滴(流体)を受けられる範囲内であればよい。また、退避時はノズル列に対して傾斜していてもよい。そのため、移動機構部53A及び移動機構部53Bによる移動量は、異なっていてもよい。
【0114】
また、前記実施形態においては、本発明をラインヘッド方式のプリンターに適用した構成について説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、シリアル方式のプリンターに適用することもできる。
また、前記実施形態においては、吸収部材12が常にヘッドユニト2と記録紙(媒体)との間を移動する構成について説明したが、本発明では、吸収部材12を退避させる際に、ヘッドユニト2の直下から外れた領域(例えば、ヘッドユニト2の側方)に移動させる構成を採用してもよい。
【0115】
また、前記実施形態では、本発明の流体噴射装置をインクジェット式のプリンターに適用しているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に適用してもよい。すなわち、微小量の液滴を吐出する流体噴射ヘッド等を備える各種の流体噴射装置に適用可能である。なお、液滴とは、前記流体噴射装置から吐出される流体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう流体とは、流体噴射装置が噴射させることができるような材料であれよい。
【0116】
例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての流体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、流体の代表的な例としては、前記実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種流体組成物を包含するものとする。
【0117】
流体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む流体を噴射する流体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる流体を噴射する流体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
【0118】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置を採用してもよい。
【符号の説明】
【0119】
1…プリンター(流体噴射装置)、10…メンテナンス装置、11…フラッシングユニット、12…吸収部材、13…走行機構、14…移動機構、16…送出リール(送出回転体)、16A…送出モーター(送出駆動部)、17…巻取リール(巻取回転体)、17A…巻取モーター(巻取駆動部)、18…調整レバー(張力調整部材)、19…引っ張りバネ、20…検査用回転体、20a…回転板、20b…ローラー、21(21A〜21E)…記録ヘッド(流体噴射ヘッド)、36…第1センサ、37…第2センサ、38…第3センサ、40…孔(識別体)、41…検知部、53A、53B…移動機構部、54a、54b…位置決めローラー(位置決め部材)、55A、55B…移動ステージ(移動部材)、56…押圧バネ(第1付勢部材)、L…ノズル列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルからなるノズル列を有し、該ノズル列から流体を噴射する流体噴射ヘッドを備えた流体噴射装置であって、
前記ノズル列に沿って延在するとともに、該ノズル列の一方側から他方側に向かって移動可能に設けられ、前記ノズルから噴射された流体を吸収する線状の吸収部材と、
前記吸収部材を前記ノズル列と交差する方向に移動させる移動機構と、
前記吸収部材を前記ノズル列の一方側から他方側に向かって走行させる走行機構と、を備え、
前記移動機構は、前記ノズル列の一方側と他方側とにそれぞれ配置され、前記吸収部材を、前記ノズル列と直交する方向における一方の側の基準位置から他方の側の所定位置に移動させるとともに、前記所定位置から前記基準位置に移動させる一対の移動機構部を備え、
前記移動機構部は、前記ノズル列と交差する方向に沿って往復移動可能に設けられた移動部材と、該移動部材に前記ノズル列と交差する方向に沿って移動可能に設けられ、かつ、前記ノズル列と直交する方向における前記所定位置側に停止位置を有した、前記吸収部材を移動可能に保持する位置決め部材と、該位置決め部材を、前記ノズル列と直交する方向における前記基準位置側から前記所定位置側に付勢する第1付勢部材と、を備えてなり、
前記一対の移動機構部は、それぞれの位置決め部材間に前記吸収部材を保持することで、前記吸収部材を前記ノズル列に沿って延在させるよう構成され、
前記位置決め部材は、保持した吸収部材の張力が強まると前記第1付勢部材の付勢方向と反対の方向に付勢されるよう構成され、
前記位置決め部材間に保持された吸収部材に張力を付与するとともに、前記位置決め部材が前記ノズル列と直交する方向における前記基準位置側に移動すると吸収部材に付与する張力を弱め、前記所定位置側に移動すると吸収部材に付与する張力を強める張力付与機構が、設けられていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記走行機構は、
前記吸収部材を巻き取った状態からこれを巻き出すことで送り出す送出回転体と、
前記送出回転体を回転駆動させる送出駆動部と、
前記送出回転体から送り出された吸収部材を巻き取る巻取回転体と、
前記巻取回転体を回転駆動させる巻取駆動部と、を有することを特徴とする請求項1記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記張力付与機構は、前記位置決め部材間に保持された吸収部材に所定の張力を付与するとともに、該吸収部材の張力に応じて変位し、前記吸収部材に付与する張力の強度を変化させる張力調整部材を有してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記張力調整部材は、前記吸収部材を保持する保持位置が前記ノズル列と交差する方向に変位可能に設けられるとともに、前記保持位置が第2付勢部材によって前記第1付勢部材の付勢方向と反対の方向に付勢されていることを特徴とする請求項3記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記走行機構は、前記吸収部材を巻き取った状態からこれを巻き出すことで送り出す送出回転体と、前記送出回転体を回転駆動させる送出駆動部と、前記送出回転体から送り出された吸収部材を巻き取る巻取回転体と、前記巻取回転体を回転駆動させる巻取駆動部と、を有し、
前記張力調整部材は前記ノズル列より前記送出回転体側に設けられ、
前記送出回転体と前記張力調整部材との間を走行する前記吸収部材の走行路中には、該吸収部材を周回させるとともに該吸収部材の走行によって連れ回りする検査用回転体が設けられ、
前記検査用回転体には、該検査用回転体の回転数を検知することで該検査用回転体を周回する吸収部材の走行長さを検出する検出機構が設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記検査用回転体には、周方向に沿って識別体が設けられており、
前記検出機構は、前記識別体を検知することで、前記検査用回転体の回転数を検知するように構成されていることを特徴とする請求項5記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−161857(P2011−161857A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28880(P2010−28880)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】